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  • 特許-ドアの防音構造 図1
  • 特許-ドアの防音構造 図2
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  • 特許-ドアの防音構造 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】ドアの防音構造
(51)【国際特許分類】
   E06B 7/18 20060101AFI20231127BHJP
   E06B 5/20 20060101ALI20231127BHJP
   E06B 7/22 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
E06B7/18 C
E06B5/20
E06B7/22 F
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019190995
(22)【出願日】2019-10-18
(65)【公開番号】P2021067011
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】390030340
【氏名又は名称】株式会社ノダ
(74)【代理人】
【識別番号】100085589
【弁理士】
【氏名又は名称】▲桑▼原 史生
(72)【発明者】
【氏名】吉山 恭平
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-238251(JP,A)
【文献】特開平11-336445(JP,A)
【文献】特開昭57-058789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/00-7/36
E06B 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸厚方向の中間位置において下端面に開口して見付方向に沿って延長する凹溝が形成されたドア本体と、該凹溝に取り付けられるハウジングと該ハウジングに対して昇降可能に設けられる移動体と該移動体の先端に設けられるシール部材とを有するシール装置とからなり、ドアが閉止した状態で移動体が下降したときにシール部材の先端が床面に密着してドア本体の下端面と床面との間の隙間を塞ぐように構成されたドアにおいて、ドア本体の下端面においてシール部材の一方の側面または両方の側面に隣接する位置に見付方向に延長すると共に床面に接触しないように吸音部材が設けられることを特徴とする、ドアの防音構造。
【請求項2】
前記吸音部材が、ゴム発泡体または合成樹脂発泡体からなることを特徴とする、請求項1記載のドアの防音構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はドアの防音構造に関し、より詳しくはシール装置が設けられたドアにおいて防音性能をさらに向上させる防音構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ドアの下端に昇降可能にシール装置を設け、ドアを閉止したときにシール部材が下降して床面との間の隙間を塞ぐことによって防音性能を向上させることが行われている。たとえば特許文献1では、ドア3下端の取付孔5に案内枠11を嵌め込み、この案内枠の内側にシール枠21を昇降可能に設けて、ドアの閉止時に縦枠内面1aに近付いたときに板ばね31が働いてシール枠を下降させ、シール枠の下端に設けた弾性シール41が床面Wに密接してドアと床面との間の隙間を塞ぐように構成されている(特に、段落0015~0020,0027~0028,図3および図4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-184630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載のようなシール装置は、ドアを閉止したときにシール部材が下降して床面との間の隙間を塞ぐことにより防音性能を向上させる効果があるが、なお不十分であった。すなわち、相対的に昇降可能に設けられる案内枠とシール枠との間には若干の隙間が形成されることが構成上不可避であるため、ドアを閉止したときに、音源側からの音がドアと床面との間から反対側に直線的に抜けることは防止できるとしても、案内枠とシール枠との間に形成されるわずかな隙間を通って音源側から反対側に音が抜けることを防止しきれない。
【0005】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、シール装置が設けられたドアの防音性能をより一層向上させるための新規技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するため、請求項1に係る本発明は、戸厚方向の中間位置において下端面に開口して見付方向に沿って延長する凹溝が形成されたドア本体と、該凹溝に取り付けられるハウジングと該ハウジングに対して昇降可能に設けられる移動体と該移動体の先端に設けられるシール部材とを有するシール装置とからなり、ドアが閉止した状態で移動体が下降したときにシール部材の先端が床面に密着してドア本体の下端面と床面との間の隙間を塞ぐように構成されたドアにおいて、ドア本体の下端面においてシール部材の一方の側面または両方の側面に隣接する位置に見付方向に延長すると共に床面に接触しないように吸音部材が設けられることを特徴とする、ドアの防音構造である。
【0009】
請求項2に係る本発明は、請求項1記載のドアの防音構造において、前記吸音部材が、ゴム発泡体または合成樹脂発泡体からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ドアを閉止したときにシール部材が下降して床面との間の隙間を塞いで防音性能を向上させることに加えて、シール部材に隣接した位置に吸音部材が設けられているので、ドア本体の凹溝とシール装置のハウジングとの間の隙間を通過しようとする音を遮断ないし減衰して音漏れを防ぐことができ、防音性能をさらに向上させる。
【0011】
すなわち、吸音部材が戸厚方向においてシール部材の音源発生側に位置するときは、ドア本体の下端面と床面との間の隙間を通過しようとする音を吸音部材で直接的に遮音ないし吸音し、音を減衰させることができるので、ドア本体の凹溝とシール装置のハウジングとの間の隙間に入り込むこと自体を未然に阻止して音漏れを抑制する。吸音部材が戸厚方向においてシール部材の反音源発生側に位置するときは、音源発生側からドア本体の凹溝とシール装置のハウジングとの間の隙間を通過してシール部材の反対側に出ようとする音を吸音部材で遮音ないし吸音し、音を減衰させることができるので、同様に音漏れを抑制させることができる。吸音部材が戸厚方向においてシール部材の両側に設けられているときは、上記の相乗効果によってさらに防音性能が向上する。
【0012】
吸音部材は床面に接触しないように設けられるので、ドアの開閉時に吸音部材が床面と擦れることがなく、開閉動作が円滑になり、また、床面への傷付きや吸音部材の剥がれを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態(実施例1)によるドアの正面図である。
図2図1中のA-A切断線によるドア本体下端部の拡大断面図である。この図では、シール装置のシール部材がハウジング内に収容され、その先端がドア本体の下端面と略面一になった状態が示されている。なお、A-A切断線は、縦枠1と縦框11との間のわずかな隙間部分に位置しているので、図2(および図3図4)には縦框11の見込面の下端部を示す端面図となっている。
図3】シール部材が下降してその先端が床面に密着してドア本体の下端面と床面との間の隙間を塞いでいる状態のA-A拡大断面図である。
図4】本発明の他実施形態(実施例2)において図3と同様にシール部材が下降してその先端が床面に密着してドア本体の下端面と床面との間の隙間を塞いでいる状態のA-A拡大断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に実施例を挙げて本発明について説明する。
【実施例1】
【0015】
本発明の一実施形態(実施例1)によるドア10について、図1ないし図3を参照して説明する。この実施例におけるドア10は、集成材を用いた左右縦枠1,2および上枠3からなる三方枠内に設置され、集成材を用いた左右縦框11,12および上下横框13,14からなる枠体内に鏡板15が固定された框組みドア(以下、「ドア本体10」という。)であり、縦枠1と縦框11との間に高さ方向に複数個取り付けられた丁番16によって開閉自在とされている。縦框12には開閉操作用の把手ないしドアノブが取り付けられるが、図示省略されている。
【0016】
このドア本体10の下端部にはシール装置20が取り付けられている。ドア本体10には、戸厚方向の中間位置において下端面10aに開口して見付方向に沿って延長する凹溝17が形成され、この凹溝17に、シール装置20のハウジング21が篏着されている。ハウジング21は、凹溝17と略同じ長さ(すなわちドア本体10と略同幅)に延長する長尺部材であり、上面部21aと一対の側面部21b,21cと、一方の側面部21bから見付方向に延長する延出部21dとを有し、下面は開口している。ハウジング21は、その上面部21aおよび側面部21b,21cをそれぞれドア本体10下端部の凹溝の上面および内側面に当接させ、延出部21dをドア下端面10aに当接させた状態で、ビス(図示せず)を延出部21dの下側からドア下端面10aに打ち付けることによって固定される。この固定状態において、延出部21dはドア本体10の下端面10aに沿って縦框11の一側面11bに向けた中途地点まで延長している。
【0017】
ハウジング21の内部には、側面部21b,21cに実質的に摺接しながら昇降移動可能な移動体23が配置され、移動体23の先端にゴムパッキンなどの弾性変形可能な材料によるシール部材24が設けられている。移動体23およびシール部材24も、凹溝17と略同じ長さ(すなわちドア本体10と略同幅)に延長する長尺部材である。移動体23は通常は図2に示す上方位置に止まってハウジング21内に収容されており、このときシール部材24の先端はドア本体10の下端面10aと略面一であって、実質的に下端面10aから突出していない。移動体23は、内蔵する板バネ(図示せず)のバネ力によって図2に示す通常時の収容状態から下方に移動して、図3に示すドア閉止時の突出状態となる。ドア閉止時に、移動体23から突出する突起部22が縦枠1の内面に当接したときに、上記板バネが作動してバネ力を与えるように構成されている。
【0018】
なお、図示実施形態では、移動体23の先端に内向きの係止片23aが形成され、この係止片23aにシール部材24の基部24aを係止しつつ、移動体23の高さ方向中途地点に中間壁23bが形成され、係止片23aと中間壁23bとの間にシール部材24の基部24aの厚さより大きな空間を与えていることから、移動体23がハウジング21に対して(したがってドア本体10に対しても)昇降可能であってその先端のシール部材24が移動体23と共に昇降移動するだけでなく、シール部材24はさらに移動体23に対しても若干の昇降移動が許容されるように構成されている。
【0019】
また、ハウジング21の延出部21dの下面には吸音部材25が接着剤などにより固定されている。図示実施形態における吸音部材25は独立発砲のEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)からなるが、その他、ゴムスポンジなどのゴム発泡体や、ポリウレタン発泡体やポリオレフィン発泡体などの合成樹脂発泡体からなる吸音部材25を用いても良い。吸音部材25は、凹溝17と略同じ長さ(すなわちドア本体10と略同幅)に延長する長尺部材であり、その高さは床面4には届かない寸法に形成される。図示実施形態では、床面4とドア下端面10aとの間の隙間5は高さ10mmであり、延出部21dの厚さが1mm、吸音部材24の厚さ(高さ)が4mmであるから、吸音部材25と床面4との間には高さ5mmの隙間が確保されている。発明者の検証によれば、吸音部材25と床面4との間に高さ7mm以下の隙間が形成されることが好ましく、高さ5mm以下の隙間が形成されることがより好ましい。
【0020】
また、吸音部材25が、移動体23が下降したときにその側面の少なくとも一部を覆う高さに設けられる(図3)ことにより、音源発生側から隙間5に入り込む音を受けて移動体23が振動することを抑制し、シール部材23が床面4に密接した状態を確保することができるので、防音性能が損なわれない。
【0021】
上記のように構成されたシール装置20および吸音部材25による防音ないし吸音作用について、特に図3を参照して説明する。ドア10を閉じていって完全に閉止されると同時またはその直前の位置において、特許文献1に記載のような公知の機構によって移動体23が収容状態(図2)から下降し、先端のシール部材24が床面4にバネ力によって押し付けられ、床面4とドア下端面10aとの間の隙間5を塞ぐ。これによって一定の防音性能向上効果が得られるが、従来技術に関連して既述したように、移動体23がハウジング21に対して昇降移動可能に設けられるという構成においてはこれらの間に若干の隙間が形成されることが不可避であるため、ドア10を完全に閉止してシール部材24が床面4に密着している状態であっても、音源発生側の隙間5から上記ハウジング21と移動体23との間の隙間を通って反対側の隙間5に音が抜けてしまうことによる音漏れを防止することができなかったが、吸音部材25を設けることによってこの問題を抑制ないし実質的に防止する。
【0022】
より詳しく説明すると、図3においてドア10で閉じられた右側の空間で音が発生した場合(吸音部材25が戸厚方向においてシール部材24の音源発生側に位置するとき)は、音源発生側の隙間5を通過しようとする音を吸音部材25が未然に遮音ないし吸音し、音を減衰させることができるので、この隙間5からハウジング21と移動体23との間の隙間に入り込もうとすること自体を未然に阻止して音漏れを抑制する。また、図3においてドア10で閉じられた左側の空間で音が発生した場合(吸音部材25が戸厚方向においてシール部材24の反音源発生側に位置するとき)は、音源発生側の隙間5を通ってシール部材24の反対側に抜けようとする音を未然に阻止することはできないが、反対側に抜けた直後に吸音部材25で遮音ないし吸音し、音を減衰させることができるので、反対側への音漏れを抑制する。
【0023】
実施例1のドアと、シール装置20のみを設けて吸音部材25を割愛した従来技術による比較例のドアとについて、JIS A 1416「実験室における建築部材の空気音遮断性能の測定方法」に準拠して防音試験を行ったところ、実施例1のドアでは防音性能T-2を達成することができたが、比較例のドアでは防音性能T-2を達成することができなかった、このことにより、シール装置20に隣接させて吸音部材25を設けることによって防音性能が向上することが確認された。
【0024】
吸音部材25はドア本体10の下端面10aと床面4との間の隙間5(より厳密に言えば、ハウジング延出部21dと床面4との間の隙間)より小さい高さ寸法に形成され、床面4には接触しないように設けられているので、ドアの開閉時に吸音部材25が床面4と擦れることがなく、開閉動作が円滑になり、また、床面4への傷付きや吸音部材25の剥がれを防止することができる。
【実施例2】
【0025】
本発明の他実施形態(実施例2)によるドア下端部の構成が図4に示されている。この実施例では、吸音部材25がシール部材24に対して実施例1とは反対側に設けられている点で、実施例1と相違している。なお、図4では、吸音部材25がドア本体10の下端面10aに取り付けられているが、延出部21dに代えて、またはこれに追加して、反対方向に(縦枠11の他側面11cに向けて)延長する延出部を形成して、この延出部の下面に吸音部材25を取り付けても良い。
【0026】
その他の構成は実施例1と同様である。実施例1について既述したように、吸音部材25がシール部材24に対して音源発生側に位置するときも反音源発生側に位置するときも、音源発生側の隙間5を通ってシール部材24の反対側に音抜けすることによる音漏れを抑制することができるので、この実施例においても、シール部材24のいずれの側で音が発生しても、同様の効果を発揮する。
【実施例3】
【0029】
以上に本発明について実施例を挙げて詳述したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において多種多様に変形ないし変更して実施可能である。たとえば、実施例1,2のいずれにおいても、吸音部材25は、戸厚方向においてシール部材24の両側に設けても良く、これによって、いずれの側で音が発生した場合も、音源側からハウジング21と移動体23との間の隙間に音が入り込もうとすることを未然に阻止する効果と、該隙間を通って反対側に抜けた音を遮音ないし吸音する効果の両方の効果が得られるので、相乗効果によってさらに防音性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0030】
1,2 縦枠
3 上枠
4 床面
5 床面とドア下端面との間の隙間
10 ドア(框組みドア)ないしドア本体
11,12 縦框
13,14 横框
15 鏡板
16 丁番
17 凹溝
20 シール装置
21 ハウジング
21a 上面部
21b,21c 側面部
22 突起部
23 移動体
23a 係止片
23b 中間壁
24 シール部材
24a 基部
25 吸音部材
図1
図2
図3
図4