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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】樹脂製パイプの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/16 20060101AFI20231127BHJP
【FI】
B29C45/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019179701
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021053954
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390026538
【氏名又は名称】ダイキョーニシカワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福島 英明
(72)【発明者】
【氏名】幸 淳史
(72)【発明者】
【氏名】重田 裕人
(72)【発明者】
【氏名】三好 裕也
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-178361(JP,A)
【文献】特開2018-76626(JP,A)
【文献】特開平6-15509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプ本体と、該パイプ本体から分岐する分岐管部とが一体成形された樹脂製パイプの製造方法において、
前記樹脂製パイプを成形する成形型の内部に、前記パイプ本体の一端部に対応する部分から溶融樹脂を射出するとともにガスを圧送し、溶融樹脂を前記成形型の内部における前記パイプ本体の他端部に対応する部分へ向けて流動させる第1工程と、
前記樹脂製パイプを成形する成形型の内部に、前記分岐管部の先端部に対応する部分から空気を含む溶融樹脂を射出し、溶融樹脂を前記成形型の内部における前記パイプ本体に対応する部分へ向けて流動させる第2工程とを備え、
前記第1工程で流動させた溶融樹脂と、前記第2工程で流動させた溶融樹脂とを前記成形型の内部で合流させるとともに、前記ガスを前記成形型の内部における前記分岐管部に対応する部分へ向けて流入させた後、溶融樹脂を固化させることを特徴とする樹脂製パイプの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂製パイプの製造方法において、
前記第1工程での溶融樹脂の射出開始と同時、または前記第1工程での溶融樹脂の射出開始から所定時間経過後に、前記第2工程の溶融樹脂の射出を開始することを特徴とする樹脂製パイプの製造方法。
【請求項3】
パイプ本体と、該パイプ本体から分岐する分岐管部とが一体成形された樹脂製パイプの製造方法において、
前記樹脂製パイプを成形する成形型の内部に、第1ランナにより、前記パイプ本体の一端部に対応する部分から溶融樹脂を射出し、溶融樹脂を前記成形型の内部における前記パイプ本体の他端部に対応する部分へ向けて流動させる第1工程と、
前記樹脂製パイプを成形する成形型の内部に、第2ランナにより、前記分岐管部の先端部に対応する部分から空気を含む溶融樹脂を射出し、溶融樹脂を前記成形型の内部における前記パイプ本体に対応する部分へ向けて流動させる第2工程と、
前記樹脂製パイプを成形する成形型の内部に、前記パイプ本体の一端部に対応する部分から前記パイプ本体の他端部に対応する部分へ向けてガスを圧送し、前記第1工程で射出された溶融樹脂を前記パイプ本体の他端部に対応する部分へ流動させる第3工程とを備え、
前記第1工程で流動させた溶融樹脂と、前記第2工程で流動させた溶融樹脂とを前記成形型の内部で合流させるとともに、前記ガスを前記成形型の内部における前記分岐管部に対応する部分へ向けて流入させた後、溶融樹脂を固化させることを特徴とする樹脂製パイプの製造方法。
【請求項4】
パイプ本体と、該パイプ本体から分岐する分岐管部とが一体成形された樹脂製パイプの製造方法において、
前記樹脂製パイプを成形する成形型の内部に、第1ランナにより、前記パイプ本体の一端部に対応する部分から溶融樹脂を射出し、溶融樹脂を前記成形型の内部における前記パイプ本体の他端部に対応する部分へ向けて流動させる工程と、
前記樹脂製パイプを成形する成形型の内部に、前記パイプ本体の一端部に対応する部分から前記パイプ本体の他端部に対応する部分へ向けてガスを圧送し、前記第1ランナから射出された溶融樹脂を前記パイプ本体の他端部に対応する部分へ流動させる工程と、
前記樹脂製パイプを成形する成形型の内部に、第2ランナにより、前記分岐管部の先端部に対応する部分から空気を含む溶融樹脂を射出し、溶融樹脂を前記成形型の内部における前記パイプ本体に対応する部分へ向けて流動させる工程とを備え、
前記第1ランナから射出された溶融樹脂と、前記第2ランナから射出された溶融樹脂とを前記成形型の内部で合流させるとともに、前記ガスを前記成形型の内部における前記分岐管部に対応する部分へ向けて流入させた後、溶融樹脂を固化させることを特徴とする樹脂製パイプの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂材を成形してなるパイプの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の樹脂製パイプの製造方法としては、例えば、特許文献1に開示されているように、溶融状態の樹脂材を成形型の内部に射出した後、ガスを圧送して樹脂を中空状に成形するとともに、成形型の成形面に押し付けて固化させる方法がある。特許文献1では、樹脂製パイプが分岐管部を備えている。この分岐管部は機械加工によって形成され、樹脂製パイプの内部に連通している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-178361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のように樹脂製パイプに分岐管部を一体に設ける場合に機械加工によって分岐管部を形成すると、機械加工の設備が必要になるとともに、工数が増大するという問題がある。
【0005】
また、樹脂製パイプには、分岐管部以外にも取付や固定のためのブラケットを一体に設けたいという要求もあり、この場合もブラケットを機械加工によって形成しようとすると、設備及び工数の問題が生じる。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、パイプ本体に分岐管部やブラケットを後加工することなく、一体成形できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明は、パイプ本体と、該パイプ本体から分岐する分岐管部とが一体成形された樹脂製パイプの製造方法において、前記樹脂製パイプを成形する成形型の内部に、前記パイプ本体の一端部に対応する部分から溶融樹脂を射出するとともにガスを圧送し、溶融樹脂を前記成形型の内部における前記パイプ本体の他端部に対応する部分へ向けて流動させる第1工程と、前記樹脂製パイプを成形する成形型の内部に、前記分岐管部の先端部に対応する部分から空気を含む溶融樹脂を射出し、溶融樹脂を前記成形型の内部における前記パイプ本体に対応する部分へ向けて流動させる第2工程とを備え、前記第1工程で流動させた溶融樹脂と、前記第2工程で流動させた溶融樹脂とを前記成形型の内部で合流させるとともに、前記ガスを前記成形型の内部における前記分岐管部に対応する部分へ向けて流入させた後、溶融樹脂を固化させることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、第1工程で成形型の内部に射出された溶融樹脂は、パイプ本体の一端部に対応する部分から他端部に対応する部分へ向けて流動する。また、ガスが圧送されるので、ガスも成形型の内部においてパイプ本体の一端部に対応する部分から他端部に対応する部分へ向けて流動する。一方、第2工程で成形型の内部における分岐管部の先端部に対応する部分に射出された溶融樹脂は、成形型の内部におけるパイプ本体に対応する部分へ向けて流動し、第1工程で射出された溶融樹脂と合流する。第1工程で圧送されたガスは、成形型の内部においてパイプ本体の一端部に対応する部分から他端部に対応する部分へ向けて流れ、これによりパイプ本体が成形される。さらに、ガスは、成形型の内部における分岐管部に対応する部分へ向けて流入し、これにより、パイプ本体と連通する分岐管部が機械加工を施すことなく、当該パイプ本体に一体成形される。
【0009】
第2の発明は、前記第1工程での溶融樹脂の射出開始と同時、または前記第1工程での溶融樹脂の射出開始から所定時間経過後に、前記第2工程の溶融樹脂の射出を開始することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、第1工程で成形型の内部に射出された溶融樹脂を、パイプ本体の一端部に対応する部分から他端部に対応する部分へ向けて十分に流動させてから、第2工程で射出された溶融樹脂に合流させることができる。
【0011】
第3の発明は、パイプ本体と、該パイプ本体から分岐する分岐管部とが一体成形された樹脂製パイプの製造方法において、前記樹脂製パイプを成形する成形型の内部に、第1ランナにより、前記パイプ本体の一端部に対応する部分から溶融樹脂を射出し、溶融樹脂を前記成形型の内部における前記パイプ本体の他端部に対応する部分へ向けて流動させる第1工程と、前記樹脂製パイプを成形する成形型の内部に、第2ランナにより、前記分岐管部の先端部に対応する部分から空気を含む溶融樹脂を射出し、溶融樹脂を前記成形型の内部における前記パイプ本体に対応する部分へ向けて流動させる第2工程と、前記樹脂製パイプを成形する成形型の内部に、前記パイプ本体の一端部に対応する部分から前記パイプ本体の他端部に対応する部分へ向けてガスを圧送し、前記第1工程で射出された溶融樹脂を前記パイプ本体の他端部に対応する部分へ流動させる第3工程とを備え、前記第1工程で流動させた溶融樹脂と、前記第2工程で流動させた溶融樹脂とを前記成形型の内部で合流させるとともに、前記ガスを前記成形型の内部における前記分岐管部に対応する部分へ向けて流入させた後、溶融樹脂を固化させることを特徴とする。
【0012】
第4の発明は、パイプ本体と、該パイプ本体から分岐する分岐管部とが一体成形された樹脂製パイプの製造方法において、前記樹脂製パイプを成形する成形型の内部に、第1ランナにより、前記パイプ本体の一端部に対応する部分から溶融樹脂を射出し、溶融樹脂を前記成形型の内部における前記パイプ本体の他端部に対応する部分へ向けて流動させる工程と、前記樹脂製パイプを成形する成形型の内部に、前記パイプ本体の一端部に対応する部分から前記パイプ本体の他端部に対応する部分へ向けてガスを圧送し、前記第1ランナから射出された溶融樹脂を前記パイプ本体の他端部に対応する部分へ流動させる工程と、前記樹脂製パイプを成形する成形型の内部に、第2ランナにより、前記分岐管部の先端部に対応する部分から空気を含む溶融樹脂を射出し、溶融樹脂を前記成形型の内部における前記パイプ本体に対応する部分へ向けて流動させる工程とを備え、前記第1ランナから射出された溶融樹脂と、前記第2ランナから射出された溶融樹脂とを前記成形型の内部で合流させるとともに、前記ガスを前記成形型の内部における前記分岐管部に対応する部分へ向けて流入させた後、溶融樹脂を固化させることを特徴とする。
【0013】
第3、4の発明によれば、パイプ本体と連通する分岐管部が機械加工を施すことなく、当該パイプ本体に一体成形される。
【0014】
また、パイプ本体と、該パイプ本体から径方向へ突出するブラケットとが一体成形された樹脂製パイプの製造方法において、前記樹脂製パイプを成形する成形型の内部に、前記パイプ本体の一端部に対応する部分から溶融樹脂を射出し、溶融樹脂を前記成形型の内部における前記パイプ本体の他端部に対応する部分へ向けて流動させるとともに、前記ブラケットに対応する部分へ向けて流動させる第1工程と、前記樹脂製パイプを成形する成形型の内部に、前記ブラケットに対応する部分から溶融樹脂を射出して前記第1工程で流動させた溶融樹脂と合流させる第2工程と、前記成形型の内部における前記パイプ本体の一端部に対応する部分からガスを圧送し、その後、溶融樹脂を固化させることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、第1工程で成形型の内部に射出された溶融樹脂は、パイプ本体の一端部に対応する部分から他端部に対応する部分へ向けて流動するとともに、ブラケットに対応する部分へ向けても流動する。また、第2工程で成形型の内部におけるブラケットに対応する部分に射出された溶融樹脂は、第1工程で射出された溶融樹脂と合流する。これにより、ブラケットが成形される。また、圧送されたガスは、成形型の内部においてパイプ本体の一端部に対応する部分から他端部に対応する部分へ向けて流動し、パイプ本体が成形される。したがって、パイプ本体から突出するブラケットが機械加工を施すことなく、当該パイプ本体に一体成形される。
【0016】
また、前記第1工程及び前記第2工程の後、前記ガスを圧送することを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、第1工程で射出された溶融樹脂と第2工程で射出された溶融樹脂とを合流させた後にガスが圧送されるので、パイプ本体の一端部から他端部まで連続してガスを通すことが可能になる。
【0018】
また、パイプ本体と、該パイプ本体から分岐する分岐管部とが一体成形された樹脂製パイプにおいて、前記分岐管部における前記パイプ本体との接続部分は、当該パイプ本体に近づくほど拡径するように形成されていることを特徴とする。
【0019】
すなわち、第1の発明によって樹脂製パイプを成形する場合、分岐管部をガスの流入によって成形できるので、分岐管部におけるパイプ本体との接続部分は、当該パイプ本体に近づくほど拡径するような形状にすることができる。
【0020】
また、パイプ本体と、該パイプ本体から径方向へ突出するブラケットとが一体成形された樹脂製パイプにおいて、前記ブラケットにおける前記パイプ本体との接続側の端部には、切欠部が形成されていることを特徴とする。
【0021】
すなわち、第3の発明によって樹脂製パイプを成形する場合、圧送されたガスが成形型の内部におけるブラケットに対応する部分へ流入しようとする。このとき、ブラケットにおけるパイプ本体との接続側の端部に切欠部を有する形状とすることで、ガスがブラケット側へ流入しにくくなり、ブラケットの強度が十分に確保される。
【発明の効果】
【0022】
第1の発明によれば、成形型の内部においてパイプ本体の一端部に対応する部分に溶融樹脂を射出するとともにガスを圧送し、さらに、成形型の内部において分岐管部に対応する部分に溶融樹脂を射出して前記溶融樹脂と合流させ、ガスを成形型の内部における分岐管部に対応する部分へ向けて流入させるようにしたので、機械加工を施すことなく、パイプ本体に分岐管部を一体成形することができる。
【0023】
第2の発明によれば、第1工程で成形型の内部に射出された溶融樹脂と、第2工程で成形型の内部に射出された溶融樹脂とを確実に合流させてパイプ本体を成形することができる。
【0024】
第3、4の発明によれば、機械加工を施すことなく、パイプ本体に分岐管部を一体成形することができる
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態1に係る樹脂製パイプの側面図である。
図2】実施形態1に係る樹脂製パイプの分岐管部が形成された部分の断面図である。
図3】実施形態1に係る成形型の断面図である。
図4】実施形態1に係る樹脂製パイプの成形要領を説明する図3相当図である。
図5】本発明の実施形態2に係る樹脂製パイプの側面図である。
図6】実施形態2に係る樹脂製パイプのブラケットの拡大図である。
図7図6のVII-VII線断面図である。
図8図6のVIII-VIII線断面図である。
図9】実施形態2に係る成形型の断面図である。
図10】実施形態2に係る樹脂製パイプの成形要領を説明する図9相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0027】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る樹脂製パイプ1を示すものである。樹脂製パイプ1は、パイプ本体2と、該パイプ本体2から分岐する分岐管部3とが一体成形されたものであり、例えば自動車の吸気系やブローバイガス導入系の配管部材や温水、冷却水等の配管部材として用いることが可能である。パイプ本体2の一端部には一端側接続管部2aが形成され、パイプ本体2の他端部には他端側接続管部2bが形成されている。一端側接続管部2a及び他端側接続管部2bには、それぞれ、別の配管部材が接続されるようになっている。
【0028】
パイプ本体2の一端側接続管部2aと他端側接続管部2bとの間には、第1湾曲部2c、第2湾曲部2d及び直管部2eが設けられている。第1湾曲部2cはパイプ本体2における一端側接続管部2a寄りの部分に設けられている。第2湾曲部2dはパイプ本体2における他端側接続管部2b寄りの部分に設けられている。直管部2eは、第1湾曲部2cと第2湾曲部2dとの間に設けられている。一端側接続管部2aと他端側接続管部2bとのいずれか一方または両方を省略してもよい。
【0029】
尚、パイプ本体2の形状は上述した形状に限られるものではなく、直管状のものであってもよいし、多数の湾曲部や直管部からなるものであってもよい。直管部の長さは湾曲部の曲率半径等も自由に設定することができる。また、パイプ本体2の長さや外径、内径も自由に設定することができる。また、パイプ本体2の断面形状は、例えば円形や楕円形等にすることができ、自由な形状にすることができる。
【0030】
分岐管部3は、パイプ本体2における長さ方向中央部よりも他端側接続管部2b寄りに位置しており、パイプ本体2から径方向に突出している。図2に示すように、分岐管部3の内部とパイプ本体2の内部とが連通している。この実施形態では、分岐管部3とパイプ本体2とのなす角度が略直角であるが、これに限られるものではなく、90°未満であってもよいし、90°を超えていてもよい。分岐管部3の外径は、パイプ本体2の外径と同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、分岐管部3の長さは、パイプ本体2の長さよりも大幅に短く設定されているが、逆に長くてもよい。分岐管部3の位置は、図示した位置に限られるものではなく、自由に設定することができる。分岐管部3は、直管形状であってもよいし、湾曲した形状であってもよい。
【0031】
図2に示すように、分岐管部3におけるパイプ本体2との接続部分3aは、当該パイプ本体2に近づくほど拡径するように形成されている。すなわち、分岐管部3の接続部分3aの内径は、パイプ本体2に近づくほど大きくなっており、これにより、分岐管部3の接続部分3aの内周面は湾曲した面で構成されることになる。分岐管部3の接続部分3aの内周面の形状は、後述するガスの流入時に形成されるものである。
【0032】
次に、図3に基づいて実施形態1の成形装置10について説明する。成形装置10は、溶融状態の樹脂を射出する射出機(図示せず)と、成形型11と、ガス供給機(図示せず)と、制御装置(図示せず)とを備えている。射出機は、樹脂を混練して加熱し、溶融状態とするとともに一定量を所定速度で射出する射出シリンダを備えている。ガス供給機は、溶融状態の樹脂内を流動可能な高圧ガス(例えば空気等)を圧送するための装置である。射出機及びガス供給機は、制御装置に接続されている。射出機は制御装置によって制御され、溶融樹脂の射出開始、射出終了、射出時の流量等がコントロールされる。また、ガス供給機も制御装置によって制御され、ガスの圧送開始、終了、圧送時の流量等がコントロールされる。
【0033】
成形型11は、例えば固定型及び可動型と、可動型を固定型に対して接離する方向に駆動する型駆動装置等を有している。型駆動装置によって可動型を駆動することにより、成形型11を型締め状態と、型開き状態とに切り替えることができる。成形型11の内部には、樹脂製パイプ1の外面を成形するための成形面12と、第1キャビティ13と、第2キャビティ14と、下流側キャビティ15と、ノズル16と、第1ランナ17及び第2ランナ18とが設けられている。樹脂製パイプ1を成形するための空間Rが成形面12によって成形型11の内部に区画形成されている。空間Rは、パイプ本体2を形成する第1空間R1と、分岐管部3を形成する第2空間R2とで構成されており、第1空間R1と第2空間R2とは互いに連通している。
【0034】
第1キャビティ13は、第1空間R1におけるパイプ本体2の一端部に対応する部分に連通しており、パイプ本体2の一端部の管軸方向に延びている。また、第2キャビティ14は、第2空間R2における分岐管部3の一端部に対応する部分に連通しており、分岐管部3の管軸方向に延びている。また、下流側キャビティ15は、第1空間R1におけるパイプ本体2の他端部に対応する部分に連通しており、パイプ本体2の他端部の管軸方向に延びている。この下流側キャビティ15は、空間Rを流動してきた溶融樹脂を受けて捨てるための捨てキャビティである。
【0035】
ノズル16には、射出機の射出シリンダが接続されており、射出シリンダから射出された溶融樹脂はノズル16に流入する。第1ランナ17は、ノズル16から第1キャビティ13まで延びる樹脂通路である。第2ランナ18は、ノズル16から第2キャビティ14まで延びる樹脂通路である。第2ランナ18には、開閉弁や絞り部材を設けることができる。これにより、第2キャビティ14に溶融樹脂を供給するタイミングをコントロールすることができ、例えば、第1キャビティ13に溶融樹脂を供給するタイミングと、第2キャビティ14に溶融樹脂を供給するタイミングとを同じにしたり、第2キャビティ14に溶融樹脂を供給するタイミングを、第1キャビティ13に溶融樹脂を供給するタイミングよりも遅くすることができる。
【0036】
また、成形型11には、ガス供給管19が設けられている。ガス供給管19の下流端は、第1キャビティ13の上流端に接続されている。ガス供給管19の上流端には、ガス供給機が接続されている。
【0037】
次に、実施形態1の成形装置10を用いて樹脂製パイプ1を製造する製造方法について説明する。まず、成形型11を型閉じ状態にする。その後、射出機の射出シリンダから溶融樹脂を射出する。射出された溶融樹脂はノズル16に流入した後、第1ランナ17を流通して第1キャビティ13に到達する。第1キャビティ13に到達した溶融樹脂は、成形型11の内部である第1空間R1におけるパイプ本体2の一端部に対応する部分から射出される。射出する樹脂の量は、パイプ本体2の第1湾曲部2cを超えて直管部2eにさしかかる程度の量とする。すなわち、図3における線L1~線L2の間に溶融樹脂が充填される量である。これが、第1溶融樹脂射出工程、つまり第1工程である。
【0038】
また、ノズル16に流入した溶融樹脂は、第2ランナ18を流通して第2キャビティ14に到達する。第2キャビティ14に到達した溶融樹脂は、第2空間R2における分岐管部3の先端部に対応する部分から射出される。第2空間R2に射出された溶融樹脂は、第2空間R2を流通して第1空間R1におけるパイプ本体2の上流側は線L3付近まで充填され、また、下流側は線L4付近まで充填される。これが第2溶融樹脂射出工程である。以上が実施形態1の第2工程である。第2工程は、第1工程の溶融樹脂射出と同じタイミングで行ってもよいし、第1工程の溶融樹脂射出が完了した後に行ってもよい。また、第1工程での溶融樹脂の射出開始から所定時間経過後に、第2工程で溶融樹脂の射出を開始することもできる。これにより、第1工程で成形型11の内部に射出された溶融樹脂を、パイプ本体2の一端部に対応する部分から他端部に対応する部分へ向けて十分に流動させてから、第2工程で射出された溶融樹脂に合流させることができる。
【0039】
第1工程で射出する溶融樹脂の量は、第1空間R1におけるパイプ本体2の直管部2eに対応する部分に達する量とする。すなわち、図4における線L3に達する量である。この量の溶融樹脂を射出した後、射出を停止する。
【0040】
溶融樹脂の射出を停止した後、ガス供給機からガスを供給する。供給されたガスはガス供給管19を流通して第1キャビティ13に流入した後、第1空間R1におけるパイプ本体2の一端部に対応する部分に圧送される。第1空間R1に充填された溶融樹脂のうち、成形面12に接触している部分は固化が始まっているので、ガスは径方向中心部近傍に中空部を形成しながら、第1空間R1におけるパイプ本体2の他端部に対応する部分へ向けて流れる。このようなガスの流れによって溶融樹脂が第1空間R1におけるパイプ本体2の他端部に対応する部分へ向けて中空部が形成されながら流動する。以上が実施形態1の第3工程である。
【0041】
上記ガスの供給は、第1工程で行ってもよく、例えば第1工程で溶融樹脂を射出した後、ガスをパイプ本体2の他端部に対応する部分へ向けて圧送することで、第1工程で射出された溶融樹脂をパイプ本体2の他端部に対応する部分へ向けて流動させることができる。その後、分岐管部3の先端部に対応する部分から溶融樹脂を射出すればよい。この方法によっても第1ランナ17を通って射出された溶融樹脂と、第2ランナ18を通って射出された溶融樹脂とを合流させることができる。
【0042】
第1工程で流動させた溶融樹脂と、第2工程で流動させた溶融樹脂とは、成形型11の内部、即ち第1空間R1におけるパイプ本体2の中間部に対応する線L3付近で合流する。このとき、ガスがパイプ本体2の他端側へ向かう方向へ流通していくので、このガスの流れにより、上流側から下流側まで連続した中空部分が形成される。余った溶融樹脂はガスの流れによって下流側キャビティ15に流入して固化する。
【0043】
また、第2空間R2近傍まで流通したガスは、その圧力により、成形型11の内部における分岐管部3に対応する部分、即ち第2空間R2に流入することにより中空部が形成される。これは、第2空間R2内の溶融樹脂や第2キャビティ14内の溶融樹脂に空気等が含まれているためであり、高圧のガスによって空気等が圧縮されることにより、ガスが第2空間R2に流入する。その後、溶融樹脂を固化させることにより、分岐管部3が機械加工を施すことなく、パイプ本体2に一体成形される。
【0044】
脱型後、パイプ本体2の両端部及び分岐管端部(線L1、線L4、線L5で示す)をカットすることで、分岐管部3がパイプ本体2に一体成形された樹脂製パイプ1を得ることができる。
【0045】
(実施形態1の作用効果)
以上説明したように、この実施形態1によれば、成形型11の内部においてパイプ本体2の一端部に対応する部分に溶融樹脂を射出するとともにガスを圧送し、さらに、成形型11の内部において分岐管部3に対応する部分に溶融樹脂を射出して前記溶融樹脂と合流させ、ガスを成形型11の内部における分岐管部3に対応する部分へ向けて流入させるようにしたので、機械加工を施すことなく、パイプ本体2に連通する分岐管部3を一体成形することができる。
【0046】
(実施形態2)
図5図8は、本発明の実施形態2に係る樹脂製パイプ30を示すものである。この実施形態2は、分岐管部が省略されてパイプ本体32にブラケット40が設けられている点で実施形態1と異なっている。以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0047】
実施形態2の樹脂製パイプ30は、実施形態1の樹脂製パイプ1と同様に構成されたパイプ本体32を備えている。パイプ本体32には、実施形態1と同様に、一端側接続管部32a、他端側接続管部32b、第1湾曲部32c、第2湾曲部32d及び直管部32eが設けられているが、これらは必要に応じて設ければよい。ブラケット40は、樹脂製パイプ1を車体等に固定したり、取り付ける際に使用され、また、樹脂製パイプ1に何らかの部材を取り付ける際にもブラケット40を使用することができる。
【0048】
ブラケット40は、パイプ本体32から径方向へ突出するとともに、当該パイプ本体32に一体成形されており、したがってパイプ本体32と同じ樹脂材で構成されている。図6図8に示すように、ブラケット40は、パイプ本体32の外周面から径方向へ突出する板部41を有している。板部41には、複数の横リブ43が形成されている。また、板部41には、締結部材等が挿通する貫通孔42aが環状締結部42に形成されている。板部41における環状締結部42の周囲には、放射状に延びる放射リブ44が形成されている。さらに、板部41の周縁部には、周縁リブ45が形成されている。
【0049】
図7等に示すように、ブラケット40の横リブ43におけるパイプ本体32との接続側の端部には、切欠部43aが形成されている。また、図6に示すように、放射リブ44におけるパイプ本体32との接続側の端部にも、切欠部44aが形成されている。さらに、周縁リブ45におけるパイプ本体32との接続側の端部にも、切欠部45aが形成されている。
尚、板部41とパイプ本体32の外周面との接合部に板厚を薄くするように切欠部41aを設けてもよい。
【0050】
次に、図9に基づいて実施形態2の成形装置100について説明する。成形装置100は、実施形態1と同様な射出機(図示せず)と、ガス供給機(図示せず)と、制御装置(図示せず)とを備えており、さらに実施形態1とは異なる構造の成形型111も備えている。
【0051】
成形型111は、例えば固定型及び可動型と、可動型を固定型に対して接離する方向に駆動する型駆動装置等を有している。型駆動装置によって可動型を駆動することにより、成形型111を型締め状態と、型開き状態とに切り替えることができる。成形型111の内部には、樹脂製パイプ30の外面を成形するための成形面112と、第1キャビティ113と、下流側キャビティ115と、ノズル116と、第1ランナ117及び第2ランナ118とが設けられている。樹脂製パイプ30を成形するための空間Tが成形面112によって成形型111の内部に区画形成されている。空間Tは、パイプ本体32を形成する第1空間T1と、ブラケット40を形成する第2空間T2とで構成されている。第1空間T1と第2空間T2とは連通している。
【0052】
第1キャビティ113は、第1空間T1におけるパイプ本体32の一端部に対応する部分に連通しており、パイプ本体32の一端部の管軸方向に延びている。また、下流側キャビティ115は、第1空間T1におけるパイプ本体32の他端部に対応する部分に連通しており、パイプ本体32の他端部の管軸方向に延びている。この下流側キャビティ115は、空間Tを流動してきた溶融樹脂を受けて捨てるための捨てキャビティである。
【0053】
ノズル116には、射出機の射出シリンダが接続されており、射出シリンダから射出された溶融樹脂はノズル116に流入する。第1ランナ117は、ノズル116から第1キャビティ113まで延びる樹脂通路である。第2ランナ118は、ノズル16から第2空間T2まで延びる樹脂通路である。第2ランナ118には、開閉弁や絞り部材を設けることができる。これにより、第2空間T2に溶融樹脂を供給するタイミングをコントロールすることができる。
【0054】
また、成形型111には、ガス供給管119が設けられている。ガス供給管119の下流端は、第1キャビティ113の上流端に接続されている。ガス供給管119の上流端には、ガス供給機が接続されている。
【0055】
次に、実施形態2の成形装置100を用いて樹脂製パイプ30を製造する製造方法について説明する。まず、成形型111を型閉じ状態にする。その後、射出機の射出シリンダから溶融樹脂を射出する。射出された溶融樹脂はノズル116に流入した後、第1ランナ117を流通して第1キャビティ113に到達する。第1キャビティ113に到達した溶融樹脂は、成形型111の内部である第1空間T1におけるパイプ本体32の一端部に対応する部分から射出される。射出する樹脂の量は、パイプ本体32の中間部に対応する線L7に達する程度の量とする。この溶融樹脂は、成形型111の内部におけるパイプ本体32の他端部に対応する部分へ向けて流動するとともに、ブラケット40に対応する部分、即ち第2空間T2へ向けて流動する。これが実施形態2の第1溶融樹脂射出工程である。以上が第1工程である。
【0056】
また、ノズル116に流入した溶融樹脂は、第2ランナ118を流通して第2空間T2におけるブラケット40に対応する部分から射出される。第2空間T2に射出された溶融樹脂は、第2空間T2を流通して第1空間R1におけるパイプ本体2の中間部に対応する部分へ向けて流動する。これが、実施形態2の第2溶融樹脂射出工程である。以上が実施形態2の第2工程である。
【0057】
溶融樹脂の射出を停止した後、ガス供給機からガスを供給する。供給されたガスはガス供給管119を流通して第1キャビティ113に流入した後、第1空間T1におけるパイプ本体32の一端部に対応する部分に圧送される。溶融樹脂のうち、成形面112に接触している部分は固化が始まっているので、ガスは径方向中心部近傍を、第1空間T1におけるパイプ本体32の他端部に対応する部分へ向けて流れる。このようなガスの流れによって溶融樹脂が第1空間T1におけるパイプ本体32の他端部に対応する部分へ向けて流動しやすくなる。余った溶融樹脂はガスの流れによって下流側キャビティ115に流入して固化する。
【0058】
ガスは第2空間T2へ向けて流れ難くなっている。すなわち、成形型111には、図6に示すような切欠部43a、44a、45aを形成するための形状が設定されており、切欠部43a、44a、45aを形成するということは、成形面112が凸部を有しているということであるため、凸部によって流路が絞られることになり、第2空間T2へ向けてガスの流入を防止することができる。
【0059】
その後、溶融樹脂を固化させて脱型した後、パイプ本体32の両端部をカットすることで、ブラケット40がパイプ本体32に一体成形された樹脂製パイプ30を得ることができる。
【0060】
(実施形態2の作用効果)
以上説明したように、この実施形態2によれば、第1工程で成形型111の内部に射出された溶融樹脂は、パイプ本体32の一端部に対応する部分から他端部に対応する部分へ向けて流動するとともに、ブラケット40に対応する部分へ向けても流動する。また、第2工程で成形型111の内部におけるブラケット40に対応する部分に射出された溶融樹脂は、第1工程で射出された溶融樹脂と合流する。これにより、ブラケット40が成形される。また、圧送されたガスは、成形型111の内部においてパイプ本体32の一端部に対応する部分から他端部に対応する部分へ向けて流動し、パイプ本体32が成形される。したがって、パイプ本体32から突出するブラケット40が機械加工を施すことなく、当該パイプ本体32に一体成形される。
【0061】
また、樹脂製パイプ30を成形する場合、圧送されたガスが成形型111の内部におけるブラケット40に対応する部分へ流入することはない。このとき、ブラケット40におけるパイプ本体32との接続側の端部に切欠部43a、44a、45aを有する形状とすることで、ガスがブラケット40側へ流入しない構造であるため、ブラケット40の強度が十分に確保される。
【0062】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。例えば、実施形態1の樹脂製パイプ1の分岐管部から溶融樹脂を注入するランナー部分からガスを圧入することもできる。また、分岐管部はパイプ本体部の上流側や任意の場所に設けることもできる。ランナは、分岐管部の部分を含めて複数の場所に設けることも可能である。実施形態1の樹脂製パイプ1に実施形態2のブラケット40を設けることもできる。ブラケットは複数設けることができる。また、実施形態2の樹脂製パイプ30に実施形態1の分岐管部3を設けることもできる。分岐管部は複数設けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上説明したように、本発明は、例えば自動車の配管部品として利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 樹脂製パイプ
2 パイプ本体
3 分岐管部
11 成形型
30 樹脂製パイプ
32 パイプ本体
40 ブラケット
43a、44a、45a 切欠部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10