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特許7390803オプトエレクトロニクス半導体デバイスおよびオプトエレクトロニクス半導体デバイスの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】オプトエレクトロニクス半導体デバイスおよびオプトエレクトロニクス半導体デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/10 20210101AFI20231127BHJP
   H01S 5/343 20060101ALI20231127BHJP
   H01S 5/24 20060101ALI20231127BHJP
   H01S 5/028 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
H01S5/10
H01S5/343 610
H01S5/24
H01S5/028
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019090064
(22)【出願日】2019-05-10
(65)【公開番号】P2019197894
(43)【公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-04-06
(31)【優先権主張番号】10 2018 111 319.6
(32)【優先日】2018-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】599133716
【氏名又は名称】エイエムエス-オスラム インターナショナル ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】ams-OSRAM International GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, D-93055 Regensburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケーニッヒ ハラルト
(72)【発明者】
【氏名】エベッケ イェンス
(72)【発明者】
【氏名】レル アルフレド
(72)【発明者】
【氏名】ゲルハルト スヴェン
(72)【発明者】
【氏名】フィエハイリヒ クレメンス
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-181604(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0006726(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0147145(US,A1)
【文献】特表2009-506550(JP,A)
【文献】特開平10-041584(JP,A)
【文献】特開2004-260058(JP,A)
【文献】特表2015-519008(JP,A)
【文献】特開平07-142763(JP,A)
【文献】特開2000-004066(JP,A)
【文献】特開平10-041585(JP,A)
【文献】特開平09-289357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電型の第1の領域(101)と、電磁放射を生成するように設計されている活性領域(103)と、第2の導電型の第2の領域(102)と、電磁放射を取り出すために設けられている取り出し面(20)と、を備えた半導体ボディ(10)、を有するオプトエレクトロニクス半導体デバイス(1)であって、
- 前記第1の領域(101)、前記活性領域(103)、および前記第2の領域(102)が、堆積方向(Y)に沿って配置されており、
- 前記活性領域(103)が、前記取り出し面(20)とは反対側の裏面(30)から、前記堆積方向(Y)を横切るかまたは前記堆積方向(Y)に垂直な長手方向(X)に沿って、前記取り出し面(20)まで延びており、
- 前記取り出し面(20)が、前記裏面(30)に面平行に配置されており、
- 前記半導体ボディ(10)の前記取り出し面(20)および前記裏面(30)が、エッチング工程によって作製されており、
前記取り出し面(20)における前記第1の領域(101)は、前記長手方向(X)における複数の段部(1011)を有
前記長手方向(X)における前記第1の領域(101)の前記複数の段部(1011)の幅b が、次の式、すなわち、b <[(h -a-w)/tan(α/2)]-(b n-1 -b n-2 -...-b -b )を、+/-10%の誤差まで前記b が満たすように、構造化されており、aが、前記活性領域(103)とは反対側の前記第2の領域(102)の面からの前記活性領域(103)の距離であり、h が、前記半導体ボディ(10)の前記堆積方向(Y)に平行な方向における前記取り出し面(20)の範囲であり、wが、前記活性領域(103)に隣接している前記第1の領域(101)の側における導波路の厚さであり、αが垂直遠視野角として定義されており、添え字nが、段部(1011)の数を表す、
オプトエレクトロニクス半導体デバイス(1)。
【請求項2】
前記オプトエレクトロニクス半導体デバイス(1)が、コヒーレントな放射を生成するように設計されている、請求項1に記載のオプトエレクトロニクス半導体デバイス(1)。
【請求項3】
前記半導体ボディ(10)が、300μm未満の、前記長手方向(X)における延在範囲を有する、請求項1または請求項2のいずれか一項に記載のオプトエレクトロニクス半導体デバイス(1)。
【請求項4】
前記半導体ボディ(10)の少なくとも一部分が、窒化物化合物半導体材料系である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のオプトエレクトロニクス半導体デバイス(1)。
【請求項5】
前記取り出し面(20)および前記裏面(30)が、前記半導体ボディ(10)の結晶のm面に平行に延びている、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のオプトエレクトロニクス半導体デバイス(1)。
【請求項6】
前記半導体ボディ(10)が成長基板(900)の上に堆積されており、前記成長基板(900)が、次の材料、すなわち、サファイア、窒化ガリウム、炭化ケイ素、シリコン、のうちの1種類によって形成されている、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のオプトエレクトロニクス半導体デバイス(1)。
【請求項7】
前記取り出し面(20)および前記裏面(30)が、0.1nm~10nmの範囲内の平均粗さを有する、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のオプトエレクトロニクス半導体デバイス(1)。
【請求項8】
前記裏面(30)および/または前記取り出し面(20)の下流、前記半導体ボディ(10)とは反対側の面それぞれに、ミラー(701,702)が配置されている、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のオプトエレクトロニクス半導体デバイス(1)。
【請求項9】
前記ミラー(701,702)が、前記半導体ボディ(10)の材料によって作製されている、請求項8に記載のオプトエレクトロニクス半導体デバイス(1)。
【請求項10】
前記段部(1011)が、前記半導体ボディ(10)から放出された電磁放射(E)が前記段部(1011)に入射しないように、構造化されている、請求項1から9のいずれか一項に記載のオプトエレクトロニクス半導体デバイス(1)。
【請求項11】
オプトエレクトロニクス半導体デバイス(1)を製造する方法であって、
- 堆積方向(Y)に沿って、第1の導電型の第1の領域(101)と、電磁放射を生成するように設計されている活性領域(103)と、第2の導電型の第2の領域(102)と、を備えた半導体ボディ(10)、を設けるステップであって、前記活性領域(103)が、前記堆積方向(Y)を横切るかまたは前記堆積方向(Y)に垂直な長手方向(X)に沿って、前記第1の領域(101)と前記第2の領域(102)との間に延びている、ステップと、
- 前記第2の領域(102)および前記活性領域(103)を完全に貫いている第1の溝を、前記堆積方向(Y)に沿ってかつ前記長手方向(X)に直交して、少なくとも部分的に、第1のエッチング工程によって挿入するステップであって、前記半導体ボディ(10)に面している前記第1の溝の側面に、電磁放射(E)を取り出すための取り出し面(20)が設けられる、ステップと、
- 前記第2の領域(102)および前記活性領域(103)を完全に貫いている第2の溝を、前記半導体ボディ(10)の前記堆積方向(Y)に沿ってかつ前記長手方向(X)に直交して、少なくとも部分的に、前記第1の溝とは反対の前記半導体ボディの側に前記第1のエッチング工程によって挿入するステップであって、前記半導体ボディ(10)に面している前記第2の溝の側面に裏面(30)が形成される、ステップと、
- 前記取り出し面(20)および前記裏面(30)を、第2のエッチング工程によって平滑化するステップと、
を含み、
前記取り出し面(20)における前記第1の領域(101)に、前記長手方向(X)における複数の段部(1011)が形成され、
前記長手方向(X)における前記第1の領域(101)の前記複数の段部(1011)の幅b が、次の式、すなわち、b <[(h -a-w)/tan(α/2)]-(b n-1 -b n-2 -...-b -b )を、+/-10%の誤差まで前記b が満たすように、構造化されており、aが、前記活性領域(103)とは反対側の前記第2の領域(102)の面からの前記活性領域(103)の距離であり、h が、前記半導体ボディ(10)の前記堆積方向(Y)に平行な方向における前記取り出し面(20)の範囲であり、wが、前記活性領域(103)に隣接している前記第1の領域(101)の側における導波路の厚さであり、αが垂直遠視野角として定義されており、添え字nが、段部(1011)の数を表す、オプトエレクトロニクス半導体デバイス(1)を製造する方法。
【請求項12】
前記第2のエッチング工程のエッチング液が、次のエッチング液、すなわち、KOH、NaOH、NHOH、LiOH、TMAH、NMP、のうちの1種類を含む、請求項11に記載の、オプトエレクトロニクス半導体デバイス(1)を製造する方法。
【請求項13】
前記取り出し面(20)および前記裏面(30)が、イオン洗浄によって洗浄される、請求項11または請求項12に記載の、オプトエレクトロニクス半導体デバイス(1)を製造する方法。
【請求項14】
前記取り出し面(20)および前記裏面(30)が、半結晶性材料によって被覆される、請求項13に記載の、オプトエレクトロニクス半導体デバイス(1)を製造する方法。
【請求項15】
前記取り出し面(20)および前記裏面(30)が、誘電体材料または金属によって被覆される、請求項14に記載の、オプトエレクトロニクス半導体デバイス(1)を製造する方法。
【請求項16】
前記第1の領域(101)の段部(1011)が、エッチング工程によって、前記長手方向(X)において前記取り出し面(20)を経て構造化される、請求項11から請求項15のいずれか一項に記載の、オプトエレクトロニクス半導体デバイス(1)を製造する方法。
【請求項17】
各前記ステップが、ウェハ複合体における複数のオプトエレクトロニクス半導体デバイス(1)に対して実行される、請求項11から請求項16のいずれか一項に記載の、オプトエレクトロニクス半導体デバイス(1)を製造する方法。
【請求項18】
前記第2のエッチング工程が、湿式化学エッチング工程である、請求項11から請求項17のいずれか一項に記載の、オプトエレクトロニクス半導体デバイス(1)を製造する方法。
【請求項19】
複数の段部(1011)を有する第1の導電型の第1の領域(101)と、前記複数の段部(1011)を除く前記第1の領域(101)に堆積され電磁放射を生成するように設計された活性領域(103)と、前記活性領域(103)に堆積された第2の導電型の第2の領域(102)と、を有する半導体ボディ(10)と、
電磁放射(E)を取り出すための取り出し面(20)と、
前記取り出し面(20)に対して面平行に配置された裏面(30)と、
を備え、
前記取り出し面(20)および前記裏面(30)は、それぞれ、前記複数の段部(1011)を除く前記第1の領域(101)の側面、前記活性領域(103)の側面、および第2の領域(102)の側面を構成
長手方向(X)における前記第1の領域(101)の前記複数の段部(1011)の幅b が、次の式、すなわち、b <[(h -a-w)/tan(α/2)]-(b n-1 -b n-2 -...-b -b )を、+/-10%の誤差まで前記b が満たすように、構造化されており、aが、前記活性領域(103)とは反対側の前記第2の領域(102)の面からの前記活性領域(103)の距離であり、h が、前記半導体ボディ(10)の堆積方向(Y)に平行な方向における前記取り出し面(20)の範囲であり、wが、前記活性領域(103)に隣接している前記第1の領域(101)の側における導波路の厚さであり、αが垂直遠視野角として定義されており、添え字nが、段部(1011)の数を表す、
オプトエレクトロニクス半導体デバイス(1)。
【請求項20】
第1の導電型の第1の領域(101)と電磁放射を生成する活性領域(103)と第2の導電型の第2の領域(102)とを堆積し、半導体ボディ(10)を形成するステップと、
第1のエッチング工程によって、前記第2の領域(102)および前記活性領域(103)を完全に貫く第1の溝および第2の溝を設けるステップと、
前記第1の溝の側面に、電磁放射(E)を取り出すための取り出し面(20)を形成するステップと、
前記第2の溝の側面に、前記取り出し面(20)に対して面平行な裏面(30)を形成するステップと、
第2のエッチング工程によって、前記取り出し面(20)および前記裏面(30)を平滑化するステップと、
を含み、
前記取り出し面(20)における前記第1の領域(101)に、長手方向(X)における複数の段部(1011)が形成され、
前記長手方向(X)における前記第1の領域(101)の前記複数の段部(1011)の幅b が、次の式、すなわち、b <[(h -a-w)/tan(α/2)]-(b n-1 -b n-2 -...-b -b )を、+/-10%の誤差まで前記b が満たすように、構造化されており、aが、前記活性領域(103)とは反対側の前記第2の領域(102)の面からの前記活性領域(103)の距離であり、h が、前記半導体ボディ(10)の堆積方向(Y)に平行な方向における前記取り出し面(20)の範囲であり、wが、前記活性領域(103)に隣接している前記第1の領域(101)の側における導波路の厚さであり、αが垂直遠視野角として定義されており、添え字nが、段部(1011)の数を表す、オプトエレクトロニクス半導体デバイス(1)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
オプトエレクトロニクス半導体デバイスと、オプトエレクトロニクス半導体デバイスを製造する方法とを開示する。オプトエレクトロニクス半導体デバイスは、動作時に電磁放射(光など)を放出する放射放出オプトエレクトロニクス半導体デバイスとすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
解決するべき1つの課題は、改善された信頼性を有するオプトエレクトロニクス半導体デバイスを開示することである。
【0003】
解決するべきさらなる課題は、簡略化された製造を可能にする、オプトエレクトロニクス半導体デバイスを製造する方法を開示することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本オプトエレクトロニクス半導体デバイスの少なくとも一実施形態によれば、オプトエレクトロニクス半導体デバイスは、堆積方向に沿って、第1の導電型の第1の領域と、電磁放射を生成するように設計されている活性領域と、第2の導電型の第2の領域と、を備えた半導体ボディ、を有する。さらに、半導体ボディは、動作時に生成される電磁放射を取り出すように意図されている取り出し面を有する。この取り出し面は、例えば、長手方向を横切って、または長手方向に垂直に延びている。
【0005】
活性領域は、取り出し面とは反対側の裏面から、堆積方向を横切るかまたは堆積方向に垂直な長手方向に沿って、取り出し面まで延びている。活性領域は、放射を生成するためのpn接合部、ダブルヘテロ構造、単一量子井戸(SQW)、または特に好ましくは多重量子井戸(MQW)、を備えていることが好ましい。
【0006】
半導体ボディのこれらの領域は、エピタキシャルに成長されていることが好ましい。半導体ボディの第1の領域および第2の領域それぞれは、異なる導電型を有する。導電型の形成は、半導体材料をドープすることによって行われることが好ましい。p導電型は、例えば、アクセプタ材料によってドープすることにより形成される。n導電型の形成は、例えば、ドナー材料によってドープすることにより行われることが好ましい。
【0007】
取り出し面は、特に、裏面に面平行に配置されている。
【0008】
本オプトエレクトロニクス半導体デバイスの少なくとも一実施形態によれば、半導体ボディの取り出し面および裏面の両方は、エッチング工程によって作製されている。
【0009】
半導体ボディの取り出し面および裏面がエッチング工程によって作製されるときに従う形状は、方法による純粋な形状ではなく、完成した部品において確認することができ、したがって目標の形状でもある。エッチング工程によって作製される表面の特徴は、特に、異なる材料においてわずかに異なるエッチング速度に起因する、材料組成に応じた取り出し面および/または裏面の表面における凹凸、および/または、裏面および取り出し面の表面における段部、である。エッチング工程のさらなる特徴は、取り出し面と裏面との間の300μm未満の距離である。取り出し面と裏面との間のこのような小さい距離は、現在のところスクライブ・ブレイク工程(scribing and breaking process)ではほとんど作製することができない。
【0010】
これらの特徴は、半導体ボディの少なくとも1回のエッチングによって生成される。これらの特徴は、例えば電子顕微鏡画像によって、または光学顕微鏡下で、完成した半導体デバイスにおいて確認することができる。
【0011】
本オプトエレクトロニクス半導体デバイスの少なくとも一実施形態によれば、オプトエレクトロニクス半導体デバイスは、第1の導電型の第1の領域と、電磁放射を生成するように設計されている活性領域と、第2の導電型の第2の領域と、を備えた半導体ボディ、を有し、かつ本オプトエレクトロニクス半導体デバイスは、電磁放射を取り出すために設けられている取り出し面を有し、
- 第1の領域、活性領域、および第2の領域が、堆積方向に沿って配置されており、
- 活性領域が、取り出し面とは反対側の裏面から、堆積方向を横切るかまたは堆積方向に垂直に延びる長手方向に沿って、取り出し面まで延びており、
- 取り出し面が、裏面に面平行に配置されており、
- 半導体ボディの取り出し面および裏面が、エッチング工程によって作製されている。
【0012】
本明細書に記載されているオプトエレクトロニクス半導体デバイスは、特に、以下の考察に基づいている。端面発光型半導体レーザダイオードの製造においては、取り出し面と裏面(ファセット面)を互いにできる限り面平行として、かつ滑らかに、さらには適切な方法によって、作製することが特に必要である。表面の粗さが大きいと、反射率が低下し、部品が早期に故障することもある。表面の欠陥は、ファセット面の光学損傷(COD)を引き起こすことがあり、結果として部品が完全に故障する。
【0013】
適切なファセット面を作製するために、スクライブ・ブレイク工程を使用することができる。破断軸は、半導体の結晶面に沿って選択される。この結果として、その選択された結晶軸に沿った滑らかな破断線が生じ、これにより面平行性が保証され、表面粗さがわずか数ナノメートルまで減少する。しかしながらスクライブ・ブレイク工程の欠点は、滑らかにブレイクされなかったファセット面に起因する不良部品の割合が高いことと、ただちに個々の半導体レーザダイオードに分離されることである。結果として、複合体(特にウェハ複合体)において作製される部品のファセットに対してさらなる工程を実行することがもはや不可能である。そうではなく、各半導体デバイスを個別に処理する、または、いくつかの部品を追加の工程によって1つのグループに組み合わせて一緒に処理し、次いで再び互いに分離しなければならない。
【0014】
これに加えて、スクライブ・ブレイク工程によって分離されるときには、半導体レーザダイオードの最小長さが比較的大きい値に制限され、なぜなら長さが小さくなると、ブレイク工程に必要な力が急激に高まるためである。
【0015】
さらに、スクライブ・ブレイク工程の使用は、ブレイク可能な基板を使用する場合に限定され、これによりオプトエレクトロニクス半導体デバイスの設計における自由度がさらに制約される。
【0016】
本明細書に記載されているオプトエレクトロニクス半導体デバイスは、特に、ファセット面を作製するためにスクライブ・ブレイク工程の代わりにエッチング工程を使用するという発想を利用する。これにより、ウェハ複合体においてファセットを作製することが可能になる。ファセットの小さい表面粗さと高い面平行性を確保するために、化学的研磨工程が使用される。
【0017】
本オプトエレクトロニクス半導体デバイスの少なくとも一実施形態によれば、オプトエレクトロニクス半導体デバイスは、コヒーレントな放射を生成するように設計されている。言い換えれば、本オプトエレクトロニクス半導体デバイスは、動作時にレーザ放射を放出する端面発光型半導体レーザダイオードとすることができる。半導体ボディの取り出し面および裏面が、レーザファセットとしての役割を果たし、半導体レーザダイオードの共振器ミラーに相当する。
【0018】
本オプトエレクトロニクス半導体デバイスの少なくとも一実施形態によれば、半導体ボディは、300μm未満、好ましくは100μm未満、特に好ましくは50μm未満の、長手方向における延在範囲(extension)を有する。長手方向における半導体ボディの最小長さは、スクライブ・ブレイク工程における最小長さに制限される。エッチング工程を使用することによって、この制限はもはや適用されない。300μm未満の延在範囲を有する半導体レーザダイオードは、有利に低い利得を有することができる。
【0019】
本オプトエレクトロニクス半導体デバイスの少なくとも一実施形態によれば、半導体ボディの少なくとも1つの領域(特に半導体ボディ全体)は、窒化物化合物半導体材料系である。この文脈において「窒化物化合物半導体材料系である」とは、半導体ボディまたはその少なくとも一部が、AlGaIn1-n-mN(0≦n≦1、0≦m≦1、n+m≦1)を含む、またはこのような材料からなることが好ましいことを意味する。この材料は、上記の化学式に従った数学的に正確な組成を必ずしも有さなくてよい。むしろ、この材料は、例えば1種類または複数種類のドーパントおよび追加の成分を含むことができる。しかしながら説明を単純にするため、上の式は、結晶格子の本質的な成分(Al、Ga、In、N)のみを含み、これらの一部を少量の別の物質によって置き換える、および/または、少量の別の物質によって補うことができる。
【0020】
例えば半導体ボディの第1の領域におけるp導電型は、マグネシウムなどの材料によってドープすることにより形成される。例えば半導体ボディの第2の領域におけるn導電型の形成は、例えばシリコンなどの材料によってドープすることにより行われる。
【0021】
本オプトエレクトロニクス半導体デバイスの少なくとも一実施形態によれば、取り出し面および裏面は、半導体ボディの結晶のm面に平行に延びている。m面は、ウルツ鉱型の六角形基本構造を有する結晶の
【数1】
面である。2つの向かい合うm面の面平行性により、裏面に対する取り出し面の配置が互いに面平行である。これにより、取り出し面と裏面との間に共振器を形成することが可能である。
【0022】
本オプトエレクトロニクス半導体デバイスの少なくとも一実施形態によれば、オプトエレクトロニクス半導体デバイスは成長基板を備えており、半導体ボディが成長基板の上に堆積されており、成長基板は、次の材料、すなわち、サファイア、窒化ガリウム、炭化ケイ素、シリコン、のうちの1種類によって形成されている。窒化ガリウムおよび炭化ケイ素は、スクライブ・ブレイク工程においても使用することができ、サファイアより小さい欠陥密度を有する。サファイアとシリコンは、スクライブ・ブレイク工程において処理することが困難である、または不可能である。したがってエッチング工程を使用することにより、オプトエレクトロニクス半導体デバイスの設計上の自由度が大きくなり、これは有利である。
【0023】
本オプトエレクトロニクス半導体デバイスの少なくとも一実施形態によれば、取り出し面および裏面は、0.1nm~10nmの範囲内、好ましくは0.1nm~1nmの範囲内の平均粗さを有する。平均粗さとは、表面上の測定点から、表面輪郭の仮想中心線までの平均距離として定義される。取り出し面および裏面の高い反射率のためには、低い平均粗さが有利である。高い光学反射率は、レーザファセットを形成するうえで特に有利である。小さい値の平均粗さを達成する目的で、取り出し面および裏面の化学的研磨が有利である。特に、化学的研磨工程におけるエッチング液としてTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)を使用する結果として、有利に低い粗さ値が得られる。
【0024】
本オプトエレクトロニクス半導体デバイスの少なくとも一実施形態によれば、裏面および/または取り出し面の下流、半導体ボディとは反対側の面に、ミラーが配置されている。このミラーは、例えば、DBRミラー(分布ブラッグ反射器)として設計することができる。このミラーは、変動する屈折率を有するいくつかの層の周期的な並びを備えている。DBRミラーは、特に、スペクトル的に極めて小さい波長範囲における高い反射率を特徴とする。これにより、極めて狭帯域の発光スペクトルを有する半導体レーザダイオードを製造することが可能になる。DBRミラーは、半導体ボディに直接接触していることができ、半導体ボディに生成される。言い換えれば、DBRミラーは、半導体ボディを構造化することによって作製される。互いに前後に配置された複数の溝形状の凹部は、半導体ボディの材料と凹部との間の遷移部における断面において、変動する屈折率の周期的な並びを形成している。
【0025】
さらには、半導体ボディは、DFBミラー(分布帰還)を含むことができる。DFBミラーは、取り出し面と裏面との間の仮想の結合線に沿って、屈折率の変動の周期的な並びを備えている。DBRミラーは、半導体ボディとは反対の取り出し面の側、および/または、半導体ボディとは反対の裏面の側に配置されるが、DFBミラーは、裏面と取り出し面との間に配置される。
【0026】
本オプトエレクトロニクス半導体デバイスの少なくとも一実施形態によれば、ミラーは、半導体ボディの材料によって作製されている。半導体ボディに凹部を導入することによって、異なる屈折率を有する領域が作成される。例えば、これらの凹部を、半導体ボディの屈折率とは異なる屈折率を有する空気またはプラスチック材料もしくは誘電体などの透明な材料によって満たすこともできる。これらの凹部は、長手方向に沿って、定義された周期的な距離を有し、結果として屈折率が周期的に変動する。半導体ボディの材料によってミラーを生成することによって、複数の誘電体層を形成するステップを省くことができ、これは有利である。
【0027】
本オプトエレクトロニクス半導体デバイスの少なくとも一実施形態によれば、取り出し面における第1の領域は、長手方向における少なくとも1つの段部を有する。この段部は、取り出し面の仮想平面を超える、第1の領域の材料の堆積方向に対して横方向への突出部または張出部である。本オプトエレクトロニクス半導体デバイスは、特に、複数の段部を有することもできる。
【0028】
本オプトエレクトロニクス半導体デバイスの少なくとも一実施形態によれば、段部は、半導体ボディから放出された電磁放射が段部に入射しないように、構造化されている。言い換えれば、段部の幅および段部の高さは、本オプトエレクトロニクス半導体デバイスによって放出される放射が特に妨げられずに伝搬できるように、選択される。少なくとも1つの段部の構造化は、例えばエッチング工程によって行うことができる。
【0029】
本オプトエレクトロニクス半導体デバイスの少なくとも一実施形態によれば、長手方向における第1の領域の少なくとも1つの段部の幅bは、次の式、すなわち、b<[(h-a-w)/tan(α/2)]-(bn-1-bn-2-...-b-b)を、+/-10%の誤差を除いて、好ましくは+/-5%の誤差を除いて、bが満たすように、構造化されている。式中、bは、取り出し面を横切る第1の領域の段部の幅として定義されており、aは、活性領域とは反対側の第2の領域の面からの活性領域の距離であり、hは、半導体ボディの堆積方向に平行な方向における取り出し面の範囲であり、wは、活性領域に隣接している第1の領域の側における導波路の厚さであり、αは垂直遠視野角(vertical far field angle)である。添え字nは、段部の数を表す。半導体ボディの第1の領域のこのような構造化された段部は、放出された光が第1の領域によって遮られることを特に効率的に防止する。
【0030】
オプトエレクトロニクス半導体デバイスを製造する方法も開示する。特に、本明細書に記載されている半導体デバイスを、この方法を使用して製造することができる。すなわち、本半導体デバイスに関して開示されているすべての特徴は本方法に関しても開示され、逆も同様である。
【0031】
オプトエレクトロニクス半導体デバイスを製造する方法の少なくとも一実施形態によれば、本方法は次のステップを含む。
【0032】
堆積方向に沿って、第1の導電型の第1の領域と、電磁放射を生成するように設計されている活性領域と、第2の導電型の第2の領域と、を備えた半導体ボディ、を設けるステップ。活性領域は、堆積方向を横切るかまたは堆積方向に垂直な長手方向に沿って、第1の領域と第2の領域との間に延びている。
【0033】
本方法の少なくとも一実施形態によれば、堆積方向に沿ってかつ長手方向に直交して、少なくとも部分的に、第1の溝が第1のエッチング工程によって挿入される。この第1の溝は、第2の領域および活性領域を完全に貫いている。これにより、半導体ボディに面している第1の溝の側面に、電磁放射を取り出すための取り出し面が設けられる。この第1のエッチング工程によって、特に、完成した半導体デバイスにおいて確認することのできる、取り出し面における段部が生成される。
【0034】
本方法の少なくとも一実施形態によれば、第1の溝とは反対の半導体ボディの側に、半導体ボディの堆積方向に沿ってかつ長手方向に直交して、少なくとも部分的に、第2の溝が第1のエッチング工程によって挿入される。第2の溝は、第2の領域および活性領域を完全に貫いている。これにより、半導体ボディに面している第2の溝の側面に、裏面が形成される。この第1のエッチング工程によって、特に、完成した半導体デバイスにおいて確認することのできる、裏面における段部が生成される。
【0035】
第1のエッチング工程は、塩素イオンおよびアルゴンイオンを使用するプラズマエッチング工程、レーザアブレーション工程、または光化学湿式エッチング工程、を含むことが好ましい。第1の溝および第2の溝のエッチング領域は、例えば、エッチング液の影響から活性領域を保護するマスク層によって限定することができる。
【0036】
本方法の少なくとも一実施形態によれば、取り出し面および裏面の平滑化が、第2のエッチング工程によって行われる。この第2のエッチング工程は、特に、半導体結晶のm面を準備する役割を果たす。m面は、ウルツ鉱型の六角形基本構造を有する結晶の
【数2】
面である。第2のエッチング工程は、例えば、KOH、NaOH、NHOH、LiOH、TMAH、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)を使用して湿式化学的に行われることが好ましい。驚くべきことに、TMAHを使用すると、半導体ボディの個々の結晶面が特に良好に準備されることが判明した。すなわち、第2のエッチング液としてTMAHを使用する結果として、ファセット面の特に小さい平均粗さが得られる。この第2のエッチング工程によって、特に、完成した半導体デバイスにおいて検出可能である特徴が生成される。
【0037】
本方法の少なくとも一実施形態によれば、第2のエッチング液は、次のエッチング液、すなわち、KOH、NaOH、NHOH、LiOH、TMAH、NMP、のうちの1種類を含む。これらの湿式化学エッチング工程によって、ファセット面の表面粗さが低減し、したがって表面の品質が改善される。
【0038】
本方法の少なくとも一実施形態によれば、取り出し面および裏面が、イオン洗浄(ion cleaning)によって洗浄される。イオン洗浄は、例えば、窒素イオン、アルゴンイオン、水素プラズマ、酸素プラズマ、キセノンイオンなどの低エネルギイオンによって行われる。イオン洗浄されたファセット面は、異物による不純物をもはや示さないことが好ましい。
【0039】
本方法の少なくとも一実施形態によれば、取り出し面および裏面が、半結晶材料によって被覆される。半結晶材料として、窒化アルミニウム、窒化珪素、酸窒化アルミニウム、酸窒化珪素、シリコン、酸化アルミニウム、窒化ガリウム、セレン化亜鉛、ガリウムヒ素、リン化ガリウム、三元化合物、および/または四元化合物、を使用することができる。半結晶材料は、主として、取り出し面および裏面を不動態化するために使用される。半結晶材料は、特に、スパッタリング工程またはALD(原子層成長法)工程によって取り出し面および裏面に堆積させることができる。ALD工程においては、原子の単分子層を堆積させることができる。単分子層の堆積は、例えばトリメチルアルミニウムなどの有機金属前駆体による、いくつかの準単分子層(submonolayer)の堆積によって行うことができる。メチル基は、個々のリガンドを立体的に妨げることによって完全な単分子層を阻止し、したがって準単分子層を形成する。いくつかの準単分子層から単分子層が形成されるまで、このサイクルを何度か繰り返すことができる。したがって、上下に積み重なった原子層が形成されるのではなく、1つの表面上に単分子層のみが堆積される。このような単分子層の利点は、表面が極めて良好に被覆されることと、たとえ最小の粒子および不均一であっても外側が被覆されることである。この結果として、極めて高密度の層が得られ、この層は良好な拡散障壁を有利にもたらすことができる。
【0040】
本方法の少なくとも一実施形態によれば、取り出し面および裏面が、誘電体材料または金属によって被覆される。誘電体材料または金属による取り出し面および裏面の被覆は、所望の反射率を調整する役割、したがって本オプトエレクトロニクス半導体デバイスの光学パラメータを決定する役割を果たす。誘電体材料または金属の層は、スパッタリング、蒸着、CVD(化学的蒸着)によって、またはALD層として堆積させることができる。窒化珪素、酸化アルミニウム、酸窒化アルミニウム、酸窒化珪素、酸化タンタル、二酸化珪素、またはシリコンなどの材料を使用することができる。
【0041】
本方法の少なくとも一実施形態によれば、第1の領域の段部が、エッチング工程によって、長手方向において取り出し面を超えて構造化される。この構造化は、活性領域から放出された発散する電磁放射が取り出し面において遮られることを防止すると同時に、個々のオプトエレクトロニクス半導体デバイスを分離する役割を果たすことができる。構造化には、例えばプラズマエッチング工程が使用される。この方法ステップは、特に、イオン洗浄を使用することにより取り出し面および裏面を洗浄する前に実行することもできる。
【0042】
オプトエレクトロニクス半導体デバイスを製造する方法の少なくとも一実施形態によれば、本明細書に記載されている工程ステップは、ウェハ複合体における複数のオプトエレクトロニクス半導体デバイスに対して実行される。言い換えれば、本明細書に記載されている方法ステップは、ウェハ複合体からオプトエレクトロニクス半導体デバイスが分離される前に行われる。ウェハ複合体は、共通の成長基板上にモノリシックに形成される複数のオプトエレクトロニクス半導体デバイスを特徴とする。本明細書に記載されているすべての工程ステップは、個々のオプトエレクトロニクス半導体デバイスが分離される前に実行される。特に、これらの方法ステップと、発光ダイオードの製造からすでに確立されている工程とが両立することにより、このことは製造上の大きな利点につながる。個々のオプトエレクトロニクス半導体デバイスを融合(merging)によって正確に組み合わせてミラー被覆してから個片化する手順を有利に省くことができる。
【0043】
本オプトエレクトロニクス半導体デバイスのさらなる利点、有利な実施形態、およびさらなる設計は、図面に関連する以下の例示的な実施形態から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1A】本明細書に記載されている方法の例示的な実施形態に係る製造のステップにおける、複数のオプトエレクトロニクス半導体デバイスを有するウェハ複合体の上面図の概略表現である。
図1B】本明細書に記載されている方法の例示的な実施形態に係る製造のステップにおける、第1の例示的な実施形態に係るオプトエレクトロニクス半導体デバイスの概略断面図である。
図2A】本明細書に記載されている方法の例示的な実施形態に係る製造のステップにおける、複数のオプトエレクトロニクス半導体デバイスを有するウェハ複合体の上面図の概略表現である。
図2B】本明細書に記載されている方法の例示的な実施形態に係る製造のステップにおける、第1の例示的な実施形態に係るオプトエレクトロニクス半導体デバイスの概略断面図である。
図3A】本明細書に記載されている方法の例示的な実施形態に係る製造のステップにおける、複数のオプトエレクトロニクス半導体デバイスを有するウェハ複合体の上面図の概略表現である。
図3B】本明細書に記載されている方法の例示的な実施形態に係る製造のステップにおける、第1の例示的な実施形態に係るオプトエレクトロニクス半導体デバイスの概略断面図である。
図4A】本明細書に記載されている方法の例示的な実施形態に係る製造のステップにおける、複数のオプトエレクトロニクス半導体デバイスを有するウェハ複合体の上面図の概略表現である。
図4B】本明細書に記載されている方法の例示的な実施形態に係る製造のステップにおける、第1の例示的な実施形態に係るオプトエレクトロニクス半導体デバイスの概略断面図である。
図5A】本明細書に記載されている方法の例示的な実施形態に係る製造のステップにおける、複数のオプトエレクトロニクス半導体デバイスを有するウェハ複合体の上面図の概略表現である。
図5B】本明細書に記載されている方法の例示的な実施形態に係る製造のステップにおける、第1の例示的な実施形態に係るオプトエレクトロニクス半導体デバイスの概略断面図である。
図6A】本明細書に記載されている方法の例示的な実施形態に係る製造のステップにおける、複数のオプトエレクトロニクス半導体デバイスを有するウェハ複合体の上面図の概略表現である。
図6B】本明細書に記載されている方法の例示的な実施形態に係る製造のステップにおける、第1の例示的な実施形態に係るオプトエレクトロニクス半導体デバイスの概略断面図である。
図7】第1の例示的な実施形態に係るオプトエレクトロニクス半導体デバイスの概略断面図である。
図8A】概略側面図における、第1の例示的な実施形態に係るオプトエレクトロニクス半導体デバイスである。
図8B】概略上面図における、第1の例示的な実施形態に係るオプトエレクトロニクス半導体デバイスである。
図8C】概略正面図における、第1の例示的な実施形態に係るオプトエレクトロニクス半導体デバイスである。
図9A】側面図における、第2の例示的な実施形態に係るオプトエレクトロニクス半導体デバイスである。
図9B】上面図における、第2の例示的な実施形態に係るオプトエレクトロニクス半導体デバイスである。
図10】第3の例示的な実施形態に係るオプトエレクトロニクス半導体デバイスの概略断面図である。
図11】第4の例示的な実施形態に係るオプトエレクトロニクス半導体デバイスの概略断面図である。
図12】バー構造(bar configuration)における、本明細書に記載されている複数のオプトエレクトロニクス半導体デバイスの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
同じ要素、類似する要素、または等価の要素には、図において同じ参照符号を付してある。図と、図に描かれている要素の比率は、正しい縮尺ではないものとみなされたい。むしろ、図を見やすくする、および/または本発明を深く理解できるようにする目的で、個々の要素を誇張して大きく示してあることがある。
【0046】
図1Aは、製造の最初のステップにおける、複数のオプトエレクトロニクス半導体デバイス1を有するウェハ90の上面図の概略表現を示している。ウェハ90は、成長基板900(特にサファイア)を備えている。ウェハ90は、複数の第1のコンタクト構造810および複数の第2の領域102をさらに備えている。第1のコンタクト構造810は、例えば金属または金属合金によって形成されており、オプトエレクトロニクス半導体デバイス1の電気的接触の役割を果たす。第2の領域102は、第2の導電型を有し、エピタキシャル成長させることが好ましい。
【0047】
図1Bは、第1の例示的な実施形態に係るオプトエレクトロニクス半導体デバイス1の概略断面図を示している。ここに示したオプトエレクトロニクス半導体デバイス1の断面図は、図1Aに示したウェハ90の、切断線Aに沿った切断面に対応する。オプトエレクトロニクス半導体デバイス1は、第1のコンタクト構造810と、第2の領域102と、活性領域103と、第1の領域101とを備えており、これらはまとめて半導体ボディ10に関連付けられる。半導体ボディ10のこれらの領域は、成長基板900の上にエピタキシャル成長していることが好ましい。第1の領域101は第1の導電型を有し、第2の領域102は第2の導電型を有し、活性領域103は、電磁放射を生成するように設計されている。
【0048】
図2Aは、活性領域103とは反対側の、第2の領域102および第1のコンタクト構造810の面、に形成されているマスク層50を示している。構造化するために、マスク層には複数の凹部52が形成されている。
【0049】
図2Bは、第1の例示的な実施形態に係るオプトエレクトロニクス半導体デバイス1の概略断面図を示している。ここに示したオプトエレクトロニクス半導体デバイス1の断面図は、図2Aに示したウェハ90の、切断線Aに沿った切断面に対応する。このさらなる方法ステップにおいては、オプトエレクトロニクス半導体デバイス1の上面にマスク50を形成する。マスク50は、マスク層における複数の凹部52を有し、マスク層は、オプトエレクトロニクス半導体デバイス1がさらに処理される領域を定義しており、処理されない領域を保護している。
【0050】
図3Aは、プラズマエッチング工程によって生成される溝形状の凹部40の位置を示している。このエッチング工程は、マスク層における凹部52の位置において、半導体ボディ10のエッチングを生成する。
【0051】
図3Bは、第1の例示的な実施形態に係るオプトエレクトロニクス半導体デバイス1の概略断面図を示している。ここに示したオプトエレクトロニクス半導体デバイス1の断面図は、図3Aに示したウェハ90の、切断線Aに沿った切断面に対応する。オプトエレクトロニクス半導体デバイス1に複数の凹部40を導入する。これは、例えば、プラズマエッチング工程または別の乾式化学エッチング工程によって行うことができる。凹部40は、第2の領域102および活性領域103を完全に貫いている。エッチングの結果として、凹部40の側壁の表面に凹凸および損傷領域200が生じる。この損傷領域200を除去するため、続いて凹部40内でさらなるエッチング工程を行う。次の湿式化学エッチング剤、すなわち、KOH、NaOH、NHOH、LiOH、TMAH、NMP、のうちの1種類を使用することができる。次いでマスク層50を除去する。
【0052】
図4Aは、凹部40の側壁におけるイオン洗浄工程を概略的に示しており、イオン洗浄工程によって、エッチング残渣および他の異物が除去される。
【0053】
図4Bは、第1の例示的な実施形態に係るオプトエレクトロニクス半導体デバイス1の概略断面図を示している。ここに示したオプトエレクトロニクス半導体デバイス1の断面図は、図4Aに示したウェハ90の、切断線Aに沿った切断面に対応する。イオン洗浄は、例えば、低い運動エネルギの窒素イオン、アルゴンイオン、水素プラズマ、酸素プラズマ、またはキセノンイオンによって行う。これにより、可能な限り清浄なファセット面を得る目的で凹部40の側面からエッチング残渣または他の異物を除去することが可能である。
【0054】
図5Aは、被覆工程によって凹部40の側面に形成されるパッシベーション60を示している。
【0055】
図5Bは、第1の例示的な実施形態に係るオプトエレクトロニクス半導体デバイス1の概略断面図を示している。ここに示したオプトエレクトロニクス半導体デバイス1の断面図は、図5Aに示したウェハ90の、切断線Aに沿った切断面に対応する。パッシベーション60を形成するために、凹部40の側面を、窒化アルミニウム、シリコン、酸窒化アルミニウム、酸窒化珪素、酸化アルミニウム、窒化ガリウム、セレン化亜鉛、ガリウムヒ素、リン化ガリウム、窒化珪素、または別の三元化合物もしくは四元化合物などの半結晶材料によって被覆する。パッシベーション60は、湿気など外部環境の影響からの、活性領域103または第1の領域101もしくは第2の領域102の損傷を防止する。
【0056】
図6Aは、さらなる被覆工程によって凹部40の側面に形成されるミラー層70を示している。
【0057】
図6Bは、第1の例示的な実施形態に係るオプトエレクトロニクス半導体デバイス1の概略断面図を示している。ここに示したオプトエレクトロニクス半導体デバイス1の断面図は、図6Aに示したウェハ90の、切断線Aに沿った切断面に対応する。凹部40の内側のパッシベーション層60にミラー層70を形成する。ミラー層70は、例えば、金属層、または1種類または複数種類の誘電体の1層または複数の層を備えている。ミラー層70は、窒化珪素、酸化アルミニウム、酸窒化アルミニウム、酸化タンタル、二酸化珪素、またはシリコンを含む、またはこれらの材料から形成することができる。ミラー層70は、例えば、スパッタリング、蒸着、CVD、またはALD工程によって形成される。ミラー層70を形成することによって、オプトエレクトロニクス半導体デバイス1の取り出し面20および裏面30の定義済みの反射率を達成することができる。
【0058】
図1A図2A図3A図4A図5A図6Aそれぞれは、複数のオプトエレクトロニクス半導体デバイス1の製造方法の異なるステップにおけるウェハ90の上面図を示している。特に、ここに示した方法ステップすべてを、ウェハ複合体において有利に実行することができる。ウェハの構造化は、溝の形で複数の凹部40を挿入することによって行われる。さらなる処理(溝の側面の研磨と、溝の側面の不動態化およびその後の被覆を含む)も、ウェハ複合体において行うことができる。これにより製造が簡略化され、製造されるデバイスあたりのコストが減少する。
【0059】
図7は、第1の例示的な実施形態に係るオプトエレクトロニクス半導体デバイス1の概略断面図を示している。オプトエレクトロニクス半導体デバイス1は、第2の領域102と、活性領域103と、第1の領域101とを有する半導体ボディ10、を備えている。活性領域103とは反対側の第2の領域102の面に、第1のコンタクト構造810が配置されている。活性領域103とは反対側の第1の領域101の面に、第2のコンタクト構造820が配置されている。第1のコンタクト構造810および第2のコンタクト構造820は、例えば、金などの金属によって形成されており、半導体ボディ10を電気的に接続するように意図されている。半導体ボディ10の端面に、取り出し面20および裏面30が結合されている。取り出し面20は、裏面30に面平行に配置されており、活性領域103において生成された電磁放射Eを取り出す役割を果たす。取り出し面20および裏面30には、パッシベーション60およびミラー層70の層列が形成されている。
【0060】
第1の領域101は、式b<[(h-a-w)/tan(α/2)]-(bn-1-bn-2-...-b-b)に従って構造化されている。2つの段部1011を有するこの具体的な例においては、第1の段部1011の幅bは、この式に従ってb<(h-a-w)/tan(α/2)であり、第2の段部1011の幅bは、b<[(h-a-w)/tan(α/2)]-bである。変数aは、活性領域103とは反対側の第2の領域102の面からの活性領域103の距離を表す。変数hは、活性領域103とは反対側の第2の領域102の面から測定された、凹部40の第1のエッチング深さを表す。変数hは、活性領域103とは反対側の第2の領域102の面から測定された、別の凹部の第2のエッチング深さを表す。変数wは、活性領域103に隣接する第1の領域101内の導波路領域の厚さを表す。導波路領域は、活性領域103において生成された電磁放射を光学的に導くために使用される。変数αは、取り出し面20から放出された電磁放射Eの垂直遠視野角を表す。2つの段部1011が上の式に従って構造化されているならば、放出された電磁放射Eが第1の領域101の材料によって遮られることが回避され、電磁放射Eは、特に妨げられずにオプトエレクトロニクス半導体デバイス1から放射されることができる。
【0061】
図8Aは、第1の例示的な実施形態に係るオプトエレクトロニクス半導体デバイス1の概略側面図を示している。図7に示した例示的な実施形態とは異なり、この図に示した例示的な実施形態は、1つの段部1011のみを有する。
【0062】
図8Bは、第1の例示的な実施形態に係るオプトエレクトロニクス半導体デバイス1の概略上面図を示している。この平面視においては、第2の領域102の小さい延在範囲(第2の領域102が半導体ボディ10の幅全体にわたっていない)が明らかである。このことは、特に、第2の領域102の下に位置する活性領域103を限定する役割を果たす。これにより、活性領域103において放出される電磁放射の広がりが制限され、これによりビームの品質が有利に改善される。
【0063】
図8Cは、第1の例示的な実施形態に係るオプトエレクトロニクス半導体デバイス1の概略正面図を示している。図8Cに示した正面図は、オプトエレクトロニクス半導体デバイス1の取り出し面20を示している。第1のコンタクト構造810と、第1のコンタクト構造810の反対側に配置されている第2のコンタクト構造820とを介して、電気的接触が形成される。電磁放射Eは、狭く定義された領域において取り出される。
【0064】
図9Aは、第2の例示的な実施形態に係るオプトエレクトロニクス半導体デバイス1の概略側面図を示している。第2の例示的な実施形態は、本質的に第1の例示的な実施形態に対応しており、電気的接触のタイプのみが異なる。第2のコンタクト構造820が、第1のコンタクト要素810の横に、別の高さに配置されている。したがって、ここに示したオプトエレクトロニクス半導体デバイス1は、電気的に非導電性の基板上に実装するのに適している。
【0065】
図9Bは、第2の例示的な実施形態に係るオプトエレクトロニクス半導体デバイス1の概略上面図を示している。電気的接触は、第1のコンタクト構造810と、その横に配置されている第2のコンタクト構造820とによって達成される。
【0066】
図10は、第3の例示的な実施形態に係るオプトエレクトロニクス半導体デバイス1を示している。ここに示したオプトエレクトロニクス半導体デバイス1は、取り出し面20の反対側の裏面30に配置されておりミラー701を形成している複数の凹部40、を備えている。凹部40それぞれに、パッシベーション60およびミラー層70が設けられている。ミラー701は、いわゆるDBR構造を備えている。このDBR構造は、特に、スペクトル的に選択的な反射性および極めて高い反射率を特徴とする。これらの凹部40は、半導体ボディ10の材料と凹部40との間の遷移部を通じた、屈折率の変動の周期的な並びを生成する。DBRミラーは、半導体ボディ10に直接組み込まれている。特に、高い機械的安定性のために、および/または、屈折率を調整するために、凹部40をBCBまたは別の透明なポリマーもしくは誘電体によって満たすことができる。第1の領域101は、長手方向Xに、取り出し面20における段部1011を有する。
【0067】
図11は、第4の例示的な実施形態に係るオプトエレクトロニクス半導体デバイス1を示している。第4の例示的な実施形態は、本質的に第3の例示的な実施形態に対応しており、オプトエレクトロニクス半導体デバイス1の取り出し面20におけるさらなるミラー702を追加的に有する。この追加のミラー702もDBR構造として設計されており、複数の凹部40(それぞれがパッシベーション60およびミラー層70を有する)を有する。第2のミラー702は、半導体ボディ10に直接挿入されている。半導体ボディ10の半導体材料と、凹部40内の材料の異なる屈折率によって、屈折率の周期的な変動、したがってDBRミラーの構築が可能になる。このことは、空気のみによって満たされている凹部40にもあてはまる。第1の領域101は、長手方向Xに、取り出し面20における段部1011を有する。
【0068】
図12は、モノリシック構造に組み合わされてバーを形成している複数のオプトエレクトロニクス半導体デバイス1を示している。モノリシックとは、ここに示したオプトエレクトロニクス半導体デバイス1が、共通の成長基板900の上に成長しており、成長基板900および/またはエピタキシャルに作製された半導体層によって互いに結合されていることを意味する。複数のオプトエレクトロニクス半導体デバイス1を備えたバーを、有利に直接製造することができ、それまで独立していたいくつかのオプトエレクトロニクス半導体デバイス1の組み立てを有利に省くことができる。
【0069】
本発明は、例示的な実施形態の説明によって制限されない。むしろ本発明は、任意の新規の特徴および特徴の任意の組合せ(特に特許請求項における特徴の任意の組合せを含む)を包含しており、これらの特徴または特徴の組合せは、それ自体が特許請求項あるいは例示的な実施形態に明示的に開示されていない場合であっても、本発明に含まれる。
【関連出願】
【0070】
本特許出願は、独国特許出願第102018111319.6号の優先権を主張し、この文書の開示内容は参照により本明細書に組み込まれている。
【符号の説明】
【0071】
1 オプトエレクトロニクス半導体デバイス
10 半導体ボディ
101 第1の領域
1011 段部
102 第2の領域
103 活性領域
20 取り出し面
30 裏面
40 凹部
50 マスク層
52 マスク層における凹部
60 パッシベーション
70 ミラー層
701 ミラー
702 ミラー
200 損傷領域
810 第1のコンタクト構造
820 第2のコンタクト構造
90 ウェハ
900 成長基板
A 切断線
Α 垂直遠視野角
E 電磁放射
X 長手方向
Y 堆積方向
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10
図11
図12