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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】空気清浄システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/06 20060101AFI20231127BHJP
【FI】
F24F7/06 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019198675
(22)【出願日】2019-10-31
(65)【公開番号】P2020186904
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2019019931
(32)【優先日】2019-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019090791
(32)【優先日】2019-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 恒佑
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 弥
(72)【発明者】
【氏名】小松原 正幸
(72)【発明者】
【氏名】染谷 孟行
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-255898(JP,A)
【文献】特開2018-119752(JP,A)
【文献】特開2018-204858(JP,A)
【文献】特開2012-149787(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0324026(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
区画内の空気を清浄化する出力可変型で複数の空気清浄装置と、
前記区画内の粒子濃度を検出するパーティクルセンサと、
前記パーティクルセンサで検出される粒子濃度に基づいて前記空気清浄装置を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記区画内の粒子濃度が第1閾値またはそれ以下となるように2以上である規定数の前記空気清浄装置を動作させる第1制御モードと、
前記区画内の粒子濃度が前記第1閾値以下であって、所定の安定状態基準が満たされるときに、運転中の前記空気清浄装置を所定台数まで順次停止させる第2制御モードと、
を実行し、
前記安定状態基準は、前記空気清浄装置の出力設定範囲における最低出力運転が所定時間続くこと、又は、前記区画内の粒子濃度が前記第1閾値よりも小さい過剰清浄濃度をさらに下回る状態が所定時間続くこと
であることを特徴とする空気清浄システム。
【請求項2】
請求項1に記載の空気清浄システムにおいて、
前記区画内における人間の有無を検出する人感センサを備え、
前記制御部は、前記人感センサが人間を検出したときに前記規定数以上の前記空気清浄装置を所定の第1出力以上で運転する第3制御モードを実行することを特徴とする空気清浄システム。
【請求項3】
請求項2に記載の空気清浄システムにおいて、
前記第3制御モードの実行中で前記人感センサが人間の存在を検出している場合で、前記区画内の粒子濃度が所定値以下となったときに、前記空気清浄装置の出力を徐々に減少させて前記第1制御モードに移行することを特徴とする空気清浄システム。
【請求項4】
請求項3に記載の空気清浄システムにおいて、
前記第3制御モードから前記空気清浄装置の出力を徐々に減少させ、前記第1制御モードで規定される最大出力まで減少させてから前記第1制御モードに移行することを特徴とする空気清浄システム。
【請求項5】
請求項3に記載の空気清浄システムにおいて、
前記第3制御モードから前記空気清浄装置の出力を徐々に減少させ、前記パーティクルセンサで検出される粒子濃度をもとに到達すべきと判断されるモード移行出力まで減少させてから前記第1制御モードに移行することを特徴とする空気清浄システム。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか1項に記載の空気清浄システムにおいて、
前記第3制御モードから前記第1制御モードに移行するまでの間を移行モードとして実行することを特徴とする空気清浄システム。
【請求項7】
請求項3~6のいずれか1項に記載の空気清浄システムにおいて、
前記第3制御モードから前記第1制御モードまで規定時間をかけて前記空気清浄装置の出力を減少させるように制御することを特徴とする空気清浄システム。
【請求項8】
請求項2~7のいずれか1項に記載の空気清浄システムにおいて、
前記第3制御モードから前記第1制御モードを経て前記第2制御モードに移行して該第2制御モードを実行している場合、前記人感センサによる人間の検出の有無またはその人数により、前記第2制御モードから前記第1制御モードへ移行する条件が異なることを特徴とする空気清浄システム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の空気清浄システムにおいて、
前記制御部は、前記区画内の粒子濃度が前記第1閾値よりも大きい第2閾値以上となったとき、または前記区画内の粒子濃度が所定の増加速度閾値を超えたときに全数の前記空気清浄装置を所定の第2出力以上で運転する第4制御モードを実行することを特徴とする空気清浄システム。
【請求項10】
請求項9に記載の空気清浄システムにおいて、
前記第4制御モードから前記第1制御モードに移行する際、前記空気清浄装置の出力を徐々に減少させて前記第1制御モードに移行することを特徴とする空気清浄システム。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の空気清浄システムにおいて、
人感センサにより前記区画内に人間が不在であると判断される場合で、前記パーティクルセンサで検出される粒子濃度が所定値以上であるときに、撮像手段により前記区画の少なくとも一部を撮像して記録することを特徴とする空気清浄システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、区画内の空気を清浄化する空気清浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や精密機器を製造するクリーンルームでは高い空気清浄度が求められるが、過剰な空気清浄度によって運転コストが高まることは好ましくない。そこで本出願人は特許文献1および特許文献2に記載のシステムを提案している。
【0003】
特許文献1に記載のシステムでは、熱交換装置と空気清浄装置とを別体化して、温度調整と空気清浄化とを個別かつ必要限度で行うことが可能となり、いずれか一方が他方の影響によって過剰な能力で運転されてしまうことがない。また、空気の流れはクリーンルーム内を循環・対流させることが可能になり、床下や天井裏の空気流路が不要となる。
【0004】
特許文献2に記載のシステムでは、クリーンルーム内で複数の生産装置および複数の空気清浄装置が設けられている場合で、特に高い空気清浄度が求められる生産装置に対しては専用の空気清浄装置を設けて局所的に清浄化させることができる。そして他の生産装置が設けられている箇所に対しては過剰な空気清浄化がなされることがない。
【0005】
また、クリーンルームでは人間の存在が清浄度低下の要因となり得る。特許文献3に記載のシステムでは、クリーンルームの入口に人感センサを設け、この人感センサにより人間の有無を検知して空気清浄装置の運転状態を変化させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4275969号公報
【文献】特許第4609699号公報
【文献】特開2012-149787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では空気清浄装置が熱交換装置から独立的になるが、定常運転時に空気清浄装置自体の運転コストを低減することは考慮されていない。また、特許文献2および特許文献3は、所定の生産装置がある特定の場所や人が存在する特定の時間に関して空気清浄装置の運転状態を変化させるものであるが、それ以外の定常時における運転コストを低減することに関しては考慮されていない。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、運転コストを低減することのできる空気清浄システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる空気清浄システムは、区画内の空気を清浄化する出力可変型で複数の空気清浄装置と、前記区画内の粒子濃度を検出するパーティクルセンサと、前記パーティクルセンサで検出される粒子濃度に基づいて前記空気清浄装置を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記区画内の粒子濃度が第1閾値またはそれ以下となるように2以上である規定数の前記空気清浄装置を動作させる第1制御モードと、前記区画内の粒子濃度が前記第1閾値以下であって、所定の安定状態基準が満たされるときに、運転中の前記空気清浄装置を所定台数まで順次停止させる第2制御モードと、を実行することを特徴とする。
【0010】
前記区画内における人間の有無を検出する人感センサを備え、前記制御部は、前記人感センサが人間を検出したときに前記規定数以上の前記空気清浄装置を所定の第1出力以上で運転する第3制御モードを実行してもよい。このような第3制御モードによれば、区画内に発塵源となる人が入ってきた場合にも粒子濃度を適切に維持することができる。
【0011】
前記第3制御モードの実行中で前記人感センサが人間の存在を検出している場合で、前記区画内の粒子濃度が所定値以下となったときに、前記空気清浄装置の出力を徐々に減少させて前記第1制御モードに移行してもよい。これにより運転が安定する。
【0012】
前記第3制御モードから前記空気清浄装置の出力を徐々に減少させ、前記第1制御モードで規定される最大出力まで減少させてから前記第1制御モードに移行してもよい。
【0013】
前記第3制御モードから前記空気清浄装置の出力を徐々に減少させ、前記パーティクルセンサで検出される粒子濃度をもとに到達すべきと判断されるモード移行出力まで減少させてから前記第1制御モードに移行してもよい。
【0014】
前記第3制御モードから前記第1制御モードに移行するまでの間を移行モードとして実行してもよい。
【0015】
前記第3制御モードから前記第1制御モードまで規定時間をかけて前記空気清浄装置の出力を減少させるように制御してもよい。
【0016】
前記第3制御モードから前記第1制御モードを経て前記第2制御モードに移行して該第2制御モードを実行している場合、前記人感センサによる人間の検出の有無またはその人数により、前記第2制御モードから前記第1制御モードへ移行する条件が異なってもよい。これにより、人間による発塵で粒子濃度が上昇することを抑制できる。
【0017】
前記制御部は、前記区画内の粒子濃度が前記第1閾値よりも大きい第2閾値以上となったとき、または前記区画内の粒子濃度が所定の増加速度閾値を超えたときに全数の前記空気清浄装置を所定の第2出力以上で運転する第4制御モードを実行してもよい。このように粒子濃度が増加傾向にある場合には、全数の空気清浄装置を所定の第2出力以上で運転することにより、粒子濃度を速やかに低下させることができる。
【0018】
前記第4制御モードから前記第1制御モードに移行する際、前記空気清浄装置の出力を徐々に減少させて前記第1制御モードに移行してもよい。
【0019】
人感センサにより前記区画内に人間が不在であると判断される場合で、前記パーティクルセンサで検出される粒子濃度が所定値以上であるときに、撮像手段により前記区画の少なくとも一部を撮像して記録してもよい。これにより、無人であるはずの区画内で発生した事象を事後的にまたは遠隔的に確認することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかる空気清浄システムでは、通常の第1制御モードとは別に、所定の安定状態基準が満たされるときには運転中の空気清浄装置を順次停止させる第2制御モードを実行することにより運転コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の実施形態である空気清浄システムを示す側面図である。
図2図2は、空気清浄システムの制御ブロック図である。
図3図3は、空気清浄システムが設けられたクリーンルーム内に人間が存在する状態を示す図である。
図4図4は、空気清浄システムで実行される4つの制御モードとその移行関係を示すブロック図である。
図5図5は、第1の対処例における空気清浄装置の出力と、粒子濃度と、モードの区分を示すグラフであり、(a)は移行モードに規定時間Tをかける場合のグラフであり、(b)は規定時間Tに達する以前に移行モードから基本モードに移行する場合のグラフである。
図6図6は、設けられるセンサの種類による制御区分を示す表であり、(a)はパーティクルセンサだけで人感センサが設けられていない場合に実行される制御区分を示し、(b)は人感センサだけでパーティクルセンサが設けられていない場合に実行される制御区分を示し、(c)は人感センサとパーティクルセンサとを備えている場合に実行される制御区分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明にかかる空気清浄システムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0023】
図1は、本発明の実施形態である空気清浄システム10を示す側面図である。図2は、空気清浄システム10の制御ブロック図である。図3は、空気清浄システム10が設けられた区画12内に人間Hが存在する状態を示す図である。人間Hは主に作業者である。
【0024】
空気清浄システム10は区画12の空気を清浄化するシステムである。区画12はクリーンルームの全体またはその一部である。区画12は他の区画とパーテーションやカーテンで仕切られていてもよいし、条件によっては特に仕切がなくてもよい。区画12には、半導体や精密機器の生産装置14が設けられており、空気が清浄化された環境が必要となっている。
【0025】
図1および図2に示すように、空気清浄システム10は、空気清浄装置16a,16b,16cと、人感センサ18a,18b,18cと、パーティクルセンサ20a,20b,20cと、熱交換装置22a,22bと、撮像手段23a,23b,23cと、制御部28とを有する。空気清浄装置16a~16c、人感センサ18a~18c、パーティクルセンサ20a~20c、熱交換装置22a,22b、撮像手段23a~23cはそれぞれ代表的に空気清浄装置16、人感センサ18、パーティクルセンサ20、熱交換装置22、撮像手段23とも呼ぶ。
【0026】
空気清浄装置16は、区画12内の上方で、天面12aよりはやや下方に配置されており、上部に設けられたファン24と、下部に設けられたHEPA(High Efficiency Particulate Air)26とを有する。空気清浄装置16は、ファン24により上方から吸い込んだ空気をHEPA26で清浄化して下方に向けて吹き出す。ファン24は回転数可変駆動式である。空気清浄装置16は制御部28の作用下に状況に応じてファン24の回転数を制御し出力調整ができる。空気清浄装置16はFFU(Fan Filter Unit)とも呼ばれる。
【0027】
人感センサ18は、対応する監視領域に人間Hが存在するか否かを検出するセンサであり、例えば赤外センサ、電磁センサまたはカメラが挙げられる。人感センサ18がカメラである場合には、画像解析によって人間Hの有無を推定可能である。人感センサ18は領域に存在する人間Hの人数を検出することも可能である。また、人感センサ18は人間Hの人数だけでなく動作を検出することができるとともに、その動作の種類や頻度に基づいて作業種別を判断することができる。検知可能な動作には歩行も含まれる。人感センサ18a~18cは空気清浄装置16a~16cと一体的に固定されており、それぞれ制御部28に検出信号を供給する。人感センサ18a~18cで区画12をカバーしている。
【0028】
パーティクルセンサ20は、対応する領域の清浄度、つまり粒子濃度を検出するセンサであり、たとえば、天面12aの近傍、空気清浄装置16とほぼ同じ位置、または空気清浄装置16の直下位置などに配置される。パーティクルセンサ20は、設計条件や区画12におけるレイアウト上の制約などを考慮して配置される。粒子濃度が低い場合は空気の清浄度が高い。パーティクルセンサ20には温度センサが併設されていてもよい。パーティクルセンサ20a~20cは、それぞれ制御部28に検出信号を供給する。温度センサが設けられている場合、温度の信号は熱交換装置22a,22bに供給される。
【0029】
熱交換装置22は空気清浄装置16よりも上方で、天面12aの近傍に配置されており、下方から吸い込んだ空気を熱交換(熱除去)して側方に向けて吹き出す。熱交換装置22は、各空気清浄装置16の中間位置に設けられている。熱交換装置22は温度センサの信号や状況に応じて設定温度や風速を調整可能である。熱交換装置22が吹出す処理後の空気は、熱交換装置22の空気吸込口へ短絡せず、且つ、空気清浄装置16の空気吸込口へ十分に吸込まれる風速とする。熱交換装置22はFCU(Fan Coil Unit)とも呼ばれる。
【0030】
撮像手段23は静止画や動画を撮像する装置である。撮像手段23は区画12の少なくとも一部(たとえば生産装置14を含む領域)を撮像して制御部28などに記録することができる。撮像手段23a~23cは、たとえば人感センサ18a~18cの監視領域に個別に対応して設けられている。撮像手段23の数は人感センサ18の数とは異なってもよい。人感センサ18はカメラである場合、撮像手段23を兼ねることも可能である。
【0031】
このように構成される空気清浄システム10では、区画12内の空気は、空気清浄装置16a~16cの上方から吸い込まれて清浄化されて下方に吹き出され、生産装置14や人間Hなどの熱源によって加温された後に床面12bで折り返して上昇する。上昇した空気は各空気清浄装置16の中間に配置されている熱交換装置22a,22bに吸い込まれ、熱交換された後に側方に吹出されて再び空気清浄装置16a~16cに吸い込まれて対流することになる。なお、図1および図3では区画12内の空気の流れを矢印で示している。
【0032】
空気清浄システム10では、空気清浄装置16と熱交換装置22とが別体化していることから、温度調整と空気清浄化とを個別かつ必要限度で行うことが可能となり、いずれか一方が他方の影響によって過剰な能力で運転されてしまうことがない。また、空気の流れは区画12内を循環・対流させることが可能になり、床下や天井裏の空気流路が不要となる。
【0033】
なお図2では、各制御対象および各検出器が制御部28に対して直列状に接続されている例を示すが、各個が制御部28に直接接続されていてもよい。制御部28は、例えばPLC(Programmable Logic Controller)であって、区画12内に設けられている。空気清浄システム10では、室外に大掛かりな中央処理装置、例えばFEMS(Factory Energy Management System)を設ける必要がなく、室内の小型な制御部28で制御処理をすることができてシステム構築コストを低減することができる。また、空気清浄装置16と熱交換装置22とは機能的に独立しているが、熱交換装置22についても制御部28で制御してもよい。この場合、制御部28は区画12の温度に基づいて熱交換装置22を制御するとよい。
【0034】
空気清浄装置16は出力可変型である。制御部28は粒子濃度(例えば、パーティクルセンサ20a~20cによる検出値の平均値)や温度に基づき、図示しないインバータを介して空気清浄装置16の出力制御(つまり、ファン24の回転数制御および送風量制御)を行う。空気清浄装置16の出力とは、回転数および送風量と実質的に同義である。制御部28が空気清浄装置16に対して行う制御とは広義であって定速運転、変速運転および停止を含む。停止とは電源オンのままファン24の風量を0にする場合と、電源オフの場合とを含む。
【0035】
次に、空気清浄システム10で実行される制御について説明する。
【0036】
図4は、空気清浄システム10で実行される4つの制御モードとその移行関係を示すブロック図である。空気清浄システム10では、制御部28が図4に示す基本モード(第1制御モード)、間引きモード(第2制御モード)、人感モード(第3制御モード)および最大モード(第4制御モード)の合計4つのモードを実行する。モードの移行は後述する条件にしたがって自動的に行われる。
【0037】
基本モードは定常運転ともいうべきモードであり、粒子濃度が目標濃度(第1閾値)またはそれ以下となるように出力を制御する。この制御は、例えば比例制御やPID制御である。基本モードでは区画12内の全数の空気清浄装置16を同じ出力で運転する。基本モードで運転する空気清浄装置16の台数は基本的には全数であるが、条件によっては規定数N(N≧2)としてもよい。
【0038】
なお、空気清浄システム10では、空気清浄装置16からの清浄気流が生産装置14の作業エリア(例えば、床から1000mm程度の位置)まで到達する必要がある。したがって、基本モードでは運転中の空気清浄装置16について、清浄気流が作業エリアに届くように最低回転速度が規定されている。この最低回転速度は、空気清浄装置16の下部の熱負荷状況および空気清浄装置16の設置高さなどに基づいて個別に規定するとよい。なお、この最低回転速度は基本的に人間Hが存在せず発塵負荷が十分に小さい状態を想定して規定されており、十分に低い値であって省エネルギー効果がある。
【0039】
間引きモードは、区画12内にある空気清浄装置16を全数動かす必要がないと判断されたときに実行されるモードであり、基本モードから移行する。具体的には、区画12内の粒子濃度が目標濃度以下であって、所定の安定状態基準が満たされるときに、運転中の空気清浄装置16を所定台数(0台を含む)まで順次停止させる。この場合、例えばまず空気清浄装置16aを止め、所定時間経過しても目標濃度を下回っていた場合、空気清浄装置16bを止める。以降、これを繰り返して所定の台数まで順次止めていく。間引きモードにおける空気清浄装置16の運転は、例えば基本モードと同様であって粒子濃度が目標濃度またはそれ以下となるように出力を制御する。
【0040】
人感モードは人間Hからの発塵に対応するモードであり、ファン24を所定の第1出力またはそれ以上で運転させる。この第1出力は、基本モードにおける通常の出力範囲の最大値以上として規定されている。人感センサ18によって人間Hを検知した際に、基本モードまたは間引きモードから人感モードへ移行する。人感モードへの移行基準の詳細は後述する。人感モードで運転する空気清浄装置16の台数は基本モードで運転する規定数N以上(全数を含む)とする。
【0041】
最大モードは、粒子濃度が所定の監視濃度(第2閾値)を超えた場合に移行するモードである。監視濃度は上記の目標濃度よりも高い値であり、生産装置14による生産に影響を与えてしまう濃度よりは低い値だが、速やかな清浄化が望まれる状態の値である。また、最大モードは、粒子濃度が所定の増加速度閾値を超えた場合にも移行する。最大モードは他のすべての制御モードから同じ条件によって移行し、全数の空気清浄装置16を第2出力で運転させる。この第2出力は基本的には最大定格出力であるが、条件によっては上記の第1出力より大きい規定出力としてもよい。
【0042】
次に、4つの制御モード間の移行条件について詳細に説明する。以下、制御モード間の移行条件を図4の移行矢印に付した小文字アルファベットに従って説明する。制御モード間の移行は以下の条件に基づくが、条件成立後に所定の移行猶予時間を設けてもよい。
【0043】
a.基本モードから間引きモードへ移行する条件
以下の第1安定状態基準または第2安定状態基準が満たされるときに基本モードから間引きモードへ移行する。
【0044】
第1安定状態基準:空気清浄装置16の出力設定範囲における最低出力運転が所定時間続いた場合に間引きモードへ移行する。
【0045】
第2安定状態基準:粒子濃度が上記の目標濃度よりも小さい過剰清浄濃度をさらに下回る状態が所定時間続いた場合に間引きモードへ移行する。これらの2つの条件以外にも粒子濃度が十分低い値に安定していて、増加する見込みがないと推定される状態を安定状態基準としてもよい。
【0046】
b.基本モードから人感モードへ移行する条件
以下の第1人感モード条件または第2人感モード条件が成立したときに基本モードから人感モードへ移行する。
【0047】
第1人感モード条件:区画12内に人間Hが存在しない状態で基本モードを実行しているときに人間Hが区画12内に立ち入った場合で、x人の人間Hが立ち入って所定時間経過すると人感モードへ移行する。xは1以上の定数である。
【0048】
第2人感モード条件:区画12には人間Hが存在するが、発塵の影響が小さい場合(例えば、人間Hが少数であり、または人間Hの動きが少ない場合。以下、低発塵状態という。)で基本モードを実行しているときに人間Hが新たに立ち入った場合で、現在いるy人の人間Hに対して所定割合(例えば50%)以上の人数が新たに立ち入って所定時間経過すると人感モードへ移行する。
【0049】
c.基本モードから最大モードへ移行する条件
基本モードの実行中に粒子濃度が監視濃度を超えたとき、または粒子濃度が所定の増加速度閾値を超えたときに最大モードへ移行する。
【0050】
d.人感モードから基本モードへ移行する条件
以下の第1基本モード条件または第2基本モード条件が成立したときに人感モードから基本モードへ移行する。なお、人感モード中で粒子濃度が低い場合には、まず比例制御を行う基本モードへ移行する。間引きモードでは、基本モードに移行しても問題がない(例えば、粒子濃度が比例制御における回転数下限値でも粒子濃度が目標濃度を下回らない)、と判断された場合に移行する。したがって、人感モードから間引きモードへの移行は必ず基本モードを経由するものとする。なお、d.およびi.の途中で実行される移行モードについては後述する。
【0051】
第1基本モード条件:低発塵状態で人感モードを実行しているとき、所定時間を経過しても粒子濃度が目標濃度を下回っていた場合に基本モードへ移行する。
【0052】
第2基本モード条件:低発塵状態で人感モードを実行しているとき、人間Hが区画12外へ出て所定時間経過し(人感センサ18が人間H不在の信号を所定時間出力し)、かつ粒子濃度が目標濃度以下であった場合に基本モードへ移行する。
【0053】
e.人感モードから最大モードへ移行する条件
人感モードの実行中に粒子濃度が監視濃度を超えた場合に最大モードへ移行する。これは、上記のc.の条件(基本モードから最大モードへの移行)と同じ考え方である。
【0054】
f.間引きモードから基本モードへ移行する条件
間引きモードの実行中に、粒子濃度が目標濃度を超えた場合に基本モードへ移行する。この場合の移行途中においては、間引いて停止させた空気清浄装置16も含め、規定数N以上の空気清浄装置16を基本モードの最低回転速度で動かす。その後、基本モードに則って運転をする。
【0055】
g.間引きモードから人感モードへ移行する条件
上記のb.の条件(基本モードから人感モードの移行)と同じで第1人感モード条件または第2人感モード条件が成立したときに間引きモードから人感モードへ移行する。
【0056】
h.間引きモードから最大モードへ移行する条件
人感モードの実行中に粒子濃度が監視濃度を超えた場合に所定出力で運転する最大モードへ移行する。これは、上記のc.の条件(基本モードから最大モードへの移行)と同じ考え方である。
【0057】
i.最大モードから基本モードへ移行する条件
最大モードの実行中に、粒子濃度が目標濃度を下回った場合に基本モードへ移行する。なお、最大モードから間引きモードへは移行しないものとする。なぜなら、最大モードは基本的に緊急時に発動するものであり、そのような状況下で省エネルギーが目的の間引きモードへ移行することは適切でないためである。
【0058】
j.最大モードから人感モードへ移行する条件
最大モードが解除されるのは粒子濃度が目標濃度まで下がってきたことを検知した場合であり通常は基本モードへ移行することになるが、環境条件やシステム仕様などによっては、人間Hの存在が検出されているときには基本モードを経由せずに最大モードから人感モードへ移行してもよい。
【0059】
上述したように、本実施の形態にかかる空気清浄システム10においては、制御部28は、区画12内の粒子濃度が目標濃度以下となるように規定数N以上の空気清浄装置16を動作させる基本モードと、区画12内の粒子濃度が目標濃度以下であって、所定の安定状態基準が満たされるときに、運転中の空気清浄装置16を所定台数まで順次停止させる間引きモードとを実行する。このように、通常の基本モードとは別に間引きモードを実行することにより運転コストを低減するとともに省エネルギー化を図ることができる。また、間引きモードでは、特定の場所や特定の時間に関して集中的に空気浄化するのではなく、定常時における基本モードから移行することにより運転コストを一層低減することができる。
【0060】
また、制御部28は、人感センサ18が人間Hを検出したときに規定数N以上の空気清浄装置16を所定の第1出力以上で運転する人感モードを実行する。人感モードによれば、区画12内に人間Hが入ってきた場合にも粒子濃度を適切に維持することができる。
【0061】
さらに制御部28は、区画12内の粒子濃度が監視濃度以上となったときに全数の空気清浄装置16を所定の第2出力以上で運転する最大モードを実行する。このように粒子濃度が監視濃度以上となった場合には、全数の空気清浄装置16を所定の第2出力以上で運転することにより、粒子濃度を速やかに低下させることができる。
【0062】
上記の4つの制御モードについては、すべてを使用する必要はない。例えば、人感センサ18を設けない場合には人感モードは使用しない。また、区画12の全体に上記の制御モードを一律に適用する必要もなく、部分的に常に最大モードや間引きモードで動かしてもよい。さらに、人感センサ18による人間Hの有無および粒子濃度以外にも、区画12の温度や生産装置14の稼働状況などによって制御モードの移行に反映させてもよい。
【0063】
次に、上記の制御モードの一部について更に拡張して柔軟な対応を可能にする手段を説明する。
【0064】
上記の4つの制御モードは、パーティクルセンサ20によって検出される粒子濃度および人感センサ18によって検出される人間Hの有無によって移行条件が規定されているが、これは端的には以下の4つのケースに区分することができる。
ケースA:区画12内に人間Hが存在していて、粒子濃度が高い場合
ケースB:区画12内に人間Hが存在していて、粒子濃度が低い場合
ケースC:区画12内に人間Hが存在せず、粒子濃度が高い場合
ケースD:区画12内に人間Hが存在せず、粒子濃度が低い場合
【0065】
ケースAおよびケースDは人間Hの有無が粒子濃度に影響を与えていると考えられる通常の場合である。このうち、ケースAは、上記の人感モードによって対応し粒子濃度を低下させることができる。また、ケースDは、上記の基本モードまたは間引きモードによって対応し送風量を低下させることができる。
【0066】
一方、ケースBのように区画12内に人間Hが存在していても、粒子濃度が低いという状況もあり得る。これは、たとえば上記の第1基本モード条件が成立している場合であり、人感モードであっても低発塵状態で粒子濃度が目標濃度を下回っていれば基本モードに移行する。また、上記の第1安定状態基準や第2安定状態基準が成立すれば基本モードから間引きモードに移行する。つまり、人間Hが存在していても基本モードに移行する場合があり、さらには基本モードを経て間引きモードに移行する場合があり得る。
【0067】
このように、基本モードおよび間引きモードでは人間Hが存在する状況と不在の状況とがあることから、人間Hによる発塵の可能性を考慮すれば場合分けをして適切な対処をすることが一層好ましい。さらに、ケースCは通常の運用時には想定されないものであり、このような状況についても対処をすることが好ましい。以下、このような対処について3つの対処例を説明する。
【0068】
まず、第1の対処例としては、人感モードの実行中で人感センサ18が人間Hの存在を検出しているときに、区画12内の粒子濃度が所定閾値以下となった場合、つまり上記の第1基本モード条件が成立した場合には、空気清浄装置16の出力を数段階に分けて徐々に減少させて基本モードに移行する。この場合の出力減少の方式は、例えば以下に説明する第1態様または第2態様を取り得る。
【0069】
第1の対処例における出力減少の第1態様としては、人感モードにおける上記の第1出力から、基本モードにおける出力範囲の最大値(つまり第1制御モードで規定される最大出力)まで徐々に減少させ、その後、基本モードに則って運転をする。
【0070】
人感モードにおいて粒子濃度が目標濃度に比べて十分に低い場合、基本モードで通常のPID制御を行うと空気清浄装置16の風量が極端に低下する不安定な運転となり得るが、上記のとおり出力を徐々に減少させることにより、風量の急減を防止して安定的でスムーズな運転となる。空気清浄装置16の不安定な運転とは、例えば人感モードで対処できていた発塵状況が基本モードの最低回転速度では対処できず、結局基本モードのPID制御により回転数・風量が最大近くまで上昇し、または最大モードに移行するといった現象であるが、風量を徐々に減少させれば安定的な運転が可能となる。また、このモード移行中において仮に人間Hに起因して粒子濃度が上昇する状況となった場合には、人感モードに戻りまたは最大モードに移行するなどの対応を迅速に行うことができる。
【0071】
このモード移行中には、たとえば、段階ごとに個別の目標粒子濃度を設定しておき、この目標粒子濃度に達するたびに出力を次の段階まで絞る。空気清浄装置16の出力を減少させる段階数はステップ的な有限回でなく、連続的に減少させてもよい。
【0072】
人感制御モードから基本制御モードに移行するまでの間は移行モード(図4参照)として実行する。移行モードは人感制御モードおよび基本制御モードとは異なる独立的なモードである。このような独立的な移行モードを設けることにより、例えば回転数の上昇が必要になった場合の対処(ステップ的に上昇させるのか、一気に人感モードの回転数まで戻すのか、基本モードのようなPID制御とするのかなど)を詳細に規定しやすい。また、人感制御モードから基本制御モードに移行するまでの時間が長くなる場合において、例えば所定の表示部に移行モードである旨を表示すると作業者やシステム管理者が状況を把握しやすい。さらに、人感制御モードと基本制御モードとの間でいずれのモードにも属さない不明確な状態をなくすことができる。移行モードは後述する第2態様や最大モードからの移行にも対応する。
【0073】
人感制御モードから基本制御モードまでは規定時間Tをかけて空気清浄装置16の出力を徐々に減少させるとよい。移行モードの規定時間Tの適切な値に関しては、事前のCFD(Computational Fluid Dynamics)解析やFFUの運転状態をもとにした換気回数計算で推定することができる。例えば、定格運転時で換気回数15回/h程度であれば規定時間Tは数分にすればよい。
【0074】
図5は、第1の対処例における空気清浄装置16の出力と、粒子濃度と、制御モードの区分を示すグラフであり、(a)は移行モードに規定時間Tをかける場合のグラフであり、(b)は規定時間Tに達する以前に移行モードから基本モードに移行する場合のグラフである。図5において、細線50は空気清浄装置16の出力(回転数または送風量と実質的同義)であり、太線52は粒子濃度であり、鎖線54は目標濃度である。また図5で、横軸は経過時間であり、縦軸は細線50、太線52、鎖線54に対応している。
【0075】
図5(a)に示すように、人感モードと基本モードとの間の移行モードでは規定時間Tをかけて、現状の高い出力から、基本制御モードで規定される最大出力まで規定時間Tをかけて出力を調整する。この際、到達出力までの下げ方は図示のような線型的なものでもよいし、複数段階のステップ的なものでもよい。この方式では出力を徐々に減少させるため、粒子濃度は徐々に増加していく。この際、発塵源からの粒子の拡散ならびにそれに付随した粒子濃度の上昇に対し、適切な時間で出力を下げていった場合、パーティクルセンサ20の値は制御目標とした粒子濃度54に到達し、これをトリガーに移行モードから基本モードへ移行する。この方法により、粒子濃度の不適切な上昇や出力、粒子濃度のハンチングを防ぐことができる。
【0076】
なお仮に、移行モードを設けずに仮想線50aで示すように出力を急減させると、粒子濃度は仮想線52aで示すように急上昇し目標濃度である鎖線54を超えてしまい、これにより、図示の通り出力も再び上昇させることになり、粒子濃度がハンチングする懸念がある。これに対して上記の方式では粒子濃度のハンチングを防ぐことができる。
【0077】
図5(a)は、出力を基本モードのレベルまで落としても粒子濃度が目標濃度を超えない場合である。図5(b)は、鎖線50bで示すように出力を基本モードのレベルまで時間をかけて落とそうとしていたところ、途中で粒子濃度が目標濃度付近となり、移行モードから基本モードへ移行して最適な出力にとどまる様子を示している。すなわち、移行モードでは徐々に出力を落としていくが、その最中に目標濃度に達した(または上回った)場合には、即座に基本モードに切り替わるものとする。このように、移行モードでは状況に応じた柔軟な対応が可能となっている。
【0078】
また、出力を徐々に変化させる方式は出力低下時だけでなく上昇時でも使用することが可能である。本来、出力を増加させる場合は粒子濃度の上昇が懸念される状況にあるため、時間をかけるよりも迅速な制御による対応が望ましいが、区画12に対する要求清浄度に対し十分に安全なレベルで制御を行っている場合などにおいて、出力増加時のハンチングを防ぐ意味で、出力上昇時にもこの移行モードを適用する制御が可能である。この場合もスムーズなモードの移行が実現できる。
【0079】
次に、第1の対処例における出力減少の第2態様としては、人感制御モードから空気清浄装置16の出力を所定のモード移行出力まで規定時間Tをかけて徐々に減少させてから基本制御モードに移行する。具体的には、移行モードに突入する段階でPID制御に則って目標回転数を定め,その値になるように規定時間Tをかけて送風量を下げていく。このモード移行出力は、その時点のパーティクルセンサ20で検出される粒子濃度をもとに到達すべきと判断した送風量に相当し、基本モードの制御則に沿って設定される。上記の第1態様では出力を基本モードの最大出力まで減少させるが、設計条件によっては「基本モードの最大出力」≧「人感モードの出力」となることもあり得る。
【0080】
第2態様では、人感モードや最大モードの実行中に出力を下げる余地が生じた場合に、モード移行出力に合わせるよう現在の出力を徐々に落としていくことから、基本モードの制御則がPID制御であればこの場合の移行モードの出力の下げ方もPID制御ということになる。この第2態様によれば、現在の出力>目標の出力の条件が常に成立し、設定上の不都合がない。基本モードの最低出力≧人感モードの設定出力という設定状況はあり得ないためである。また、この第2態様では上記の第1態様と同様に出力を徐々に減少させることにより、風量の急減を防止して安定的でスムーズな運転となる。
【0081】
最大制御モードから基本制御モードに移行する際に上記と同様の移行モードを経由し、空気清浄装置16の出力を徐々に減少させて基本制御モードに移行してもよい(図4参照)。これにより、最大制御モードから基本制御モードに移行する際にも安定したスムーズな移行が可能となる。
【0082】
次に、第2対処例について説明する。
【0083】
第2の対処例としては、人感モードから基本モードを経て間引きモードに移って該間引きモードを実行しているとき、人感センサ18による人間Hの検出の有無により、間引きモードから基本モードへ移行する条件が異なるものとする。すなわち、人間Hが不在の場合には、上記の「f」で示したように、粒子濃度が目標濃度を超えた場合に間引きモードから基本モードへ移行するが、人間Hが存在する場合はこのトリガーとしての移行閾値を目標濃度より低い値に設定する。
【0084】
間引きモードでは空気清浄装置16の運転台数が間引かれていることから、区画12内で空気の流れが遅くなり又は不均一となっている可能性があり、人間Hに起因して生産装置14付近の粒子濃度が多少高くなった場合に、やや離れた位置(たとえば、天面12aの近傍)のパーティクルセンサ20で検出するまでにタイムラグが発生し、制御にも遅れが生ずる懸念がある。また、上記の通り空気清浄装置16の最低回転速度は発塵負荷が十分に小さい状態を想定して規定されていて、人間Hが多い場合で潜在的な発塵負荷が大きいと判断される場合には当初規定の最低回転速度は低すぎて妥当ではない状況もあり得る。これに対して、空気清浄システム10においては上記のように人間Hが存在する場合には基本モードへの移行閾値を低い値に設定することにより、早めに移行するように促進され、人間Hによる発塵で粒子濃度が上昇することを抑制できる。
【0085】
この変更されたトリガー条件によって間引きモードから基本モードに戻った場合には、その後の所定時間、変更された移行閾値をそのまま基本モードにおける運転の目標濃度としてもよい。また、人間Hが多い場合には最低回転速度を高めに設定してもよい。
【0086】
また、上記の場合は人間Hの有無により移行のためのトリガー条件を変えているが、人間Hの人数によってトリガー条件を変えると一層高精度の制御が可能である。例えば移行の閾値を考える際,人間Hの人数zに対して以下のような式で設定することが考えられる。
移行閾値C=3000-300z z:区画12内の検知人数(0≦z≦10)
【0087】
この式では人間Hの検知人数zが0人の場合には移行閾値を3000として制御し、検知人数zが増えることで移行閾値をより低くして厳しめの条件としている。区画12内にいる人数zは10人以下(C≧0)としているが、仮に10人以上の場合はz=10とすればよい。この式の場合は、検知人数が10人以上で目標濃度Ctが0となるので、10人を超えるような状況では人感モードから基本モードへは移行しないこととなる。
【0088】
次に、第3の対処例について説明する。
【0089】
第3の対処例は上記のケースCに対応するものである。ケースCは、区画12内に人間Hが存在しないにもかかわらず粒子濃度が高い場合であり、例えば最大モードに移行して粒子濃度の低下を図る。一方、ケースCは通常の運用時には想定されないものであり、装置・機器・センサ類の故障なども考えられることから、警報(注意報を含む)を出力するとともに状況を記録するために撮像手段23により画像(静止画や動画)を取得して記録する。これにより、無人であるはずの区画12内で発生した事象を事後的にまたは遠隔的に確認することができる。
【0090】
この場合、区画12の全体を撮像してもよいし、複数のパーティクルセンサ20のうち特に粒子濃度が高い箇所の周辺を撮像してもよい。警報は区画12内または遠隔の監視箇所に対して表示、発光、音響、音声などにより報知する。撮像手段23は区画12を常時撮像し記録するものであってもよい。この場合、ケースCの状況が発生した時刻やその前後の画像を特定可能な手段を有するとよい。
【0091】
上述した対処例は、空気清浄システム10が人感センサ18およびパーティクルセンサ20を備え、双方を有効に活用することによって実現される。仮にパーティクルセンサ20だけで人感センサ18が設けられていない場合には、実行される制御区分は図6(a)に示すように2種類のみとなる。つまり、粒子濃度が高いときには最大運転(例えば最大モード)で対応し、低いときには省エネルギー運転(例えば間引きオード)で対応する。また、仮に人感センサ18だけでパーティクルセンサ20が設けられていない場合には、実行される制御区分は図6(b)に示すように2種類のみとなる。つまり、人間Hが存在するときには最大運転で対応し、不在であるときには省エネルギー運転で対応することになる。
【0092】
これに対して、本実施例のように人感センサ18とパーティクルセンサ20とを併用している場合には、実行される制御区分は図6(c)に示すように4種類となり、しかもより緻密な制御が可能となっている。つまり、粒子濃度が高い場合には最大運転で対応するが、このうち人間Hが存在する場合(ケースA)では通常の最大運転を行うのに対し、人間Hが不在の場合(ケースC)では警報を発するとともに画像を記録する。
【0093】
また、粒子濃度が低い場合には省エネルギー運転で対応するが、このうち人間Hが存在する場合(ケースB)では基本モードに戻りやすくする限定的な適用であるのに対し、人間Hが不在の場合(ケースD)ではそのような限定のない通常の適用となる。
【0094】
このように、空気清浄システム10では人感センサ18およびパーティクルセンサ20を備えていることから、区画12内の人間Hの行動により突発的な発塵が生じた場合にも迅速に対応でき、また人感モードから基本モード、間引きモードへと移行するとき又は移行した後に、より慎重な制御が可能となる。また通常の運用で想定されない状況を検知し、それを警報として出力し、画像などの情報を記録することで、管理者の早急かつ適切な対策を可能にする。
【0095】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0096】
10 空気清浄システム
12 区画
14 生産装置
16,16a,16b,16c 空気清浄装置
18,18a,18b,18c 人感センサ
20,20a,20b,20c パーティクルセンサ
22,22a,22b 熱交換装置
23,23a,23b,23c 撮像手段
24 ファン
28 制御部
H 人間
図1
図2
図3
図4
図5
図6