(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置およびヘルメット
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20231127BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20231127BHJP
A42B 3/04 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B27/01
A42B3/04
(21)【出願番号】P 2019209469
(22)【出願日】2019-11-20
【審査請求日】2022-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2018238720
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591182112
【氏名又は名称】NSウエスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 学
(72)【発明者】
【氏名】平松 将紀
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 航
【審査官】後藤 昌夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-225317(JP,A)
【文献】特開2000-284214(JP,A)
【文献】特開2017-116625(JP,A)
【文献】特開2017-003962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/02
H04N 5/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘルメットに搭載されるヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記ヘルメットを着用したユーザの眼前に配置される光透過性と光反射性を兼ね備えた被投射体に対し、ユーザが当該被投射体越しに虚像として視認可能な表示像を形成するための表示光を投射する投射モジュールと、
前記投射モジュールから前記被投射体に向かう表示光における光軸の方向を調整可能に構成された光軸調整機構と、を備え
、
前記被投射体は、前記ヘルメットの額部に上端部が支持されるとともに下方に延びるステーを有する支持機構を介して前記眼前に配置され、
前記投射モジュールは、前記表示光を出射する光出射器と、該光出射器によって出射された表示光を前記被投射体に向けて反射するミラーと、を備え、
前記光出射器と前記ミラーとは、互いに分離されるとともに、前記ヘルメットの顎部の左右両側に分けて設けられ、
前記光軸調整機構は、前記光出射器を固定した状態で前記ミラーを所定の回転軸周りに回転させることにより、前記ミラーから前記被投射体に向かう表示光における光軸の方向を調整可能に構成される
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたヘッドアップディスプレイ装置において、
前記光軸調整機構は、前記ヘルメットの下側からの操作により、前記被投射体に向かう表示光における光軸の方向を調整可能に構成されている
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載されたヘッドアップディスプレイ装置において、
前記光軸調整機構は、前記被投射体に向かう表示光における光軸の方向を、該光軸と交差する第1方向と、該第1方向と交差する第2方向とにおいて、調整可能に構成されている
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載されたヘッドアップディスプレイ装置において、
前記所定の回転軸は、前記光出射器から出射された表示光における光軸を延長した仮想線と前記ミラーとが交差する箇所または当該箇所の付近に設定されている
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
ヘッドアップディスプレイ装置が搭載されたヘルメットであって、
前記ヘッドアップディスプレイ装置は、前記ヘルメットを着用したユーザの眼前に配置される光透過性と光反射性を兼ね備えた被投射体に対し、ユーザが当該被投射体越しに虚像として視認可能な表示像を形成するための表示光を投射する投射モジュールと、
前記投射モジュールから前記被投射体に向かう表示光における光軸の方向を調整可能に構成された光軸調整機構と、を備え
、
前記被投射体は、前記ヘルメットの額部に上端部が支持されるとともに下方に延びるステーを有する支持機構を介して前記眼前に配置され、
前記投射モジュールは、前記表示光を出射する光出射器と、該光出射器によって出射された表示光を前記被投射体に向けて反射するミラーと、を備え、
前記光出射器と前記ミラーとは、互いに分離されるとともに、前記ヘルメットの顎部の左右両側に分けて設けられ、
前記光軸調整機構は、前記光出射器を固定した状態で前記ミラーを所定の回転軸周りに回転させることにより、前記ミラーから前記被投射体に向かう表示光における光軸の方向を調整可能に構成される
ことを特徴とするヘルメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘルメットに搭載されるヘッドアップディスプレイ装置およびヘッドアップティスプレイ装置が搭載されたヘルメットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動二輪車を運転する際に着用されるヘルメットにヘッドアップディスプレイ(Head Up Display)装置(以下「HUD装置」と称する)を搭載することにより、当該ヘルメットを着用したユーザ(運転者)に対し、車速などの車両情報、ナビゲーションシステムによる地図情報、警告情報といった各種情報を虚像として視界前方に視認させるようにして、車両運転時の利便性や安全性を高めることが知られている。
【0003】
ヘルメットに搭載されるHUD装置は、表示する情報に応じた表示光を投射する投射モジュールと、投射モジュールによって投射された表示光をヘルメットの着用者であるユーザの眼に向けて反射するコンバイナとを備える。コンバイナは、ハーフミラーからなり、ヘルメットの前部に設けられた窓開口内でユーザの前方視界に入る位置に配置され、ユーザの前方からの光を透過させる。したがって、ユーザは、コンバイナ越しに風景と重畳した状態で表示光による虚像(表示像)を視認できる。このようなHUD装置の一例は、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ヘルメットを着用した状態での窓開口に対するユーザの視線位置には個人差がある。上述したHUD装置では、コンバイナに投射される表示光の位置がユーザによって視線位置に合わず、コンバイナで反射された表示光がユーザの前方視界から外れる方向へ進行してしまい、表示像が一部あるいは全く視認できなかったり運転支援に最適な位置に表示されなかったりする事態に陥る。このため、ユーザに対し、ヘルメット着用時における視線位置の個人差に拘わらず、コンバイナを介した表示像を所望の位置で良好に視認させられるようにすることが求められる。
【0006】
本開示の技術は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ユーザに対し、ヘルメット着用時における視線位置の個人差に拘わらず、被投射体を介した表示像を所望の位置で良好に視認させられるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本開示の技術では、投射モジュールから被投射体に向かう表示光における光軸の方向を調整できるようにした。
【0008】
具体的には、本開示の技術は、ヘルメットに搭載されるHUD装置を対象とする。
【0009】
本開示の技術に係るHUD装置は、ヘルメットを着用したユーザの眼前に配置される光透過性と光反射性を兼ね備えた被投射体に対し、ユーザが当該被投射体越しに虚像として視認可能な表示像を形成するための表示光を投射する投射モジュールと、投射モジュールから被投射体に向かう表示光における光軸の方向を調整可能に構成された光軸調整機構とを備える。
【0010】
この構成によると、投射モジュールから被投射体に向かう表示光における光軸の方向を調整可能に構成された光軸調整機構を設けるようにしたので、ヘルメットを着用したユーザの視線位置に合わせて被投射体への表示光の投射位置を調整することができる。それにより、ユーザに対し、ヘルメット着用時における視線位置の個人差に拘わらず、被投射体を介した表示像を所望の位置で良好に視認させることができる。
【0011】
上記HUD装置において、光軸調整機構は、ヘルメットの下側からの操作により、被投射体に向かう表示光における光軸の方向を調整可能に構成されていることが好ましい。
【0012】
この構成によると、被投射体に向かう表示光における光軸の方向の調整を、光軸調整機構に対するヘルメットの下側からの操作を以て行えるようにしたので、ユーザがヘルメットを着用したままの状態で当該光軸の方向を容易に調整することができる。
【0013】
また、光軸調整機構は、被投射体に向かう表示光における光軸の方向を、その光軸と交差する第1方向と、第1方向と交差する第2方向とにおいて、調整可能に構成されていることが好ましい。
【0014】
この構成によると、被投射体に向かう表示光における光軸の方向の調整を、互いに交差する2方向において行えるようにしたので、当該光軸を調整する方向の自由度を高めることができる。それにより、被投射体への表示光の投射位置を、ヘルメットを着用したユーザの視線位置に合わせてよりいっそう正確に調整することができる。
【0015】
また、投射モジュールは、表示光を出射する光出射器と、光出射器によって出射された表示光を被投射体に向けて反射するミラーとを備えていてもよい。そして、光軸調整機構は、ミラーを所定の回転軸周りに回転させることにより、ミラーから被投射体に向かう表示光における光軸の方向を調整可能に構成されていてもよい。この場合、所定の回転軸は、光出射器から出射された表示光における光軸を延長した仮想線の方向とミラーとが交差する箇所または当該箇所の付近に設定されていることが好ましい。
【0016】
この構成によると、ミラーから被投射体に向かう表示光における光軸の方向を調整するのにミラーを回転させるようにし、そのミラーの回転動作における中心としての回転軸を、当該光軸を延長した仮想線とミラーとが交差する箇所または当該箇所の付近に設定するようにしたので、ミラーを回転させることに起因して表示像に生じる歪みを少なくすることができる。
【0017】
光出射器とミラーとは、互いに分離してヘルメットに設けられていてもよい。そして、光軸調整機構は、光出射器を固定した状態でミラーを所定の回転軸周りに回転させることにより、ミラーから被投射体に向かう表示光における光軸の方向を調整可能に構成されていることが好ましい。
【0018】
この構成によると、ミラーから被投射体に向かう表示光における光軸の方向の調整を、光出射器を回転させずにミラーを回転させることで行えるようにしたので、光軸調整機構をコンパクトに実現することができ、HUD装置を搭載することに起因したヘルメットの大型化および重量化を抑制するのに有利である。
【0019】
また、光出射器とミラーとは、同一のケース内に設けられてユニット化されていてもよい。光軸調整機構は、ミラーを光出射器ごと所定の回転軸周りに回転させることにより、ミラーから被投射体に向かう表示光における光軸の方向を調整可能に構成されていてもよい。
【0020】
また、本開示の技術は、HUD装置が搭載されたヘルメットを対象とする。
【0021】
本開示の技術に係るヘルメットでは、HUD装置が、ヘルメットを着用したユーザの眼前に配置される光透過性と光反射性を兼ね備えた被投射体に対し、ユーザが当該被投射体越しに虚像として視認可能な表示像を形成するための表示光を投射する投射モジュールと、投射モジュールから被投射体に向かう表示光における光軸の方向を調整可能に構成された光軸調整機構とを備える。
【0022】
この構成によると、投射モジュールから被投射体に向かう表示光における光軸の方向を調整可能に構成された光軸調整機構を設けるようにしたので、ヘルメットを着用したユーザの視線位置に合わせて被投射体への表示光の投射位置を調整することができる。それにより、ユーザに対し、ヘルメット着用時における視線位置の個人差に拘わらず、被投射体を介した表示像を所望の位置で良好に視認させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本開示の技術に係るHUD装置およびそれを搭載したヘルメットによれば、ユーザに対し、ヘルメット着用時における視線位置の個人差に拘わらず、被投射体を介した表示像を所望の位置で良好に視認させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る情報提示システムの概略的な全体構成図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る情報提示システムの概略的なブロック図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係るHUD装置が搭載されたヘルメットの正面図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係るHUD装置が搭載されたヘルメットの側面図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係るHUD装置における光軸調整機構の構成を示す平面図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係るHUD装置における光軸調整機構を前側から見た側面図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態に係るHUD装置における光軸調整機構を
図6のVIIで示す方向から見た側面図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態に係るHUD装置が備える光軸調整機構の、凹面ミラーで反射する表示光における光軸の方向を左側へ調整したときの状態を示す
図6相当図である。
【
図9】
図9は、第1の実施形態に係るHUD装置が搭載されたヘルメットの光軸調整機構を
図8に示す状態としたときの正面図である。
【
図10】
図10は、第1の実施形態に係るHUD装置が備える光軸調整機構の、凹面ミラーで反射する表示光における光軸の方向を右側へ調整したときの状態を示す
図6相当図である。
【
図11】
図11は、第1の実施形態に係るHUD装置が搭載されたヘルメットの光軸調整機構を
図10に示す状態としたときの正面図である。
【
図12】
図12は、第1の実施形態に係るHUD装置が備える光軸調整機構の、凹面ミラーで反射する表示光における光軸の方向を上側へ調整したときの状態を示す
図7相当図である。
【
図13】
図13は、第1の実施形態に係るHUD装置が搭載されたヘルメットの光軸調整機構を
図12に示す状態としたときの側面図である。
【
図14】
図14は、第1の実施形態に係るHUD装置が備える光軸調整機構の、凹面ミラーで反射する表示光における光軸の方向を下側へ調整したときの状態を示す
図7相当図である。
【
図15】
図15は、第1の実施形態に係るHUD装置が搭載されたヘルメットの光軸調整機構を
図14に示す状態としたときの側面図である。
【
図16】
図16は、第2の実施形態に係るHUD装置が搭載されたヘルメットの正面図である。
【
図17】
図17は、第2の実施形態に係るHUD装置が搭載されたヘルメットの側面図である。
【
図18】
図18は、第2の実施形態に係るHUD装置が搭載されたヘルメットの、凹面ミラーで反射する表示光における光軸の方向を光軸調整機構により左側へ調整したときの状態を示す正面図である。
【
図19】
図19は、第2の実施形態に係るHUD装置が搭載されたヘルメットの、凹面ミラーで反射する表示光における光軸の方向を光軸調整機構により右側へ調整したときの状態を示す正面図である。
【
図20】
図20は、第2の実施形態に係るHUD装置が搭載されたヘルメットの、凹面ミラーで反射する表示光における光軸の方向を光軸調整機構により上側へ調整したときの状態を示す側面図である。
【
図21】
図21は、第2の実施形態に係るHUD装置が搭載されたヘルメットの、凹面ミラーで反射する表示光における光軸の方向を光軸調整機構により下側へ調整したときの状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、便宜上、ヘルメットおよびヘルメットに搭載されるHUD装置について、ヘルメットを着用したユーザの顔の上下に相当する方向における上側を「上」、下側を「下」と称し、ヘルメットを着用したユーザの顔の前後に相当する方向における前側を「前」、後側を「後」と称し、ヘルメットを着用したユーザの顔の前方を向いてその顔の左右に相当する方向における左側を「左」、右側を「右」と称する。
【0026】
《第1の実施形態》
この第1の実施形態では、本開示の技術に係るHUD装置およびそれを搭載したヘルメットについて、ヘルメットのシールドとは別個に設けられたコンバイナを用い、コンバイナに対し表示像を形成するための表示光を投射する投射モジュールが、表示光を出射する光出射器と、光出射器によって出射された表示光をコンバイナに向けて反射する凹面ミラーとが互いに分離して設けられた態様を例に挙げて説明する。
【0027】
この第1の実施形態に係るHUD装置は、自動二輪車のライダー(ユーザ)に向けて運転支援に寄与する情報を提示する情報提示システムを構成している。
【0028】
<情報提示システムの構成>
図1は、この第1の実施形態に係る情報提示システム1の概略的な全体構成図である。
図2は、この第1の実施形態に係る情報提示システム1の概略的なブロック図である。なお、
図1において、二点鎖線の矢印は表示光の経路および進行方向を示し、一点鎖線は表示光の光軸LXを示している。なお、これらのことは、後に参照する
図4~
図15においても同じである。
【0029】
情報提示システム1は、
図1および
図2に示すように、自動二輪車のヘルメット101に搭載されたHUD装置3と、HUD装置3に対して表示され得る各種情報を提供する情報端末5とを備えている。
【0030】
- 情報端末の構成 -
情報端末5としては、スマートフォンと呼ばれる小型の多機能携帯電話機が用いられる。この情報端末5は、GPS衛星Sからの電波を受信して測位情報を生成するGPS(Global Positioning System)受信機7と、外部との無線通信を行う無線通信モジュール9と、入出力装置としてのタッチパネル付き表示装置11と、当該情報端末5の動作を総合的に制御するマイクロコンピュータ13と、当該情報端末5を動作させるのに必要な電力を供給する電源15とを備えている。
【0031】
GPS受信機7は、図示しないGPSアンテナなどを備えて構成されている。GPSアンテナは、地球軌道に打ち上げられた複数のGPS衛星Sから送信されるGPS信号を受信する。GPS受信機7は、GPSアンテナで受信したGPS信号に基づいて、情報端末5の現在位置(例えば緯度、経度および高度)の情報を取得する。このGPS受信機7は、マイクロコンピュータ13からの要求に応じて、測位した情報端末5の位置情報をマイクロコンピュータ13に含まれるメモリ23に保存し、逐次更新する。
【0032】
無線通信モジュール9は、インターネットなどの広域通信網である外部ネットワークNと通信を行うネットワーク通信部17と、HUD装置3と近距離で無線通信を行う近距離通信部19とを備えている。
【0033】
ネットワーク通信部17は、WiFi(Wireless Fidelity;登録商標)などの無線LAN(Local Area Network)の機能やLTE(Long Time Evolution;登録商標)といったモバイル通信規格での通信機能を有している。このネットワーク通信部17は、マイクロコンピュータ13からの要求に応じて、外部ネットワークNから地図情報や、工事や渋滞などに関する道路情報、GPS受信機7で取得された現在位置に基づく周辺施設の情報、災害情報などのネット情報を受信して、マイクロコンピュータ13に含まれるメモリ23に一時的に蓄積する。
【0034】
近距離通信部19は、ブルートゥース(Bluetooth:登録商標)などの近距離無線通信規格での通信機能を有している。この近距離通信部19は、マイクロコンピュータ13からの要求に応じて、GPS受信機7で取得された情報端末5の位置情報や、ネットワーク通信部17で取得されたネット情報、後述する各種のアプリケーションソフトウェア(以下「アプリ」と称する)により取得されるアプリ情報、HUD装置3によって表示する表示像についての表示項目や明るさなどの表示設定の情報を含む種々の情報をマイクロコンピュータ13に含まれるメモリ23から読み出して、無線通信によりHUD装置3へと送信する。
【0035】
タッチパネル付き表示装置11は、情報端末5の画面21に画像を表示する表示装置と、ユーザがタッチした画面21内の位置(触れた位置)を検出するタッチパネルとが一体化された電子装置であって、画像の出力機能とユーザ操作の入力機能とを兼ね備えている。情報端末5では、このタッチパネル付き表示装置11へのタッチ操作により、各種アプリの実行や、後述の連携アプリ33の実行時においてはHUD装置3での表示設定を行えるようになっている。
【0036】
マイクロコンピュータ13は、メモリ23およびCPU(Central Processing Unit)25を含んでいる。メモリ23は、情報端末5を動作させるためのプログラムを含む様々な情報を一時的または恒久的に保存する。このメモリ23は、典型的には、RAM(Random Access Memory)とROM(Read Only Memory)の組合せによって実現される。当該メモリ23に記憶される各種のプログラムには、モバイルOS(Operating System)や、モバイルOS上で特定機能を実現すべく動作する複数のアプリが含まれている。
【0037】
複数のアプリには、時刻アプリ27、速度アプリ29、ナビゲーションアプリ(以下「ナビアプリ」と称する)31および連携アプリ33が含まれている。これら複数のアプリ27,29,31,33は、情報端末5に予めインストールされてメモリ23に保存されている。
【0038】
時刻アプリ27は、現在時刻を取得するソフトウェアである。この時刻アプリ27では、例えば、基地局との通信で取得されるタイムスタンプやGPS受信機7で取得される時刻情報に基づき、さらにはNITZ(Network Identity and Time Zone)やNTP(Network Time Protocol)といった時刻同期技術を用いて、現在時刻を取得する。
【0039】
速度アプリ29は、情報端末5の移動速度を検出するソフトウェアである。この速度アプリ29では、例えば、GPS受信機7で取得される情報端末5の位置情報に基づいて、情報端末5の移動速度を検出する。
【0040】
ナビアプリ31は、ユーザによって設定された目的地への経路案内を行うソフトウェアである。このナビアプリ31では、例えば、ネットワーク通信部17で取得された、またはメモリ23に予め保存された地図情報と、GPS受信機7で取得される情報端末5の位置情報とに基づいて、目的地への経路案内を行う。
【0041】
連携アプリ33は、近距離通信部19による無線通信を用いてHUD装置3と連携し、HUD装置3へアプリ情報やネット情報、HUD装置3での表示設定の情報などの各種情報を送信して、HUD装置3での表示機能を実現するためのソフトウェアである。
【0042】
この連携アプリ33では、HUD装置3の表示設定を行えるようになっている。具体的には、表示設定として、HUD装置3で表示する項目を現在時刻、移動速度および経路案内情報(ナビゲーション情報)を含む複数の項目から設定したり、HUD装置3によって表示される表示像(以下「HUD表示」と称する)の明るさを設定したりできる。当該連携アプリ33で設定された表示設定の情報は、メモリ23に保存される。
【0043】
CPU25は、典型的には、IC(Integrated Circuit)やLSI(Large Scale Integration)などによって実現される。このCPU25は、各種データを処理するための演算を行い、無線通信モジュール9およびタッチパネル付き表示装置11の動作と各種アプリ27,29,31,33の実行とを制御する。
【0044】
マイクロコンピュータ13は、CPU25の機能により、GPS受信機7に現在位置の情報を取得させ、ネットワーク通信部17に外部ネットワークNとの接続を確立させてネット情報を収集すると共に、連携アプリ33の実行により、近距離通信部19にHUD装置3との接続を確立させ、時刻アプリ27、速度アプリ29およびナビアプリ31の実行に応じた種々の処理によって取得したアプリ情報やネット情報、表示設定の情報をHUD装置3に送信する。
【0045】
電源15は、リチウムイオンバッテリなどの二次電池によって構成されている。当該電源15は、無線通信モジュール9、タッチパネル付き表示装置11およびマイクロコンピュータ13に配線を介して電気的に接続されている。情報端末5は、図示しない電源スイッチで電源を入れる操作がされると、電源15から無線通信モジュール9、タッチパネル付き表示装置11およびマイクロコンピュータ13に電力を供給して、ユーザの操作に応じた所定の動作をするようになっている。
【0046】
<HUD装置の構成>
図3は、この第1の実施形態に係るHUD装置3が搭載されたヘルメット101の正面図である。
図4は、この第1の実施形態に係るHUD装置3が搭載されたヘルメット101の側面図である。HUD装置3は、ヘルメット101を着用したユーザの視野に視覚情報を映し出す投射型表示装置である。
【0047】
この第1の実施形態に係るHUD装置3が搭載されるヘルメット101は、フルフェイス型のヘルメットであって、着用したユーザに視界を提供するための窓開口103が前部に形成されたヘルメット本体105と、ヘルメット本体105に対し取り替え可能に装着されて窓開口を開閉し得る透明なシールド107とを備えている。
【0048】
ヘルメット本体105は、図示しないが、その外殻を構成するシェル(帽体)の内側に、発泡ポリスチレンなどからなる衝撃を吸収する緩衝体としてのライナー(不図示)が設けられた構造を有している。シールド107は、ヘルメット本体105における窓開口103の左右両側に留め具109などを用いて所定の角度範囲だけ回転可能に取り付けられており、上下方向への回動動作を以て窓開口103を開閉するようになっている。
【0049】
シールド107は、窓開口103を閉じた状態で、窓開口103を通して飛び込む塵埃などの異物や風、紫外線などをブロックする機能を有している。このシールド107は、留め具109を外して取り外せるようになっている。当該シールド107には、天候や昼夜などによる外部環境の明るさに合わせて、無色透明なシールド、スモークシールドなどの色付き透明なシールド、ミラーシールドなどの光透過率の異なる様々なシールドが採用され得る。
【0050】
HUD装置3は、
図1~
図4に示すように、外部との無線通信を行う無線通信モジュール35と、当該HUD装置3での表示機能を制御する制御モジュール37と、表示光を生成して投射する投射モジュール39と、投射モジュール39から投射された表示光による表示像を虚像としてユーザに視認させるためのコンバイナユニット41と、当該HUD装置3へのユーザによる操作を入力するための操作ユニット43と、当該HUD装置3を動作させるのに必要な電力を供給する電源45とを備えている。
【0051】
無線通信モジュール35は、ブルートゥースなどの近距離無線通信規格での通信機能を有している。この無線通信モジュール35は、制御モジュール37に含まれるマイクロコンピュータ53からの要求に応じて、情報端末5の近距離通信部19から送信されたネット情報やアプリ情報、表示設定の情報を受信し、マイクロコンピュータ53に含まれるメモリ49に保存する。この無線通信モジュール35は、制御モジュール37と共にPCB上に設けられ、PCBモジュール47としてヘルメット本体105の顎部111左側に内蔵されている。
【0052】
制御モジュール37は、投射モジュール39に含まれる光出射器57での表示光の生成を制御する。この制御モジュール37は、メモリ49およびCPU51を含むマイクロコンピュータ53と、画像表示に関する処理を担当する集積回路であるGDC(Graphics Display Controller)55とを有している。
【0053】
メモリ49は、HUD装置3を動作させるためのプログラムを含む様々な情報を一時的または恒久的に保存する。このメモリ49には、無線通信モジュール35で受信したネット情報やアプリ情報、表示設定の情報も保存される。当該メモリ49は、典型的には、RAMとROMの組合せによって実現される。
【0054】
CPU51は、典型的には、ICやLSIなどによって実現される。このCPU51は、各種データを処理するための演算を行い、無線通信モジュール35、投射モジュール39およびGDC55の動作を制御する。
【0055】
GDC55は、メモリ49に保存されたネット情報やアプリ情報、表示設定の情報に基づき、コンバイナユニット41に含まれるコンバイナ95を介してユーザに視認させる表示像のデータを生成する。このGDC55で生成される表示像のデータは、情報端末5の連携アプリ33の表示設定で設定された項目の情報を表す画像データである。マイクロコンピュータ53は、CPU51の機能により、GDC55に表示像のデータを生成させ、その画像信号を投射モジュール39に含まれる光出射器57に出力させる。
【0056】
投射モジュール39は、ヘルメット本体105の顎部111に内蔵されている。この投射モジュール39は、GDC55から入力される画像信号に基づいて表示像に対応する表示光を生成して出射する光出射器57と、光出射器57によって出射された表示光をコンバイナユニット41に含まれるコンバイナ95に向けて反射する凹面ミラー59と、凹面ミラー59で反射した表示光における光軸LXの方向を調整可能に構成された光軸調整機構61とを備えている。これら光出射器57と凹面ミラー59および光軸調整機構61とは、ヘルメット101の顎部111における左右両側に分けて設けられている。
【0057】
光出射器57は、ヘルメット本体105の顎部111左側でPCBモジュール47の近傍位置に内蔵されている。この光出射器57は、図示しないが、LED(Light Emitting Diode)などの光源およびLCOS(Liquid Crystal On Silicon)などの反射型表示パネルからなる表示素子と、凸レンズや凹レンズなどの光学レンズ、拡散板、偏光ビームスプリッタ(PBS:Polarizing Beam Splitter)といった複数の光学部材とを組み合わせて構成されている。当該光出射器57は、HUD装置3によって表示される表示像が情報端末5で設定された明るさレベルとなる光の強さで表示光を生成し、生成した表示光を凹面ミラー59に向けて出射する。
【0058】
凹面ミラー59は、ヘルメット本体105の顎部111右側に内蔵されている。この凹面ミラー59は、回転対称性を持たない自由曲面形状の反射面63(
図3等では平面状に図示)を有している。当該凹面ミラー59は、光出射器57から受けた表示光を、その反射面63により、上方あるコンバイナユニット41に含まれるコンバイナ95に向けて反射すると共に、ユーザに視認される表示像が運転中の表示に適したサイズおよび位置となるように整形する。
【0059】
光軸調整機構61は、凹面ミラー59と一体に設けられている。この光軸調整機構61は、
図5~
図7に示すように、凹面ミラー59を互いに直交する第1の回転軸Xa周りおよび第2の回転軸Xb周りに所定の角度範囲に亘って回転可能に保持する保持具65と、保持具65に保持された凹面ミラー59の姿勢を維持する姿勢維持具としての板バネ部材67と、板バネ部材67を介して凹面ミラー59に回転させるための付勢力を付与する付勢部品としての第1のボルト69aおよび第2のボルト69bとを備えている。
【0060】
保持具65は、凹面ミラー59を第1の回転軸Xa周りに回転可能に保持する内側枠体71と、内側枠体71を凹面ミラー59ごと第2の回転軸Xb周りに回転可能に保持する外側枠体73とを備えている。ここで、第1の回転軸Xaは、前後方向に延び、光出射器57から出射された表示光における光軸LXを仮想的に延長した仮想線LX’と凹面ミラー59とが交差する箇所を通るように設定されている。また、第2の回転軸Xbは、左下側から右上側へ斜め方向に延び、光出射器57から出射された表示光における光軸LXを仮想的に延長した仮想線LX’と凹面ミラー59とが交差する箇所を通るように設定されている。
【0061】
内側枠体71は、凹面ミラー59の外周を囲むように設けられている。凹面ミラー59の前後方向における両側には、上下方向における中央において外方へ突出する軸部75がそれぞれ設けられている。内側枠体71には、凹面ミラー59の各軸部75が嵌め込まれる嵌合凹部77が設けられている。凹面ミラー59は、内側枠体71に対し、各軸部75を嵌合凹部77に嵌め込むことにより、それら両軸部75の中心を通る第1の回転軸Xa周りに回転自在に保持されている。
【0062】
外側枠体73は、内側枠体71の外周を囲むように設けられている。内側枠体71の上下方向における両側には、前後方向における中央において枠体外側と内側とを貫通する取付孔79が形成されている。外側枠体73の上下方向における両側にも、内側枠体71の取付孔79に対応する箇所において枠体外側と内側とを貫通する取付孔81が形成されている。外側枠体73は、内側枠体71に対し、各取付孔81の枠体外側から対応する内側枠体の取付孔79にまで留め具83を挿入することにより、それら両取付孔79,81の中心を通る第2の回転軸Xb周りに回転自在に保持されている。
【0063】
板バネ部材67は、保持具65の裏側に配置されており、保持具65と同じような傾斜姿勢とされている。この板バネ部材67は、ベース板部85と、ベース板部85から切り起こされて形成された複数の板バネ87a,87b,87c,87dとを備えている。複数の板バネ87a,87b,87c,87dは、ベース板部85の左上位置に設けられた第1の板バネ87aと、ベース板部85の右下位置に設けられた第2の板バネ87bと、ベース板部85の前側位置に設けられた第3の板バネ87cと、ベース板部85の後側位置に設けられた第4の板バネ87dとである。
【0064】
第1の板バネ87aは、凹面ミラー59の裏面において第1の回転軸Xaに対応する右上側の箇所90aに当接している。この第1の板バネ87aは、凹面ミラー59をその裏面から表側へ常時付勢している。第2の板バネ87bは、凹面ミラー59の裏面において第1の回転軸Xaに対応する左下側の箇所90bに当接している。この第2の板バネ87bは、凹面ミラー59から離れる方向へ付勢されているが、裏側にある第1のボルト69aにより同方向への変位が規制されることで、第1の板バネ87aによる付勢力で第1の回転軸Xa周りに回転しようとする凹面ミラー59の裏面を受け止めて支持している。
【0065】
第3の板バネ87cは、凹面ミラー59の裏面において第2の回転軸Xbに対応する前側の箇所90cに当接している。この第3の板バネ87cは、凹面ミラー59をその裏面から表側へ常時付勢している。第4の板バネ87dは、凹面ミラー59の裏面において第2の回転軸Xbに対応する後側の箇所90dに当接している。この第4の板バネ87dは、凹面ミラー59から裏側へ離れる方向へ付勢されているが、裏側にある第2のボルト69bにより同方向への変位が規制されることで、第3の板バネ87cによる付勢力で第2の回転軸Xb周りに回転しようとする凹面ミラー59の裏面を受け止めて支持している。
【0066】
第1のボルト69aおよび第2のボルト69bは、板バネ部材67の裏側に配置された取付板89に取り付けられている。取付板89には、第1のボルト69aおよび第2のボルト69bを挿通するための挿通孔91が形成されていると共に、個々の挿通孔91に内部が連通する2つのウェルドナット93が設けられている。第1のボルト69aおよび第2のボルト69bは、対応する挿通孔91に挿通されてウェルドナット93に螺合することにより、取付板89に取り付けられている。
【0067】
第1のボルト69aにおける軸部先端は、第2の板バネ87bの裏面に当接している。そして、第1のボルト69aにおける頭部は、取付板89の裏側に配置され、ドライバなどの工具を使用すれば、ヘルメット101の下側からの操作により、ヘルメット本体105に設けられた作業孔115を通じて奥側へ捩じ込んだり手前側に引き出したりできるようになっている。当該第1のボルト69aを奥側へ捩じ込むことにより、第2の板バネ87bを介して凹面ミラー59に付勢力を作用させられる。一方、当該第1のボルト69aを手前側に引き出すことにより、第2の板バネ87bを介した凹面ミラー59への付勢力を弱めるか或いは無くせる。
【0068】
第2のボルト69bにおける軸部先端は、第4の板バネ87dの裏面に当接している。そして、第2のボルト69bにおける頭部は、取付板89の裏面に配置され、ドライバなどの工具を使用すれば、ヘルメット101の下側からの操作により、ヘルメット本体105に設けられた作業孔115を通じて奥側へ捩じ込んだり手前側に引き出したりできるようになっている。当該第2のボルト69bを奥側へ捩じ込むことにより、第4の板バネ87dを介して凹面ミラー59に付勢力を作用させられる。一方、当該第2のボルト69bを手前側に引き出すことにより、第4の板バネ87dを介した凹面ミラー59への付勢力を弱めるか或いは無くせる。
【0069】
図8は、光軸調整機構61の、凹面ミラー59で反射する表示光における光軸LXの方向を左側へ調整したときの状態を示す
図6相当図である。
図9は、光軸調整機構61を
図8に示す状態としたときのヘルメット101の正面図である。
図10は、光軸調整機構61の、凹面ミラー59で反射する表示光における光軸LXの方向を右側へ調整したときの状態を示す
図6相当図である。
図11は、光軸調整機構61を
図10に示す状態としたときのヘルメット101の正面図である。
【0070】
光軸調整機構61では、
図8に示すように、第1のボルト69aに捩じ込み操作を行うと、凹面ミラー59が、第2の板バネ87bを介して作用する付勢力により、第1の板バネ87aからの付勢力に抗して反射面63を上側へ向ける方向に回転する。そのことで、
図9に示すように、凹面ミラー59からコンバイナユニット41に含まれるコンバイナ95に向かう表示光における光軸LXの方向が右側に変位する。
【0071】
また、光軸調整機構61では、
図10に示すように、第1のボルト69aに引き出し操作を行うと、凹面ミラー59が、第1の板バネ87aからの付勢力により反射面63を左側へ向ける方向に回転する。そのことで、
図11に示すように、凹面ミラー59からコンバイナユニット41に含まれるコンバイナ95に向かう表示光における光軸LXの方向が左側に変位する。
【0072】
図12は、光軸調整機構61の、凹面ミラー59で反射する表示光における光軸LXの方向を上側へ調整したときの状態を示す
図7相当図である。
図13は、光軸調整機構61を
図12に示す状態としたときのヘルメット101の側面図である。
図14は、光軸調整機構61の、凹面ミラー59で反射する表示光における光軸LXの方向を下側へ調整したときの状態を示す
図7相当図である。
図15は、光軸調整機構61を
図14に示す状態としたときのヘルメット101の側面図である。
【0073】
光軸調整機構61では、
図12に示すように、第2のボルト69bに捩じ込み操作を行うと、凹面ミラー59が、第4の板バネ87dを介して作用する付勢力により、第3の板バネ87cからの付勢力に抗して反射面63を後側へ向ける方向に回転する。そのことで、
図13に示すように、凹面ミラー59からコンバイナユニット41に含まれるコンバイナ95に向かう表示光における光軸LXの方向が後側に変位する。
【0074】
また、光軸調整機構61では、
図14に示すように、第2のボルト69bに引き出し操作を行うと、凹面ミラー59が第3の板バネ87cからの付勢力により反射面63を前側へ向ける方向に回転する。そのことで、
図15に示すように、凹面ミラー59からコンバイナユニット41に含まれるコンバイナ95に向かう表示光における光軸LXの方向が前側に変位する。
【0075】
このように、光軸調整機構61では、第1のボルト69aの捩じ込み操作および引き出し操作により、凹面ミラー59からコンバイナユニット41に含まれるコンバイナ95に向かう表示光における光軸LXの方向を左右方向(第1方向)において調整することができ、且つ、第2のボルト69bの捩じ込み操作および引き出し操作により、凹面ミラー59からコンバイナユニット41に含まれるコンバイナ95に向かう表示光における光軸LXの方向を前後方向(第2方向)において調整することができる。そのことにより、コンバイナユニット41に含まれるコンバイナ95への表示光の投射位置を上下左右に調整することができる。
【0076】
コンバイナユニット41は、凹面ミラー59により反射された表示光を下方から受けてユーザが視認可能な方向に反射するコンバイナ95と、コンバイナ95をヘルメット101の着用者であるユーザの眼前に位置させるように支持する支持機構97とを備えている。
【0077】
コンバイナ95は、透明または半透明な板状部品であって、回転対称性を持たない自由曲面形状(図示では平面状)の半透過反射面96を有している。コンバイナ95は、閉じた状態にあるシールド107の内側に位置するように配置される。当該コンバイナ95は、光透過性と光反射性を兼ね備えた被投射体であって、ハーフミラーによって構成されている。ハーフミラーは、入射した光の一部を反射させて一部を透過させる性質を有している。
【0078】
支持機構97は、ヘルメット本体105の前部に設けられた窓開口103内でユーザの前方視界に入る位置にコンバイナ95を支持する。コンバイナ95は、ユーザの右眼Eの前方位置に配置され、支持機構97により、半透過反射面96をユーザの顔側に配置させ、後端が上方に位置する一方で前端が下方に位置する前傾姿勢で支持される。
【0079】
支持機構97は、上下方向に延びるステー98を有している。ステー98の上側部は、ヘルメット本体105の額部113に内蔵された図示しない保持具に保持されている。ステー98の下端部には、左右方向に延びる回転軸99を介してコンバイナ95が連結されている。支持機構97は、コンバイナ95の回転軸99周りの回転動作を以て、半透過反射面96の向きを調整可能とされている。
【0080】
操作ユニット43は、図示しないが例えば、ヘルメット本体105のPCBモジュール47に対応する箇所に設けられている。この操作ユニット43は、図示しないが、電源スイッチや操作スイッチを含んでいる。電源スイッチは、HUD装置3の電源のオンおよびオフ(入切)を切り替える機能を持たせたプッシュボタン式のスイッチである。操作スイッチは、HUD装置3の表示のオンおよびオフを切り替える機能を持たせたプッシュボタン式のスイッチである。
【0081】
電源45は、ヘルメット本体105の後頭部に内蔵されている。この電源45は、リチウムイオンバッテリなどの二次電池によって構成されている。当該電源45は、無線通信モジュール35、制御モジュール37および光出射器57と配線を介して電気的に接続されている。HUD装置3は、操作ユニット43にて電源スイッチに電源を入れる操作がされると、電源45から無線通信モジュール35、制御モジュール37および光出射器57に電力を供給して、操作スイッチの操作による表示のオンとオフの切り替えに応じた表示動作をするようになっている。
【0082】
<情報提示システムの動作>
上記構成の情報提示システム1では、HUD装置3の電源が入れられて、情報端末5で連携アプリ33が実行されると、ネット情報やアプリ情報、表示設定の情報がHUD装置3で受信される。そして、受信したネット情報やアプリ情報に基づいて、表示設定の情報に含まれる予め設定された項目に対応する表示像のデータがGDC55にて生成される。このとき、HUD装置3の表示がオン状態であると、光出射器57において、GDC55で生成された表示像のデータに対応する表示光が、情報端末5で設定されたHUD表示の明るさレベルに対応する光の強さで生成される。この表示光は、光出射器57から出射された後に凹面ミラー59で反射されて、コンバイナ95に投光され、コンバイナ95でユーザの視界に入るようにさらに反射される。これにより、ユーザは、コンバイナ95越しに前方視界の風景に重畳した状態で、表示光による表示像を虚像として視認させられる。
【0083】
この第1の実施形態に係るHUD装置3およびそれを搭載したヘルメット101によると、投射モジュール39の凹面ミラー59からコンバイナ95に向かう表示光における光軸LXの方向を調整可能に構成された光軸調整機構61を設けるようにしたので、ヘルメット101を着用したユーザの視線位置に合わせてコンバイナ95への表示光の投射位置を調整することができる。それにより、ユーザに対し、ヘルメット101着用時における視線位置の個人差に拘わらず、コンバイナ95を介した表示像を所望の位置で良好に視認させることができる。
【0084】
しかも、この第1の実施形態に係るHUD装置3およびそれを搭載したヘルメット101によると、凹面ミラー59からコンバイナ95に向かう表示光における光軸LXの方向の調整を、光出射器57を回転させずに凹面ミラー59を回転させることで行えるようにしたので、光軸調整機構61をコンパクトに実現することができ、HUD装置3を搭載することに起因したヘルメット101の大型化および重量化を抑制するのに有利である。
【0085】
《第2の実施形態》
この第2の実施形態では、本開示の技術に係るHUD装置およびそれを搭載したヘルメットについて、ヘルメットのシールドとは別個に設けられたコンバイナを用い、コンバイナに対し表示像を形成するための表示光を投射する投射モジュールが、表示光を出射する光出射器と、光出射器によって出射された表示光をコンバイナに向けて反射する凹面ミラーとが同一のケース内に設けられてユニット化された態様を例に挙げて説明する。
【0086】
この第2の実施形態に係るHUD装置3およびそれが搭載されたヘルメット101は、投射モジュール39の構成が上記第1の実施形態と異なる。なお、この第2の実施形態では、投射モジュール39の構成が上記第1の実施形態と異なる他は、HUD装置3およびそれが搭載されたヘルメット101、さらにはHUD装置3が構成する情報提示システム1について、上記第1の実施形態と同様に構成されているので、構成の異なる投射モジュール39についてのみ説明し、同一の構成箇所は、
図1~
図15に基づく上記第1の実施形態の説明に譲ることにして、その詳細な説明を省略する。
【0087】
図16は、この第2の実施形態に係るHUD装置3が搭載されたヘルメット101の正面図である。
図17は、この第2の実施形態に係るHUD装置3が搭載されたヘルメット101の側面図である。なお、これら
図16および
図17において、
図1と同様に、二点鎖線の矢印は表示光の経路および進行方向を示し、一点鎖線は表示光の光軸LXを示している。また、
図16および
図17では、投射モジュール39は、ヘルメット本体105に内蔵されているが、便宜上、一部実線で示す。なお、これらのことは、後に参照する
図18~
図21においても同じである。
【0088】
この第2の実施形態に係るHUD装置3の投射モジュール39は、
図16および
図17に示すように、GDC55から入力された画像信号に基づいて表示像に対応するパターンの表示光を生成して出射する光出射器57と、光出射器57から出射された表示光をコンバイナユニット41に向けて反射する凹面ミラー59と、これら光出射器57および凹面ミラー59を収容するハウジング60と、ハウジング60に形成された投射開口62を覆うように設けられたカバー部材64と、投射開口62からコンバイナ95に向かう表示光における光軸LXの方向を調整可能に構成された光軸調整機構61とを備えている。
【0089】
ハウジング60は、投射開口62を上方に向けた姿勢で、ヘルメット本体105の顎部111の右後側から右前側にかけての箇所に設けられている。このハウジング60は、図示しない樹脂製のハウジング構成部材を複数組み合わせて構成されており、光出射器57および凹面ミラー59を収容する収容空間が内部に設けられている。投射開口62は、光出射器57から出射された表示光をハウジング60の内部(収容空間)から外部に向けて通過させるための開口であって、ハウジング60の前側部分における上面に略矩形状に形成されている。
【0090】
光出射器57は、ハウジング60の中程から投射開口62とは反対側の後側位置にかけての箇所に収容されている。この光出射器57は、上記第1の実施形態の光出射器57と同様な構成(光源、表示素子、光学レンズ、拡散板および偏光ビームスプリッタなどの組合せ)を有している。当該光出射器57は、HUD装置3によって表示される表示像が情報端末5で設定された明るさレベルとなる光の強さで表示光を生成し、生成した表示光を凹面ミラー59に向けて出射する。
【0091】
凹面ミラー59は、ハウジング60の前側位置で投射開口62の下方に対応する位置に収容されている。この凹面ミラー59は、回転対称性を持たない自由曲面形状の反射面63を有し、反射面63を投射開口62側に向けた姿勢で設けられている。当該凹面ミラー59は、光出射器57から受けた表示光を、反射面63により、投射開口62に向けて上方に反射すると共に、ユーザに視認される表示像が運転中の表示に適したサイズおよび位置となるように整形する。
【0092】
投射モジュール39において、光出射器57から出射されて凹面ミラー59により反射された表示光は、投射開口62を通過し、カバー部材64と介してコンバイナ95に投射される。カバー部材64は、ポリカーボネート(PC)などからなる略矩形の板状物であって、透光性を有しており、表示光を透過させる。
【0093】
光軸調整機構61は、投射モジュール39(ハウジング60)と一体に設けられている。この光軸調整機構61は、投射モジュール39を互いに直交する第1の回転軸Xa周りおよび第2の回転軸Xb周りに所定の角度範囲に亘って回転可能に保持する保持具65と、保持具65に保持された投射モジュール39の姿勢を維持するための姿勢維持具としての第1のコイルバネ88aおよび第2のコイルバネ88bと、保持具65に投射モジュール39を回転させるための付勢力を付与する付勢部品としての第1のボルト69aおよび第2のボルト69bとを備えている。
【0094】
保持具65は、ハウジング60の下側に取り付けられて投射モジュール39を支持するホルダ部材66と、ホルダ部材66を第1の回転軸Xa周りおよび第2の回転軸Xb周りに回転自在に支持するピボット軸部材68を備えている。ピボット軸部材68は、投射モジュール39の前側で凹面ミラー59に近接した位置に配置されている。そのことで、第1の回転軸Xaおよび第2の回転軸Xbは、光出射器57から出射された表示光における光軸LXを延長した仮想線LX’と凹面ミラー59とが交差する箇所の付近に設定されている。このピボット軸部材68の下側にある軸部は、ヘルメット本体105のシェルなどに固定されたブラケット片70に取り付けられている。
【0095】
ホルダ部材66には、ピボット軸部材68の上端に設けられた球体を受け容れる軸受け部72を有する支持片74が設けられている。この支持片74には、軸受け部72の他、第1のボルト69aが取り付けられる第1の取付板部76aと、第2のボルト69bが取り付けられる第2の取付板部76bとが設けられている。第1の取付板部76aは、軸受け部72の左後側に離間した位置に、板厚方向を上下方向に対応させて設けられている。第2の取付板部76bは、投射モジュール39の右後側の位置に、板厚方向を上下方向に対応させて設けられている。
【0096】
第1の取付板部76aには、第1のボルト69aが挿通孔を下方から上方に挿通させて取り付けられている。第1の取付板部76aは、ヘルメット本体105のシェルなどに固定された第1のブラケット片78aと所定の間隔をあけて対向している。第1のボルト69aの上側にある軸部は、第1のブラケット片78aに形成された挿通孔にも挿通されている。この第1のブラケット片78aと第1の取付板部76aとの間には、第1コイルバネ88aが第1のボルト69aの軸部を挿通させた状態で介装されている。そのことで、第1の取付板部76aには、第1コイルバネ88aにより第1のブラケット片78aから下方に離間する方向への付勢力が常時付与されている。
【0097】
第1のボルト69aにおける頭部は、第1の取付板部76aの裏面に当接しており、ヘルメット本体105に設けられた作業孔115を通じて外部からアクセス可能とされている。これにより、ドライバなどの工具を使用すれば、ヘルメット101の下側からの作業孔115を利用した操作を以て、第1のボルト69aを奥側へ捩じ込んだり手前側に引き出したりできるようになっている。当該第1のボルト69aを奥側へねじ込むことにより、第1コイルバネ88aの付勢力に抗して第1の取付板部76aを第1のブラケット片78aに接近する方向へ変位させられる。一方、当該第1のボルト69aを手前側に引き出すことにより、第1コイルバネ88aの付勢力を以て第1の取付板部76aを第1のブラケット片78aから離間する方向へ変位させられる。
【0098】
第2の取付板部76bには、第2のボルト69bが挿通孔を下方から上方に挿通させて取り付けられている。第2の取付板部76bは、ヘルメット本体105のシェルなどに固定された第2のブラケット片78bと所定の間隔をあけて対向している。第2のボルト69bの上側にある軸部は、第2のブラケット片78bに形成された挿通孔にも挿通されている。この第2のブラケット片78bと第2の取付板部76bとの間には、第2コイルバネ88bが第2のボルト69bの軸部を挿通させた状態で介装されている。そのことで、第1の取付板部76aには、第2コイルバネ88aにより第2のブラケット片78bから下方に離間する方向への付勢力が常時付与されている。
【0099】
第2のボルト69bにおける頭部は、第2の取付板部76bの裏面に当接しており、ヘルメット本体105に設けられた作業孔115を通じて外部からアクセス可能とされている。これにより、ドライバなどの工具を使用すれば、ヘルメット101の下側からの作業孔115を利用した操作を以て、第2のボルト69bを奥側へ捩じ込んだり手前側に引き出したりできるようになっている。当該第2のボルト69bを奥側へねじ込むことにより、第2コイルバネ88bの付勢力に抗して第2の取付板部76bを第2のブラケット片78bに接近する方向へ変位させられる。一方、当該第2のボルト69bを手前側に引き出すことにより、第2コイルバネ88bの付勢力を以て第2の取付板部76bを第2のブラケット片78bから離間する方向へ変位させられる。
【0100】
図18は、この第2の実施形態に係るHUD装置3が搭載されたヘルメット101の、投射モジュール39によって投射される表示光における光軸LXの方向を光軸調整機構61により左側へ調整したときの状態を示す正面図である。
図19は、この第2の実施形態に係るHUD装置3が搭載されたヘルメット101の、投射モジュール39によって投射される表示光における光軸LXの方向を光軸調整機構61により右側へ調整したときの状態を示す正面図である。
【0101】
光軸調整機構61では、
図18に示すように、第1のボルト69aに捩じ込み操作を行うと、第1の取付板部76aが第1のブラケット片78aに接近する方向へ変位することにより、ホルダ部材66および投射モジュール39が共に、ピボット軸部材68の球体を中心として第1の回転軸Xa周りに投射開口62を右側に向ける方向へ回転する。そのことで、投射モジュール39からコンバイナ95に向かう表示光における光軸LXの方向が右側に変位する。
【0102】
また、光軸調整機構61では、
図19に示すように、第1のボルトに引き出し操作を行うと、第1の取付板部76aが第1のブラケット片78aから離間する方向へ変位することにより、ホルダ部材66および投射モジュール39が共に、ピボット軸部材68の球体を中心として第1の回転軸Xa周りに投射開口62を左側に向ける方向へ回転する。そのことで、投射モジュール39からコンバイナ95に向かう表示光における光軸LXの方向が左側に変位する。
【0103】
図20は、この第2の実施形態に係るHUD装置3が搭載されたヘルメット101の、投射モジュール39によって投射される表示光における光軸LXの方向を光軸調整機構61により上側へ調整したときの状態を示す側面図である。
図21は、この第2の実施形態に係るHUD装置3が搭載されたヘルメット101の、投射モジュール39によって投射される表示光における光軸LXの方向を光軸調整機構61により下側へ調整したときの状態を示す側面図である。
【0104】
光軸調整機構61では、
図20に示すように、第2のボルト69bに捩じ込み操作を行うと、第2の取付板部76bが第2のブラケット片78bに接近する方向へ変位することにより、ホルダ部材66および投射モジュール39が共に、ピボット軸部材68の球体を中心として第2の回転軸Xb周りに投射開口62を前側に向ける方向へ回転する。そのことで、投射モジュール39からコンバイナ95に向かう表示光における光軸LXの方向が前側に変位する。
【0105】
また、光軸調整機構61では、
図21に示すように、第2のボルトに引き出し操作を行うと、第2の取付板部76bが第2のブラケット片78bから離間する方向へ変位することにより、ホルダ部材66および投射モジュール39が共に、ピボット軸部材68の球体を中心として第2の回転軸Xb周りに投射開口62を後側に向ける方向へ回転する。そのことで、投射モジュール39からコンバイナ95に向かう表示光における光軸LXの方向が後側に変位する。
【0106】
このように、光軸調整機構61では、第1のボルト69aの捩じ込み操作および引き出し操作により、投射モジュール39からコンバイナ95に向かう表示光における光軸LXの方向を左右方向(第1方向)において調整することができ、且つ、第2のボルト69bの捩じ込み操作および引き出し操作により、投射モジュール39からコンバイナ95に向かう表示光における光軸LXの方向を前後方向(第2方向)において調整することができる。それらにより、コンバイナユニット41に含まれるコンバイナ95への表示光の投射位置を上下左右に調整することができる。
【0107】
この第2の実施形態に係るHUD装置3およびそれを搭載したヘルメット101によっても、投射モジュール39からコンバイナ95に向かう表示光における光軸LXの方向を調整可能に構成された光軸調整機構61を設けるようにしたので、ヘルメット101を着用したユーザの視線位置に合わせてコンバイナ95への表示光の投射位置を調整することができる。それにより、ユーザに対し、ヘルメット着用時における視線位置の個人差に拘わらず、コンバイナ95を介した表示像を所望の位置で良好に視認させることができる。
【0108】
以上のように、本開示の技術の例示として、好ましい実施形態について説明した。しかし、本開示の技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須でない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることを以て、直ちにそれらの必須でない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0109】
例えば、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0110】
上記実施形態では、HUD装置3について、ヘルメット101のシールド107とは別に被投射体として設けられたコンバイナ95に対し、投射モジュール39から表示光を投射する構成を例に挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限らない。HUD装置3は、コンバイナ95に代えてヘルメット101のシールド107を被投射体として用い、シールド107に対して投射モジュール39から表示光を投射することで、シールド107越しに前方視界の風景に重畳した状態で表示光による表示像を虚像として表示するようになっていてもよい。
【0111】
上記実施形態では、HUD装置3と連携する情報端末5としてスマートフォンを例示したが、本開示の技術はこれに限らない。当該情報端末5は、スマートウォッチやタブレット端末、PDA(Personal Data Assistant)などのスマートフォンに類する機能を備えた端末であってもよく、外部ネットワークNに接続する機能やGPS受信機7を備え、HUD装置3と通信できるものあれば、その他の携帯型の情報端末であっても構わない。また、HUD装置3は、情報端末5に代え、または情報端末5に加えて、自動二輪車と通信して同車に搭載された各種センサによる検知情報を受信して表示像とするようになっていてもよい。
【0112】
上記実施形態では、光出射器57に用いる表示素子としてLCOS(Liquid Crystal On Silicon)などの反射型表示パネルを例示したが、本開示の技術はこれに限らない。光出射器57の表示素子には、例えば、有機EL(Electro Luminescence)表示パネルやVFD(Vacuum Fluorescent Display)などの自発光型の表示素子が用いられてもよい。
【0113】
上記実施形態では、投射モジュール39が凹面ミラー59を有しているとしたが、本開示の技術はこれに限らない。投射モジュール39は、凹面ミラー59に代えて、凸面ミラーまたは平面ミラーを有していてもよい。
【0114】
上記実施形態では、HUD装置3によりユーザに表示像として提示される情報が現在時刻、速度、経路案内の情報であるとしたが、本開示の技術はこれに限らない。これら現在時刻、速度、経路案内の情報は、HUD装置3により提示し得る情報の一例に過ぎず、それら以外の自動二輪車の運転に寄与する情報であってもよく、情報端末5の連携アプリ33で設定するなどして、走行地域の周辺施設の情報などといったユーザにとって有用なその他の情報がHUD装置3で表示する項目とされていても構わない。
【0115】
上記実施形態では、HUD装置3が搭載されるヘルメット101としてフルフェイス型のヘルメットを例に挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限らない。フルフェイス型のヘルメット101は、HUD装置3が搭載されるヘルメット101の一例に過ぎず、投射モジュール39を内蔵し得る部位を備えているものであれば、オープンフェイス型(ジェット型)やセミジェット型(スリークォーターズ型)など、任意のタイプのヘルメットをHUD装置3が搭載されるヘルメット101として採用することが可能である。
【0116】
上記実施形態では、HUD装置3が搭載されたヘルメット101として、自動二輪車を運転する際に着用されるヘルメット101を例に挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限らない。HUD装置3は、水上バイクや自転車などの二輪車、スノーモービル(雪上バイク)などの他の乗物において着用されるヘルメットにも勿論適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0117】
以上説明したように、本開示の技術は、ヘルメットに搭載されるHUD装置およびHUD装置が搭載されたヘルメットについて有用である。
【符号の説明】
【0118】
E…ユーザの眼
La…第1の回転軸
Lb…第2の回転軸
LX…光軸
N…外部ネットワーク
S…GPS衛星
1…情報提示システム
3…HUD装置
5…情報端末
7…GPS受信機
9…無線通信モジュール
11…タッチパネル付き表示装置
13…マイクロコンピュータ
15…電源
17…ネットワーク通信部
19…近距離通信部
21…画面
23…メモリ
25…CPU
27…時刻アプリ
29…速度アプリ
31…ナビアプリ
33…連携アプリ
35…無線通信モジュール
37…制御モジュール
39…投射モジュール
41…コンバイナユニット
43…操作ユニット
45…電源
47…PCBモジュール
49…メモリ
51…CPU
53…マイクロコンピュータ
55…GDC
57…光出射器
59…凹面ミラー
60…ハウジング
61…光軸調整機構
62…投射開口
63…反射面
64…カバー部材
65…保持具
66…ホルダ部材
67…板バネ部材
68…ピボット軸部材
69a…第1のボルト
69b…第2のボルト
70…ブラケット片
71…内側枠体
72…軸受け部
73…外側枠体
74…支持片
75…軸部
76a…第1の取付板部
76b…第2の取付板部
77…嵌合凹部
78a…第1のブラケット片
78b…第2のブラケット片
79…取付孔
81…取付孔
83…留め具
84…ベース板部
87a…第1の板バネ
87b…第2の板バネ
87c…第3の板バネ
87d…第4の板バネ
88a…第1のコイルバネ
88b…第2のコイルバネ
89…取付板
91…挿通孔
93…ウェルドナット
95…コンバイナ
96…半透過反射面
97…支持機構
98…ステー
99…回転軸体
101…ヘルメット
103…窓開口
105…ヘルメット本体
107…シールド
109…留め具
111…顎部
113…額部
115…作業孔