(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】複重殻タンク及び複重殻タンクの施工方法
(51)【国際特許分類】
B65D 90/501 20190101AFI20231127BHJP
【FI】
B65D90/501
(21)【出願番号】P 2019190127
(22)【出願日】2019-10-17
【審査請求日】2022-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593140956
【氏名又は名称】タマダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【氏名又は名称】須藤 章
(72)【発明者】
【氏名】大友 忠春
(72)【発明者】
【氏名】西野 圭太
(72)【発明者】
【氏名】玉田 善久
(72)【発明者】
【氏名】藤村 裕人
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-088993(JP,A)
【文献】特開2007-191172(JP,A)
【文献】特開2014-031220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 90/501
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下に埋設される油液貯蔵用の複重殻タンクであって、
鋼製の第1の殻と、
前記第1の殻の内面に密着して配置されるFRP(Fiber-Reinforced Plastics)製のライニング層と、
上部が前記ライニング層に密着し、下部に前記ライニング層との間で隙間の層が形成されるように前記ライニング層の内側に配置されたFRP製の第2の殻と、
を備え
、
上部において、鋼製の前記第1の殻とFRP製の前記ライニング層とFRP製の前記第2の殻とが密着していることを特徴とする複重殻タンク。
【請求項2】
前記FRP製の前記ライニング層と前記FRP製の前記第2の殻との間での下部に形成される前記隙間の層に配置される、前記油液の漏洩と地下水の浸入との少なくとも1つを検出するセンサをさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の複重殻タンク。
【請求項3】
前記ライニング層は、前記第1の殻の内面全体に密着して配置されることを特徴とする請求項1又は2記載の複重殻タンク。
【請求項4】
地下に埋設される油液貯蔵用の既存の地下タンクの鋼製の殻の内面全体に密着してFRP(Fiber-Reinforced Plastics)製のライニング層を形成する工程と、
前記ライニング層に対して、上部が密着し、下部に隙間の層が形成されるように、前記ライニング層の内側にFRP製の殻を形成する工程と、
を備え
、
上部において、鋼製の前記既存の地下タンクとFRP製の前記ライニング層とFRP製の前記殻とが密着していることを特徴とする複重殻タンクの施工方法。
【請求項5】
前記既存の地下タンクは、前記鋼製の殻の外側に、FRP製の外殻が配置された2重殻タンクであることを特徴とする請求項4記載の複重殻タンクの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、複重殻タンク及び複重殻タンクの施工方法に関し、例えば、地下に埋設される複重殻の石油燃料タンク、及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンスタンドに代表される給油所には、地下タンクが埋設されている。タンクローリー車からガソリン、軽油、灯油等の燃料油の荷卸(注入)を受けて、かかる地下タンクに燃料油が貯蔵されている。地下タンク内の燃料油は、当該地下タンクに接続された計量機を介して車両に給油(注出)される。
【0003】
大型の地下タンクでは、2重殻構造タンクにすることが消防法により求められている。本発明の2重殻タンクとは、外殻と内殻の2つのタンクが、上部において密着して密着領域(密着層)を形成し、下部では、隙間を空けた検知層が形成される構造を持つものをいう。2重殻タンクとしては、例えば、外殻が樹脂製で内殻がスチール製(鋼製)のSF2重殻タンクが挙げられる。しかしながら、SF2重殻タンクでは、経年劣化或いは施工不良等によって、樹脂製の外殻に損傷が生じると、内殻に地下水等が浸入してしまうことがある。このように、SF2重殻タンクにおいて樹脂製の外殻に損傷が生じ、内殻に地下水等が浸入し得る状態になった時点で、当該SF2重殻タンクは、消防法により求められる2重構造を満たしていないことになってしまう。その結果、このような状態となったSF2重殻タンクは、交換等の処置が必要となってしまう。地下に埋設した2重殻タンクを交換するとなれば巨額の費用と労力が必要になってしまうため、既存の2重殻タンクについては、仮に外殻に損傷が生じた場合でも、消防法の基準を満たしてその後も継続使用し得る対策が望まれている。また、かかる問題は、既存の地下タンクだけの問題ではなく、新規に埋設する地下タンクにおいても、将来、同様の問題が生じ得るので、同様に対策が必要である。
【0004】
また、大型以外の地下タンクでは、スチール製の1重殻タンクが用いられている場合がある。スチール製の1重殻タンクでは、地下水等による腐食によって亀裂が生じ、内部の油液が地中に漏れ出してしまう、或いは/及び地下水等がタンク内部に浸入してしまう場合が起こり得る。そのため、既存の1重殻タンクでは、スチール製タンクの内側全面に繊維強化プラスチック(FRP)のライニング層を形成することが行われている。しかしながら、スチール製の殻に損傷が生じた場合、内面のライニング層だけでは、十分な安全性を確保するのが難しくなる。よって、十分な安全性を確保の観点から、かかる1重殻タンクにおいてスチール殻に損傷が生じた場合でも、安全な構造を有するように対策することが望ましい。
【0005】
例えば、特許文献1には、既設の鋼製タンクAの内壁面全面にわたって劣化防止処理層なるFRPの層を密着して形成し、劣化防止処理層の内側全面に通水層を設けた上で、曲面体で支持された気密層を配置するといった技術が開示されている。かかる地下タンクは、本発明の2重殻タンクには構造上ならないが、漏洩の発見を容易にすることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の一態様は、地下タンクにおけるスチール殻に生じる損傷の有無に関わらず、2重殻の機能を継続し得る複重殻タンクを提供する。若しくは既に埋設されている既存の地下タンクに対してスチール殻に生じる損傷の有無に関わらず、2重殻の機能を継続し得る複重殻タンクへの施工方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の複重殻タンクは、
地下に埋設される油液貯蔵用の複重殻タンクであって、
鋼製の第1の殻と、
第1の殻の内面に密着して配置されるFRP(Fiber-Reinforced Plastics)製のライニング層と、
上部がライニング層に密着し、下部にライニング層との間で隙間の層が形成されるようにライニング層の内側に配置されたFRP製の第2の殻と、
を備え、
上部において、鋼製の前記第1の殻とFRP製の前記ライニング層とFRP製の前記第2の殻とが密着していることを特徴とする。
【0009】
また、FRP製のライニング層とFRP製の第2の殻との間での下部に形成される隙間の層に配置される、油液の漏洩と地下水の浸入との少なくとも1つを検出するセンサをさらに備えると好適である。
【0010】
また、ライニング層は、第1の殻の内面全体に密着して配置されると好適である。
【0011】
本発明の一態様の複重殻タンクの施工方法は、
地下に埋設される油液貯蔵用の既存の地下タンクの鋼製の殻の内面全体に密着してFRP(Fiber-Reinforced Plastics)製のライニング層を形成する工程と、
ライニング層に対して、上部が密着し、下部に隙間の層が形成されるように、ライニング層の内側にFRP製の殻を形成する工程と、
を備え、
上部において、鋼製の前記既存の地下タンクとFRP製の前記ライニング層とFRP製の前記殻とが密着していることを特徴とする。
【0012】
また、既存の地下タンクは、鋼製の殻の外側に、FRP製の外殻が配置された2重殻タンクであると好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、鋼製の殻の内側に、ライニング層を外殻とし、FRP殻を内殻としたFF2重殻構造を形成できる。この際、鋼製殻の一部が破損していたとしてもある程度の強度があれば、ライニング層が保護される。
これにより、地下タンクにおける鋼製殻に生じる損傷の有無に関わらず、2重殻の機能を継続できる。また、新規に地下タンクを設置する場合だけではなく、既に埋設されている既存の地下タンクに対しても、地下タンクにおける鋼製殻に生じる損傷の有無に関わらず、2重殻の機能を継続できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態1における給油所の構成を示す断面構成図の一例である。
【
図2】実施の形態1における地下タンクの構成の一例を示す断面図である。
【
図3】実施の形態1における地下タンクの構成の他の一例を示す断面図である。
【
図4】実施の形態1における既存の地下タンクに対する複重殻タンクの施工方法の要部工程を示すフローチャート図の一例である。
【
図5】実施の形態1の比較例における検知層加圧による漏れ試験に対する強度を説明するための図である。
【
図6】実施の形態1における検知層加圧による漏れ試験に対する強度を説明するための図である。
【
図7】実施の形態1の比較例におけるタンク内荷重に対する強度を説明するための図である。
【
図8】実施の形態1におけるタンク内荷重に対する強度を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における給油所の構成を示す断面構成図の一例である。
図1において、ガソリンスタンドに代表される給油所には、ガソリン等の油液を貯蔵する地下タンク102(複重殻タンク)が地下(地中)に埋設されている。一方、地上には、計量機(給油器)104が配置される。また、地上には、タンクローリー車106からの燃料油の注入を受ける配管注入口116が配置される。地下タンク102から上方へ延びる配管111は、地下に埋設されたボックスピット100(地下埋設型タンク上部ボックス)内で配管継手により例えば計量機104へと延びる配管112に接続される。また、地下タンク102から上方へ延びる配管113は同様にボックスピット100内で配管継手により例えば配管注入口116へと延びる配管114に接続される。また、地下タンク102内の圧力が所定の値を超えた場合に、圧力調整のために気化したガスは、例えば配管114を介して放出弁130から大気中に放出される。かかる配管111,112,113,114は、地下(地中)に埋設されている。また、後述するように、地下タンク102の損傷に伴う油液の漏洩及び/又は地下水の浸入を検出する図示しないセンサがセンサ配管115を通って地下タンク102の底部に配置される。
【0016】
給油所には、ガソリン、軽油、及び灯油等の燃料油(油液)を一般車両300に販売するガソリンスタンド(GS)(或いはSS:サービスステーション)の他に、運送事業者等が自己の事業に使用する車両(タクシー、バス、或いはトラック等)に燃料油を供給する給油場所も含まれる。ここで言う燃料油には、その他、液化状の天然ガス、及び液化状の水素等が含まれてもよい。
【0017】
タンクローリー車106が給油所に到来すると、タンクローリー車106の配管は配管注入口116に接続される。その後、タンクローリー車106によって運ばれてきた燃料油は、配管114,113内を流れて地下タンク102内に注入される。
【0018】
地上に配置された計量機104は、配管111,112を介して地下タンク102内に貯蔵された燃料油101を車両300に注出(給油)する。例えば、計量機104内に配置された図示しないポンプによって地下タンク102内に貯蔵された燃料油101を移送させる。
【0019】
ここで、ボックスピット100は、地下タンク102を点検するため地下に埋設される。ボックスピット100の上部には、地上から開閉可能なマンホール蓋が配置される。また、ボックスピット100を通って、地下タンク102内に作業員が出入りできる図示しない出入り口が地下タンク102の頂部に配置される。
【0020】
図2は、実施の形態1における地下タンクの構成の一例を示す断面図である。
図2では、
図1に示した地下タンク102の側面側から見たセンサ配管115位置での断面図を示している。地下タンク102は、スチール製の鋼製殻10(第1の殻)の内面にFRP(Fiber-Reinforced Plastics)製のライニング層12が密着して配置される。ライニング層12は、鋼製殻10の内面全体に密着して配置される。ライニング層12は、例えば、2~3mm程度の厚さで形成されると好適である。また、FRP製のFRP殻14(第2の殻)が、FRP殻14の上部でライニング層14に密着し、FRP殻14の下部にライニング層12との間で隙間の層となる検知層22が形成されるようにライニング層12の内側に配置される。FRP殻14の上部の配管等が配置される個所を除く全面若しくは上部の広範囲の領域がライニング層14内面上部に密着して密着領域20を形成する。検知層22となる隙間には、複数の支柱で構成される、例えば3Dシートやスペーサネットといった隙間形成体を配置することにより、0.05mm~1mm程度(例えば、0.1mm)の隙間が形成される。また、かかる複数の支柱がFRP殻14を下側から支持している。FRP殻14は、例えば、2~6mm程度の厚さで形成されると好適である。地下タンク102は、鋼製殻10を外殻とすれば、ライニング層12が中間殻、FRP殻14が内殻となる複重殻タンク(多重殻タンク)を構成する。言い換えれば、
図2に示した地下タンク102では、鋼製殻10の内側に、ライニング層12が外殻となり、FRP殻14が内殻となる2重殻タンクが形成されることになる。
【0021】
地下タンク102は、例えば、筒状の両端を半球面の鏡板で閉じた俵形状に形成される。よって、鋼製殻10、ライニング層12、及びFRP殻14についても同様に俵形状に形成される。なお、実施の形態1において、地下タンク102の筒状部分の下部に検知層22を形成すれば、両端の鏡板部分については、FRP殻514とライニング層12とを密着させても良い。言い換えれば、地下タンク102の筒状部分の半径方向の下部に検知層22を形成すればよく、筒状部分の円の中心軸方向については密着させればよい。
【0022】
また、地下タンク102の上方から鋼製殻10の頂部、ライニング層12の頂部、及びFRP殻14の頂部を貫通し、FRP殻14内部の貯蔵空間を通って、FRP殻14の底部を貫通し、検知層22に開口するようにセンサ配管115が配置される。センサ配管115として、例えば、直径100mm程度の配管が用いられる。そして、FRP製のライニング層12とFRP殻14との間での下部に形成される検知層22にセンサ16が配置される。センサ16は、油液の漏洩と地下水の浸入との少なくとも1つを検出する。例えば、FRP殻14に亀裂等の損傷が生じた場合、FRP殻14内に貯蔵される油液がFRP殻14の損傷個所から検知層22に漏れ出し、底部に向かって流れることで検知層22の底部に溜まる。センサ16は、検知層22の底部で漏洩した油液を検出する。また、仮に、鋼製殻10及びライニング層12の両方に亀裂等が生じ、地中の地下水等が検知層22に浸入した場合も、センサ16は、検知層22の底部で浸入した地下水を検出する。
図1の例では、1つのセンサ16が示されているが、これに限るものではない。複数のセンサを同様に配置して、油液検出用と地下水検出用とに用途を分けても好適である。センサ16として、例えば、フロートセンサが用いられる。
【0023】
図3は、実施の形態1における地下タンクの構成の他の一例を示す断面図である。
図3では、
図2に示した鋼製殻10の外側に、FRP殻11がさらに配置される場合を示している。FRP殻11は、上部全面が鋼製殻10の外表面に密着し、下部は検知層となる隙間を空けて配置される。言い換えれば、
図3に示した地下タンク102は、外殻がFRP殻11で内殻が鋼製殻10の2重殻タンク(SF2重殻タンク)の内側に、ライニング層12とFRP殻14をさらに配置した構成となる。かかる場合、地下タンク102は、FRP殻11を外殻、鋼製殻10を第1中間殻、ライニング層12を第2中間殻、FRP殻14を内殻とする複重殻タンク(多重殻タンク)を構成する。言い換えれば、
図3に示した地下タンク102では、鋼製殻10の内側に、ライニング層12が外殻となり、FRP殻14が内殻となる2重殻タンクが形成されることになる。
【0024】
図2の例において、鋼製殻10が地下水等による腐食により損傷を受けた場合、及び
図3の例において、FRP殻11に亀裂が生じ、さらに、鋼製殻10が浸入した地下水等による腐食により損傷を受けた場合でも、腐食しにくいFRP製のライニング層12を外殻として、またFRP殻14を内殻としたFRP製の2重殻タンク(FF2重殻タンク)の構造を維持できる。よって、外殻に生じる損傷の有無に関わらず、2重殻の機能を継続できる。さらに、実施の形態1の地下タンク102では、FRP殻14が上部をライニング層12内面に密着させて接着されている。また、ライニング層12は鋼製殻10内面に密着して配置されるので、FRP殻14にかかる荷重によって、FRP殻14とライニング層12とが一緒に潰れることはない。よって、鋼製殻10とライニング層12とFRP殻14とによる構成は、FRP殻14にかかる荷重に対して十分な強度を保つことができる。
【0025】
図4は、実施の形態1における既存の地下タンクに対する複重殻タンクの施工方法の要部工程を示すフローチャート図の一例である。
図4において、実施の形態1における既存の地下タンクに対する複重殻タンクの施工方法は、ライニング加工工程(S102)と、FRP内殻加工工程(S106)と、センサ配置工程(S108)という、一連の工程を実施する。ここで、既存の地下タンクとして、スチール(鋼)製の1重殻タンク、若しくは、鋼製の内殻の外側に、FRP製の外殻が配置された2重殻タンク(SF2重殻タンク)に、実施の形態1における複重殻タンクの施工が成されると好適である。
【0026】
ライニング加工工程(S102)として、地下に埋設される油液貯蔵用の既存の地下タンクの鋼製の鋼製殻10の内面全体に密着してFRP製のライニング層12を形成する。具体的には、例えば、強化材となるガラス繊維等に樹脂を含侵させた所定の大きさのガラス繊維等が含有するFRP製のシートを、ローラー具等で押圧することで脱泡しながら鋼製殻10の内面に貼り付け、所定の厚さになるまで積層させる。或いは、ガラス繊維等と樹脂材とをスプレーで鋼製殻10の内面に吹き付け、ローラー具等で押圧することで脱泡するようにしても好適である。或いは、予め、所定の厚さに成形されたFRP製のシートを、ローラー具等で押圧することで脱泡しながら鋼製殻10の内面に貼り付けるようにしても好適である。
【0027】
FRP内殻加工工程(S106)として、ライニング層12に対して、上部が密着し、下部に隙間の層が形成されるように、ライニング層12の内側にFRP製のFRP殻14を形成する。具体的には、ライニング層12内面の検知層22を形成する領域については、検知層22を形成する領域(下部)に上述した隙間形成体を配置した状態で、ライニング加工工程(S102)と同様に、FRP製のシートを、ローラー具等で押圧することで脱泡しながらライニング層12の内面に貼り付け、所定の厚さになるまで積層させる。或いは、ガラス繊維等と樹脂とをスプレーで鋼製殻10の内面に吹き付け、ローラー具等で押圧することで脱泡するようにしても好適である。或いは、予め、所定の厚さに成形されたFRP製のシートを、ローラー具等で押圧することで脱泡しながら鋼製殻10の内面に貼り付けるようにしても好適である。これにより、上部については、ライニング層12とFRP殻14とが直接に密着させた密着領域20を形成できる。また、下部については検知層22を形成できる。ここで、密着領域20が形成される上部には、FRP殻14の高さ方向の中間高さ位置よりも上方が該当する。例えば、FRP殻14の頂部からFRP殻14の高さ寸法の1/5程度までの領域が該当すると好適である。逆に、検知層22が形成される下部には、密着領域20が形成される上部以外が含まれる。
【0028】
センサ配置工程(S108)として、地下タンク102の上方から鋼製殻10の頂部、ライニング層12の頂部、及びFRP殻14の頂部を貫通し、FRP殻14内部の貯蔵空間を通って、FRP殻14の底部を貫通し、検知層22に開口するようにセンサ配管115を配置する。そして、センサ配管115内を通して、ライニング層12とFRP殻14との間の検知層22の底部にセンサ16を配置する。
【0029】
以上により、既存のスチール製の1重殻タンク、若しくは、鋼製の内殻とFRP製の外殻により構成されるSF2重殻タンクを、さらに、密着領域20と検知層22とを有するライニング層12とFRP殻14によるFF2重殻タンクの構造を追加した複重殻タンクに改造できる。
【0030】
図5は、実施の形態1の比較例における検知層加圧による漏れ試験に対する強度を説明するための図である。
図6は、実施の形態1における検知層加圧による漏れ試験に対する強度を説明するための図である。
図5(a)の例において、比較例は、内殻となるFRP殻514が、ライニング層12と密着している面を有しておらず、FRP殻514とライニング層12との間に何らかの通水性のある支持体を挟んでFRP殻514を支持する構成になっている。
図5(a)の例では、上下左右に90度ずつずらした4つの支持体でFRP殻514を支持する場合を示しているが、支持体の数がもっと多くても構わない。このように、比較例では、気密層となるFRP殻514がライニング層12と分離している。比較例では、支持体が配置される層が通水層となり、また検知層にもなる。仮に鋼製殻10が腐食等により損傷した場合、ライニング層12が外殻として機能する必要がある。かかる場合に検知層での漏れの有無が重要となる。比較例では、気密層となるFRP殻514がライニング層12と全周で分離しているため、本発明の2重殻タンクの構造になっておらず、上部を含めた全周から圧力を受けてしまう。そのため、
図5(b)に示すように、FRP殻514が面座屈を生じ破損し易い構造となってしまう。また、
図5(a)の比較例において、FRP殻514がライニング層12との間の検知層(通水層)に漏えい液が満たされ、放置された場合、液圧により破損する恐れもある。
【0031】
これに対して、実施の形態1では、
図6(a)に示すように、FRP殻14の上部の面がライニング層12の内面と密着して接着されているので、上部からの圧力はかからない。その結果、
図6(b)に示すように、FRP殻14が面座屈を生じにくく、損傷が生じにくい構造にできる。よって、実施の形態1では、実際に燃料油101を貯蔵することになるFRP殻14にかかる荷重に対して十分な強度を保つことができる。
【0032】
また、一般に、地下タンクは、筒状の両端を半球面の鏡板で閉じた俵形状に形成される。そして、地下タンクは埋設状況等による真円度の相違があり、また、両端の鏡板が製品品質的に一様ではない。そのため、上述したFRP殻514とライニング層12とを分離している比較例において、例えば通水溝が形成された支持体等をライニング層12内面全面に張り付ける場合に、タンク形状にフィットさせることが困難である。これに対して、実施の形態1では、タンクの筒状部分の下部に検知層を形成すれば、両端の鏡板部分については、FRP殻514とライニング層12とを密着させても良く、タンク形状にフィットさせることができる。
【0033】
図7は、実施の形態1の比較例におけるタンク内荷重に対する強度を説明するための図である。
図8は、実施の形態1におけるタンク内荷重に対する強度を説明するための図である。
図7(a)の例において、比較例は、上述したように、内殻となるFRP殻514が、ライニング層12と密着している面を有しておらず、FRP殻514とライニング層12との間に例えば4つの支持体で支持する場合を示している。支持体の数がもっと多くても構わない点は同様である。比較例では、気密層となるFRP殻514がライニング層12と分離しているため、FRP殻514内に貯蔵する燃料油101の荷重に対して、特に、上部での支持力がない。或いは小さい。そのため、
図7(b)に示すように、FRP殻514が下部からの支持力だけで荷重を受けることなり、面座屈を生じ易い構造となってしまう。これに対して、実施の形態1では、
図8(a)に示すように、FRP殻14の上部の面がライニング層12の内面と密着して接着されているので、上部での支持力を強くできる。その結果、
図8(b)に示すように、FRP殻14が面座屈を生じにくい構造にできる。特に、ライニング層12は鋼製殻10内面に密着して配置されるので、FRP殻14にかかる荷重によって、FRP殻14とライニング層12とが一緒に潰れることはない。よって、実施の形態1では、実際に燃料油101を貯蔵することになるFRP殻14にかかる荷重に対して十分な強度を保つことができる。
【0034】
以上のように、実施の形態1によれば、鋼製殻10の内側に、ライニング層12を外殻とし、FRP殻14を内殻としたFF2重殻構造を形成できる。これにより、地下タンク102における外殻に生じる損傷の有無に関わらず、十分な強度での2重殻の機能を継続できる。特に、鋼製殻10に生じる損傷の有無に関わらず、鋼製殻10の内側で十分な強度での2重殻の機能を継続できる。また、新規に地下タンク102を設置する場合だけではなく、既に埋設されている既存の地下タンクに対しても、地下タンクにおける鋼製殻に生じる損傷の有無に関わらず、十分な強度での2重殻の機能を継続できる。
【0035】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0036】
また、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成を適宜選択して用いることができる。
【0037】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての複重殻タンク及び複重殻タンクの施工方法は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0038】
10 鋼製殻
12 ライニング層
14,514 FRP殻
16 センサ
20 密着領域
22 検知層
100 ボックスピット
101 燃料油
102 地下タンク
104 計量機
106 タンクローリー車
111,112,113,114 配管
115 センサ配管
116 注入口
130 放出弁
300 車両