(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20231127BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
H01L29/78 652E
H01L29/78 652C
H01L29/78 652J
H01L29/78 652K
H01L29/78 652M
H01L29/78 653A
H01L29/78 655B
H01L29/78 655E
H01L29/78 655F
H01L29/78 655G
(21)【出願番号】P 2019207941
(22)【出願日】2019-11-18
【審査請求日】2022-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】長田 尚
【審査官】上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-129326(JP,A)
【文献】特開2019-024133(JP,A)
【文献】国際公開第2015/022989(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/739
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板に形成された第1と第2のトレンチ電極と、
前記第1と第2のトレンチ電極の周囲に形成される第1導電型のフローティング層と、
前記第1と第2のトレンチ電極間に形成され、前記第1導電型のフローティング層に接触する第2導電型のフローティング分離層と、
前記第2導電型のフローティング分離層の上部に配置されるフローティング層制御ゲートと、を有する、
半導体装置。
【請求項2】
ゲート電位が供給されるゲート電極と、
エミッタ
電位が供給されるエミッタ電極と、を更に有し、
前記第1と第2のトレンチ電極は、前記ゲート電位が与えられる第1と第2のゲート電位トレンチ電極であり、
前記第2導電型のフローティング分離層は、コンタクトを介して前記エミッタ電極に接続される、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1のゲート電位トレンチ電極は、平面視で第1の方向に伸びる直線部分と、第2の方向に伸びる折れ曲がり部分とを有し、
前記第2のゲート電位トレンチ電極は、前記第1のゲート電位トレンチ電極に対し、前記第2の方向に平行な線で線対称な形状である、
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2導電型のフローティング分離層は、前記第1のゲート電位トレンチ電極の折れ曲がり部分と前記第2のゲート電位トレンチ電極の折れ曲がり部分との間に配置される、
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2の方向に伸びる折れ曲がり部分は、前記直線部分から前記第2の方向に折れ曲がり、再度、前記直線部分に戻る形状である、
請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
半導体基板と、
ゲート電位が供給されるゲート電極と、
エミッタ電位が供給されるエミッタ電極と、
前記半導体基板に形成され、前記エミッタ電位が与えられる第1と第2のエミッタ電位トレンチ電極と、
前記第1と第2のエミッタ電位トレンチ電極の周囲に形成される第1導電型のフローティング層と、
前記第1と第2のエミッタ電位トレンチ電極間に形成され、前記第1導電型のフローティング層に接触する第2導電型のフローティング分離層と、
前記第2導電型のフローティング分離層を覆うように配置されるフローティング層制御ゲートと、
を有し、
前記第2導電型のフローティング分離層は、コンタクトを介して前記エミッタ電極に接続される、
半導体装置。
【請求項7】
前記第1のエミッタ電位トレンチ電極は、平面視で第1の方向に伸びる直線部分と、第2の方向に伸びる折れ曲がり部分とを有し、
前記第2のエミッタ電位トレンチ電極は、前記第1のエミッタ電位トレンチ電極に対し、前記第2の方向に平行な線で線対称な形状である、
請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第2導電型のフローティング分離層は、前記第1のエミッタ電位トレンチ電極の折れ曲がり部分と前記第2のエミッタ電位トレンチ電極の折れ曲がり部分との間に配置される、
請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第2の方向に伸びる折れ曲がり部分は、前記直線部分から前記第2の方向に折れ曲がり、再度、前記直線部分に戻る形状である、
請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第2の方向に伸びる折れ曲がり部分は、更に前記第1の方向に折れ曲がり、再度、前記第2の方向に伸びる折れ曲がり部分に戻る形状である、
請求項8に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記ゲート電位が供給されるゲート電位トレンチ電極を更に有し、
前記ゲート電位トレンチ電極は、前記第1と第2のエミッタ電位トレンチ電極に挟まれる領域に配置され、
前記第2導電型のフローティング分離層は、前記第1のエミッタ電位トレンチ電極の折れ曲がり部分と前記ゲート電位トレンチ電極との間と、前記第2のエミッタ電位トレンチ電極の折れ曲がり部分と前記ゲート電位トレンチ電極の間とに配置される、
請求項7に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記ゲート電位トレンチ電極は、前記第1の方向に伸びる直線部分と、当該直線部分から前記第2の方向に折れ曲がり、再度、前記直線部分に戻る形状である、
請求項11に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記第2の方向に伸びる折れ曲がり部分は、前記直線部分の第1の点から第2の方向に折れ曲がり、再度、前記直線部分の第2の点に戻る形状であり、
前記第1と第2の点の距離は、前記第1のゲート電位トレンチ電極の折れ曲がり部分と前記第2のゲート電位トレンチ電極の折れ曲がり部分の間の距離よりも長い、
請求項4に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記第2導電型のフローティング分離層の上部に、第1導電型の拡散層を有する、
請求項13に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記第1導電型の拡散層の上部に、第2導電型の拡散層を有する、
請求項14に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記コンタクトを介して前記エミッタ電極に接続される第1導電型のボディ層を更に有し、
前記第2導電型のフローティング分離層は、前記第1導電型のボディ層を覆うように形成される、
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記半導体基板には、アクティブセル領域と、当該アクティブセル領域を囲うように形成される終端領域とが形成され、
前記第1と第2のトレンチ電極と、前記第2導電型のフローティング分離層と、前記フローティング層制御ゲートとで形成される領域は、前記アクティブセル領域に複数設置され、
前記アクティブセル領域の中心部の前記領域の設置密度は、前記終端領域近傍の前記領域の設置密度よりも低い、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項18】
前記フローティング層制御ゲートは、前記ゲート電極に接続される、
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項19】
前記半導体装置は、IE型のIGBTである、
請求項1に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置及びその製造方法に関し、特に絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)を備えた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オン抵抗の低いIGBT、すなわち、順方向飽和電圧Vce(sat)の低いIGBTとしてトレンチゲート型IGBTが広く使用されている。また、トレンチゲート型IGBTのオン状態での導通抵抗とオン電圧を低減する目的で、IE(Injection Enhancement)効果を利用したIE型IGBTが開発されている。IE型IGBTでは、アクティブセルとインアクティブセル(フローティング層とも呼ぶ)とが交互に配置されている。フローティング層を設けることで、IGBTがオン状態のときに、正孔がエミッタ電極から排出されにくくなり、ドリフト層に蓄積されるキャリア(正孔)の濃度を高めることができる。
【0003】
特許文献1には、アクティブセル領域とインアクティブセル領域をX軸方向に交互に配置したIGBT構造が開示されている。また、アクティブセル領域には、エミッタ領域が設けられたアクティブセクションと、ボディコンタクト部が設けられたインアクティブセクションが配置されている。この構造により、キャリア(ホール)の排出経路を少なくすることができ、IGBTのターンオン時のスイッチング損失が改善される。
【0004】
特許文献2には、アクティブセル領域とインアクティブセル領域をX軸方向に交互に配置したIGBTの構造が開示されている。また、アクティブセル領域には、ボディコンタクトを有するハイブリッドセル領域、n型の分離領域、ボディコンタクトを有しないフローティング領域がY軸方向に配置されている。この構造により、キャリア(ホール)の排出経路を少なくすることができ、IGBTのターンオン時のスイッチング損失が改善される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-258190号公報
【文献】特開2019-102759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2に記載された技術により、IE効果、すなわちキャリア(ホール)蓄積能力を高めることが可能となる。しかしながら、キャリア蓄積量増加に伴い、ターンオフ時のスイッチング損失(Eoff)が増加してしまう。IE効果向上とEoff低減の両立が求められる。
【0007】
その他の課題および新規な特徴は、本明細書および図面の記載から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施の形態に係る半導体装置は、半導体基板と、半導体基板に形成された第1と第2のトレンチ電極と、第1と第2のトレンチ電極の周囲に形成される第1導電型のフローティング層と、第1と第2のトレンチ電極間に形成され、第1導電型のフローティング層に接触する第2導電型のフローティング分離層と、第2導電型のフローティング分離層の上部に配置されるフローティング層制御ゲートと、を有する。
【発明の効果】
【0009】
一実施の形態に係る半導体装置では、IGBTにおいて、IE効果向上とターンオフ時のスイッチング損失(Eoff)低減の両立を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は実施の形態1に係る半導体チップの平面図である。
【
図2A】
図2Aは実施の形態1に係る半導体チップの平面図である。
【
図2B】
図2Bは実施の形態1に係る半導体チップの断面図である。
【
図3】
図3は実施の形態1に係る半導体チップの断面図である。
【
図4】
図4は実施の形態1に係る半導体チップの断面図である。
【
図5】
図5は実施の形態1の係る半導体チップの動作を説明するための図である。
【
図6】
図6は実施の形態1の係る半導体チップの動作を説明するための図である。
【
図7】
図7は実施の形態1の係る半導体チップの動作を説明するための図である。
【
図8A】
図8Aは実施の形態1に係る半導体チップの平面図である。
【
図8B】
図8Bは実施の形態1に係る半導体チップの平面図である。
【
図9】
図9は実施の形態1の係る半導体チップの効果を説明するためのグラフである。
【
図11】
図11は実施の形態1の変形例1に係る半導体チップの断面図である。
【
図12】
図12は実施の形態1の変形例2に係る半導体チップの断面図である。
【
図13】
図13は実施の形態1の変形例3に係る半導体チップの断面図である。
【
図14】
図14は実施の形態1の変形例4に係る半導体チップの断面図である。
【
図18】
図18は実施の形態3に係る半導体チップの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、一実施の形態に係る半導体装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、明細書および図面において、同一の構成要件または対応する構成要件には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面では、説明の便宜上、構成を省略または簡略化している場合もある。また、各実施の形態の少なくとも一部は、互いに任意に組み合わされてもよい。
【0012】
[実施の形態1]
(半導体装置の構成)
図1は、本実施の形態1に係る半導体装置である半導体チップ100の平面図である。
【0013】
図1では、理解を簡単にするために絶縁膜を透過にした状態としている。
図1で示される通り、半導体チップ100の表面の大部分はエミッタ電極1で覆われており、エミッタ電極1の外周には、ゲート電極2が形成されている。また、半導体チップ100の裏面にはコレクタ電極3が形成されている。エミッタ電極1にはエミッタ電位が供給され、ゲート電極2にはゲート電位が供給される。
【0014】
図2Aは、本実施の形態1に係る半導体チップ100の要部平面図で、
図1の領域4を拡大したものである。なお、わかりやすくするために、
図2Aは、層間絶縁膜を透過にした状態で示している。
図2Bは、
図2AのA-A’線に沿った断面図である。
【0015】
本実施の形態1に係る半導体チップ100は、IE型のIGBTの一種であるGE-S型(GE型のシュリンク構造)のIGBTである。
図2A、2Bで示される通り、半導体チップ100は、半導体基板に、エミッタ電極1、コレクタ電極3、p+型のコレクタ層16、n+型のフィールドストップ層17、n-型のドリフト層18が形成される。半導体チップ100は、更に、ゲート電位が供給されるゲート電位トレンチ電極(以降、ゲート電位トレンチと呼ぶ。あるいはゲート電位のトレンチゲートとも呼ぶ)10、エミッタ電位が供給されるエミッタ電位トレンチ電極(以降、エミッタ電位トレンチと呼ぶ。あるいはエミッタ電位のトレンチゲートとも呼ぶ)11を有する。ゲート電位トレンチ10とエミッタ電位トレンチ11の間には、高濃度n+型のホールバリア層19が形成される。ゲート電位トレンチ10、エミッタ電位トレンチ11、ホールバリア層19で形成される領域がアクティブセル領域である。2つのアクティブセル領域の間には、p+型(第1導電型)のフローティング層12(ノンアクティブセル領域)が形成される。
【0016】
エミッタ電位トレンチ11には、エミッタ電極1がコンタクトホールを介して接続される。エミッタ電極1は、コンタクトホールとボディコンタクトを介してp+型のボディ層24に接続される。ゲート電位トレンチ10とエミッタ電極1のコンタクトホールとの間には、n+型のエミッタ層22、p+型のベース層23が形成される。なお、
図2Aの15はボディコンタクトSi(Silicon)溝である。
図2Bの20はゲート絶縁膜、21は層間絶縁膜である。
【0017】
次に本実施の形態1の特長である、フローティング分離層とフローティング層制御ゲート(FC-GATE:Floating layer Control GATE)について説明する。
図2Aで示される通り、ゲート電位トレンチ10は、Y軸方向(第1の方向)に伸びる直線部分とX軸方向(第2の方向)に伸びる折れ曲がり部分を持つ形状、端的に言えばL字形状(第1の形状)を有し、第1のトレンチ電極(第1のゲート電位トレンチ電極)を形成している。更に、ゲート電位トレンチ10は、第1の形状とX軸に平行な線で線対称な形状(第2の形状)を有し、第2のトレンチ電極(第2のゲート電位トレンチ電極)を形成している。ゲート電位トレンチ10の第1と第2の形状で挟まれる領域には、フローティング分離層13が形成される。また、ゲート電位トレンチ10の2つの折れ曲がり部分、及び、フローティング分離層13を覆うようにFC-GATE14が形成される。
【0018】
図3を用いて更に詳細に説明する。
図3は、
図2AのB-B’線に沿った断面図である。
図4は、
図2AのC-C’線に沿った断面図である。p+型のフローティング層12とp+型のボディ層24の間に、n+型(第2導電型)のフローティング分離層13が形成される。FC-GATE14は、フローティング分離層13、フローティング層12の一部、ボディ層24の一部を覆うように形成される。FC-GATE14は、Poly-Si(Polycrystalline Silicon)であり、ゲート電位トレンチ10に接続されるゲート(Poly-Si)と同時に形成され、ゲートに接続される。製造工程増加を抑制するためには、フローティング分離層13は、ホールバリア層19と同時に形成されることが望ましい。あるいは、フローティング分離層13の不純物濃度調整のため、フローティング分離層13を、ホールバリア層19とは別に形成してもよい。
【0019】
(半導体装置の動作)
次に本実施の形態1に係る半導体チップ100の動作について説明する。なお、フローティング層12、フローティング分離層13、FC-GATE14以外のIGBTの基本動作については従来と同じであるため、IGBTの基本動作説明は省略する。従って、ここではフローティング層12、フローティング分離層13、FC-GATE14に特化して、
図5乃至
図7を用いて説明する。
【0020】
図5は、ゲートをオフにするとき、すなわちゲート電極に負電圧(例:-15V)が印可された状態を示している。ゲート電極に負電圧が印可されると、FC-GATE14にも負電圧が印可される。FC-GATE14に負電圧が印可されると、フローティング分離層13内のホールがFC-GATE14に引っ張られ、フローティング分離層13の表面に反転層25が生成される(
図6)。反転層25が生成されると、フローティング層12とボディ層24は導通状態となり、フローティング層12内のキャリア(ホール)はボディ層24を経由してエミッタ電極1に排出される。結果として、ゲートをオフにするとき、フローティング層12は、キャリア(ホール)を排出し続けるものとなり、キャリア(ホール)がエミッタ電極へ排出される経路を抑制する機能(キャリア排出抑制機能)は機能しなくなる。
【0021】
次に、ゲートをオンにする場合について
図7を用いて説明する。ゲートをオンにするとき、ゲートに正電圧(例:+15V)が印可される。ゲートに正電圧が印可されると、FC-GATE14にも正電圧が印可される。FC-GATE14に正電圧が印可された場合は、反転層25は生成されない。従って、フローティング層12のキャリア排出抑制機能は機能し、IE効果を得ることができる。更に言えば、FC-GATE14に正電圧が印可されると、フローティング分離層13の表面に電子が引き寄せられる。フローティング層12は、従来よりも更にエミッタ電極1から分離されることになり、IE効果を更に高めることができる。
【0022】
ここまで、半導体チップ100の
図1の領域4について説明してきた。ここで、半導体チップ100の別の領域について説明する。
【0023】
図8Aは、
図1の領域4よりも広い領域の拡大図である。
図2A、
図8Aで示される通り、半導体チップ100は、アクティブセル領域と、アクティブセル領域に隣接したノンアクティブセル領域(フローティング層12)とがY軸方向に伸びて形成されている。そして、本実施の形態1では、前述した通り、ゲート電位トレンチ10がX軸方向に折り曲げられ、フローティング分離層13とFC-GATE14が形成される。FC-GATE14で覆われる部分をFC-GATE領域と呼ぶとすると、FC-GATE領域は複数配置される。例えば、
図8Aで示される通り、FC-GATE領域はY軸方向でd1の間隔で配置される。
【0024】
ここで、アクティブセル領域と終端領域について説明する。アクティブセル領域の外側(半導体チップ100の周辺部)には、アクティブセル領域を囲むようにp+型のセル周辺接合領域やターミネーション領域(いずれも不図示)が配置される。これらの領域(終端領域と呼ぶ)は、ノンアクティブセル領域でありホール排出経路がないため、アクティブセル領域内で終端領域に隣接する領域には電流が集中し、素子破壊などを引き起こす可能性がある。従って、本実施の形態1では、電流集中を緩和するために、アクティブセル領域内で領域に隣接する領域にはFC-GATE14の配置密度を高くする。
【0025】
図8Bは、
図1の領域5(終端領域に隣接するアクティブセル領域)の拡大図である。
図8Bで示される通り、FC-GATE領域はY軸方向でd2の間隔で配置される。ここで、d2<d1である。すなわち、半導体チップ100の終端領域に隣接するアクティブセル領域のFC-GATE14配置密度>半導体チップ100中心部のアクティブセル領域のFC-GATE14の配置密度、である。
【0026】
(効果)
以上のように、本実施の形態1に係る半導体チップ100では、フローティング層12とボディ層24の間にフローティング分離層13を設けた。また、フローティング層の上部にFC-GATE14を設け、フローティング層12を機能させるかどうかを制御可能とした。これにより、IE効果向上とターンオフ時のスイッチング損失(Eoff)低減の両立を達成できる。
【0027】
ここで、本効果をシミュレーション結果で説明する。
図9は、IGBTのゲートをターンオフしたときのコレクタ電圧及びコレクタ電流を示している。New(V)は、本実施の形態1を適用したIGBTのコレクタ電圧(Collector voltage)を示している。New(A)は、本実施の形態を適用したIGBTのコレクタ電流を示している。Conv.(V)は、従来のIGBTのコレクタ電圧を示している。Conv.(A)は、従来のIGBTのコレクタ電流を示している。
図9で示されている通り、New(V)はConv.(V)よりも早く立ち上がり、New(A)はConv.(A)よりも早く立ち下がっていることがわかる。すなわち、ターンオフが高速化されていることがわかる。
【0028】
[変形例1]
(半導体装置の構成)
図10Aは、実施の形態1の変形例1に係る半導体チップの要部平面図で、
図1の領域4を拡大したものである。
図10Bは、
図10AのD-D’線に沿った断面図である。
【0029】
実施の形態1との違いは、ゲート電位トレンチ10aの形状である。
図10Aで示される通り、本変形例1のゲート電位トレンチ10aは、Y軸方向に伸びる直線部分とX軸方向に伸びるU字状の折れ曲がり部分を持つ形状、端的に言えばP字形状(第3の形状)を有し、第1のトレンチ電極(第1のゲート電位トレンチ電極)を形成している。P字形状は、直線部分の第1の点からX軸方向に折れ曲がり、更にY軸方向に折れ曲がり、更にX軸方向に折れ曲がり、直線部分の第2の点に戻る形状である。更に、ゲート電位トレンチ10aは、第1の形状とX軸に平行な線で線対称な形状(第4の形状)を有し、第2のトレンチ電極(第2のゲート電位トレンチ電極)を形成している。ゲート電位トレンチ10aの第3と第4の形状で挟まれる領域には、フローティング分離層13aが形成される。また、ゲート電位トレンチ10aの2つの折れ曲がり部分、及び、フローティング分離層13aを覆うようにFC-GATE14aが形成される。
【0030】
図10AのE-E’線に沿った断面図は、
図3と同様である。
図11は、
図10AのF-F’線に沿った断面図である。p+型のフローティング層12とp+型のボディ層24の間に、n+型のフローティング分離層13aが形成される。FC-GATE14aは、フローティング分離層13a、フローティング層12の一部、ボディ層24の一部を覆うように形成される。FC-GATE14aは、Poly-Siであり、ゲート電位トレンチ10aのPoly-Siと同時に形成され、ゲート電極に接続される。製造工程増加を抑制するためには、フローティング分離層13aは、ホールバリア層19と同時に形成されることが望ましい。あるいは、フローティング分離層13aの不純物濃度調整のため、フローティング分離層13aを、ホールバリア層19とは別に形成してもよい。
【0031】
(半導体装置の動作)
本変形例1に係る半導体チップの動作は、実施の形態1と同じであるため、説明は省略する。
【0032】
(効果)
以上のように、本変形例1に係る半導体チップは、実施の形態1と同様に、IE効果向上とターンオフ時のスイッチング損失(Eoff)低減の両立を達成できる。
更に、変形例1に係る半導体チップは、半導体チップ100と比べて、X軸方向に伸びるトレンチ本数が増えているため、トレンチに対する電界緩和効果を発揮することが可能となる。トレンチのボトム部分には、IGBTの構造上、高電界が発生する。トレンチ本数を増やすことで1本あたりにかかる電界を緩和することができる。また、この副次効果として、ホール排出効果を高めることができる。トレンチボトム部分に高電界がかかると、ホットホールが生じる。ホットホールはトレンチへ悪影響を及ぼし、ゲートの信頼性に悪影響を及ぼす。トレンチへの高電界が緩和されると、ホットホールの悪影響を減らすことができる。
【0033】
[変形例2]
(半導体装置の構成)
図12は、実施の形態1の変形例2に係る半導体チップの要部断面図である。本変形例2は、変形例1をベースにしている。
【0034】
変形例1との違いは、ゲート電位トレンチ10aとp+型の拡散層26である。本変形例2では、フローティング分離層13aに接している2つのゲート電位トレンチ10aの間隔が、
図10と比較して狭くなっている(狭メサ幅化されている)。別の表現をすると、フローティング分離層13aに接している2つのゲート電位トレンチ10a間の距離は、フローティング分離層13aに接しているゲート電位トレンチ10aとフローティング分離層13aに接していないゲート電位トレンチ10a間の距離よりも狭くなっている。すなわち、第1のゲート電位トレンチ電極の折れ曲がり部分と第2のゲート電位トレンチ電極の折れ曲がり部分の間の距離は、直線部分の第1の点と第2の点の距離よりも短い。また、フローティング分離層13aの上層には、p+型の拡散層26が形成されている。
【0035】
(半導体装置の動作)
本変形例2に係る半導体チップの基本動作は、変形例1と同じであるが、FC-GATEに印可する電圧が異なる。まず、ゲートをオフにする場合について説明する。2つのゲート電位トレンチ10a間にp+型の拡散層26が形成されているため、FC-GATE14aに負電圧(-15V)を印可しなくても、フローティング層12(p+型)、フローティング分離層(p+型)、ボディ層24(p+型)は導通することになる(ノーマリーオン)。従って、ゲート・オフ電圧が、例えば0Vでも、フローティング層12からエミッタ電極1にキャリア(ホール)が排出される。
【0036】
次に、ゲートをオンにする場合について説明する。2つのゲート電位トレンチ10a間には、p+型の拡散層26があるが、2つのゲート電位トレンチ10aの間隔が狭くなっているため、拡散層26は空乏化しやすい。従って、ゲート電極に正電圧(例:+15V)が印可されることにより拡散層26には空乏層ができ、フローティング層12とボディ層24との間は導通しなくなる。従って、フローティング層12のキャリア排出抑制機能が機能する。
【0037】
(効果)
以上のように、本変形例2に係る半導体チップでは、変形例1の効果に加え、ゲート・オフ時に負電圧が不要という効果がある。例えば、0~15Vでゲート駆動されるIGBTには、本変形例2が効果的である。なお、本変形例2は、変形例1をベースに説明したが、実施の形態1にも適用可能である。
【0038】
[変形例3]
(半導体装置の構成)
図13は、実施の形態1の変形例3に係る半導体チップの要部断面図である。本変形例3は、変形例2をベースにしている。
【0039】
変形例2との違いは、n+型の拡散層27が追加されていることである。本変形例3では、p+型の拡散層26の上層にn+型の拡散層27が形成されている。変形例2のようにp+型の拡散層26を形成すると、プロセスによっては拡散層26の表面のp濃度が濃くなりやすくなる。拡散層26の表面のp濃度が想定上に濃くなると、空乏化しにくくなる。そこで、本変形例3では、拡散層26の上層にn+型の拡散層27を形成することで、この現象をキャンセルする。
【0040】
(効果)
本変形例3では、変形例2と同じ効果をあげることができる。更に、p+型の拡散層26の上下にn+型(拡散層26とフローティング分離層13a)が形成されるため、ホール電流が通過したときに上下から空乏化が促進される。結果、フローティング層12を分離する能力が向上する。また、上述したように、変形例2よりも空乏化しやすくなるため、2つのゲート電位トレンチ10aの間隔を変形例2よりも広くできる。
【0041】
[変形例4]
(半導体装置の構成)
図14は、実施の形態1の変形例4に係る半導体チップの要部断面図である。
図14は、
図2AのB-B’線に沿った断面図である。
【0042】
実施の形態1との違いは、フローティング分離層13dである。
図14で示される通り、本変形例4のフローディング分離層13dは、ボディ層24の下層の全領域に形成されている。実施の形態1(
図3)と比較して、ボディ層24からのキャリア(ホール)排出を更に抑制することができる。
【0043】
(効果)
本変形例4に係る半導体チップは、実施の形態1よりも更にIE効果向上を達成することができる。
【0044】
[実施の形態2]
(半導体装置の構成)
図15Aは、実施の形態2に係る半導体チップの要部平面図で、
図1の領域4を拡大したものである。
図15Bは、
図15AのG-G’線に沿った断面図である。
【0045】
実施の形態1との違いは、ゲート電位トレンチ210、エミッタ電位トレンチ211、フローティング分離層213、FC-GATE214の形状である。
図15Aで示される通り、ゲート電位トレンチ210は、Y軸方向に伸びる直線部分とX軸方向に伸びるU字状の折れ曲がり部分を持つ形状(第5の形状)を有している。エミッタ電位トレンチ211は、Y軸方向に伸びる直線部分とX軸方向に伸びるU字状の折れ曲がり部分を持つ形状、端的に言えばP字形状(第6の形状)を有し、第1のトレンチ電極(第1のエミッタ電位トレンチ電極)を形成している。P字形状は、直線部分の第1の点からX軸方向に折れ曲がり、更にY軸方向に折れ曲がり、更にX軸方向に折れ曲がり、直線部分の第2の点に戻る形状である。更に、エミッタ電位トレンチ211は、第6の形状とX軸に平行な線で線対称な形状(第7の形状)を有し、第1のトレンチ電極(第2のエミッタ電位トレンチ電極)を形成している。第5の形状は、第6と第7の形状の間に配置される。
【0046】
第5の形状と第6の形状とで挟まれる領域にフローティング分離層213が形成される。また、第5の形状と、第7の形状とで挟まれる領域にもフローティング分離層213が形成される。FC-GATE214は、ゲート電位トレンチ210の折れ曲がり部分とフローティング分離層213を覆うように形成される。
【0047】
(半導体装置の動作)
本実施の形態2に係る半導体チップの動作は、実施の形態1と同様であるが、キャリア(ホール)の排出経路が異なる。本実施の形態2では、キャリアは、フローティング層12、フローティング分離層213、エミッタ電位トレンチ211側に形成されるボディ層24、エミッタ電極1の順の経路で排出される。
【0048】
(効果)
以上のように、本実施の形態2に係る半導体チップは、実施の形態1と同様に、IE効果向上とターンオフ時のスイッチング損失(Eoff)低減の両立を達成できる。更に、本実施の形態2は、ゲート容量を小さくできるという効果がある。例えば、変形例1の場合、上述した通り、ゲート電位トレンチ10aは、第3と第4の形状を有している。第3と第4の形状は、ゲート電位トレンチ10aにとってはゲート容量を増加させる要因となる。一方、本実施の形態2では、第5の形状のみがゲート容量に寄与する。従って、変形例1と比較すると、本実施の形態2のゲート容量は小さくなる。ゲート容量の小ささは、IGBTのスイッチングスピードの高速化につながる。
【0049】
[変形例5]
(半導体装置の構成)
図16Aは、実施の形態2の変形例5に係る半導体チップの要部平面図で、
図1の領域4を拡大したものである。
図16Bは、
図16AのH-H’線に沿った断面図である。
【0050】
実施の形態2との違いは、ゲート電位トレンチ210a、フローティング分離層213a、FC-GATE214aの形状である。
図16Aで示される通り、ゲート電位トレンチ210aは、Y軸方向に伸びる直線部分で構成され、実施の形態2のU字状の折れ曲がり部分は有しない。エミッタ電位トレンチ211aは、実施の形態2と同様に、第6と第7の形状を有する第1のトレンチ電極(第1のエミッタ電位トレンチ電極)および第2のトレンチ電極(第2のエミッタ電位トレンチ電極)を形成している。
【0051】
エミッタ電位トレンチ211aの第6と第7の形状で挟まれる領域に、フローティング分離層213aが形成される。FC-GATE214aは、フローティング分離層213aを覆うように形成される。
【0052】
(半導体装置の動作)
本変形例5に係る半導体チップの動作は、実施の形態2と同様である。キャリア(ホール)の排出経路は、フローティング層12、フローティング分離層213a、エミッタ電位トレンチ211側に形成されるボディ層24、エミッタ電極1の順の経路で排出される。
【0053】
(効果)
以上のように、本変形例5に係る半導体チップは、実施の形態2と同様の効果を達成することができる。また、ゲート電位トレンチ210aは、X軸方向の折れ曲がり部分を有しないため、ゲート-エミッタ間容量を低減でき、IGBTのスイッチングスピードを高速化できる。
【0054】
[変形例6]
(半導体装置の構成)
図17Aは、実施の形態2の変形例6に係る半導体チップの要部平面図で、
図1の領域4を拡大したものである。
図17Bは、
図17AのI-I’線に沿った断面図である。
【0055】
変形例5との違いは、エミッタ電位トレンチ211b、フローティング分離層213b、FC-GATE214bの形状である。
図17Aで示される通り、エミッタ電位トレンチ211bは、Y軸方向に伸びる直線部分とX軸方向に伸びるP字状の折れ曲がり部分を持つ形状(第8の形状)を有し、第1のトレンチ電極(第1のエミッタ電位トレンチ電極)ている。P字形状は、直線部分からX軸方向に折れ曲がり、更に折れ曲がり部分の第1の点からY軸方向に折れ曲がり、更にX軸方向に折れ曲がり、更に折れ曲がり部分の第2の点に戻る形状である。更に、エミッタ電位トレンチ211bは、第8の形状とX軸と平行な線で線対称な形状(第9の形状)を有し、第2のトレンチ電極(第2のエミッタ電位トレンチ電極)ている。
【0056】
第8の形状と第9の形状とで挟まれる領域にフローティング分離層213bが形成される。FC-GATE214bは、エミッタ電位トレンチ211bの折れ曲がり部分とフローティング分離層214bを覆うように形成される。
【0057】
(半導体装置の動作)
本変形例6に係る半導体チップの動作は、実施の形態2と同様である。キャリア(ホール)の排出経路は、フローティング層12、フローティング分離層213b、エミッタ電位トレンチ211側に形成されるボディ層24、エミッタ電極1の順の経路で排出される。
【0058】
(効果)
以上のように、本変形例6に係る半導体チップは、実施の形態2と同様の効果を達成することができる。
【0059】
[実施の形態3]
(半導体装置の構成)
図18は、実施の形態3に係る半導体チップ300の平面図である。実施の形態1、2では、GE-S型のIGBTで説明したが、
図18は、GGEE型のIGBTである。
【0060】
図18で示される通り、半導体チップ300は、Y軸方向に伸びるゲート電位トレンチ310、エミッタ電位トレンチ311、第1導電型のフローティング層312と、第2導電型のフローティング分離層313、FC-GATE314、エミッタ電位トレンチ311にエミッタ電位を与えるためのコンタクト315を有する。
【0061】
本実施の形態3の特徴は、実施の形態1、2でも述べた通り、フローティング分離層313とFC-GATE314にある。ここでは、フローティング分離層313とFC-GATE314に特化して説明する。
【0062】
フローティング分離層313は、2つのエミッタ電位トレンチ311に挟まれた領域に形成される。すなわち、フローティング分離層313は第1のトレンチ電極としての第1エミッタ電位トレンチ電極と第2のトレンチ電極としての第2エミッタ電位トレンチ電極との間に形成される。FC-GATE314は、フローティング分離層313を覆うように形成される。なお、FC-GATE314は、実施の形態1、2と同様に、ゲートに接続され、ゲート電位が与えられる。
【0063】
(半導体装置の動作)
本実施の形態3に係る半導体チップ300の動作は、実施の形態1、2と同様であるが、キャリア(ホール)の排出経路が異なる。本実施の形態3では、キャリアは、フローティング層312、フローティング分離層313、ボディ層(不図示)、コンタクト315を経由してエミッタ電極1に排出される。
【0064】
(効果)
以上のように、本実施の形態3に係る半導体チップ300では、IE型のIGBTの一種であるGGEE型のIGBTでも、実施の形態1、2と同様に、IE効果向上とターンオフ時のスイッチング損失(Eoff)低減の両立を達成できる。なお、本願は、GE-S型、GGEE型で説明したが、これに限られない。IE型のIGBTの他の型(EGE型など)にも適用可能である。
【0065】
[実施の形態4]
(半導体装置の構成)
図19Aは、実施の形態4に係る半導体チップの要部平面図で、
図1の領域4を拡大したものである。
図19Bは、
図19AのJ-J’線に沿った断面図である。
【0066】
実施の形態1乃至3では、FC-GATEをゲート電極に接続してゲート電位で制御していた。本実施の形態4では、FC-GATEをゲート電位ではなく単独で制御するものである。
図19Aで示される通り、本実施の形態4では、実施の形態2(
図15A)と同様に、第6と第7の形状のエミッタ電位トレンチ411を有する。すなわち、エミッタ電位トレンチ411は第1のトレンチ電極としての第1エミッタ電位トレンチ電極と第2のトレンチ電極としての第2エミッタ電位トレンチ電極とを有する。また、ゲート電位トレンチ410は、Y軸方向に伸びる直線部分で構成される。そして、ゲート電位トレンチ410とは分離した独立トレンチ427が、第6と第7の形状の間に配置される。
【0067】
第6の形状と独立トレンチ427で挟まれる領域にフローティング分離層413が形成される。また、第7の形状と独立トレンチ427で挟まれる領域にもフローティング分離層413が形成される。FC-GATE414は、独立トレンチ427とフローティング分離層413を覆うように形成される。FC-GATE414は、例えばゲート電極2とは別に設けられたFC-GATE端子(不図示)に、Poly-Siを用いて接続される。
【0068】
(半導体装置の動作)
本実施の形態4に係る半導体チップの基本動作は実施の形態2と同様であるが、FC-GATE414は、ゲート電位ではなく独立に制御可能である。例えば、ゲート・オン時に+15V、ゲート・オフ時に0Vがゲート電極に印可されるIGBTの場合、ゲート・オン時に+15V、ゲート・オフ時に-15VをFC-GATE414に印可することが可能となる。これにより、実施例1、2で説明したものと同じ効果を得ることができる。あるいは、ゲート・オン時に+15V、ゲート・オフ時に-15Vがゲート電極に印可されるIGBTの場合、ゲート・オン時に+30V、ゲート・オフ時に-30VをFC-GATE414に印可することが可能となる。これにより、フローティング分離層413の反転層の制御性がより向上する。あるいは、ゲート・オン/ゲート・オフのタイミングと、FC-GATEをオン/オフするタイミングをずらすことが可能となる。例えば、ゲート・オフとなるタイミングよりも早いタイミングでFC-GATE414をオン(反転層を形成する電圧を印可)することで、キャリア排出抑制機能がより早く機能する。これにより、ターンオフ時のスイッチング損失(Eoff)をより低減できる。
【0069】
(効果)
以上のように、本実施の形態4に係る半導体チップは、実施の形態1と同様に、IE効果向上とターンオフ時のスイッチング損失(Eoff)低減の両立を達成できる。更に、フローティング分離層413の制御のフレキシビリティを高めることが可能となる。
【0070】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更され得る。
【符号の説明】
【0071】
100、300 半導体チップ(半導体装置)
1 エミッタ電極
2 ゲート電極
3 コレクタ電極
10、10a、210、210a、210b、310、410 ゲート電位トレンチ
11、211、211a、211b、311、411 エミッタ電位トレンチ
12、312 p+型のフローティング層(第1導電型のフローティング層)
13、13a、13d、213、213a、213b、313、413 n+型のフローティング分離層(第2導電型のフローティング分離層)
14、14a、214、214a、214b、314、414 FC-GATE
15 ボディコンタクトSi溝
16 p+型のコレクタ層
17 n+型のフィールドストップ層
18 n-型のドリフト層
19 n+型のホールバリア層
20 ゲート絶縁膜
21 層間絶縁膜
22 n+型のエミッタ層
23 p+型のベース層
24 p+型のボディ層
25 反転層
26 p+型の拡散層
27 n+型の拡散層