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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】病棟
(51)【国際特許分類】
   E04H 3/08 20060101AFI20231127BHJP
【FI】
E04H3/08 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019164459
(22)【出願日】2019-09-10
(65)【公開番号】P2021042561
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】鳥山 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】大石 茂
(72)【発明者】
【氏名】根ケ山 愛子
(72)【発明者】
【氏名】河原崎 澄子
(72)【発明者】
【氏名】上田 嘉之
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3107231(JP,U)
【文献】特開平04-062267(JP,A)
【文献】特開2015-094101(JP,A)
【文献】特開2000-084104(JP,A)
【文献】特開2005-320854(JP,A)
【文献】特開2006-283532(JP,A)
【文献】辻 吉隆,超高齢社会における病院建築のあり方,月刊新医療 2月号 ,第41巻,中島 雄志 (株)エム・イー振興協会,2014年01月28日,第117頁-第121頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 3/08
E04H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
病棟外周に沿って複数の病室が配置された複数の病棟領域が設けられ、該複数の病棟領域に共通でフロア中心部に配置された患者共用諸室及び看護諸室からなる共用・看護諸室領域を有する病棟であって、
前記複数の病棟領域は、前記病室に面して前記複数の病棟領域を通過するように環状に配置された病棟廊下を有し、
前記病棟廊下は、少なくとも1つの前記病棟領域において、鋭角に交差する二方向交差部が形成され、
前記共用・看護諸室領域には、前記二方向交差部の内角側の頂部に看護スタッフの拠点となるスタッフステーションが設けられ、
前記二方向交差部に位置する前記スタッフステーションは、前記病棟廊下のうち前記二方向交差部を形成する二方向のそれぞれに延在する病棟廊下を挟んで前記病室に対向して配置されており、
前記共用・看護諸室領域は、前記スタッフステーションの前記病棟廊下に面する第1側面と、前記スタッフステーションを除く領域に面する第2側面と、を有し、
前記第1側面は、少なくとも前記第2側面のうち前記第1側面寄りのステーション側端部よりも屋内外方向で屋外側で前記病室側に位置していることを特徴とする病棟。
【請求項2】
前記第2側面の少なくとも一部には、前記ステーション側端部から前記スタッフステーションから離れる方向に向かうに従い漸次、屋外側に傾斜する傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項に記載の病棟。
【請求項3】
前記第1側面及び前記第2側面は、平行に延在し、
前記第1側面は、前記第2側面よりも屋外側で前記病室側に張り出していることを特徴とする請求項に記載の病棟。
【請求項4】
前記共用・看護諸室領域には、前記スタッフステーションに通じるとともに、前記病棟廊下に連結するスタッフ専用通路が設けられ、
前記スタッフ専用通路には、前記病棟廊下の直線部分の中央部に連結する連絡通路がさらに設けられ、
前記連絡通路は、少なくともベッドが通れる幅を有していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の病棟。
【請求項5】
前記共用・看護諸室領域のスタッフ専用廊下と前記病棟廊下とを連絡する連絡通路が設けられ、
隣り合う前記病棟領域同士の境界、及び前記共用・看護諸室領域のスタッフ専用通路の出入口が防火扉により区画された第1防火区画と、
前記スタッフ専用通路の中央において、前記連絡通路に連結されない位置に設けられた第2防火区画と、を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の病棟。
【請求項6】
前記病棟領域が3つ設けられた平面視で三角形に形成された三角フロアであり、
前記三角形の中央部に前記共用・看護諸室領域が配置され、
前記三角形の頂部のうち少なくとも2つの頂部に前記二方向交差部に位置する前記スタッフステーションが配置されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の病棟。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病棟に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国の人口は、高齢化がさらに進み、働き手世代が激減していくと予想されている。病院の病棟では、高齢化、重症度、及び医療や看護の必要度が高い患者が増えている現状がある。一方で、看護師の配員を増加することも難しくなっている。
ここで、従来の病棟としては、例えば特許文献1に示されるように、外壁の長さ方向に平行に廊下が設けられ、廊下と外壁との間に接するように病室が配列される配置プランが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-283532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の病棟では、以下のような問題があった。
すなわち、患者の高齢化による認知度の低下や、重症により常に病室内の患者の様子が看護師にかかる必要が高まっており、その点で改善の余地があった。
また、近年ではとくに全個室病棟のように病室数が多い病棟が増えてきており、このような病棟にあっては病室数に応じて病室に面する廊下も長くなるというプランになる。そのため、看護動線が長くなることから、各病室の患者の観察のための移動時間が増え、迅速な看護ができなく、看護師の負担が増大するうえ、患者に対する直接看護の時間を十分に確保することができないという問題があった。
さらに、病室に面する廊下長が長くなると、看護師管理者によって看護師の作業状況をよく観察することができなく、看護に関わる管理が低下するおそれがあり、その点で改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、看護拠点に居ながら患者観察ができ、さらに看護動線を短くでき、看護の負担を小さくでき、直接看護の時間を長く確保することができる病棟を提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、看護師管理者から看護師の状況が見やすく、看護管理を向上できる病棟を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る病棟は、病棟外周に沿って複数の病室が配置された複数の病棟領域が設けられ、該複数の病棟領域に共通でフロア中心部に配置された患者共用諸室及び看護諸室からなる共用・看護諸室領域を有する病棟であって、前記複数の病棟領域は、前記病室に面して前記複数の病棟領域を通過するように環状に配置された病棟廊下を有し、前記病棟廊下は、少なくとも1つの前記病棟領域において、鋭角に交差する二方向交差部が形成され、前記共用・看護諸室領域には、前記二方向交差部の内角側の頂部に看護スタッフの拠点となるスタッフステーションが設けられ、前記二方向交差部に位置する前記スタッフステーションは、前記病棟廊下のうち前記二方向交差部を形成する二方向のそれぞれに延在する病棟廊下を挟んで前記病室に対向して配置されており、前記共用・看護諸室領域は、前記スタッフステーションの前記病棟廊下に面する第1側面と、前記スタッフステーションを除く領域に面する第2側面と、を有し、前記第1側面は、少なくとも前記第2側面のうち前記第1側面寄りのステーション側端部よりも屋内外方向で屋外側で前記病室側に位置していることを特徴としている。
【0007】
本発明では、複数の病棟領域がフロア中心部に位置する共用・看護諸室領域を供用とし、病棟廊下に鋭角に交差する二方向交差部の内角側の頂部に看護スタッフの拠点となるスタッフステーションが設けられ、このスタッフステーションが病棟廊下のうち二方向交差部の二方向のそれぞれに延在する病棟廊下に面して配置され、さらにこの病棟廊下を挟んで病室が対向して配置されている。そのため、スタッフステーションにいる看護師が病棟廊下を見通して、多くの病室周りの患者を観察することができる。
【0008】
また、スタッフステーションから各病室への移動時間を短縮することができ、直接看護の時間を長く確保することができる。このように、看護動線を短くでき、看護の負担を小さくすることができる。
しかも、共用・看護諸室領域が環状の病棟廊下の内側で病棟フロアの中央領域に配置され、患者や看護スッタフが使用するエレベータや階段等の縦動線を3つの病棟領域で兼用することができるので、面積効率が高い配置を実現できる。
【0009】
また、本発明では、スタッフステーションが病棟廊下のうち二方向交差部の二方向のそれぞれに延在する病棟廊下を挟んで病室に対向して配置され、さらにこの病棟廊下に面して各病室が配置されているので、スタッフステーションから二方向の病棟廊下を見通すことができる。そのため、看護師管理者から看護師の状況も見やすくなることから看護管理を向上でき、例えば看護師が適正な処置をしている様子を監視したり、指導を行うことができ、看護の不具合を未然に防ぐことも可能である。
【0010】
さらにまた、本発明に係る病棟では、三角形状のフロアから形成され、建物の外周縁に沿って病室が配置されるので、各病室の窓側に他の病室が向かい合うことがなく、全病室において眺望を確保することができる。
【0012】
また、スタッフステーションの第1側面が第2側面のステーション側端部より病棟廊下側に張り出しているので、病棟廊下の見通しがより良好となる。そのため、スタッフステーションからの視野範囲を広げることができ、病棟領域全体を視野に入れることができ、スタッフステーションから遠い病室もより確実に観察することができる。
【0013】
また、本発明に係る病棟は、前記第2側面の少なくとも一部には、前記ステーション側端部から前記スタッフステーションから離れる方向に向かうに従い漸次、屋外側に傾斜する傾斜面が形成されていることが好ましい。
【0014】
この場合には、第2側面の少なくとも一部に傾斜面が形成されているので、スタッフステーションから離れた奥側に位置する病室までを病棟廊下を介して効率よく見渡すことができる。
【0015】
また、本発明に係る病棟は、前記第1側面及び前記第2側面は、平行に延在し、前記第1側面は、前記第2側面よりも屋外側で前記病室側に張り出していることを特徴としてもよい。
【0016】
この場合には、スタッフステーションの第1側面が第2側面よりも病棟廊下側に張り出しているので、スタッフステーションにいるスタッフからスタッフステーションから離れた奥側に位置する病室までを病棟廊下を介して効率よく見渡すことができる。
【0017】
また、本発明に係る病棟は、前記共用・看護諸室領域のスタッフ専用廊下と前記病棟廊下とを連絡する連絡通路が設けられ、隣り合う前記病棟領域同士の境界、及び前記共用・看護諸室領域のスタッフ専用通路の出入口が防火扉により区画された第1防火区画と、 前記スタッフ専用通路の中央において、前記連絡通路に連結されない位置に設けられた第2防火区画と、を有することを特徴としてもよい。
【0018】
この場合には、共用・看護諸室領域と病棟領域とが第1防火区画により区画され、さらにスタッフ専用通路の中央にも第2防火区画により区画されている。そのため、複数の病棟領域のすべての病室において、二方向に水平避難することが可能となり、各防火区画同士が隣接または近接した位置に配置されるので、患者の避難や誘導を効率よく行うことができる。
【0019】
また、本発明に係る病棟は、前記病棟領域が3つ設けられた平面視で三角形に形成された三角フロアであり、前記三角形の中央部に前記共用・看護諸室領域が配置され、前記三角形の頂部のうち少なくとも2つの頂部に前記二方向交差部に位置する前記スタッフステーションが配置されていることを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の病棟によれば、看護拠点に居ながら患者観察ができ、さらに看護動線を短くでき、看護の負担を小さくでき、直接看護の時間を長く確保することができる。
また、本発明の病棟によれば、看護師管理者から看護師の状況が見やすく、看護管理を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態による病棟の平面図である。
図2図1に示す病棟の防火区画を示す平面図である。
図3】他の実施形態による病棟の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態による病棟について、図面に基づいて説明する。
【0023】
図1に示す本実施形態による病棟1は、例えば鉄筋コンクリート造(RC造)により構築され、平面視で三角形状(ここでは二等辺三角形)に形成されたフロア形状となっている。
病棟1は、複数の柱と梁等とを剛接合したラーメン構造により剛構造に構成され、柱と梁等と一体に打設されたコンクリートスラブにより構成されている。
【0024】
当該フロアに配置されるすべての病室21は、病棟1の外周側に配置されている。すなわち、各病室21の窓側が建物の外周壁に位置し、それぞれの病室21の窓側において他の病室が向かい合わせにならないような配置プランになっている。また、各病室21は、窓と対向する側で後述する病棟廊下4に面している。なお、病棟廊下4において、屋内外方向で前記病室21が配置される方向を屋外側といい、後述する共用・看護諸室領域3が配置される方向を屋内側という。
【0025】
病棟1の三角形状の頂点を含むように3つの病棟領域2(2A、2B、2C)が配置されている。図1において二点鎖線Fは、3つの病棟領域2A、2B、2Cの境界に位置する病棟分割ラインを示している。
三角形状の中心部には3つの病棟領域2A、2B、2Cのそれぞれに共通する患者共用諸室及び看護諸室からなる共用・看護諸室領域3(図1に示す二点鎖線E)が配置されている。共用・看護諸室領域3は、各病室21に面して3つの病棟領域2A、2B、2Cを通過するように環状に配置された病棟廊下4の内側に配置されている。ここで、前記三角形状の45°の頂部を有する領域を第1病棟領域2Aと第2病棟領域2Bとし、同じく90°の頂部を有する領域を第3病棟領域2Cとする。
【0026】
病棟廊下4は、三角フロアに沿って略三角形状に配置されている。病棟廊下4は、第1病棟領域2Aと第2病棟領域2Bにおいて、鋭角(ここでは45°)に交差する二方向交差部4aが形成されている。また、第3病棟領域2Cには、病棟廊下4が90°で交差する直交交差部4bが形成されている。
【0027】
病棟領域2A、2B、2Cには、複数の個室の病室21と、病棟廊下4に面して三角フロアの頂部に配置されるデイルーム等の共有スペース22と、が設けられている。共有スペース22を三角フロアの頂部に配置することで、この共有スペース22からの眺望は本実施形態において135°の範囲を確保できる。
また、後述するようにスタッフステーション30に対向する位置に共有スペース22を設置することで、共有スペース22に出入りする人を観察できるとともに、気配で異変を察知しやすい利点がある。
また、病室21のうち一部(後述するスタッフステーション30に対向する位置の一部)には、最も看護観察の必要な重症室を配置するようにしてもよい。
【0028】
また、病棟1には、主に病室21を利用する患者や、患者の関係者等が利用する患者用エレベータ23が病棟廊下4に面して配置されている。なお、本実施形態では、第3病棟領域2Cのみに患者用エレベータ23が設けられ、3つの病棟領域2A、2B、2Cで供用となっている。さらに病棟領域2には、とくに図示しないが例えばリハビリ室や食堂などの共用スペースが設けられている。
【0029】
共用・看護諸室領域3は、三角形状に配置される病棟廊下4に囲まれた三角形状の領域である。共用・看護諸室領域3の三角形状の頂部には、看護スタッフの拠点となるスタッフステーション30(30A、30B、30C)が設けられている。具体的には、第1病棟領域2Aと第2病棟領域2Bには、二方向交差部4aの内角側の頂部に第1スタッフステーション30A、30Bが設けられ、直交交差部4bの内角側の頂部に第2スタッフステーション30Cが設けられている。また、共用・看護諸室領域3は、中央に3つの病棟領域2A、2B、2Cのスタッフ間のコミュニケーションを構築するための休憩室やカンファレンス室を集約したスタッフ集中領域31を有している。
【0030】
また、共用・看護諸室領域3には、各スタッフステーション30A、30B、30Cに通じるとともに、各病棟領域2A、2B、2C内の病棟廊下4に対して連結するスタッフ専用通路32が設けられている。スタッフ専用通路32は、スタッフ専用であり、患者が自由に通行できないようにスタッフ等のみが出入り可能な扉が設けられている。
【0031】
さらに、スタッフ専用通路32には、病棟廊下4の直線部分の中央部に連絡する連絡通路33が設けられている。連絡通路33は、看護スタッフの各病棟領域2の病室21への近道として機能し、例えばベッドで通れる幅とし、緊急時において寝台用エレベータに速やかに乗せることができる。
【0032】
また、共用・看護諸室領域3には、スタッフ専用通路32に面する位置に看護スタッフ専用エレベータ34や階段35、汚物処理室36が配置されている。看護スタッフ専用エレベータ34は患者とは別でスタッフの上下動線となる。汚物処理室36は、看護スタッフが病室21と汚物処理室36との間の移動が比較的多いため、病棟1の中央に配置されることが好ましい。
さらに、共用・看護諸室領域3には、スタッフ専用通路32に面する位置に例えば看護師の休憩室、器材庫等が適宜な位置に配置されている。
【0033】
スタッフステーション30は、上述したように三角形状の頂部に配置され、病棟廊下4を挟んで病室21に対向して配置されている。病棟廊下4は、共用・看護諸室領域3におけるスタッフステーション30の第1側面3aに面する第1廊下部4Aと、スタッフステーション30以外の第2側面3bに面する第2廊下部4Bと、を有している。そして、スタッフステーション30の第1側面3aは、第2側面3bよりも病棟廊下4側(病室21側)に張り出している。
【0034】
第2側面3bは、スタッフステーション30から離れる方向に向かうに従い漸次、病室21に近接する傾斜面が形成されている。すなわち、第2側面3bのスタッフステーション30寄りのステーション側端部3dは、スタッフステーション30の第2側面3b側の端部30aよりも内側に配置されている。第2側面3b側の端部30aに面する病棟廊下4は、廊下幅が最も広くなるように形成されている。
【0035】
共用・看護諸室領域3では、各病棟領域2A、2B、2Cにおいて、スタッフステーション30より病棟廊下4を通じて看護師が各病棟領域2のすべての病室21が視野範囲に入り、見渡すことができる。
【0036】
図2に示すように、隣り合う病棟領域2、2同士の境界、及び共用・看護諸室領域3のスタッフ専用通路32の出入口が区画された3つの第1防火区画51、52、53と、スタッフ専用通路32の中央において、連絡通路33に連結されない位置に設けられた第2防火区画54と、を有している。
【0037】
すなわち、本実施形態では、4つの防火区画51~54が形成されている。具体的には、病棟廊下4において、各病棟領域2A、2B、2Cの境界部分に設けられる第1防火扉55によって3つの第1防火区画51、52、53が区画されている。さらに、スタッフ専用通路32において、連絡通路33を含まない位置で第2防火扉56によって第2防火区画54が区画されている。
【0038】
次に、上述した病棟1の作用について、図面に基づいて詳細に説明する。
本実施形態による病棟1では、図1に示すように、3つの病棟領域2A、2B、2Cがフロア中心部に位置する共用・看護諸室領域3を供用とし、病棟廊下4に鋭角(ここで45°)に交差する二方向交差部4aの内角側の頂部に看護スタッフの拠点となるスタッフステーション30A、30Bが設けられ、このスタッフステーション30が病棟廊下4のうち二方向交差部4aの二方向のそれぞれに延在する病棟廊下4に面して配置され、さらにこの病棟廊下4を挟んで病室21が対向して配置されている。そのため、スタッフステーション30にいる看護師が病棟廊下4を見通して、多くの病室21周りの患者を観察することができる。
【0039】
また、本実施形態では、スタッフステーション30から各病室21への移動時間を短縮することができ、直接看護の時間を長く確保することができる。このように、看護動線を短くでき、看護の負担を小さくすることができる。
【0040】
しかも、共用・看護諸室領域3が環状の病棟廊下4の内側で病棟フロアの中央領域に配置され、患者や看護スッタフが使用するエレベータや階段等の縦動線を3つの病棟領域2A、2B、2Cで兼用することができるので、面積効率が高い配置を実現できる。
とくに本実施形態のように病棟フロアが平面視で三角形状の場合には、上記中央領域において三角形状の共用・看護諸室領域3を確保することができ、例えば従来のような四角形状の領域の場合に比べてその面積を小さく抑えることができ、看護諸室と患者共用諸室の適正面積を確保することができる。
【0041】
また、本実施形態では、スタッフステーション30A、30Bが病棟廊下4のうち二方向交差部4aの二方向のそれぞれに延在する病棟廊下4に面して配置され、さらにこの病棟廊下4に面して各病室21が配置されているので、スタッフステーション30から二方向の病棟廊下4を見通すことができる。そのため、看護師管理者から看護師の状況も見やすくなることから看護管理を向上でき、例えば看護師が適正な処置をしている様子を監視したり、指導を行うことができ、看護の不具合を未然に防ぐことも可能である。
【0042】
さらにまた、本実施形態では、三角形状のフロアから形成され、建物の外周縁に沿って病室21が配置されるので、各病室21の窓側に他の病室が向かい合うことがなく、全病室21において眺望を確保することができる。
【0043】
また、本実施形態では、スタッフステーション30の第1側面3aが第2側面3bより病棟廊下4側に張り出しているので、病棟廊下4の見通しがより良好となる。そのため、スタッフステーション30からの視野範囲を広げることができ、病棟領域2全体を視野に入れることができ、スタッフステーション30から遠い病室21もより確実に観察することができる。
【0044】
また、実施形態では、スタッフステーション30から離れる方向に向かうに従い漸次、外側になる傾斜面3cが第2側面3bに形成されているので、スタッフステーション30から離れた奥側に位置する病室21までを病棟廊下4を介して効率よく見渡すことができる。
【0045】
また、本実施形態では、図2に示すように、共用・看護諸室領域3と病棟領域2とが第1防火区画51~53により区画され、さらにスタッフ専用通路32の中央にも第2防火区画54により区画されている。
そのため、3つの病棟領域2A、2B、2Cのすべての病室21において、二方向に水平避難することが可能となり、各防火区画51~54同士が隣接または近接した位置に配置されるので、患者の避難や誘導を効率よく行うことができる。
【0046】
上述のように本実施形態による病棟1では、看護拠点に居ながら患者観察ができ、さらに看護動線を短くでき、看護の負担を小さくでき、直接看護の時間を長く確保することができる。
また、本実施形態による病棟1によれば、看護師管理者から看護師の状況が見やすく、看護管理を向上できる。
【0047】
以上、本発明による病棟の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0048】
例えば、上述した実施形態では、共用・看護諸室領域3の第2側面3bが傾斜し、ステーション側端部3dがスタッフステーション30の第1側面3aよりも屋内側に位置するように配置されているが、このような形態であることに限定されることはない。要は、第1側面3aが少なくとも第2側面3bのステーション側端部3dよりも屋内外方向で屋外側で病室21側に位置していればよいのである。
【0049】
つまり、本実施形態では、共用・看護諸室領域3における第2側面3bに傾斜面が形成された構成としているが、傾斜していることに限定されることはなく、病棟廊下の廊下幅が変化しない構成であってもよい。
例えば、図3に示すように、他の実施形態による病棟1Aは、第1側面3a及び第2側面3bが互いに平行に延在し、第1側面3aが第2側面3bよりも屋外側で病室21側に張り出している配置となっている。この場合には、スタッフステーション30にいるスタッフからスタッフステーション30から離れた奥側に位置する病室21までを病棟廊下4を介して効率よく見渡すことができる。
【0050】
また、共用・看護諸室領域3の病棟廊下4に面する側面において、上述した実施形態のように第1側面3aが少なくとも第2側面3bのステーション側端部3dよりも屋内外方向で屋外側で病室21側に位置する構成であることに制限されることはなく、第1側面3aが第2側面3bのステーション側端部3dより屋外側に張り出すことなく、平面視で直線上に配置されていてもよい。
【0051】
さらに、本実施形態の病棟1における病棟領域2A、2B、2C内及び共用・看護諸室領域3内の各病室21等のレイアウト、数量等は一例であって、適宜設定することができる。例えば、エレベータや汚物処理室の位置、数量に関しても、上述した位置に限定されることはない。
【0052】
さらにまた、本実施形態では、病棟1として平面視で三角形状のフロア形状としているが、例えば菱形、五角形等、他のフロア形状であってもよい。要は、複数の病棟領域のうち少なくとも1つの病棟領域において、鋭角に交差する二方向交差部が形成される形状の病棟であればよいのである。
【0053】
また、防火区画の位置は、上述した実施形態に限定されることはなく、他の位置であってもかまわない。
【0054】
また、病室21として個室に限定されず、複数の患者が利用できる大部屋の病室であってもかまわない。
【0055】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0056】
1、1A 病棟
2、2A、2B、2C 病棟領域
3 共用・看護諸室領域
3a 第1側面
3b 第2側面
3d ステーション側端部
4 病棟廊下
4A 第1廊下部
4B 第2廊下部
4a 二方向交差部
4b 直交交差部
21 病室
22 共有スペース
30、30A、30B、30C スタッフステーション
31 スタッフ集中領域
32 スタッフ専用通路
33 連絡通路
51、52、53 第1防火区画
54 第2防火区画
55 第1防火扉
56 第2防火扉
図1
図2
図3