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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/8234 20060101AFI20231127BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20231127BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20231127BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20231127BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20231127BHJP
   H01L 21/82 20060101ALI20231127BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20231127BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
H01L27/088 D
H01L21/28 301S
H01L27/04 P
H01L21/82 F
H01L27/06 102A
H01L21/90 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019180406
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021057484
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉野 英生
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-071927(JP,A)
【文献】特開2013-145785(JP,A)
【文献】特開2014-212309(JP,A)
【文献】特開2015-043444(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0020148(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/088
H01L 27/04
H01L 27/06
H01L 21/8234
H01L 21/28
H01L 21/822
H01L 21/82
H01L 21/768
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の第1の面に設けられ、第1の金属シリサイド膜が上部に形成された第1の電極部を有する第1の半導体素子と、
前記第1の面より高い位置の第2の面に設けられ、第2の金属シリサイド膜及び前記第2の金属シリサイド膜上の一部を覆う水素供給膜が上部に形成された第2の電極部を有する第2の半導体素子と、
前記第1の半導体素子及び前記第2の半導体素子上に設けられた層間絶縁膜と、
前記第1の電極上の前記層間絶縁膜を貫通し前記第1の金属シリサイド膜に接するように形成された第1のコンタクトホールと、
前記第2の電極上の前記層間絶縁膜及び前記水素供給膜を貫通し前記第2の金属シリサイド膜に接するように形成された第2のコンタクトホールと、
前記第1のコンタクトホール及び前記第2のコンタクトホールに埋め込まれた金属配線と、
を有し、
前記第2の半導体素子は、低濃度不純物領域及び高濃度不純物領域を有する多結晶シリコン膜で形成されている抵抗素子であり、前記水素供給膜は、前記低濃度不純物領域から離間した位置に配されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第2の半導体素子の上方の近傍に設けられている金属膜を更に有する請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記低濃度不純物領域上に水素遮断膜を更に有する請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
基板上の第1の面において、上部に第1の金属シリサイド膜が形成された第1の電極部を有する第1の半導体素子を形成する第1の半導体素子形成工程と、
第1の面より高い位置の第2の面において、低濃度不純物領域及び高濃度不純物領域を有する多結晶シリコン膜で抵抗素子を形成し、前記高濃度不純物領域の上部に第2の金属シリサイド膜及び前記低濃度不純物領域から離間した位置に水素供給膜が順次形成された第2の電極部を有する第2の半導体素子を形成する第2の半導体素子形成工程と、
前記第1の半導体素子及び前記第2の半導体素子上に層間絶縁膜を形成する層間絶縁膜形成工程と、
前記第1の電極部上の前記層間絶縁膜を貫通し前記第1の金属シリサイド膜に接するように第1のコンタクトホールを形成する第1のコンタクトホール形成工程と、
前記第2の電極部上の前記層間絶縁膜及び前記水素供給膜を貫通し前記第2の金属シリサイド膜に接するように第2のコンタクトホールを形成する第2のコンタクトホール形成工程と、
前記第1のコンタクトホール及び前記第2のコンタクトホールに金属配線を埋め込む金属配線埋め込み工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンなどの半導体基板上に微細な素子が形成される半導体装置においては、MISFET(Metal-Insulator-Semiconductor Field-Effect Transistor)やMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)などの半導体素子とともに、抵抗やヒューズなどの半導体素子が形成されるものがある。
【0003】
例えば、MISFETと抵抗素子とを同一の半導体基板に形成するために、各素子を電気的に分離させる目的で、半導体基板上面を部分的に酸化させて膜厚を厚くさせた酸化膜(LOCOS:LOCal Oxidation of Silicon)が形成されている半導体装置について考える。この半導体装置において、MISFETが膜厚の薄い部分(アクティブ領域)に形成され、抵抗素子が膜厚の厚い部分(フィールド領域)に形成された場合、各素子の上面を覆うように形成された絶縁層の上面からコンタクトホールをそれぞれ形成しようとすると、抵抗素子のコンタクトホールが浅くなる一方、MISFETのコンタクトホールが深くなる。深さが異なるコンタクトホールを同じエッチング処理により一括で形成しようとすると、コンタクトホールが浅い抵抗素子がオーバーエッチングされて貫通してしまう。このため、コンタクトホールに充填される金属部材との接触面積が小さくなり、導通不良により品質が低下する場合がある。
このような場合において、エッチングストッパ用絶縁膜としてシリコン窒化膜を用いる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-165236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、コンタクトホールによる導通経路の抵抗値を低減でき、かつ経時的な水素による不具合の発生を抑制することができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段としての本発明の半導体装置は、
基板上の第1の面に設けられ、第1の金属シリサイド膜が上部に形成された第1の電極部を有する第1の半導体素子と、
前記第1の面より高い位置の第2の面に設けられ、第2の金属シリサイド膜及び前記第2の金属シリサイド膜上の一部を覆う水素供給膜が上部に形成された第2の電極部を有する第2の半導体素子と、
前記第1の半導体素子及び前記第2の半導体素子上に設けられた層間絶縁膜と、
前記第1の電極上の前記層間絶縁膜を貫通し前記第1の金属シリサイド膜に接するように形成された第1のコンタクトホールと、
前記第2の電極上の前記層間絶縁膜及び前記水素供給膜を貫通し前記第2の金属シリサイド膜に接するように形成された第2のコンタクトホールと、
前記第1のコンタクトホール及び前記第2のコンタクトホールに埋め込まれた金属配線と、
を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、コンタクトホールによる導通経路の抵抗値を低減でき、かつ経時的な水素による不具合の発生を抑制することができる半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の第1の実施形態における半導体装置の断面を示す模式図である。
図2A図2Aは、本発明の第1の実施形態における半導体装置を製造する一連の工程フローを説明するための模式図である。
図2B図2Bは、本発明の第1の実施形態における半導体装置を製造する一連の工程フローを説明するための模式図である。
図2C図2Cは、本発明の第1の実施形態における半導体装置を製造する一連の工程フローを説明するための模式図である。
図2D図2Dは、本発明の第1の実施形態における半導体装置を製造する一連の工程フローを説明するための模式図である。
図2E図2Eは、本発明の第1の実施形態における半導体装置を製造する一連の工程フローを説明するための模式図である。
図2F図2Fは、本発明の第1の実施形態における半導体装置を製造する一連の工程フローを説明するための模式図である。
図2G図2Gは、本発明の第1の実施形態における半導体装置を製造する一連の工程フローを説明するための模式図である。
図3図3は、本発明の第2の実施形態における半導体装置の断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の半導体装置は、基板上の第1の面に設けられ、第1の金属シリサイド膜が上部に形成された第1の電極部を有する第1の半導体素子と、第1の面より高い位置の第2の面に設けられ、第2の金属シリサイド膜及び第2の金属シリサイド膜上の一部を覆う水素供給膜が上部に形成された第2の電極部を有する第2の半導体素子と、第1の半導体素子及び第2の半導体素子上に設けられた層間絶縁膜と、第1の電極上の層間絶縁膜を貫通し第1の金属シリサイド膜に接するように形成された第1のコンタクトホールと、第2の電極上の層間絶縁膜及び水素供給膜を貫通し第2の金属シリサイド膜に接するように形成された第2のコンタクトホールと、第1のコンタクトホール及び第2のコンタクトホールに埋め込まれた金属配線と、を有する。
本発明の半導体装置は、以下の知見に基づくものである。
【0010】
本発明の半導体装置のように、第1の半導体素子が設けられている第1の面と、第2の半導体素子が設けられている第2の面とは高さが異なり、第1のコンタクトホールよりも第2のコンタクトホールのほうが浅くなる場合がある。このような場合においては、特許文献1に記載の技術と同様に、本発明の半導体装置では、深さが異なるコンタクトホールを同じエッチング処理により一括で形成しても、第2の電極上に存在する水素供給膜がエッチングストッパとして機能するため、第2の半導体素子がオーバーエッチングされて貫通することなく第2のコンタクトホールを形成することができる。
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、コンタクトホールによる金属配線と半導体素子の電極部との接合箇所において、金属配線をシリコンからなる電極部と直接接触させると抵抗値が高くなる場合がある。また、特許文献1には、エッチングストッパとしてのシリコン窒化膜(水素供給膜)を減圧CVDで形成することが記載されているが、減圧CVDでは700℃程度の高温にする必要があるため、金属膜上や合金膜上にシリコン窒化膜を形成できない場合がある。また、減圧CVDにより形成されたシリコン窒化膜は、結晶性が良いため、外部からの透過性が少なく水素処理が必要であることから、工程が増えてしまうという問題があった。
【0012】
そこで、金属配線と電極部との接合箇所の抵抗値を低減するために、本発明の半導体装置は、電極部の上部に低抵抗の金属シリサイド膜が形成されている。また、コンタクトホールの下面が金属シリサイド膜内に位置するように形成すると、コンタクトホールに埋め込まれた金属配線の下面(底面)が低抵抗の金属シリサイド膜内で接するため、金属配線と電極部との接合箇所の抵抗値を更に低減することができる。
さらに、本発明の半導体装置における水素供給膜は、第2の半導体素子全体を覆うものでなく、エッチングストッパとして第2の金属シリサイド膜上の一部のみを覆うものとして体積や面積を小さくしている。これにより、本発明の半導体装置は、水素供給膜から経時的に放出される水素の量を低減でき、水素による不具合の発生を抑制することができる。加えて、この水素供給膜は、体積や面積が小さいため、残留応力による不具合の発生を抑制することもできる。
このように、本発明の半導体装置は、コンタクトホールによる導通経路の抵抗値を低減でき、かつ経時的な水素による不具合の発生を抑制することができる。
【0013】
本発明の半導体装置の一例としては、第2の半導体素子の上方の近傍に設けられている金属膜を更に有することが好ましい。
この好ましい態様では、例えば、水素や水分を通しにくい金属膜が第2の半導体素子の上方の近傍に設けられていることにより、水素や水分による不具合の発生を抑制することができる。
【0014】
本発明の半導体装置の他の一例としては、第2の半導体素子は、低濃度不純物領域及び高濃度不純物領域を有する多結晶シリコン膜で形成されている抵抗素子であり、水素供給膜は、低濃度不純物領域から離間した位置に配されていることが好ましい。
この好ましい態様では、抵抗素子の抵抗体としての低濃度不純物領域と、水素供給膜とが離間した位置に配されていることにより、水素供給膜から放出される水素の影響を抵抗体が受けにくくなるため、経時的な抵抗値の変化を低減できる。
【0015】
本発明の半導体装置の他の一例としては、低濃度不純物領域上に水素遮断膜を更に有することが好ましい。
この好ましい態様では、抵抗素子の抵抗体である低濃度不純物領域の上に、水素を遮断できる水素遮断膜を設けることにより、水素の影響を抵抗体が受けにくくして、経時的な抵抗値の変化を低減できる。
【0016】
本発明の半導体装置の製造方法は、基板上の第1の面において、上部に第1の金属シリサイド膜が形成された第1の電極部を有する第1の半導体素子を形成する第1の半導体素子形成工程と、第1の面より高い位置の第2の面において、上部に第2の金属シリサイド膜及び第2の金属シリサイド膜上の一部を覆う水素供給膜が形成された第2の電極部を有する第2の半導体素子を形成する第2の半導体素子形成工程と、第1の半導体素子及び第2の半導体素子上に層間絶縁膜を形成する層間絶縁膜形成工程と、第1の電極上の層間絶縁膜を貫通し第1の金属シリサイド膜に接するように第1のコンタクトホールを形成する第1のコンタクトホール形成工程と、第2の電極上の層間絶縁膜及び水素供給膜を貫通し第2の金属シリサイド膜に接するように第2のコンタクトホールを形成する第2のコンタクトホール形成工程と、第1のコンタクトホール及び第2のコンタクトホールに金属配線を埋め込む金属配線埋め込み工程と、を含む。
【0017】
本発明の半導体装置の製造方法は、上述の半導体装置を製造する方法であることから、コンタクトホールによる導通経路の抵抗値を低減でき、かつ経時的な水素による不具合の発生を抑制することができる半導体装置を製造することができる。
【0018】
次に、本発明の半導体装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、下記において、複数の膜やこれらを構造的に組み合わせて得られる半導体素子の数、位置、形状、構造、大きさなどは、以下に示す実施形態に限定されず、本発明を実施する上で好ましい数、位置、形状、構造、大きさなどにすることができる。
また、図面は模式的なものであり、膜厚と平面寸法との関係、各膜厚の比率などは図面で示したとおりではないことに留意すべきである。
【0019】
[第1の実施形態]
(半導体装置)
図1は、第1の実施形態における本発明の半導体装置の断面を示す模式図である。
図1に示すように、本実施形態の半導体装置100は、基板1と、分離用酸化膜2と、ゲート酸化膜3と、ソース・ドレイン領域4と、ゲート電極5と、多結晶シリコン膜6と、シリコン窒化膜7と、シリサイドブロック膜8と、燐及びホウ素を添加したシリコン酸化膜(以下、「BPSG膜」と称する)9と、第1のコンタクトホール10と、第2のコンタクトホール11と、金属配線12と、パッシベーション膜13と、を有する。これらを構造的に組み合わせることにより、半導体装置100には、絶縁ゲート電界効果型トランジスタであるMISFET110、及び抵抗素子120が設けられている。
【0020】
基板1は、ウエハ状のP型シリコン半導体基板である。
なお、本実施形態では、基板1としてウエハ状のP型シリコン半導体基板としたが、これに限ることなく、基板1の形状、構造、大きさ及び材質は、目的に応じて適宜選択することができる。
ここで、基板1において、半導体製造プロセスを用いて他の膜や層が積層される側の面を「上面」と称し、上面に対向する側の面を「下面」と称する。
【0021】
分離用酸化膜2は、基板1上に形成されているLOCOS(LOCal Oxidation of Silicon)である。分離用酸化膜2には、抵抗素子120が設けられている。
ここでは、MISFET110が設けられている面(アクティブ領域)を「第1の面S1」と称する。また、抵抗素子120が設けられている面、すなわち分離用酸化膜2の膜厚が厚い面(フィールド領域)を「第2の面S2」と称する。
なお、分離用酸化膜2の変化前後の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0022】
第1の半導体素子としてのMISFET110は、第1の面S1に設けられ、ゲート酸化膜3と、ソース・ドレイン領域4と、ゲート電極5と、を有する。これらのうち、ソース・ドレイン領域4及びゲート電極5は、第1の電極部に該当する。
【0023】
ゲート酸化膜3は、シリコン酸化膜で形成されている。
なお、ゲート酸化膜3の形状、構造、大きさ、及び材質は、目的に応じて適宜選択することができるが、サリサイドブロックが形成された構造が好ましい
【0024】
ソース・ドレイン領域4は、不純物の注入により形成されている。また、ソース・ドレイン領域4には、第1の金属シリサイド膜としての、コバルト又はチタン等の合金膜4aが上部に形成されている。
なお、ソース・ドレイン領域4の形状、構造、大きさ、並びに、不純物の種類及び濃度は、目的に応じて適宜選択することができる。
また、本実施形態では、第1及び第2の金属シリサイド膜をコバルト又はチタン等の合金膜としたが、これに限ることなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、モリブデン、コバルト、チタン、ニッケルなどの合金が挙げられる。合金としては、例えば、WSi、CoSi、TiSi、NiSiなどが挙げられる。
【0025】
ゲート電極5は、多結晶シリコン膜で形成され、不純物が注入されている。また、ゲート電極5には、第1の金属シリサイド膜としての、コバルト又はチタン等の合金膜5aが上部に形成されている。
なお、ゲート電極5の形状、構造、大きさ、材質、並びに、不純物の種類及び濃度は、目的に応じて適宜選択することができる。
【0026】
MISFET110の上面には、層間絶縁膜としてのBPSG膜9が形成されている。このBPSG膜9には、シリコン窒化膜7まで貫通するように第1のコンタクトホール10がそれぞれ設けられている。第1のコンタクトホール10に金属配線12(タングステン)が埋め込まれていることで、ソース・ドレイン領域4及びゲート電極5の導通経路が形成されている。
なお、本実施形態では、層間絶縁膜をBPSG膜9としたが、これに限ることはない。
【0027】
ソース・ドレイン領域4及びゲート電極5には、第1のコンタクトホール10の下面が合金膜4a内及び合金膜5a内に位置するようにそれぞれ形成されている。このため、第1のコンタクトホール10に埋め込まれた金属配線12の下面が低抵抗の合金膜4a内及び合金膜5a内でそれぞれ接することから、金属配線12とMISFET110の第1の電極部との接合箇所の抵抗値を低減することができる。
【0028】
第2の半導体素子としての抵抗素子120は、第1の面S1より高い位置の第2の面S2に設けられ、多結晶シリコン膜6で形成されている。多結晶シリコン膜6は、低濃度不純物領域6aと、その両端に第2の電極部としての高濃度不純物領域6bと、を有する。
なお、本実施形態では、抵抗素子120を多結晶シリコン膜6で形成したが、これに限ることはなく、例えば、CrSiO、CrSiN、TiNなどとしてもよい。
【0029】
抵抗体としての低濃度不純物領域6aは、不純物濃度及びサイズにより所望の抵抗値に調整される。
電極としての高濃度不純物領域6bには、高濃度不純物領域6bよりも低抵抗であり、第2の金属シリサイド膜としてのコバルト又はチタン等の合金膜6cが上面に形成されている。
【0030】
水素供給膜としてのシリコン窒化膜7は、この合金膜6c上の一部を覆うように形成されている。このシリコン窒化膜7は、抵抗素子120全体を覆うものでなく、合金膜6c上の一部のみを覆うものであることから、残留応力が隣接する膜の残留応力と大きく異なっていても、その体積や面積が小さいため、残留応力による不具合の発生を抑制することができる。また、シリコン窒化膜7がプラズマにより形成され、水素を包含しやすいものである場合には、シリコン窒化膜7は、合金膜6c上の一部を覆うだけで体積が小さいため、シリコン窒化膜7から経時的に放出される水素の量を低減でき、水素による不具合の発生を抑制することができる。
【0031】
また、シリコン窒化膜7は、低濃度不純物領域6aから離間した位置に配されている。これにより、シリコン窒化膜7から放出される水素の影響を低濃度不純物領域6aが受けにくくなるため、経時的な抵抗値の変化を低減できる。
なお、低濃度不純物領域6aとシリコン窒化膜7との間隔は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm以上3μm以下が好ましい。
【0032】
本実施形態では、水素供給膜をシリコン窒化膜7としたが、水素を包含しやすく、かつ層間絶縁膜の材質よりもエッチングレートが低い材質であれば、これに限ることなく、例えば、金属酸化物、金属窒化物、炭素化合物などとしてもよい。
【0033】
シリサイドブロック膜8は、抵抗体である低濃度不純物領域6aが上面全面に低抵抗の合金膜6cに覆われることで抵抗体としての機能を阻害しないように形成されている。
また、水素遮断膜としてのシリサイドブロック膜8は、低濃度不純物領域6aの上面全面と、高濃度不純物領域6bの上面の一部とに形成されており、製造時の水素アニールや経時でシリコン窒化膜7から放出される水素により、低濃度不純物領域6aが影響を受けにくいようにしている。
さらに、シリサイドブロック膜8は、シリコン窒化膜7と接触しないように、TEOS(テトラエトキシシラン)で形成されている。これにより、抵抗体である低濃度不純物領域6aがシリサイドブロック膜8を介してシリコン窒化膜7の残留応力の影響を受けにくくなるため、抵抗値が変化することを抑制することができる。
【0034】
抵抗素子120の上面には、MISFET110の上面と同様に、BPSG膜9が形成されている。このBPSG膜9には、シリコン窒化膜7まで貫通するように第2のコンタクトホール11がそれぞれ設けられている。第2のコンタクトホール11に金属配線12が埋め込まれていることで、抵抗素子120の導通経路が形成されている。
第2のコンタクトホール11の下面は、合金膜6c内に位置するようにそれぞれ形成されている。このため、第2のコンタクトホール11に埋め込まれた金属配線12の下面が低抵抗の合金膜6c内でそれぞれ接することから、金属配線12と抵抗素子120の第2の電極部との接合箇所の抵抗値を低減することができる。
【0035】
なお、本実施形態では、金属配線12の材質をタングステンとしたが、これに限ることなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0036】
半導体装置100の最上面には、保護膜としてのパッシベーション膜13が設けられている。
パッシベーション膜13の形状、構造、大きさ及び材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0037】
なお、本実施形態における半導体装置100に加えて、抵抗素子120の上方の近傍に水素や水分を通しにくい金属膜を更に有するようにしてもよい。このような金属膜を有する半導体装置100は、水素や水分による不具合の発生を抑制することができる。
金属膜の形状、構造、大きさ及び材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0038】
(半導体装置の製造方法)
次に、第1の実施形態における半導体装置100の製造方法について、図2A図2Gで示す第1の実施形態における半導体装置を製造する一連の工程フローを説明するための模式図を参照しながら説明する。
【0039】
本発明の半導体装置の製造方法は、第1の半導体素子形成工程と、第2の半導体素子形成工程と、第1のコンタクトホール形成工程と、第2のコンタクトホール形成工程と、金属配線埋め込み工程と、を含む。
【0040】
図2Aに示すように、まず基板1を用意してLOCOS形成処理を行い、基板1上に分離用酸化膜2を形成する。
次に、第1の半導体素子形成工程では、ゲート酸化膜形成処理、ソース・ドレイン領域形成処理、多結晶シリコンによるゲート電極形成処理など、従来のMISFET製造技術により、ゲート酸化膜3、ソース・ドレイン領域4、及びゲート電極5を第1の面S1に形成する。その後、第1の金属シリサイド膜としてのコバルト又はチタン等の合金膜4a及び5aをソース・ドレイン領域4及びゲート電極5の上部に形成する。
【0041】
このように、第1の半導体素子形成工程では、基板1上の第1の面S1において、上部に合金膜4a及び5aが形成された第1の電極部を有するMISFET110を形成する。
【0042】
第2の半導体素子形成工程では、図2Bに示すように、第2の面S2に抵抗素子120を形成するための多結晶シリコン膜6も形成する。抵抗素子120において所望の抵抗率を得るために、多結晶シリコン膜6の上面全面に対し、注入量を調整して不純物の注入を行い、低濃度不純物領域6aを形成する。また、別のフォトマスク処理により、多結晶シリコン膜6内に不純物を注入して高濃度不純物領域6aを形成する。
【0043】
次に、低濃度不純物領域6aの上面全面と、高濃度不純物領域6bの上面の一部とに、シリサイドブロック膜8をTEOS(テトラエトキシシラン)で形成する。その後、第2の金属シリサイド膜としてのコバルト又はチタン等の合金膜6cを、シリサイドブロック膜8で覆われていない低濃度不純物領域6aの上部に形成する。
【0044】
次に、図2Cに示すように、全面を覆うようにシリコン窒化膜7をプラズマにより形成する。本実施形態では、減圧CVDを用いてシリコン窒化膜7を形成すると合金膜が融解してしまう場合があるため、プラズマCVDを用いてシリコン窒化膜7を形成した。
なお、シリコン窒化膜7の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、成膜温度を低くできる点でプラズマによる形成方法が好ましい。
【0045】
次に、図2Dに示すように、フォトマスク処理及びエッチング処理により、シリコン窒化膜7がシリサイドブロック膜8に接触しないように合金膜6c上の一部を覆うように加工するとともに、多結晶シリコン膜6及びシリコン窒化膜7を抵抗素子120の形状に加工する。
なお、シリコン窒化膜7のエッチング処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウェットエッチング、異方性又は等方性のドライエッチングなどが挙げられる。
【0046】
このように、第2の半導体素子形成工程では、第1の面S1より高い位置の第2の面S2において、上部に合金膜6c及び合金膜6c上の一部を覆うシリコン窒化膜7が形成された第2の電極部を有する抵抗素子120を形成する。
【0047】
次に、層間絶縁膜形成工程では、図2Eに示すように、層間絶縁膜としてのBPSG膜9を形成する。
BPSG膜9の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、BPSG膜9の平坦化方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リフロー法、エッチバック法、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法などが挙げられる。リフロー法は、具体的には、リン又はボロンを含む酸化膜を形成した後、850℃以上の熱処理で平坦化するようにしてもよい。
【0048】
このように、層間絶縁膜形成工程では、MISFET110及び抵抗素子120上にBPSG膜9を形成する。
【0049】
次に、第1及び第2のコンタクトホール形成工程では、図2Fに示すように、ソース・ドレイン領域4、ゲート電極5、抵抗素子120の第2の電極部などの必要な部分にフォトマスク処理を行い、第1のコンタクトホール10及び第2のコンタクトホール11をドライエッチングにより一括で形成する。このとき、MISFET110が設けられている第1の面S1と、抵抗素子120が設けられている第2の面S2とは、高さの基準となる基板1の底面からの高さが異なり、第1のコンタクトホール10よりも第2のコンタクトホール11のほうが浅くなる。このような場合において、本実施形態の半導体装置100では、深さが異なるコンタクトホールを同じエッチング処理により一括で形成しても、第2の電極上に存在するシリコン窒化膜7がエッチングストッパとして機能するため、抵抗素子120がオーバーエッチングされて貫通することなく第2のコンタクトホール11を形成することができる。
【0050】
このように、第1のコンタクトホール形成工程では、第1の電極上のシリコン窒化膜7を貫通し金膜4a及び5aに接するように第1のコンタクトホール10を形成する。また、第2のコンタクトホール形成工程では、第2の電極上のシリコン窒化膜7及びシリコン窒化膜7を貫通し合金膜6cに接するように第2のコンタクトホール11を形成する。
【0051】
次に、金属配線埋め込み工程では、図2Gに示すように、第1のコンタクトホール10及び第2のコンタクトホール11に金属配線12としてのタングステンを埋め込むことにより、MISFET110及び抵抗素子120の導通経路をそれぞれ形成する。
【0052】
このように、金属配線埋め込み工程では、第1のコンタクトホール10及び第2のコンタクトホール11に金属配線12を埋め込む。
【0053】
そして最後に、保護膜としてのパッシベーション膜13を上面全面に形成する。
このように、本実施形態の半導体装置100を製造することができる。
【0054】
なお、ゲート電極5を多結晶シリコン膜で形成する際に、第2の面S2には抵抗素子120を形成するための多結晶シリコン膜6も形成するようにしてもよい。
また、第1の金属シリサイド膜としてのコバルト又はチタン等の合金膜4a及び5aをソース・ドレイン領域4及びゲート電極5の上部に形成する際に、第2の金属シリサイド膜としてのコバルト又はチタン等の合金膜6cを、シリサイドブロック膜8で覆われていない低濃度不純物領域6aの上部に形成するようにしてもよい。
【0055】
このとき、不純物は、領域をN型にする場合にはリンやヒ素などを用いるようにし、領域をP型にする場合にはボロンやBFなどを用いるようにする。不純物注入量としては、所望の抵抗率によるが、例えば、1×1015atoms/cmから1×1022atoms/cmに設定するようにする。この不純物注入処理は、MISFET110のソース・ドレイン領域4を形成するための不純物注入処理と兼ねてもよい。具体的には、抵抗素子120にN型の不純物を注入する場合には、N型ソース・ドレイン領域を形成する際に用いる不純物を使用し、同一処理で不純物を注入するようにしてもよい。また、抵抗素子120にP型の不純物を注入する場合には、P型ソース・ドレイン領域を形成する際に用いる不純物を使用し、同一処理で不純物を注入するようにしてもよい。
【0056】
[第2の実施形態]
図3は、本発明の第2の実施形態における半導体装置の断面を示す模式図である。
図3に示すように、第2の実施形態の半導体装置100は、第1の実施形態において、第2の半導体素子である抵抗素子120をヒューズ130に変え、ヒューズ130の上面の膜を開口させた以外は、第1の実施形態の半導体装置100と同様である。
【0057】
ヒューズ130は、高濃度不純物領域14aと、高濃度不純物領域14aの上面全面を覆う、コバルト又はチタン等の合金膜14bと、を有する。また、コバルト又はチタン等の合金膜14bの上面の一部には、エッチングストッパとして機能するシリコン窒化膜7が形成されている。言い換えると、ヒューズ130は、第1の面S1より高い位置の第2の面S2に設けられ、合金膜14b及び合金膜14b上の一部を覆うシリコン窒化膜7が上部に形成された第2の電極部を有する。また、ヒューズ130は、抵抗素子120とは異なり、第2の電極部が素子全体に広がってる構造となっている。
このヒューズ130は、必要に応じて開口部からエネルギーを照射され、高濃度不純物領域14a及び合金膜14bが溶断されることで機能する。
【0058】
合金膜14bとシリコン窒化膜7が一定以上の面積で接触していると、熱応力の違いにより隙間ができ、その隙間から水分が侵入することが明らかになったため、ヒューズ130においては、抵抗素子120と同様に、シリコン窒化膜7が合金膜14bの上面の一部のみに形成されている。
【0059】
なお、第1及び第2の半導体素子を、第1の実施形態ではMISFET110及び抵抗素子120とし、第2の実施形態ではMISFET110及びヒューズ130としたが、これに限ることなく、例えば、MISFET、MOSFET、容量、抵抗素子、ヒューズなどのいずれかとしてもよい。
【0060】
以上説明したように、本発明の半導体装置は、基板上の第1の面に設けられ、第1の金属シリサイド膜が上部に形成された第1の電極部を有する第1の半導体素子と、第1の面より高い位置の第2の面に設けられ、第2の金属シリサイド膜及び第2の金属シリサイド膜上の一部を覆う水素供給膜が上部に形成された第2の電極部を有する第2の半導体素子と、第1の半導体素子及び第2の半導体素子上に設けられた層間絶縁膜と、第1の電極上の層間絶縁膜を貫通し第1の金属シリサイド膜に接するように形成された第1のコンタクトホールと、第2の電極上の層間絶縁膜及び水素供給膜を貫通し第2の金属シリサイド膜に接するように形成された第2のコンタクトホールと、第1のコンタクトホール及び第2のコンタクトホールに埋め込まれた金属配線と、を有する。
これにより、本発明の半導体装置は、コンタクトホールによる導通経路の抵抗値を低減でき、かつ経時的な水素による不具合の発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 基板
2 分離用酸化膜
3 ゲート酸化膜
4 ソース・ドレイン領域
4a 合金膜(第1の金属シリサイド膜)
5 ゲート電極
5a 合金膜(第1の金属シリサイド膜)
6 多結晶シリコン膜
6a 低濃度不純物領域
6b 高濃度不純物領域
6c 合金膜(第2の金属シリサイド膜)
7 シリコン窒化膜(水素供給膜)
8 シリサイドブロック膜(水素遮断膜)
9 BPSG膜(層間絶縁膜)
10 第1のコンタクトホール
11 第2のコンタクトホール
12 金属配線
13 パッシベーション膜
14a 高濃度不純物領域
14b 合金膜(第2の金属シリサイド膜)
100 半導体装置
110 MISFET
120 抵抗素子
130 ヒューズ
S1 第1の面
S2 第2の面
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図3