(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置およびヘルメット
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20231127BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20231127BHJP
A42B 3/04 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B27/01
A42B3/04
(21)【出願番号】P 2019209471
(22)【出願日】2019-11-20
【審査請求日】2022-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2018238253
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591182112
【氏名又は名称】NSウエスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 学
(72)【発明者】
【氏名】平松 将紀
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 航
【審査官】後藤 昌夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-284214(JP,A)
【文献】特開平07-325265(JP,A)
【文献】実開平06-000885(JP,U)
【文献】特開2011-022210(JP,A)
【文献】特開2014-120963(JP,A)
【文献】特開平07-277293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/02
H04N 5/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装材と内装材とを備えたヘルメットに搭載されるヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記ヘルメットを着用したユーザの眼前に配置される光透過性と光反射性を兼ね備えた被投射体に対し、ユーザが当該被投射体越しに虚像として視認可能な表示像を形成するための表示光を投射する投射ユニットを備え、
前記投射ユニットは、表示光を出射する光出射器と、該光出射器から出射された表示光を通過させる開口が形成されたハウジングと、該ハウジングの前記開口を覆うように設けられた透光性を有するカバー部材と、を備え、
前記投射ユニットは、前記カバー部材を介して前記被投射体に投射される表示光を前記内装材に設けられた筒状の光路部に通すように、前記ヘルメット
の顎部に内蔵され、
前記カバー部材は、
前記ヘルメットの顎部に配設された前記内装材の表面における前記光路部の光出射側の端部が開口した面よりも当該内装材の内方に配置され
ることにより、当該内装材の奥の方に位置付けられている
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたヘッドアップディスプレイ装置において、
前記カバー部材は、板状物であって、表示光を放出する側の表面を前記ヘルメットの外側に向ける方向へ傾斜している
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載されたヘッドアップディスプレイ装置において、
前記ハウジングは、前記開口を上方に向けた姿勢で設けられており、
前記光路部は、前記カバー部材から上方に離れるとともに、上下方向に延びるように設けられている
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
請求項3に記載されたヘッドアップディスプレイ装置において、
前記カバー部材の表面には、親水性を有するコーティング膜が設けられている
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
外装材と内装材とを備えるとともに、ヘッドアップディスプレイ装置が搭載されたヘルメットであって、
前記ヘッドアップディスプレイ装置は、当該ヘルメットを着用したユーザの眼前に配置される光透過性と光反射性を兼ね備えた被投射体に対し、ユーザが当該被投射体越しに虚像として視認可能な表示像を形成するための表示光を投射する投射ユニットを備え、
前記投射ユニットは、表示光を出射する光出射器と、該光出射器から出射された表示光を通過させる開口が形成されたハウジングと、該ハウジングの前記開口を覆うように設けられた透光性を有するカバー部材と、を備え、
前記ハウジングの前記開口が臨む側には、筒状の光路部が設けられ、
前記投射ユニットは、前記カバー部材を介して前記被投射体に投射される表示光を前記内装材に設けられた筒状の光路部に通すように、前記ヘルメット
の顎部に内蔵され、
前記カバー部材は、
前記ヘルメットの顎部に配設された前記内装材の表面における前記光路部の光出射側の端部が開口した面よりも当該内装材の内方に配置され
ることにより、当該内装材の奥の方に位置付けられている
ことを特徴とするヘルメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘルメットに搭載されるヘッドアップディスプレイ装置およびヘッドアップディスプレイ装置が搭載されたヘルメットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動二輪車を運転する際に着用されるヘルメットにヘッドアップディスプレイ(Head Up Display)装置(以下「HUD装置」と称する)を搭載することにより、当該ヘルメットを着用したユーザ(運転者)に対し、車速などの車両情報、ナビゲーションシステムによる地図情報、警告情報といった各種情報を虚像として視界前方に視認させるようにして、車両運転時の利便性や安全性を高めることが知られている。
【0003】
ヘルメットに搭載されるHUD装置は、表示する情報に応じた表示光を投射する投射ユニットと、投射ユニットによって投射された表示光をヘルメットの着用者であるユーザの眼に向けて反射するコンバイナとを備える。コンバイナは、ハーフミラーからなり、ヘルメットの前部に設けられた窓開口内でユーザの前方視界に入る位置に配置され、ユーザの前方からの光を透過させる。したがって、ユーザは、コンバイナ越しに風景と重畳した状態で表示光による虚像(表示像)を視認できる。このようなHUD装置の一例は、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
HUD装置を構成する投射ユニットは、例えば、表示光を出射する光出射器と、光出射器を収容するハウジングとを備え、ハウジングに対し、表示光を通過させる開口が形成され、その開口を覆うように透光性を有する板状のカバー部材が設けられた構造を有する。このような投射ユニットは、HUD装置が搭載されたヘルメットをコンパクトにするために、ヘルメットに内蔵することが望まれる。
【0006】
投射ユニットをヘルメットに内蔵する場合、カバー部材がヘルメットの外面に位置していると、ユーザがヘルメットを取り扱う際にカバー部材を手で触れやすいため、カバー部材の表面に汚れが付きやすい。カバー部材の表面が汚れると、投射ユニットから投射される表示光がカバー部材表面の汚れに遮られるため、HUD装置によって表示される表示像にぼけ(滲み)が生じる。そのため、ユーザがコンバイナを介して視認可能な表示像の視認性が低下してしまう。
【0007】
本開示の技術は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、HUD装置によって表示される表示像の視認性を良くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本開示の技術では、投射ユニットをヘルメットに内蔵し、当該投射ユニットにおいてハウジングの表示光を通過させる開口を覆うように設けられたカバー部材を、ユーザの手が触れ難い位置に配置するようにした。
【0009】
具体的には、本開示の技術は、ヘルメットに搭載されるHUD装置を対象とする。
【0010】
本開示の技術に係るHUD装置は、外装材と内装材とを備えたヘルメットを着用したユーザの眼前に配置される光透過性と光反射性を兼ね備えた被投射体に対し、ユーザが当該被投射体越しに虚像として視認可能な表示像を形成するための表示光を投射する投射ユニットを備える。投射ユニットは、表示光を出射する光出射器と、光出射器から出射された表示光を通過させる開口が形成されたハウジングと、ハウジングの開口を覆うように設けられた透光性を有するカバー部材とを備える。投射ユニットは、カバー部材を介して被投射体に投射される表示光を内装材に設けられた筒状の光路部に通すように、ヘルメットに内蔵されている。そして、カバー部材は、内装材の表面における光路部が開口した面よりも内装材の内方に配置されている。
【0011】
この構成によると、投射ユニットのカバー部材を、内装材の表面における光路部が開口した面よりも当該内装材の内方に配置させるようにしたので、ユーザがヘルメットを取り扱う際にカバー部材を手で触れ難くすることができ、ユーザの手の汚れがカバー部材の表面に付くのを防止することができる。それによって、HUD装置によって表示される表示像に生じるぼけ(滲み)を少なくし、当該表示像の視認性を良くすることができる。
【0012】
上記HUD装置において、カバー部材は、板状物であって、表示光を放出する側の表面をヘルメットの外側に向ける方向へ傾斜していることが好ましい。
【0013】
内装材に設けられる筒状の光路部には、ヘルメットに設けられたユーザに視界を提供するための窓開口を介してヘルメット内部に入射した外光が入り込むことがあり得る。カバー部材が、筒状の光路部に入り込んだ外光を窓開口の内方へ向けて反射させる姿勢とされている場合、カバー部材の表面で反射された外光がヘルメットを着用したユーザの眼に入り、そのカバー部材の表面での照り返しが眩しく見えて、HUD装置により表示される表示像の視認性が損なわれるし、運転の妨げになるおそれがある。
【0014】
これに対し、上記の構成によると、板状物であるカバー部材における表示光を放出する側の表面が、ヘルメットの外側に向いているので、ヘルメットの内部に入射して筒状の光路部に入り込んだ外光が、カバー部材の表面でヘルメットの外側に向けて反射され、ヘルメットを着用したユーザの眼に照り返すのを防止することができる。それにより、HUD装置により表示される表示像の視認性を損なわないようにし、運転の妨げとなるのを防止することができる。
【0015】
また、ハウジングは、表示光を通過させる開口を上方に向けた姿勢で設けられていてもよい。この場合、光路部はカバー部材から上方に離れて設けられているのが好ましく、これにより、カバー部材は、光路部との間に隙間をあけて設けられていることになる。
【0016】
内装材に設けられる筒状の光路部には、ヘルメット内部に入射した外光の他、塵埃などの異物や雨水などの水分が入り込むおそれがある。特に光路部が上下方向に延びていると、光路部に入り込んだ異物や水分は当該光路部の下に位置することになるカバー部材に付着し得る。然るに、投射ユニットのカバー部材が内装材に設けられた筒状の光路部の下端に接していると、その光路部に入り込んだ異物や雨水が、逃げ道がないためにカバー部材の表面に溜まる。カバー部材の表面に異物が堆積すると、投射ユニットから投射される表示光を遮るため表示像にぼけ(滲み)が生じ、カバー部材の表面に水分が粒状に付着すると、投射ユニットから投射される表示光を屈折させるため表示像に歪みが生じる。
【0017】
これに対し、上記の構成によると、投射ユニットのカバー部材と筒状の光路部との間に隙間が設けられるので、異物や水分が筒状の光路部にその上端開口から入り込んだとしても、投射ユニットのカバー部材と当該光路部との間の隙間から外側へ逃がすことができる。これにより、筒状の光路部に入り込んだ異物や水分が投射ユニットのカバー部材表面に溜まるのを抑制でき、それら異物や水分がカバー部材表面に付着したとしてもその付着量を減らすことができる。その結果、HUD装置によって表示される表示像のぼけ(滲み)や歪みを少なくし、当該表示像の視認性を良くすることができる。
【0018】
このようなHUD装置において、カバー部材の表面には、親水性を有するコーティング膜が設けられていることが好ましい。
【0019】
投射ユニットのカバー部材の表面は、ヘルメットを着用したユーザの吐息が筒状の光路部を通じて当たることにより、吐息に含まれる水分で曇ることがあり得る。ここで、カバー部材の表面が撥水性を有している場合、その表面に付着した水分が凝集して微細な液滴を一面に形成しやすい。カバー部材の表面一面に微細な液滴が形成されると、カバー部材の表面があたかも磨りガラスのように白くなって投射ユニットから投射される表示光を散乱させるため、HUD装置によって表示される表示像がぼけてしまう。
【0020】
これに対し、上記の構成によると、カバー部材の表面に親水性を有するコーティング膜を設けるようにしたので、ヘルメットを着用したユーザの吐息が光路部を通じてカバー部材の表面に当たり、吐息に含まれる水分がカバー部材の表面に付着しても、カバー部材の表面に水分を馴染ませて、微細な液滴がカバー部材表面に形成され難くすることができる。それにより、HUD装置によって表示される表示像のぼけを少なくし、当該表示像の視認性をよりいっそう良くすることができる。
【0021】
また、本開示の技術は、HUD装置が搭載されたヘルメットを対象とする。
【0022】
本開示の技術に係るヘルメットは、外装材と内装材とを備えるとともに、HUD装置も備えている。HUD装置は、当該ヘルメットを着用したユーザの眼前に配置される光透過性と光反射性を兼ね備えた被投射体に対し、ユーザが当該被投射体越しに虚像として視認可能な表示像を形成するための表示光を投射する投射ユニットを備える。投射ユニットは、表示光を出射する光出射器と、光出射器から出射された表示光を通過させる開口が形成されたハウジングと、ハウジングの開口を覆うように設けられた透光性を有するカバー部材とを備える。ハウジングの開口が臨む側には、筒状の光路部が設けられている。投射ユニットは、カバー部材を介して被投射体に投射される表示光を内装材に設けられた筒状の光路部に通すように、ヘルメットに内蔵されている。そして、カバー部材は、内装材の表面における光路部の光出射側の端部が開口した面よりも当該内装材の内方に配置されている。
【0023】
この構成によると、投射ユニットのカバー部材を、内装材の表面における光路部が開口した面よりも当該内装材の内方に配置させるようにしたので、ユーザがヘルメットを取り扱う際にカバー部材を手で触れ難くすることができ、ユーザの手の汚れがカバー部材の表面に付くのを防止することができる。それによって、HUD装置によって表示される表示像に生じるぼけ(滲み)を少なくし、当該表示像の視認性を良くすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本開示の技術に係るHUD装置およびヘルメットによれば、ユーザが被投射体越しに虚像として視認可能な表示像のぼけ(滲み)を少なくし、当該表示像の視認性を良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、実施形態に係る情報提示システムの概略的な全体構成図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る情報提示システムの概略的なブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るHUD装置が搭載されたヘルメットの正面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るHUD装置が搭載されたヘルメットの断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るHUD装置が搭載されたヘルメットの要部を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係るHUD装置に用いられるカバー部材の断面図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係るHUD装置が搭載されたヘルメットの要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、便宜上、ヘルメットおよびヘルメットに搭載されるHUD装置について、ヘルメットを着用したユーザの顔の上下に相当する方向における上側を「上」、下側を「下」と称し、ヘルメットを着用したユーザの顔の前後に相当する方向における前側を「前」、後側を「後」と称し、ヘルメットを着用したユーザの顔の前方を向いてその顔の左右に相当する方向における左側を「左」、右側を「右」と称する。
【0027】
<情報提示システムの構成>
図1は、この実施形態に係る情報提示システム1の概略的な全体構成図である。
図2は、情報提示システム1の概略的なブロック図である。なお、
図1において、二点鎖線の矢印は、表示光の経路および進行方向を示している。情報提示システム1は、自動二輪車のライダー(ユーザ)に向けて運転支援に寄与する情報を提示するシステムであって、
図1および
図2に示すように、自動二輪車のヘルメット101に搭載されたHUD装置3と、HUD装置3に対して表示され得る各種情報を提供する情報端末5とを備えている。
【0028】
- 情報端末の構成 -
情報端末5としては、スマートフォンと呼ばれる小型の多機能携帯電話機が用いられる。この情報端末5は、GPS衛星Sからの電波を受信して測位情報を生成するGPS(Global Positioning System)受信機7と、外部との無線通信を行う無線通信モジュール9と、当該情報端末5の動作を総合的に制御するマイクロコンピュータ11と、入出力装置としてのタッチパネル付き表示装置13と、当該情報端末5を動作させるのに必要な電力を供給する電源15とを備えている。
【0029】
GPS受信機7は、図示しないGPSアンテナなどを備えて構成されている。GPSアンテナは、地球軌道に打ち上げられた複数のGPS衛星Sから送信されるGPS信号を受信する。GPS受信機7は、GPSアンテナで受信したGPS信号に基づいて、情報端末5の現在位置(例えば緯度、経度および高度)の情報を取得する。このGPS受信機7は、マイクロコンピュータ11からの要求に応じて、測位した情報端末5の位置情報をマイクロコンピュータ11に含まれるメモリ21に保存し、逐次更新する。
【0030】
無線通信モジュール9は、インターネットなどの広域通信網である外部ネットワークNと通信を行うネットワーク通信部17と、HUD装置3と近距離で無線通信を行う近距離通信部19とを備えている。
【0031】
ネットワーク通信部17は、WiFi(Wireless Fidelity;登録商標)などの無線LAN(Local Area Network)の機能やLTE(Long Time Evolution;登録商標)といったモバイル通信規格での通信機能を有している。このネットワーク通信部17は、マイクロコンピュータ11からの要求に応じて、外部ネットワークNから地図情報や、工事や渋滞などに関する道路情報、GPS受信機7で取得された現在位置に基づく周辺施設の情報、災害情報などのネット情報を受信して、マイクロコンピュータ11に含まれるメモリ21に一時的に蓄積する。
【0032】
近距離通信部19は、ブルートゥース(Bluetooth:登録商標)などの近距離無線通信規格での通信機能を有している。この近距離通信部19は、マイクロコンピュータ11からの要求に応じて、GPS受信機7で取得された情報端末5の位置情報や、ネットワーク通信部17で取得されたネット情報、後述する各種のアプリケーションソフトウェア(以下「アプリ」と称する)により取得されるアプリ情報、HUD装置3によって表示する表示像についての表示項目や明るさなどの表示設定の情報を含む種々の情報をメモリ21から読み出して、無線通信によりHUD装置3へと送信する。
【0033】
マイクロコンピュータ11は、メモリ21およびCPU(Central Processing Unit)23を含んでいる。メモリ21は、情報端末5を動作させるためのプログラムを含む様々な情報を一時的または恒久的に保存する。このメモリ21は、典型的には、RAM(Random Access Memory)とROM(Read Only Memory)の組合せによって実現される。当該メモリ21に記憶される各種のプログラムには、モバイルOS(Operating System)や、モバイルOS上で特定機能を実現すべく動作する複数のアプリが含まれている。
【0034】
複数のアプリには、時刻アプリ25、速度アプリ27、ナビゲーションアプリ(以下「ナビアプリ」と称する)29および連携アプリ31が含まれている。これら複数のアプリ27,29,31は、情報端末5に予めインストールされてメモリ21に保存されている。
【0035】
時刻アプリ25は、現在時刻を取得するソフトウェアである。この時刻アプリ25では、例えば、基地局との通信で取得されるタイムスタンプやGPS受信機7で取得される時刻情報に基づき、さらにはNITZ(Network Identity and Time Zone)やNTP(Network Time Protocol)といった時刻同期技術を用いて、現在時刻を取得する。
【0036】
速度アプリ27は、情報端末5の移動速度を検出するソフトウェアである。この速度アプリ27では、例えば、GPS受信機7で取得される情報端末5の位置情報に基づいて、情報端末5の移動速度を検出する。
【0037】
ナビアプリ29は、ユーザによって設定された目的地への経路案内を行うソフトウェアである。このナビアプリ29では、例えば、ネットワーク通信部17で取得された、またはメモリ21に予め保存された地図情報と、GPS受信機7で取得される情報端末5の位置情報とに基づいて、目的地への経路案内を行う。
【0038】
連携アプリ31は、近距離通信部19による無線通信を用いてHUD装置3と連携し、HUD装置3へアプリ情報やネット情報、HUD装置3での表示設定の情報などの各種情報を送信するソフトウェアである。
【0039】
この連携アプリ31では、HUD装置3の表示設定を行えるようになっている。具体的には、表示設定として、HUD装置3で表示する項目を現在時刻、移動速度および経路案内情報(ナビゲーション情報)を含む複数の項目から設定したり、HUD装置3によって表示される表示像の明るさを設定したりできる。当該連携アプリ31で設定された表示設定の情報は、メモリ21に保存される。
【0040】
CPU23は、典型的には、IC(Integrated Circuit)やLSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integration Circuit)などによって実現される。このCPU23は、各種データを処理するための演算を行い、無線通信モジュール9およびタッチパネル付き表示装置13の動作と各種アプリ25,27,29,31の実行とを制御する。
【0041】
マイクロコンピュータ11は、CPU23の機能により、GPS受信機7に現在位置の情報を取得させ、ネットワーク通信部17に外部ネットワークNとの接続を確立させてネット情報を収集すると共に、連携アプリ31の実行により、近距離通信部19にHUD装置3との接続を確立させ、それ以外の各種アプリ25,27,29の実行に応じた種々の処理によって取得したアプリ情報やネット情報、表示設定の情報をHUD装置3に送信する。
【0042】
タッチパネル付き表示装置13は、情報端末5の画面33に画像を表示する表示装置と、ユーザがタッチした画面33内の位置(触れた位置)を検出するタッチパネルとが一体化された電子装置であって、画像の出力機能とユーザ操作の入力機能とを兼ね備えている。情報端末5では、このタッチパネル付き表示装置13へのタッチ操作により、各種アプリ25,27,29,31の実行や、連携アプリ31の実行時においては上述したHUD装置3での表示設定を行えるようになっている。
【0043】
電源15は、リチウムイオンバッテリなどの二次電池によって構成されている。当該電源15は、無線通信モジュール9、マイクロコンピュータ11およびタッチパネル付き表示装置13に配線を介して電気的に接続されている。情報端末5は、図示しない電源スイッチで電源を入れる操作がされると、電源15から無線通信モジュール9、マイクロコンピュータ11およびタッチパネル付き表示装置13に電力を供給して、ユーザの操作に応じた所定の動作をするようになっている。
【0044】
- HUD装置の構成 -
図3は、HUD装置3が搭載されたヘルメット101の正面図である。
図4は、HUD装置3が搭載されたヘルメット101の断面図である。
図5は、HUD装置3が搭載されたヘルメット101の要部を示す斜視図である。
図6は、HUD装置3に用いられるカバー部材65の断面図である。
図7は、HUD装置3が搭載されたヘルメット101の要部を示す断面図である。
【0045】
なお、
図3および
図4において、二点鎖線の矢印は、
図1と同様に表示光の経路および進行方向を示している。また、
図4では、便宜上、ヘルメット本体105の顎部113内のライナー111の図示を省略している。また、
図5では、ヘルメット101のシェル109、シールド107およびライナー111の一部を二点鎖線で示し、これらヘルメット101の構成部材を透過させて要部を示している。
【0046】
HUD装置3は、ヘルメット101を着用したユーザの視野に視覚情報を映し出す投射型表示装置である。このHUD装置3は、
図1~
図4に示すように、外部との無線通信を行う無線通信モジュール35と、当該HUD装置3での表示動作を制御する制御ユニット37と、表示光を生成して投射する投射ユニット39と、投射ユニット39から投射された表示光による表示像を虚像としてユーザに視認させるためのコンバイナユニット41と、当該HUD装置3へのユーザによる操作を入力するための操作ユニット43と、当該HUD装置3を動作させるのに必要な電力を供給する電源45とを備えている。
【0047】
この実施形態に係るHUD装置3が搭載されるヘルメット101は、フルフェイス型のヘルメットであって、着用したユーザに視界を提供するための窓開口103が前部に形成されたヘルメット本体105と、ヘルメット本体105に対し取り替え可能に装着されて窓開口103を開閉し得る透明なシールド107とを備えている。
【0048】
ヘルメット本体105は、
図3~
図5に示すように、その外殻を構成するシェル109(帽体ともいう)と、シェル109の内側に全体的に設けられたライナー111と、ヘルメット本体105の顎部113内でライナー111の内側に設けられたマウスカバー115とを備えている。シェル109は、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂やFRP(Fiber Reinforced Plastics)などからなり、外部からの衝撃エネルギーを分散する役割を果たす。このシェル109が外装材である。ライナー111は、発泡ポリスチレンなどからなり、衝撃エネルギーを吸収する緩衝体として機能する。マウスカバー115は、ABS樹脂やFRPなどからなり、ライナー111を保持すると共に保護し、ヘルメット本体105の顎部113上面に意匠性を持たせる役割を果たす。ライナー111及びマウスカバー115は外装材の内側に配設される部材であり、これらライナー111及びマウスカバー115により内装材Aが構成されている。
【0049】
シールド107は、ヘルメット本体105(シェル109)の窓開口103の左右両側に留め具117などを用いて所定の角度範囲だけ回転可能に取り付けられ、上下方向への回転動作を以て窓開口103を開閉する。このシールド107は、ポリカーボネートなどの透光性を有する樹脂からなる。
【0050】
当該シールド107は、窓開口103を閉じた状態で、窓開口103を通してヘルメット本体105内に飛び込む塵埃などの異物や風、紫外線などをブロックする機能を有している。シールド107は、留め具117を外すことで取り外せるようになっており、外部環境の明るさに応じて、無色透明なシールド、スモークシールドなどの色付き透明なシールド、ミラーシールドなどの光透過率の異なる様々なシールドに取り替え可能とされている。
【0051】
無線通信モジュール35は、ブルートゥースなどの近距離無線通信規格での通信機能を有している。この無線通信モジュール35は、制御ユニット37に備えられたマイクロコンピュータ53からの要求に応じて、情報端末5の近距離通信部19から送信されたネット情報やアプリ情報、表示設定の情報を受信し、マイクロコンピュータ53に含まれるメモリ49に保存する。この無線通信モジュール35は、制御ユニット37と共にPCB上に設けられ、PCBモジュール47としてヘルメット本体105の顎部113左側に内蔵されている。
【0052】
制御ユニット37は、投射ユニット39に備えられた光出射器57での表示光の生成を制御する。この制御ユニット37は、メモリ49およびCPU51を含むマイクロコンピュータ53と、画像表示に関する処理を担当する集積回路であるGDC(Graphics Display Controller)55とを有している。
【0053】
メモリ49は、HUD装置3を動作させるためのプログラムを含む様々な情報を一時的または恒久的に保存する。このメモリ49には、無線通信モジュール35で受信したネット情報やアプリ情報、表示設定の情報も保存される。当該メモリ49は、典型的には、RAMとROMの組合せによって実現される。
【0054】
CPU51は、典型的には、ICやLSI、ASICなどによって実現される。このCPU51は、各種データを処理するための演算を行い、無線通信モジュール35、投射ユニット39およびGDC55の動作を制御する。
【0055】
GDC55は、メモリ49に保存されたネット情報やアプリ情報、表示設定の情報に基づき、コンバイナユニット41に含まれるコンバイナ73を介してユーザに視認させる表示像のデータを生成する。このGDC55で生成される表示像のデータは、情報端末5の連携アプリ31の表示設定で設定された項目の情報を表す画像データである。マイクロコンピュータ53は、CPU51の機能により、GDC55に表示像のデータを生成させ、その画像信号を投射ユニット39に含まれる光出射器57に出力させる。
【0056】
投射ユニット39は、ヘルメット本体105の顎部113右側に内蔵されている。この投射ユニット39は、GDC55から入力された画像信号に基づいて表示像に対応するパターンの表示光を生成して出射する光出射器57と、光出射器57から出射された表示光をコンバイナユニット41に向けて反射する凹面ミラー59と、これら光出射器57および凹面ミラー59を収容するハウジング61と、ハウジング61に形成された投射開口63を覆うように設けられたカバー部材65とを備えている。
【0057】
ハウジング61は、投射開口63を上方に向けた姿勢で、ヘルメット本体105の顎部113の右後側から右前側にかけての箇所に設けられている。このハウジング61は、図示しない樹脂製のハウジング構成部材を複数組み合わせて構成されており、光出射器57および凹面ミラー59を収容する収容空間が内部に設けられている。投射開口63は、光出射器57から出射された表示光をハウジング61の内部(収容空間)から外部に向けて通過させるための開口であって、ハウジング61の前側部分における上面に略矩形状に形成されている。
【0058】
光出射器57は、ハウジング61の中程から投射開口63とは反対側の後側位置にかけての箇所に収容されている。この光出射器57は、図示しないが、LED(Light Emitting Diode)などの光源およびLCOS(Liquid Crystal On Silicon)などの反射型表示パネルからなる表示素子と、凸レンズや凹レンズなどの光学レンズ、拡散板、TIR(Total Internal Reflection)プリズムといった複数の光学部材とを組み合わせて構成されている。当該光出射器57は、HUD装置3によって表示される表示像が情報端末5で設定された明るさレベルとなる光の強さの表示光を生成し、生成した表示光を凹面ミラー59に向けて出射する。
【0059】
凹面ミラー59は、ハウジング61の前側位置で投射開口63の下方に対応する位置に収容されている。この凹面ミラー59は、回転対称性を持たない自由曲面形状の反射面67を有し、反射面67を投射開口63側に向けた姿勢で設けられている。当該凹面ミラー59は、光出射器57から受けた表示光を、反射面67により、投射開口63に向けて上方に反射すると共に、ユーザに視認される表示像が運転中の表示に適したサイズおよび位置となるように整形する。
【0060】
投射ユニット39において、光出射器57から出射されて凹面ミラー59により反射された表示光は、投射開口63を通過し、カバー部材65と介してコンバイナユニット41に含まれるコンバイナ79に投射される。カバー部材65は、略矩形の板状物であって、透光性を有しており、表示光を透過させる。このカバー部材65は、
図6に示すように、ポリカーボネート(PC)などからなる基材69と、基材69の表面に設けられたコーティング膜71とを備えている。コーティング膜71は、珪酸塩(xM
I
2O・ySiO
2)などからなり、親水性を有している。すなわち、カバー部材65の表面には、コーティング膜71によって親水性が付与されている。
【0061】
投射ユニット39において、ハウジング61の投射開口63がカバー部材65で覆われた投射部位73は、ヘルメット本体105の顎部113の内部でマウスカバー115の外側に配置されている。マウスカバー115は、ヘルメット本体105の顎部113の形状に倣って湾曲した形状とされている。このマウスカバー115の右側には、筒状の光路部119が前側に膨出したような態様で一体に設けられている。この光路部119は、マウスカバー115の一部である。光路部119は、投射ユニット39を構成するハウジング61の投射開口63が臨む側に位置している。
【0062】
この光路部119の筒中心軸Xは上下方向に沿って延びており、したがって光路部119は上下方向に延びることになる。光路部119の下端開口は、投射ユニット39からの表示光が入射される光入射口である。光路部119の光入射口は、投射ユニット39のカバー部材65に対して上方へ所定距離離間した状態で対向している。このため、光路部119の光入射口は、投射ユニット39の投射開口63とカバー部材65を介して向き合うことになる。また、光路部119は、カバー部材65から上方に離れて設けられ、光路部119の光入射口側の端部と、カバー部材65の上面との間には隙間77が形成されている。この隙間77の大きさは後述する。一方、光路部119の上端開口は、投射ユニット39からの表示光が出射される光出射側の端部であり、光出射口となっている。光路部119の光出射口は、マウスカバー115の表面のうち、上に位置する面に開口している。つまり、光路部119の光出射口が開口する面は、マウスカバー115の表面のうち、上に位置する面(マウスカバー115の上面)である。光路部119の光出射口は、コンバイナユニット41に含まれるコンバイナ79に向かって開口している。また、光路部119の上下両側の開口は、他の部材によって閉塞されておらず、いずれも開放されている。マウスカバー115の外側には、ライナー111が、投射ユニット39の投射部位73上方に対応する箇所と光路部119とを取り巻くように設けられている。
【0063】
このように、投射ユニット39は、カバー部材65を介してコンバイナ79に投射される表示光を光路部119に通すように、ヘルメット本体105の顎部113に内蔵されている。そして、投射ユニット39の投射部位を構成するカバー部材65は、マウスカバー115の表面における光路部119の光出射側の端部が開口した面(上面)よりも内装材Aの内方に配置されている。つまり、上方から見たとき、カバー部材65は、内装材Aの奥の方に位置付けられているので、ヘルメット101の取り扱い時に顎部113を持ったときに、カバー部材65に指が触れにくくなる。特に、この実施形態では、光路部119が筒状であるとともに、カバー部材65の上方に配置されているので、カバー部材65に触れるには、指を光路部119内に故意に差し込まなければならず、このことによっても、ユーザがヘルメット101を取り扱う際に、当該カバー部材65を指や手で触れ難くなっている。
【0064】
このカバー部材65は、表示光を放出する側の表面をヘルメット本体105の外側に向ける方向へ傾斜している。具体的には、カバー部材65は、その表面が光路部119の筒中心軸Xに対して前側に鈍角をなすように前傾した傾斜姿勢で設けられている。これにより、ヘルメット101の内部に入射して光路部119に入り込んだ外光を、カバー部材65の表面で顎部113を構成するシェル109の裏側に向けて反射することで、ヘルメット101を着用したユーザの眼Eに照り返すのが抑制されるようになっている。
【0065】
このようなカバー部材65の傾斜姿勢は、当該カバー部材65表面によるユーザの眼Eへの外光の照り返しを防止する観点から、表示光を放出する側の端面が、ヘルメット101内部に入射して光路部119に入り込みカバー部材65に到達し得る外光の入射方向に対して鈍角をなす姿勢であることが好ましい。例えば、カバー部材65の表面と光路部119の筒中心軸Xとが前側になす角度αは、100度以上且つ125度以下の角度とされる。
【0066】
そして、当該カバー部材65は、投射ユニット39が表示光を投射する上下方向において、光路部119との間に隙間77をあけた位置に配置されている。この隙間77は、光路部119の下端全周に対応して設けられている。そのことで、塵埃などの異物や雨水などの水分が光路部119にその上端開口から入り込んだとしても、投射ユニット39のカバー部材65と当該光路部119との間の隙間77から外側へ逃がせるようになっている。当該隙間77の大きさD、つまりカバー部材65の表面と光路部119の下端との間の距離は、例えば1mm以上且つ5mm以下とされている。当該隙間77は、少なくとも一部でそうした大きさDに設定されていればよい。
【0067】
コンバイナユニット41は、凹面ミラー59により反射された表示光を下方から受けてユーザが視認可能な方向に反射するコンバイナ79と、コンバイナ79をヘルメット101を着用したユーザの眼前に位置させるように支持する支持機構81とを備えている。
【0068】
コンバイナ79は、透明または半透明な板状部品であって、回転対称性を持たない自由曲面形状の半透過反射面83(図示では平面状)を有している。コンバイナ79は、閉じた状態にあるシールド107の内側に位置するように配置される。当該コンバイナ79は、光透過性と光反射性を兼ね備えた被投射体であって、ハーフミラーによって構成されている。ハーフミラーは、入射した光の一部を反射させて一部を透過させる性質を有している。コンバイナ79の裏面には、フッ化マグネシウム(MgF2)などからなるAR(Anti Reflection)コートと呼ばれる反射防止膜が設けられている。
【0069】
支持機構81は、ヘルメット本体105の前部に設けられた窓開口103内でユーザの前方視界に入る位置にコンバイナ79を支持する。コンバイナ79は、ユーザの右眼Eの前方位置に配置され、支持機構81により、半透過反射面83をユーザの顔側に配置させ、後端が上方に位置する一方で前端が下方に位置する前傾姿勢で支持される。
【0070】
支持機構81は、上下方向に延びるステー85を有している。ステー85の上側部は、ヘルメット本体105の額部121に内蔵された図示しない保持具に保持されている。ステー85の下端部には、左右方向に延びる回転軸87を介してコンバイナ79が連結されている。支持機構81は、コンバイナ79の回転軸87周りの回転動作を以て、半透過反射面83の向きを調整可能とされている。
【0071】
操作ユニット43は、ヘルメット本体105のPCBモジュール47に対応する箇所に設けられている。この操作ユニット43は、図示しないが、電源スイッチと、操作スイッチとを含んでいる。電源スイッチは、HUD装置3の電源のオンおよびオフ(入切)を切り替える機能を持たせたプッシュボタン式のスイッチである。操作スイッチは、HUD装置3の表示のオンおよびオフを切り替える機能を持たせたプッシュボタン式のスイッチである。
【0072】
電源45は、ヘルメット本体105の後頭部に内蔵されている。この電源45は、リチウムイオンバッテリなどの二次電池によって構成されている。当該電源45は、無線通信モジュール35、制御ユニット37および光出射器57と配線を介して電気的に接続されている。HUD装置3は、操作ユニット43にて電源スイッチで電源を入れる操作がされると、電源45から無線通信モジュール35、制御ユニット37および光出射器57に電力を供給して、操作スイッチの操作による表示のオンとオフの切り替えに応じた表示動作をするようになっている。
【0073】
<情報提示システムの動作>
上記構成の情報提示システム1では、HUD装置3の電源が入れられて、情報端末5で連携アプリ31が実行されると、ネット情報やアプリ情報、表示設定の情報がHUD装置3で受信される。そして、受信したネット情報やアプリ情報に基づいて、表示設定の情報に含まれる予め設定された項目に対応する表示像のデータがGDC55にて生成される。このとき、HUD装置3の表示がオン状態であると、投射ユニット39の光出射器57において、GDC55で生成された表示像のデータに対応する表示光が、情報端末5で設定された表示像の明るさレベルに対応する光の強さで生成される。この表示光は、光出射器57から出射された後に凹面ミラー59で反射されて、投射ユニット39からコンバイナ73に投光され、コンバイナ73でユーザの視界に入るようにさらに反射される。これにより、ユーザは、コンバイナ73越しに前方視界の風景に重畳した状態で、表示光による表示像を虚像として視認させられる。
【0074】
この実施形態に係るHUD装置3およびそれが搭載されたヘルメット101によると、投射ユニット39のカバー部材65を、投射ユニット39が表示光を投射する上下方向において、ヘルメット本体105の顎部113表面から当該顎部113の内部に設けられたライナー111の外面よりも凹んだ位置に配置するようにしたので、ユーザがヘルメット101を取り扱う際にカバー部材65を手で触れ難くすることができ、ユーザの手の汚れがカバー部材65の表面に付くのを防止することができる。それにより、HUD装置3によって表示される表示像に生じるぼけ(滲み)を少なくし、当該表示像の視認性を良くすることができる。
【0075】
また、この実施形態に係るHUD装置3およびそれが搭載されたヘルメット101によると、板状物であるカバー部材65を、表示光を放出する側の表面をヘルメット101の外側に向ける方向へ傾斜させるようにしたので、
図4に一点鎖線で示すように、ヘルメット101の内部に入射して光路部119に入り込んだ外光が、カバー部材65の表面で顎部113を構成するシェル109の裏面に向けて反射され、ヘルメット101を着用したユーザの眼Eに照り返すのを防止することができる。それにより、HUD装置3により表示される表示像の視認性を損なわないようにし、且つ運転の妨げとなるのを防止することができる。
【0076】
また、この実施形態に係るHUD装置3およびそれが搭載されたヘルメット101によると、投射ユニット39のカバー部材65をヘルメット101に設けられた光路部119との間に隙間77をあけて設けるようにしたので、
図7に示すように、シールド107を上げて窓開口103を開放しているときに、雨水などの水分201が光路部119にその上端開口から入り込んだとしても、投射ユニット39のカバー部材65と当該光路部119との間の隙間77から外側へ逃がすことができる。
【0077】
また、水分201に限らず、光路部119にその上端開口から入り込んだ塵埃などの異物も、カバー部材65と光路部119との間の隙間77から外側へ逃がすことができる。これにより、光路部119に入り込んだ水分201や異物が投射ユニット39のカバー部材65表面に溜まるのを抑制でき、水分201や異物がカバー部材65表面に付着したとしてもその付着量を減らすことができる。その結果、HUD装置3によって表示される表示像のぼけ(滲み)や歪みを少なくし、当該表示像の視認性を良くすることができる。
【0078】
また、この実施形態に係るHUD装置3およびそれが搭載されたヘルメット101によると、カバー部材65の表面に親水性を有するコーティング膜71を設けるようにしたので、ヘルメット101を着用したユーザの吐息が光路部119を通じてカバー部材65の表面に当たり、吐息に含まれる水分がカバー部材65の表面に付着しても、
図6に二点鎖線で示すようにカバー部材65の表面に水分301を馴染ませて、微細な液滴がカバー部材65表面に形成され難くすることができる。それにより、HUD装置3によって表示される表示像のぼけを少なくし、当該表示像の視認性を良くすることができる。
【0079】
以上のように、本開示の技術の例示として、好ましい実施形態について説明した。しかし、本開示の技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須でない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることを以て、直ちにそれらの必須でない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0080】
例えば、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0081】
上記実施形態では、HUD装置3について、ヘルメット101のシールド107とは別に被投射体として設けられたコンバイナ79に対し、投射ユニット39から表示光を投射する構成を例に挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限らない。HUD装置3は、コンバイナ79に代えてヘルメット101のシールド107を被投射体として用い、シールド107に対して投射ユニット39から表示光を投射することで、シールド107越しに前方視界の風景に重畳した状態で表示光による表示像を虚像として表示するようになっていてもよい。
【0082】
上記実施形態では、投射ユニット39のカバー部材65と光路部119との間の隙間77が光路部119の下端全周に対応して設けられているとしたが、本開示の技術はこれに限らない。当該隙間77は、光路部119の下端前側に対応する箇所のみに設けられているなど、光路部119の下方に対応する箇所の一部だけに設けられていてもよい。
【0083】
上記実施形態では、HUD装置3と連携する情報端末5としてスマートフォンを例示したが、本開示の技術はこれに限らない。当該情報端末5は、スマートウォッチやタブレット端末、PDA(Personal Data Assistant)などのスマートフォンに類する機能を備えた端末であってもよく、外部ネットワークNに接続する機能やGPS受信機7を備え、HUD装置3と通信できるものあれば、その他の携帯型の情報端末であっても構わない。また、HUD装置3は、情報端末5に代え、または情報端末5に加えて、自動二輪車と通信して同車に搭載された各種センサによる検知情報を受信して表示像とするようになっていてもよい。
【0084】
上記実施形態では、光出射器57に用いる表示素子としてLCOS(Liquid Crystal On Silicon)などの反射型表示パネルを例示したが、本開示の技術はこれに限らない。光出射器57の表示素子には、例えば、有機EL(Electro Luminescence)表示パネルやVFD(Vacuum Fluorescent Display)などの自発光型の表示素子が用いられてもよい。
【0085】
上記実施形態では、投射ユニット39が凹面ミラー59を有しているとしたが、本開示の技術はこれに限らない。投射ユニット39は、凹面ミラー59に代えて、凸面ミラーまたは平面ミラーを有していてもよい。
【0086】
上記実施形態では、HUD装置3によりユーザに表示像として提示される情報が現在時刻、速度、経路案内の情報であるとしたが、本開示の技術はこれに限らない。これら現在時刻、速度、経路案内の情報は、HUD装置3により提示し得る情報の一例に過ぎず、それら以外の自動二輪車の運転に寄与する情報であってもよく、情報端末5の連携アプリ31で設定するなどして、走行地域の周辺施設の情報などといったユーザにとって有用なその他の情報がHUD装置3で表示する項目とされていても構わない。
【0087】
上記実施形態では、HUD装置3が搭載されるヘルメット101としてフルフェイス型のヘルメットを例に挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限らない。フルフェイス型のヘルメット101は、HUD装置3が搭載されるヘルメット101の一例に過ぎず、投射ユニットを内蔵し得る部位を備えているものであれば、オープンフェイス型(ジェット型)やセミジェット型(スリークォーターズ型)など、任意のタイプのヘルメットをHUD装置3が搭載されるヘルメット101として採用することが可能である。
【0088】
上記実施形態では、HUD装置3が搭載されたヘルメット101として、自動二輪車を運転する際に着用されるヘルメット101を例に挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限らない。HUD装置3は、水上バイクや自転車などの二輪車、スノーモービル(雪上バイク)などの他の乗物において着用されるヘルメットにも勿論適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0089】
以上説明したように、本開示の技術は、ヘルメットに搭載されるHUD装置およびHUD装置が搭載されたヘルメットについて有用である。
【符号の説明】
【0090】
A…内装材
D…隙間の大きさ
E…ユーザの眼
N…外部ネットワーク
S…GPS衛星
X…光路部の筒中心軸
1…情報提示システム
3…HUD装置
5…情報端末
7…GPS受信機
9…無線通信モジュール
11…マイクロコンピュータ
13…タッチパネル付き表示装置
15…電源
17…ネットワーク通信部
19…近距離通信部
21…メモリ
23…CPU
25…時刻アプリ
27…速度アプリ
29…ナビアプリ
31…連携アプリ
33…画面
35…無線通信モジュール
37…制御ユニット
39…投射ユニット
41…コンバイナユニット
43…操作ユニット
45…電源
47…PCBモジュール
49…メモリ
51…CPU
53…マイクロコンピュータ
55…GDC
57…光出射器
59…凹面ミラー
61…ハウジング
63…投射開口
65…カバー部材
67…反射面
69…基材
71…コーティング膜
73…投射部位
77…隙間
79…コンバイナ(被投射体)
81…支持機構
83…半透過反射面
85…ステー
87…回転軸
101…ヘルメット
103…窓開口
105…ヘルメット本体
107…シールド
109…シェル(外装材)
111…ライナー
113…顎部
115…マウスカバー
117…留め具
119…光路部
121…額部
201,301…水分