(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】羽根駆動装置
(51)【国際特許分類】
G03B 9/02 20210101AFI20231127BHJP
【FI】
G03B9/02 B
(21)【出願番号】P 2019084088
(22)【出願日】2019-04-25
【審査請求日】2022-04-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中脇 慎也
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-003993(JP,A)
【文献】特開2012-145929(JP,A)
【文献】国際公開第2016/199899(WO,A1)
【文献】特開2017-207561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 9/00-9/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絞り羽根を回動させて光が通過する開口の大きさを調節する羽根駆動装置であって、
光が通過する固定開口が形成された第一の開口形成部材と、
光の通過経路に出入りする複数の絞り羽根と、
前記絞り羽根と係合して前記絞り羽根を回動させる駆動リングと、
光軸方向における前記絞り羽根と前記駆動リングとの間に設けられ、前記絞り羽根と前記駆動リングとの複数の係合部よりも前記固定開口の径方向で外側に配置された仕切り部材と
を備え、
前記駆動リングは、前記係合部間の領域で光軸中心に向けて切り欠かれている切り欠き部
と、前記仕切り部材と前記光軸方向で重なる受け部と、を有し、
前記切り欠き部は、前記第一の開口形成部材の前記固定開口の縁より前記径方向の内側に位置し、
前記複数の係合部が前記固定開口の縁または前記仕切り部材と摺接することで、前記駆動リングの前記径方向における移動が規制され
、
前記駆動リングの前記受け部は、前記係合部の周囲で前記切り欠き部の外縁部から径方向外側に突出して設けられており、
前記光軸方向において前記第一の開口形成部材と前記仕切り部材とで、前記駆動リングの前記受け部は挟持され、前記切り欠き部は挟持されないことを特徴とする羽根駆動装置。
【請求項2】
前記係合部は、前記絞り羽根に設けられた駆動ピンと前記駆動リングに設けられた係合穴とが係合することで構成され、
前記駆動ピンが前記固定開口の縁または前記仕切り部材と係合することで、前記駆動リングの前記径方向における移動が規制されることを特徴とする請求項1に記載の羽根駆動装置。
【請求項3】
前記羽根駆動装置は、前記第一の開口形成部材との間に前記駆動リング、仕切り部材および前記絞り羽根を収容するように配置された第二の開口形成部材を備え、
前記駆動リングは、前記第一の開口形成部材と前記仕切り部材に挟持されることを特徴とする請求項1に記載の羽根駆動装置。
【請求項4】
前記受け部は、前記駆動リングにおける前記絞り羽根との係合位置の周囲に設けられたことを特徴とする請求項
1に記載の羽根駆動装置。
【請求項5】
前記駆動リングは、ばね特性を有するシート材から形成されたことを特徴とする請求項1から
4のいずれか一項に記載の羽根駆動装置。
【請求項6】
前記駆動リングは、少なくとも片面に摺動性改善処理、帯電防止処理、反射防止処理のいずれかが施された表面層を有するシート材から形成されたことを特徴とする請求項
5に記載の羽根駆動装置。
【請求項7】
前記係合部が、前記第一の開口形成部材の前記固定開口の縁と摺接しながら回動することを特徴とする請求項
6に記載の羽根駆動装置。
【請求項8】
前記複数の係合部のいずれかが、前記仕切り部材の内径部と摺接しながら回動することを特徴とする請求項1から
6のいずれか一項に記載の羽根駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、絞り装置などの羽根駆動装置及びこの羽根駆動装置を備えたカメラ等の撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、羽根を駆動するための羽根駆動装置としては、光路用の開口部を有する地板と、この地板に支持されて開口部を開閉するように動作する羽根と、地板に対して回動する駆動リングとを備えたものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このような特許文献1のような羽根駆動装置では、回動する駆動リングに羽根を連動させ、光路用の開口部を開閉するように羽根を動作させる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、カメラ等に備えられた光量調節装置においては、連続撮影速度向上のため高速駆動が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る羽根駆動装置は、上記を鑑み、
複数の絞り羽根を回動させて光が通過する開口の大きさを調節する羽根駆動装置であって、
光が通過する固定開口が形成された第一の開口形成部材と、
光の通過経路に出入りする複数の絞り羽根と、
前記絞り羽根と係合して前記絞り羽根を回動させる駆動リングと、
光軸方向における前記絞り羽根と前記駆動リングとの間に設けられ、前記絞り羽根と前記駆動リングとの複数の係合部よりも前記固定開口の径方向で外側に配置された仕切り部材と
を備え、
前記駆動リングは、前記係合部間の領域で光軸中心に向けて切り欠かれている切り欠き部と、前記仕切り部材と前記光軸方向で重なる受け部と、を有し、
前記切り欠き部は、前記第一の開口形成部材の前記固定開口の縁より前記径方向の内側に位置し、
前記複数の係合部が前記固定開口の縁または前記仕切り部材と摺接することで、前記駆動リングの前記径方向における移動が規制され、
前記駆動リングの前記受け部は、前記係合部の周囲で前記切り欠き部の外縁部から径方向外側に突出して設けられており、
前記光軸方向において前記第一の開口形成部材と前記仕切り部材とで、前記駆動リングの前記受け部は挟持され、前記切り欠き部は挟持されないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高速駆動化に有利な羽根駆動装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態1に係る絞り装置の分解斜視図。
【
図2】実施形態1の羽根駆動装置に用いられる保持基板の斜視図。
【
図3】実施形態1の羽根駆動装置に用いられる駆動リングの斜視図。
【
図4】実施形態1の羽根駆動装置に用いられる仕切り部材の斜視図。
【
図5】実施形態1の羽根駆動装置に用いられる絞り羽根の斜視図。
【
図6】実施形態1の羽根駆動装置に用いられる開口形成部材の斜視図。
【
図7】実施形態1の羽根駆動装置の平面図(上面図)。
【
図8】実施形態1の羽根駆動装置の絞り形状を示す説明図。
【
図10】本発明の実施形態2に係る絞り装置の分解斜視図。
【
図11】実施形態2の羽根駆動装置に用いられる保持基板の斜視図。
【
図12】実施形態2の羽根駆動装置に用いられる駆動リングの斜視図。
【
図13】実施形態2の羽根駆動装置に用いられる仕切り部材の斜視図。
【
図14】実施形態2の羽根駆動装置の平面図(上面図)。
【
図16】本発明の実施形態3に係る絞り装置の分解斜視図。
【
図17】実施形態3の羽根駆動装置の駆動リングと仕切りシートの位置関係を示す平面図。
【
図18】実施形態3の羽根駆動装置を応用した平面図(下面図)。
【
図19】実施形態3の羽根駆動装置を応用した平面図(上面図)。
【
図20】本発明の実施形態4に係る絞り装置の分解斜視図。
【
図21】実施形態4の羽根駆動装置の駆動リングと仕切りシートの位置関係を示す平面図。
【
図22】実施形態4の羽根駆動装置を応用した平面図(下面図)。
【
図23】実施形態4の羽根駆動装置を応用した平面図(上面図)。
【
図24】本発明の実施形態5に係る絞り装置の分解斜視図。
【
図25】実施形態5の羽根駆動装置の駆動リングと仕切りシートの位置関係を示す平面図。
【
図26】実施形態5の羽根駆動装置の平面図(下面図)。
【
図27】実施形態5の羽根駆動装置の平面図(上面図)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
<実施形態1>
図1には、本発明の実施形態1である羽根駆動装置の一例である光量調節装置としての絞り装置の分解斜視図を示す。本発明に係る羽根駆動装置は、撮像装置に適用されることで、撮像素子への光量を調整する光量調整装置として用いることができる。
【0011】
図1に示すように、本実施形態にかかる絞り装置は、中央に固定開口が形成されている保持基板102(第一の開口形成部材)を有している。光軸方向において、保持基板102の上に駆動リング103が設けられ、その上に絞り羽根106が設けられるが、その間には仕切り部材105が設けられている。また、絞り羽根106の上部には開口形成部材107(第二の開口形成部材)が保持基板102に対して固定可能に設けられ、絞り装置を構成している。このように、保持基板102と対向して配置される開口形成部材107の間に駆動リング103、絞り羽根106、仕切り部材105が収容される。
【0012】
図2は、保持基板102の斜視図である。保持基板102は、仕切り部材105を支持する突起部102bと、駆動リング103を支持するレール部102cが備えられている。保持基板102は、樹脂成形にて作成されているが、これに限られない。保持基板102には、
図1に示す駆動部101が取り付けられる。駆動部101としては、例えば、ステッピングモータ、ガルバノモータなどが使用される。駆動部101の回転軸101aに、ピニオン104が取り付けられる。
【0013】
図3は、駆動リング103の斜視図である。駆動リング103は、光通過経路の少なくとも一部を構成する貫通孔を有し、光が通過する経路(光通過経路)を取り囲むような環状の部材(無端リング状部材)から形成され、光通過経路の周囲で回動する。この駆動リング103には、後述する絞り羽根106が係合する。すなわち、駆動リング103は、駆動リング103の回動に伴って絞り羽根106が光通過経路に対して出入りするように連動するよう構成されていることから、絞り羽根106を駆動するための部材(動力伝達部材)となる。この駆動リング103は、基部103aと駆動穴103bと被駆動部103cと基部103aの外周端部において部分的に突出して設けられた遮光部位103dを有する。基部103aを実質的に一様な厚みとすることで、駆動リング回転時の空気抵抗の影響を受けにくくできるため、作動負荷を低減でき、高速応答性、静音性を向上させることができる。
【0014】
駆動リング103は、樹脂成形にて作成されているがこれに限られない。例えば、樹脂フィルム(PETシート材等)をプレス加工して作成されたりしていても良い。プレス加工できる場合は、樹脂成形の形状精度に比べて、形状精度を高精度に形成することができるため、絞り精度を高精度にすることが可能になる。ここで、駆動リング103をシートのプレス加工によって製作する場合には、駆動リング103の径方向内側の内縁部103e(貫通孔の内縁部)、及び径方向外側の外縁部103fには、それぞれ外周に亘ってR形状部が設けられる。このR形状部は、厚さが縁部ほど実質的に薄くなるような先細りとなることから、その縁部が駆動リング103の開口部の形状を規定する。本実施形態の駆動リング103は、このR形状部が羽根側に対向するように絞り装置内に組み込まれる。これにより、絞り羽根との摺動部分、特に駆動リング103の内縁部側の内周部における摺動部分が実質的に少なくなるため、羽根の機動性が向上する。なお、このようなR形状部は、駆動リング103の内縁部103eだけに設けてもよいし、外縁部103fだけに設けてもよい。
【0015】
樹脂フィルムの厚みとしては、0.03mm~0.30mmの材料の使用が可能である。基部103aを極力薄くすることで、回転する際のイナーシャを小さくして、絞り装置を高速動作させることができる。駆動リング103は、保持基板102および開口形成部材107により光軸方向、ラジアル方向とも最適な可動可能な支持をされることで、基部103aを薄くしても、駆動リング103aの変形が最小限に抑えられる。このようなシート状の駆動リング103は、ばね特性を有することが好ましい。
【0016】
また、駆動リング103の基部103aは、片面あるいは両面に表面処理がなされた表面層を有することが好ましい。表面処理としては、例えば、摺動性改善処理、帯電防止処理、反射防止処理などがある。摺動性改善処理の例として摺動塗装することで、駆動リング103と摺動する部品である保持基板102、後述する仕切り部材105との摩擦を低減することができ、省電力での作動が可能になる。また、反射防止処理をすることで、本光量調節装置内に進入した光の反射を抑え、レンズ鏡筒内に光量調節装置が組み込まれた際の、ゴースト、フレア等の発生を防止することができる。これらの表面処理は、複数の処理が施されても良いし、複数の効果のある塗装などの表面処理を施していても良い。
【0017】
また、駆動リング103には、被駆動部103cであるギア部がある。この被駆動部103cは、ピニオン104と噛み合っている。駆動部101で発生した回転力をピニオン104から被駆動部103cに伝え、これにより駆動リング103が回転する。なお、本実施形態では、駆動部101の回転力をピニオン104から駆動リング103に伝えているが、ピニオンの代わりに駆動レバーを使用してもよい。駆動レバーを使用する場合、駆動リング103の被駆動部103cは、カム溝あるいは、被駆動ピン等を用いるとよい。駆動リング103の被駆動部103cとピニオン104のギアの噛み合いでは、被駆動部103cの厚みが薄く、ギアの噛み合い面積が小さいため、ギア同士の噛み合い音が小さい。また、ピニオン104と駆動リング103の質量差が大きいため、被駆動部103cに対しピニオン104にバックラッシがあっても、ギアの噛み合い音、反転音等が小さくなる。
【0018】
また、遮光部103dはフォトインタラプタ108のスリット内を出入りすることで、センサの役割を果たす。光量調節装置の初期位置等の位置検出に使用する。
【0019】
駆動リング103の基部103aは、実質的に均一な厚みであり、無駄な凹凸や穴がないため、絞り羽根106が開閉作動中に駆動リング103とひっかかるような作動不良は防止できる。
【0020】
図4は仕切り部材105の斜視図である。仕切り部材105は、中央に開口部を有する。仕切り部材105は、保持基板102の係合部102aに仕切り部材105の係合穴105aが係合することによって保持基板102に対するラジアル方向の規定がされ、後述する開口形成部材107の複数の突起部107a及び保持基板102の複数の突起部102bによって挟持されることによって、光軸方向に規定される。
【0021】
仕切り部材105は絞り羽根106のカムピン106bを光軸方向に保持基板102側から押さえることができるため、開口形成部材107のカム107bからカムピン106bが脱落することを防ぐことができる。
【0022】
また、仕切り部材105及び保持基板102のレール部102cによって駆動リング103は光軸方向で挟持されるため、駆動リング103は挟持可能な最低限の外形が設けられていればよい。駆動リング103の外形を、レール部102cと仕切り部材105とで挟持できる程度に小型化することで回転時のイナーシャを低減し、高速駆動をすることが可能である。なお、仕切り部材105は、樹脂成形によって作成されているがこれに限られず、例えば、樹脂フィルム(PETシート材等)をプレス加工して作成されたりする。
【0023】
図5は、絞り羽根106の斜視図である。
図5(a)は保持基板102側から見た状態を示し、
図5(b)は開口形成部材107側から見た状態を示している。駆動ピン106aとカムピン106bが羽根部106cに取り付けられている。絞り羽根106は、樹脂成形にて羽根部106cと駆動ピン106aとカムピン106bとが一体成型されているがこれに限られず、例えば、PETシート材等をプレス加工して作成してもよい。また、本実施形態では、9枚の絞り羽根で構成しているが、絞り羽根106の枚数は、2枚以上であれば何枚の構成でもよい。なお、本実施形態では、絞り羽根106を例示して説明するが、その他のシャッタ羽根、あるいは光学フィルタを有する羽根など各種適用した羽根駆動装置としてもよい。なお、光が通過する部分の最大開口は、開口形成部材107又は保持基板102の開口部で規定してもよいし、複数の絞り羽根106の端部によって規定してもよい。
【0024】
また、遮光処理されたシート部材により羽根部106cを作成し、駆動ピン106aとカムピン106bは、樹脂成形で作成し、羽根部106cに接着、溶着、アウトサート成形などで一体化させてもよい。また、駆動ピン106aとカムピン106bを金属ピンで形成し、羽根部106cに接着、溶着、カシメ等で一体化させてもよい。
【0025】
図6は、開口形成部材107の斜視図である。開口形成部材107は、仕切り部材105を支持する複数の支持部となる突起部107aと、複数のカム(カム溝)107bを有している。保持基板102と仕切り部材105で形成された空間の中を、駆動リング103が駆動し、仕切り部材105と開口形成部材107で形成された空間の中を、絞り羽根106が駆動する。
【0026】
絞り羽根106の回転中心軸となる駆動ピン106aは、駆動リング103の駆動穴103bに係合する。ピニオン104が回転すると、駆動リング103の被駆動部103cに力がかかり、駆動リング103が回転する。駆動リング103が回転すると、駆動リング103の駆動穴103bから絞り羽根106の駆動ピン106aに駆動力が与えられ、絞り羽根106が駆動(回動)する。絞り羽根106のカムピン106bは、開口形成部材107に形成されたカム107bに係合している。カム107bによってカムピン106bがガイドされることで、絞り羽根106は、保持基板102の開口内外を出入りする。このようにして、複数の絞り羽根106により、絞り形状が調整され、光が通過する量を調整することが可能になる。
【0027】
図7は、実施形態1の光量調節装置の平面図である。複数の絞り羽根106の駆動ピン106aは、保持基板102の内径部102dと摺接する。駆動リング103は、複数の絞り羽根106の駆動ピン106aが駆動穴103bに係合することによって回転可能に支持されている。また、保持基板102のレール部102cと仕切り部材105の間に、駆動リング103における駆動穴103bの周囲で外縁部103fから径方向外側に突出して設けられた突出部103gが挟持されることによって光軸方向に支持されている。そのため、駆動リング103と保持基板102とが面で密着することがないため、帯電等による駆動リング103の保持基板102への張り付きを防止することができる。
【0028】
また、駆動リング103は、絞り羽根106と係合している駆動穴103b部に負荷がかかる。とくに、小絞り状態では、絞り羽根同士が編み上がるため、絞り羽根106の支持部となる駆動穴103bに大きな負荷がかかる。そのため、駆動リング103は、保持基板102の方向に変形しようとする。保持基板102に設けられたレール102cは、駆動リング103の駆動穴103bの近くを支持する。レール102cは、駆動穴103bの径方向外側を支持する。なお、本実施形態では、レール102cは駆動リング103の駆動穴103bの径方向外側を支持したが、径方向内側を支持してもよいし、径方向内側及び外側の両方で支持してもよい。また、本実施形態ではレール102cを設けたが、光軸方向に突出する突起を設けても同様の効果が得られ、駆動リング103の支持に必要な程度の数、突起を設ければよい。
【0029】
次に、駆動リング103について、絞り羽根106の支持について説明する。
図8に示すように、複数の絞り羽根106は、周方向に均一に配置されている。本実施形態では、
図8に示すように、駆動リング103の回動によって複数の絞り羽根106が連動して、光通過開口の大きさを可変できるようになっている。
【0030】
また、仕切り部材105について、絞り羽根106側の光軸方向に対する支持方法について
図9を用いて説明する。開口形成部材107に形成した突起部107aにて、仕切り部材105が支持され、仕切り部材105の保持基板102側は保持基板102の突起部102bによって支持されている。駆動リング103は、仕切り部材105とレール102cとによって絞り羽根106の可動範囲内において光軸方向に支持されるため、駆動リング103の外形を絞り羽根106の可動範囲より小さくできる。換言すると、絞り羽根106の光軸方向に対する支持を仕切り部材105によって行うことができるため、駆動リング103の外形を絞り羽根106の可動範囲(可動領域)よりも小さくすることができる。このように、駆動リング103の外形を絞り羽根106の可動範囲より小型にすることができるため、高速駆動化に有利となる。突起部107aは、図示では、半球状の複数の凸部としたが、複数それぞれ周方向に延びるレール形状で、駆動リング103を支持してもよい。
【0031】
次に、駆動リング103について、保持基板102側の光軸方向に対する支持方法について説明する。駆動リング103は、保持基板102に形成されたレール102cにより光軸方向に支持されている。
【0032】
このように、駆動リング103は、保持基板102、開口形成部材107、仕切り部材105、よって、羽根可動範囲内で適宜に支持されることにより、薄い基部103aで構成されていても変形することなく、高速作動、静音作動することが可能である。
【0033】
本実施形態の特徴である駆動リング103の光軸方向の支持について改めて説明する。本実施形態では、駆動リング103に対して各絞り羽根106の駆動ピン106aに対応する複数の駆動穴103bを設けているが、駆動リング103と絞り羽根106の係合位置である駆動穴103bの周囲に設けられた受け部を保持基板102のレール102cと仕切り部材105で光軸方向に挟持することによって駆動リング103が挟持され、それ以外の領域では、駆動リング103と、保持基板102及び仕切り部材105とが光軸方向に重ならない。
【0034】
なお、絞り羽根106の駆動ピン106aの光軸方向の長さが十分に確保できる場合は、駆動リング103が撓んだ場合であっても、駆動穴103bから駆動ピン106aが抜けにくくなるため、周方向において駆動穴103bの周囲以外の部分で駆動リング103が光軸方向に挟持されるようにしてもよく、駆動リング103が挟持される部分を周方向において適宜減らしてもよい。なお、駆動ピン106aの光軸方向の長さを十分に確保できない場合は、駆動穴103bの周囲を光軸方向に挟持することが好ましい。このように、駆動リング103が挟持される箇所を必要最低限にし、それ以外の領域は部分的に光軸中心に向けて切り欠くことで、駆動リング103のイナーシャを小さくすることができ、絞り装置を高速動作させることができる。
【0035】
本実施形態の絞り装置は、開口形成部材107に対して各絞り羽根106のカムピン106bに対応する複数のカム溝107bを設け、各絞り羽根106には各カム溝107bに係合するカムピン106bと、駆動リング103に設けられた貫通穴103bに係合する駆動ピン106aとを設けており、駆動ピン106aが駆動リング103を貫通して保持基板102の内径部102dもしくは仕切り部材105の内径部105bと摺接することで、駆動リング103と絞り羽根106のラジアル方向の位置が規定される。
図9においては、仕切り部材105の内径部105bと駆動ピン106aとが摺接する例を示している。
【0036】
また、駆動リング103の径方向(ラジアル方向)における位置の規制について説明する。保持基板102に固定された駆動部101による駆動力を駆動リング103が受けて、開口部の周りを回転することで絞り羽根106が開口部内を出入りして絞り口径を調整するが、本実施形態では、保持基板102の内径部102d(固定開口の縁)もしくは仕切り部材105の内径部105bと、複数の駆動ピン106aとが摺接することで駆動リング103と絞り羽根106のラジアル方向の位置を規定している。保持基板102の外径部と複数の駆動ピン106aとが摺接することで駆動リング103と絞り羽根106のラジアル方向の位置を規定してもよい。さらに、
図9のように回動する絞り羽根106の駆動ピン106aの外接円と保持基板102によって固定された仕切り部材105の内径部105bとが摺接することで駆動リング103と絞り羽根106のラジアル方向の位置を規定してもよいし、仕切り部材105にカム穴を設け、カム穴の外径部と駆動ピン106aとを摺接させ、ラジアル方向の位置を規定してもよい。
【0037】
<実施形態2>
図10には、本発明の実施形態2である光量調節装置としての絞り装置の分解斜視図を示す。
図11は保持基板202の斜視図である。
図12は駆動リング203の斜視図である。
図13は仕切り部材205の斜視図である。
図14は実施形態2の羽根駆動装置の平面図である。上述した実施形態1では、駆動リング103に係合した絞り羽根106の駆動ピン106aと、保持基板102の内径部102dが係合することで駆動リング103のラジアル方向の位置を規制する構造についても説明したが、本実施形態では、駆動リング203に対して絞り羽根206の駆動ピン206aが挿通する貫通穴203bの周囲に複数の突起部203eを設けることで、突起部203eと保持基板202の内径部202dが係合して駆動リング203のラジアル方向の位置を規制するようにした(
図14)。また、同様に駆動リング203の複数の突起部203eと仕切り部材205の内径部205bが係合することで、駆動リング203をラジアル方向で規制するようにしてもよい(
図15)。駆動リング203やその他の構成は、基本的に実施形態1と同様である。図に示す符号は、実施形態1では、100番台で示したが、本実施形態では、200番台で示す。
【0038】
本実施形態の絞り装置は、保持基板202の内径部202dもしくは仕切り部材205の内径部205bに対して駆動リング203の複数の突起部203eが摺接することで、駆動リング203と、駆動リング203の貫通穴203bに係合した絞り羽根206のラジアル方向の位置が規定される。
【0039】
保持基板202に固定された駆動部201による駆動力を駆動リング203が受けて、開口部の周りを回転することで絞り羽根206が開口部内を出入りして絞り口径を調整する。本実施形態の一態様では、
図14に示すように駆動リング203の複数の突起部203eと保持基板202の内径部202dが摺接することによりラジアル方向の位置の規定をしているが、駆動リング203の複数の突起部203eの開口中心側と保持基板202に設けられた溝部の内縁(外径部)とが摺接することによりラジアル方向の位置の規定をしてもよい。さらに、
図15に示すように、駆動リング203の突起部203eと仕切り部材205の内径部205bによってラジアル嵌合してラジアル方向の位置を規定してもよいし、仕切り部材205に係合溝を設けることで、複数の突起部203eと摺接させ、ラジアル方向の位置を規定してもよい。
【0040】
<実施形態3>
図16には、本発明の実施形態3である光量調節装置としての絞り装置の分解斜視図を示す。
図17は実施形態2の羽根駆動装置の正面図である。上述した実施形態1では、駆動リング103に係合した絞り羽根106の駆動ピン106aと、保持基板102の内径部102dが係合することで、駆動リング103をラジアル規定した構造を例に挙げて説明したが、本実施形態では、絞り羽根306の駆動ピンが隣り合う絞り羽根306とラジアル方向で重ならないように構成する場合について、駆動リング303に複数の駆動ピン303eを設け、それに対して複数の絞り羽根306の駆動穴306aが係合し、複数の駆動ピン303eと仕切り部材305の外形部305cとが係合することで、駆動リング303をラジアル方向で規制するようにした。なお、仕切り部材305に貫通溝を設けることで、その内縁と駆動リング303の複数の駆動ピン303eとが係合するようにしてもよい。
【0041】
また、同様に駆動リング303の駆動ピン303eと開口形成部材307の貫通溝307c、また、絞り羽根306の複数の駆動ピン306bと開口形成部材307のカム307bとが係合することで、駆動リング303の回動によって絞り羽根306が回動する。さらに、本実施形態では駆動リング303に駆動ピン303eを設け、絞り羽根306に駆動穴306aを設けることで、双方が係合する構造とし、駆動リング303の駆動ピン303eに対して、仕切り部材305、保持基板302もしくは開口形成部材307が係合することで、駆動リング303をラジアル規制するようにしているが、絞り羽根306に駆動ピン306aを設け、駆動リング303に駆動穴303aを設けることで、双方が係合する構造とし、絞り羽根306の駆動ピン306aに対して、仕切り部材305、保持基板302もしくは開口形成部材307が係合することで、駆動リング303をラジアル規制するようにしても同様の効果が得られる。駆動リング303のその他の構成は、基本的に実施形態1と同様である。図に示す番号は、実施形態1では、100番台で示したが、本実施形態では、300番台で示す。
【0042】
図17は本実施形態の絞り装置の開口形成部307と絞り羽根306を取り外した平面図である。本実施形態の絞り装置は、保持基板302に対してラジアル方向の位置を規制された仕切り部材305の外形部305cに対して駆動リング303の駆動ピン303eが摺接することで、駆動リング303と駆動ピン303eに係合した絞り羽根306のラジアル方向の位置が規定される。
【0043】
保持基板302に固定された駆動部301による駆動力を駆動リング303が受けて、開口部の周りを回転することで絞り羽根306が開口部内を出入りして絞り口径を調整する。本実施形態では、
図17のように駆動リング303の複数の突起部303eと仕切り部材305の外径部305cが摺接することによりラジアル方向の位置の規定をしたが、仕切り部材に貫通溝を設け、その内径部が摺接するようにしても良いし、また、
図18のように駆動リング303の複数の突起部303eと保持基板302に設けた貫通溝の外縁部もしくは内縁部が摺接することによりラジアル規定をしてもよい。また、
図19のように駆動リング303の複数の突起部303eと開口形成部材307のカム307cの外縁部もしくは内縁部が摺接することによりラジアル方向の位置の規定をしてもよい。
【0044】
絞り羽根306の回転中心軸となる駆動穴306aは、駆動リング303の駆動ピン303eに係合する。ピニオン304が回転すると、駆動リング303の被駆動部303cに力がかかり、駆動リング303が回転する。駆動リング303が回転すると、駆動リング303の駆動ピン303eから絞り羽根306の駆動穴306aに駆動力が与えられ、絞り羽根306が駆動する。絞り羽根306のカムピン306bは、開口形成部材307に形成されたカム307bに係合している。カム307bにガイドされることによって、絞り羽根306は、保持基板302の開口内外を出入りする。複数の絞り羽根306により、絞り形状が調整され、光が通過する量を調整することが可能になる。
【0045】
<実施形態4>
図20には、本発明の実施形態4である光量調節装置としての絞り装置の分解斜視図を示す。
図21は、本実施形態に係る絞り装置の平面図である。
図22は本実施形態の絞り装置を下側から見た状態の平面図である。上述した実施形態3では、絞り羽根306のカムピン306bが開口形成部材307のカム307bに係合することにより、絞り羽根306は保持基板302の開口内外を出入りする構造などについて説明したが、本実施形態では、絞り羽根406にカム406cを有し、駆動リング403の駆動ピン403eがカム406cと係合することによって、絞り羽根406が保持基板402の開口内外を出入りする構造とした。駆動リング403その他の構成は、基本的に実施形態3と同様である。図に示す符号は、実施形態3では、300番台で示したが、本実施形態では、400番台で示す。なお、
図20においては、駆動リング403の駆動ピン403eが開口形成部材407を貫通しないようにした態様を示しており、
図21の断面図においては、駆動ピン403eが開口形成部材407のカム407bを貫通する態様を示している。
【0046】
図21は本実施形態の絞り装置の開口形成部407と絞り羽根406を取り外し、駆動リング403と仕切りシート405の位置関係を示す平面図である。本実施形態の絞り装置は、保持基板402に対してラジアル方向に規制された仕切り部材405の内径部405cに対して駆動リング403の駆動ピン403eが摺接することで、駆動リング403のラジアル方向の位置が規定される。保持基板402に固定された駆動部401による駆動力を駆動リング403が受けて、開口部の周りを回転することで駆動ピン403eが絞り羽根406のカム406cに沿って動くため、絞り羽根406は開口部内を出入りして絞り口径を調整する。
【0047】
本実施形態では、駆動リング403の複数の突起部403eと、保持基板402に設けられた係合ピン402aが挿通されてラジアル方向の位置が規制された仕切り部材405の内径部405cとが摺接することにより駆動リング403のラジアル方向の位置の規定をしたが、
図22のように駆動リング403の複数の突起部403eと保持基板402の内径部402aが摺接することによりラジアル方向の位置の規定をしてもよい。また、
図23のように、駆動リング403の複数の突起部403eと開口形成部材402のカム407bとが摺接することにより駆動リング403のラジアル方向の規定をしてもよい。
【0048】
<実施形態5>
図24には、本発明の実施形態5である光量調節装置としての絞り装置の分解斜視図を示す。実施形態4では、駆動リング403の駆動ピン403eが絞り羽根406のカム406cに沿って移動して絞り羽根406を回動させることで口径を調整する構造としたが、本実施形態においては、
図24に示すように、駆動リング503の駆動ピン503eは絞り羽根506の駆動穴506aと係合し、保持基板502の突起部502aが絞り羽根506のカム506cと係合することで口径を調整する構造としている。
【0049】
本実施形態における駆動リング503のラジアル方向の位置の規制については、上述した方法と同様、
図25のように駆動リング503の複数の駆動ピン503eと、保持基板502に設けられた突起部502aが挿通されてラジアル方向の位置が規定された仕切り部材505の外径部505dとが摺接することにより駆動リング503のラジアル方向の位置の規定をすることができる。また、
図26のように駆動リング503の複数の駆動ピン503eに対して保持基板502のカム502bを用いて規定することもできる。さらに、
図27のように、駆動リング503の複数の駆動ピン503eに対して開口形成部材507のカム507bを摺接させて駆動リング503のラジアル方向の位置を規定することもできる。
【0050】
以上説明した各実施形態における構成以外にも、適宜駆動リングのラジアル方向の位置決めを行うことが可能であり、それらの一例を表1に列挙する。
【表1】
【0051】
この表において、左の列から順に、「実施形態」欄はどの実施例に対応するかを示す。「羽根への駆動入力」欄は、絞り羽根を回動させるための駆動力を伝達する部材を示している。「回動中心」欄は、絞り羽根の回動中心となる構成を示している。「位置決め部材」欄は、駆動リングのラジアル方向における位置の規制を行う構成を示しており、それを「位置決め受け」欄に記載する構成の「内外」欄に記載した内径もしくは外径で受けることを示す。「図番」の欄には、それらが記載された図番を示している。
【0052】
なお、本発明は、上記羽根駆動装置に限定されず、カメラ等の撮像装置における羽根駆動系に適用することが可能であり、撮像装置においても広く対象とするものである。
【符号の説明】
【0053】
101 駆動部
102 保持基板
103 駆動リング
104 ピニオン
105 仕切り部材
106 絞り羽根
107 開口形成部材
108 フォトインタラプタ