(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】炭化水素の分離方法及び分離装置
(51)【国際特許分類】
C07C 7/04 20060101AFI20231127BHJP
C07C 9/06 20060101ALI20231127BHJP
C07C 9/04 20060101ALI20231127BHJP
F25J 3/02 20060101ALI20231127BHJP
F25J 3/06 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
C07C7/04
C07C9/06
C07C9/04
F25J3/02 B
F25J3/06
(21)【出願番号】P 2019200772
(22)【出願日】2019-11-05
【審査請求日】2022-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000222174
【氏名又は名称】東洋エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】笹倉 啓佑
(72)【発明者】
【氏名】山本 大生
(72)【発明者】
【氏名】山口 昌一
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特許第4452239(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0166336(US,A1)
【文献】特表2015-531851(JP,A)
【文献】特表2006-510867(JP,A)
【文献】国際公開第2017/157817(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0308735(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0060113(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25J 3/00-06
C07C 9/06
C07C 7/09
F25J 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともメタンとメタンより低揮発性の炭化水素とを含む原料ガスを、蒸留塔を用いて、メタンが富化されかつメタンより低揮発性の炭化水素がより薄い残留ガスと、メタンがより薄くかつメタンより低揮発性の炭化水素が富化された重質留分に分離する炭化水素の分離方法において、
a)前記原料ガスを、冷媒としての前記残留ガス及び別の冷媒を用いて冷却して部分凝縮させ、その後気液分離する工程;
b)工程aから得られた液を減圧して前記蒸留塔に供給する工程;
c)工程aから得られたガスの一部又は全部を、エキスパンダーにより膨張させて部分凝縮させ、その後気液分離する工程;
d)工程cから得られた液を、工程aにおいて前記別の冷媒として用いた後に、前記蒸留塔に供給する工程;
e)工程cから得られたガスの一部又は全部を前記蒸留塔に供給する工程;及び
f)前記蒸留塔の塔頂部から前記残留ガスを得、前記蒸留塔の塔底部から前記重質留分を得る工程
を有
し、
工程aから得られたガスの一部を工程cに供し、
工程aから得られたガスの残部を前記残留ガスとの熱交換により冷却して全凝縮させ、全凝縮した液を減圧して前記蒸留塔に供給することを特徴とする炭化水素の分離方法。
【請求項2】
少なくともエタンとエタンより低揮発性の炭化水素とを含む原料ガスを、蒸留塔を用いて、エタンが富化されかつエタンより低揮発性の炭化水素がより薄い残留ガスと、エタンがより薄くかつエタンより低揮発性の炭化水素が富化された重質留分に分離する炭化水素の分離方法において、
a)前記原料ガスを、冷媒としての前記残留ガス及び別の冷媒を用いて冷却して部分凝縮させ、その後気液分離する工程;
b)工程aから得られた液を減圧して前記蒸留塔に供給する工程;
c)工程aから得られたガスの一部又は全部を、エキスパンダーにより膨張させて部分凝縮させ、その後気液分離する工程;
d)工程cから得られた液を、工程aにおいて前記別の冷媒として用いた後に、前記蒸留塔に供給する工程;
e)工程cから得られたガスの一部又は全部を前記蒸留塔に供給する工程;及び
f)前記蒸留塔の塔頂部から前記残留ガスを得、前記蒸留塔の塔底部から前記重質留分を得る工程
を有
し、
工程aから得られたガスの一部を工程cに供し
工程aから得られたガスの残部を前記残留ガスとの熱交換により冷却して全凝縮させ、全凝縮した液を減圧して前記蒸留塔に供給することを特徴とする炭化水素の分離方法。
【請求項3】
少なくともメタンとメタンより低揮発性の炭化水素とを含む原料ガスを、蒸留塔を用いて、メタンが富化されかつメタンより低揮発性の炭化水素がより薄い残留ガスと、メタンがより薄くかつメタンより低揮発性の炭化水素が富化された重質留分に分離する炭化水素の分離方法において、
a)前記原料ガスを、冷媒としての前記残留ガス及び別の冷媒を用いて冷却して部分凝縮させ、その後気液分離する工程;
b)工程aから得られた液を減圧して前記蒸留塔に供給する工程;
c)工程aから得られたガスの一部又は全部を、エキスパンダーにより膨張させて部分凝縮させ、その後気液分離する工程;
d)工程cから得られた液を、工程aにおいて前記別の冷媒として用いた後に、前記蒸留塔に供給する工程;
e)工程cから得られたガスの一部又は全部を前記蒸留塔に供給する工程;及び
f)前記蒸留塔の塔頂部から前記残留ガスを得、前記蒸留塔の塔底部から前記重質留分を得る工程
を有し、
工程cから得られたガスの一部を工程eに供し、
工程cから得られたガスの残部を圧縮し、前記残留ガスとの熱交換により冷却して全凝縮させ、全凝縮した液を減圧して前記蒸留塔に供給することを特徴とする炭化水素の分離方法。
【請求項4】
少なくともエタンとエタンより低揮発性の炭化水素とを含む原料ガスを、蒸留塔を用いて、エタンが富化されかつエタンより低揮発性の炭化水素がより薄い残留ガスと、エタンがより薄くかつエタンより低揮発性の炭化水素が富化された重質留分に分離する炭化水素の分離方法において、
a)前記原料ガスを、冷媒としての前記残留ガス及び別の冷媒を用いて冷却して部分凝縮させ、その後気液分離する工程;
b)工程aから得られた液を減圧して前記蒸留塔に供給する工程;
c)工程aから得られたガスの一部又は全部を、エキスパンダーにより膨張させて部分凝縮させ、その後気液分離する工程;
d)工程cから得られた液を、工程aにおいて前記別の冷媒として用いた後に、前記蒸留塔に供給する工程;
e)工程cから得られたガスの一部又は全部を前記蒸留塔に供給する工程;及び
f)前記蒸留塔の塔頂部から前記残留ガスを得、前記蒸留塔の塔底部から前記重質留分を得る工程
を有し、
工程cから得られたガスの一部を工程eに供し、
工程cから得られたガスの残部を圧縮し、前記残留ガスとの熱交換により冷却して全凝縮させ、全凝縮した液を減圧して前記蒸留塔に供給することを特徴とする炭化水素の分離方法。
【請求項5】
工程cから得られたガスの全部を工程eに供する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
工程aから得られたガスの全部を工程cに供する、請求項3または4に記載の方法。
【請求項7】
少なくともメタンとメタンより低揮発性の炭化水素とを含む原料ガスを、メタンが富化されかつメタンより低揮発性の炭化水素がより薄い残留ガスと、メタンがより薄くかつメタンより低揮発性の炭化水素が富化された重質留分に分離する炭化水素の分離装置において、
塔頂部から前記残留ガスを排出し、塔底部から前記重質留分を排出する蒸留塔;
前記原料ガスを冷却して部分凝縮させる熱交換手段であって、冷媒として前記残留ガスが流れる冷媒流路と、別の冷媒が流れる別の冷媒流路とを含む熱交換手段;
前記熱交換手段から得られた部分凝縮した原料ガスを気液分離する第1の気液分離器;
前記第1の気液分離器から得られた液を減圧バルブを経て前記蒸留塔に供給するライン;
前記第1の気液分離器から得られたガスの一部又は全部を、膨張させて部分凝縮させるエキスパンダー;
前記エキスパンダーの出口に接続された第2の気液分離器;
前記第2の気液分離器から得られた液を、前記別の冷媒流路を経て、前記蒸留塔に供給するライン;及び
前記第2の気液分離器から得られたガスの一部又は全部を前記蒸留塔に供給するライン
を含
み、
前記第1の気液分離器から得られたガスの一部を前記エキスパンダーに送るライン;
前記第1の気液分離器から得られたガスの残部を、前記残留ガスとの熱交換により冷却して全凝縮させる凝縮器;
前記凝縮器で全凝縮した液を減圧する減圧バルブ;及び
前記凝縮器で全凝縮した液を減圧する減圧バルブの出口を前記蒸留塔に接続するライン
を含む炭化水素の分離装置。
【請求項8】
少なくともエタンとエタンより低揮発性の炭化水素とを含む原料ガスを、エタンが富化されかつエタンより低揮発性の炭化水素がより薄い残留ガスと、エタンがより薄くかつエタンより低揮発性の炭化水素が富化された重質留分に分離する炭化水素の分離装置において、
塔頂部から前記残留ガスを排出し、塔底部から前記重質留分を排出する蒸留塔;
前記原料ガスを冷却して部分凝縮させる熱交換手段であって、冷媒として前記残留ガスが流れる冷媒流路と、別の冷媒が流れる別の冷媒流路とを含む熱交換手段;
前記熱交換手段から得られた部分凝縮した原料ガスを気液分離する第1の気液分離器;
前記第1の気液分離器から得られた液を減圧バルブを経て前記蒸留塔に供給するライン;
前記第1の気液分離器から得られたガスの一部又は全部を、膨張させて部分凝縮させるエキスパンダー;
前記エキスパンダーの出口に接続された第2の気液分離器;
前記第2の気液分離器から得られた液を、前記別の冷媒流路を経て、前記蒸留塔に供給するライン;及び
前記第2の気液分離器から得られたガスの一部又は全部を前記蒸留塔に供給するライン
を含
み、
前記第1の気液分離器から得られたガスの一部を前記エキスパンダーに送るライン;
前記第1の気液分離器から得られたガスの残部を、前記残留ガスとの熱交換により冷却して全凝縮させる凝縮器;
前記凝縮器で全凝縮した液を減圧する減圧バルブ;及び
前記凝縮器で全凝縮した液を減圧する減圧バルブの出口を前記蒸留塔に接続するライン
を含む炭化水素の分離装置。
【請求項9】
少なくともメタンとメタンより低揮発性の炭化水素とを含む原料ガスを、メタンが富化されかつメタンより低揮発性の炭化水素がより薄い残留ガスと、メタンがより薄くかつメタンより低揮発性の炭化水素が富化された重質留分に分離する炭化水素の分離装置において、
塔頂部から前記残留ガスを排出し、塔底部から前記重質留分を排出する蒸留塔;
前記原料ガスを冷却して部分凝縮させる熱交換手段であって、冷媒として前記残留ガスが流れる冷媒流路と、別の冷媒が流れる別の冷媒流路とを含む熱交換手段;
前記熱交換手段から得られた部分凝縮した原料ガスを気液分離する第1の気液分離器;
前記第1の気液分離器から得られた液を減圧バルブを経て前記蒸留塔に供給するライン;
前記第1の気液分離器から得られたガスの一部又は全部を、膨張させて部分凝縮させるエキスパンダー;
前記エキスパンダーの出口に接続された第2の気液分離器;
前記第2の気液分離器から得られた液を、前記別の冷媒流路を経て、前記蒸留塔に供給するライン;及び
前記第2の気液分離器から得られたガスの一部又は全部を前記蒸留塔に供給するライン
を含み、
前記第2の気液分離器から得られたガスの一部を前記蒸留塔に供給するライン;
前記第2の気液分離器から得られたガスの残部を圧縮するコンプレッサー;
前記コンプレッサーで圧縮されたガスを前記残留ガスとの熱交換により冷却して全凝縮させる凝縮器;
前記凝縮器で全凝縮した液を減圧する減圧バルブ;及び
前記凝縮器で全凝縮した液を減圧する減圧バルブの出口を前記蒸留塔に接続するライン
を含む炭化水素の分離装置。
【請求項10】
少なくともエタンとエタンより低揮発性の炭化水素とを含む原料ガスを、エタンが富化されかつエタンより低揮発性の炭化水素がより薄い残留ガスと、エタンがより薄くかつエタンより低揮発性の炭化水素が富化された重質留分に分離する炭化水素の分離装置において、
塔頂部から前記残留ガスを排出し、塔底部から前記重質留分を排出する蒸留塔;
前記原料ガスを冷却して部分凝縮させる熱交換手段であって、冷媒として前記残留ガスが流れる冷媒流路と、別の冷媒が流れる別の冷媒流路とを含む熱交換手段;
前記熱交換手段から得られた部分凝縮した原料ガスを気液分離する第1の気液分離器;
前記第1の気液分離器から得られた液を減圧バルブを経て前記蒸留塔に供給するライン;
前記第1の気液分離器から得られたガスの一部又は全部を、膨張させて部分凝縮させるエキスパンダー;
前記エキスパンダーの出口に接続された第2の気液分離器;
前記第2の気液分離器から得られた液を、前記別の冷媒流路を経て、前記蒸留塔に供給するライン;及び
前記第2の気液分離器から得られたガスの一部又は全部を前記蒸留塔に供給するライン
を含み、
前記第2の気液分離器から得られたガスの一部を前記蒸留塔に供給するライン;
前記第2の気液分離器から得られたガスの残部を圧縮するコンプレッサー;
前記コンプレッサーで圧縮されたガスを前記残留ガスとの熱交換により冷却して全凝縮させる凝縮器;
前記凝縮器で全凝縮した液を減圧する減圧バルブ;及び
前記凝縮器で全凝縮した液を減圧する減圧バルブの出口を前記蒸留塔に接続するライン
を含む炭化水素の分離装置。
【請求項11】
前記第2の気液分離器から得られたガスの全部を前記蒸留塔に供給するライン
を含む、請求項
7または
8に記載の装置。
【請求項12】
前記第1の気液分離器から得られたガスの全部を前記エキスパンダーに送るラインを含む、請求項9または10に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、天然ガス、石油随伴ガス、または精油所もしくは石油化学プラントからのオフガスから、エタンまたはプロパンを分離・回収するために用いられる炭化水素の分離方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、メタンと炭素数2以上の炭化水素とを分離すること、またエタンと炭素数3以上の炭化水素を分離することが行われている。
【0003】
例えば、天然ガスからエタンまたはプロパンを回収する方法として、天然ガスを冷却し脱メタン塔(プロパン回収の場合には脱エタン塔)で軽質成分と、エタン(またはプロパン)及び重質炭化水素成分を蒸留分離する方法が広く用いられている。この方法では、分離に必要な温度まで天然ガスを冷却するため、プロパン冷凍システム及びターボエキスパンダーが用いられている。
【0004】
特許文献1には、天然ガス等の原料ガスから、蒸留塔を用いてエタン又はプロパンを回収する方法が開示される。この方法は以下の工程を有する。
(a)原料ガスを冷却し、その一部を凝縮させて気液分離する工程;
(b)工程(a)で得られた液を蒸留塔に供給する工程;
(c)工程(a)で得られたガスをエキスパンダーにより膨張させ、その一部を凝縮させて気液分離する工程;
(d)工程(c)で得られた液を蒸留塔に供給する工程;
(e)工程(c)で得られたガスを第1の部分と第2の部分に分岐する工程;
(f)第1の部分を蒸留塔に供給する工程;
(g)第2の部分を圧縮しかつ冷却して凝縮させた後減圧して蒸留塔にリフラックスとして供給する工程;
(h)蒸留塔の塔頂部から残留ガスを得、蒸留塔の塔底部から重質留分を得る工程。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載される方法では、工程(c)で得られた液を、そのまま蒸留塔に供給している。そのため冷熱回収の観点から改良の余地があり、エタンもしくはプロパン回収のために、比較的大きな圧縮機動力が必要であった。
【0007】
本発明の目的は、エタンまたはプロパンを回収可能な炭化水素の分離方法であって、圧縮機動力の低減を可能とする改良された冷熱回収を含む、炭化水素の分離方法を提供することである。本発明の別の目的は、この方法を実施するに好適な、炭化水素の分離装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、
少なくともメタンとメタンより低揮発性の炭化水素とを含む原料ガスを、蒸留塔を用いて、メタンが富化されかつメタンより低揮発性の炭化水素がより薄い残留ガスと、メタンがより薄くかつメタンより低揮発性の炭化水素が富化された重質留分に分離する炭化水素の分離方法において、
a)前記原料ガスを、冷媒としての前記残留ガス及び別の冷媒を用いて冷却して部分凝縮させ、その後気液分離する工程;
b)工程aから得られた液を減圧して前記蒸留塔に供給する工程;
c)工程aから得られたガスの一部又は全部を、エキスパンダーにより膨張させて部分凝縮させ、その後気液分離する工程;
d)工程cから得られた液を、工程aにおいて前記別の冷媒として用いた後に、前記蒸留塔に供給する工程;
e)工程cから得られたガスの一部又は全部を前記蒸留塔に供給する工程;及び
f)前記蒸留塔の塔頂部から前記残留ガスを得、前記蒸留塔の塔底部から前記重質留分を得る工程
を有することを特徴とする炭化水素の分離方法が提供される。
【0009】
本発明の別の態様によれば、
少なくともエタンとエタンより低揮発性の炭化水素とを含む原料ガスを、蒸留塔を用いて、エタンが富化されかつエタンより低揮発性の炭化水素がより薄い残留ガスと、エタンがより薄くかつエタンより低揮発性の炭化水素が富化された重質留分に分離する炭化水素の分離方法において、
a)前記原料ガスを、冷媒としての前記残留ガス及び別の冷媒を用いて冷却して部分凝縮させ、その後気液分離する工程;
b)工程aから得られた液を減圧して前記蒸留塔に供給する工程;
c)工程aから得られたガスの一部又は全部を、エキスパンダーにより膨張させて部分凝縮させ、その後気液分離する工程;
d)工程cから得られた液を、工程aにおいて前記別の冷媒として用いた後に、前記蒸留塔に供給する工程;
e)工程cから得られたガスの一部又は全部を前記蒸留塔に供給する工程;及び
f)前記蒸留塔の塔頂部から前記残留ガスを得、前記蒸留塔の塔底部から前記重質留分を得る工程
を有することを特徴とする炭化水素の分離方法が提供される。
【0010】
本発明のさらに別の態様によれば、
少なくともメタンとメタンより低揮発性の炭化水素とを含む原料ガスを、メタンが富化されかつメタンより低揮発性の炭化水素がより薄い残留ガスと、メタンがより薄くかつメタンより低揮発性の炭化水素が富化された重質留分に分離する炭化水素の分離装置において、
塔頂部から前記残留ガスを排出し、塔底部から前記重質留分を排出する蒸留塔;
前記原料ガスを冷却して部分凝縮させる熱交換手段であって、冷媒として前記残留ガスが流れる冷媒流路と、別の冷媒が流れる別の冷媒流路とを含む熱交換手段;
前記熱交換手段から得られた部分凝縮した原料ガスを気液分離する第1の気液分離器;
前記第1の気液分離器から得られた液を減圧バルブを経て前記蒸留塔に供給するライン;
前記第1の気液分離器から得られたガスの一部又は全部を、膨張させて部分凝縮させるエキスパンダー;
前記エキスパンダーの出口に接続された第2の気液分離器;
前記第2の気液分離器から得られた液を、前記別の冷媒流路を経て、前記蒸留塔に供給するライン;及び
前記第2の気液分離器から得られたガスの一部又は全部を前記蒸留塔に供給するライン
を含む炭化水素の分離装置が提供される。
【0011】
本発明のさらに別の態様によれば、
少なくともエタンとエタンより低揮発性の炭化水素とを含む原料ガスを、エタンが富化されかつエタンより低揮発性の炭化水素がより薄い残留ガスと、エタンがより薄くかつエタンより低揮発性の炭化水素が富化された重質留分に分離する炭化水素の分離装置におい
て、
塔頂部から前記残留ガスを排出し、塔底部から前記重質留分を排出する蒸留塔;
前記原料ガスを冷却して部分凝縮させる熱交換手段であって、冷媒として前記残留ガスが流れる冷媒流路と、別の冷媒が流れる別の冷媒流路とを含む熱交換手段;
前記熱交換手段から得られた部分凝縮した原料ガスを気液分離する第1の気液分離器;
前記第1の気液分離器から得られた液を減圧バルブを経て前記蒸留塔に供給するライン;
前記第1の気液分離器から得られたガスの一部又は全部を、膨張させて部分凝縮させるエキスパンダー;
前記エキスパンダーの出口に接続された第2の気液分離器;
前記第2の気液分離器から得られた液を、前記別の冷媒流路を経て、前記蒸留塔に供給するライン;及び
前記第2の気液分離器から得られたガスの一部又は全部を前記蒸留塔に供給するライン
を含む炭化水素の分離装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、エタンまたはプロパンを回収可能な炭化水素の分離方法であって、圧縮機動力の低減を可能とする改良された冷熱回収を含む、炭化水素の分離方法が提供される。本発明の別の態様によれば、この方法を実施するに好適な、炭化水素の分離装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は本発明の第1の実施形態に係るエタン回収方法示すプロセスフロー図である。
【
図2】
図2は比較例1のエタン回収方法を示すプロセスフロー図である。
【
図3】
図3は本発明の第2の実施形態に係るエタン回収方法を示すプロセスフロー図である。
【
図4】
図4は比較例2のエタン回収方法を示すプロセスフロー図である。
【
図5】
図5は本発明の第3の実施形態に係るエタン回収方法を示すプロセスフロー図である。
【
図6】
図6は比較例3のエタン回収方法を示すプロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の記載および図面は単に本発明の好適な形態を説明するためのものであり、本発明はこれに限定されるものではない。なお、「リフラックス」は、狭義には、蒸留塔塔頂ガスを凝縮させ再度蒸留塔に戻す液を意味するが、広義には、これに加えて、精留の目的で蒸留塔塔頂部に供給する液をも含む。本明細書においては、「リフラックス」は広義の意味で使用され、蒸留塔に供給される精留効果を有する液をも含むものである。
【0015】
〔実施形態1〕
本発明は、エタン回収プロセス及びプロパン回収プロセスに関する。本発明の第1の実施形態に関して、
図1に示すプロセスフロー図を用いてエタン回収プロセスの例を説明する。ここでいうエタン回収プロセスとは、原料ガス中に含まれる炭化水素成分を蒸留により、メタンと、エタン及び重質な成分とに分離するプロセスである。エタン回収プロセスは蒸留塔(脱メタン塔)および原料ガスを蒸留に必要な温度まで冷却する設備を有する。
【0016】
このプロセスでは、少なくともメタンとメタンより低揮発性の炭化水素とを含む原料ガスを、メタンが富化されかつメタンより低揮発性の炭化水素がより薄い残留ガスと、メタンがより薄くかつメタンより低揮発性の炭化水素が富化された重質留分に分離する。このために、塔頂部から残留ガスを排出し、塔底部から重質留分を排出する蒸留塔としての脱メタン塔11が用いられる。このプロセスでは工程a~fを行う。
【0017】
a)原料ガスを、冷媒としての残留ガス及び別の冷媒を用いて冷却して部分凝縮させ、その後気液分離する工程
この工程では、原料ガスを冷却して部分凝縮させる熱交換手段であって、冷媒として残留ガスが流れる冷媒流路と、別の冷媒が流れる別の冷媒流路とを含む熱交換手段が用いられる。また、当該熱交換手段から得られた部分凝縮した原料ガスを気液分離する第1の気液分離器が用いられる。当該熱交換手段は1つ以上の熱交換器を含むことができる。熱交換手段が2つ以上の熱交換器を含む場合、残留ガスが流れる冷媒流路と別の冷媒流路とが、同一の熱交換器に備わっていてもよいし、相異なる熱交換器に別々に備わっていてもよい。また、複数の熱交換器がそれぞれ、残留ガスが流れる冷媒流路を有していてもよい。複数の熱交換器がそれぞれ、別の冷媒流路を有していてもよい。別の冷媒として複数種の冷媒を用いることができ、例えば一つの熱交換器が、複数種の冷媒がそれぞれ流れる複数の「別の冷媒流路」を有していてもよい。
【0018】
例えば天然ガスなどの原料ガスは、熱交換手段により冷却され、部分的に凝縮する。部分凝縮した原料ガスが、低温セパレーターとも呼ばれる第1の気液分離器4で気液分離される。エタンの回収率を上げるには低温セパレーター4の温度は低いほど好ましい。また、天然ガスが凝縮される割合は天然ガスの組成(炭素数2以上の炭化水素の割合)により異なり、おおよそ5mol%以上20mol%以下である。原料ガスを冷却するために使用する熱交換器には、プレートフィン熱交換器または多管式熱交換器など公知の熱交換器を適宜使用することができる。また低温セパレーター4には縦型または横型のベッセル(両端に鏡板を有する円柱状容器)を使用することができ、気液の分離効率を上げるために、その内部にミスト分離器を有することもできる。
【0019】
図1の例では、工程aで用いる熱交換器として第1原料ガスクーラー1、原料ガスチラー2、第2原料ガスクーラー3が用いられる。原料ガスは第1原料ガスクーラー1で残留ガスおよび脱メタン塔のサイドストリームF1との熱交換により冷却され、次いで原料ガスチラー2でプロパン冷凍により冷却され、次いで第2原料ガスクーラー3において再び残留ガス、脱メタン塔のサイドストリームF3、及びターボエキスパンダー出口セパレーター7(第2の気液分離器)で凝縮した凝縮液(ライン104)との熱交換により冷却される。第2原料ガスクーラー3から、部分凝縮した原料ガス(気液二相流)が得られる。なおサイドストリームF1およびF3はそれぞれ上記熱交換の後、脱メタン塔11に戻される(戻される流れはそれぞれF2およびF4として示される)。つまり、工程aにおける「別の冷媒」として、ターボエキスパンダー出口セパレーター7で凝縮した凝縮液(工程cから得られた液)104、脱メタン塔のサイドストリームF1及びF3、並びにプロパン冷凍システムのプロパンが用いられる。
【0020】
第1原料ガスクーラー1は、残留ガスが流れる冷媒流路を有し、前記「別の冷媒流路」として、サイドストリームF1が流れる冷媒流路を有する。第2原料ガスクーラー3は、冷媒として残留ガスが流れる冷媒流路を有し、前記「別の冷媒流路」として、第2の気液分離器から得られた液(ライン104)が流れる冷媒流路と、サイドストリームF3が流れる冷媒流路と、を有する。原料ガスチラー2は、プロパン冷凍システムのプロパンが流れる冷媒流路を有する。
【0021】
b)工程aから得られた液を減圧して蒸留塔に供給する工程
この工程では、低温セパレーター(第1の気液分離器)4から得られた凝縮液を脱メタン塔11に供給するライン101が用いられる。このラインに減圧バルブ14を設けることができる。典型的には、凝縮液は減圧バルブ14により、脱メタン塔(プロパン回収の場合には脱エタン塔)の供給段の運転圧力に、送液する際の圧力損失を加えた圧力まで減圧され、その一部が気化して気液二相流となる。またこの気化に伴い温度が低下する(実施形態1に対応する実施例1の場合は-84.6℃まで温度が低下する)。
【0022】
c)工程aから得られたガスの一部又は全部を、エキスパンダーにより膨張させて部分凝縮させ、その後気液分離する工程
この工程では、低温セパレーター(第1の気液分離器)4から得られたガスの一部又は全部を、膨張させて部分凝縮させるエキスパンダー、特にはターボエキスパンダー5が用いられる。また、ターボエキスパンダー5出口に接続されたターボエキスパンダー出口セパレーター7が第2の気液分離器として用いられる。
【0023】
本例では低温セパレーター4出口ガス(ライン110)の全部がターボエキスパンダー5に送られ、典型的にはターボエキスパンダー5出口の圧力は、脱メタン塔(プロパン回収の場合には脱エタン塔)の供給段の運転圧力に、送液する際の圧力損失を加えた圧力まで減圧される。このとき等エントロピー膨張の効果によりターボエキスパンダー5の出口ガスは極めて低温になり(実施例1の場合は-85.2℃)、部分的に凝縮する(実施例1の場合は27.9mol%が液化する)。また膨張時にガスが失うエネルギーをコンプレッサー6の動力として回収することができる。
【0024】
ターボエキスパンダー5出口で部分凝縮したガスは、ターボエキスパンダー出口セパレーター7(第2の気液分離器)で気液分離される。
【0025】
ターボエキスパンダー出口セパレーター7には縦型または横型のベッセル(両端に鏡板を有する円柱状容器)を使用することができ、気液の分離効率を上げるために、その内部にミスト分離器を有することもできる。
【0026】
d)工程cから得られた液を、工程aにおいて前述の「別の冷媒」として用いた後に、前記蒸留塔に供給する工程
この工程において、ターボエキスパンダー出口セパレーター7から得られた液を、前述の「別の冷媒流路」を経て、脱メタン塔(蒸留塔)11に供給するラインが用いられる(ライン104及び102)。本例において、ターボエキスパンダー出口セパレーター7から得られた液を流す「別の冷媒流路」は、工程aの冷却に用いる熱交換器のうち原料ガスの流れ方向を基準として最も下流に位置する第2原料ガスクーラー3に備わる冷媒流路の一つである。実施例1の場合では、ライン104の液は、「別の冷媒」として用いられることで、-39.0℃まで昇温され、気液二相流となる。
【0027】
e)工程cから得られたガスの一部又は全部を蒸留塔に供給する工程
この工程において、ターボエキスパンダー出口セパレーター(第2の気液分離器)7から得られたガスの一部又は全部を脱メタン塔(蒸留塔)11に供給するラインを用いる。
【0028】
本例では、ターボエキスパンダー出口セパレーター(第2の気液分離器)7から得られたガスの全部を脱メタン塔11に供給している(ライン103)。
【0029】
脱メタン塔11は、例えば塔内部にトレイまたはパッキングを有し、蒸留操作により高揮発性成分と低揮発性成分とを分離する。脱メタン塔の圧力は、下流の残留ガスの圧縮に要する動力を少なくするために、所定のエタン回収率を達成できる範囲で出来るだけ高いことが好ましく、この観点から1.5MPa以上3.5MPa以下が好ましく、2.5MPa以上3.5MPa以下がさらに好ましい。
【0030】
本例では、脱メタン塔11に3種類の流体がフィードされる。塔頂部には低温セパレーター4で分離された凝縮液が減圧バルブ14を経由してリフラックスとしてフィードされ(ライン101)、それより下にターボエキスパンダー出口セパレーター7の出口ガスがフィードされ(ライン103)、さらにそれより下に、ターボエキスパンダー出口セパレーター7で分離された液が第2原料ガスクーラー3で原料ガスと熱交換した後にフィードされる(ライン102)。
図1では低温セパレーター4で分離された液がリフラックスとしてフィードされているが(ライン101)、ターボエキスパンダー出口セパレーター7で分離された液を、原料ガスと熱交換した後に、リフラックスとして使用してもよい。脱メタン塔へのフィードのより詳細な位置は、各フィードの温度およびメタン濃度に応じて適宜決めることができる。
【0031】
脱メタン塔の塔底部にはリボイラー12が設置され、塔底液中のメタンを揮発させ、塔底液中のメタン濃度が所定の値以下となるように熱が加えられる。
【0032】
f)蒸留塔の塔頂部から残留ガスを得、蒸留塔の塔底部から重質留分を得る工程
脱メタン塔の塔頂部からは、エタン、プロパンなどの成分が除去されたメタンを主成分とする残留ガスが分離され、原料ガスとの熱交換に利用される。その後、必要に応じて、ターボエキスパンダーが駆動するコンプレッサー6およびモーター等により駆動されるコンプレッサー(残留ガスコンプレッサー)13によって所定の圧力まで圧縮される。脱メタン塔11の塔底部からは、エタン、プロパンおよび重質成分がNGL(Natural Gas Liquid:天然ガス液)として分離される。得られたNGLは、例えば、さらに下流に設けられるNGL分離工程で各成分に分離される。
【0033】
原料ガスとしては、メタンおよびメタンより低揮発性の炭化水素類を含んだ天然ガスなどが好ましい。原料ガスは、石油随伴ガス、または精油所もしくは石油化学プラントからのオフガスであってもよい。
【0034】
原料ガス中のメタンより低揮発性の炭化水素類の濃度が大きいほど、ターボエキスパンダー5入口ガス中のメタン濃度とターボエキスパンダー出口ガスセパレーター7出口ガス中のメタン濃度との差が大きくなり、リフラックス改善の効果が生まれやすい。したがい、原料ガス中のメタンより低揮発性の炭化水素類の濃度が5mol%以上50mol%以下である場合、さらには10mol%以上50mol%以下である場合、本発明の効果が特に顕著である。
【0035】
また残留ガス中のエタン濃度が低いほど、高いエタン回収率であることを意味するため、残留ガス中のエタン濃度は出来るだけ低い方が好ましく、5mol%以下が好ましく、1mol%以下がさらに好ましい。
【0036】
NGLは液化、回収したメタンより低揮発性の炭化水素類で構成され、例えばさらに下流に設けられるNGL分留設備へと送り出され、エタン、プロパン、ブタン等の製品に分離される。このような場合、NGL中のメタンはエタン製品の規格を満足できる程度まで低いことが好ましく、2mol%以下が好ましく、1mol%以下がさらに好ましい。
【0037】
プロパン回収プロセスの場合も、上記の例と原理は同じで、脱メタン塔11に替えて脱エタン塔が用いられ、脱エタン塔の塔頂部からは、メタン及びエタンを主成分とする残留ガスが分離され、脱エタン塔の塔底部からはプロパンおよび重質成分がNGLとして分離される。
【0038】
〔実施形態2〕
本発明の第2の実施形態に関して、
図3に示すプロセスフロー図を用いてエタン回収プロセスの例を説明する。実施形態1と同様の点については、説明を省略する。
【0039】
実施形態1では、工程cにおいて、工程aから、すなわち低温セパレーター4から得られたガス(ライン110)の全量を、ターボエキスパンダー5に供給している。実施形態2では、ライン110を分岐し、ライン110のガスの一部だけ(ライン110a)をターボエキスパンダー5に送って工程cに供する。ライン110の分岐比は求められるエタン回収率に鑑みて決定される(実施形態2に対応する実施例2の場合はライン110a:ライン110b=70:30(モル比))。ターボエキスパンダー5出口の圧力は、脱メタン塔(プロパン回収の場合には脱エタン塔)の供給段の運転圧力に、送液する際の圧力損失を加えた圧力まで減圧される。この際、等エントロピー膨張の効果により、ターボエキスパンダー5の出口ガスは極めて低温になり(実施例2では-86.4℃)、部分的に凝縮する(実施例2では24.7%が液化)。また、膨張時にガスが失うエネルギーをコンプレッサー6の動力として回収することができる。
【0040】
ライン110のガスの残部(ライン110b)は、凝縮器10において脱メタン塔の塔頂部から得られた残留ガスとの熱交換により冷却して全凝縮させ(実施例2の場合は-90.8℃まで冷却)、全凝縮した液を減圧バルブ15により減圧して脱メタン塔(蒸留塔)11に供給する(ライン105)。全凝縮した液は、減圧バルブ15により、脱メタン塔(蒸留塔)11の供給段の運転圧力に、送液する際の圧力損失を加えた圧力まで減圧される。また全凝縮した液は減圧によりその一部が気化して気液二相流となり、気化に伴い温度が低下する(実施例2の場合では-94.2℃)。
【0041】
このために、以下のものを用いる。
低温セパレーター(第1の気液分離器)4から得られたガスの一部をターボエキスパンダー5に送るライン110a;
低温セパレーター(第1の気液分離器)4から得られたガスの残部(ライン110b)を、残留ガスとの熱交換により冷却して全凝縮させる凝縮器10;
凝縮器10で全凝縮した液を減圧する減圧バルブ15;及び
減圧バルブ15の出口を脱メタン塔(蒸留塔)11に接続するライン105。
【0042】
凝縮器10として、ライン110bのガスと、残留ガスとの間で熱交換を行う熱交換器を用いることができる。凝縮器10は、原料ガスクーラー1及び3並びに原料ガスチラー2よりも、残留ガスの流れ方向を基準にして上流に配することができる。
【0043】
本例では、脱メタン塔11に4種類の流体がフィードされる。塔頂部には、ライン105からの液がリフラックスとしてフィードされ、それより下にターボエキスパンダー出口セパレーター7の出口ガスがフィードされ(ライン103)、それより下に低温セパレーター4からの液が減圧バルブ14で減圧された後にフィードされ(ライン101)、それより下にターボエキスパンダー出口セパレーター7からの液が原料ガスと熱交換した後にフィードされる(ライン102)。
【0044】
プロセスフローに関して、以上の点以外は実施形態2は実施形態1と同様であってよい。ただし、プロセスフローの相違に応じて、温度、圧力等の条件を適宜変更することができる。
【0045】
〔実施形態3〕
本発明の第3の実施形態に関して、
図5に示すプロセスフロー図を用いてエタン回収プロセスの例を説明する。実施形態1と同様の点については、説明を省略する。
【0046】
実施形態1では、工程eにおいて、工程cから、すなわちターボエキスパンダー出口セパレーター7から得られたガス(ライン103)の全量を、脱メタン塔11に供給している。実施形態3では、ライン103を分岐し、ライン103のガスの一部だけ(ライン103a)を工程eに供し、すなわち脱メタン塔11に供給する。ライン103の分岐比は求められるエタン回収率に鑑みて決定される(実施形態3に対応する実施例3の場合はライン103a:ライン103b=63:37(モル比))。ライン103のガスの残部(ライン103b)は、圧縮し(実施例3の場合は6.00MPa)、脱メタン塔の塔頂部から得られた残留ガスとの熱交換により冷却して全凝縮させ(実施例3の場合は-94.2℃)、さらに全凝縮した液を減圧して脱メタン塔11に供給する(ライン105)。全凝縮した液は、減圧バルブ15により、脱メタン塔(蒸留塔)11の供給段の運転圧力に、送液する際の圧力損失を加えた圧力まで減圧される。また全凝縮した液は減圧によりその一部が気化して気液二相流となり、気化に伴い温度が低下する(実施例3の場合では-97.2℃)。
【0047】
このために、以下のものを用いる。
ターボエキスパンダー出口セパレーター7(第2の気液分離器)から得られたガスの一部を脱メタン塔(蒸留塔)11に供給するライン103a;
ターボエキスパンダー出口セパレーター7(第2の気液分離器)から得られたガスの残部(ライン103b)を圧縮するコンプレッサー8;
コンプレッサー8で圧縮されたガスを残留ガスとの熱交換により冷却して全凝縮させる凝縮器(リフラックスコンデンサー)10;
凝縮器10で全凝縮した液を減圧する減圧バルブ15;及び
減圧バルブ15出口を脱メタン塔(蒸留塔)11に接続するライン105。
【0048】
凝縮器10として、ライン103bのガスと、残留ガスとの間で熱交換を行う熱交換器を用いることができる。凝縮器10は、原料ガスクーラー1及び3、並びに原料ガスチラー2よりも、残留ガスの流れ方向を基準にして上流に配することができる。また本例では、コンプレッサー8で圧縮されたガスを、プロパン冷凍による熱交換器(リフラックスクーラー)9で冷却した後に、リフラックスコンデンサー10において残留ガスとの熱交換により冷却して全凝縮させている。リフラックスクーラー9は必要に応じて設けることができ、リフラックスコンデンサー10による冷却で十分な場合には不要である。
【0049】
本例では、脱メタン塔11に4種類の流体がフィードされる。塔頂部には、ライン105からの液がリフラックスとしてフィードされ、それより下にターボエキスパンダー出口セパレーター7の出口ガスの一部がフィードされ(ライン103a)、それより下に低温セパレーター4からの液が減圧バルブ14で減圧された後にフィードされ(ライン101)、それより下にターボエキスパンダー出口セパレーター7からの液が原料ガスと熱交換した後にフィードされる(ライン102)。
【0050】
プロセスフローに関して、以上の点以外は実施形態3は実施形態1と同様であってよい。ただし、プロセスフローの相違に応じて、温度、圧力等の条件を適宜変更することができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれによって制限されるものではない。
【0052】
〔実施例1〕
図1に示した構成を有する炭化水素分離装置を用い、エタン回収を行う場合の例につき、プロセスシミュレーションを行った。あらかじめ水が除去された高圧の原料天然ガスが、6.24MPa、17.1℃の条件で炭化水素分離装置に導入される。この時の原料ガスの組成は、表1に示されるとおりである。流量は13,700kg-mol/時(10
3モル/時)である。なおCn(nは自然数)は炭素数nの炭化水素を表す。C5+は炭素数5以上の炭化水素を表す。
【0053】
【0054】
原料ガスは第1原料ガスクーラー1で、-39.0℃の残留ガスおよび-33.5℃の脱メタン塔11のサイドストリームF1と熱交換し、-24.6℃まで冷却される。その後、原料ガスチラー2でプロパン冷凍により-37.0℃まで冷却され、第2原料ガスクーラー3で、-84.6℃の残留ガス、-76.1℃の脱メタン塔11のサイドストリームF3および-85.2℃のターボエキスパンダー出口セパレーター7の凝縮液(ライン104)との熱交換により-62.9℃まで冷却される。ここで第1原料ガスクーラー1および第2原料ガスクーラー3はプレートフィン熱交換器であり、原料ガスチラー2はケトル型の多管式熱交換器である。
【0055】
次に、原料ガスは低温セパレーター4で気液分離される。低温セパレーター4は内部にミスト分離器を有する縦型ベッセル(両端に鏡板を有する円柱状容器)である。
【0056】
低温セパレーター4出口ガスの全量は、ターボエキスパンダー5に送られ、3.47MPaまで減圧される。その出口ガスは等エントロピー膨張の効果により-85.2℃まで冷却され、529kWの動力をエキスパンダーが駆動するコンプレッサー6に与える。ターボエキスパンダー5出口のガスは、ターボエキスパンダー出口セパレーター7で気液分離される。ターボエキスパンダー出口セパレーター7は、内部にミスト分離器を有する縦型ベッセル(両端に鏡板を有する円柱状容器)である。
【0057】
ターボエキスパンダー出口セパレーター7で分離された-85.2℃の凝縮液(ライン104)は、第2原料ガスクーラー3で原料ガスに冷熱を与え、-39.0℃まで昇温された後、脱メタン塔11にフィードされる(ライン102)。
【0058】
脱メタン塔11は、内部に40段のトレイが設置され、ターボエキスパンダー出口セパレーター7出口のガスは塔頂から3段目のトレイにフィードされる(ライン103)。また、ターボエキスパンダー出口セパレーター7で分離された液は、第2原料ガスクーラー3を経て、塔頂から10段目にフィードされる(ライン102)。さらに、低温セパレーター4で分離された液は、減圧バルブ14で3.29MPaまで減圧された後、リフラックスとして塔頂から1段目にフィードされる(ライン101)。
【0059】
脱メタン塔11は、塔頂部で3.27MPa、-84.6℃の条件で運転され、塔底部では3.32MPa、39.8℃の条件で運転される。塔底部の温度は、NGL中のメタン濃度が1モル%以下になる平衡温度により決まり、その温度で運転するため、リボイラー12から3.60MWの熱が加えられる。脱メタン塔11の塔頂部から分離される残留ガス、及び塔底部から分離されるNGLの組成は、表2に示される通りである。流量は、残留ガスが12,553kg-mol/時(103モル/時)、NGLが1,147kg-mol/時(103モル/時)である。なお、「NC4」はノルマルブタンを、「IC4」はイソブタンを表す。
【0060】
【0061】
原料ガス中のエタンの内、76.7%がNGLとして回収される。
【0062】
脱メタン塔11の塔頂部を出た残留ガスは原料ガスと熱交換し、第1原料ガスクーラー1の出口で15.1℃になる。その後、ターボエキスパンダーが駆動するコンプレッサー6で3.25MPaまで圧縮され、残留ガスコンプレッサー13により3.77MPaまで圧縮される。このとき、残留ガスコンプレッサー13の所要動力は、1,031kWである。
【0063】
〔比較例1〕
図2に示した構成を有する炭化水素分離装置を用い、エタン回収を行う場合の例につき、プロセスシミュレーションを行った。その結果を実施例1の結果と共に表3にまとめる。
【0064】
実施例1の場合、ターボエキスパンダー出口セパレーター7により気液分離された凝縮液(ライン104)は、第2原料ガスクーラー3において冷熱を回収されて気液二相流となる(ライン102)。このとき低沸点成分であるメタン留分が主に気化するため、ライン102の気液二相流中のメタン濃度は減少する。脱メタン塔11のリフラックス液中のメタン濃度が高いほどリフラックス効果が高いので、実施例1では、低温セパレーター4の凝縮液(ライン102の気液二相流よりメタン濃度が高い)がリフラックス液として脱メタン塔の1段目にフィードされる。
【0065】
一方で、
図2に示した構成では、ターボエキスパンダー出口セパレーター7により分離された凝縮液(ライン102)は、第2原料ガスクーラー3で冷熱を回収されず、またそのメタン濃度が低温セパレーター4の凝縮液のメタン濃度よりも高いため、脱メタン塔11の1段目にリフラックスとして供給される(ライン102)。
【0066】
脱メタン塔11では、ターボエキスパンダー出口セパレーター7出口のガスが塔頂から4段目のトレイにフィードされる(ライン103)。低温セパレーター4で分離された液は、減圧バルブ14で2.82MPaまで減圧された後、塔頂から14段目にフィードされる(ライン101)。
【0067】
プロセスフローに関して、以上の点以外は比較例1は実施例1と同様である。
【0068】
表3において、「冷凍負荷」は原料ガスチラー2におけるプロパン冷凍システムの熱負荷である。冷凍負荷の低下はプロパン冷凍設備容量の低下を意味し、プロパン冷凍設備で消費するエネルギーの低下、およびプロパン冷凍の設備費低下の効果がある。
【0069】
「リボイラー熱負荷」は、脱メタン塔の塔底リボイラー12の熱負荷である。その低下は、蒸留に要するエネルギーの低下を意味し、外部より供給される用役の費用低下の効果がある。「冷凍コンプレッサー動力」は、プロパン冷凍システムにおいてコンプレッサーで消費される動力である。「残留ガスコンプレッサー」は、残留ガスコンプレッサー13で消費される動力である。
【0070】
表3で明らかなように、実施例1は比較例1の構成でエタン回収を行った場合と比較して、エタン回収率が同程度であるのにも関わらず、総コンプレッサー動力およびリボイラー熱負荷を低減することが可能である。
【0071】
【0072】
〔実施例2〕
図3に示した構成を有する炭化水素分離装置を用い、エタン回収を行う場合の例につき、プロセスシミュレーションを行った。原料ガスは実施例1と同様である。
【0073】
原料ガスは第1原料ガスクーラー1で、-39.0℃の残留ガスおよび-39.3℃の脱メタン塔11のサイドストリームF1と熱交換し、-23.7℃まで冷却される。その後、原料ガスチラー2でプロパン冷凍により-37.0℃まで冷却され、第2原料ガスクーラー3で、-76.6℃の残留ガス、-77.7℃の脱メタン塔11のサイドストリームF3および-86.4℃のターボエキスパンダー出口セパレーター7の凝縮液(ライン104)との熱交換により-60.4℃まで冷却される。ここで第1原料ガスクーラー1および第2原料ガスクーラー3はプレートフィン熱交換器であり、原料ガスチラー2はケトル型の多管式熱交換器である。
【0074】
次に、原料ガスは低温セパレーター4で気液分離される。低温セパレーター4は内部にミスト分離器を有する縦型ベッセル(両端に鏡板を有する円柱状容器)である。
【0075】
低温セパレーター4出口ガスのうち、70モル%はターボエキスパンダー5に送られ(ライン110a)、3.20MPaまで減圧される。その出口ガスは等エントロピー膨張の効果により-86.4℃まで冷却されその一部が凝縮して気液二相流となり、723kWの動力をエキスパンダーが駆動するコンプレッサー6に与える。ターボエキスパンダー5出口のガス(部分凝縮したもの)は、ターボエキスパンダー出口セパレーター7で気液分離される。ターボエキスパンダー出口セパレーター7は、内部にミスト分離器を有する縦型ベッセル(両端に鏡板を有する円柱状容器)である。
【0076】
低温セパレーター4出口ガスのうち、残りの30モル%は凝縮器(リフラックスコンデンサー)10へと送られ(ライン110b)、脱メタン塔11塔頂の残留ガスと熱交換し、-90.8℃まで冷却され全凝縮する。凝縮液は減圧バルブ15によって3.00MPaまで減圧され、その一部が気化し気液二相流となり、気化に伴い温度が-94.2℃まで低下する。その後、リフラックス液として塔頂から第1段に供給される(ライン105)。ここで、リフラックスコンデンサー10はプレートフィン熱交換器である。
【0077】
脱メタン塔11は、内部に40段のトレイが設置され、ターボエキスパンダー出口セパレーター7出口のガスは塔頂から4段目のトレイにフィードされる(ライン103)。また、ターボエキスパンダー出口セパレーター7で分離された-86.4℃の凝縮液(ライン104)は、第2原料ガスクーラー3における冷熱回収により-39.0℃まで昇温され、その一部が気化し気液二相流となった後、塔頂から20段目にフィードされる(ライン102)。さらに、低温セパレーター4で分離された液は、減圧バルブ14で3.20MPaまで減圧され、その一部が気化し気液二相流となり、気化に伴い温度が-84.2℃まで低下する。その後、塔頂から14段目にフィードされる(ライン101)。
【0078】
脱メタン塔11は、塔頂部で3.00MPa、-92.8℃の条件で運転され、塔底部では3.05MPa、31.5℃の条件で運転される。塔底部の温度は、NGL中のメタン濃度が1モル%以下になる平衡温度により決まり、その温度で運転するため、リボイラー12から3.65MWの熱が加えられる。脱メタン塔11の塔頂部から分離される残留ガス、及び塔底部から分離されるNGLの組成は、表4に示される通りである。流量は、残留ガスが12,444kg-mol/時(103モル/時)、NGLが1,256kg-mol/時(103モル/時)である。
【0079】
【0080】
原料ガス中のエタンの内、88.7%がNGLとして回収される。
【0081】
脱メタン塔11の塔頂部を出た残留ガスは原料ガスと熱交換し、第1原料ガスクーラー1の出口で15.1℃になる。その後、ターボエキスパンダーが駆動するコンプレッサー6で3.17MPaまで圧縮され、残留ガスコンプレッサー13により3.77MPaまで圧縮される。このとき、残留ガスコンプレッサー13の所要動力は、1,859kWである。
【0082】
〔比較例2〕
図4に示した構成を有する炭化水素分離装置を用い、エタン回収を行う場合の例につき、プロセスシミュレーションを行った。その結果を実施例2の結果と共に表5にまとめる。
【0083】
図4に示した構成では、ターボエキスパンダー出口セパレーター7により分離された凝縮液(ライン102)は、第2原料ガスクーラー3で冷熱を回収されることなく、そのまま脱メタン塔11に供給される。
【0084】
比較例2では、ターボエキスパンダー出口セパレーター7の凝縮液を用いた冷熱回収が行われないため、低温セパレーター4に流入するストリームの温度は-52.0℃となり、実施例2と比較すると8.4℃高くなる。従い、低温セパレーター4により分離されるガス(ライン110)中のメタン濃度が実施例2と比較して低くなり、最終的には蒸留塔におけるリフラックス効果の低下につながる。
【0085】
脱メタン塔11では、ライン105からの液が、リフラックス液として塔頂から第1段に供給される。ターボエキスパンダー出口セパレーター7出口のガスが塔頂から4段目のトレイにフィードされる(ライン103)。ターボエキスパンダー出口セパレーター7で分離された液が、塔頂から14段目にフィードされる(ライン102)。さらに、低温セパレーター4で分離された液は、減圧バルブ14で2.83MPaまで減圧された後、塔頂から20段目にフィードされる(ライン101)。
【0086】
プロセスフローに関して、以上の点以外は比較例2は実施例2と同様である。
【0087】
表5で明らかなように、実施例2は比較例2の構成でエタン回収を行った場合と比較して、高いエタン回収率が得られ、さらには総コンプレッサー動力およびリボイラー熱負荷を低減することが可能である。
【0088】
【0089】
〔実施例3〕
図5に示した構成を有する炭化水素分離装置を用い、エタン回収を行う場合の例につき、プロセスシミュレーションを行った。原料ガスは実施例1と同様である。
【0090】
原料ガスは第1原料ガスクーラー1で、-39.0℃の残留ガスおよび-35.3℃の脱メタン塔11のサイドストリームF1と熱交換し、-22.6℃まで冷却される。その後、原料ガスチラー2でプロパン冷凍により-37.0℃まで冷却され、第2原料ガスクーラー3で、-68.0℃の残留ガス、-74.3℃の脱メタン塔11のサイドストリームF3および-86.8℃のターボエキスパンダー出口セパレーター7の凝縮液(ライン104)との熱交換により-59.0℃まで冷却される。ここで第1原料ガスクーラー1および第2原料ガスクーラー3はプレートフィン熱交換器であり、原料ガスチラー2はケトル型の多管式熱交換器である。
【0091】
次に、原料ガスは低温セパレーター4で気液分離される。低温セパレーター4は内部にミスト分離器を有する縦型ベッセル(両端に鏡板を有する円柱状容器)である。
【0092】
低温セパレーター4出口のガス全量がターボエキスパンダー5に送られ、3.07MPaまで減圧される。その出口ガスは等エントロピー膨張の効果により-86.8℃まで冷却され、1,259kWの動力をエキスパンダーが駆動するコンプレッサー6に与える。ターボエキスパンダー5出口のガスは、ターボエキスパンダー出口セパレーター7で気液分離される。ターボエキスパンダー出口セパレーター7は、内部にミスト分離器を有する縦型ベッセル(両端に鏡板を有する円柱状容器)である。
【0093】
ターボエキスパンダー出口セパレーター7の出口ガス(ライン103)のうち37モル%は、コンプレッサー(低温コンプレッサー)8によって6.00MPaまで昇圧された後、プロパン冷凍による熱交換器(リフラックスクーラー)9および脱メタン塔11塔頂の残留ガスと熱交換させる凝縮器(リフラックスコンデンサー)10によって-94.2℃まで冷却されて全凝縮する。得られた凝縮液は減圧バルブ15によって2.87MPaまで減圧されその一部が気化し気液二相流となり、気化に伴い温度が-97.2℃まで低下する。その後、リフラックス液として塔頂から第1段に供給される(ライン105)。ここで、リフラックスクーラー9はケトル型の多管式熱交換器であり、リフラックスコンデンサー10はプレートフィン熱交換器である。なお、残留ガスとの熱交換だけで、リフラックスコンデンサー10の出口温度を、所定のエタン回収率を達成できる温度まで低下させることができる場合には、プロパン冷凍の負荷を下げるために、リフラックスクーラー9を設置しなくてもよい。
【0094】
脱メタン塔11は、内部に40段のトレイが設置され、ターボエキスパンダー出口セパレーター7出口のガスの一部は塔頂から9段目のトレイにフィードされる(ライン103a)。また、ターボエキスパンダー出口セパレーター7で分離された-86.8℃の凝縮液(ライン104)は、第2原料ガスクーラー3における冷熱回収により-39.0℃まで昇温され、その一部が気化し気液二相流となった後、塔頂から18段目にフィードされる(ライン102)。さらに、低温セパレーター4で分離された液は、減圧バルブ14で2.89MPaまで減圧され、その一部が気化し気液二相流となり、気化に伴い温度が-83.7℃まで低下する。その後、塔頂から15段目にフィードされる(ライン101)。
【0095】
脱メタン塔11は、塔頂部で2.87MPa、-96.2℃の条件で運転され、塔底部では2.92MPa、27.5℃の条件で運転される。塔底部の温度は、NGL中のメタン濃度が1モル%以下になる平衡温度により決まり、その温度で運転するため、リボイラー12から3.35MWの熱が加えられる。脱メタン塔11の塔頂部から分離される残留ガス、及び塔底部から分離されるNGLの組成は、表6に示される通りである。流量は、残留ガスが12,388kg-mol/時(103モル/時)、NGLが1,312kg-mol/時(103モル/時)である。
【0096】
【0097】
原料ガス中のエタンの内、95.5%がNGLとして回収される。
【0098】
脱メタン塔11の塔頂部を出た残留ガスは原料ガスと熱交換し、第1原料ガスクーラー1の出口で15.1℃になる。その後、ターボエキスパンダーが駆動するコンプレッサー6で3.19MPaまで圧縮され、残留ガスコンプレッサー13により3.77MPaまで圧縮される。このとき、残留ガスコンプレッサー13の所要動力は、1,824kWである。
【0099】
〔比較例3〕
図6に示した構成を有する炭化水素分離装置を用い、エタン回収を行う場合の例につき、プロセスシミュレーションを行った。このプロセスは、特許文献1に開示されるプロセスに相当する。その結果を実施例3の結果と共に表7にまとめる。
【0100】
図6に示した構成では、ターボエキスパンダー出口セパレーター7により分離された凝縮液(ライン102)は、第2原料ガスクーラー3で冷熱を回収されることなく、そのまま脱メタン塔11に供給される。
【0101】
比較例3では、ターボエキスパンダー出口セパレーター7の凝縮液を用いた冷熱回収が行われないため、低温セパレーター4に流入するストリームの温度は-44.1℃となり、実施例3と比較すると14.9℃高くなる。従い、低温セパレーター4により分離されるガス(ライン110)中のメタン濃度が実施例3と比較して低くなり、最終的には蒸留塔におけるリフラックス効果の低下につながる。
【0102】
脱メタン塔11では、ライン105からの液が、リフラックスとして塔頂から1段目にフィードされる。ターボエキスパンダー出口セパレーター7出口のガスの一部が塔頂から9段目のトレイにフィードされる(ライン103a)。また、ターボエキスパンダー出口セパレーター7で分離された液が、塔頂から12段目にフィードされる(ライン102)。さらに、低温セパレーター4で分離された液が、減圧バルブ14で2.82MPaまで減圧され、その一部が気化し気液二相流となり、気化に伴い温度が-64.0℃まで低下する。その後、塔頂から15段目にフィードされる(ライン101)。
【0103】
プロセスフローに関して、以上の点以外は比較例3は実施例3と同様である。
【0104】
表7で明らかなように、実施例3は比較例3の構成でエタン回収を行った場合と比較して、高いエタン回収率が得られ、さらには総コンプレッサー動力およびリボイラー熱負荷を低減することが可能である。
【0105】
【符号の説明】
【0106】
1:第1原料ガスクーラー
2:原料ガスチラー
3:第2原料ガスクーラー
4:低温セパレーター
5:ターボエキスパンダー
6:ターボエキスパンダーが駆動するコンプレッサー
7:ターボエキスパンダー出口セパレーター
8:低温コンプレッサー
9:リフラックスクーラー
10:リフラックスコンデンサー
11:脱メタン塔(プロパン回収プラントの場合には、脱エタン塔)
12:リボイラー
13:残留ガスコンプレッサー
14:減圧バルブ
15:減圧バルブ
F1:脱メタン塔サイドストリーム
F2:サイドストリームF1の戻り
F3:脱メタン塔サイドストリーム
F4:サイドストリームF3の戻り