(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】シール装置
(51)【国際特許分類】
F15B 15/14 20060101AFI20231127BHJP
F16J 15/3204 20160101ALI20231127BHJP
F16J 15/3252 20160101ALI20231127BHJP
F16J 15/3272 20160101ALI20231127BHJP
【FI】
F15B15/14 355A
F16J15/3204 101
F16J15/3252
F16J15/3272
(21)【出願番号】P 2018237721
(22)【出願日】2018-12-19
【審査請求日】2021-11-08
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年1月18日に、ゴミ処理場(パンカラン5番通り、チカティウディン村、バンタルグバン地区、ブカシ市17153、西ジャワ、インドネシア)で行われた試験において公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星野 宜夫
(72)【発明者】
【氏名】小高 久寿
(72)【発明者】
【氏名】安喰 賢一
(72)【発明者】
【氏名】中村 孝史
(72)【発明者】
【氏名】阿部 良行
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開昭47-035450(JP,A)
【文献】特開2013-139850(JP,A)
【文献】実公昭41-007441(JP,Y1)
【文献】実開昭49-015334(JP,U)
【文献】特開2018-063047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/14
F16J 15/3204
F16J 15/3252
F16J 15/3272
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧シリンダのシリンダヘッドよりも伸張方向側において前記油圧シリンダのロッドの外周に配置され、対向する一対の第1対向面を有する環状のシールと、
前記シールの外周に配置される保持部材と、
前記保持部材の外周に配置され、前記保持部材の外面に接触し、収縮方向に向かって内径が大きくなるテーパ状の内面を有する固定部材と、
を備えるシール装置。
【請求項2】
前記固定部材が前記保持部材の外周に配置された状態で、一対の前記第1対向面は密着する、
請求項1に記載のシール装置。
【請求項3】
前記保持部材の外面は、前記収縮方向に向かって外径が大きくなるテーパ状である、
請求項1又は請求項2に記載のシール装置。
【請求項4】
前記保持部材は、対向する一対の第2対向面を有する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のシール装置。
【請求項5】
前記固定部材が前記保持部材の外周に配置された状態で、一対の前記第2対向面は密着する、
請求項4に記載のシール装置。
【請求項6】
前記保持部材は、前記シールの外周の一部に配置され、第1端面及び第2端面を有する第1保持部材と、前記シールの外周の一部に配置され、前記第1端面に対向する第3端面及び前記第2端面に対向する第4端面を有する第2保持部材と、を含み、
一対の前記第2対向面は、前記第1端面及び前記第3端面と、前記第2端面及び前記第4端面とのそれぞれを含む、
請求項4又は請求項5に記載のシール装置。
【請求項7】
前記固定部材は、ボルトにより前記シリンダヘッドに着脱可能に接続される、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のシール装置。
【請求項8】
油圧シリンダのシリンダヘッドよりも伸張方向側において前記油圧シリンダのロッドの外周に配置され、対向する一対の第1対向面を有するシールと、
前記シリンダヘッドに着脱可能に接続され、一対の前記第1対向面が密着するように前記シールを保持する保持部材と、
前記保持部材の外周に配置され、前記保持部材の外面に接触し、収縮方向に向かって内径が大きくなるテーパ状の内面を有する固定部材と、を備え、
前記シールは、前記ロッドの外面に接触するリップ部と、前記ロッドの中心軸の半径方向において前記リップ部よりも外側に配置される外環部とを有し、
前記第1対向面は、前記リップ部に形成された対向面及び前記外環部に形成された対向面を含み、
前記リップ部及び前記外環部のそれぞれは、弾性体であり、
前記シールは、前記外環部に埋まる金属製のアウターリングを有する、
シール装置。
【請求項9】
前記保持部材は、前記シールの外周に配置され、前記シールを保持する第1保持部材と、前記第1保持部材の外周に配置される第2保持部材と、を含む、
請求項
8に記載のシール装置。
【請求項10】
前記保持部材が前記シールの周囲に配置された状態で、一対の前記第1対向面は密着する、
請求項
9に記載のシール装置。
【請求項11】
前記シールは、前記ロッドの外面に接触するリップ部と、前記ロッドの中心軸の半径方向において前記リップ部よりも外側に配置される外環部とを有し、
前記第1対向面は、前記リップ部に形成された対向面及び前記外環部に形成された対向面を含む、
請求項1から請求項
7のいずれか一項に記載のシール装置。
【請求項12】
前記リップ部及び前記外環部のそれぞれは、弾性体であり、
前記シールは、前記外環部に固定される金属製のアウターリングを有する、
請求項
11に記載のシール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、油圧シリンダのシール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械は、作業機と、作業機を作動させるために伸縮する油圧シリンダとを備える。油圧シリンダは、油圧シリンダのシリンダヘッドとロッドとの境界をシールするシール装置を備える。シール装置は、油圧シリンダの内部空間の作動油が油圧シリンダの外部空間に漏出したり、油圧シリンダの外部空間の異物が油圧シリンダの内部空間に侵入したりすることを抑制する。油圧シリンダの外部空間の異物が油圧シリンダの内部空間に侵入することを抑制するダストシールの一例が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ダストシールは、異物と頻繁に接触するため劣化し易い。ダストシールが劣化した場合、新たなダストシールに交換される。ダストシールの交換頻度が高い場合、交換作業に要する時間が長くなると、油圧シリンダを備えた建設機械の稼働率が低下する。そのため、ダストシールを短時間で交換できる技術が要望される。
【0005】
本開示は、ダストシールのようなシールを短時間で交換することができるシール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従えば、油圧シリンダのシリンダヘッドよりも伸張方向側において前記油圧シリンダのロッドの外周に配置され、対向する一対の第1対向面を有する環状のシールと、前記シールの外周に配置される保持部材と、前記保持部材の外周に配置され、前記保持部材の外面に接触し、収縮方向に向かって内径が大きくなるテーパ状の内面を有する固定部材と、を備えるシール装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、シールを短時間で交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る油圧シリンダの一部を示す断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る油圧シリンダの一部を示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るダストシールを示す平面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るダストシールを示す正面図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るダストシールを示す断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る保持部材を示す正面図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る保持部材を示す断面図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係るシール装置の交換方法を説明するための図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係るシール装置の交換方法を説明するための図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係るシール装置の交換方法を説明するための図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係るシール装置の一部を模式的に示す断面図である。
【
図12】
図12は、実施形態に係るシール装置の一部を拡大した断面図である。
【
図13】
図13は、実施形態に係るダストシール及び保持部材の一部を示す正面図である。
【
図14】
図14は、実施形態に係るダストシール及び保持部材の一部を示す正面図である。
【
図15】
図15は、実施形態に係るシール装置の一部を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0010】
[油圧シリンダ]
図1は、実施形態に係る油圧シリンダ1の一部を示す断面図である。
図2は、実施形態に係る油圧シリンダ1の一部を示す分解斜視図である。
図1及び
図2に示すように、油圧シリンダ1は、シリンダチューブ2と、シリンダチューブ2に接続されるシリンダヘッド3と、シリンダヘッド3に接続されるハウジング4と、シリンダチューブ2、シリンダヘッド3、及びハウジング4に対して移動可能なロッド5と、シリンダヘッド3及びハウジング4の少なくとも一方とロッド5との境界をシールするシール装置6とを備える。
【0011】
シリンダチューブ2、シリンダヘッド3、及びハウジング4のそれぞれは、実質的に円筒状又は円環状の部材である。ロッド5は、実質的に円柱状の部材である。シリンダチューブ2の中心軸とシリンダヘッド3の中心軸とハウジング4の中心軸とロッド5の中心軸とは、実質的に一致する。以下の説明においては、シリンダチューブ2の中心軸、シリンダヘッド3の中心軸、ハウジング4の中心軸、及びロッド5の中心軸を適宜、中心軸AX、と総称する。
【0012】
また、以下の説明においては、中心軸AXに平行な方向を適宜、軸方向、と称し、中心軸AXの放射方向を適宜、半径方向、と称し、中心軸AXを中心とする回転方向を適宜、周方向、と称する。
【0013】
ロッド5は、シリンダチューブ2から抜去されるように又はシリンダチューブ2に挿入されるように、軸方向に移動する。ロッド5がシリンダチューブ2から抜去されることにより、油圧シリンダ1は伸張する。ロッド5がシリンダチューブ2に挿入されることにより、油圧シリンダ1は収縮する。以下の説明において、油圧シリンダ1が伸張するようにロッド5が移動する方向を適宜、伸張方向、と称し、油圧シリンダ1が収縮するようにロッド5が移動する方向を適宜、収縮方向、と称する。伸張方向は、ロッド5がシリンダチューブ2に近付く方向を含む。収縮方向は、ロッド5がシリンダチューブ2から離れる方向を含む。
【0014】
シリンダチューブ2は、油圧シリンダ1の内部空間を規定する。シリンダチューブ2の伸張方向側の端面にシリンダヘッド3が接続される。シリンダチューブ2の収縮方向側の端面にボトム(不図示)が接続される。シリンダチューブ2は、ロッド5の他端部に連結されるピストン(不図示)を移動可能に支持する。ピストンは、シリンダチューブ2の内部空間をヘッド室とボトム室とに区画する。油圧シリンダ1の伸縮動作に対応して、ボトム室又はヘッド室に作動油が供給される。
【0015】
シリンダヘッド3は、ロッド5を移動可能に支持する。シリンダヘッド3は、シリンダチューブ2の伸張方向側の端面に接続される。シリンダチューブ2とシリンダヘッド3とは固定される。
【0016】
ハウジング4は、シール装置6の少なくとも一部を保持する。ハウジング4は、シリンダヘッド3の伸張方向側の端面に接続される。ハウジング4は、複数のボルト11によりシリンダヘッド3に着脱可能に接続される。シリンダヘッド3とハウジング4とは固定される。
【0017】
ロッド5は、中心軸AXの軸方向に移動可能である。ロッド5は、シリンダヘッド3の内面に摺動可能に支持される。ロッド5の一端部に円環状のロッドヘッド5Aが設けられる。ロッド5は、ロッドヘッド5Aを介して、建設機械の作業機に連結される。
【0018】
[シール装置]
シール装置6は、シリンダヘッド3の内面及びハウジング4の内面の少なくとも一方とロッド5の外面との境界をシールするロッドシール装置である。シール装置6は、油圧シリンダ1の外部空間の異物が油圧シリンダ1の内部空間に侵入することを抑制する。シール装置6は、油圧シリンダ1の内部空間の作動油が油圧シリンダ1の外部空間に漏出することを抑制する。
【0019】
シール装置6は、ロッドシール7と、ダストシール8と、ダストシール8の外周に配置される保持部材9と、保持部材9の外周に配置される固定部材10とを有する。
【0020】
ロッドシール7は、油圧シリンダ1の内部空間の作動油が油圧シリンダ1の外部空間に漏出することを抑制する。ロッドシール7は、円環状の部材である。ロッドシール7は、シリンダヘッド3の内面とロッド5の外面との間に配置される。ロッドシール7は、シリンダヘッド3に保持される。ロッドシール7の少なくとも一部は、ロッド5の外面に接触する。実施形態において、ロッドシール7は、軸方向に配置されるロッドシール71及びロッドシール72を含む。ロッドシール71は、ロッドシール72よりも伸張方向側に配置される。
【0021】
ロッドシール7が2つのロッドシール71,72を含むことにより、油圧シリンダ1の内部空間の作動油が油圧シリンダ1の外部空間に漏出することが抑制される。なお、ロッドシール7は、シリンダヘッド3とロッド5との間に1つだけ設けられてもよいし、3つ以上の任意の数設けられてもよい。
【0022】
ダストシール8は、油圧シリンダ1の外部空間の異物が油圧シリンダ1の内部空間に侵入することを抑制する。ダストシール8は、円環状の部材である。ダストシール8は、ロッド5の外周に配置される。ダストシール8は、ロッドシール7よりも伸張方向側に配置される。ダストシール8は、シリンダヘッド3よりも伸張方向側において、ロッド5の外周に配置される。ダストシール8の少なくとも一部は、ロッド5の外面に接触する。実施形態において、ダストシール8は、軸方向に配置されるダストシール81及びダストシール82を含む。ダストシール81は、ダストシール82よりも伸張方向側に配置される。
【0023】
ダストシール81の少なくとも一部は、ハウジング4よりも伸張方向側に配置される。ダストシール81は、保持部材9の内面とロッド5の外面との間に配置される。ダストシール81は、保持部材9に保持される。ダストシール82は、ハウジング4の内面とロッド5の外面との間に配置される。ダストシール82は、ハウジング4に保持される。
【0024】
ダストシール8が2つのダストシール81,82を含むことにより、油圧シリンダ1の外部空間の異物が油圧シリンダ1の内部空間に侵入することが抑制される。なお、ダストシール82は、省略されてもよいし、複数設けられてもよい。例えば、ダストシール82がハウジング4とロッド5との間に1つ又は複数設けられてもよいし、シリンダヘッド3とロッド5との間に1つ又は複数設けられてもよい。
【0025】
図2に示すように、ダストシール81は、一対の第1対向面156A,156Bを有する。円環状のダストシール81の一部を切断することによって、一対の第1対向面156A,156Bが形成される。ダストシール81の一対の第1対向面156A,156Bが接続されることにより、円環状のダストシール81が形成される。
【0026】
保持部材9は、ダストシール81を保持する。保持部材9は、円環状の部材である。保持部材9は、ハウジング4よりも伸張方向側において、ダストシール81の外周に配置される。
【0027】
保持部材9は、ダストシール81の外周の一部に配置される第1保持部材9Aと、ダストシール81の外周の一部に配置される第2保持部材9Bとを含む。第1保持部材9A及び第2保持部材9Bのそれぞれは、円弧状の部材である。円環状の保持部材9を半分に切断することによって、第1保持部材9A及び第2保持部材9Bのそれぞれが形成される。円環状の保持部材9を半分に切断するとは、保持部材9の中心軸を通り、保持部材9の中心軸と平行な面において切断することをいう。第1保持部材9Aと第2保持部材9Bとが接続されることにより、円環状の保持部材9が形成される。保持部材9は、例えば黄銅のような金属製である。
【0028】
固定部材10は、ダストシール81及び保持部材9を保持する。固定部材10は、ダストシール81及び保持部材9をハウジング4に固定する。固定部材10は、実質的に円環状の部材である。固定部材10は、ハウジング4よりも伸張方向側において、保持部材9の外周に配置される。固定部材10は、例えば鉄鋼のような金属製である。
【0029】
固定部材10は、ハウジング4の伸張方向側の端面に接続される。固定部材10は、複数のボルト12により、ハウジング4に着脱可能に接続される。すなわち、固定部材10は、ボルト12により、ハウジング4を介してシリンダヘッド3に着脱可能に接続される。ハウジング4と固定部材10とは固定される。固定部材10がハウジング4に固定されることにより、固定部材10に保持されているダストシール81及び保持部材9がハウジング4に固定される。
【0030】
固定部材10は、保持部材9の外面22に対向する内面31と、外面32と、外面32から中心軸AXの半径方向外側に突出する複数の凸部10Bと、凸部10Bのそれぞれに設けられる孔10Aとを有する。ボルト12の軸部の少なくとも一部は、孔10Aに配置される。ボルト12の先端部にねじ山が設けられる。ハウジング4に孔4Aが設けられる。シリンダヘッド3にも孔(不図示)が設けられる。シリンダチューブ2の伸長方向側の端面にねじ溝を有するねじ孔が設けられる。ボルト12の先端部は、固定部材10の孔10A、ハウジング4の孔4A、及びシリンダヘッド3の孔を介して、シリンダチューブ2のねじ孔に挿入される。ボルト12のねじ山とシリンダチューブ2のねじ孔のねじ溝とが結合されることにより、固定部材10は、ハウジング4、シリンダヘッド3、及びシリンダチューブ2に固定される。ボルト12のねじ山とシリンダチューブ2のねじ孔のねじ溝との結合が解除されることにより、固定部材10は、ハウジング4から外される。
【0031】
保持部材9の外面22は、中心軸AXの半径方向外側を向く。固定部材10の内面31は、中心軸AXの半径方向内側を向く。固定部材10の外面32は、中心軸AXの半径方向外側を向く。固定部材10の内面31は、保持部材9の外面22に接触する。固定部材10の内面31は、収縮方向に向かって内径が大きくなるテーパ状である。保持部材9の外面22は、収縮方向に向かって外径が大きくなるテーパ状である。
【0032】
[ダストシール]
図3は、実施形態に係るダストシール81を示す平面図である。
図4は、実施形態に係るダストシール81を示す正面図である。
図5は、実施形態に係るダストシール81を示す断面図である。
【0033】
図3、
図4、及び
図5に示すように、ダストシール81は、シールリング13と、アウターリング14とを含む。シールリング13とアウターリング14とは一体である。
【0034】
シールリング13は、円環状の部材である。シールリング13は、弾性体である。シールリング13は、ゴム製である。シールリング13を形成する材料として、ウレタンゴム、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、水素化ニトリルブタジエンゴム(HNBR)、シリコンゴム、及びフッ素ゴムの少なくとも一つが例示される。なお、シールリング13は、合成樹脂製でもよい。
【0035】
シールリング13は、少なくとも一部がロッド5の外面に接触するリップ部13Aと、中心軸AXの半径方向においてリップ部13Aよりも外側に配置される外環部13Bとを有する。リップ部13Aは、外環部13Bから伸長方向側に向かって中心軸AXに接近するように延在する。リップ部13A及び外環部13Bのそれぞれは、弾性体である。
【0036】
アウターリング14は、円環状の部材である。アウターリング14は、金属製である。アウターリング14を形成する材料として、冷間圧延鋼板のような鉄鋼又はステンレス鋼が例示される。アウターリング14により、ダストシール81の剛性及び強度が維持される。
【0037】
アウターリング14は、円筒部14Aと、中心軸AXの半径方向において円筒部14Aよりも内側に配置されるフランジ部14Bとを有する。フランジ部14Bは、円筒部14Aの伸張方向側の端部から半径方向内側に突出するように設けられる。アウターリング14の円筒部14Aの外面42(
図5参照)は、保持部材9の内面21(
図7参照)に接触する。
【0038】
外環部13Bの少なくとも一部は、半径方向において円筒部14Aよりも内側に配置される。アウターリング14は、外環部13Bに固定される。フランジ部14Bは、外環部13Bに埋まるように配置される。すなわち、外環部13Bは、金属製のアウターリング14を含む。リップ部13Aにアウターリング14は存在しない。
【0039】
ダストシール81は、ロッド5の外面に対向する内面41と、内面41の反対方向を向く外面42と、伸長方向側を向く端面43と、ロッド5の外面に接触する先端部44とを有する。
【0040】
ダストシール81の外面42は、半径方向外側を向く。外面42は、円筒部14Aの外面及び外環部13Bの外面を含む。端面43は、中心軸AXに平行な軸方向において伸張方向側を向く。端面43は、外環部13Bの表面を含む。先端部44は、リップ部13Aに配置される。シリンダヘッド3及びハウジング4に対してロッド5が軸方向に移動するとき、リップ部13Aの先端部44がロッド5の外面に密着した状態を維持しながら摺動する。
【0041】
図3及び
図4に示すように、ダストシール81の一部は切断されている。ダストシール81は、対向する一対の第1対向面156A,156Bを有する。第1対向面156Aは、リップ部13Aに形成された対向面15A及び外環部13Bに形成された対向面16Aを含む。第1対向面156Bは、リップ部13Aに形成された対向面15B及び外環部13Bに形成された対向面16Bを含む。
【0042】
ダストシール81は、リップ部13Aに形成された分離部15と、アウターリング14を含む外環部13Bに形成された分離部16とを有する。
【0043】
分離部15は、リップ部13Aの周方向において1箇所に形成される。上述ように、リップ部13Aは、ゴムのような弾性体で形成される。分離部15は、刃厚の薄いもの例えばナイフのような第1工具を用いてリップ部13Aを切断することにより形成される。分離部15が形成されることにより、リップ部13Aには、対向する一対の対向面15A,15Bが形成される。分離部15の間隙(切り代)の寸法W1は、実質的に零である。第1工具によるリップ部13Aの切断後において、一方の対向面15Aと他方の対向面15Bとは接触する。なお、第1工具によるリップ部13Aの切断後において、一方の対向面15Aと他方の対向面15Bとは離れていてもよい。
【0044】
分離部16は、外環部13Bの周方向において2箇所に形成される。2箇所の分離部16は、中心軸AXを通過する1本の線上に形成される。すなわち、2箇所の分離部16は、中心軸AXを介して対向する位置に形成される。上述のように、外環部13Bは、金属製のアウターリング14を含む。分離部16は、刃厚の厚いもの例えば砥石のような第2工具を用いてアウターリング14を含む外環部13Bを切断することにより形成される。分離部16が形成されることにより、アウターリング14を含む外環部13Bには、対向する一対の対向面16A,16Bが形成される。第2工具による外環部13Bの切断後において、一方の対向面16Aと他方の対向面16Bとは間隙を介して対向する。分離部16の間隙の寸法W2は、例えば1[mm]である。金属性のアウターリング14が第2工具で切断されるので、寸法W2の切り代が形成される。
【0045】
ダストシール81の周方向において、分離部15は、2つの分離部16のうち一方の分離部16と実質的に同一位置に形成される。第1対向面156Aは、ダストシール81の周方向において実質的に同一位置に形成された対向面15A及び対向面16Aを含む。第1対向面156Bは、ダストシール81の周方向において実質的に同一位置に形成された対向面15B及び対向面16Bを含む。
【0046】
分離部16は2箇所に形成されるものの、分離部15は1箇所に形成される。ダストシール81は分離されない。
図2に示したように、ダストシール81は、円弧状の形状を維持したまま、容易に変形可能である。
【0047】
[保持部材]
図6は、実施形態に係る保持部材9を示す正面図である。
図7は、実施形態に係る保持部材9を示す断面図である。保持部材9は、円環状の部材である。保持部材9は、金属製である。保持部材9を形成する材料として、黄銅が例示される。
【0048】
図6に示すように、保持部材9の一部は切断されている。保持部材9は、分離部17を有する。分離部17は、保持部材9の周方向において2箇所に形成される。2箇所の分離部17は、中心軸AXを通過する1本の線上に形成される。すなわち、2箇所の分離部17は、中心軸AXを介して対向する位置に形成される。上述のように、保持部材9は、黄銅のような金属製である。分離部17は、例えば砥石のような第3工具を用いて保持部材9を切断することにより形成される。分離部17が形成されることにより、保持部材9には、対向する一対の第2対向面17A,17Bが形成される。第3工具による保持部材9の切断後において、一方の第2対向面17Aと他方の第2対向面17Bとは間隙を介して対向する。分離部17の間隙の寸法W3は、例えば1[mm]である。
【0049】
円環状の保持部材9が2箇所で切断されることにより、円弧状の第1保持部材9A及び円弧状の第2保持部材9Bが形成される。第1保持部材9Aの外形及び寸法と第2保持部材9Bの外形及び寸法とは切断面を基準に対称である。第1保持部材9Aは、中心軸AXの周方向において第1保持部材9Aの一方側に配置される第1端面91と、中心軸AXの周方向において第1保持部材9Aの他方側に配置される第2端面92とを有する。第2保持部材9Bは、中心軸AXの周方向において第2保持部材9Bの一方側に配置される第3端面93と、中心軸AXの周方向において第2保持部材9Bの他方側に配置される第4端面94とを有する。第1端面91と第3端面93とは対向する。第2端面92と第4端面94とは対向する。
【0050】
対向する一対の第2対向面17A,17Bは、第1保持部材9Aの第1端面91及び第2保持部材9Bの第3端面93を含む。対向する一対の第2対向面17A,17Bは、第1保持部材9Aの第2端面92及び第2保持部材9Bの第4端面94を含む。
【0051】
図7に示すように、保持部材9は、ダストシール81の外周に配置される第1円筒部95と、ダストシール81の外周に配置され、第1円筒部95よりも収縮方向側に配置される第2円筒部96と、ダストシール81の外環部13Bよりも伸張方向側に配置される支持部97とを有する。
【0052】
また、保持部材9は、ダストシール81の外面42に対向する内面21と、固定部材10の内面31に対向する外面22と、ハウジング4の内面に対向する外面23と、ダストシール81の伸張方向側の端面43に対向する支持面24とを有する。
【0053】
固定部材10の内面31に対向する保持部材9の外面22は、収縮方向側に向かって外径が大きくなるテーパ状である。
【0054】
ハウジング4の内面に対向する保持部材9の外面23の外径は、外面22の外径よりも小さい。外面23は、第2円筒部96に配置される。第2円筒部96は、ハウジング4の内側に嵌ることができる。外面22は、第1円筒部95に配置される。第2円筒部96がハウジング4の内側に嵌った状態で、第1円筒部95は、ハウジング4よりも伸張方向側に配置される。
【0055】
[交換方法]
次に、シール装置6の交換方法について説明する。
図8、
図9、及び
図10のそれぞれは、実施形態に係るシール装置6の交換方法を説明するための図である。
【0056】
はじめに、ダストシール81を油圧シリンダ1に取り付ける方法について説明する。
図8に示すように、ロッド5の外周にダストシール81が配置され、ダストシール81の外周に保持部材9が配置される。作業者は、リップ部13Aに設けられた一対の第1対向面156A,156Bを有するダストシール81を、一対の第1対向面156A,156Bが対向するように、シリンダヘッド3及びハウジング4よりも伸張方向側において、ロッド5の外周に配置する。ダストシール81は、周方向において実質的に同一位置に設けられた分離部15及び分離部16を有する。そのため、作業者は、油圧シリンダ1が建設機械に搭載されている状態、且つ、ロッド5の少なくとも一部がシリンダチューブ2に挿入されている状態で、ロッド5の外周にダストシール81を容易に配置することができる。
【0057】
ロッド5の外周にダストシール81を配置した後、作業者は、油圧シリンダ1が建設機械に搭載されている状態、且つ、ロッド5の少なくとも一部がシリンダチューブ2に挿入されている状態で、ダストシール81の外周に保持部材9を配置する。ロッドヘッド5Aが大きいため、環状で一体の部材がそのまま取り付け及び取り外しができない。作業者は、第1保持部材9Aの第1端面91と第2保持部材9Bの第3端面93とが対向し、第1保持部材9Aの第2端面92と第2保持部材9Bの第4端面94とが対向するように、ダストシール81の外周に第1保持部材9A及び第2保持部材9Bを配置する。保持部材9は、第1保持部材9Aと第2保持部材9Bとに分割されている。そのため、作業者は、ロッド5の少なくとも一部がシリンダチューブ2に挿入されている状態で、ダストシール81の外周に保持部材9を容易に配置することができる。
【0058】
次に、
図9に示すように、保持部材9の外周に固定部材10が配置される。固定部材10は、ダストシール81及び保持部材9よりも伸張方向側において、ロッド5の外周に予め配置されている。作業者は、保持部材9及びダストシール81に対して固定部材10を収縮方向側に移動する。これにより、固定部材10の内側に保持部材9が配置され、固定部材10の内面31と保持部材9の外面22とが接触する。
【0059】
図10に示すように、固定部材10がボルト12によりハウジング4に固定される。作業者は、固定部材10の孔10A、ハウジング4の孔4A、及びシリンダヘッド3の孔を介して、シリンダチューブ2のねじ孔にボルト12の先端部を挿入した後、ボルト12の先端部のねじ山とシリンダチューブ2のねじ孔のねじ溝とが結合されるように、ボルト12を操作する。これにより、固定部材10がハウジング4に固定される。
【0060】
図11は、実施形態に係るシール装置6の一部を模式的に示す断面図である。
図12は、実施形態に係るシール装置6の一部を拡大した断面図である。
【0061】
保持部材9の外面22のテーパ角度θaは、固定部材10の内面31のテーパ角度θbと実質的に同一である。なお、テーパ角度θaがテーパ角度θbよりも大きくてもよいしテーパ角度θbよりも小さくてもよい。テーパ角度θaとは、中心軸AXに平行な仮想線と外面22とがなす内角の角度をいう。テーパ角度θbとは、中心軸AXに平行な仮想線と内面31とがなす外角の角度をいう。
【0062】
保持部材9の外面22の外径Waは、固定部材10の内面31の内径Wbと実質的に同一である。なお、外径Waは、内径Wbよりも僅かに大きくてもよい。外径Waとは、外面22の外径の最大値をいう。内径Wbとは、内面31の内径の最大値をいう。
【0063】
ボルト12が締め付けられることにより、ボルト12は、軸方向に締付力Faを発生する。締付力Faにより、固定部材10はハウジング4に固定される。実施形態において、固定部材10は、保持部材9の外面22に接触し収縮方向側に向かって内径が大きくなるテーパ状の内面31を有する。したがって、固定部材10の内面31と保持部材9の外面22とを接触させた状態で保持部材9に対して固定部材10を収縮方向側に移動して、固定部材10がハウジング4に固定されるようにボルト12で固定部材10を締め付けることにより、締付力Faの少なくとも一部は、半径方向内側に向かう分力Fbが発生する。分力Fbは、ダストシール81の先端部44がロッド5を締め付ける力を示す緊迫力を含む。収縮方向側に向かって内径が大きくなるテーパ状の内面31を有する固定部材10は、内面31と保持部材9の外面22とを接触させた状態で、保持部材9及びダストシール81に対して収縮方向側に移動することにより、半径方向内側に向かう分力Fbを保持部材9及びダストシール81のそれぞれに与えることができる。ダストシール81に分力Fbが与えられることにより、ダストシール81の一対の第1対向面156A,156Bが密着する。また、保持部材9に分力Fbが与えられることにより、保持部材9の一対の第2対向面17A,17Bが密着する。このように、固定部材10は、一対の第1対向面156A,156Bが密着するように、保持部材9を介してダストシール81に分力Fbを与えることができる。また、固定部材10は、一対の第2対向面17A,17Bが密着するように、保持部材9に分力Fbを与えることができる。固定部材10が保持部材9の周囲に配置された状態で、一対の第1対向面156A,156Bは密着する。固定部材10が保持部材9の周囲に配置された状態で、一対の第2対向面17A,17Bは密着する。
【0064】
固定部材10の内面31が収縮方向側に向かって内径が大きくなるテーパ状なので、ハウジング4に固定された固定部材10に対して保持部材9及びダストシール81が伸張方向側に動いてしまうことが抑制される。また、固定部材10の内面31及び保持部材9の外面22の両方がテーパ状なので、内面31と外面22との接触面積が大きくなる。したがって、固定部材10による保持部材9の固定が安定する。
【0065】
図11に示すように、保持部材9の第2円筒部96がハウジング4の内側に嵌る。また、ダストシール81の端面43と保持部材9の支持面24とが接触する。これにより、ハウジング4と保持部材9との相対位置が固定され、ダストシール81が軸方向に動いてしまうことが抑制される。
【0066】
図13及び
図14のそれぞれは、実施形態に係るダストシール81及び保持部材9の一部を示す正面図である。
図13は、保持部材9及びダストシール81に分力Fbが与えられる前の状態を示す。
図14は、保持部材9及びダストシール81に分力Fbが与えられた後の状態を示す。
【0067】
図13に示すように、保持部材9及びダストシール81に分力Fbが与えられる前の状態においては、外環部13Bの一方の対向面16Aと他方の対向面16Bとは、間隙を介して対向し、保持部材9の一方の第2対向面17Aと他方の第2対向面17Bとは、間隙を介して対向する。
【0068】
図14に示すように、保持部材9及びダストシール81に分力Fbが与えられることにより、ダストシール81の一対の第1対向面156A,156Bが密着し、保持部材9の一対の第2対向面17A,17Bが密着する。これにより、油圧シリンダ1の外部空間の異物が油圧シリンダ1の内部空間に侵入することが抑制される。
【0069】
次に、ダストシール81を油圧シリンダ1から取り外す方法について説明する。作業者は、ボルト12を操作して、ハウジング4からボルト12を外す。ハウジング4からボルト12が外されることにより、固定部材10とハウジング4との固定が解除される。作業者は、保持部材9及びダストシール8に対して固定部材10を伸張方向側に移動する。これにより、固定部材10から保持部材9及びダストシール81が外される。
【0070】
[効果]
以上説明したように、実施形態によれば、対向する一対の第1対向面156A,156Bが形成されるように円環状のダストシール81の一部が切断されていることにより、作業者は、ロッド5がシリンダチューブ2に挿入されている状態で、シリンダヘッド3及びハウジング4よりも伸張方向側において、ロッド5の外周にダストシール81を配置する作業、及びロッド5からダストシール81を外す作業を簡単に実行することができる。
【0071】
ダストシール81が第1対向面156A,156Bを有しない場合、円環状のダストシール81をロッド5の外周に配置したり、円環状のダストシール81をロッド5から外したりするためには、油圧シリンダ1の内部空間から作動油を除去し、シリンダチューブ2からロッド5の全部を抜去する必要が生じる。この場合、ダストシール81の交換作業に要する時間が長くなる。
【0072】
実施形態においては、円環状のダストシール81の一部が切断されているので、シリンダチューブ2からロッド5を抜去することなく、ダストシール81をロッド5の外周に配置する作業及びダストシール81をロッド5から外す作業を簡単に実行することができる。したがって、ダストシール81の交換作業に要する時間が長くなることが抑制される。
【0073】
ダストシール81に金属製のアウターリング14が設けられている場合、ダストシール81の一部を切断したとき、分離部16の寸法W2が大きくなる可能性がある。実施形態においては、テーパ状の内面31を有する固定部材10が、保持部材9を介してダストシール81を保持する。固定部材10は、一方の対向面16Aと他方の対向面16Bとが密着するように、保持部材9を介してダストシール81に分力Fbを与えることができる。そのため、寸法W2を有する分離部16が形成されても、固定部材10によって一方の対向面16Aと他方の対向面16Bとが密着する。したがって、ダストシール81は良好なシール機能を発揮することができる。
【0074】
実施形態において、固定部材10とダストシール81との間に保持部材9が設けられる。保持部材9が設けられることにより、ダストシール81をロッド5に装着するときの作業性が向上する。ダストシール81は変形し易い。作業者は、変形し易いダストシール81を固定部材10にダイレクトに装着させる作業を円滑に実行できない可能性がある。変形し易いダストシール81を保持部材9に保持させた後、保持部材9を固定部材10に保持させることにより、作業者は、作業性良くダストシール81を固定部材10に装着することができる。
【0075】
実施形態において、保持部材9の外面22は、収縮方向側に向かって外径が大きくなるテーパ状である。固定部材10の内面31及び保持部材9の外面22の両方がテーパ状なので、内面31と外面22との接触面積が大きくなる。したがって、固定部材10による保持部材9の固定が安定する。
【0076】
実施形態において、固定部材10は例えば鉄鋼製であり、保持部材9は例えば黄銅製である。保持部材9は固定部材10よりも変形し易い材料で形成される。これにより、保持部材9が固定部材10の内側に挿入されたとき、保持部材9が僅かに変形する。したがって、固定部材10による保持部材9の固定が安定する。
【0077】
実施形態において、保持部材9は、第1保持部材9Aと第2保持部材9Bとに分割される。これにより、作業者は、シリンダチューブ2からロッド5を抜去することなく、保持部材9をダストシール81の外周に配置する作業及び保持部材9をダストシール81から外す作業を簡単に実行することができる。したがって、ダストシール81の交換作業に要する時間が長くなることが抑制される。
【0078】
保持部材9は、金属製である。保持部材9を第1保持部材9Aと第2保持部材9Bとに分割するために保持部材9の一部を切断したとき、分離部17の寸法W3が大きくなる可能性がある。実施形態においては、テーパ状の内面31を有する固定部材10が、保持部材9を保持する。固定部材10は、一方の第2対向面17Aと他方の第2対向面17Bとが密着するように、保持部材9に分力Fbを与えることができる。そのため、寸法W3を有する分離部17が形成されても、固定部材10によって一方の第2対向面17Aと他方の第2対向面17Bとが密着する。したがって、保持部材9は良好なシール機能を発揮することができる。
【0079】
固定部材10は、ボルト12によりハウジング4及びシリンダヘッド3に着脱可能に固定される。ボルト12を操作するだけで、固定部材10をハウジング4に固定する作業及びハウジング4から外す作業を実行できる。そのため、ダストシール81の交換作業に要する時間が長くなることが抑制される。
【0080】
[その他の実施形態]
上述の実施形態において、分離部15はリップ部13Aの1箇所に形成され、分離部16は外環部13Bの2箇所に形成され、ダストシール81は分割されないこととした。ダストシール81は分割されてもよい。例えば、ダストシール81の周方向において2箇所の同一位置のそれぞれに分離部15及び分離部16が形成されてもよい。
【0081】
上述の実施形態において、分離部17は2箇所に設けられ、保持部材9は、第1保持部材9Aと第2保持部材9Bとに分割されることとした。分離部17は1箇所でもよい。保持部材9が変形可能である場合、分離部17が1箇所でも、作業者は、ロッド5の外周に配置する作業及びロッド5から外す作業を円滑に実行することができる。
【0082】
なお、保持部材9に分離部17が形成されなくてもよい。すなわち、保持部材9は、円環状の形状を維持してもよい。ダストシール81の交換作業において、保持部材9は交換されなくてもよい。保持部材9は、ダストシール81の交換作業においても、ロッド5の外周に配置され続けてもよい。
【0083】
上述の実施形態において、保持部材9の外面22は、収縮方向側に向かって外径が大きくなるテーパ状であることとした。保持部材9の外面22は、テーパ状でなくてもよく、例えば中心軸AXに平行でもよい。
【0084】
図15は、他の実施形態に係るシール装置6の一部を拡大した断面図である。上述の実施形態においては、ダストシール81が保持部材9を介して固定部材10に均一に装着されることとした。
図15に示すように、保持部材9が省略されてもよい。すなわち、ダストシール81が固定部材10にダイレクトに装着されてもよい。また、保持部材9が固定部材10と一体でもよい。保持部材9が省略される場合又は保持部材9が固定部材10と一体である場合、固定部材10は、ハウジング4を介してシリンダヘッド3に着脱可能に接続され、対向する一対の第1対向面156A,156Bが密着するようにダストシール81を保持する保持部材として機能する。固定部材10は、ボルト12によりハウジング4を介してシリンダヘッド3に着脱可能に接続される。固定部材10は、ダストシール81の外周に配置され、ダストシール81の外面42に接触し収縮方向側に向かって内径が大きくなるテーパ状の内面31を有する。固定部材10は、内面31とダストシール81の外面42とを接触させた状態で、ダストシール81に対して収縮方向側に移動することにより、対向する一対の第1対向面156A,156Bが密着するようにダストシール81に分力Fbを与えることができる。第1対向面156A,156Bが密着することにより、ダストシール81は、良好なシール機能を発揮する。ダストシール81が固定部材10にダイレクトに装着される場合、ダストシール81の外面42は、収縮方向側に向かって外径が大きくなるテーパ状でもよい。なお、ダストシール81の外面42は、テーパ状でなくてもよく、例えば中心軸AXに平行でもよい。
【0085】
上述の実施形態において、シリンダヘッド3とハウジング4とは一体でもよい。ハウジング4がシリンダヘッド3の一部とみなされてもよい。
【0086】
上述の実施形態において、分離部15は、例えばカッターナイフのような第1工具を用いてリップ部13Aを切断することにより形成されることとした。第1工具を用いることなく、分離部15が形成されてもよい。例えばダストシール81の製造において、分離部15が予め形成されてもよい。
【0087】
上述の実施形態において、分離部16は、例えば砥石のような第2工具を用いてアウターリング14を含む外環部13Bを切断することにより形成されることとした。第2工具を用いることなく、分離部16が形成されてもよい。例えばダストシール81の製造において、分離部16が予め形成されてもよい。
【0088】
上述の実施形態において、円環状の保持部材9が2箇所で切断されることにより、円弧状の第1保持部材9A及び円弧状の第2保持部材9Bが形成されることとした。円環状の保持部材9を2箇所で切断することなく、第1保持部材9A及び第2保持部材9Bが形成されてもよい。例えば円弧状の第1保持部材9A及び円弧状の第2保持部材9Bのそれぞれが製造されてもよい。
【0089】
上述の実施形態においては、ダストシール8が対向する一対の第1対向面156A,156Bを有し、ダストシール8の周囲に保持部材9が配置されることとした。ロッドシール7が対向する一対の第1対向面156A,156Bを有し、ロッドシール7の周囲に保持部材9が配置されてもよい。すなわち、上述の実施形態で説明した構成要素が、ダストシール8に適用されてもよいし、ロッドシール7に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1…油圧シリンダ、2…シリンダチューブ、3…シリンダヘッド、4…ハウジング、4A…孔、5…ロッド、5A…ロッドヘッド、6…シール装置、7…ロッドシール、8…ダストシール、9…保持部材、9A…第1保持部材、9B…第2保持部材、10…固定部材、10A…孔、10B…凸部、11…ボルト、12…ボルト、13…シールリング、13A…リップ部、13B…外環部、14…アウターリング、14A…円筒部、14B…フランジ部、15…分離部、15A…対向面、15B…対向面、16…分離部、16A…対向面、16B…対向面、17…分離部、17A…第2対向面、17B…第2対向面、21…内面、22…外面、23…外面、24…支持面、31…内面、32…外面、41…内面、42…外面、43…端面、44…先端部、71…ロッドシール、72…ロッドシール、81…ダストシール、82…ダストシール、91…第1端面、92…第2端面、93…第3端面、94…第4端面、95…第1円筒部、96…第2円筒部、97…支持部、156A…第1対向面、156B…第1対向面、AX…中心軸。