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特許7390795非接触で直流電圧の有無を判定する検電方法及び検電器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】非接触で直流電圧の有無を判定する検電方法及び検電器
(51)【国際特許分類】
   G01R 19/155 20060101AFI20231127BHJP
【FI】
G01R19/155
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019041307
(22)【出願日】2019-03-07
(65)【公開番号】P2020144020
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000141060
【氏名又は名称】株式会社関電工
(73)【特許権者】
【識別番号】500285727
【氏名又は名称】三和電気計器株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】597019609
【氏名又は名称】株式会社 シーディエヌ
(74)【代理人】
【識別番号】100075410
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 則昭
(74)【代理人】
【識別番号】100135541
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 昭太郎
(72)【発明者】
【氏名】大浦 洋治
(72)【発明者】
【氏名】関根 隆好
(72)【発明者】
【氏名】小島 正巳
(72)【発明者】
【氏名】野田 龍三
(72)【発明者】
【氏名】松尾 和顕
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-127607(JP,A)
【文献】特開2007-327919(JP,A)
【文献】特開2016-80537(JP,A)
【文献】特開平9-211046(JP,A)
【文献】特開2000-180490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 19/155
G01R 19/00
G01R 29/12
G01R 29/24
G01R 29/00
G01R 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流によって充電される充電部に対する検電器の検電電極の距離を、所定の時間において、所定の間隔で1回移動させることにより静電容量結合による電流を検出することを特徴とする、非接触で直流電圧の有無を判定する検電方法。
【請求項2】
前記検電器の距離の変化が、前記充電部から離れた箇所から近接する箇所への移動によるものとすることを特徴とする、請求項1に記載の非接触で直流電圧の有無を判定する検電方法。
【請求項3】
一定距離を移動自在な検電電極が検電器本体に支持され、当該検電電極は、作業者の操作により前記検電電極が所定の時間において、所定の間隔で1回移動する移動手段を有し、直流によって充電される充電部に対する当該検電電極の移動により静電容量結合による電流を検出する構成とすることを特徴とする、非接触で直流電圧の有無を判定する検電器。
【請求項4】
前記検電電極の一定距離の移動が、前記充電部から離れた箇所から近接した箇所に移動することを特徴とする、請求項3に記載の非接触で直流電圧の有無を判定する検電器。
【請求項5】
前記検電電極の移動手段が、畜力されたバネの伸長力であることを特徴とする、請求項3又は4に記載の非接触で直流電圧の有無を判定する検電器。
【請求項6】
前記検電電極の移動手段が、電磁ソレノイドであり、当該電磁ソレノイドの可動鉄心の一端に前記検電電極を固定して成ることを特徴とする、請求項3又は4に記載の非接触で直流電の有無を判定する検電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、充電部に非接触で直流電圧の有無を検出可能な非接触直流検電方法及び検電器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
直流電圧の検電は、検電器の接地端子を図11の様に接続することで、検電器は正常に動作する。直流電圧の電源、その充電部、検電器、検電器と大地(アース端子)間を接続した電線から構成される。直流電圧の場合、検電器の先端を前記充電部の裸線と接触させることで、充電部→検電器→電線→大地を通って直流電流が流れる。
【0003】
この様に、直流電圧の検電の場合、検電器の接地端子と大地間を電線で接続し、検電器の先端を裸電線に接触させないと、検電器は正常に動作しない。直流電圧用の検電器は、交流電圧の検電と同様の方法で電線の被覆の上から検電を試みても正常に動作しない。
【0004】
一方、交流電圧の検電の場合、図12示すように、露出充電部に非接触で、かつ、検電器の接地端子に電線を繋がなくても、静電誘導によって人体を介した回路電流が構成されるため、その電流が当該検電器の仕様に適合していれば検電器は正常に動作する。この露出充電部に非接触で電圧を検出する「静電容量結合」の技術を電圧計や相回転計などに用いることで測定作業の安全性を高めている。
【0005】
しかし、前述のとおり、直流電圧の検電の場合、静電容量結合できないため、検電器の接地端子と大地間を電線で接続し、かつ、検電器の先端を裸電線に接触させないと、検電器は正常に動作しないため、交流のような非接触での計測技術が発展していない。
【0006】
そこで、直流電圧においても充電部に対して非接触で検電可能な検電器が開発されている。特許文献1のものは、筐体の内部に設けられた検知電極と被検出対象物との間に形成される電極間浮遊静電容量と、前記筐体の内部シールドと大地との間に形成される対地間浮遊静電容量との間に、静電容量を可変することにより直流電圧に応じた交流電流を発生させる交流発生部を具備し、前記交流発生部は、検知電極の出力側に接続された可変コンデンサと、前記可変コンデンサの静電容量を変化させる圧電素子とで構成されている直流電圧検出器である。
【0007】
また、特許文献2のものは、直流電圧によって充電される充電部の充電状態を検出する検電器に、直流電圧によって充電される充電部の正極直流電圧の電界により静電誘導される負の電荷が帯電する検出用電極及び該検出用電極に接続された可変容量手段と、該可変容量手段の容量値が変化されることで前記検出用電極の帯電状態に応じて振幅あるいは周波数が変化した交流信号を出力する機能を備える検出部と、交流信号の振幅あるいは周波数に基づいて前記充電部が充電状態であるか否かを判別する判定部と、を設け、前記可変容量手段は、前記検出用電極と対向するように設けられた遮蔽板と、該遮蔽板を回転させる駆動手段とを備え、前記検出用電極と前記遮蔽板の対向面積が変化することで容量値が変化するように構成された非接触型検電器である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5727074号公報
【文献】特開2016-27332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1のものは、可変コンデンサや圧電素子から成る交流発生部を設けて、直流電圧に応じた擬似交流電流を発生させなければならない。また、上記特許文献2のものは、検出用電極に対向して回転する遮蔽板を設け、当該回転する遮蔽板により検出電極との対向面積が変化することで容量値が変化し、これにより検出用電極の帯電状態に応じて振幅あるいは周波数が変化した交流信号を発生させるものである。従って、いずれも擬似交流を発生させるため、回路が複雑化し、その分製造コストが高くなる。また、検出時間がかかる。
【0010】
そこで、この発明は上述の課題を解決するため、より簡単な構成で、非接触で直流電圧の有無を確実に判定できる検電方法及び検出器を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
交流の場合、電圧源の周囲に発生する電界は時間軸で変化するが、直流の場合は変化しない。このことが直流における静電容量結合を困難にしている。しかしながら、直流でも電圧源の周囲に発生する電界が存在しその強さは電圧源からの距離に反比例する。電圧源と電極の距離を変化させることにより、変化した距離に相当する電界の変化(電位差)を捉えることができ、電界の変化(電位差)と電極の移動時間によって、
C×ΔV/Δt=i
なる静電容量結合による電流iが検出でき、露出充電部に非接触で電圧の有無を判定できる。この発明はこの原理に基づくものである。なお、上記式においてCは静電容量、ΔVは変化分の電圧、Δtは変化分の時間、iは電流を示す。
【0012】
具体的には、請求項1の発明は、直流によって充電される充電部に対する検電器の検電電極の距離を、所定の時間において、所定の間隔で1回変化させることにより静電容量結合による電流を検出する、非接触で直流電圧の有無を判定する検電方法とした。
【0013】
また、請求項2の発明は、前記検電器の距離の変化が、前記充電部から離れた箇所から近接する箇所への移動によるものとする、請求項1に記載の非接触で直流電圧の有無を判定する検電方法とした。
【0014】
また、請求項3の発明は、一定距離を移動自在な検電電極が検電器本体に支持され、当該検電電極は、作業者の操作により前記検電電極が所定の時間において、所定の間隔で1回移動する移動手段を有し、直流によって充電される充電部に対する当該検電電極の移動により静電容量結合による電流を検出する構成とする、非接触で直流電圧の有無を判定する検電器とした。
【0015】
また、請求項4の発明は、前記検電電極の一定距離の移動が、前記充電部から離れた箇所から近接した箇所に移動する、請求項3に記載の非接触で直流電圧の有無を判定する検電器とした。
【0016】
また、請求項5の発明は、前記検電電極の移動手段が、畜力されたバネの伸長力である、請求項3又は4に記載の非接触で直流電圧の有無を判定する検電器とした。
【0017】
また、請求項6の発明は、前記検電電極の移動手段が、電磁ソレノイドであり、当該電磁ソレノイドの可動鉄心の一端に前記検電電極を固定して成る、請求項3又は4に記載の非接触で直流電の有無を判定する検電器とした。
【発明の効果】
【0018】
請求項1又は3の発明によれば、直流によって充電される被覆充電部の上から直流電圧を確実検知できる。しかも従来の様に、疑似交流電圧を発生させる装置等がいらず、極めて簡単な構成で達成できる。勿論、被覆されていない直流充電部の検電も使用可能である。また、検電電極の移動は1回である。
【0019】
また、請求項2及び4の発明によれば、前記充電部に対する検電電極の一定距離の移動が、充電部から離れた箇所から近接した箇所に移動するため、小さい電位から大きい電位への変化となるため検出がより確実かつ容易である。一方、充電部に近接した箇所から離れた箇所へ電極を移動させる場合、充電部に近接した箇所に、絶縁していない状態で電極を置いておくと、電極が抵抗の役割を果たし、電荷が抜けてしまい、ゼロ電位となってしまう場合がある。そのような状況で、電極を、充電部に近接した箇所(≒ゼロ電位)から、離れた箇所(≒ゼロ電位)へ電極を移動しても、電圧を検出できない。
【0020】
また、請求項5の発明では、検電電極の移動手段が蓄力されたバネのため、構成が極めて簡単で、容易に製造することが出来る。
【0021】
また、請求項6の発明では、電磁ソレノイドを用いるため、検電電極の移動が、極めて迅速かつ確実である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】この発明の実施の形態例1の非接触で直流電圧の有無を判定する検電方法の概略構成図である。
図2】この発明の実施の形態例1の非接触で直流電圧の有無を判定する検電方法に使用する検電器の検出回路を示す概略構成図である。
図3】この発明の実施の形態例1の非接触で直流電圧の有無を判定する検電方法の原理を示す説明図であり、(a)図は円柱導体Aの電気量及びその中心軸からの距離における電位の関係を示す図、(b)図は縦軸を電界E、横軸を円柱導体Aの中心軸からの距離rとした場合の電位の変化を示すグラフ図である。
図4】この発明の実施の形態例1の非接触で直流電圧の有無を判定する検電方法に使用する検電器の他の検出回路を示す概略構成図である。
図5】この発明の実施の形態例1の非接触で直流電圧の有無を判定する検電方法に使用する検電器の移動手段を蓄力バネとした場合の検電器の使用前の状態を示す側面図である。
図6】この発明の実施の形態例1の非接触で直流電圧の有無を判定する検電方法に使用する検電器の移動手段を蓄力バネとした場合の検電器の使用後の状態を示す側面図である。
図7】この発明の実施の形態例1の非接触で直流電圧の有無を判定する検電方法に使用する検電器の移動手段を蓄力バネとした場合の検電器の使用前の状態を示す要部断面図である。
図8】この発明の実施の形態例1の非接触で直流電圧の有無を判定する検電方法に使用する検電器の移動手段を蓄力バネとした場合の検電器の使用後の状態を示す要部断面図である。
図9】この発明の実施の形態例2の非接触で直流電圧の有無を判定する検電方法に使用する検電器の移動手段を電磁ソレノイドとした場合の検出回路を含む概略構成図である。
図10図9において、電磁ソレノイドを複数回作動させる場合の検出回路を含む概略構成図である。
図11】従来の直流電圧の検電器の使用状態を示す概略構成図である。
図12】従来の交流電圧の検電器の使用状態を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施の形態例1)
まず、この発明の実施の形態例1の非接触で直流電圧の有無を判定する検電方法の概略を図1図3に基づいて説明する。
【0024】
まず、図3の(a)図に示すように、単位長あたり、q(c/m)クーロンの電気量が体積分布した円柱導体Aがある。当該円柱導体Aの中心軸からの距離rにおける電界Eは,E=q/2πEr(r≧a、aは円柱導体Aの半径)である。
【0025】
交流の場合、検電器の電極が固定されていても、対象胴体に印加される電圧が変化するため、対象導体と電極間の静電容量をCとすると、
i(t)=C×dV(t)/dt となる電流が得られ、電圧の有無を検出できる。
【0026】
しかし、直流の場合、電圧V(t)が一定のため、dV(t)/dt=0となり、検電器が機能しない。そこで、電極を図3の(b)図のグラフの様にrとrの間で移動させ、かつ、移動時間をΔtとすれば、円柱導体Aと電極との間の電圧が時間Δtの間にΔV変化することになり、i=C×ΔV/Δt (但し、rの変化とともにCも変化するがここでは無視する)となる電流を得ることが出来、これにより電流の有無を検出できることとなる。
【0027】
図1はこの原理に基づいたこの発明の検電方法及び検電器の概略構成図であり、検電器本体1の先端に、検電電極2が設けられ、また、当該検電電極2と接続された検出回路3が設けられている。そして直流電圧がかかった被覆充電部4に、前記検電器本体1の検電電極2を近づけ、検電器本体1の電源スイッチ(図示省略)をオンにし、瞬時に被覆充電部4の被覆に検電電極2を図1の点線で示すように、当接又は近接させると、検電器本体1内に電流が流れて、図2の検出回路3でこれを検出し、音声発生回路5及び点灯表示回路6が作動し、音と光で電圧表示する。
【0028】
電圧を検出するために、上記検電電極2は、被覆充電部4に対して、垂直方向に動かすことが理想であるが、検電電極2を斜め方向から被覆充電部4に近接させるように動かした場合も、電圧を検出することはできる。なお、その場合は、実際には、静電容量のうち、垂直方向の成分のみを検出していることとなる。また、上記検電電極2の移動は、瞬時の移動が望ましいが、検出する電圧の値によって、要求される移動速度は異なる。本実施の形態例1では、例えば、測定対象電圧が500Vの場合にバネによって検電電極2を5(cm)移動させた場合、移動速度は、5~10(mm/msec)で、各充電部から、約2Vの電圧が検出された。
また、前記検電電極2の移動は、一定距離の移動であるが、この一定距離とは、短くても移動があれば電圧の検出は可能である。しかしながら、現実的には検電器の精度、大きさ等を考慮して5mm~30cmぐらいとなる。
【0029】
前記被覆充電部4に電圧がかかっていない場合は、検電器本体1に電流が流れず、電圧表示はなされない。
【0030】
前記検出回路3は、図2に示すように、検電電極2からの電流信号を増幅する増幅回路7、基準電流発生回路8が夫々設けられ、前記増幅回路7の出力信号と基準電流発生回路8の出力信号とを比較する比較回路9により、信号が出力された場合にのみ前記音声発生回路5及び点灯表示回路6が作動する。また、当該検出回路3には電源10を備えており、当該電源10のスイッチ(図示省略)をオンすることにより各回路に電源が供給される。
【0031】
また、前記検出回路3は、図4に示す検出回路3´とすることもできる。この検出回路3´では、検電電極2の移動を電極移動センサ11が捉えて信号を出力し、かつ、検電電極2からの電流信号があり、前記比較回路9の出力があった場合にANDゲート回路12が出力し、その場合にのみ前記音声発生回路5及び点灯表示回路6が作動する。この様に電極移動があった場合にのみ音声発生回路5及び点灯表示回路6が作動するため、ノイズによる誤発信を防ぐことができる。
【0032】
次にこの検電器本体1の検電電極2の移動手段について説明する。この考案の実施の形態例1に於いては、蓄力バネを用いた。
【0033】
図5は蓄力バネ13を蓄力している検電器の状態を示す。前記検電器本体1は管状体14内に収納され、この管状体14は筒状支持枠体15及び当該筒状支持枠体15の一端に接続された係止枠体16に支持されている。具体的には、筒状支持枠体15及び係止枠体16を貫通する貫通孔17内に管状体14が摺動自在に収納されている。
【0034】
前記管状体14は一端から中央部方向にやや入った箇所に、中央部側の一端に段部を有する外周湾曲凹部14aが設けられている。また、管状体14の、外周湾曲凹部14aを有する側の一端に前記検電電極2を固定している。また、前記係止枠体16の、貫通孔17の開口部を有する外側面から、断面半環状のガイド枠体18が突設され、前記検電電極2の下端部が伸びて、当該ガイド枠体18内に支持されて摺動する構成となっている。
【0035】
また、前記蓄力バネ13はその一端を検電電極2の内側面、他端を前記係止枠体16の貫通孔17の開口部周縁の外側面に固定されて前記管状体14の外周に巻き付けられている。そして、当該蓄力バネ13の力によって、管状体14の先端の検電電極2がガイド枠体18の先端部方向に付勢されている。
【0036】
前記係止枠体16の前記貫通孔17を横切って、上端に開口部を有する係止空間19が設けられ、当該係止空間19内に、上端にボタン20を有する移動駒21が上下方向に摺動自在に収納されており、当該移動駒21の中央係止孔22内に前記管状体14が貫通している。また、前記中央係止孔22は孔の下端が湾曲縁22aとなっている。また、当該移動駒21の下端面と係止空間19の底板との間には、常時移動駒21を上方に押し上げるバネ23が設けられている。また、前記ボタン20は係止空間19の開口部から一部が係止枠体16の上方に突出している。
【0037】
また、前記移動駒21の左右両側には図7及び図8に示すようにガイド突片24が設けられ、当該各ガイド突片24は前記係止空間19の左右のガイド溝25に夫々挿入され、これにより移動駒21が上下方向にのみ移動するように規制されている。
【0038】
図5の状態においては、管状体14が図5の右方に押しやられて管状体14の外周湾曲凹部14aの下部に、係止空間19内の移動駒21がバネ23の力により押し上げられた移動駒21の中央係止孔22の湾曲縁22aが嵌入している。この状態において、管状体14は係止されており、また、蓄力バネ13が蓄力されている。
【0039】
そして、前記ボタン20を押すと、バネ23の力に抗して移動駒21が下方に動き、これにより移動駒21の中央係止孔22の湾曲縁22aが管状体14の係湾曲凹部14aから外れる。そこで、管状体14の係止が解けて蓄力バネ13の力で管状体14が図6の状態に移動し、これに伴って検電電極2が一定距離移動する。
【0040】
この状態においては図8に示すように、係止枠体16内の移動駒21の中央係止孔22内には管状体14の大径の本体が入り、当該管状体14は貫通孔17内に支持されているので、バネ23の力に抗して移動駒21はその状態を維持する。
【0041】
この様に、検電電極2の移動手段を蓄力バネ13としたものは、ボタン20を押すと、蓄力バネ13の係止が解けて瞬時に検電電極2が移動する。また、当該蓄力バネ13を蓄力状態に戻すには、管状体14を、蓄力バネ13の力に抗して、図5の状態に移動させると、管状体14の外周湾曲凹部14aが、移動駒21の中央係止孔22に入り、そこで移動駒21はバネ23の力で上方に上がり、外周湾曲凹部14aの下部が中央係止孔22の下端の湾曲縁22aに係止され、管状体14はその状態で係止される。
【0042】
(実施の形態例2)
また、検電電極2の移動手段をバネ以外のものを適用した例として、実施の形態例2を示す。
【0043】
この実施の形態例2の検電器は図9に示すように、移動手段として電磁ソレノイドを使用した。この場合、電磁ソレノイド26の可動鉄心27の一端に検電電極2を設けたものである。また、この場合の検出回路28の構成は前記検出回路3及び3´とほぼ同じである。
【0044】
電磁ソレノイド26のスイッチ29をオンにすると、電磁ソレノイド26が作動し、可動鉄心27が移動して検電電極2が測定対象電線である直流の被覆充電部4に近づく。これにより検電電極2から増幅回路7に電流信号が出力し、前記比較回路9の出力があった場合に、前記スイッチ29の出力信号により前記ANDゲート回路12が出力し、音声発生回路5により音声が鳴り、また、点灯表示回路6により点灯表示され、前記被覆充電部4に電圧がかかっていることが分かる。また、前記被覆充電部4に電圧がかかっていない場合は、音声発生回路5や点灯表示回路6は作動しない。
【0045】
また、図10の検出回路30は、図9の検出回路28の応用例を示すもので、電磁ソレノイド26により、検電電極2を複数回移動させるものである。この検出回路30の構成は、図9の検出回路28とほぼ同じであるが、電磁ソレノイド26とANDゲート12を接続する電路間に、直列にダイオード31、並列にコンデンサ32及び抵抗33が設けられている。また、コンデンサ32及び抵抗33の一端は、接地されている。電磁ソレノイド26が繰り返し駆動された際の交流の入力波形は、これらダイオード31、コンデンサ32及び抵抗33によって、整流され、直流成分のゲート信号として、ANDゲート12に判断される。
【0046】
このように、図10の検出回路30は、電磁ソレノイド26により、検電電極2を複数回移動させるものであるため、複数回の直流電圧成分(=直流成分信号)を検出することができるため、検出精度や安定性を改善することができる。この時、電磁ソレノイド26の駆動周期を、商用電源周波数成分(≒50あるいは60(Hz))を消去できるような高い周期、例えば、100(Hz)等にすれば、商用電源周波数等の他の周波数によるノイズを消去することができる。
【0047】
なお、上記実施の形態例1、2では、直流によって充電される充電部の検出対象物として被覆充電部について説明したが、この発明は被覆されていない充電部に対しても使用可能である。また、前記検電電極2の移動手段は、上記実施の形態例1、2に限定されるものではなく、瞬時に検電電極が移動できるものであれば、他の移動手段を適用することが出来る。また、検出回路も検出回路3、3´、28及び30に限定されるものではない。
【0048】
さらに、上記実施の形態例1、2では直流電圧が検出された充電状態では音声及び光の点灯の双方で表示する構成であるが、音声又は光の点灯のどちらかの表示、その他振動による表示等、適宜の表示手段を適用することが出来る。
【符号の説明】
【0049】
1 検電器本体 2 検電電極
3 検出回路 3´ 検出回路
4 被覆充電部 5 音声発生回路
6 点灯表示回路 7 増幅回路
8 基準電流発生回路 9 比較回路
10 電源 11 電極移動センサ
12 ANDゲート回路 13 蓄力バネ
14 管状体 14a 外周湾曲凹部
15 筒状支持枠体 16 係止枠体
17 貫通孔 18 ガイド枠体
19 係止空間 20 ボタン
21 移動駒 22 中央係止孔
22a 湾曲縁 23 バネ
24 ガイド突片 25 ガイド溝
26 電磁ソレノイド 27 可動鉄心
28 検出回路 29 スイッチ
30 検出回路 31 ダイオード
32 コンデンサ 33 抵抗
図1
図2
図3
図4
図5
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図12