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特許7390799光学積層体およびその製造方法、ならびに表示デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】光学積層体およびその製造方法、ならびに表示デバイス
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20231127BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20231127BHJP
   H10K 50/86 20230101ALI20231127BHJP
   H10K 77/10 20230101ALI20231127BHJP
   H10K 50/80 20230101ALI20231127BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20231127BHJP
   B32B 3/10 20060101ALI20231127BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20231127BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
G02B5/30
H10K50/10
H10K50/86
H10K77/10
H10K50/80
B32B7/023
B32B3/10
G09F9/00 338
G09F9/30 365
G09F9/00 313
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019078919
(22)【出願日】2019-04-17
(65)【公開番号】P2020177116
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100152571
【弁理士】
【氏名又は名称】新宅 将人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 渉
(72)【発明者】
【氏名】寳田 翔
(72)【発明者】
【氏名】野中 崇弘
(72)【発明者】
【氏名】下栗 大器
(72)【発明者】
【氏名】小川 美優
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-151162(JP,A)
【文献】特開2005-153358(JP,A)
【文献】特開2018-087863(JP,A)
【文献】特開2017-003906(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第114464753(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103135160(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
H10K 50/10
H10K 50/86
H10K 50/80
B32B 7/023
B32B 3/10
G09F 9/00
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子を含む光学フィルム;
前記光学フィルムの第一主面に設けられた第一粘着剤層;
前記第一粘着剤層に貼り合わせられた第一被着体;
前記光学フィルムの第二主面に設けられた第二粘着剤層;および
前記第二粘着剤層に固着積層された有機ELセル、を含み、
前記第一粘着剤層および前記第二粘着剤層は、波長420nmの光透過率が85%以上であり、
前記第一粘着剤層は、波長355nmの光透過率が80%以下であ
前記第二粘着剤層は、厚みが30μm以下であることおよび波長355nmの光透過率が80%以下であることの少なくとも一方を満たし、
前記有機ELセルは、波長355nmの光透過率が70%以下であり
少なくとも、前記有機ELセル、前記第二粘着剤層、前記光学フィルムおよび前記第一粘着剤層を貫通する貫通孔が設けられている、
光学積層体。
【請求項2】
前記有機ELセルは、基板上に、一対の電極、および前記一対の電極の間に配置された有機発光層を備え、前記基板がポリイミドフィルムを含む、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項3】
前記第一被着体は、前記第一粘着剤層に仮着された第一離型フィルムである、請求項1または2に記載の光学積層体。
【請求項4】
前記第一被着体は、前記第一粘着剤層に仮着された第一離型フィルムであり、前記貫通孔が前記第一被着体を貫通している、請求項1または2に記載の光学積層体。
【請求項5】
前記第一粘着剤層の厚みが30μm以上である、請求項1~のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項6】
前記第二粘着剤層の厚みが前記第一粘着剤層の厚みよりも小さい、請求項1~のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項7】
前記第一粘着剤層は、波長355nmの光透過率が20%以上である、請求項1~のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項8】
前記第一粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率が、0.35MPa以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項9】
前記第一粘着剤層が、光硬化性化合物および光重合開始剤を含む光硬化性粘着剤である、請求項1~のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項10】
前記第二粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率が、前記第一粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率よりも大きい、請求項1~のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項11】
前記第二粘着剤層の波長355nmの光透過率が、前記第一粘着剤層の波長355nmの光透過率よりも大きい、請求項1~10のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項12】
レーザー加工により積層体に貫通孔を形成する光学積層体の製造方法であって、
前記積層体は、
偏光子を含む光学フィルム;
前記光学フィルムの第一主面に設けられた第一粘着剤層;
前記第一粘着剤層に貼り合わせられた第一被着体;
前記光学フィルムの第二主面に設けられた第二粘着剤層;および
前記第二粘着剤層に固着積層された有機ELセル、を含み、
前記第一粘着剤層および前記第二粘着剤層は、波長420nmの光透過率が85%以上であり、
前記第一粘着剤層は、波長355nmの光透過率が80%以下であり、
前記第二粘着剤層は、厚みが30μm以下であることおよび波長355nmの光透過率が80%以下であることの少なくとも一方を満たし、
前記有機ELセルは、波長355nmの光透過率が70%以下であり、
前記有機ELセル側の主面に紫外線レーザーを照射して、前記有機ELセル、前記第二粘着剤層、前記光学フィルム、前記第一粘着剤層および前記第一被着体を貫通する貫通孔を形成する、光学積層体の製造方法。
【請求項13】
画像表示素子と、光学素子とを含む表示デバイスであって、
前記画像表示素子は、
偏光子を含む光学フィルム;
前記光学フィルムの第一主面に設けられた第一粘着剤層;
前記第一粘着剤層に貼り合わせられた透明被着体;
前記光学フィルムの第二主面に設けられた第二粘着剤層;および
前記第二粘着剤層に貼り合わせられた有機ELセル、を含み、
前記第一粘着剤層および前記第二粘着剤層は、波長420nmの光透過率が85%以上であり、
前記第一粘着剤層は、波長355nmの光透過率が80%以下であり、
前記第二粘着剤層は、厚みが30μm以下であることおよび波長355nmの光透過率が80%以下であることの少なくとも一方を満たし、
前記有機ELセルは、波長355nmの光透過率が70%以下であり
前記有機ELセル、前記第二粘着剤層、前記光学フィルム、および前記第一粘着剤層を貫通する貫通孔が設けられており、
前記貫通孔内、または前記貫通孔の下に、受光素子および発光素子からなる群から選択される1種以上の光学素子が配置されている、表示デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムおよび粘着剤を含む光学積層体、およびその製造方法に関する。さらに、本発明は、画像表示素子と光学素子を含む表示デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、スマートフォン、カーナビゲーション装置、パソコン用モニタ、テレビ等は、画像表示素子を備える表示デバイスであり、画像表示素子として、液晶表示装置や有機EL表示装置を備えている。液晶表示装置は、その表示原理から、画像表示セルの視認側表面に偏光板が配置されている。また、有機EL表示装置では、外光が金属電極(陰極)で反射されて鏡面のように視認されることを抑制するために、画像表示セルの視認側表面に円偏光板(偏光板と1/4波長板の積層体)が配置される場合がある。
【0003】
外表面からの衝撃による画像表示セルの破損防止等を目的として、画像表示セルの視認側に、透明樹脂板やガラス板等の前面透明板(「カバーウインドウ」等とも称される)が設けられることがある。画像表示セルの前面にカバーウインドウを配置した表示デバイスでは、画像表示セルとカバーウインドウとが、粘着シートを介して貼り合わせられている。
【0004】
画像表示セルの表面に偏光板等の光学フィルムが貼り合わせられ、その視認側表面にカバーウインドウを備える表示デバイスの形成に、両面粘着剤付き光学フィルムを用いることが提案されている(例えば特許文献1)。両面粘着剤付き光学フィルムでは、光学フィルムの一方の面に、画像表示セルとの貼り合わせのための粘着剤層が設けられ、光学フィルムの他方の面にカバーウインドウ等との貼り合わせのための粘着剤層が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-157077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スマートフォン、タブレット端末、ノートパソコン等の表示デバイスでは、一般に、表示領域の外周のベゼル領域に、カメラや光センサ等の受光素子、およびLED等の発光素子が配置されている。近年、スマートフォン等のモバイル機器を中心に、表示デバイスのベゼルレス化(フルディスプレイ化)が進んでいる。
【0007】
ベゼルセル化に伴い、従来の表示デバイスにおいてベゼル領域に配置されていた光学素子(受光素子および/または発光素子)の配置を変更する必要が生じる。ベゼルレスデザインの表示デバイスにおいて、ディスプレイの表示領域内に開口を設け、開口の下、または開口内に、カメラ等の光学素子を収容する方法が提案されている。表示領域内に設けられた開口は、外部から視認されるため、形状が均一であることが望ましい。そのため、熱損傷が少なく加工精度の高い紫外線レーザーにより加工を行い、開口を形成する方法が検討されている。
【0008】
偏光板や粘着シート等の光学部材にレーザー加工により開口を形成した後に、各部材の貼り合わせを行う場合、複数の光学部材間で開口の位置を正確に合わせることは容易ではない。光学部材に予め粘着剤層を積層した後に、紫外線レーザーを照射して開口を形成すれば、部材間の位置合わせを必要としないため、生産性や歩留まりを向上できると考えられる。
【0009】
しかし、粘着剤層を備える積層体に紫外線レーザーを照射して開口を形成すると、粘着剤層の加工不良、粘着剤層への気泡の混入、粘着剤層の貼り合わせ界面での剥離、貼り合わせ界面への気泡の混入等が生じる場合がある。かかる課題に鑑み、本発明は、紫外線レーザー等による加工性に優れる表示デバイス用光学積層体、および複数の光学部材を貫通する開口が設けられた光学積層体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の光学積層体は、偏光子を含む光学フィルム、光学フィルムの一方の主面に設けられた第一粘着剤層、第一粘着剤層に貼り合わせられた第一被着体、光学フィルムの他方の主面に設けられた第二粘着剤層、および第二粘着剤層に貼り合わせられた第二被着体を含む。粘着剤層に貼り合わせられた被着体は、粘着剤層に固着積層されていてもよく、粘着剤層に仮着されたものでもよい。
【0011】
第一粘着剤層および第二粘着剤層は、波長420nmの光透過率が85%以上の透明粘着剤層である。第一粘着剤層は、紫外線吸収性を有しており、波長355nmの光透過率が80%以下である。第一粘着剤層は、波長355nmにおける光透過率が20%以上であってもよい。
【0012】
第一粘着剤層の厚みは、例えば30μm以上である。第一粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率は、0.35MPa以下が好ましい。第一粘着剤層は、光硬化性化合物および光重合開始剤を含む光硬化性粘着剤であってもよい。
【0013】
第二粘着剤層は紫外線吸収性を有していてもよく、紫外線吸収性を有していなくてもよい。第二粘着剤層の厚みが第一粘着剤層の厚みよりも小さくてもよい。第二粘着剤層の厚みが30μmよりも大きい場合は、第二粘着剤層は紫外線吸収性を有していることが好ましく、波長355nmの光透過率は80%以下が好ましい。第二粘着剤層の波長355nmの光透過率は、第一粘着剤層の波長355nmの光透過率よりも大きくてもよい。第二粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率は、第一粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率よりも大きくてもよい。
【0014】
光学フィルムは、偏光子の片面または両面に樹脂フィルムを備えていてもよい。偏光子に貼り合わせられた樹脂フィルムは、波長355nmにおける透過率が10%以下でもよい。
【0015】
粘着剤層に仮着される被着体としては、離型フィルムが挙げられる。第一粘着剤層に固着積層される被着体は、例えばカバーウインドウである。第二粘着剤層に固着積層される被着体は、例えば画像表示セルである。画像表示セルは、例えば有機ELセルであり、有機ELセルは、ポリイミドフィルムを含んでいてもよい。
【0016】
上記の光学積層体の第一被着体側の主面または第二被着体側の主面に紫外線レーザーを照射することにより、第一被着体、第一粘着剤層、光学フィルム、第二粘着剤層および第二被着体を貫通する開口(貫通孔)が形成される。紫外線レーザーの照射面に配置された被着体は、紫外線吸収性を有していることが好ましく、波長355nmの光透過率は70%以下が好ましい。
【0017】
例えば、第一粘着剤層および第二粘着剤層のそれぞれに離型フィルムが仮着されている光学積層体に紫外線レーザーを照射して貫通孔を形成する場合は、いずれか一方の面の離型フィルムの波長355nmにおける光透過率が70%以下であることが好ましい。紫外線照射面の離型フィルムは、波長355nmにおける光透過率が15%以上であってもよい。
【0018】
第一粘着剤層に離型フィルムが仮着され、第二粘着剤層に画像表示セルが固着積層された光学積層体に紫外線レーザーを照射して貫通孔を形成してもよい。画像表示セル側から紫外線レーザーを照射する場合は、画像表示セルが紫外線吸収性を有していることが好ましい。例えば、画像表示セルがポリイミドフィルムを含む場合は、ポリイミドフィルムが紫外線吸収性を有する。離型フィルム側から紫外線レーザーを照射する場合は、離型フィルムが紫外線吸収性を有していることが好ましい。この場合、離型フィルムの波長355nmにおける光透過率は15~70%が好ましい。
【0019】
粘着剤層上の被着体を、別の被着体に貼り替えてもよい。例えば、第二粘着剤層上に仮着された離型フィルムを剥離して、画像表示セルを貼り合わせてもよく、第一粘着剤層上に仮着された離型フィルムを剥離して、カバーウインドウを貼り合わせてもよい。また、粘着剤層上に仮着された離型フィルムを、別の離型フィルムに貼り替えてもよい。
【0020】
貫通孔を形成した後に、被着体の貼り替えを行ってもよい。例えば、第一粘着剤層に離型フィルムが仮着され第二粘着剤層に画像表示セルが固着積層された光学積層体に、貫通孔を形成した後に、第一粘着剤層から離型フィルムを剥離し、第一粘着剤層にカバーウインドウを貼り合わせてもよい。
【0021】
貫通孔内、または貫通孔の下に光学素子を配置することにより、画像表示素子と、光学素子とを含む表示デバイスが形成される。貫通孔内または貫通孔下に配置される光学素子としては、カメラや光センサ等の受光素子、およびLED等の発光素子が挙げられる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の光学積層体は、レーザー照射面の被着体に加えて、粘着剤層が紫外線吸収性を有するため、紫外線レーザーによる加工性に優れており、ディスプレイの表示領域内にカメラ等の光学素子が配置された表示デバイスの形成に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1A】一実施形態の光学積層体の斜視図である。
図1B】一実施形態の光学積層体の断面図である。
図2】一実施形態の光学積層体の断面図である。
図3】一実施形態の光学積層体の断面図である。
図4】一実施形態の表示デバイスの断面図である。
図5】一実施形態の光学積層体の断面図である。
図6】一実施形態の光学積層体の断面図である。
図7】マザー基板から枚葉の光学積層体を切り出す工程の途中の段階を示す断面図である。
図8】マザー基板から枚葉の光学積層体を切り出す工程の途中の段階を示す断面図である。
図9】一実施形態の光学積層体の断面図である。
図10】一実施形態の光学積層体の断面図である。
図11】一実施形態の光学積層体の断面図である。
図12】一実施形態の光学積層体の断面図である。
図13】マザー基板から枚葉の光学積層体を切り出す工程の途中の段階を示す断面図である。
図14】貫通孔の周辺に気泡が生じている離型フィルムの顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の光学積層体は、偏光子を含む光学フィルム、および光学フィルムの両面に付設された粘着剤層を含む。光学フィルムの両面に付設された粘着剤層のそれぞれには、被着体が貼り合わせられている。被着体は、粘着剤層に固着積層されたものでものよく、剥離可能に貼着(仮着)されたものでもよい。光学フィルムの両面に配置された粘着剤層の少なくとも一方は、紫外線吸収性を有している。
【0025】
光学積層体の一実施形態は、光学フィルムおよびその両面に配置された粘着剤層を貫通する貫通孔を有している。貫通孔は、粘着剤層の表面に貼り合わせられた被着体を貫通していてもよい。光学積層体の他の実施形態は、貫通孔を形成する前の積層体であり、光学フィルムの両面に配置された粘着剤層の少なくとも一方が紫外線吸収性を有しているため、紫外線レーザーによる加工に適している。
【0026】
図1Aは、貫通孔を有する光学積層体101の斜視図である。光学積層体101は、光学フィルム10の一方の面に第一粘着剤層21(視認側粘着剤層)を備え、光学フィルム10の他方の面に第二粘着剤層22(セル側粘着剤層)を備える。第一粘着剤層21には第一被着体としての離型フィルム41が仮着されており、第二粘着剤層22には第二被着体としての画像表示セル70が固着されている。光学積層体101には、画像表示セル70、第二粘着剤層22、光学フィルム10、第一粘着剤層21および第一離型フィルム41を貫通する貫通孔5が設けられている。
【0027】
図1Bは光学積層体101の断面図であり、図1のB-B線の断面に対応している。図2は、両面粘着剤付き光学フィルム25の両主面に離型フィルム41,42が仮着された光学積層体102の断面図である。両面粘着剤付き光学フィルム25は、光学フィルム10の一方の主面に第一粘着剤層21を備え、光学フィルム10の他方の主面に第二粘着剤層22を備える。粘着剤層21,22の表面には、被着体としての離型フィルム41,42が仮着されている。図5に示すように、離型フィルム41,42は、両面粘着剤付き光学フィルム25の端面よりも外側に張り出していてもよい。
【0028】
第二粘着剤層22上に仮着された離型フィルム42を剥離し、第二粘着剤層22上に画像表示セル70を貼り合わせることにより、図3に示す光学積層体103が得られる。図3では、光学積層体103を構成する各光学部材の端面が揃うように図示しているが、光学部材の端面は一致していなくてもよい。例えば、離型フィルム41は、第一粘着剤層21の端面よりも外側に張り出していてもよく、画像表示セル70は、第二粘着剤層22の端面よりもよりも外側に張り出していてもよい。
【0029】
光学積層体103に貫通孔5を設けることにより、光学積層体101が形成される。両面粘着剤付き光学フィルム25を含む積層体に孔あけ加工を行えば、光学フィルム10、およびその両面に配置された粘着剤層21,22を貫通する貫通孔が形成されるため、孔あけのプロセスを簡略化できるとともに、歩留まり向上が期待される。
【0030】
図1Bに示す光学積層体101の第一粘着剤層21上に仮着された第一離型フィルム41を剥離し、第一粘着剤層21上にカバーウインドウ80を貼り合わせることにより、図4に示す表示デバイス204が得られる。貫通孔5の下には、光学素子91が配置される。光学素子91は、例えば、カメラや光センサ等の受光素子である。画像表示セル70から第一粘着剤層21までを貫通する貫通孔5を設けることにより、外部からの光は、カバーウインドウ80を透過して、光学素子91に到達する。光学素子91が発光素子である場合、光学素子91からの光は貫通孔5を通ってカバーウインドウ80を透過し、外部に射出する。光学素子91は、貫通孔5内に配置されていてもよい。
【0031】
光学積層体101の貫通孔5は、例えば、図3に示す積層体103の画像表示セル70側(図の下側)から紫外線レーザーを照射して、孔あけ加工を行うことにより形成される。光学フィルム10と画像表示セル70を予め積層した状態で、積層体103を貫通するように孔あけ加工を行えば、積層時に孔の位置合わせを行う必要がないため、デバイスの作製プロセスを簡略化できるとともに、歩留まり向上が期待される。
【0032】
積層体103に紫外線レーザーを照射して積層体の孔あけ加工を行う場合、レーザー照射面の被着体が紫外線吸収性を有していることが好ましい。例えば、積層体103の画像表示セル70側から紫外線レーザーを照射する場合は、画像表示セル70が紫外線吸収性を有していることが好ましい。積層体103の第一離型フィルム41側から紫外線レーザーを照射する場合は、第一離型フィルム41が紫外線吸収性を有していることが好ましい。
【0033】
レーザー照射面の被着体が紫外線吸収性を有していることにより、当該被着体が紫外線レーザーを吸収して、発熱・気化し、その蒸気とともに、被着体上に設けられた粘着剤層や光学フィルム等も吹き飛ぶため、貫通孔が形成される。
【0034】
紫外線レーザーを効率的に吸収するために、レーザー照射面の被着体の波長355nmにおける光透過率は、70%以下が好ましく、60%以下がより好ましく、50%以下がさらに好ましい。レーザー照射面の被着体の波長355nmにおける光透過率は、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下または1%以下であってもよい。
【0035】
画像表示セル70が基板71としてポリイミドフィルムを含む場合、ポリイミドフィルムが高い紫外線吸収性を有するため、画像表示セル70側からの紫外線レーザー照射が、孔あけ加工性に優れている。
【0036】
表示デバイス204において光学フィルム10の視認側に配置される第一粘着剤層21は、段差吸収性が要求される場合があり、厚みが大きく柔らかい粘着剤層が用いられる。第一粘着剤層21の厚みは、例えば30μm以上であり、25℃における貯蔵弾性率は、0.35MPa以下が好ましい。
【0037】
上記のように、レーザー照射面に配置される部材が紫外線吸収性を有していれば、その上に設けられた部材もレーザーにより加工される。そのため、単に孔あけを行うのみであれば、被着体上に配置される粘着剤層や光学フィルムは、必ずしも紫外線吸収性を有している必要はない。しかし、粘着剤層は柔らかく、フィルム材料等に比べて加工性が低いため、貫通孔の形成が不十分となったり、レーザー加工部分の周辺に気泡が生じる場合がある。
【0038】
特に、第一粘着剤層21は、段差吸収性が要求される場合があり、厚みが大きく柔らかいため、レーザーによる加工時の加工不良が生じやすい。また、図3に示す光学積層体103において、第一粘着剤層21と離型フィルム41とは仮着状態であり、界面での接着力が小さいため、レーザー照射領域の周辺で、粘着剤層から離型フィルムが剥離する等の不具合が生じる場合がある。
【0039】
第一粘着剤層21が紫外線吸収性を有していれば、第一粘着剤層21が紫外線レーザーを吸収するため、加工性が向上し、加工不良や離型フィルムの剥離等の不具合を抑制できる。第一粘着剤層21の波長355nmにおける光透過率は、80%以下が好ましく、75%以下がより好ましい。
【0040】
第二粘着剤層22も紫外線吸収性を有していてもよい。第二粘着剤層に紫外線吸収性を持たせる場合、第二粘着剤層の波長355nmにおける光透過率は80%以下が好ましく、75%以下がより好ましい。光学フィルム10と画像表示セル70とを貼り合わせるための第二粘着剤層22は、一般に段差吸収性を必要としない。第一粘着剤層21に比べると、第二粘着剤層22は厚みが小さく硬いため、第二粘着剤層22は、紫外線吸収性を有していなくても、加工不良が生じ難い。特に、第二粘着剤層22の厚みが30μm以下の場合は、第二粘着剤層22が紫外線吸収性を有していなくても、加工不良はほとんど生じない。
【0041】
[光学積層体の構成要素]
以下では、光学積層体を構成する各光学要素の好ましい形態について順に説明する。
【0042】
<画像表示セル>
図1B図3および図4に示す光学積層体において、画像表示セル70は、トップエミッション型の有機ELセルであり、基板71上に、金属電極73、有機発光層75および透明電極77を順に備える。透明電極77上には、封止材79が積層されている。図示を省略しているが、封止材79は、電極73,77、および有機発光層75の側面を覆うように設けられていることが好ましい。
【0043】
基板71としては、ガラス基板またはプラスチック基板が用いられる。トップエミッション型の有機ELセルでは、基板71は透明である必要はなく、基板71としてポリイミドフィルム等の高耐熱性フィルムを用いてもよい。有機発光層75は、それ自身が発光層として機能する有機層の他に、電子輸送層、正孔輸送層等を備えていてもよい。透明電極77は、金属酸化物層または金属薄膜であり、有機発光層75からの光を透過する。基板71の裏面側には基板の保護や補強を目的としてバックシート(不図示)が設けられていてもよい。
【0044】
有機ELセルは、基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層したボトムエミッション型でもよい。ボトムエミッション型の有機ELセルでは、透明基板が用いられ、基板が視認側(第二粘着剤層22側)に配置される。画像表示セルは有機ELセルに限定されず、液晶セルや電気泳動方式の表示セル(電子ペーパー)等でもよい。画像表示セル70の視認側表面には、タッチパネルセンサー(不図示)が配置されていてもよい。
【0045】
<光学フィルム>
有機ELセル70上には、第二粘着剤層22を介して光学フィルム10が貼り合わせられている。光学フィルム10は偏光子11を含む。偏光子11の両面には、偏光子保護フィルムとしての透明フィルム13,15が積層されている。偏光子の一方の面または両面の偏光子保護フィルムを省略して、偏光子11上に直接粘着剤層を設けてもよい。
【0046】
偏光子11としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。
【0047】
偏光子11として、厚みが10μm以下の薄型の偏光子を用いることもできる。薄型の偏光子としては、例えば、特開昭51-069644号公報、特開2000-338329号公報、WO2010/100917号、特許第4691205号、特許第4751481号に記載されている偏光子が挙げられる。薄型偏光子は、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂層と延伸用樹脂基材とを積層体の状態で延伸する工程と、ヨウ素等の二色性材料により染色する工程とを含む製法により得られる。
【0048】
透明フィルム13,15としては、セルロース系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、フェニルマレイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の、透明樹脂フィルムが好ましく用いられる。透明フィルム13,15の波長420nmにおける光透過率は85%以上が好ましい。偏光子11の両面に透明フィルム13,15が設けられる場合、透明フィルム13,15は同じ樹脂材料からなるフィルムでもよく、異なる樹脂材料からなるフィルムでもよい。
【0049】
偏光子11の一方または両方の面に配置された透明フィルム13,15は、紫外線吸収性を有していてもよい。透明フィルム13,15が紫外線吸収性を有していることにより、光学フィルム10に隣接して配置された粘着剤層21,22の紫外線レーザーによる加工性が向上する傾向がある。偏光子11の一方の面または両面に配置される透明フィルムの波長355nmにおける光透過率は10%以下であってもよく、5%以下であってもよい。
【0050】
偏光子11の視認側に配置される透明フィルム13が紫外線吸収性を有していれば、外光に含まれる紫外線が透明フィルム13で吸収されるため、偏光子11の紫外線による劣化を抑制できる。透明フィルム13の波長355nmにおける光透過率は、10%以下または5%以下であってもよい。
【0051】
フィルム表面に紫外線吸収性コーティングを施したり、フィルム中に紫外線吸収剤を含めることにより、透明フィルムに紫外線吸収性を付与できる。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、トリアジン紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤等が挙げられる。透明フィルムとして、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の紫外線吸収性を有する樹脂材料を用いてもよい。
【0052】
光学フィルム10は、偏光子11の一方または両方の面に、必要に応じて適宜の接着剤層や粘着剤層を介して積層された光学機能フィルムを備えていてもよい。光学機能フィルムとしては、位相差板、視野角拡大フィルム、視野角制限(覗き見防止)フィルム、輝度向上フィルム等が挙げられる。光学フィルム10は、光学機能フィルムとして、タッチパネルセンサーを含んでいてもよい。偏光子に接する透明フィルム13,15が偏光子保護フィルムと光学機能フィルムとしての機能を兼ね備えていてもよい。透明フィルム13,15が、タッチパネルセンサーの電極基板フィルムとしての機能を兼ね備えていてもよい。
【0053】
有機ELセル70の金属電極73は光反射性である。そのため、外光が有機ELセルの内部に入射すると、金属電極73で光が反射し、外部からは反射光が鏡面のように視認される。有機ELセル70の視認側表面に、光学フィルム10として円偏光板を配置することにより、金属電極73での反射光の外部への再出射を防止して、表示デバイスの画面の視認性および意匠性を向上できる。
【0054】
円偏光板は、偏光子11の有機ELセル70側の面に位相差フィルムを備える。偏光子11に隣接して配置された透明フィルム15が位相差フィルムであってもよい。位相差フィルムがλ/4のレターデーションを有し、位相差フィルムの遅相軸方向と偏光子11の吸収軸方向とのなす角度が45°である場合に、偏光子と位相差フィルムとの積層体が、金属電極73での反射光の再出射を抑制するための円偏光板として機能する。円偏光板を構成する位相差フィルムは、2層以上のフィルムが積層されたものであってもよい。例えば、偏光子とλ/2板とλ/4板とを、それぞれの光学軸が所定の角度をなすように積層することにより、可視光の広帯域にわたって円偏光板として機能する広帯域円偏光板が得られる。
【0055】
<第一粘着剤層>
第一粘着剤層21は、表示デバイス204において、光学フィルム10の視認側に配置され、光学フィルム10とカバーウインドウ80等の透明部材との貼り合わせに用いられる。第一粘着剤層21は透明粘着シートであり、可視光透過率が高いことが好ましい。第一粘着剤層21の波長420nmにおける光透過率は85%以上であり、88%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。第一粘着剤層21のヘイズは2%以下が好ましく、1%以下がより好ましい。
【0056】
第一粘着剤層21は2以上の粘着シートを積層したものでもよい。後述の第二粘着剤層22も、2以上の粘着シートを積層したものでもよい。粘着剤層が積層粘着シートである場合、積層体の光透過率およびヘイズが上記範囲であることが好ましい。
【0057】
粘着剤層21を構成する粘着剤としては、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム、合成ゴム等のポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。
【0058】
光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性および接着性等の粘着特性を示し、耐候性や耐熱性等にも優れることから、第一粘着剤層21を構成する粘着剤としては、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましい。後述の第二粘着剤層22を構成する粘着剤も、第一粘着剤層21と同様、アクリル系粘着剤が好ましい。アクリル系粘着剤は、粘着剤組成物の固形分全量に対するアクリル系ベースポリマーの含有量が50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、80重量%以上であることがさらに好ましい。
【0059】
アクリル系ベースポリマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのモノマー単位を主骨格とするものが好適に用いられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
【0060】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が1~20である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好適に用いられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アルキル基が分枝を有していてもよい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、ベースポリマーを構成するモノマー成分全量に対して40重量%以上であることが好ましく、50重量%以上がより好ましく、60重量%以上がさらに好ましい。アクリル系ベースポリマーは、複数の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体であってもよい。構成モノマー単位の並びはランダムであっても、ブロックであってもよい。
【0061】
アクリル系ベースポリマーは、共重合成分として、架橋可能な官能基を有するアクリル系モノマーユニットを含有していてもよい。ベースポリマーが架橋可能な官能基を有する場合、ベースポリマーの熱架橋や光硬化等による粘着剤のゲル分率の上昇を容易に行い得る。架橋可能な官能基を有するアクリル系モノマーとしてはヒドロキシ基含有モノマーや、カルボキシ基含有モノマーが挙げられる。中でも、ベースポリマーの共重合成分として、ヒドロキシ基含有モノマーを含有することが好ましい。ベースポリマーが、モノマーユニットとしてヒドロキシ基含有モノマーを有する場合、イソシアネート架橋剤等による架橋性が高められるとともに、高温高湿環境下での粘着剤の白濁が抑制される傾向があり、透明性の高い粘着剤が得られる。
【0062】
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸2‐ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2‐ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4‐ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6‐ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8‐ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10‐ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12‐ヒドロキシラウリル、(メタ)アクリル酸(4-ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチル等が挙げられる。
【0063】
ヒドロキシ基含有モノマーの含有量は、ベースポリマーを構成するモノマー成分全量に対して0.1~50重量%が好ましく、1~40重量%がより好ましく、3~30重量%がさらに好ましい。
【0064】
アクリル系ベースポリマーは、ヒドロキシ基含有モノマーユニット以外に、窒素含有モノマー等の極性の高いモノマーユニットを含有することが好ましい。ヒドロキシ基含有モノマーに加えて、窒素含有モノマー等の高極性モノマーを含有することにより、粘着剤が高い接着性と保持力を有するとともに、高温高湿環境下での白濁が抑制される。
【0065】
窒素含有モノマーとしては、N-ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニルカルボン酸アミド類、N-ビニルカプロラクタム等のビニル系モノマーや、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノアクリレート系モノマー等が挙げられる。中でも、N-ビニルピロリドンおよび(メタ)アクリロイルモルホリンが好ましく用いられる。
【0066】
窒素含有モノマーの含有量は、ベースポリマーを構成するモノマー成分全量に対して、0.1~50重量%が好ましく、1~40重量%がより好ましく、3~30重量%がさらに好ましい。
【0067】
アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分には、多官能モノマー成分が含まれていてもよい。多官能モノマーは、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を少なくとも2つ有するモノマーである。多官能モノマーは1分子中に3以上の重合性官能基を有していてもよい。
【0068】
アクリル系ベースポリマーは、溶液重合、UV重合、塊状重合、乳化重合等の公知の重合方法により調製できる。粘着剤の透明性、耐水性、コスト等の点で、溶液重合法、またはUV重合が好ましい。溶液重合の溶媒としては一般に酢酸エチル、トルエン等が用いられる。
【0069】
ベースポリマーの調製に際しては、重合反応の種類に応じて、光重合開始剤や熱重合開始剤等の重合開始剤を用いてもよい。光重合開始剤としては、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α-ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤等を用いることができる。熱重合開始剤としては、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤(例えば、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムの組み合わせ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムの組み合わせ等)を用いることができる。
【0070】
ベースポリマーの分子量を調整するために、連鎖移動剤が用いられていてもよい。連鎖移動剤は、成長ポリマー鎖からラジカルを受け取ってポリマーの伸長を停止させるとともに、ラジカルを受け取った連鎖移動剤がモノマーを攻撃して再び重合を開始させる作用を有する。連鎖移動剤としては、例えば、α-チオグリセロール、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2-メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグルコール酸2-エチルヘキシル、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール等のチオール類が好適に用いられる。
【0071】
ベースポリマーを形成するモノマー成分として、単官能モノマーに加えて多官能モノマーを用いる場合、先に単官能モノマーを重合して、低重合度のプレポリマー組成物を形成し(予備重合)、プレポリマー組成物のシロップ中に多官能モノマーを添加して、プレポリマーと多官能モノマーとを重合(後重合)してもよい。このように、プレポリマーの予備重合を行うことによって、多官能モノマー成分に起因する分枝点を、ベースポリマー中に均一に導入できる。また、プレポリマー組成物と未重合のモノマー成分との混合物(粘着剤組成物)を基材上に塗布した後、基材上で後重合を行って、粘着剤層を形成してもよい。プレポリマー組成物は低粘度で塗布性に優れるため、プレポリマー組成物と未重合モノマーとの混合物である粘着剤組成物を塗布後に基材上で後重合を行う方法によれば、粘着剤層の生産性が高められると共に、粘着剤層の厚みを均一とすることができる。
【0072】
プレポリマー組成物は、例えば、アクリル系ベースポリマーを構成するモノマー成分と重合開始剤とを混合した組成物(「プレポリマー形成用組成物」と称する)を、部分重合(予備重合)させることにより調製できる。なお、プレポリマー形成用組成物中のモノマーは、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分のうち、(メタ)アクリル酸アルキルエステルや極性基含有モノマー等の単官能モノマーであることが好ましい。プレポリマー形成用組成物は多官能モノマーを含んでいてもよい。例えば、ベースポリマーの原料となる多官能モノマー成分の一部をプレポリマー形成用組成物に含有させ、プレポリマーを重合後に多官能モノマー成分の残部を添加して後重合に供してもよい。
【0073】
プレポリマー形成用組成物は、モノマーおよび重合開始剤以外に、必要に応じて連鎖移動剤等を含んでいてもよい。プレポリマーの重合方法は特に限定されないが、反応時間を調整して、プレポリマーの分子量(重合率)を所望の範囲とする観点から、UV光等の活性光線照射による重合が好ましい。予備重合に用いられる重合開始剤や連鎖移動剤は特に限定されず、例えば、上述の光重合開始剤や連鎖移動剤を用いることができる。
【0074】
プレポリマーの重合率は特に限定されないが、基材上への塗布に適した粘度とする観点から、3~50重量%が好ましく、より好ましくは5~40重量%である。プレポリマーの重合率は、光重合開始剤の種類や使用量、UV光等の活性光線の照射強度・照射時間等を調整することによって、所望の範囲に調整できる。
【0075】
上記プレポリマー組成物に、アクリル系ベースポリマーを構成するモノマー成分の残部(後重合モノマー)、および必要に応じて、重合開始剤、連鎖移動剤、シランカップリング剤、架橋剤等を混合して、粘着剤組成物を形成する。後重合モノマーは、多官能モノマーを含有することが好ましい。後重合モノマーとして、多官能モノマーに加えて、単官能モノマーを添加してもよい。
【0076】
後重合に用いられる光重合開始剤や連鎖移動剤は特に限定されず、例えば、上述の光重合開始剤や連鎖移動剤を用いることができる。予備重合の際の重合開始剤がプレポリマー組成物中で失活せずに残存している場合は、後重合のための重合開始剤の添加を省略できる。
【0077】
ベースポリマーは、必要に応じて架橋構造を有していてもよい。架橋構造の形成は、例えば、予備重合後や、ベースポリマーの重合後に、架橋剤を添加することにより行われる。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、金属キレート系架橋剤等の一般に用いられているものを使用できる。架橋剤の含有量は、アクリル系ベースポリマー100重量部に対して、通常、0~5重量部の範囲であり、好ましくは0~3重量部である。
【0078】
粘着剤組成物中に架橋剤を含有する場合、被着体との貼り合わせ前に、加熱による架橋処理が行われ、架橋構造が形成されることが好ましい。架橋処理における加熱温度や加熱時間は、使用する架橋剤の種類に応じて適宜設定されるが、通常、20℃~160℃の範囲で、1分から7日程度の加熱により架橋が行われる。
【0079】
粘着剤層21を構成する粘着剤は、カバーウインドウ80等の被着体との貼り合わせ後に、光照射により硬化可能な光硬化性粘着剤でもよい。例えば、加飾印刷等の隆起部を有するカバーウインドウの貼り合わせに光硬化性粘着剤を用いれば、光硬化前の粘着剤が柔らかい状態で貼り合わせを行うことにより段差吸収性を持たせて隆起部近傍への気泡の混入等を抑制できる。貼り合わせ後に紫外線等を照射して粘着剤を光硬化することにより、接着信頼性を向上できる。
【0080】
光硬化性粘着剤は、例えば、ポリマーに加えて、光硬化性化合物(光重合性官能基を有するモノマーまたはオリゴマー)、および光重合開始剤を含むものが好ましい。光硬化性粘着剤は、光重合性化合物として、1分子中に2以上の重合性官能基を有する多官能化合物を含むことが好ましい。多官能性化合物の使用量は、その分子量や官能基数等により異なるが、ベースポリマーを構成するモノマー成分全量に対して、10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましい。
【0081】
上記のプレポリマー組成物と未重合のモノマー成分との混合物(粘着剤組成物)を、そのまま光硬化性粘着剤としてもよい。また、粘着剤組成物を基材上に塗布した後、後重合時の重合率を調整し、モノマーの一部を未硬化の状態で残存させることにより、光硬化性の粘着剤層を形成してもよい。
【0082】
上記例示の各成分の他、粘着剤層21は、シランカップリング剤、粘着付与剤、可塑剤、軟化剤、劣化防止剤、充填剤、着色剤、酸化防止剤、界面活性剤、帯電防止剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0083】
粘着剤層21に紫外線吸収性を持たせるために、紫外線吸収剤を用いてもよい。粘着剤層21における紫外線吸収剤の含有量は、0.05~10重量%程度であり、粘着剤層21の波長355nmにおける光透過率が80%以下となるように調整すればよい。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤等が挙げられる。紫外線吸収性が高く、かつアクリル系ポリマーとの相溶性に優れ、高透明性のアクリル系粘着シートが得られやすいことから、トリアジン系紫外線吸収剤およびベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましく、中でも、水酸基を含有するトリアジン系紫外線吸収剤、および1分子中にベンゾトリアゾール骨格を1個有するベンゾトリアゾール系ギ凱旋吸収剤が好ましい。
【0084】
紫外線吸収剤として市販品を用いてもよい。トリアジン系紫外線吸収剤の市販品としては、2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヒドロキシフェニルと[(アルキルオキシ)メチル]オキシランとの反応生成物(BASF社製「TINUVIN 400」)、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス-(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンと(2-エチルヘキシル)-グリシド酸エステルとの反応生成物(BASF社製「TINUVIN 405」)、(2,4-ビス[2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF社製「TINUVIN 460」)、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール(BASF社製「TINUVIN 577」)、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF社製「TINUVIN 479」), 2,4-ビス-[{4-(4-エチルヘキシルオキシ)-4-ヒドロキシ}-フェニル]-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF製「Tinosorb S」)、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]-フェノール(ADEKA製「ADK STAB LA-46」)等が挙げられる。
【0085】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の市販品としては、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(BASF製「TINUVIN 928」)、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(BASF製「TINUVIN PS」)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(BASF製「TINUVIN 900」)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(BASF製「TINUVIN 928」)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノール(BASF製「TINUVIN 571」)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール(BASF製「TINUVIN P」)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(BASF製「TINUVIN 234」)、2-〔5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル〕-4-メチル-6-(tert-ブチル)フェノール(BASF製「TINUVIN 326、」)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール(BASF製「TINUVIN 328」)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(BASF製「TINUVIN 329」)、ベンゼンプロパン酸と3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ(C7-9側鎖および直鎖アルキル)とのエステル化合物(BASF製「TINUVIN384-2」)、メチル-3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコールとの反応生成物(BASF製「TINUVIN1 130」)、メチル3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコール300との反応生成物(BASF製「TINUVIN 213」)、2-[2-ヒドロキシ-3-(3、4、5,6-テトラヒドロフタルイミドーメチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール(住友化学製「Sumisorb250」)等が挙げられる。
【0086】
基材上に粘着剤組成物を層状に塗布し、必要に応じて溶媒の乾燥やベースポリマーの架橋・硬化を行うことにより粘着剤層が形成される。粘着剤組成物が光硬化性である場合は、支持基材上に粘着剤組成物を塗布後に、紫外線および/または短波長の可視光を照射して光硬化を行ってもよい。光硬化を行う際は、塗布層の表面にカバーシートを付設して、粘着剤組成物を2枚のシート間に挟持した状態で光を照射して、酸素による重合阻害を防止することが好ましい。
【0087】
第一粘着剤層21の厚みは特に限定されず、一般には5~1000μm程度である。第一粘着剤層21に固着積層される被着体(カバーウインドウ80等)が印刷段差等の隆起部を有しており、段差吸収性が求められる場合は、第一粘着剤層21の厚みは30μm以上が好ましい。第一粘着剤層21の厚みは40μm以上または50μm以上であってもよい。表示デバイスの軽量化・薄型化の観点や、粘着剤層形成の容易性、ハンドリング性等を勘案すると、第一粘着剤層21の厚みは、500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、250μm以下がさらに好ましい。
【0088】
第一粘着剤層21の波長355nmにおける光透過率は80%以下である。第一粘着剤層21が紫外線吸収性を有することにより、紫外線レーザーによる積層体の加工時に、第一粘着剤層の加工性が向上するとともに、貼り合わせ界面での剥離や、貼り合わせ界面への気泡の混入を抑制できる。
【0089】
紫外線レーザーによる加工性を高める観点からは、第一粘着剤層21の波長355nmにおける光透過率は小さいほど好ましい。第一粘着剤層21の波長355nmにおける光透過率は75%以下、70%以下、または65%以下であってもよい。
【0090】
第一粘着剤層21が紫外線吸収性を有していれば、外光に含まれる紫外線が第一粘着剤層21で吸収されるため、偏光子11の紫外線による劣化を抑制できる。一方、偏光子11の視認側に配置される透明フィルム13が紫外線吸収性を有している場合は、第一粘着剤層21には高い紫外線吸収性は要求されず、第一粘着剤層21は、紫外線レーザーによる加工性を発揮可能な程度の紫外線吸収性を有していればよい。
【0091】
第一粘着剤層21が光硬化性粘着剤である場合、紫外線吸収剤等による紫外線吸収量が大きいと、光重合開始剤が吸収する紫外線量が低減するため、硬化阻害の原因となり得る。光硬化効率を高める観点においては、第一粘着剤層21の波長355nmにおける光透過率は20%以上、25%以上または30%以上であってもよい。第一粘着剤層21による紫外線遮蔽性が十分でない場合でも、透明フィルム13が紫外線吸収性を有していれば、偏光子11の紫外線劣化を抑制できる。
【0092】
第一粘着剤層21に段差吸収性が要求される場合、第一粘着剤層21の25℃における貯蔵弾性率G’は、0.35MPa以下が好ましく、0.30MPa以下がより好ましい。一方、第一粘着剤層21が過度に柔らかい場合は、粘着剤付き光学フィルムを枚葉に切り出す際のカット時のカット刃等への粘着剤の移着や、枚葉の粘着剤付き光学フィルムの端面からの粘着剤のはみ出しが生じやすい。また、第一粘着剤層21が過度に柔らかい場合は、レーザーによる加工時の加工不良の原因となり得る。そのため、第一粘着剤層21の25℃における貯蔵弾性率G’は、0.01MPa以上が好ましく、0.02MPa以上がより好ましい。第一粘着剤層21の25℃における貯蔵弾性率G’は、0.03MPa以上、0.05MPa以上、または0.1MPa以上であってもよい。
【0093】
<第二粘着剤層>
第二粘着剤層22は、表示デバイス204において、光学フィルム10と画像表示セル70との貼り合わせに用いられる。第二粘着剤層22は透明粘着シートであり、可視光透過率が高いことが好ましい。第二粘着剤層22の波長420nmにおける光透過率は85%以上であり、88%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。第二粘着剤層22のヘイズは2%以下が好ましく、1%以下がより好ましい。
【0094】
粘着剤層22を構成する粘着剤は特に限定されず、各種のポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。前述のように、第二粘着剤層22を構成する粘着剤としては、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましい。
【0095】
第二粘着剤層22の厚みは、特に限定されない。第二粘着剤層22には、段差吸収性は要求されないため、第二粘着剤層22の厚みは、第一粘着剤層21の厚みよりも小さくてもよい。第二粘着剤層22の厚みは、3~30μmが好ましく、5~27μmがより好ましく、10~25μmがさらに好ましい。
【0096】
第二粘着剤層22の25℃における貯蔵弾性率G’は、例えば、0.02~5MPa程度である。第二粘着剤層22には、段差吸収性は要求されないため、第二粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率G’は、第一粘着剤層21のG’よりも大きくてもよい。
【0097】
第二粘着剤層22は紫外線吸収性を有していてもよく、紫外線吸収性を有していなくてもよい。第二粘着剤層22の厚みが30μm以下であれば、第二粘着剤層が紫外線吸収性を有していなくても、積層体への紫外線レーザーの照射により、第二粘着剤層22に貫通孔を形成できる。そのため、第二粘着剤層の波長355nmにおける光透過率は、80%以上、83%以上、または85%以上であってもよい。第二粘着剤層22の厚みが30μmよりも大きい場合は、紫外線レーザーによる加工性を高める観点から、第二粘着剤層22の波長355nmにおける光透過率は、80%以下が好ましく、75%以下がより好ましい。第二粘着剤層22の波長355nmにおける光透過率は、第一粘着剤層21の波長355nmにおける光透過率より大きくてもよい。
【0098】
<両面粘着剤付き光学フィルム>
光学フィルム10の視認側の主面に第一粘着剤層21を設け、光学フィルム10の第二主面側の主面に第二粘着剤層22を設けることにより、両面粘着剤付き光学フィルム25が形成される。光学フィルム10に第一粘着剤層21および第二粘着剤層22を形成する方法としては、例えば、剥離フィルム上に粘着剤組成物を塗布し、溶媒等を乾燥除去して、必要に応じて架橋処理を行って粘着剤層を形成した後に、光学フィルム10上に粘着剤層を転写する方法;または、光学フィルム10に粘着剤組成物を塗布し、溶媒等を乾燥除去して、粘着剤層を光学フィルム上に形成する方法等が挙げられる。光学フィルム上に粘着剤層を転写する方法では、粘着剤層の形成に用いた離型フィルムを、そのまま両面粘着剤付き光学フィルムの離型フィルム41,42として用いてもよい。光学フィルム10上に粘着剤組成物を塗布して粘着剤層を形成する場合は、溶媒を乾燥除去後の粘着剤層上に、離型フィルムが設けられる。
【0099】
<離型フィルム>
粘着剤層21,22に仮着される離型フィルム41,42としては、フィルム基材の表面に離型層を備えるものが好ましく用いられる。離型層の材料としては、シリコーン系離型剤、フッ素系離型剤、長鎖アルキル系離型剤、脂肪酸アミド系離型剤等が挙げられる。アクリル系粘着剤に対する密着性と剥離性とを両立可能であることから、シリコーン離型剤が好ましい。
【0100】
離型フィルムのフィルム基材としては、透明性を有する樹脂フィルムが好ましい。樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂が特に好ましい。
【0101】
離型フィルム41,42の厚みは、10~200μmが好ましく、25~150μmがより好ましい。離型フィルム41の厚みと、離型フィルム42の厚みは同一でもよく異なっていてもよい。
【0102】
第二粘着剤層22に画像表示セル70を貼り合わせた積層体に、紫外線レーザーを照射して加工を行う場合、離型フィルム42は剥離除去されているため、離型フィルム42の光学特性は、レーザー加工性に特段の影響を与えない。画像表示セル70側から紫外線レーザーを照射する場合、離型フィルム41は、紫外線吸収性を有していてもよく、紫外線吸収性を有していなくてもよい。そのため、離型フィルム41,42の波長355nmにおける光透過率は、80%以上、85%以上または90%以上であってもよい。後に詳述するように、積層体の離型フィルム側の面から紫外線レーザーを照射する場合は、レーザー照射面の離型フィルムが紫外線吸収性を有していることが好ましく、レーザー照射面の離型フィルムの波長355nmにおける光透過率は15~70%が好ましい。
【0103】
[光学フィルムのカッティング]
両面粘着剤付き光学フィルム25の粘着剤層21,22の表面に離型フィルム41,42が仮着された積層体102は、必要に応じて所望サイズにカットした後、粘着剤層の表面に仮着された離型フィルムを剥離して、画像表示セル70やカバーウインドウ80等の被着体に貼り合わせられる。
【0104】
ロールトゥーロール方式で大面積のシート(マザー基板)を作製した後、被着体のサイズにあわせた所定サイズにカッティングすることにより、枚葉の両面粘着剤付き光学フィルムが得られる。この方法では、マザー基板から多数の枚葉のシートが得られるため、生産性を向上できる。一般には、マザー基板から、画像表示セル70のサイズ(画面サイズ)と合致する枚葉の製品サイズにカットされる。カット方法としては、トムソン刃等を用いて打ち抜く方法や、丸刃および皿刃等のカッターや、レーザー光、水圧を利用する方法等が挙げられる。
【0105】
図2に示す積層体102では、粘着剤層21,22の表面に離型フィルム41,42が仮着されているため、粘着剤層の主面は保護されている。一方で、粘着剤層の端面は露出した状態であり、端面からの粘着剤のはみ出しにより、糊欠けや糊汚れを生じる場合がある。枚葉の粘着剤付き光学フィルムでは、糊欠けや糊汚れを防止するために、粘着剤層の端面を、光学フィルム10の端面や離型フィルム41,42の端面よりも内側に設けてもよい。
【0106】
例えば、図5に示す積層体105のように、離型フィルム41,42が、光学フィルム10および粘着剤層21,22の端面よりも外側に張り出して設けられ、粘着剤層21,22の端面が離型フィルム41,42の端面よりも内側に位置していてもよい。図6に示す積層体106のように、粘着剤層21,22と離型フィルム41,42との界面近辺において、粘着剤層21,22端面が離型フィルム41,42の端面とほぼ一致しており、粘着剤層21,22の厚み方向中心部付近において、粘着剤層21,22の端面が離型フィルム41,42の端面よりも内側に位置する形状であってもよい。
【0107】
両面に離型フィルム41,42が仮着された両面粘着剤付き光学フィルム25を、主面(離型フィルム付設面)から加圧して、粘着剤層21,22の端部を光学フィルム10の端部からはみ出させた状態でカットした後に、圧力を開放することにより、図6に示す積層体106のように、粘着剤層21,22の端面を、光学フィルム10の端面や離型フィルム41,42の端面よりも内側に存在させることができる。この方法を採用する場合、ロールトゥーロール方式で作製したマザー基板を、トムソン刃等で打ち抜き、打ち抜き後の積層体を複数枚重ねた状態で、積層方向から加圧し、粘着剤層が端面からはみ出した状態で回転刃等を用いて、打ち抜きによるカット面の内側をカット(切削)して製品サイズに仕上げる方法が好ましい。
【0108】
例えば、光学フィルム10上への粘着剤層21,22の付設面積を制御する方法、粘着剤層21,22を付設後に粘着剤層部分だけを取り除く方法等により、図5に示すように、離型フィルム41,42が、粘着剤層21,22の端面よりも外側に張り出した枚葉の積層体105を形成できる。
【0109】
生産性の観点からは、ロールトゥーロール方式でマザー基板を作製し、粘着剤付き光学フィルムおよび離型フィルムを切断加工する方法が好ましい。例えば、粘着剤付き光学フィルムのマザー基板を、以下の手順で切断加工することにより、離型フィルム41,42が、粘着剤層21,22の端面よりも外側に張り出した枚葉の積層体105を形成できる。
【0110】
まず、両面に離型フィルム41,42が設けられた積層体の離型フィルム42側の面からハーフカットを行い、離型フィルム42および両面粘着剤付き光学フィルム25を切断する。その後、切断線に囲まれた領域の両面粘着剤付き光学フィルム、および全面の離型フィルム42を、離型フィルム41の表面から剥離除去する。両面粘着剤付き光学フィルム25の第二粘着剤層22上に別の離型フィルム43を貼り合わせることにより、図7に示すように、2枚の離型フィルム41,43の間に、枚葉の両面粘着剤付き光学フィルム25が複数配置された積層体307が形成される。
【0111】
この積層体307を切断することにより、離型フィルム41,43が、両面粘着剤付き光学フィルム25の端面よりも外側に張り出した枚葉の積層体が得られる。積層体を切断する際に、両面粘着剤付き光学フィルム25が設けられていない領域の離型フィルム41を切断すれば、図5に示すように、離型フィルム43の張り出し量が大きい積層体が得られる。
【0112】
マザー基板をキャリアシートに貼り合わせて、枚葉へのカッティングを行ってもよい。両面に離型フィルム41,42が設けられた積層体の離型フィルム41側の面にキャリアシート49を貼り合わせ、離型フィルム42側からハーフカットを行う。この際、離型フィルム42と両面粘着剤付き光学フィルム25を切断するようにハーフカットを行い、その切断線よりも外側で、離型フィルム42、両面粘着剤付き光学フィルム25および離型フィルム42を切断するようにハーフカットを行う。切断線に囲まれた離型フィルム42、切断線に囲まれた両面粘着剤付き光学フィルム25、および全面の離型フィルム42を、キャリアシート49の表面から剥離除去する。両面粘着剤付き光学フィルム25の第二粘着剤層22上に別の離型フィルム43を貼り合わせることにより、図8に示す積層体308が得られる。
【0113】
この積層体308の離型フィルム43を切断し、キャリアシート49から離型フィルム41、両面粘着剤付き光学フィルム25および離型フィルム43の積層体を剥離することにより、図5に示すように、離型フィルム43の張り出し量が大きい積層体が得られる。
【0114】
粘着剤層の端面よりも外側に張り出すように離型フィルムを設ける場合、一方の面の離型フィルムの張り出し量と他方の面の離型フィルムの張り出し量は、同一でも異なっていてもよい。図5に示すように、両面の離型フィルムの張り出し量が異なることにより、剥離対象の離型シートを選択的に摘むことが容易となる。先に剥離する離型フィルムの張り出し量を大きくすることにより、作業性がさらに向上する。第二離型フィルム42(43)を第二粘着剤層22から剥離して、第二粘着剤層22に画像表示セル70を貼り合わせた後、第一離型フィルム41を第一粘着剤層21から剥離して、第一粘着剤層21にカバーウインドウ80を貼り合わせる場合は、第二離型フィルム42(43)の張り出し量を大きくすればよい。
【0115】
[貫通孔の形成]
第二粘着剤層22の表面に仮着された第二離型フィルム42を剥離し、第二粘着剤層22に、画像表示セル70を貼り合わせて固着積層することにより、光学積層体103が形成される。画像表示セル70上に第二粘着剤層22を介して光学フィルム10を貼り合わせ、その上に、第一粘着剤層21および第一離型フィルム41を積層して、光学積層体103を形成してもよい。
【0116】
積層体103の画像表示セル70側から紫外線レーザーを照射することにより、画像表示セル70、第二粘着剤層22、光学フィルム10、第一粘着剤層21、および第一粘着剤層21上に仮着された離型フィルム41を貫通するように貫通孔(細孔)が形成される。紫外線レーザーとしては、波長400nm以下のレーザー光を照射できるものであれば特に限定されないが、高出力で加工性に優れることから、YAGレーザーの第三高調波(波長355nm)が好ましい。レーザパワーは、例えば、0.1~50W程度である。
【0117】
貫通孔5の形状は特に限定されず、画像表示セル70の下に配置される光学素子91の形状にあわせて適宜設定すればよい。貫通孔5の形状は、円形、楕円形、三角形、四角形、多角形、線状等であってもよい。光学素子91としてカメラが配置される場合、カメラのレンズの形状にあわせて、円形の貫通孔を設ければよい。光学積層体に複数の貫通孔を形成してもよい。
【0118】
レーザー光源および光学積層体の位置を固定してレーザー照射を行う場合、レーザー加工により形成される貫通孔は、レーザー光の光径と同程度の細孔である。貫通孔5の大きさがレーザー光径よりも大きい場合は、光学積層体に対してレーザー光源を相対移動させることにより、目的とするサイズ・形状を有する貫通孔5を形成できる。貫通孔5を形成する領域の全体にレーザーを照射して開口を形成してもよい。また、貫通孔5の形状の外周に沿ってレーザーを照射して、その内部をくり抜いて、目的とするサイズ・形状の貫通孔5を形成することもできる。
【0119】
画像表示セル70には、ポリイミドフィルム等の紫外線吸収性部材が含まれているため、画像表示セル70が紫外線レーザーを吸収する。紫外線レーザーの吸収により、画像表示セル70が発熱・気化するため、その蒸気とともに、画像表示セル70上に設けられた第二粘着剤層22、光学フィルム10、第一粘着剤層21および離型フィルム41が吹き飛ばされて、貫通孔が形成される。
【0120】
第二粘着剤層22、光学フィルム10および第一粘着剤層21が紫外線吸収性を有していれば、これらの光学部材も紫外線レーザーを吸収するため、加工精度が向上する。前述のように、第二粘着剤層22の厚みが小さい場合は(例えば30μm以下)、第二粘着剤層22が紫外線吸収性を有していなくても、十分な加工性を示す。離型フィルム41も紫外線吸収性を有していてもよく、紫外線吸収性を有していなくてもよい。
【0121】
第一粘着剤層21は、紫外線吸収性を有しており、紫外線レーザーを吸収するため、第一粘着剤層21の厚みが大きく柔らかい場合であっても、良好な加工性を示す。第一粘着剤層21が紫外線吸収性を有していれば、その加工時の加熱・気化の勢いで、第一粘着剤層21上に仮着された離型フィルム41も加工されるため、レーザー照射領域の周辺での、離型フィルムの剥離や気泡の混入を抑制できる。
【0122】
[表示デバイスの形成]
第一粘着剤層21に仮着された離型フィルム41を剥離し、カバーウインドウ80を貼り合わせることにより、第一粘着剤層21にカバーウインドウ80が固着積層され、第二粘着剤層22に画像表示セル70が固着積層された光学積層体(画像表示素子)が形成される。この光学積層体は、画像表示セル70から第一粘着剤層21までを貫通する貫通孔5を有している。
【0123】
貫通孔5の下に、光学素子91を配置することにより、光学素子付き表示デバイスが得られる。光学素子91は、カメラや光センサ等の受光素子、またはLED等の発光素子であってもよい。
【0124】
カバーウインドウ80としては、適宜の機械強度および厚みを有する透明板が用いられる。このような透明板としては、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、透明ポリイミド樹脂等の透明樹脂板、またはガラス板等が用いられる。カバーウインドウ80の厚みは、例えば20~2000μm程度である。フレキシブルデバイスにおいては、カバーウインドウ80として透明樹脂フィルムを用いることが好ましく、その厚みは、20~500μmが好ましく、30~300μmがより好ましく、50~200μmがさらに好ましい。カバーウインドウ80として、折り曲げ可能な薄ガラス基板を用いてもよい。
【0125】
カバーウインドウ80はタッチパネルセンサーと一体化されたものでもよい。カバーウインドウ80の視認側表面には、反射防止層やハードコート層等が設けられていてもよい。
【0126】
第一粘着剤層21上にカバーウインドウ80を貼り合わせた後に、貼り合わせ界面や、印刷段差近傍の気泡を除去するために、加熱、加圧、減圧等の処理を行ってもよい。ディレイバブルの抑制等を目的として、オートクレーブ処理を実施してもよい。
【0127】
第一粘着剤層21が光硬化性粘着剤である場合、第一粘着剤層21にカバーウインドウ80を貼り合わせた後に、第一粘着剤層を光硬化することが好ましい。例えば、カバーウインドウ80を通して、紫外線等の活性光線を照射することにより、第一粘着剤層21の光硬化が行われる。粘着剤を光硬化することにより、接着信頼性が向上する。
【0128】
[孔あけ加工の変形例]
上記の例では、第二粘着剤層22に被着体として画像表示セル70が固着積層された積層体103に、画像表示セル70側から紫外線レーザーを照射して貫通孔5を形成する場合を中心に説明したが、紫外線レーザーによる貫通孔の形成は、他の実施形態にも適用可能である。
【0129】
例えば、光学積層体103の第一粘着剤層21上に仮着された離型フィルム41側から紫外線レーザーを照射して貫通孔5を形成してもよい。離型フィルム41側から紫外線レーザーを照射する場合は、離型フィルム41が紫外線吸収性を有していることが好ましく、離型フィルム41の波長355nmにおける光透過率は、70%以下が好ましく、60%以下がより好ましい。
【0130】
レーザー照射面に配置された離型フィルム41の紫外線吸収性が高いほど(波長355nmにおける光透過率が小さいほど)、紫外線レーザーによる加工効率が向上する傾向がある。一方、離型フィルム41の紫外線吸収性が過度に大きい場合は、離型フィルム41に形成された貫通孔の周辺(レーザー照射領域の周辺)に、気泡が発生する場合がある(図14参照)。離型フィルムに気泡が生じる原因は定かではないが、離型フィルムのフィルム基材(例えば、PETフィルム)は、ポリイミドフィルム等に比べて耐熱性が低いため、紫外線レーザーを吸収した際の発熱により気泡が生じやすいことが一因として考えられる。
【0131】
表示デバイスの形成時に、離型フィルム41は剥離され、カバーウインドウ等の被着体が貼り合わせられるため、離型フィルム41の貫通孔の周辺に気泡が発生していても、品質上の問題は生じない。ただし、離型フィルム41に気泡が生じると、粘着剤層等に混入した気泡との区別がつけ難く、工程検査が困難となったり、判断ミスの原因となる場合がある。また、離型フィルム41に生じた気泡による変形が、第一粘着剤層21に転写して外観不良の原因となる場合がある。そのため、離型フィルム41側から紫外線レーザーを照射して孔あけ加工を行う場合は、離型フィルム41に気泡が生じないことが好ましい。
【0132】
離型フィルム41の紫外線吸収性が低い(紫外線透過率が高い)場合に、気泡の発生が抑制される傾向がある。レーザー加工による離型フィルム41への気泡の発生を抑制する観点において、離型フィルム41の波長355nmにおける光透過率は、15%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、30%以上がさらに好ましい。離型フィルム41の波長355nmにおける光透過率は、35%以上または40%以上であってもよい。
【0133】
<画像表示セルとの積層前の孔あけ加工>
第二粘着剤層22に画像表示セルを貼り合わせる前の積層体に紫外線レーザーを照射して孔あけ加工を行ってもよい。例えば、第一粘着剤層21に離型フィルム41が仮着され、第二粘着剤層22に離型フィルム42が仮着された積層体102に紫外線レーザーを照射して、図9に示すように、貫通孔7を有する積層体105を形成してもよい。貫通孔7を形成する際、紫外線レーザーは、離型フィルム41側および離型フィルム42側のいずれから照射してもよい。
【0134】
レーザー照射面側の離型フィルムは、紫外線吸収性を有していることが好ましく、レーザー照射面の離型フィルムの波長355nmにおける光透過率は、70%以下が好ましく、60%以下がより好ましい。レーザー加工領域周辺での気泡の発生を抑制する観点から、レーザー照射面の離型フィルムWの波長355nmにおける光透過率は、15%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、30%以上がさらに好ましい。レーザー照射面の離型フィルムの波長355nmにおける光透過率は、35%以上または40%以上であってもよい。
【0135】
例えば、離型フィルム42側から紫外線レーザーを照射する場合は、離型フィルム42の波長355nmにおける光透過率が上記範囲であることが好ましい。離型フィルム42側から紫外線レーザーを照射する場合、離型フィルム41は紫外線吸収性を有していてもよく、紫外線吸収性を有していなくてもよい。
【0136】
離型フィルム41側から紫外線レーザーを照射する場合は、離型フィルム41の波長355nmにおける光透過率が上記範囲であることが好ましい。離型フィルム41側から紫外線レーザーを照射する場合、離型フィルム42は紫外線吸収性を有していてもよく、紫外線吸収性を有していなくてもよい。
【0137】
両面粘着剤付き光学フィルム25の粘着剤層21,22の表面に離型フィルムが仮着された積層体は、第一粘着剤層21、光学フィルム10および第二粘着剤層22を貫通する貫通孔が設けられていればよく、一方または両方の離型フィルムには貫通孔が設けられていなくてもよい。
【0138】
例えば、図10に示す光学積層体110では、両面粘着剤付き光学フィルム25に設けられた貫通孔8が、第一粘着剤層21に仮着された離型フィルム41を貫通しているが、第二粘着剤層22に仮着された離型フィルム47には貫通孔が設けられていない。第二粘着剤層22に仮着された離型フィルムに貫通孔が設けられ、第一粘着剤層21に仮着された離型フィルムに貫通孔が設けられていなくてもよい。
【0139】
図11に示す光学積層体111では、両面粘着剤付き光学フィルム25を構成する第一粘着剤層21、光学フィルム10および第二粘着剤層22に貫通孔9が設けられているが、粘着剤層21,22に仮着された離型フィルム46,47には貫通孔が設けられていない。
【0140】
粘着剤層21,22に離型フィルム41、42が仮着された光学積層体102に、紫外線レーザーを照射して貫通孔7を形成した後、貫通孔が設けられた積層体109の離型フィルム41,42の一方または両方を、別の離型フィルム46,47に貼り替えることにより、片面または両面の離型フィルムに貫通孔が形成されていない光学積層体が得られる。
【0141】
レーザー加工により貫通孔を形成後に、離型フィルムを貼り替えることにより、両面粘着剤付き光学フィルム25の貫通孔が、離型フィルムで塞がれるため、光学積層体のハンドリングや保管の際の、貫通孔内への異物の混入等を防止できる。光学フィルムおよび粘着剤層に貫通孔を形成後に、粘着剤層に仮着された離型フィルムを貼り替える場合、貼り替え後の離型フィルムは、紫外線吸収性を有していてもよく、紫外線吸収性を有していなくてもよい。
【0142】
貫通孔が設けられた粘着剤層21,22に仮着された離型フィルムは、粘着剤層21,22の端面よりも外側に張り出していてもよい。第一粘着剤層21に仮着された離型フィルムが第一粘着剤層の端面よりも外側に張り出していてもよく、第二粘着剤層22に仮着された離型フィルムが第二粘着剤層22の端面よりも外側に張り出していてもよい。図12に示すように、両面の離型フィルム41,48が、それぞれ、第一粘着剤層21の端面および第二粘着剤層22の端面よりも外側に張り出していてもよい。両面の離型フィルムが粘着剤層の端面(両面粘着剤付き光学フィルム25の端面)よりも外側に張り出している場合、一方の面の離型フィルムの張り出し量と他方の面の離型フィルムの張り出し量は、同一でも異なっていてもよい。
【0143】
大面積のマザー基板から、枚葉の光学積層体を切り出す場合、レーザー加工による貫通孔の形成は、カッティングの前後いずれに実施してもよい。マザー基板に紫外線レーザーを照射して貫通孔を形成した後、カッティング前、またはカッティング後に、一方または両方の面の離型フィルムを貼り替えてもよい。
【0144】
マザー基板へのレーザー照射による貫通孔の形成後、枚葉へのカッティングの過程において離型フィルムを貼り替えてもよい。一実施形態では、両面に離型フィルム41,42が設けられた積層体に貫通孔を形成した後、ハーフカットにより離型フィルム42および両面粘着剤付き光学フィルムを切断する。切断線に囲まれた領域の両面粘着剤付き光学フィルム、および全面の離型フィルム42を、離型フィルム41の表面から剥離除去する。両面粘着剤付き光学フィルム25の第二粘着剤層22上に別の離型フィルム48を貼り合わせることにより、図13に示すように、2枚の離型フィルム41,48の間に、貫通孔8が設けられた枚葉の両面粘着剤付き光学フィルム25が複数配置された積層体313が形成される。
【0145】
積層体313では、貫通孔8は、第一粘着剤層21上に離型フィルム41を貫通しているが、離型フィルム48には貫通孔が設けられていない。この積層体313を切断することにより、図12に示すように、第二粘着剤層22、光学フィルム10、第一粘着剤層21、および第一粘着剤層21に仮着された離型フィルム41に貫通孔が設けられ、離型フィルム41,48が、粘着剤層21,22の端面よりも外側に張り出した枚葉の積層体が得られる。
【0146】
貫通孔を形成後の光学積層体から、第二粘着剤層22に仮着された離型フィルムを剥離し、第二粘着剤層22に画像表示セル70を貼り合わせ、第一粘着剤層21に仮着された離型フィルムを剥離し、第一粘着剤層21にカバーウインドウを貼り合わせることにより、画像表示素子が形成される。
【0147】
画像表示セル70には事前に貫通孔を形成しておいてもよい。この場合は、画像表示セル70に設けられた貫通孔と、両面粘着剤付き光学フィルム25に設けられた貫通孔の位置が一致するように、位置合わせを行えばよい。
【0148】
第二粘着剤層22に画像表示セル70を貼り合わせた後に、画像表示セル70に貫通孔を形成する場合は、両面粘着剤付き光学フィルムに設けられた貫通孔の位置に紫外線レーザー等を照射すればよい。この場合のレーザー照射はいずれの面から実施してもよい。
【実施例
【0149】
以下に、光学積層体のレーザー加工の実験例を示して、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0150】
[両面粘着剤付き偏光板の作製]
<作製例1>
光学フィルムとして、ヨウ素が含浸された厚み25μmの延伸ポリビニルアルコールフィルムからなる偏光子の両面に、厚み40μmのトリアセチルセルロースフィルムが貼り合わせられた偏光板を用いた。トリアセチルセルロースフィルムは、紫外線吸収剤を含んでおり、波長355nmの光透過率は0%であった。
【0151】
上記の偏光板の片面に、第一粘着剤層として、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤を含む厚み150μmのアクリル系粘着シート(波長355nmの光透過率:64%、波長420nmの光透過率:92%、25℃における貯蔵弾性率:0.1MPa)と、厚み75μmの離型フィルム(表面にシリコーン系離型層が設けられた二軸延伸PETフィルム、波長355nmの光透過率:85%)を貼り合わせた。偏光板の他方の面に、第二粘着剤層として、紫外線吸収剤を含まない厚み20μmのアクリル系粘着シート(波長355nmの光透過率:85%、波長420nmの光透過率:92%、25℃における貯蔵弾性率:0.12MPa)と、厚み38μmの離型フィルムを貼り合わせ、偏光板の両面のそれぞれに粘着剤層を備え、粘着剤層に離型フィルムが仮着された積層体を得た。
【0152】
<作製例2~4>
第一粘着剤層の紫外線吸収剤の量を変更したこと以外は、作製例1と同様にして、積層体を形成した。作成例4では、第一粘着剤層として、紫外線吸収剤を含まない粘着剤を用いた。作成例2~4における第一粘着剤層の波長355nmにおける光透過率は表1に示す通りであった。
【0153】
<作製例5>
第二粘着剤層の厚みを40μmに変更したこと以外は、作製例1と同様にして、積層体を形成した。
【0154】
<作製例6>
第一粘着剤層上の離型フィルムとして、紫外線吸収剤を含む二軸延伸PETフィルムを用いた。この離型フィルムは、波長355nmにおける光透過率が1%であった。第一粘着剤層上の離型フィルムを変更したこと以外は、作製例1と同様にして、積層体を形成した。
【0155】
[加工性評価用試料の作製]
作製例1~6の積層体の第二粘着剤層上の離型フィルムを剥離し、第二粘着剤層上に厚み25μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン製造「カプトンEN100」、波長355nmにおける光透過率0%)を貼り合わせて、加工性評価用試料を作製した。
【0156】
[紫外線レーザーによる加工]
加工性評価用試料に、YAG第三高調波の紫外線レーザー(波長355nm、周波数40Hz、出力0.4W)を照射して、貫通孔を形成した。レーザー光源を直径3mmの円の外周(円周)に沿って、10mm/秒の速度で移動させながらレーザー照射を行い、円周を30周させて、円周の内部をくり抜くことにより、直径約3mmの円形の貫通孔を形成した。作製例1~5の試料については、ポリイミドフィルム側(第二粘着剤層側)からレーザーを照射し、作製例6の試料については、PET離型フィルム側(第一粘着剤層側)からレーザーを照射した。
【0157】
[評価]
<第一粘着剤層の気泡の有無>
貫通孔を形成後の試料から離型フィルムを剥離し、第一粘着剤層の表面を光学顕微鏡(直接倍率5倍)にて透過観察し、気泡の有無を確認した。気泡がみられなかったものを〇、気泡がみられたものを×とした。
【0158】
<切断加工性>
円周に沿って30周のレーザー加工を行った際の切断加工性を、下記の基準により判断した。
〇:レーザー加工後に円周の内部が既に脱落していたもの、または円周の外部に変形を伴わずに円周の内部をくり抜くことができたもの
×:レーザー加工後に円周の内部が脱落しておらず、円周の内部をくり抜く際に、円周の外部に変形が生じたものまたは円周の内部をくり抜くことができなかったもの
【0159】
各作製例の積層体の構成、およびレーザー加工性の評価結果を表1に示す。
【0160】
【表1】
【0161】
第一粘着剤層が紫外線吸収性を有する作製例1~3は、いずれも良好な加工性を示した。第一粘着剤層が紫外線吸収剤を含まない作製例4では、第一粘着剤層に気泡がみられ、レーザー加工性が劣っていた。これらの結果から、第一粘着剤層に紫外線吸収性を持たせることにより、紫外線レーザーによる加工性が向上し、高精度の切断加工を実現できることが分かる。
【0162】
第二粘着剤層の厚みが大きい作製例5では、第一粘着剤層への気泡の発生はみられなかったが、第二粘着剤層の切断不良が確認された。第二粘着剤層の厚みが小さい作成例1~4では第二粘着剤層の切断不良がみられなかったことから、第二粘着剤層の厚みが大きいことがレーザーによる加工性低下の原因であるといえる。そのため、第二粘着剤層は厚みが小さいことが好ましく、第二粘着剤層の厚みが大きい場合は、紫外線吸収剤の添加等により紫外線吸収性をもたせることが好ましいことが分かる。
【0163】
第一粘着剤層側からレーザー照射を行った作製例6は、作製例1~3と同様に、粘着剤層の加工性が良好であった。これらの結果から、レーザー照射面の被着体が紫外線吸収性を有していれば、紫外線レーザーによる加工が可能であることが分かる。
【0164】
なお、作製例6では、粘着剤層の加工性は良好であったが、レーザー照射面の離型フィルムの光学顕微鏡観察において、図14に示すように、貫通孔の周辺に、20μm程度の気泡が発生していた。作製例1~5では、ポリイミドフィルムおよび離型フィルムのいずれにも、図14のような気泡は確認されなかった。また、作製例6のポリイミドフィルムにも気泡は確認されなかった。
【0165】
これらの結果から、作製例6では、紫外線レーザー照射面の離型フィルムの紫外線吸収性が高く、紫外線レーザー照射時の発熱が大きいために、離型フィルムに気泡が発生したものと考えられる。したがって、離型フィルム側の面から紫外線レーザーを照射する場合は、レーザー加工が可能な程度の紫外線吸収性を有し、かつ過度の紫外線吸収に起因する気泡の発生を抑制するように、離型フィルムの紫外線吸収性(紫外線透過率)を調整することが好ましいといえる。
【符号の説明】
【0166】
10 光学フィルム
11 偏光子
13,15 透明フィルム
21,22 粘着剤層
25 両面粘着剤付き光学フィルム
41,42,43,46,47,48 離型フィルム
49 キャリアシート
70 画像表示セル(有機ELセル)
5,7,8,9 貫通孔
101,102,103,105,106,109,110,111,112 光学積層体
91 光学素子
204 表示デバイス

図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14