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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/41 20180101AFI20231127BHJP
【FI】
F24F11/41 230
F24F11/41 110
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019108472
(22)【出願日】2019-06-11
(65)【公開番号】P2020200992
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【弁理士】
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(74)【代理人】
【氏名又は名称】片寄 武彦
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 弥
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-031246(JP,A)
【文献】特開昭58-168848(JP,A)
【文献】特開昭59-200145(JP,A)
【文献】特開2015-108492(JP,A)
【文献】特開2015-124917(JP,A)
【文献】特開2016-099032(JP,A)
【文献】特開2017-150772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00 - 11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
指令した温度ではない冷媒を生成し、自機を保護する保護制御を行うタイミングを有する室外機と、
前記室外機から供給される冷媒が流され、導入した外気の温度制御を行う第1コイルと、
前記第1コイルの下流側に配される第1ヒーターと、
前記第1ヒーターの下流側に配される第1下流温度センサと、
前記第1下流温度センサの下流側に配される水膜加湿器と、
前記水膜加湿器の下流側に配される第2コイルと、
前記第2コイルの下流側に配される第2ヒーターと、
前記第2ヒーターの下流側に配される第2下流温度センサと、を有する外気処理空調機と、からなる空調システムにおいて、
前記室外機の外部に配され、前記室外機と、前記第1下流温度センサと前記第2下流温度センサとから入力される信号に基づいて、前記第1ヒーターと第2ヒーターとを制御するヒーター制御部と、を有し、
前記ヒーター制御部は、
前記室外機から、保護制御を作動した旨の信号を受信すると、前記第1ヒーターと第2ヒーターとをオンし、
前記室外機が保護制御を作動している間は、前記第1下流温度センサからの信号を一定範囲内に収めるように、前記第1ヒーターを制御すると共に、前記第2下流温度センサからの信号を一定範囲内に収めるように、前記第2ヒーターを制御し、
前記室外機から、保護制御を解除した旨の信号を受信すると、前記第1ヒーターと第2ヒーターとをオフすることを特徴とする空調システム。
【請求項2】
前記保護制御が、除霜運転制御であることを特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンルームに好適な空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品を長期間保存しておく貯蔵庫などにおいては、温湿度の変化を極力抑えた恒温恒湿とする必要がある。さらに、このような貯蔵庫は、外部からの浮遊微小粒子の侵入を防ぐため、外気を供給して加圧する必要があり、通常、貯蔵庫にはクリーンルームの構成が採用されている。
【0003】
従来、クリーンルームの空調システムとしては、熱源システムを用いて冷水・温水を製造し、配管システムにより外気処理空調機に冷水・温水を供給し、冷水・温水により外気の温度・湿度を制御し、これをクリーンルームに供給するようにしていた。
【0004】
例えば、特許文献1(特開平08-114347号公報)には、外気温度の低い冬期に冷却塔を冷熱源とすると共に、外気温度の高い夏期に冷凍機を冷熱源とする熱源システムが開示されている。
【0005】
このような熱源システムは、冷却塔や冷凍機を用いたものであり、高価であるために、クリーンルーム用の空調システムを構築するためには、相応のコストをかけざるを得なかった。
【0006】
そこで、室外機と、この室外機から冷媒を得て、この冷媒により外気の温度調整を行い室内に導入する外気処理空調機とからなる、汎用のマルチ型空冷ヒートポンプパッケージを、クリーンルーム用の空調システムに転用することが提案された。
【文献】特開平08-114347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、汎用のマルチ型空冷ヒートポンプパッケージをクリーンルーム用の空調システムに転用する場合においては、以下のような問題が生じる。
【0008】
汎用のマルチ型空冷ヒートポンプパッケージは、自機の保護を目的とした保護制御を行うために、指令された温度設定と異なる冷媒を外気処理空調機に供給するタイミングが発生することがある。その一方で、防塵対策のためにクリーンルーム内は正圧としなければならいので、外気処理空調機内のファンは常に動作させなければならない。このため、汎用のマルチ型空冷ヒートポンプパッケージをクリーンルーム用の空調システムに転用すると、指令された温度と異なる外気がクリーンルーム内に導入されてしまう、という問題が生じてしまう。
【0009】
なお、上記のような問題は、マルチ型空冷ヒートポンプパッケージをクリーンルーム用の空調システムとして用いるときに顕著ではあるものの、このような問題の解決手段は、通常の居室において、マルチ型空冷ヒートポンプパッケージを空調システムとして用いる場合にも適用し得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、上記課題を解決するものであって、本発明に係る空調システムは、指令した温度ではない冷媒を生成し、自機を保護する保護制御を行うタイミングを有する室外機と、前記室外機から供給される冷媒が流され、導入した外気の温度制御を行う第1コイルと、前記第1コイルの下流側に配される第1ヒーターと、前記第1ヒーターの下流側に配される第1下流温度センサと、前記第1下流温度センサの下流側に配される水膜加湿器と、前記水膜加湿器の下流側に配される第2コイルと、前記第2コイルの下流側に配される第2ヒーターと、前記第2ヒーターの下流側に配される第2下流温度センサと、を有する外気処理空調機と、からなる空調システムにおいて、前記室外機の外部に配され、前記室外機と、前記第1下流温度センサと前記第2下流温度センサとから入力される信号に基づいて、前記第1ヒーターと第2ヒーターとを制御するヒーター制御部と、を有し、前記ヒーター制御部は、前記室外機から、保護制御を作動した旨の信号を受信すると、前記第1ヒーターと第2ヒーターとをオンし、前記室外機が保護制御を作動している間は、前記第1下流温度センサからの信号を一定範囲内に収めるように、前記第1ヒーターを制御すると共に、前記第2下流温度センサからの信号を一定範囲内に収めるように、前記第2ヒーターを制御し、前記室外機から、保護制御を解除した旨の信号を受信すると、前記第1ヒーターと第2ヒーターとをオフすることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る空調システムは、前記保護制御が、除霜運転制御であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る本発明の空調システムよれば、保護制御が作動し、コイルの温度が変化したとしても、当該変化をヒーターの制御で補正するので、保護制御作動中でも一定温度の外気をクリーンルームに供給することができるようになる。このため、本発明に係る本発明の空調システムよれば、汎用のマルチ型空冷ヒートポンプパッケージをクリーンルーム用に転用することが可能となり、安価にクリーンルームの空調システムを構成することができる。
【0016】
なお、本発明に係る本発明の空調システムは、マルチ型空冷ヒートポンプパッケージを、クリーンルーム用でなく、通常の居室用に転用する場合においても適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係る空調システム1の概要を模式的に示す図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る空調システム1の制御タイミングチャートの一例を示す図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る空調システム1のヒーター制御処理のフローチャートを示す図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る空調システム1の概要を模式的に示す図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る空調システム1の制御タイミングチャートの一例を示す図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る空調システム1のヒーター制御処理のフローチャートを示す図である。
図7】除霜作動判定のサブルーチンのフローチャートを示す図である。
図8】本発明の第3実施形態に係る空調システム1の概要を模式的に示す図である。
図9】本発明の第3実施形態に係る空調システム1の制御タイミングチャートの一例を示す図である。
図10】本発明の第3実施形態に係る空調システム1のヒーター制御処理のフローチャートを示す図である。
図11】除霜作動判定のサブルーチンのフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明に係る空調システム1の好ましい実施の形態について説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る空調システム1の概要を模式的に示す図である。
【0019】
なお、本明細書で説明する実施形態においては、空調システム1をクリーンルームに適用する例に基づいて説明を行うが、本発明に係る空調システム1が適用され得る居室がクリーンルームに限定されるものではない。
【0020】
本発明に係る空調システム1は、汎用のマルチ型空冷ヒートポンプパッケージを基に、構成されている。マルチ型空冷ヒートポンプパッケージは、冷媒を作り出す室外機と、ケーシング内に納められているコイルを有する外気処理空調機10と、前記冷媒を前記コイルに流す配管とから主に構成されている。
【0021】
空調システム1のケーシング11内には、外気OAが取り入れられ、ケーシング11内で温度湿度が調整され、給気SAとして、不図示のクリーンルームに供給される。
【0022】
ケーシング11には、送風ファン22を動作させることで、常に外気OAを取り込み、クリーンルームに給気SAとして供給することで、クリーンルーム内を常に正圧に維持するような運用がなされている。
【0023】
ケーシング11に取り込まれた空気は、プレフィルタ13及び中性能フィルタ14を流れることで、空気中の塵などが除去される。
【0024】
室外機30は、指令された温度の冷媒を生成し、この冷媒を、配管35を通して、ケーシング11内の第1コイル31及び第2コイル32に循環させている。ケーシング11内においては、第1コイル31は上流側に配され、また、第2コイル32は第1コイル31の下流側にレイアウトされている。
【0025】
第1コイル31を通過した空気は温度調整され、さらに、水膜加湿器17で湿度が制御され、再熱コイルとして用いられる第2コイル32で温度上昇され、HEPAフィルタ25を通過し、給気SAとしてクリーンルームに供給される。
【0026】
ところで、汎用のマルチ型空冷ヒートポンプパッケージをおいては、自機の保護を目的とした保護制御を行うために、指令された温度設定と異なる冷媒が配管に流されるタイミングが発生することがある。このような保護制御には、(1)配管中に貯まった油をコンプレッサー(不図示)に戻すために行う油戻し運転制御、(2)室外機の熱交換器に付着した霜を取り除くために行う除霜運転制御、(3)コイルが凍結してしまうことを防止するために行う凍結防止制御、(4)配管内の圧力を低減するために行う高圧制御、などがあるが、いずれの保護制御においても、共通しているのは、保護制御が実行されると、指令値と異なる温度の冷媒を、配管35に循環させてしまう、ということである。
【0027】
以下、本実施形態においては、保護制御として除霜運転制御を例に基づいて説明を行うが、本発明に係る空調システム1の考え方は、油戻し運転制御、凍結防止制御、高圧制御などの保護制御にも応用することができるものである。
【0028】
ケーシング11内の第1コイル31及び第2コイル32に、指令値でない温度を発生させてしまう冷媒が循環してしまう除霜運転制御が室外機30で作動した時の対策のために、本発明に係る空調システム1においては、第1コイル31の下流側には、第1ヒーター60が第1コイル31の温度低下を補正する熱源として配されると共に、第2コイル32の下流側には、第2ヒーター80が第2コイル32の温度低下を補正する熱源として配される。
【0029】
また、第1ヒーター60の直下流には温度を検出するための下流温度センサ61が設けられ、第2ヒーター80の直下流には温度を検出するための下流温度センサ81が設けられる。
【0030】
ヒーター制御部50は、第1ヒーター60及び第2ヒーター80の温度を指定温度とするように制御することができるものであり、例えばマイクロコンピューターなどから構成することができる。また、ヒーター制御部50には、下流温度センサ61や下流温度センサ81で検出された温度データが入力され、これらの温度データに基づいて、第1ヒーター60及び第2ヒーター80の温度を制御することができるようになっている。
【0031】
また、ヒーター制御部50には、室外機30からの制御信号を受信することができるようになっている。室外機30は、除霜運転制御を作動させるとき、作動制御信号を発し、作動していた除霜運転制御を解除するとき、解除制御信号を発するように構成されている。本実施形態においては、これらの制御信号を室外機30の外部、すなわち、ヒーター制御部50に取り出すことができるように構成されている。
【0032】
次に、以上のように構成される本発明に係る空調システム1の制御処理について説明する。図2は本発明の第1実施形態に係る空調システム1の制御タイミングチャートの一例を示す図である。以下、第1コイル31及びこの下流の第1ヒーター60と、第1ヒーター60直下の下流温度センサ61とからなるセットにおける制御例についての説明を行うが、この説明は、第2コイル32、第2ヒーター80、下流温度センサ81とからなるセットについても適用し得るものである。
【0033】
図2の制御タイミングチャートにおいて、上段は室外機30の運転状況「暖房」、「除霜」、「停止」の別を示しており、中段は第1ヒーター60の稼働状況「運転」、「停止」の別を示しており、下段は下流温度センサ61で検出される温度の信号データを示している。
【0034】
以上のような制御タイミングチャートを参照しつつ、第1実施形態に係る空調システム1の制御アルゴリズムについて説明する。図3は本発明の第1実施形態に係る空調システム1のヒーター制御処理のフローチャートを示す図である。このようなフローチャートは、例えば、ヒーター制御部50を構成するマイクロコンピューターにおいて実行される。
【0035】
ステップS100で、ヒーター制御処理が開始されると、続くステップS101では、室外機30からの制御信号が作動制御信号であるか否かが判定される。ステップS101の判定がNOである間は、当該判定の処理ステップが実行し続けられる。一方、ステップS101の判定がYESとなると、ステップS102に進み、第1ヒーター60をオンとする。図2のタイミングチャートでは、(a)で示すタイミングがこれに相当する。
【0036】
ステップS103においては、室外機30からの制御信号が作動制御信号であるか解除制御信号であるのかが判定される。この判定で、室外機30からの制御信号が「解除制御信号」であれば、ステップS108に進み、除霜運転の解除による第1ヒーター60のオフを実行し、ステップS109に進み、ヒーター制御処理を終了する。図2のタイミングチャートにおける(f)のようなタイミングがこれに相当する。
【0037】
一方、ステップS103における判定で、制御信号が「作動制御信号」であれば、続いて、ステップS104に進み、下流温度センサ61からの検出温度の信号データが、(温度信号)>T+δを満たすか否かが判定される。
【0038】
ここでは、Tは指令温度に基づいて、下流温度センサ61の設置位置で検出されるはずの温度である。また、δは温度のディメンジョンを有するあらかじめ定められた所定値である。なお、本実施形態においては、下流温度センサ61による検出信号データに対する上限閾値をT+δにより設定し、同検出信号データに対する下限閾値をT-δにより設定しているが、Tからのズレ幅δは上下ともにδとする必要は必ずしもない。(上限、下限で異なるズレ幅を設定することができる。)
ステップS104における判定の結果がNOであれば、ステップS102に戻り、第1ヒーター60のオン状態を維持する。一方、ステップS104における判定の結果がYESであれば、下流温度センサ61からの検出温度の信号データが、許容する上限に達してしまったと判断し、ステップS105に進み、第1ヒーター60をオフとする。図2のタイミングチャートにおける(b)や(d)のタイミングがこれに相当する。
【0039】
ステップS106においては、下流温度センサ61からの検出温度の信号データが、(温度信号)<T-δを満たすか否かが判定される。ステップS106における判定がYESであれば、下流温度センサ61からの検出温度の信号データが、許容する下限に達してしまったと判断し、ステップS102に戻り、第1ヒーター60をオンとする。図2のタイミングチャートにおける(c)や(e)のタイミングがこれに相当する。
【0040】
ステップS106における判定がNOであれば、ステップS107に進み、ステップS107では、室外機30からの制御信号が作動制御信号であるか解除制御信号であるのかが判定される。ステップS107における判定で、制御信号が「作動制御信号」であれば、続いて、ステップS105に進み、第1ヒーター60のオン状態を維持する。
【0041】
ステップS107における判定で、室外機30からの制御信号が「解除制御信号」であれば、ステップS108に進み、除霜運転の解除による第1ヒーター60のオフを実行し、ステップS109に進み、ヒーター制御処理を終了する。
【0042】
以上のように本発明の空調システム1は、ヒーター制御部50が、室外機30から、保護制御を作動した旨の信号を受信すると、第1ヒーター60をオンし、室外機30が保護制御を作動している間は、下流温度センサ61からの信号を一定範囲内に収めるように、第1ヒーター60をオンオフし、室外機30から、保護制御を解除した旨の信号を受信すると、第1ヒーター60をオフするので、このような本発明に係る本発明の空調システム1よれば、保護制御が作動し、第1コイル31の温度が変化したとしても、当該変化を第1ヒーター60のオンオフで補正するので、保護制御作動中でも一定温度の外気をクリーンルームに供給することができるようになる。このため、本発明に係る本発明の空調システム1よれば、汎用のマルチ型空冷ヒートポンプパッケージをクリーンルーム用に転用することが可能となり、安価にクリーンルームの空調システムを構成することができる。
【0043】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の実施形態においても、室外機30の保護制御として除霜運転制御を例として説明する。図4は本発明の第2実施形態に係る空調システム1の概要を模式的に示す図である。以下、第2実施形態に係る空調システム1が、先の第1実施形態と相違する点を中心に説明する。
【0044】
先の第1実施形態においては、ヒーター制御部50は、室外機30が除霜運転制御を作動させるとき、又は、作動していた除霜運転制御を解除するとき、室外機30からの制御信号を受信することができるように構成されていた。これに対して、本第2実施形態においては、このような室外機30からの制御信号を受信することができない場合に係るものである。
【0045】
そこで、ヒーター制御部50では、室外機30が除霜運転制御を作動させたか、また、除霜運転制御を解除したかを自らで判断するような構成となっている。
【0046】
このために、第2実施形態においては、第1ヒーター60の上流側に温度を検出するための上流温度センサ59が設けられ、第2ヒーター80の上流側に温度を検出するための上流温度センサ79が設けられる。ヒーター制御部50には、上流温度センサ59や上流温度センサ79で検出された温度データが入力され、これらの温度データに基づいて、第1ヒーター60及び第2ヒーター80の温度を制御することができるようになっている。
【0047】
本第2実施形態においても、下流温度センサ61や下流温度センサ81で検出された温度データは、先の実施形態同様、ヒーター制御部50に入力され、第1ヒーター60及び第2ヒーター80の温度制御に供される。
【0048】
次に、以上のような構成を有する第2実施形態に係る空調システム1の制御処理について説明する。図5は本発明の第2実施形態に係る空調システム1の制御タイミングチャートの一例を示す図である。
【0049】
以下、第1コイル31及びこの下流の第1ヒーター60と、第1ヒーター60直上の上流温度センサ59と、第1ヒーター60直下の下流温度センサ61とからなるセットにおける制御例についての説明を行うが、この説明は、第2コイル32、第2ヒーター80、上流温度センサ79、下流温度センサ81とからなるセットについても適用し得るものである。
【0050】
図5の制御タイミングチャートにおいて、最上段の第1段目は室外機30の運転状況「暖房」、「除霜」、「停止」の別を示しており、第2段目は第1ヒーター60の稼働状況「運転」、「停止」の別を示しており、第3段目は上流温度センサ59で検出される温度の信号データを示しており、第4段目は下流温度センサ61で検出される温度の信号データを示している。
【0051】
以上のような制御タイミングチャートを参照しつつ、第2実施形態に係る空調システム1の制御アルゴリズムについて説明する。図6は本発明の第2実施形態に係る空調システム1のヒーター制御処理のフローチャートを示す図である。このようなフローチャートは、例えば、ヒーター制御部50を構成するマイクロコンピューターにおいて実行される。
【0052】
図6において、ステップS200で、ヒーター制御処理が開始されると、続いてステップS201に進み、除霜作動判定処理のサブルーチンが実行される。図7を参照して、このサブルーチンを説明する。
【0053】
図7において、ステップS300で除霜作動判定処理サブルーチンが開始されると、ステップS301で、上流温度センサ59からの検出温度の信号データが、(上流温度信号)<Ta-αを満たすかが判定される。続いて、ステップS302では、下流温度センサ61からの検出温度の信号データが、(下流温度信号)<Tb-βを満たすかが判定される。
【0054】
ここでは、Taは指令温度に基づいて、上流温度センサ59の設置位置で検出されるはずの温度であり、Tbは指令温度に基づいて、下流温度センサ61の設置位置で検出されるはずの温度である。また、α、βは温度のディメンジョンを有するあらかじめ定められた所定値である。αは、Taからのズレ幅の下限を規定する温度である。また、βは、Tbからのズレ幅の上限・下限を規定する温度である。なお、本実施形態においては、下流温度センサ61による検出信号データに対する上限閾値をTb+βにより設定し、同検出信号データに対する下限閾値をTb-βにより設定しているが、Tbからのズレ幅βは上下ともにβとする必要は必ずしもない。(上限、下限で異なるズレ幅を設定することができる。)
ステップS301の判定がNOである場合、又は、ステップS302の判定がNOである場合は、いずれの場合も、ステップS304に進み元のルーチンにリターンする。
【0055】
一方、ステップS301の判定がYESであり、かつ、ステップS302の判定がYESである場合には、ステップS303では、室外機30が除霜運転を作動し始めたものとして「除霜作動判定」判定」を行う。図5のタイミングチャートにおける(a)のタイミングが、「除霜作動判定」が出されたタイミングに相当する。ステプS404で元のルーチンにリターンする。
【0056】
さて、元のルーチンに戻り、ステップS202では、当該サブルーチンによる判定が、「除霜作動判定」となるまで、当該サブルーチンをループする判断を行う。
【0057】
一方、当該サブルーチンによる判定が「除霜作動判定」となると、ステップS202とステップS201のループを抜けて、ステップS203に進み、第1ヒーター60をオンとする。
【0058】
続いて、ステップS204に進み、下流温度センサ61からの検出温度の信号データが、(下流温度信号)>Tb+βを満たすか否かが判定される。すなわち、下流温度センサ61で検出される温度が、上限温度Tb+βに達していないかをチェックする。
【0059】
ステップS204における判定がNOである間は、ステップS203で、第1ヒーター60のオン状態を維持する。一方、ステップS204における判定がYESとなると、ステップS205 に進み、第1ヒーター60をオフとする。図5のタイミングチャートにおける(b)や(d)のタイミングがこれに相当する。
【0060】
また、ステップS206においては、このとき上流温度センサ59で検出された温度データの値をヒーター制御部50における不図示の記憶手段などにメモリする。図5のタイミングチャートにおいて、この記憶手段でメモリされる温度はT1やT3に相当する。
【0061】
ステップS207では、下流温度センサ61からの検出温度の信号データが、(下流温度信号)<Tb-βを満たすかが判定される。すなわち、下流温度センサ61で検出される温度が、下限温度Tb-βに達していないかをチェックする。
【0062】
ステップS207における判定がNOである間は、ステップS205で、第1ヒーター60のオフ状態を維持する。一方、ステップS207における判定がYESとなると、ステップS208に進む。図5のタイミングチャートにおける(c)や(e)のタイミングがこれに相当する。
【0063】
ステップS208では、L値を算出する。このL値は、上流温度センサ59で検出される温度データの現在値から、記憶手段でメモリされている温度値を引いた値として定義される。図5のタイミングチャートの(c)のときはL=T2―T1(≦0)となり、(e)のときはL=T4―T3(>0)となる。
【0064】
ステップS209では、L>0であるか否かが判定される。ステップS209の判定結果がNOであるときには、ステップS203に戻り、再び第1ヒーター60をオンとする。図5のタイミングチャートにおける(c)のタイミングがこれに相当する。第1ヒーター60による補正を経ていない上流温度センサ59で検出される温度は、室外機30の除霜作動が継続する限り、低下し続けることが予想される。そこで、本実施形態においては、L≦0の間は、第1ヒーター60を再びオンとするように制御を行う。
【0065】
一方、ステップS209の判定結果がYESであるときには、第1ヒーター60をオフの状態を維持したまま、ステップS210に進み、ヒーター制御処理を終了する。図5のタイミングチャートにおける(e)のタイミングがこれに相当する。上流温度センサ59で検出される温度が増加傾向にある場合は、室外機30における除霜運転が解除されるものと考えられる。そこで、本実施形態においては、L>0となると、第1ヒーター60のオフ状態を維持して、そのまま、ヒーター制御処理を終了する。
【0066】
このように、本発明の第2実施形態に係る空調システム1では、除霜運転などの保護制御を室外機30が作動させたか、又、作動していた保護制御を解除したかに係る情報を、ヒーター制御部50が取得することができない場合においても、第1ヒーター60のオンオフ制御で温度調節を行うことができるようになっている。このため、本発明の第2実施形態に係る空調システム1によれば、保護制御が作動し、第1コイル31の温度が変化したとしても、当該変化を第1ヒーター60のオンオフで補正するので、保護制御作動中でも一定温度の外気をクリーンルームに供給することができるようになる。
【0067】
このため、本発明に係る本発明の空調システム1よれば、汎用のマルチ型空冷ヒートポンプパッケージをクリーンルーム用に転用することが可能となり、安価にクリーンルームの空調システムを構成することができる。
【0068】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。以下の実施形態においても、室外機30の保護制御として除霜運転制御を例として説明する。図8は本発明の第3実施形態に係る空調システム1の概要を模式的に示す図である。以下、第3実施形態に係る空調システム1が、先の第2実施形態と相違する点を中心に説明する。
【0069】
第3実施形態に係る空調システム1も、第2実施形態同様、室外機30が除霜運転制御を作動させるとき、又は、作動していた除霜運転制御を解除するとき、室外機30からの制御信号を受信することはできない場合に係るものであり、ヒーター制御部50では、室外機30が除霜運転制御を作動させたか、また、除霜運転制御を解除したかを自らで判断するような構成となっている。
【0070】
このために、第2実施形態においては、第1ヒーター60の上流側に温度を検出するための上流温度センサ59が設けられ、第2ヒーター80の上流側に温度を検出するための上流温度センサ79が設けられる構成となっており、ヒーター制御部50には、上流温度センサ59や上流温度センサ79で検出された温度データが入力され、これらの温度データに基づいて、第1ヒーター60及び第2ヒーター80の温度を制御することができるようになっていた。
【0071】
これに対して、本第3実施形態においては、上流温度センサ59や上流温度センサ79を設けることなく、下流温度センサ61や下流温度センサ81で検出された温度データに基づいて、室外機30が除霜運転制御を作動させたか、また、除霜運転制御を解除したかの判断も行うようにしている。
【0072】
なお、本第3実施形態においても、下流温度センサ61や下流温度センサ81で検出された温度データは、これまでの実施形態同様、ヒーター制御部50に入力され、第1ヒーター60及び第2ヒーター80の温度制御に供される。
【0073】
次に、以上のような構成を有する第3実施形態に係る空調システム1の制御処理について説明する。図9は本発明の第3実施形態に係る空調システム1の制御タイミングチャートの一例を示す図である。
【0074】
以下、第1コイル31及びこの下流の第1ヒーター60と、第1ヒーター60直下の下流温度センサ61とからなるセットにおける制御例についての説明を行うが、この説明は、第2コイル32、第2ヒーター80、下流温度センサ81とからなるセットについても適用し得るものである。
【0075】
図9の制御タイミングチャートにおいて、最上段の第1段目は室外機30の運転状況「暖房」、「除霜」、「停止」の別を示しており、第2段目は第1ヒーター60の稼働状況「運転」、「停止」の別を示しており、第3段目は下流温度センサ61で検出される温度の信号データを示している。
【0076】
以上のような制御タイミングチャートを参照しつつ、第3実施形態に係る空調システム1の制御アルゴリズムについて説明する。図10は本発明の第3実施形態に係る空調システム1のヒーター制御処理のフローチャートを示す図である。このようなフローチャートは、例えば、ヒーター制御部50を構成するマイクロコンピューターにおいて実行される。
【0077】
図10において、ステップS400で、ヒーター制御処理が開始されると、続いてステップS401に進み、除霜作動判定処理のサブルーチンが実行される。図11を参照して、このサブルーチンを説明する。
【0078】
図11において、ステップS500で除霜作動判定処理サブルーチンが開始されると、ステップS501で、下流温度センサ61からの検出温度の信号データが、(下流温度信号)<Tc-γを満たすかが判定される。
【0079】
ここでは、Tcは指令温度に基づいて、下流温度センサ61の設置位置で検出されるはずの温度である。また、γは温度のディメンジョンを有するあらかじめ定められた所定値である。γは、Tcからのズレ幅の上限・下限を規定する温度である。なお、本実施形態においては、下流温度センサ61による検出信号データに対する上限閾値をTc+γにより設定し、同検出信号データに対する下限閾値をTc-γにより設定しているが、Tcからのズレ幅γは上下ともにγとする必要は必ずしもない。(上限、下限で異なるズレ幅を設定することができる。)
ステップS501の判定がNOである場合は、いずれの場合も、ステップS503に進み元のルーチンにリターンする。
【0080】
一方、ステップS501の判定がYESである場合には、ステップS502では、室外機30が除霜運転を作動し始めたものとして「除霜作動判定」を行う。図9のタイミングチャートにおける(a)のタイミングが、「除霜作動判定」が出されたタイミングに相当する。ステプS404で元のルーチンにリターンする。
【0081】
さて、元のルーチンに戻り、ステップS402では、当該サブルーチンによる判定が、「除霜作動判定」となるまで、当該サブルーチンをループする判断を行う。
【0082】
一方、当該サブルーチンによる判定が「除霜作動判定」となると、ステップS402とステップS401のループを抜けて、ステップS403に進み、第1ヒーター60をオンとする。
【0083】
続いて、ステップS404に進み、下流温度センサ61からの検出温度の信号データが、(下流温度信号)>Tc+γを満たすか否かが判定される。すなわち、下流温度センサ61で検出される温度が、上限温度Tc+γに達していないかをチェックする。
【0084】
ステップS404における判定がNOである間は、ステップS403で、第1ヒーター60のオン状態を維持する。一方、ステップS404における判定がYESとなると、ステップS405 に進み、第1ヒーター60をオフとする。図9のタイミングチャートにおける(b)や(d)のタイミングがこれに相当する。
【0085】
続く、ステップS406においては、下流温度センサ61で検出される温度の時間変化率が正の値をとるか否かが判定される。なお、下流温度センサ61で検出される温度の時間変化率の値を取得するためのアルゴリズムは従来周知のものを適宜用いることができる。
【0086】
ステップS406における判定がNOであるとすると、ステップS407に進む。 ステップS407では、下流温度センサ61からの検出温度の信号データが、(下流温度信号)<Tc-γを満たすかが判定される。すなわち、下流温度センサ61で検出される温度が、下限温度Tc-γに達していないかをチェックする。
【0087】
ステップS407における判定がNOである間は、ステップS405で、第1ヒーター60のオフ状態を維持する。一方、ステップS407における判定がYESとなると、ステップS403に進み、第1ヒーター60をオンとする。図9のタイミングチャートにおける(c)のタイミングがこれに相当する。
【0088】
ステップS406において、下流温度センサ61で検出される温度の時間変化率が正の値をとり、判定がYESの場合は、第1ヒーター60のオフ状態が維持されているにも関わらず、第1ヒーター60下流における温度が上昇していると判定したこととなる。すなわち、このような判定が得られた場合は、除霜運転が開所され、第1コイル31の温度が上昇しているものと判断できるので、第1ヒーター60のオフ状態を維持したまま、ステップS408に進み、ヒーター制御処理を終了する。図9のタイミングチャートにおける(e)のタイミングがこれに相当する。
【0089】
このように、本発明の第3実施形態に係る空調システム1では、除霜運転などの保護制御を室外機30が作動させたか、又、作動していた保護制御を解除したかに係る情報を、ヒーター制御部50が取得することができない場合においても、第1ヒーター60のオンオフ制御で温度調節を行うことができるようになっている。
【0090】
このため、本発明の第3実施形態に係る空調システム1によれば、保護制御が作動し、第1コイル31の温度が変化したとしても、当該変化を第1ヒーター60のオンオフで補正するので、保護制御作動中でも一定温度の外気をクリーンルームに供給することができるようになる。このため、本発明に係る本発明の空調システム1よれば、汎用のマルチ型空冷ヒートポンプパッケージをクリーンルーム用に転用することが可能となり、安価にクリーンルームの空調システムを構成することができる。
【符号の説明】
【0091】
1・・・空調システム
10・・・外気処理空調機
11・・・ケーシング
13・・・プレフィルタ
14・・・中性能フィルタ
17・・・水膜加湿器
22・・・送風ファン
25・・・HEPAフィルタ
30・・・室外機
31・・・第1コイル
32・・・第2コイル
35・・・配管
50・・・ヒーター制御部
59・・・上流温度センサ
60・・・第1ヒーター
61・・・下流温度センサ
79・・・上流温度センサ
80・・・第2ヒーター
81・・・下流温度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11