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特許7390806クレーンフック部の給電システムおよびクレーンフック部の給電方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】クレーンフック部の給電システムおよびクレーンフック部の給電方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/14 20060101AFI20231127BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20231127BHJP
   H02J 50/90 20160101ALI20231127BHJP
   H02J 50/80 20160101ALI20231127BHJP
【FI】
B66C13/14
H02J50/12
H02J50/90
H02J50/80
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019107361
(22)【出願日】2019-06-07
(65)【公開番号】P2020200139
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】山根 俊博
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-246129(JP,A)
【文献】特開2018-162109(JP,A)
【文献】特開2013-256356(JP,A)
【文献】特開2004-075227(JP,A)
【文献】特開平01-212416(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0248890(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00-15/06
H02J 50/00-50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルと可変リアクタンス回路からなる送電側共振回路を有するとともに前記送電側共振回路に交流電源からの電力を供給する、2本の巻き上げロープのうち一方の巻き上げロープの一端側であるクレーンのジブに固定される側に設けられた送電装置と、
コイルと可変リアクタンス回路からなる受電側共振回路を有するとともに前記受電側共振回路に接続された負荷回路へ電力を供給する、前記送電装置よりもクレーンのクレーンフック部側の前記巻き上げロープに設けられた受電装置と、
を備え、
前記送電側共振回路と前記受電側共振回路とを共鳴結合することで前記交流電源から前記負荷回路へ電力を無線伝送するクレーンフック部の給電システムであって、
前記送電装置の前記コイルと前記受電装置の前記コイルとは、中空部を有する円筒形状に構成され、
前記一方の巻き上げロープは、前記送電装置の前記コイルの前記中空部と前記受電装置の前記コイルの前記中空部とを通り、
前記送電側共振回路の前記コイルおよび前記受電側共振回路の前記コイルは、それぞれジョイント部を有しており、前記ジョイント部は一方の半円筒形の基材に巻かれた第1のコイルと、他方の半円筒形の基材に巻かれた第2のコイルと、を接続し、
さらに、
前記受電装置の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記各可変リアクタンス回路の各リアクタンスが、前記送電装置と前記受電装置とを前記位置情報取得部が取得した前記位置情報に基づく位置関係に配置した場合に得られる前記各コイルの各自己インダクタンスおよび前記各コイル間の各相互インダクタンスを定数とし、前記各リアクタンスを変数とする前記送電装置および前記受電装置を表す回路方程式を用いて算出された前記電力の伝送効率に基づき決定された各値を有するように、前記各リアクタンスを制御する制御部と、
を備え、
クレーンフック部の給電システム。
【請求項2】
前記位置情報と前記各可変リアクタンス回路の各リアクタンスとの対応関係を表す情報を含むデータベースと、
をさらに備え、
前記受電装置は、前記位置情報を検知するセンサを有し、検知された前記位置情報を前記位置情報取得部に出力し、
前記制御部は、前記データベースを参照して、前記位置情報取得部が取得した前記位置情報に基づき前記各リアクタンスを制御する
請求項1に記載のクレーンフック部の給電システム。
【請求項3】
前記位置情報と前記各可変リアクタンス回路の各リアクタンスとの対応関係を表す情報を含むデータベースと、
をさらに備え、
前記受電装置は、前記位置情報のうち前記受電装置の座標を表わす情報を検知するセンサを有し、検知された前記座標を表わす情報を前記位置情報取得部に出力し、
前記制御部は、前記交流電源から前記負荷回路へ電力を無線伝送する前に、前記位置情報のうち前記受電装置のコイルの軸方向を表わす情報に対応して複数個、前記各可変リアクタンス回路において設けられた各リアクタンスを切り替えて前記電力の伝送効率を計測し、前記電力の伝送効率が最大となる各リアクタンスを選択し、選択結果に対応する前記受電装置のコイルの軸方向を表わす情報を前記位置情報取得部に出力し、
前記制御部は、前記データベースを参照して、前記位置情報取得部が取得した前記位置情報に基づき選択された前記各リアクタンスを制御する
請求項1に記載のクレーンフック部の給電システム。
【請求項4】
前記2本の巻き上げロープのうち他方の巻き上げロープの一端側であるクレーンのジブに固定される側であって、前記送電装置より低く、前記受電装置より高い位置に設けられた過巻防止装置
を有する請求項1から請求項3いずれか一項に記載のクレーンフック部の給電システム。
【請求項5】
コイルと可変リアクタンス回路からなる送電側共振回路を有するとともに前記送電側共振回路に交流電源からの電力を供給する、2本の巻き上げロープのうち一方の巻き上げロープの一端側であるクレーンのジブに固定される側に設けられた送電装置と、
コイルと可変リアクタンス回路からなる受電側共振回路を有するとともに前記受電側共振回路に接続された負荷回路へ電力を供給する、前記送電装置よりもクレーンのクレーンフック部側の前記巻き上げロープに設けられた受電装置と、
位置情報取得部と、
制御部と
を用いて、前記送電側共振回路と前記受電側共振回路とを共鳴結合することで前記交流電源から前記負荷回路へ電力を無線伝送するクレーンフック部の給電方法であって、
前記送電装置の前記コイルと前記受電装置の前記コイルとは、中空部を有する円筒形状に構成され、
前記一方の巻き上げロープは、前記送電装置の前記コイルの前記中空部と前記受電装置の前記コイルの前記中空部とを通り、
前記送電側共振回路の前記コイルおよび前記受電側共振回路の前記コイルは、それぞれジョイント部を有しており、前記ジョイント部は一方の半円筒形の基材に巻かれた第1のコイルと、他方の半円筒形の基材に巻かれた第2のコイルと、を接続し、
前記位置情報取得部によって、前記受電装置の位置情報を取得し、
前記制御部によって、前記各可変リアクタンス回路の各リアクタンスが、前記送電装置と前記受電装置とを前記位置情報取得部が取得した前記位置情報に基づく位置関係に配置した場合に得られる前記各コイルの各自己インダクタンスおよび前記各コイル間の各相互インダクタンスを定数とし、前記各リアクタンスを変数とする前記送電装置および前記受電装置を表す回路方程式を用いて算出された前記電力の伝送効率に基づき決定された各値を有するように、前記各リアクタンスを制御する
クレーンフック部の給電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンフック部の給電システムおよびクレーンフック部の給電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クレーンによる揚重作業では、作業状況を確認するためのカメラや照明が必須となるが、設置箇所によっては有線での電力供給が困難となる。図7は、カメラや照明を用いてクレーンによる作業状況を確認する場合を示す図である。図7に示すように、吊り荷を持ち上げる、例えば揚重用のクレーンでは、詳細な吊り荷の作業状況を確認するために、クレーンフック部7(クレーンのフック部分)にカメラや照明などの観測用機器(受電装置2における負荷回路に対応する機器)を設置することにより、詳細な作業状況を確認することが可能となる。
【0003】
この場合、カメラや照明などの受電装置2における負荷回路への電力供給としては、下記手法が想定される。
(1)クレーン本体のバッテリーから有線で給電する。
(2)カメラや照明にバッテリーを内蔵して給電する。
(3)カメラや照明にバッテリーを内蔵して無線給電する。
(1)の手法を用いる場合、クレーン本体のバッテリーから電源配線をフック部分に取り回す必要があるが、フック用ワイヤ部分の電源配線がフックの巻き上げ時に絡まるという課題がある。
(2)の手法を用いる場合、定期的にバッテリーを交換する必要があり、作業人工の増大や交換忘れによるバッテリー切れなどの課題がある。
【0004】
(1)、(2)の課題を解決する手段として、(3)の手法である無線給電技術によりカメラや照明内蔵のバッテリーに定期的に無線で充電するシステム(無線電力伝送システム)が考えられる。(3)の手法に該当する当該分野の先願特許として、例えば、「クレーンフック部の給電システム」(特開2014-237502;先行技術文献)が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-237502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
同技術は、クレーン巻き上げ時に嵌合により給電部と受電部の位置合わせを行うが、ワイヤの揺れなどにより嵌合がうまくはまらない場合があったり、嵌合部の強度を保つために重量が重くなる等の課題がある。
【0007】
本発明は、上記の事情を考慮してなされたものであり、フック巻き上げ時にカメラや照明に電力供給(バッテリーに充電)するシステムにおいて、コイル形状をクレーンワイヤへの取り付けに適した形状とし、さらに給電距離を制御することにより、常に高い伝送効率を実現するクレーンフック部の給電システムおよびクレーンフック部の給電方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明の一態様は、コイルと可変リアクタンス回路からなる送電側共振回路を有するとともに前記送電側共振回路に交流電源からの電力を供給する、2本の巻き上げロープのうち一方の巻き上げロープの一端側であるクレーンのジブに固定される側に設けられた送電装置と、コイルと可変リアクタンス回路からなる受電側共振回路を有するとともに前記受電側共振回路に接続された負荷回路へ電力を供給する、前記送電装置よりもクレーンのクレーンフック部側の前記巻き上げロープに設けられた受電装置と、を備え、前記送電側共振回路と前記受電側共振回路とを共鳴結合することで前記交流電源から前記負荷回路へ電力を無線伝送するクレーンフック部の給電システムであって、前記送電装置の前記コイルと前記受電装置の前記コイルとは、中空部を有する円筒形状に構成され、前記一方の巻き上げロープは、前記送電装置の前記コイルの前記中空部と前記受電装置の前記コイルの前記中空部とを通り、前記送電側共振回路の前記コイルおよび前記受電側共振回路の前記コイルは、それぞれジョイント部を有しており、前記ジョイント部は一方の半円筒形の基材に巻かれた第1のコイルと、他方の半円筒形の基材に巻かれた第2のコイルと、を接続し、さらに、前記受電装置の位置情報を取得する位置情報取得部と、前記各可変リアクタンス回路の各リアクタンスが、前記送電装置と前記受電装置とを前記位置情報取得部が取得した前記位置情報に基づく位置関係に配置した場合に得られる前記各コイルの各自己インダクタンスおよび前記各コイル間の各相互インダクタンスを定数とし、前記各リアクタンスを変数とする前記送電装置および前記受電装置を表す回路方程式を用いて算出された前記電力の伝送効率に基づき決定された各値を有するように、前記各リアクタンスを制御する制御部と、を備えるクレーンフック部の給電システムである。
【0009】
また、本発明の一態様は、コイルと可変リアクタンス回路からなる送電側共振回路を有するとともに前記送電側共振回路に交流電源からの電力を供給する、2本の巻き上げロープのうち一方の巻き上げロープの一端側であるクレーンのジブに固定される側に設けられた送電装置と、コイルと可変リアクタンス回路からなる受電側共振回路を有するとともに前記受電側共振回路に接続された負荷回路へ電力を供給する、前記送電装置よりもクレーンのクレーンフック部側の前記巻き上げロープに設けられた受電装置と、位置情報取得部と、制御部とを用いて、前記送電側共振回路と前記受電側共振回路とを共鳴結合することで前記交流電源から前記負荷回路へ電力を無線伝送するクレーンフック部の給電方法であって、前記送電装置の前記コイルと前記受電装置の前記コイルとは、中空部を有する円筒形状に構成され、前記一方の巻き上げロープは、前記送電装置の前記コイルの前記中空部と前記受電装置の前記コイルの前記中空部とを通り、前記送電側共振回路の前記コイルおよび前記受電側共振回路の前記コイルは、それぞれジョイント部を有しており、前記ジョイント部は一方の半円筒形の基材に巻かれた第1のコイルと、他方の半円筒形の基材に巻かれた第2のコイルと、を接続し、前記位置情報取得部によって、前記受電装置の位置情報を取得し、前記制御部によって、前記各可変リアクタンス回路の各リアクタンスが、前記送電装置と前記受電装置とを前記位置情報取得部が取得した前記位置情報に基づく位置関係に配置した場合に得られる前記各コイルの各自己インダクタンスおよび前記各コイル間の各相互インダクタンスを定数とし、前記各リアクタンスを変数とする前記送電装置および前記受電装置を表す回路方程式を用いて算出された前記電力の伝送効率に基づき決定された各値を有するように、前記各リアクタンスを制御するクレーンフック部の給電方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、送電装置と受電装置の距離が変化する場合でも高効率な電力伝送を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態の構成例を説明するための模式図である。
図2図1に示す送電コイル3および受電コイル4の構成例を説明するための模式図である。
図3図2に示すジョイント部の構成例を説明するための模式図である。
図4図1に示す送電装置1、受電装置2、制御装置5の構成例を説明するための模式図である。
図5図4に示すデータベース53の構成例を説明するための模式図である。
図6】本発明の他の実施形態の構成例を説明するための回路図である。
図7】カメラや照明を用いてクレーンによる作業状況を確認する場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態の構成例を説明するための模式図である。また、図2は、図1に示す送電コイル3および受電コイル4の構成例を説明するための模式図である。また、図3は、図2に示すジョイント部の構成例を説明するための模式図である。また、図4は、図1に示す送電装置1、受電装置2、制御装置5の構成例を説明するための模式図である。また、図5は、図4に示すデータベース53の構成例を説明するための模式図である。
図1は、本発明によるクレーンフック部の給電システム10の一実施形態の構成例を概略的に示している。図1に示すクレーンフック部の給電システム10は、磁界共振方式の無線電力伝送システムであり、送電装置1と、受電装置2と、制御装置5とを含んで構成される。
ここで、クレーンフック部7は、図1に示すように、一対のシーブ73aおよび73bと、吊索74aおよび74bと、フックブロック71とを含んで構成される。また、送電装置1は、交流電圧源301と、整合回路35と、送電コイル3とを含んで構成される。また、受電装置2は、受電コイル4と、整合回路45と、フックブロック71に設置されるバッテリーやカメラなどの負荷回路とを含んで構成される。
つまり、クレーンフック部の給電システム10は、クレーンフック部7を、巻上げロープ7aおおよび7b(2本の対をなす巻上げロープ)を巻き上げた時、あるいは巻き下げた時に、カメラや照明などを含んで構成される受電装置2に送電装置1から電力供給(バッテリーに充電)する無線給電システムである。クレーンフック部の給電システム10においては、制御装置5が送電装置1からの給電距離を制御することにより、送電コイル3および受電コイル4の距離が変化する場合でも高い伝送効率を実現する無線給電システムを提供する。
【0013】
図1は、クレーンフック部7を巻き上げて、送電装置1による受電装置2の充電可能な状態の送電装置1と受電装置2とに位置関係を示している。
図1に示すように、クレーンフック部7は、フックブロック71の上方に巻上げロープ7aおよび7bによって巻き掛けられた一対のシーブ73aおよび73bと、このシーブ73aおよび73bが吊索74aおよび74bによって吊り下げられているフックブロック71とからなる。
送電装置1における整合回路35(後述する可変リアクタンス回路304)は、入力側は電源線50によりジブ6の下側にある交流電圧源301に接続され、出力側は送電コイル3(後述するコイル305)に接続されている。
また、送電コイル3は、ジブ6の先端部からワイヤ等で取り付けられている。ここで、巻上げロープ7aおよび7bの一端側は、ジブ6に固定して設置されている。また、巻上げロープ7aおよび7bの他端側は、一端側がシーブ73aおよび73bを通過した後の、ジブ6の下側にある、図1においては不図示のドラムに接続されるように設置されている。当該ドラムは、巻上げロープ7aおよび7bを巻き上げる、あるいは巻き下げることにより、クレーンフック部7を巻き上げる、或いは巻き下げる動作(クレーンフック部7を上下に移動させる動作)を、例えば制御装置5からの指令信号に基づいて行う。
【0014】
受電コイル4(後述するコイル402)は、シーブ73aの上側に、送電コイル3の下側に、取り付けられている。
また、受電装置2における整合回路45(後述する可変リアクタンス回路401)は、入力側は電源線により受電コイル4を構成するコイルに接続され、出力側はフックブロック71にあるバッテリーおよびカメラといった負荷回路(後述する抵抗406)に接続されている。
【0015】
過巻防止装置8を構成する重錘80aは、ジブ6の先端部からワイヤ等で、シーブ73bの上側に、巻上げロープ7aにおける送電コイル3の設置位置と受電コイル4の設置位置とに対応する高さの位置に取り付けられている。ここで、過巻防止装置8は、最高位置に位置する、クレーンフック部7を構成するシーブ73aおよび73bが、ジブ6に近づいた過巻状態を検出して、例えば警報を発するとともに、不図示のドラムの回転動作を停止し、フックブロック71の巻上げを停止するための装置である。そのため、過巻防止装置8は、重錘80aと、ジブ6に固定された不図示のリミットスイッチと、重錘80aとリミットスイッチとを連結するワイヤロープ80bとを有している。そして、過巻防止装置8は、クレーンフック部7の巻き上げ時に、シーブ73bが重錘80aに接触すると、リミットスイッチがその接触を感知するようになっている。ここで、シーブ73aの過巻状態位置としての重錘80aの巻上げロープ7bにおける支持位置は、送電コイル3の巻上げロープ7aにおける設置位置より低く、受電コイル4の巻上げロープ7aにおける設置位置より高い位置に設定されている。これは、過巻防止装置8の場合、巻上げロープ7aの巻き上げ時にシーブ73aが受電コイル4に接触した場合においても、受電コイル4(クレーンフック部側の受電コイル)が送電コイル3に接触しないことに対応させるためのものである。これにより、過巻防止装置8は、送受電コイル(送電コイル3と受電コイル4)が接触して破損することを防止できる。
【0016】
ここで、本実施形態における送受電コイルの構成について、図2を参照しつつ説明する。
図2(a)に示すように、送受電コイル(送電コイル3および受電コイル4)は、それぞれ1つのコイル(ジョイント部によって左側の基材に巻かれたコイルと右側の基材に巻かれたコイルとが接続されたコイル)で構成される。 このように、1つのコイルは、中空の円筒にコイルを巻いた形状となっており、中空部にクレーンのワイヤを通すことにより送受電コイルのオフセット(よこずれ)がほぼ発生しない構成となっている。
また、2分割が可能な構造となっているため、ワイヤへの取り付けが容易である。具体的には、図2(b)に示すように、ツバをつけた半ドーナツ形状の円筒の基材にコイルを巻き、コイルが巻かれた2つの基材を、ワイヤを挟んでビス止めすることにより容易に設置できる。
なお、ジョイント部の構成(図2(a)に示す左側の基材に巻かれたコイルと右側の基材に巻かれたコイルとを接続する構成例)としては、図3(a)および図3(b)に示す電極方式と、図3(c)および図3(d)に示すソケット方式が挙げられる。
ここで、図3(a)および図3(c)は、図2(a)下段に示すコイルの縦方向の並びに対して、コイルを縦方向に縦断した場合の図(縦断図)を表している。また、図3(b)および図3(d)は、それぞれ、図3(a)および図3(c)におけるA-A’断面(上記縦断図に対して90度回転した方向における断面図)を表している。
図3(a)および図3(b)に示すように、左側の基材に巻かれたコイルと右側の基材に巻かれたコイルは、それぞれが有する電極を接続する電極方式によって、一つのコイルが生成される。
また、図3(c)および図3(d)に示すように、左側の基材に巻かれたコイルと右側の基材に巻かれたコイルは、左側の基材に巻かれたコイルの配線ソケット(オス)と右側の基材に巻かれたコイルの配線ソケット(メス)を接続するソケット方式によって、一つのコイルが生成される。
すなわち、送受電コイル(送電コイル3および受電コイル4)は、それぞれ、ジョイント部を有している。また、当該ジョイント部は一方の半円筒形(半ドーナツ形状の円筒)の基材に巻かれたコイルと、他方の半円筒形(半ドーナツ形状の円筒)の基材に巻かれたコイルと、を電気的に接続する。
【0017】
上述した説明の通り、送電装置1を構成する送電コイル3は、巻上げロープ7aに設置されている。また、受電装置2を構成する受電コイル4は、シーブ73aに送電コイル3より下方の位置に設置されている。また、制御装置5は、クレーンの運転席に対応する場所に設置されている。なお、制御装置5は、クレーンの運転席ではなく、工事現場の管理棟の事務室などに配置されていてもよい。
また、図2および図3を参照して説明した通り、本実施形態のシステムにおいては、コイル形状をクレーンワイヤへの取り付けに適した形状としている。しかしながら、以上説明したシステムでは、巻上げロープ7aおよび7bの巻き上げ長さによって送受電のコイル間距離が変わり、給電効率が低下する可能性がある。
そこで、送受電間距離が自由に決定できる無線給電システム(磁界共振方式)の回路構成の一例を図4に示している。以下、図4を参照しつつ、クレーンフック部の給電システム10が備える送電装置1と、受電装置2と、制御装置5とについて説明する。
【0018】
送電装置1は、コイル(インダクタ)と可変リアクタンス回路からなる共振回路(送電側共振回路)31を有するとともに、制御部17とを有する。また、送電装置1は、共振回路(送電側共振回路)31に、抵抗(レジスタ)302を介して、交流電圧源301(交流電源)からの電力を供給する。
ここで、交流電圧源301は内部抵抗が零の理想的な電圧源であり、抵抗302は現実の電圧源の内部抵抗に、図1における電源線50に対応する抵抗を含んだ抵抗に相当する。なお、本願においてリアクタンス回路とは、容量性リアクタンスを有するコンデンサや誘導性リアクタンスを有するコイルから構成される回路である。また、可変リアクタンス回路とは、リアクタンスを可変制御することができるリアクタンス回路である。例えば、各可変リアクタンス回路は各1個の可変コンデンサで構成することができる。また、コイルと可変リアクタンス回路からなる共振回路の共振周波数は、可変リアクタンス回路のリアクタンスを予め定めた所定の値に制御した場合に共振回路の誘導性リアクタンスと容量性リアクタンスが等しくなる周波数である。
共振回路31は、直列接続された可変リアクタンス回路304とコイル305を有する。
なお、コイル305は、軸方向が一定方向となるように配列されている。また、交流電圧源301の出力周波数と、共振回路31の共振周波数とは同一である。
【0019】
送電装置1において、交流電圧源301の出力の一方は接地されていて、他方は抵抗302の一端に接続されている。抵抗302の他端は、可変リアクタンス回路304の一端に接続されている。可変リアクタンス回路304の他端はコイル305の一端に接続されている。コイル305の他端は接地されている。
【0020】
可変リアクタンス回路304は、例えば、可変コンデンサを用いて構成する場合、MEMS(Micro Electro Mechanical System)可変容量素子、可動部とトリマコンデンサの組み合わせ等、制御部17が例えば電気的に静電容量を可変することができる素子を用いて構成することができる。また、可変リアクタンス回路304は、例えば、可変インダクタを用いて構成する場合、可動部とフェライトコイルの組み合わせ等、制御部17が例えば電気的にインダクタンスを可変することができる素子を用いて構成することができる。制御部17は、制御装置5から受信したリアクタンス制御用の制御信号に基づき、可変リアクタンス回路304のリアクタンスを制御する。送電装置1は、例えば無線LAN(ローカルエリアネットワーク)等を用いて可変リアクタンス回路304のリアクタンスを制御するための制御信号を制御装置5から受信する。
【0021】
一方、受電装置2は、コイルと可変リアクタンス回路からなる共振回路(受電側共振回路)41を有するとともに、制御部23とを有する。受電装置2は、共振回路(受電側共振回路)41から抵抗406へ電力を供給する。
共振回路41は、直列接続された可変リアクタンス回路401とコイル402を有する。
なお、コイル402は、軸方向が一定方向となるように配列されている。
受電装置2において、コイル402の一端は可変リアクタンス回路401の一端に接続されていて、他端は接地されている。可変リアクタンス回路401の他端は、抵抗406の一端に接続されている。抵抗406の他端は接地されている。
ここで、抵抗406は、例えば図1に示す照明やカメラといった機器(負荷回路)であり、図1に示すようにクレーンフック部7のフックブロック71に搭載されている。抵抗406は、図1に示すように、1個の電球であってもよいし、整流回路、電圧変換回路、蓄電池、その他の電気・電子回路等を含むものであってもよい。また、受電装置2は、図示してない入出力装置、位置取得装置や通信装置を備えていてもよい。受電装置2は、例えば、スマートフォンやタブレットPCなどのモバイル端末、電気自動車等に搭載あるいは内蔵されているものであってもよい。また、制御部23は、モバイル端末、電気自動車等が備えるコントローラ(コンピュータ)が提供する一機能として構成されていてもよい。
【0022】
可変リアクタンス回路401は、送電装置1における可変リアクタンス回路304と同様に、制御部23が例えば電気的にリアクタンスを可変することができる素子を用いて構成することができる。制御部23は、制御装置5から受信したリアクタンス制御用の制御信号に基づき、可変リアクタンス回路401のリアクタンスを制御する。また、制御部23は、受電装置2の位置情報を制御装置5に対して提供する。受電装置2と制御装置5は例えば無線LAN(ローカルエリアネットワーク)等を用いて可変リアクタンス回路401のリアクタンスを制御するための制御信号や位置情報を送受信する。制御部23は、例えば、受電装置2が有する図示していない屋内GPS(Global Positioning System)やビーコンの受信機を用いて受電装置2の位置情報を取得したり、ユーザの受電装置2に対する図示していない入力部に対する所定の入力操作に基づいて位置情報を決定したりすることができる。
【0023】
位置情報は、例えば、3次元(あるいは2次元)の受電装置2の座標と、共振回路41が有するコイル402の軸方向とによって定義することができる。ただし、コイル402の軸方向を表す情報(受電装置2の向き)は位置情報に必ずしも含まれていなくてもよい。例えば、受電時の受電装置2の向きが固定である場合、すなわちコイル402の軸方向が例えば鉛直方向一定である場合とか、一定の傾斜角と向きで固定されている場合等には、位置情報は座標情報から構成されるものとすることができる。なお、コイル402の軸方向は、例えば、受電装置2が有する図示していない地磁気センサ、加速度センサ、傾斜角センサ等を用いて検知することができる。
すなわち、本実施形態において、受電装置2は、位置情報(受電装置2の座標を表わす情報と、受電装置2のコイルの軸方向を表わす情報)を検知するセンサを有し、検知された位置情報を制御装置5(位置情報取得部52)に出力する。
【0024】
本実施形態のクレーンフック部の給電システム10は、上述した送電装置1と受電装置2によって、送電側の複数の共振回路31と受電側の共振回路41を共鳴結合することで交流電圧源301から抵抗406へ電力を無線伝送する。
【0025】
一方、制御装置5は、コンピュータであり、中央処理装置、記憶装置、通信装置、入出力装置等を有する。制御装置5は、例えば記憶装置に記憶されている所定のプログラムを実行することで各装置を制御して次の機能を提供する。すなわち、本実施形態において、制御装置5は、制御部51および位置情報取得部52として機能するとともに、記憶装置内にデータベース53を格納して管理する。
【0026】
制御部51は、データベース53を参照して、位置情報取得部52が取得した受電装置2の位置情報に基づき送電装置1および受電装置2の各可変リアクタンス回路の各リアクタンスを制御する。制御部51は、例えば、送電装置1と受電装置2の任意の位置関係において予め取得したコイル305および402の自己インダクタンスと各コイル間の相互インダクタンスとに基づいて、電力の伝送効率が高効率となるように、可変リアクタンス回路304と可変リアクタンス回路401の各リアクタンスを最適化した値に制御する。
【0027】
位置情報取得部52は、受電装置2の位置情報を受電装置2から取得する。
【0028】
データベース53は、受電装置2の位置情報と各可変リアクタンス回路の各リアクタンスを決定するための情報との対応関係を表す情報を含む。データベース53は、例えばその対応関係を表す情報を1または複数のテーブルとして含む。各リアクタンスを決定するための情報とは、例えば、各位置情報に対応した各リアクタンスの値そのものであってもよいし、各位置情報に対応した各リアクタンスの値を計算する際に用いる情報、例えば、各コイルの自己インダクタンスや各コイル間の相互インダクタンスの値を示す情報等であってもよい。複数の位置情報の個数は、例えば、受電装置2を受電可能とする範囲を一定の領域毎に区分した各区分に対応する個数である。図5は、データベース53の構成例を説明するための模式図である。図5はデータベース53が含むテーブルの構成例を示す図であり、図5(a)と図5(b)は異なる構成例を示す。図5(a)および図5(b)はデータベース53が含むテーブルが含むレコードの構成例を示す。
【0029】
図5(a)に示すレコード53R1は、位置情報フィールド531とインダクタンス情報フィールド532とを含む。位置情報フィールド531は、受電装置2から位置情報取得部52が取得する受電装置2の位置情報と同一の(あるいは対応する)情報が格納される。位置情報は、例えば3次元または2次元の受電装置2の座標を表す情報と共振回路41が有するコイル402の軸方向を表す情報とを含む。
インダクタンス情報フィールド532は、受電装置2が位置情報フィールド531に格納された位置情報で示される位置に配置された場合、すなわち、送電装置1と受電装置2を位置情報フィールド531に格納された位置情報に基づく位置関係に配置した場合に得られるコイル305および402の自己インダクタンスと各コイル間の相互インダクタンスを表す情報が格納される。自己インダクタンスと相互インダクタンスは、位置情報に基づく送電装置1と受電装置2の位置関係において、コイル305および402の各自己インダクタンスと各コイル間の各相互インダクタンスを、実際に計測したり、あるいは計算処理によって求めたり、あるいは計測と計算処理を組み合わせて求めたりすることで取得することができる。制御部51は、データベース53を参照し、インダクタンス情報フィールド532に格納されている受電装置2の位置情報に基づく位置関係におけるコイル305および402の各自己インダクタンスと各コイル間の各相互インダクタンスを用いて、電力の伝送効率が高効率となるように、可変リアクタンス回路304と可変リアクタンス回路401の各リアクタンスの最適値を求め、各リアクタンスを制御する。各リアクタンスの求め方については後述する。
【0030】
図5(b)に示すレコード53R2は、位置情報フィールド531とリアクタンス情報フィールド533とを含む。位置情報フィールド531は、レコード53R1の位置情報フィールド531と同一である。リアクタンス情報フィールド533は、位置情報に基づく送電装置1と受電装置2の位置関係におけるコイル305および402の各自己インダクタンスと各コイル間の各相互インダクタンスを用いて、電力の伝送効率が高効率となるように求めた、可変リアクタンス回路304と可変リアクタンス回路401の各リアクタンスの最適値を表す情報を格納する。
【0031】
なお、データベース53は、図5に示すテーブルの他、例えば、交流電圧源301の出力電圧、出力周波数および出力抵抗、抵抗406の抵抗値等を表す情報を格納するテーブルを含むことができる。
【0032】
以上の構成おいて、図1および図4に示すクレーンフック部の給電システム10では、受電装置2は、自装置の位置情報を例えば定期的に制御装置5に対して送信する。制御装置5では、受電装置2が送信した位置情報を位置情報取得部52が受信する。位置情報取得部52が位置情報を受信すると、制御部51は、送電装置1の位置(既知)と受電装置2から送信された位置情報により、電力伝送効率が最大となるように送電装置1および受電装置2内の各可変リアクタンス回路の最適リアクタンスを、計算することで(あるいはデータベース53から読み出すことで)決定する。そして、制御部51は、決定した最適リアクタンスに基づき、送電装置1および受電装置2に設置した可変リアクタンス回路のリアクタンスを制御する。これによって、本実施形態によれば、送受電装置の位置関係によらず高効率な無線電力伝送が可能となる。
【0033】
以上のように各可変リアクタンス回路の各リアクタンスを制御することで、本実施形態では、磁界共振(共鳴)方式の無線電力伝送システムにおいて特定の方向への給電に際して(すなわち任意の位置関係に配置した場合でも)例えば送電装置の物理的回転をすることなく高い電力伝送効率を実現することができる。
【0034】
なお、本発明の実施形態は、図4に示す構成に限定されない。例えば送電装置1が有する共振回路31は、1個に限らず、2以上の複数個とすることができる。ただし、立体的に給電距離を調整する場合には3以上の複数個であることが望ましい。また、受電装置2が有する共振回路41は、1個に限らず、2以上の複数個であってもよい。また、共振回路を3以上の複数個とする場合には、各共振回路と抵抗406の間に可変リアクタンス回路を設けるのが望ましい。受電装置2に共振回路を複数設置した場合、更なる高効率化を図ることが可能である。
【0035】
次に、本発明の実施形態における各可変リアクタンス回路の各リアクタンスの決定手順について説明する。
図4に示すように、交流電圧源301の出力電圧は電圧Vinである。コイル305および402の自己インダクタンスはそれぞれインダクタンスL11およびL33である。コイル305とコイル402の間の相互インダクタンスはインダクタンスL13またはL31である。抵抗302(現実の交流電圧源の内部抵抗)の抵抗値(レジスタンス)は抵抗値Rである。抵抗406の抵抗値は抵抗値Rである。
【0036】
また、可変リアクタンス回路304および401のリアクタンスはそれぞれリアクタンスXおよびXであるとする。抵抗302、可変リアクタンス回路304、可変リアクタンス回路401および抵抗406に流れる電流はそれぞれ電流i、i、iおよびiであるとする。交流電圧源301と抵抗302の直列回路(すなわち現実の交流電圧源の出力回路)、コイル305、コイル402、抵抗406の各端子電圧は、それぞれ電圧V、V、VおよびVであるとする。電圧Vはクレーンフック部の給電システム10の出力電圧Voutである。
【0037】
図4に示すクレーンフック部の給電システム10(送電装置1および受電装置2)を示す回路は、次の回路方程式で表すことができる。次の回路方程式は、定常状態の正弦波交流回路を表していて、電流i、i、iおよびiならびに電圧V、V、VおよびVはフェーサで表され、回路素子は複素インピーダンスで表されている。
【0038】
【数1】
【0039】
ここで、ωは交流電圧源301の出力の角周波数であり、jは虚数単位である。
【0040】
本実施形態において、上記回路方程式を用いて各可変リアクタンス回路の各リアクタンスを決定する際には、決定に先立って、送電装置1と受電装置2の複数の位置関係において、自己インダクタンスL11およびL33と、相互インダクタンスL13またはL31を実測や計算によって取得しておく。また、抵抗値RおよびRも実測や計算によって取得しておく。また、電圧Vinは所定の値に設定しておく。この場合、電圧Vin、インダクタンスL11およびL33、L13またはL31、抵抗値R(現実の交流電圧源の内部抵抗)および抵抗値Rは既知の値(すなわち定数)である。一方、可変リアクタンス回路304および401のリアクタンスXおよびXは未決定の値(すなわち変数)である。
【0041】
そして、各可変リアクタンス回路の各リアクタンスは、以下に示す電力伝送効率ηが最大となるように決定する。
【0042】
【数2】
【0043】
ここで、Pは抵抗406に供給される電力であり、Pinは交流電圧源301から出力される電力であり、次のように表される。
【0044】
【数3】
【0045】
【数4】
【0046】
ここで、関数Reは実部を返す関数であり、関数conjは共役複素数を返す関数である。また、式中のV、i、Vおよびiは上記回路方程式を解くことにより算出する。
【0047】
なお、電力伝送効率ηが最大(あるいは一定以上の高効率)となる各可変リアクタンス回路の各リアクタンスの値は、例えば各リアクタンスを一定の範囲で変化させて電力伝送効率ηを複数回算出し、算出した複数の電力伝送効率ηのうちで電力伝送効率ηが最大(あるいは一定以上の高効率)となる各リアクタンスの組み合わせを選択することで決定することができる。最大(あるいは一定以上の高効率)となる電力伝送効率ηが複数の組み合わせで算出された場合には、例えば、共振回路のQ値(Quality factor)や結合係数k等の値を考慮していずれかの組み合わせを選択することができる。
【0048】
図5(a)を参照して説明したように、位置情報とインダクタンス情報とを対応づける情報をデータベース53が含む場合、制御部51は、受電装置2から位置情報を受信すると、その位置情報に対応するインダクタンス情報をデータベース53から取得する。次に、制御部51は、各コイルの各自己インダクタンスおよび各コイル間の各相互インダクタンスを定数とし、各可変リアクタンス回路の各リアクタンスを変数として一定の範囲で変化させて、上記回路方程式を用いて電力伝送効率ηを複数回算出する。次に、制御部51は、算出した複数の電力伝送効率ηに基づき、例えば電力伝送効率ηが最大となる場合のリアクタンスXおよびXの各値を制御目標として決定する。次に、制御部51は、決定した各値を制御目標として、送電装置1および受電装置2に所定の制御信号を送信し、可変リアクタンス回路304および401のリアクタンスXおよびXを制御する。
【0049】
一方、図5(b)を参照して説明したように、位置情報とリアクタンス情報とを対応づける情報をデータベース53が含む構成とする場合、複数の位置関係において上述したようにして電力伝送効率ηに基づいてリアクタンスXおよびXの各値を予め算出しておき、算出結果をデータベース53に登録しておく。この場合、制御部51は、受電装置2から位置情報を受信すると、その位置情報に対応するリアクタンスXおよびXの各値をデータベース53から取得する。次に、制御部51は、取得した各値を制御目標として、送電装置1および受電装置2に所定の制御信号を送信し、可変リアクタンス回路304および401のリアクタンスXおよびXを制御する。
【0050】
以上のように、本実施形態によれば、送受電の位置関係によらず高効率なワイヤレス給電が実現できる。
【0051】
図6は、本発明の他の実施形態の構成例を説明するための回路図である。図6は、図1および図4に示すクレーンフック部の給電システム10の構成を一部変更してした場合のクレーンフック部の給電システム10aにおける送電装置1aおよび受電装置2aを示している。
図6に示す送電装置1aは、図4に示す送電装置1と相違し、可変リアクタンス回路304(送電側位相調整回路という)が、それぞれn個の送電側位相調整回路-1(可変リアクタンス回路304-1)、送電側位相調整回路-2(可変リアクタンス回路304-2)、…、送電側位相調整回路-n(可変リアクタンス回路304-n)を有している。
一方、受電装置2aは、図4に示す受電装置2と相違し、可変リアクタンス回路401(受電側位相調整回路という)が、それぞれn個の受電側位相調整回路-1(可変リアクタンス回路401-1)、送電側位相調整回路-2(可変リアクタンス回路401-2)、…、送電側位相調整回路-n(可変リアクタンス回路401-n)を有している。
すなわち、本実施形態では、クレーンフック部の給電システム10aは、n個の位相調整回路を有しており、送受電のコイル間距離に応じて送電装置1a、受電装置2aの位相調整回路を切り替えることにより、給電距離を制御する。
簡単のため、3種類の送受電コイル間距離で送電する場合(n=3)について説明する。3種類のコイル間距離を、コイル間距離L1、コイル間距離L2、コイル間距離L3とする。
ここで、コイル間距離L1~L3とは、送受電コイル(送電コイル3および受電コイル4)のコイル間距離である。
送電側位相調整回路-1および受電側位相調整回路-1のリアクタンスX1-1およびX3-1は、送電コイル3および受電コイル4のコイル間距離がコイル間距離L1である場合に最大効率が得られるように、クレーンフック部の給電システム10で用いた制御方法により最適化する。
また、送電側位相調整回路-2および受電側位相調整回路-2のリアクタンスX1-2およびX3-2は、送電コイル3および受電コイル4のコイル間距離がコイル間距離L2である場合に最大効率が得られるように、クレーンフック部の給電システム10で用いた制御方法により最適化する。
また、送電側位相調整回路-3および受電側位相調整回路-3のリアクタンスX1-3およびX3-3は、送電コイル3および受電コイル4のコイル間距離がコイル間距離L3である場合に最大効率が得られるように、クレーンフック部の給電システム10で用いた制御方法により最適化する。
このように、送電コイル3および受電コイル4のコイル間距離により回路(送電装置1aおよび受電装置2a)内の合計4つのスイッチを切り替えることにより、コイル間距離の変化による効率低下を抑制することが可能となる。また、位相調整回路の個数nを増加することにより、どのようなコイル間距離でも高効率な給電が可能となる。
すなわち、クレーンフック部の給電システム10aにおいて、受電装置2aは、位置情報のうち受電装置2aの座標を表わす情報を検知するセンサを有し、検知された座標を表わす情報を位置情報取得部52に出力する。また、制御部51は、交流電圧源301から抵抗406(負荷回路)へ電力を無線伝送する前に、位置情報のうち受電装置2aのコイルの軸方向を表わす情報に対応してn個(複数個)、可変リアクタンス回路304および可変リアクタンス回路401(各可変リアクタンス回路)において設けられた各リアクタンスを切り替えて電力の伝送効率を計測し、電力の伝送効率が最大となる各リアクタンスを選択し、選択結果に対応する受電装置2aのコイルの軸方向を表わす情報を位置情報取得部52に出力する。また、制御部51は、データベース53を参照して、位置情報取得部52が取得した位置情報に基づき選択された各リアクタンスを制御する。
以上のように、本実施形態によれば、クレーンフック部の給電システム10と同様に、送電装置と受電装置の距離が変化する場合でも高効率なワイヤレス給電が実現できる。
【0052】
以上説明したように、本発明の各実施形態によれば、送電装置と受電装置の任意の位置関係において高効率な電力伝送を実現することができる。また、本発明の各実施形態によれば、物理的な移動が必要となる素子をなくすことができるため、常に高効率な電力伝送が実現できる。また、送受電装置の位置関係が連続的に変化した場合も高効率な電力伝送が実現でき、装置の大型化、高コスト化が防止できる。また、磁界共鳴型のワイヤレス給電において、装置の大型化や複雑化を防ぎつつ、給電距離を制御することにより高い伝送効率を実現することができる。
【0053】
上述した実施形態における制御装置5をコンピュータで実現するようにしてもよい。
【0054】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。例えば、各可変リアクタンス回路や各コイルは、複数の可変リアクタンス回路や複数のコイルを並列や直列に接続した構成を有していてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1、1a 送電装置
2、2a 受電装置
3 送電コイル
4 受電コイル
5 制御装置
6 ジブ
7 クレーンフック部
8 過巻防止装置
10、10a クレーンフック部の給電システム
31、41 共振回路
304、401 可変リアクタンス回路
51 制御部
52 位置情報取得部
53 データベース
305、402 コイル
301 交流電圧源
302、406 抵抗
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7