(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】シリコン基板エッチング溶液
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20231127BHJP
H01L 21/308 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
H01L21/306 E
H01L21/308 E
(21)【出願番号】P 2019116521
(22)【出願日】2019-06-24
【審査請求日】2022-06-14
(31)【優先権主張番号】10-2018-0074581
(32)【優先日】2018-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513280854
【氏名又は名称】オーシーアイ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】OCI Company Ltd.
【住所又は居所原語表記】94,Sogong-ro,Jung-gu,Seoul,100-718(KR)
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】ユ・ホソン
(72)【発明者】
【氏名】ムン・ヨンスン
(72)【発明者】
【氏名】イ・ジュンウン
(72)【発明者】
【氏名】チャン・ピョンファ
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-128109(JP,A)
【文献】国際公開第2017/095022(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0321121(US,A1)
【文献】特開2006-249160(JP,A)
【文献】特開昭51-077699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
H01L 21/308
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸;及び、
下記の化1及び化2で表される化合物のうち少なくとも一つを含むシリコン添加剤;
を含む、
シリコン基板エッチング溶液:
【化1】
【化2】
ここで、R
1及びR
2は、それぞれ独立に水素、C
1-C
10アルキル、C
6-C
12シクロアルキル、少なくとも一つのヘテロ原子を含むC
2-C
10ヘテロアルキル、C
2-C
10アルケニル、C
2-C
10アルキニル、C
1-C
10ハロアルキル、C
1-C
10アミノアルキル、アリール、ヘテロアリール、及びアラルキルから選択される作用基であり、
R
3は、水素、C
1-C
10アルキル、C
6-C
12シクロアルキル、少なくとも一つのヘテロ原子を含むC
2-C
10ヘテロアルキル、C
2-C
10アルケニル、C
2-C
10アルキニル、C
1-C
10ハロアルキル、C
1-C
10アミノアルキル、アリール、ヘテロアリール、及びアラルキルから選択される作用基であり、
X、Y及びZは、それぞれ独立に水素、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、ハロゲン、及び
ニトロから選択される作用基であり、このとき、X、Y及びZのうち少なくとも一つは、水素ではないし、
nは、1~3の間の定数である。
【請求項2】
前記シリコン基板エッチング溶液のうち前記シリコン添加剤は、100~10,000ppm含まれる、
請求項1に記載のシリコン基板エッチング溶液。
【請求項3】
前記シリコン基板エッチング溶液のうち、化1で表されるシリコン添加剤の含量が500~2000ppmである場合、前記シリコン基板エッチング溶液のエッチング選択比(シリコン窒化膜のエッチング速度(Å/min)/シリコン酸化膜のエッチング速度(Å/min))は、300以上である、
請求項
1に記載のシリコン基板エッチング溶液。
【請求項4】
前記シリコン基板エッチング溶液のうち、化2で表されるシリコン添加剤の含量が500~2000ppmである場合、前記シリコン基板エッチング溶液のエッチング選択比(シリコン窒化膜のエッチング速度(Å/min)/シリコン酸化膜のエッチング速度(Å/min))は、300以上である、
請求項
1に記載のシリコン基板エッチング溶液。
【請求項5】
フッ化水素、フッ化アンモニウム、重フッ化アンモニウム、及びフッ化水素アンモニウムから選択される少なくとも一つのフッ素含有化合物をさらに含む、
請求項1に記載のシリコン基板エッチング溶液。
【請求項6】
有機系カチオンとフッ素系アニオンとがイオン結合した形態を有するフッ素含有化合物をさらに含む、
請求項1に記載のシリコン基板エッチング溶液。
【請求項7】
前記有機系カチオンは、アルキルアンモニウム、アルキルピロリウム、アルキルイミダゾリウム、アルキルピラゾリウム、アルキルオキサゾリウム、アルキルチアゾリウム、アルキルピリジニウム、アルキルピリミジニウム、アルキルピリダジニウム、アルキルピラジニウム、アルキルピロリジニウム、アルキルホスホニウム、アルキルモホリニウム、及びアルキルピペリジニウムから選択される、
請求項
6に記載のシリコン基板エッチング溶液。
【請求項8】
前記フッ素系アニオンは、フルオライド、フルオロホスファート、フルオロアルキル-フルオロホスファート、フルオロボラート、及びフルオロアルキル-フルオロボラートから選択される、
請求項
6に記載のシリコン基板エッチング溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン基板エッチング溶液に関し、より詳細には、シリコン窒化膜のエッチングに際してシリコン酸化膜対シリコン窒化膜に対するエッチング選択比を上げることが可能であると共に、高温安全性の向上したシリコン基板エッチング溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、シリコン窒化膜とシリコン酸化膜をエッチングする様々な方法があるが、乾式エッチング法と湿式エッチング法が主に使用される方法である。
【0003】
乾式エッチング法は、通常、気体を用いたエッチング法であって、湿式エッチング法より等方性に優れるという長所があるが、湿式エッチング法より生産性に劣り過ぎ、高価の方式である点で、湿式エッチング法が広く利用されている流れである。
【0004】
一般に、湿式エッチング法としては、エッチング溶液としてリン酸を用いる方法がよく知られている。このとき、シリコン窒化膜のエッチングのために、純粋なリン酸のみ用いる場合、素子が微細化するにつれて、シリコン窒化膜のみならず、シリコン酸化膜までエッチングされることにより、各種の不良及びパターン異常が発生するなどの問題が生じ得るため、シリコン酸化膜のエッチング速度をさらに下げる必要がある。
【0005】
これによって、最近は、シリコン窒化膜のエッチング速度を増加させる一方、シリコン酸化膜のエッチング速度を下げるために、リン酸と共にシリコン添加剤を使用している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、シリコン添加剤を使用することにより、シリコン酸化膜対シリコン窒化膜に対する選択比を上げることができるシリコン基板エッチング溶液を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、高温安全性の高いシリコン添加剤を使用することで、高温でシリコン添加剤が分解されて変色することを防止できるシリコン基板エッチング溶液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した技術的課題を解決するために、本発明の一側面によれば、リン酸及び下記の化1及び化2で表される化合物のうち少なくとも一つを含むシリコン添加剤を含むシリコン基板エッチング溶液が提供される。
【0009】
【0010】
【0011】
ここで、R1及びR2は、それぞれ独立に水素、C1-C10アルキル、C6-C12シクロアルキル、少なくとも一つのヘテロ原子を含むC2-C10ヘテロアルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、C1-C10ハロアルキル、C1-C10アミノアルキル、アリール、ヘテロアリール、及びアラルキルから選択される作用基である。
【0012】
また、R3は、水素、C1-C10アルキル、C6-C12シクロアルキル、少なくとも一つのヘテロ原子を含むC2-C10ヘテロアルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、C1-C10ハロアルキル、C1-C10アミノアルキル、アリール、ヘテロアリール、及びアラルキルから選択される作用基である。
【0013】
また、X、Y及びZは、それぞれ独立に水素、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、ハロゲン、及びニイトから選択される作用基であり、このとき、X、Y及びZのうち少なくとも一つは、水素ではないし、nは、1~3の間の定数である。
【0014】
本発明によるシリコン基板エッチング溶液は、フッ素含有化合物をさらに含んでいてもよく、このとき、前記フッ素含有化合物は、フッ化水素、フッ化アンモニウム、重フッ化アンモニウム、及びフッ化水素アンモニウムから選択される少なくとも一つであるか、有機系カチオンとフッ素系アニオンとがイオン結合した形態を有する化合物であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によるシリコン基板エッチング溶液は、シリコン中心元素が少なくとも一つの置換されたベンゼン環と結合したシリコン添加剤を使用することで、シリコン酸化膜に保護膜を形成し、エッチング溶液によってシリコン酸化膜がエッチングされることを減らすことができる。これによって、シリコン基板エッチング溶液のシリコン酸化膜対シリコン窒化膜に対するエッチング選択比を向上させることができる。
【0016】
また、本発明によるシリコン基板エッチング溶液に用いられるシリコン添加剤のシリコン中心元素は、立体障害の大きな(bulky)ベンゼン環によって遮られることによって、エッチング条件(高温)で容易に分解されず、高温でシリコン添加剤が分解されて変色することを防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の利点及び特徴、そしてそれらを達成する方法は、後述する実施例を参照すれば明確になる。しかし、本発明は、以下に開示する実施例に限定されるものではなく、異なる様々な形態に具現されるものであり、ただし、本実施例は、本発明の開示を完全にし、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範疇によって定義されるだけである。
【0018】
以下では、本発明によるシリコン基板エッチング溶液について詳説する。
【0019】
本発明の一側面によれば、リン酸及びシリコン添加剤を含むシリコン基板エッチング溶液が提供される。
【0020】
本発明によるシリコン基板エッチング溶液のエッチング対象であるシリコン基板は、少なくともシリコン酸化膜(SiOx)を含むことが好ましく、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜(SixNy、SIxOyNz)を共に含んでいてもよい。また、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とが共に含まれたシリコン基板の場合、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜が交互に積層するか、異なる領域に積層した形態であってもよい。
【0021】
ここで、シリコン酸化膜は、用途及び素材の種類などによってSOD(Spin On Dielectric)膜、HDP(High Density
Plasma)膜、熱酸化膜(thermal oxide)、BPSG(Borophosphate
Silicate Glass)膜、PSG(Phospho Silicate Glass)膜、BSG(Boro
Silicate Glass)膜、PSZ(Polysilazane)膜、FSG(Fluorinated Silicate
Glass)膜、LP-TEOS(Low
Pressure Tetra Ethyl Ortho Silicate)膜、PETEOS(Plasma Enhanced Tetra
Ethyl Ortho Silicate)膜、HTO(High Temperature Oxide)膜、MTO(Medium
Temperature Oxide)膜、USG(Undopped Silicate Glass)膜、SOG(Spin
On Glass)膜、APL(Advanced Planarization Layer)膜、ALD(Atomic Layer
Deposition)膜、PE-酸化膜(Plasma Enhanced oxide)又はO3-TEOS(O3-Tetra Ethyl
Ortho Silicate)などに言及し得る。
【0022】
ここで、リン酸は、シリコン基板のうちシリコン窒化膜をエッチングする物質であると共に、エッチング溶液のpHを維持し、エッチング溶液内に存在する様々な形態のシラン化合物がシリコン系パーティクルに変化することを抑制する物質である。
【0023】
一実施例において、シリコン基板エッチング溶液100重量部に対し、リン酸は、60~90重量部含まれることが好ましい。また、本願に使用されるシリコン基板エッチング溶液のpHは、0~6.5であってもよい。シリコン基板エッチング溶液のpHが6.5を超える場合、シリコン基板エッチング溶液の酸強度が弱く、シリコン基板に対するエッチング効果を十分具現しにくいという問題がある。一方、シリコン基板エッチング溶液のpHが1より小さい場合、シリコン基板エッチング溶液の酸強度が強くなり過ぎ、シリコン酸化膜に対するエッチング速度が異常に増加するおそれがある。
【0024】
シリコン基板エッチング溶液100重量部に対し、無機酸水溶液の含量が60重量部未満である場合、シリコン窒化膜のエッチング速度が低下し、シリコン窒化膜が十分エッチングされないか、シリコン窒化膜のエッチングの工程効率性が低下するおそれがある。
【0025】
一方、シリコン基板エッチング溶液100重量部に対し、無機酸水溶液の含量が90重量部を超える場合、シリコン窒化膜のエッチング速度が増加し過ぎるだけでなく、シリコン酸化膜まで速やかにエッチングされることによって、シリコン酸化膜対シリコン窒化膜に対する選択比が低下し得るし、シリコン酸化膜のエッチングによるシリコン基板の不良を引き起こし得る。
【0026】
本発明の一実施例によるシリコン基板エッチング溶液は、シリコン酸化膜対シリコン窒化膜に対する選択比を上げるために、下記の化1で表されるシリコン添加剤を含んでいてもよい。
【0027】
【0028】
化1におけるR1及びR2は、それぞれ独立に水素、C1-C10アルキル、C6-C12シクロアルキル、少なくとも一つのヘテロ原子を含むC2-C10ヘテロアルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、C1-C10ハロアルキル、C1-C10アミノアルキル、アリール、ヘテロアリール、及びアラルキルから選択される作用基である。
【0029】
また、本発明の他の実施例によるシリコン基板エッチング溶液は、シリコン酸化膜対シリコン窒化膜に対する選択比を上げるために、下記の化2で表されるシリコン添加剤を含んでいてもよい。
【0030】
【0031】
化2におけるR3は、水素、C1-C10アルキル、C6-C12シクロアルキル、少なくとも一つのヘテロ原子を含むC2-C10ヘテロアルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、C1-C10ハロアルキル、C1-C10アミノアルキル、アリール、ヘテロアリール、及びアラルキルから選択される作用基である。
【0032】
また、本発明のさらに他の実施例によるシリコン基板エッチング溶液は、化1で表されるシリコン添加剤と、化2で表されるシリコン添加剤を共に含んでいてもよい。
【0033】
化1及び化2におけるX、Y及びZは、それぞれ独立に水素、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、ハロゲン、及びニイトから選択される作用基であって、水素を除く硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、ハロゲン又はニイト基は、エッチング溶液のうちシリコン添加剤の溶解度を向上させる作用基である。このため、X、Y及びZのうち少なくとも一つは、水素ではない極性作用基を有することで、シリコン基板エッチング溶液のうち溶解度を十分確保することが好ましい。
【0034】
また、化1及び化2におけるnは、1~3の間の定数であることによって、シリコン添加剤のシリコン中心元素は、少なくとも一つの置換されたベンゼン環と結合した化合物であってもよい。
【0035】
このとき、シリコン中心元素に結合した置換されたベンゼン環は、シリコン酸化膜の表面に存在するシリコン-ヒドロキシ(-Si-OH)の水素をベンゼン環に置換することで、シリコン酸化膜に保護膜(passivation
layer)を形成することが可能である。
【0036】
これによって、無機酸などによるシリコン酸化膜がエッチングされることを減らすことができ、シリコン酸化膜対シリコン窒化膜のエッチング選択比が減少することを防ぐことができる。
【0037】
また、シリコン基板の表面に存在するシリコン-ヒドロキシ(-Si-OH)の水素は、ベンゼン環に置換されることにより、さらにヒドロキシル化(hydroxylation)が制限され得る。
【0038】
これによって、エッチング中、或いはエッチング後の洗浄中にヒドロキシ基を有するシリコン粒子がケイ酸(silicic acid)状に成長することを減らすことができ、さらに、シリコン粒子がシリコン酸化膜から離脱して、シリコン系パーティクルに成長及び析出することを防ぐことができる。
【0039】
化1又は化2で表されるシリコン添加剤のシリコン中心元素と結合した少なくとも一つのベンゼン環は、嵩の大きい作用基に該当し、これによって、シリコン中心元素は、水素、アルキルなどのように、嵩の小さい作用基が結合した場合に比べて相対的に遮られることができる。この場合、苛酷な条件(例えば、高温)でシリコン添加剤が分解(例えば、シリコン中心元素に結合した作用基が分解)される可能性が減ることによって、シリコン添加剤の高温安全性が向上し、これによって、高温でシリコン添加剤が分解されてシリコン基板エッチング溶液が変色することを防ぐことができる。
【0040】
本願におけるハロゲンは、フルオロ(-F)、クロロ(-Cl)、ブロモ(-Br)又はヨード(-I)を意味し、ハロアルキルは、上述したハロゲンで置換されたアルキルを意味する。例えば、ハロメチルは、メチルの水素のうち少なくとも一つがハロゲンに取り替えられたメチル(-CH2X、-CHX2又は-CX3)を意味する。
【0041】
また、本願におけるアルコキシは、-O-(アルキル)基と-O-(非置換されたシクロアルキル)基を両方とも意味するものであって、一つ以上のエーテル基及び1~10個の炭素原子を有する直鎖または分鎖炭化水素である。
【0042】
具体的には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、tert-ブトキシ、sec-ブトキシ、n-ペントキシ、n-ヘキソキシ、1,2-ジメチルブトキシ、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシなどを含むが、これに限定されものではない。
【0043】
Ra(ここで、aは、1~4から選択される定数)がアルケニル又はアルキニルであるとき、アルケニルのsp2-混成炭素又はアルキニルのsp-混成炭素が直接に結合するか、アルケニルのsp2-混成炭素又はアルキニルのsp-混成炭素に結合したアルキルのsp3-混成炭素によって間接に結合した形態であってもよい。
【0044】
本願におけるCa-Cb作用基は、a~b個の炭素原子を有する作用基を意味する。例えば、Ca-Cbアルキルは、a~b個の炭素原子を有する、直鎖アルキル及び分鎖アルキルなどを含む飽和脂肪族基を意味する。直鎖または分鎖アルキルは、これの主鎖に10個以下(例えば、C1-C10の直鎖、C3-C10の分鎖)、好ましくは4個以下、より好ましくは3個以下の炭素原子を有する。
【0045】
具体的には、アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、ペント-1-イル、ペント-2-イル、ペント-3-イル、3-メチルブト-1-イル、3-メチルブト-2-イル、2-メチルブト-2-イル、2,2,2-トリメチルエト-1-イル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、及びn-オキチルであってもよい。
【0046】
本願におけるアリールは、他に定義されない限り、単一環又は互いに接合又は共有結合で連結された多重環(好ましくは、1~4個の環)を含む不飽和芳香族性環を意味する。アリールの非制限的な例としては、フェニル、ビフェニル、o-テルフェニル(terphenyl)、m-テルフェニル、p-テルフェニル、1-ナプチル、2-ナプチル、1-アントリル(anthryl)、2-アントリル、9-アントリル、1-フェナントレニル(phenanthrenyl)、2-フェナントレニル、3-フェナントレニル、4-フェナントレニル、9-フェナントレニル、1-ピレニル、2-ピレニル、及び4-ピレニルなどがある。
【0047】
本願におけるヘテロアリールは、上記に定義されたアリール内の一つ以上の炭素原子が窒素、酸素又は硫黄のような非炭素原子で置換された作用基を意味する。
【0048】
ヘテロアリールの非制限的な例としては、フリル(furyl)、テトラヒドロフリル、ピロリル(pyrrolyl)、ピロリジニル(pyrrolidinyl)、チエニル(thienyl)、テトラヒドロチエニル(tetrahydrothienyl)、オキサゾリル(oxazolyl)、アイソオキサゾリル(isoxazolyl)、トリアゾリル(triazolyl)、チアゾリル(thiazolyl)、アイソチアゾリル(isothiazolyl)、ピラゾリル(pyrazolyl)、ピラゾリジニル(pyrazolidinyl)、オキサジアゾリル(oxadiazolyl)、チアジアゾリル(thiadiazolyl)、イミダゾリル(imidazolyl)、イミダゾリニル(imidazolinyl)、ピリジル(pyridyl)、ピリダジイル(pyridaziyl)、トリアジニル(triazinyl)、ピペリジニル(piperidinyl)、モルホリニル(morpholinyl)、チオモルホリニル(thiomorpholinyl)、ピラジニル(pyrazinyl)、ピペライニル(piperainyl)、ピリミジニル(pyrimidinyl)、ナフチリジニル(naphthyridinyl)、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、インドリル(indolyl)、インドリニル、インドリジニル、インダゾリル(indazolyl)、キノリジニル、キノリニル、アイソキノリニル、シノリニル(cinnolinyl)、フタラジニル(phthalazinyl)、キナゾリニル、キノキサリニル、プテリジニル(pteridinyl)、キヌクリジニル(quinuclidinyl)、カバゾイル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチジニル(phenothizinyl)、フェノキサジニル、フリニル、ベンズイミダゾリル(benzimidazolyl)、及びベンゾチアゾリルなどと、これらが接合した類似体がある。
【0049】
本願におけるアラルキルは、アリールがアルキルの炭素に置換された形態の作用基であって、-(CH2)nArの総称である。アラルキルの例として、ベンジル(-CH2C6H5)又はフェネチル(-CH2CH2C6H5)などがある。
【0050】
本願におけるシクロアルキル(cycloalkyl)又はヘテロ原子を含むシクロアルキル(heterocycloalkyl)は、他に定義されない限り、それぞれアルキル又はヘテロアルキルの環状構造に理解されてもよい。
【0051】
シクロアルキルの非制限的な例としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-シクロヘキセニル、3-シクロヘキセニル、及びシクロヘプチルなどがある。
【0052】
ヘテロ原子を含むシクロアルキルの非制限的な例としては、1-(1,2,5,6-テトラヒドロピリジル)、1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、4-モルホリニル、3-モルホリニル、テトラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、テトラヒドロチエン-2-イル、テトラヒドロチエン-3-イル、1-ピペラジニル、及び2-ピペラジニルなどがある。
【0053】
また、シクロアルキル又はヘテロ原子を含むシクロアルキルは、ここにシクロアルキル、ヘテロ原子を含むシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールが接合するか、共有結合で連結された形態を有してもよい。
【0054】
上述したシリコン添加剤は、シリコン基板エッチング溶液のうち100~10,000ppm存在することが好ましい。仮に、化1で表されるシリコン添加剤と、化2で表されるシリコン添加剤がいずれも使用される場合、化1で表されるシリコン添加剤及び化2で表されるシリコン添加剤の含量の和が100~10,000ppm存在することが好ましい。
【0055】
シリコン基板エッチング溶液のうちシリコン添加剤が100ppm未満で存在する場合、シリコン添加剤によるシリコン酸化膜の保護効果が微弱であり、シリコン酸化膜対シリコン窒化膜に対する選択比の増加効果が微弱であり得る。
【0056】
一方、シリコン基板エッチング溶液のうちシリコン添加剤の含量が10,000ppmを超える場合、シリコン基板エッチング溶液内に高くなったシリコン濃度に応じて、返ってシリコン窒化膜のエッチング速度が低下する問題が生じ得る。
【0057】
例えば、シリコン基板エッチング溶液のうち、化1で表されるシリコン添加剤の含量が500~2000ppmである場合、前記シリコン基板エッチング溶液のエッチング選択比(シリコン窒化膜のエッチング速度(Å/min)/シリコン酸化膜のエッチング速度(Å/min))は、300以上であってもよい。
【0058】
また、シリコン基板エッチング溶液のうち、化2で表されるシリコン添加剤の含量が500~2000ppmである場合、前記シリコン基板エッチング溶液のエッチング選択比(シリコン窒化膜のエッチング速度(Å/min)/シリコン酸化膜のエッチング速度(Å/min))は、300以上であってもよい。
【0059】
本発明の一実施例によるシリコン基板エッチング溶液は、シリコン添加剤を使用することによって低下するシリコン窒化膜のエッチング速度を補償すると共に、全体的なエッチング工程の効率を向上させるためにフッ素含有化合物をさらに含んでいてもよい。
【0060】
本願におけるフッ素含有化合物は、フッ素イオンを解離させる任意の形態のあらゆる化合物を指す。
【0061】
一実施例において、フッ素含有化合物は、フッ化水素、フッ化アンモニウム、重フッ化アンモニウム、及びフッ化水素アンモニウムから選択される少なくとも一つである。
【0062】
また、他の実施例において、フッ素含有化合物は、有機系カチオンとフッ素系アニオンとがイオン結合した形態の化合物であってもよい。
【0063】
例えば、フッ素含有化合物は、アルキルアンモニウムとフッ素系アニオンとがイオン結合した形態の化合物であってもよい。ここで、アルキルアンモニウムは、少なくとも一つのアルキル基を有するアンモニウムであって、最大4つのアルキル基を有してもよい。アルキル基に対する定義は、前述したとおりである。
【0064】
さらに他の例において、フッ素含有化合物は、アルキルピロリウム、アルキルイミダゾリウム、アルキルピラゾリウム、アルキルオキサゾリウム、アルキルチアゾリウム、アルキルピリジニウム、アルキルピリミジニウム、アルキルピリダジニウム、アルキルピラジニウム、アルキルピロリジニウム、アルキルホスホニウム、アルキルモホリニウム、及びアルキルピペリジニウムから選択される有機系カチオンと、フルオロホスファート、フルオロアルキル-フルオロホスファート、フルオロボラート、及びフルオロアルキル-フルオロボラートから選択されるフッ素系アニオンとがイオン結合した形態のイオン性液体であってもよい。
【0065】
シリコン基板エッチング溶液のうち、フッ素含有化合物として通常使用されるフッ化水素又はフッ化アンモニウムに比べて、イオン性液体状に提供されるフッ素含有化合物は、高い沸点及び分解温度を有するところ、高温で行われるエッチング工程中に分解されることによって、エッチング溶液の組成を変化させるおそれが少ないという利点がある。
【0066】
以下では、本発明の具体的な実施例を示す。ただし、下記に記載の実施例は、本発明を具体的に例示するか説明するためのものに過ぎず、これによって本発明が制限されてはならない。
【0067】
実験例1
シリコン基板エッチング溶液の組成
下記の表1には、実施例によるシリコン基板エッチング溶液の組成を示した。
【0068】
【0069】
実施例1~実施例8によるシリコン基板エッチング溶液は、85重量%のリン酸と残量の水を含み、シリコン添加剤及びフッ素含有化合物は、表1に記載のppm単位で含む。
【0070】
実施例8は、フッ素含有化合物としてフッ化アンモニウムを用いた。
【0071】
実施例1~実施例8によるシリコン基板エッチング溶液に用いられたシリコン添加剤は、下記の表2に示した作用基を有する化1で表される。
【0072】
【0073】
【0074】
下記の表3には、比較例によるシリコン基板エッチング溶液の組成を示した。
【0075】
【0076】
比較例1~比較例4によるシリコン基板エッチング溶液は、85重量%のリン酸と残量の水を含み、シリコン添加剤及び及びフッ素含有化合物は、表3に記載のppm単位で含む。
【0077】
比較例1は、シリコン添加剤を添加していないリン酸水溶液である。
【0078】
比較例2は、シリコン添加剤としてテトラヒドロキシシランを用いた。
【0079】
比較例3は、シリコン添加剤として下記の化3で表される化合物を用いた。
【0080】
【0081】
比較例4は、比較例3と同じシリコン添加剤を使用するものの、フッ素含有化合物としてフッ化アンモニウムを用いた。
【0082】
シリコン基板エッチング溶液のエッチング特性及び高温安全性評価
各実施例及び比較例による組成を有するシリコン基板エッチング溶液を用いて、165℃でシリコン窒化膜及びシリコン酸化膜を5分間エッチングした。
【0083】
シリコン窒化膜及びシリコン酸化膜は、エッチング溶液に入れる前に平坦化作業を行っており、平坦化作業は、50質量%フッ酸を200:1に希釈した後、希釈フッ酸に30秒間浸漬して行った。
【0084】
エッチング速度は、シリコン窒化膜及びシリコン酸化膜をそれぞれ165℃で5分間エッチングした後、エリプソメーターで分当たり平均エッチング量を計算した数値であり、エッチング選択比は、シリコン酸化膜のエッチング速度対シリコン窒化膜のエッチング速度の比を示す。
【0085】
エッチング前のシリコン基板エッチング溶液は、透明な溶液であって、シリコン基板エッチング溶液の高温安全性を評価するために、エッチング後、シリコン基板エッチング溶液の変色可否を目視で確認した。
【0086】
評価結果は、下記の表4に示した。
【0087】
【0088】
表4を参照すれば、実施例1~実施例7の場合、比較例に比べて高いエッチング選択比を示すと共に、高温でもエッチング溶液の変色がないことを確認することができる。
【0089】
一方、シリコン添加剤を添加していないリン酸水溶液を用いた比較例1の場合、エッチング選択比が最も低いことを確認することができる。
【0090】
一方、一般に、シリコン添加剤として使用されるテトラヒドロキシシランをシリコン添加剤として使用した比較例2の場合、多少良好な水準のエッチング選択比を示すものの、エッチング後に黒い色に変色しており、これによって、高温のエッチング条件で安全性が低いことを確認することができる。
【0091】
また、比較例3の場合、シリコン元素に結合したベンゼン環は、いずれも水素元素で置換されており、この場合、エッチング溶液内にシリコン添加剤の溶解度を十分確保しにくいことがある。これによって、エッチング溶液のうちシリコン添加剤によるエッチング選択比の上昇効果が実施例に比べて微弱であることを確認することができる。
【0092】
実施例8と比較例4の場合、フッ素含有化合物を用いることによって、シリコン酸化膜に対するエッチング速度が他の実施例及び比較例に比べて高いことを確認することができるが、比較例4に比べて、実施例8によるエッチング溶液のうちシリコン添加剤の高い含量によって、シリコン添加剤によるエッチング選択比の上昇効果が実施例8においてさらに高いことを確認することができる。
【0093】
実験例2
シリコン基板エッチング溶液の組成
下記の表5には、実施例によるシリコン基板エッチング溶液の組成を示した。
【0094】
【0095】
実施例9~実施例16によるシリコン基板エッチング溶液は、85重量%のリン酸と残量の水を含み、シリコン添加剤及びフッ素含有化合物は、表5に記載のppm単位で含む。
【0096】
実施例16は、フッ素含有化合物としてフッ化水素を用いた。
【0097】
実施例9~実施例16によるシリコン基板エッチング溶液に用いられたシリコン添加剤は、下記の表6に示した作用基を有する化2で表される。
【0098】
【0099】
【0100】
下記の表7には、比較例によるシリコン基板エッチング溶液の組成を示した。
【0101】
【0102】
比較例5~比較例8によるシリコン基板エッチング溶液は、85重量%のリン酸と残量の水を含み、シリコン添加剤及び及びフッ素含有化合物は、表7に記載のppm単位で含む。
【0103】
比較例5は、シリコン添加剤を添加していないリン酸水溶液である。
【0104】
比較例6は、シリコン添加剤として3-アミノプロピルトリヒドロキシシランを用いた。
【0105】
比較例7は、シリコン添加剤として下記の化4で表される化合物を用いた。
【0106】
【0107】
比較例8は、比較例7と同じシリコン添加剤を使用するものの、フッ素含有化合物としてフッ化水素を用いた。
【0108】
シリコン基板エッチング溶液のエッチング特性及び高温安全性評価
各実施例及び比較例による組成を有するシリコン基板エッチング溶液を用いて、165℃でシリコン窒化膜及びシリコン酸化膜を5分間エッチングした。
【0109】
シリコン窒化膜及びシリコン酸化膜は、エッチング溶液に入れる前に平坦化作業を行っており、平坦化作業は、50質量%フッ酸を200:1に希釈した後、希釈フッ酸に30秒間浸漬して行った。
【0110】
エッチング速度は、シリコン窒化膜及びシリコン酸化膜をそれぞれ165℃で5分間エッチングした後、エリプソメーターで分当たり平均エッチング量を計算した数値であり、エッチング選択比は、シリコン酸化膜のエッチング速度対シリコン窒化膜のエッチング速度の比を示す。
【0111】
エッチング前のシリコン基板エッチング溶液は、透明な溶液であって、シリコン基板エッチング溶液の高温安全性を評価するために、エッチング後、シリコン基板エッチング溶液の変色可否を目視で確認した。
【0112】
評価結果は、下記の表8に示した。
【0113】
【0114】
表8を参照すれば、実施例9~実施例16の場合、比較例に比べて高いエッチング選択比を示すと共に、高温でもエッチング溶液の変色がないことを確認することができる。
【0115】
一方、シリコン添加剤を添加していないリン酸水溶液を用いた比較例5の場合、エッチング選択比が最も低いことを確認することができる。
【0116】
一方、一般に、シリコン添加剤として使用される3-アミノプロピルトリヒドロキシシランをシリコン添加剤として使用した比較例6の場合、多少良好な水準のエッチング選択比を示すものの、エッチング後、黒い色に変色しており、これによって、高温のエッチング条件で安全性が低いことを確認することができる。
【0117】
また、比較例7の場合、シリコン元素に結合したベンゼン環は、いずれも水素元素で置換されており、この場合、エッチング溶液内にシリコン添加剤の溶解度を十分確保しにくいことがある。これによって、エッチング溶液のうちシリコン添加剤によるエッチング選択比の上昇効果が実施例に比べて微弱であることを確認することができる。
【0118】
実施例16と比較例8の場合、フッ素含有化合物を用いることによって、シリコン酸化膜に対するエッチング速度が他の実施例及び比較例に比べて高いことを確認することができるが、比較例8に比べて実施例16によるエッチング溶液のうちシリコン添加剤の高い含量によって、シリコン添加剤によるエッチング選択比の上昇効果が実施例16においてさらに高いことを確認することができる。
【0119】
以上、本発明の一実施例について説明したが、該技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載した本発明の思想から脱しない範囲内で、構成要素の付加、変更、削除又は追加などによって本発明を多様に修正及び変更することができ、これも本発明の権利範囲内に含まれる。