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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】事業者連携システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/06 20120101AFI20231127BHJP
【FI】
G06Q40/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023136967
(22)【出願日】2023-08-25
【審査請求日】2023-08-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522244300
【氏名又は名称】グローシップ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122563
【弁理士】
【氏名又は名称】越柴 絵里
(74)【代理人】
【識別番号】100230765
【弁理士】
【氏名又は名称】越柴 洋哉
(72)【発明者】
【氏名】松井 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】吉野 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】木田 将博
(72)【発明者】
【氏名】田村 知之
【審査官】樋口 龍弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-153222(JP,A)
【文献】特開2006-350991(JP,A)
【文献】特開2006-092480(JP,A)
【文献】特許第4048915(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有価証券又は組合契約に基づく投資持分をネットワークを介して販売することに係る事業者を連携するシステムであって、
前記有価証券又は組合契約に基づく投資持分に関するファンドの情報及び当該ファンドを組成又は運用するファンド発行体の情報を、前記ファンド発行体から前記ネットワークを介して受信し登録するファンド登録手段と、
前記ファンドを投資家に販売するファンド販売事業者の情報を、前記ファンド販売事業者から前記ネットワークを介して受信し登録する販売事業者登録手段と、
前記ファンド販売事業者に対して事前の販売予定分を課すこと無く前記ファンドの投資商品をオンラインで投資家に販売することを前提に、前記ファンドに係る販売希望を前記ファンド販売事業者から受け付ける投資募集手段と、
前記ネットワークを介して、前記ファンド販売事業者の各々から前記ファンドの販売状況をリアルタイムで受信する状況把握手段と、
前記ファンド販売事業者の各々の販売状況に基づき、前記ファンドの販売計画を調整する販売計画調整手段と、
を備える事業者連携システム。
【請求項2】
前記販売計画調整手段は、前記ファンドの募集期間終了時の売れ行きを予測し、複数のファンド販売事業者間で販売量が調整されるよう指示する、請求項1に記載の事業者連携システム。
【請求項3】
前記ファンドの優先的な販売受託先を決定するため、前記ファンド登録手段で登録されるファンド発行体と、前記販売事業者登録手段で登録されるファンド販売事業者とのマッチング処理を行うマッチング手段とを更に備えた、請求項1に記載の事業者連携システム。
【請求項4】
前記マッチング手段は、前記ファンド発行体及び前記ファンド販売事業者からあらかじめ指定されたマッチング条件を用いてマッチング処理を実行する、請求項3に記載の事業者連携システム。
【請求項5】
前記マッチング条件は、販売可能な最大口数又は最小口数、投資家属性又は投資家数、事業者としての許認可に必要な基準のいずれかを少なくとも含む、請求項4に記載の事業者連携システム。
【請求項6】
前記ファンドは不動産物件を対象とする、請求項1~5の何れか1項に記載の事業者連携システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投資家から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめて投資・運用し、その用成果が投資家それぞれの投資額に応じて分配するために販売される投資商品に係る事業者を連携するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットを介して不特定多数の人々から少額ずつ資金を調達する仕組みとしてクラウドファンディングが進展してきた。中でも投資型クラウドファンディングとは、複数の投資家から募った資金を用いて運用し、得られたリターンを分配する仕組みのことである。一人当たりの投資家から募る投資額が少額であっても、複数の投資家から投資を募ることで巨大な投資金額の運用が可能になる。投資先は、株式・債権・先物・為替などの金融商品の他に、現物不動産や任意の動産を含む。
【0003】
現物不動産などを投資対象とする場合は、特別目的会社を設立して投資家との間で匿名組合契約を締結し、当該契約に基づく投資持分を投資商品として扱うことが行われている。そこで、以降の記載では、有価証券又は組合契約に基づき出資された投資持分をインターネット等のネットワーク経由で販売する事業活動を、投資型クラウドファンディングということとする。
【0004】
投資家から投資を募集するため、ファンドを組成・運用する事業者(ファンド発行体)は小口化した投資商品を投資家に販売するが、通常、ファンドの発行体と上記投資商品を投資家に販売する事業者(ファンド販売事業者)は密接な関連性で結ばれている場合が多い。例えば、資本的又は人的な関連性では、ファンド発行体とファンド販売事業者は、同じ企業グループ内であったり、提携する関連グループ会社であったりすることが殆どである。これは、同一・関連企業グループ内においてのみ顧客の情報を共有しながら顧客を囲いこむことでライバル会社に収益が流れることを回避したいためである。つまり、発行体が販売する投資商品は、自社の企業グループ内のファンド販売事業者が抱える投資家向けの商品となっている。よって、ファンド毎にその投資商品を販売するファンド販売事業者が決まっており、どのファンド販売事業者もが任意のファンドを販売できるようにはなっていない。
【0005】
これは、株式や債権などの金融商品を組み合わせることによりファンドが組成される投資信託でも同様である。投信販売会社と投信運用会社は同一・関連企業グループであり、これら会社の間で投信販売に関する日々のトランザクションに関する取引データの円滑なやりとりを行えるプラットフォーム構築のためのアイデアが提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0006】
また、実際にファンドの投資商品の販売をファンド販売事業者に依頼する場合、ファンドが販売する投資商品の総口数に対して、ファンド販売事業者が投資家へ販売する予定の口数の割合をノルマとして事前に取り決めておくのがこれまでのやり方である。例えば、ファンド販売事業者A、B、Cがいる場合、販売前に40%、40%、20%というように割当て、目標の小口化総数分が完売されるように計画する。
【0007】
このように、これまでの投資型クラウドファンディングは、ファンド発行体と、関連する特定のファンド販売事業者とが連携しながら一体となってファンド販売事業者に紐づく投資家に向けて小口化した投資商品を販売し、ファンド販売事業者にはファンド総口数に対する販売予定口数がノルマとして事前に割当てられているのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2015-153222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、ファンド販売事業者が投資型クラウドファンディングに参加するための条件として、ノルマとして課される販売予定口数を了承することが要求される場合がある。この場合、ファンド販売事業者は、自分の顧客である投資家に販売したくても販売しなければならないノルマ分の完売が困難であると判断すれば当該クラウドファンディングの顧客への販売を見送ることが多かった。また販売を決定した後でも実際にノルマ分が販売できないと判断すれば、ファンド発行体は他のファンド販売事業者に連絡して代わりに販売してもらうよう依頼する等の手間を要していた。
【0010】
また、ファンド発行体とファンド販売事業者とが同じ企業グループというような閉鎖的な結びつきは、ファンド発行体及びファンド販売事業者の双方にとって足かせにもなっていた。例えば、ファンド発行体にとっては、自らの投資商品は同じ企業グループ内の限定されたファンド販売事業者のみが販売可能であることを考慮すると、高額な募集金額(ファンドの設定額)を設けることが困難である。またファンド販売事業者にとっては、販売可能な商品が自社内の限定されたファンド発行体が発行する商品のみであると、投資家へ提供する商品の種類や内容の多様性が失われ、ファンド販売事業者としての競争力に悪影響を及ぼす。
【0011】
そこで、本発明は、投資型クラウドファンディングの投資商品の販売に関して、販売予定口数をあらかじめ決定することなしに、任意のファンド販売事業者が販売受託先として参加できる仕組みを提供することを目的とする。
さらに、ファンドや事業者の特性等に基づいてファンド発行体とファンド販売事業者を、複数の企業・組織をまたいでオンライン上で最適にマッチングすることにより、ファンド発行体が複数の企業グループのファンド販売事業者に投資商品の販売を委託し、かつファンド販売事業者が複数の企業グループのファンド発行体の投資商品を販売することが可能になることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明に係る事業者連携システムは、有価証券又は組合契約に基づく投資持分をネットワークを介して販売することに係る事業者を連携するものであって、前記有価証券又は組合契約に基づく投資持分に関するファンドの情報及び当該ファンドを組成又は運用するファンド発行体の情報を、前記ファンド発行体から前記ネットワークを介して受信し登録するファンド登録手段と、前記ファンドを投資家に販売するファンド販売事業者の情報を、前記ファンド販売事業者から前記ネットワークを介して受信し登録する販売事業者登録手段と、前記ファンド販売事業者に対して事前の販売予定分を課すこと無く前記ファンドの投資商品をオンラインで投資家に販売することを前提に、前記ファンドに係る販売希望を前記ファンド販売事業者から受け付ける投資募集手段と、前記ネットワークを介して、前記ファンド販売事業者の各々から前記ファンドの販売状況をリアルタイムで受信する状況把握手段と、前記ファンド販売事業者の各々の販売状況に基づき、前記ファンドの販売計画を調整する販売計画調整手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る事業者連携システムにおいて、前記販売計画調整手段は、前記ファンドの募集期間終了時の売れ行きを予測し、複数のファンド販売事業者間で販売量が調整されるよう指示すること、又は前記ファンドの優先的な販売受託先を決定するため、前記ファンド登録手段で登録されるファンド発行体と、前記販売事業者登録手段で登録されるファンド販売事業者とのマッチング処理を行うマッチング手段とを更に含むことを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明に係る事業者連携システムにおいて、前記マッチング手段は、前記ファンド発行体及び前記ファンド販売事業者からあらかじめ指定されたマッチング条件を用いてマッチング処理を実行すること、又は前記マッチング条件は、販売可能な最大口数又は最小口数、投資家属性又は投資家数、事業者としての許認可に必要な基準のいずれかを少なくとも含むこと、又は前記対象ファンドは不動産物件を対象とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る事業者連携システムの場合、ファンド発行体によるファンドの募集に対し、複数の任意のファンド販売事業者がネットワークを介して参加し、各ファンド販売事業者の販売状況を当該システムがリアルタイムで把握しながら管理する構成である。各ファンド販売事業者は事実上のノルマとなる事前の販売予定分を取り決めることなく参加できるため、ファンド販売事業者は少数の口数の販売であっても購入を希望する自分の顧客(投資家)への販売が可能である。複数の任意のファンド販売事業者を通じた販売は、結果として多数の投資家への販売となるため、ファンド発行体は資金の調達機会が増大し、従来よりも募集金額が格段に大きいファンドを構築できる(規模の拡大化)。
【0016】
また、参加する多様なファンド販売事業者がそれぞれ各自の顧客(投資家)に販売するので、幅広い投資家層へリーチすることに繋がる。投資家層が広がれば要求されるファンド特性もおのずと一様ではなくなる。これに呼応して、ファンド発行体は、幅広い投資家層のニーズにあわせるため、種類や内容がバラエティーに富んだ投資商品を作ることができる(種類・内容の多様化)。
【0017】
さらに、本発明に係る事業者連携システムは、複数のファンド発行体と複数のファンド販売事業者とをオンラインで横断的に連携させる際に、ファンドの特徴、投資家の属性、事業者に要求される許認可条件やブランディングなどに適合する相手方を優先的に選出してマッチングするよう構成している。そのため、ファンドの成立に貢献する本気で投資したい投資家を見つける機会が増大し、クラウドファンディングが成立する確率を飛躍的に高くすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る事業者連携システムの第1の実施形態に関する全体スキームの概略を示す図である。
図2】本発明に係る事業者連携システムの主な機能を示す機能ブロック図である。
図3】ファンド情報を投資家へ提示する画面例を示した図である。
図4】詳細なファンド情報を投資家へ提示する画面例を示した図である。
図5】投資家に関する情報の入力設定画面例を示した図である。
図6】第1の実施形態の事業者連携システムで実行される処理手順を示したフローチャートである。
図7】本発明に係る事業者連携システムの第2の実施形態に関する全体スキームの概略を示す図である。
図8】第2の実施形態の事業者連携システムで実行される処理手順を示したフローチャートである。
図9】本発明に係る事業者連携システムのサーバのハードウェア構成の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に図面を参照しながら、投資型クラウドファンディング支援システム100(以下、「連携システム100」という。)の一実施形態について説明する。本実施形態の連携システム100は、現物不動産を裏付資産として募集された不動産ファンドを投資対象として説明するが、本発明の適用範囲は不動産ファンドに限定されるものではない。株や債券などの金融商品の他に、航空機、船舶、車両、貴金属など任意の動産のファンド化に対しても同等の有用性をもつ。
【0020】
図1は、本実施形態に係る連携システム100を含む全体スキームの概略を示す。図1に示すように、連携システム100は、不動産物件1を取得して当該不動産物件1を裏付け資産とするファンドを発行するファンド発行体10と、不動産物件に投資したい投資家2を顧客にもつファンド販売事業者20とを連携するシステムである。ファンド発行体10は、投資家2から募集した投資金等を原資とする運用資金を基に不動産会社又は不動産所有者から不動産を取得し、当該不動産の賃貸や売却行為から得た利益(賃料や売却益)を投資家に分配することを前提とする。投資家とは、ファンド販売事業者20の投資家2のみならず、ファンド発行体10自体が抱える投資家3を含むこともある。
【0021】
連携システム100の主な機能は、図2に示すとおり、物件登録機能100a、販売事業者登録機能100b、ファンド管理機能100c、募集機能100d、状況把握機能100f、販売口数調整機能g、ファンド運用機能100hを少なくとも含む。ただし、図2に示す機能ブロック図は、例示に過ぎず、特に限定されるものではない。
【0022】
まず、ファンド発行体10は、不動産会社(又は不動産所有者)と譲渡契約をして対象不動産を取得する。投資商品の発行、ファンドの運用・利益配分などを実施するために不動産会社とファンド発行体と投資家との間で構築するスキームは様々な態様が存在するが、本実施形態では説明の都合上、対象の不動産物件1は不動産会社等からファンド発行体10へ譲渡され、その所有権が移転されていることとする。
【0023】
連携システム100の物件登録機能100aは、対象とする不動産物件1の情報を登録する。ファンド発行体10は、不動産会社から巨額な不動産を取得するケースのように、ファンド発行体10が抱える投資家3だけではファンド口数のすべてを販売しきれないと判断すれば、多くの投資家に販売する目的で連携システム100へ対象不動産の情報を登録してもらうよう投資商品販売希望の要求を出しておく。物件登録機能100aは、ファンド発行体10からの当該要求を受けて、連携システム100に接続するデータベース5に不動産物件1の情報を登録する。
【0024】
販売事業者登録機能100bは、不動産ファンドに投資したい複数の投資家2を顧客にもつファンド販売事業者20の要求を受けて、当該ファンド販売事業者20の情報をデータベース5に登録する。ファンド販売事業者20が連携システム100に登録されることにより、投資家2は特定のファンド販売事業者が関与する不動産物件に限定されることなく、物件登録機能100aに登録されている任意の不動産物件の中から選んで投資することが可能になる。
【0025】
なお、連携システム100はすべての手続きをオンラインで完結させるため、ファンド発行体10の端末と、ファンド販売事業者20の端末とをインターネット等の通信回線4を経由して通信可能に接続されている。上記端末として、例えばPC(Personal Computer)、携帯電話やスマートフォン、PDA(Personal Digital Assistants)、タブレット、ウェアラブル(Wearable)端末等が挙げられる。通信回線4に有線又は無線で接続された端末等が互いに通信可能に設定されることにより、連携システム100を介してファンド発行体及びファンド販売事業者が横断的に連携される。
【0026】
ファンド管理機能100cは、物件登録機能100aにより登録されている不動産物件1が、ファンドとして成立して管理されるための情報を登録する。投資型不動産ファンドは、不動産という高額な資産を複数の口数に分割し、その不動産から得られる収益(賃料収益や売却益など)を分配する仕組みであるため、募集口数、単位あたりの投資額、運用期間、期待利回り、経費率などをあらかじめ詳細に計画しておく必要がある。また、ファンド組成に必要な情報は、ファンドを販売する際に投資家2,3へ提示される参照ファンド情報としてデータベース5から適宜読み出されるようになっている。
【0027】
募集機能100dは、連携システム100と、ファンド発行体10及びファンド販売事業者20との間での情報のやりとりをするためのインタフェースを提供する。例えば、物件登録機能100aのために、ファンド発行体10に投資対象の不動産物件1に関する情報を入力する画面を提示する。
また、図3に示すような、不動産物件情報を基にファンド管理機能100cが作成したファンド情報を投資家2,3へ提示する画面を表示する。つまり、投資家2,3がどの不動産を選択すべきかを判断できるようにするため、不動産物件に対する募集金額、予定分配率、運用期間等の概要情報、及び詳細画面では投資家の投資判断材料のために物件の立地・建物区分数などの情報を提示しながら、申し込む出資金額の入力設定や、予定収益シミュレーション(図4参照)を適宜表示した募集画面を提供する。また、投資家自体の情報(氏名や住所等の連絡先)についてもファンド販売事業者20を介して取得されるが、投資家情報はファンド販売事業者20が管理し、連携システム100が直接扱わないものとしてもよい。投資家情報の入力設定画面例を図5に示す。
【0028】
状況把握機能100fは、各ファンド販売事業者20の実際の販売状況をリアルタイムで通信回線4を介して把握できる機能をいう。
販売計画調整機能gは、状況把握機能100fにより把握されるリアルタイムの販売状況から、最終的な販売口数が募集金額に到達してファンドが成立するかを予測し、その予測結果に基づき販売計画を調整する機能をいう。例えば、売れ行きが好調なことがリアルタイムで把握できれば、当初の募集口数を増加させて募集期間を延長させる等して利益の最大化を狙うことも可能になる。また、募集の一口分を更に小口化すればより幅広い投資家に販売できると判断すれば一口あたりの金額を下げ、全体の販売状況が悪ければより多く販売してくれる可能性があるファンド販売事業者を抽出して依頼することが可能になる。
【0029】
ファンド運用機能100hは、投資家2,3からの出資金を基に実際のファンド運用を行う。具体的には例えば、投資家2,3からの出資金総額が集まってファンドが成立した時点で、出資持分をトークン化した上でトークンを発行し、各投資家の出資割合に応じて、各投資家の個別ウォレット宛てにこのトークンを移転する。運用の終了時では、償還金の支払いと同時に、投資家のウォレットのトークンが、連携システム100が管理するウォレット宛てに移転される。
なお、本実施形態の場合、小口化したファンドはブロックチェーン基盤を用いた分散台帳技術で管理するため、トークン化したが、必ずしもトークン化したりブロックチェーンによる記憶方法にしなくてもよい。
【0030】
なお、連携システム100が、ファンド運用の開始から終了までの間に各種登録や利益の分配・償還などにあたり契約成立時書面などの法定文書を作成して投資家に送付したり、上述した機能の他にAPI等を介した通信処理や他の様々な処理(例えば、本人確認や反社会的勢力チェックなど)も行うが、これらは周知の事項又は技術であるため本明細書では省略する。
【0031】
図6は、連携システム100により実行される処理の手順を示すフローチャートである。あらゆるファンド発行体10及びファンド販売事業者20が連携システム100にまったく何の制限もなく自由に参加できる態様もあり得るが、本実施形態では信用度の高い事業者が参加主体となるよう事業者適格審査が行われている。事業者適格審査の具体的な内容は、過去の事業実績などに基づいて行われるものとする。
【0032】
まず、連携システム100の募集機能100dにより、ファンド発行体10に対してファンドとして運用したい不動産物件1を募集する。これを受けて、ファンド発行体10がエントリーした場合、連携システム100は募集対象の不動産物件1の情報及び希望の募集金額などを含むファンド組成に必要な情報を登録する(ステップS601)。登録された不動産物件1が小口化されたファンドとして投資家2,3に対して販売される候補になる。募集機能100dによって、登録された不動産物件1の各々はファンドとしての適格性を備えているか否かが審査され、適格であると評価した不動産物件1を集めたファンド一覧リストを作成する(ステップS602)。このような審査を行う理由は、市場の需給に基づけば募集したとしても最終的にファンドが組めないことが見込まれる物件をあらかじめ除外するためである。後からファンドが不成立となることを投資家に報告することは投資家に対する失望を招いて再参加の意欲を低下させ、及びファンド発行体10やファンド販売事業者20の企業イメージを悪化させるので、できるだけ人気のありそうなファンドを絞り込んでおきたい。また、過去の実績から判断してファンド発行体10に不相応なファンドが募集対象として提示されること等を事前に回避するためである。
【0033】
連携システム100は、ファンド管理機能100cによって募集口数、単位あたりの投資額、運用期間、期待利回り、経費率などのファンド情報が作成されているので、通信回線4を介してファンド一覧リストが閲覧できるようにする。ファンド販売事業者20は、ファンド一覧リストを確認して(ステップS603)、リストの中から取扱いを希望するファンドを選んで連携システム100へ取扱い申請の要求を送信する(ステップS604)。連携システム100は、取扱い申請の要求を受信すると、要求を送信した販売事業者を販売事業者登録機能100bによって登録する。
【0034】
ステップS604におけるファンド販売事業者20からの取扱い申請の要求に対し、当該ファンド販売事業者20に販売を委ねてもよいと判断すれば、ファンド販売事業者20から受領する手数料など諸事項を最終的に決定して報告する(ステップS608)。
【0035】
その後は、ファンド販売事業者20による投資家への販売募集が開始される(ステップS609)。各ファンド販売事業者20は、ファンド全体の応募口数に到達するまで各自の顧客である投資家へ販売することが可能である。どのファンド販売事業者20の投資家に販売されるかは公平性の観点から先着順として決定すればよい。先着順で決定する以外に、例えば連携システム100に対するファンド販売事業者毎の過去の貢献度や実績に応じて、特定のファンド販売事業者に所定の口数分が優先的に販売されるようにしてもよい。
【0036】
このように本願発明は、投資家に対する実際のファンド募集自体は各ファンド販売事業者に委ねている。ファンド発行体10は、現物不動産の調達をはじめとして、さらに投資家の募集及びファンド運営において必要なあらゆる業務を自社ですべて抱え込むことはしない。ファンド発行体10とファンド販売事業者20がそれぞれの役割を分離して本来の事業を遂行しながら、互いに広範囲に不動産物件及び投資家にリーチできることになる。
【0037】
上述したように、各ファンド販売事業者は事前の販売予定分が決められてこれをノルマとして課せられることはないが、販売状況についてはリアルタイムで連携システム100に状況報告する。これを受けて、連携システム100の状況把握機能100fがファンドの売れ行きを一元管理する(ステップS610)。各ファンド販売事業者の販売状況をオンラインでリアルタイムに把握することで、各ファンド販売事業者の最終的な販売口数をある程度予測することが可能である。例えば、募集開始から募集終了までの期間の半分以上を経過しているにもかかわらず、総販売口数が所定の割合以下(例えば、10%程度)しか集まらなかった場合、募集終了時点で売れ残る確率が高く、最終的にファンドが不成立してしまうリスクがある。そこで、連携システム100の販売計画調整機能gは、売れ残り口数の予測をして(ステップS611)、売れ残ってしまうと判断すれば販売計画を変更する(ステップS612のYes)。例えば募集の一口を更に小口化しすればより幅広い投資家に販売できると判断した場合、一口あたりの金額を下げるよう計画変更したり、販売量を調整するよう指示する。また必要に応じて、多数の投資家を抱えるファンド販売事業者や売れ行き好調なファンド販売事業者を抽出して、変更後の販売計画を通信回線経由で報告し(ステップS613)、より多くの販売をしてもらうよう依頼する。これらにより、ファンド発行体10の手間も格段に少なくなり、且つ募集ファンドを完売可能に導くことが容易になる。
【0038】
逆に、売れ行きが好調なことがオンラインで把握できれば、当初のファンド募集総口数を増加させたり、募集期間を延長させるというような販売計画をその都度変更又は調整するようにしてもよい。各ファンド販売事業者の販売状況をリアルタイムで的確に把握しているからこそ、販売初期の目標や計画に拘束されることのない柔軟な変更や調整が可能になる。
【0039】
なお、更なる販売を引き受けて追加の投資家を見つけたファンド販売事業者には手数料を低くしたり、次回のファンド募集時で多くの口数を優先的に付与するなどのプラスの報酬を付与し、売れ行きが悪いファンド販売事業者には事業者適格審査において次回のファンド募集への参加を拒否することや、手数料が高くなるなどのマイナスの報酬が与えるようにしてもよい。
【0040】
図6のフローチャートに戻って、総販売数がファンド目標の募集口数に到達すれば当該ファンドが成立する(ステップS614)。その後は連携システム100のファンド運用機能100hにより実際のファンドを運用し、投資家に利益配分したり償却手続きを行う(ステップS615)。ファンド運用自体については本願発明と直接関係しないので説明は省略する。
【0041】
ステップS615でファンド運用が正常に行われることを確認すると、各ファンド販売事業者が最終的に販売した売上数・売上金額等を含む販売実績、及びステップS612及びS613における販売計画の変更の内容及びその結果等を、データベース5へ反映させ(ステップS616)、後の新たなファンド募集に活用できるようにする。
【0042】
(第2の実施形態)
第1の実施形態の連携システム100の場合は、一のファンド発行体10によるファンドの募集に対して、複数のファンド販売事業者20が競合しながら販売するという構成である。これに対し、第2の実施形態の連携システム200の場合は、図7に示すとおり、ファンド発行体10も複数存在し、複数のファンド発行体10と複数のファンド販売事業者20とをオンラインで横断的にマッチングさせる構成である。また、第2の実施形態の連携システム200の機能的な特徴は、第1の実施形態の連携システム100の機能の追加機能としてマッチング機能200eを更に備えていることである。
【0043】
ファンド販売事業者20からすると、第2の実施形態のような複数のファンド発行体10が存在する場合にどのファンド発行体のファンドが良いのか即座に判断できないことがある。ファンド発行体10からすると、特定のファンド販売事業者に販売してもらうことを回避したい場合があったり、逆に積極的に販売してもらいたいファンド販売事業者があったりする。
【0044】
そこで、マッチング機能200eは、どのファンド発行体10に対して、どのファンド販売事業者20をマッチングさせることが適するかを決定するためのマッチング審査を行う(図8のステップS805)。例えば、或るファンド発行体に対して特定のファンド販売事業者が不適当と判断された場合、当該ファンド販売事業者がファンド取扱い申請をしてファンドの販売を希望していたとしても、取扱い不可となる(ステップS806のNo)。また、適すると判断されたファンド販売事業者は、ファンド取扱いが可能になる他に、例えば多数の口数を販売できる優先枠が付与されたり、手数料を低くする等の優遇措置を享受できるようにしてもよい(ステップS808)。
【0045】
そのため、連携システム200はステップS805のマッチング処理の前までに、ファンド発行体10から、自身の事業者としての許認可等に適合するファンド販売事業者基準や、ファンド販売事業者の資本金やファンド販売事業者として販売可能な最大口数・最小口数、仲介し得る投資家の属性や投資家数など、業務提携にあたりファンド販売事業者に望む若しくは課すべき基準についてあらかじめ設定しておいてもらう。
【0046】
ファンド販売事業者20からも、自身の事業者としての許認可等に適合するファンド発行体基準であったり、仲介可能な投資家層の属性や予想する販売可能な最大口数及び最小口数、販売する上で得意な立地・用途などをあらかじめ設定しておいてもらう。自身の仲介事業としてのブランディング又はファンド発行体に求めるブランディングも必要に応じて設定してもよい。さらに、仲介可能な投資家の属性に対応する物件の用途・規模・品格など、業務提携にあたりファンド発行体に望む若しくは課すべき基準についても設定しておいてもらう。
【0047】
連携システム200のマッチング機能200eは、ファンド発行体10及びファンド販売事業者20から設定された上記情報をマッチング変数として、一致するマッチング変数を有する相手がいるか否かを実際の物件の用途・規模・品格も総合的に勘案しながら審査し、各ファンドに対して1以上のファンド販売事業者20を販売取扱い先として選出する。複数のマッチング変数のうちどれを優先にするか、すなわちマッチング変数に付与した重み値の割合に基づく加重平均値から選出することも可能である。
【0048】
マッチング処理により、ファンド発行体10にとって自社のファンドがターゲットにしたい投資家層を抱えるファンド販売事業者20を優先的に選択し、一方でファンド販売事業者20にとって自社の抱える投資家の特性や自社ブランディングに適したファンドを取り扱っているファンド発行体10を優先的に選択し、双方の事業者にとって納得のいく効率的な販売が可能になる。さらに、このマッチング処理は、販売計画調整機能gにおける販売計画の変更や調整をする際の相手方の選出や調整内容の決定に有用となる。
【0049】
マッチング処理の一例を示す。
いま、ファンド発行体A、ファンド発行体B、ファンド販売事業者X、ファンド販売事業者Y、ファンド販売事業者Zが連携システム200に接続しているとする。ファンド販売事業者Xの抱える投資家層がハイリスク・ハイリターンを選考する傾向であり、ファンド販売事業者Yの抱える投資家層がミドルリスク・ミドルリターンを選考する傾向であり、ファンド販売事業者Zの抱える投資家層がローリスク・ローリターンを選考する傾向であることを示す値をリスク選考変数に設定しているとする。ファンド発行体Aから提供された不動産ファンドがその規模や期待利回り等に基づきローリスク・ローリターン型のファンドである場合、マッチング機能200eはファンド販売事業者Zを販売取扱い先として選出し、ファンド販売事業者X,Yは取扱い不可とされる。
【0050】
また、ファンド発行体Aから募集された不動産物件1がファミリー用の区分所有賃貸マンションである場合、投資家層として独身者が多い投資家を抱えるファンド販売事業者Xよりも、所帯持ちの投資家を抱えるファンド販売事業者Zが販売できる優先枠を設定する。
【0051】
第1及び第2の実施形態の連携システム100,200によれば、ファンド発行体とファンド販売事業者の連携が幅広い選択肢の中から選択された結果で実現される。ファンド発行体は自社又は提携先のファンド販売事業者以外のファンド販売事業者に紐づく投資家層というように、これまで想定できなかった投資家層にまで販売のリーチが実現され、投資家の需要にあわせた不動産物件の提供や、ファンド資金の調達機会を格段に増大させることが可能である
【0052】
また、連携システム200は、ファンド発行体及びファンド販売事業者からネットワークを介したオンラインマッチングのためのマッチング変数を取得しているので、双方が望む条件を満たす相手先の事業者を認識又は判別しやすくなり、適切なマッチング結果を生み出すことができる。これにより、ファンド募集時の販売の効率性を向上させ、ひいてはそのマッチングにより得られるデータを分析して新しい価値をもたせるキュレーションを実現することも可能となる。
【0053】
図9は、連携システム100、200が備えるサーバ50のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
サーバ50は、CPU501と、ROM502と、RAM503と、バス504と、入出力インタフェース505と、入力部506と、出力部507と、記憶部508と、通信部509と、ドライブ510とを備えている。
【0054】
CPU501は、ROM502に記録されているプログラム、又は、記憶部508からRAM503にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM503には、CPU501が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。
【0055】
CPU501、ROM502及びRAM503は、バス504を介して相互に接続されている。このバス504にはまた、入出力インタフェース505も接続されている。入出力インタフェース505には、入力部506、出力部507、記憶部508、通信部509及びドライブ510が接続されている。
【0056】
入力部506は、例えばキーボード等により構成され、各種情報を入力する。
出力部507は、液晶等のディスプレイやスピーカ等により構成され、各種情報を画像や音声として出力する。
記憶部508は、DRAM等で構成され、各種データを記憶する。
通信部509は、インターネットなどの通信ネットワークを介して他の装置との間で通信を行う。
【0057】
ドライブ510には、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリ等よりなる、リムーバブルメディア511が適宜装着される。ドライブ510によってリムーバブルメディア511から読み出されたプログラムは、必要に応じて記憶部508にインストールされる。また、リムーバブルメディア511は、記憶部508に記憶されている各種データも、記憶部508と同様に記憶することができる。
なお、本ハードウェア構成は、本発明の目的を達成するための例示に過ぎず、特に限定されない。
【0058】
ファンド発行体10の端末及びファンド販売事業者20の端末も、図7に示すハードウェア構成と基本的に同様の構成を有することができる。したがって、ファンド発行体10の端末及びファンド販売事業者20の端末のハードウェア構成についての説明は省略する。
【0059】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものとみなす。
【0060】
また、上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。このようなプログラムを含む記録媒体は、ユーザにプログラムを提供するために装置本体とは別に配布される図示せぬリムーバブルメディアにより構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体等で構成される。
【0061】
したがって、本発明は、CD-ROM等の光学ディスク、磁気ディスク、半導体メモリなどの各種の記録媒体を通じて、又は通信ネットワークなどを介してダウンロードすることにより、コンピュータにインストール又はロードしたプログラム、及びこれら記憶媒体を発明の範疇として含む。なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【符号の説明】
【0062】
1 不動産物件
2 投資家
3 投資家
4 通信回線
5 データベース
10 ファンド発行体
20 ファンド販売事業者
50 サーバ
100 事業者連携システム(連携システム)
200 事業者連携システム(連携システム)
【要約】
【課題】投資型クラウドファンディングで提供するファンド商品の販売に関して、ノルマとなる販売予定分を予め決定することなく任意のファンド販売事業者が販売受託先として参加できる仕組みを提供し、ファンド発行体と販売事業者をオンライン上で最適にマッチングすることを目的とする。
【解決手段】ファンドの募集に対し、複数の任意のファンド販売事業者がネットワークを介して参加し、各ファンド販売事業者の販売状況をシステムがリアルタイムで把握しながら管理する。各ファンド販売事業者は事前の販売予定分に縛られることなく参加できるため、ファンド販売事業者として少数の販売であっても希望する自分の顧客への販売が可能である。複数のファンド発行体と複数のファンド販売事業者とをオンラインで横断的に連携させる際に、マッチング変数に基づき適合する相手方を優先的に選出してマッチングする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9