(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】複合体
(51)【国際特許分類】
B32B 5/24 20060101AFI20231127BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20231127BHJP
B01D 69/10 20060101ALI20231127BHJP
B01D 69/00 20060101ALI20231127BHJP
B01D 53/22 20060101ALI20231127BHJP
B01D 69/02 20060101ALI20231127BHJP
B01D 71/42 20060101ALI20231127BHJP
B01D 71/56 20060101ALI20231127BHJP
B01D 71/48 20060101ALI20231127BHJP
B01D 71/26 20060101ALI20231127BHJP
B01D 71/32 20060101ALI20231127BHJP
B01D 71/02 20060101ALI20231127BHJP
C08J 7/04 20200101ALI20231127BHJP
【FI】
B32B5/24 101
B01D69/12
B01D69/10
B01D69/00
B01D53/22
B01D69/02
B01D71/42
B01D71/56
B01D71/48
B01D71/26
B01D71/32
B01D71/02 500
C08J7/04 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019219518
(22)【出願日】2019-12-04
【審査請求日】2022-09-22
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ハイーング
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド グルツェニア
(72)【発明者】
【氏名】ロルフ ヴァルター ターヴォンネ
(72)【発明者】
【氏名】バスティアン マッティアス ブルガー
(72)【発明者】
【氏名】キラ ハレットスカヤ
(72)【発明者】
【氏名】オリバー コンラーディ
(72)【発明者】
【氏名】ハンス ユルゲン ネッテレンブレカー
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー パーシェ
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-508669(JP,A)
【文献】特表2005-518272(JP,A)
【文献】国際公開第2005/087355(WO,A1)
【文献】特開2015-037791(JP,A)
【文献】特開2015-160159(JP,A)
【文献】国際公開第2016/031492(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/098579(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0071559(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
C07J 7/04
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊
維を含む基材上および前記基材の隙間に、互いに結合しかつ前記基材に部分的に結合されており、Al、Zr、TiおよびSi元素の酸化物から選択される少なくとも1つの酸化
物を含む酸化物粒子からなる多孔質層(1)を有し、
さらに、少なくとも片側に、互いに結合しかつ前記層(1)に部分的に結合されており、Al、Zr、Ti、およびSi元素の酸化物から選択される少なくとも1つの酸化
物を含む酸化物粒子からなる多孔質層(2)を有する複合体であって、
前記層(1)に存在する酸化物粒子は、前記層(2)に存在する酸化物粒子よりも大きな中央粒径を有し、
走査型電子顕微鏡写真を撮影し、画像評価を行うことまたはISO 13320に準拠した、静的光散乱法により測定された前記層(1)の酸化物粒子の中央粒径(d50)は0.5~4μmであり、かつ
走査型電子顕微鏡写真を撮影し、画像評価を行うことまたはISO 13320に準拠した、静的光散乱法により測定された前記層(2)の酸化物粒子の中央粒径(d50)
は0.04~0.06μmであること
を特徴とする複合体。
【請求項2】
前記多孔質層(2)が、非伝導性材料を含むことを特徴とする請求項1記載の複合体。
【請求項3】
ガーレー数が200~1,700
秒であることを特徴とする請求項1
又は2に記載の複合体。
【請求項4】
厚さが100~400μ
mであることを特徴とする請求項1
~3のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項5】
前記基材が不織布、ニットまたはレイドスクリム(laid scrim
)であることを特徴とする請求項1~
4のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項6】
前記繊維が1~200g/kmで
あることを特徴とする請求項1~
5のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項7】
前記基材は、厚さが50~150μ
mであり、かつ坪量が40~150g/m
2
であることを特徴とする請求項1~
6のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項8】
平均孔径が60~140n
mであることを特徴とする請求項1~
7のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項9】
明細書で規定されているようにして測定された、前記層(2)の表面の表面粗さ(Sdq)が10μm未
満であることを特徴とする請求項1~
8のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項10】
ポリマー層(PS)が前記層(2)の上または上方に存在
することを特徴とする請求項
9に記載の複合体。
【請求項11】
前記ポリマー層(PS)が過フッ素化ポリマーを
含むことを特徴とする請求項
9または
10に記載の複合体。
【請求項12】
以下の工程:
(a)コーティング組成物(BM1)を、繊維と前記繊維間の隙間とを有する基材に適用する工程であり、前記コーティング組成物が、以下:
(a1)元素Ti、Al、Zrおよび/またはSiの酸化物から選択され、かつ中央粒径(d50)が0.5~4μmである酸化物粒子を、水、無機
酸、および分散助剤と混合することにより生成される酸化物粒子の分散体(D1)、
(a2)元素Ti、Al、Zrおよび/またはSiの酸化物から選択され、かつ中央粒径(d50)
が40~60nmである酸化物粒子を、水と混合することにより生成される酸化物粒子の分散体(D2)、および
(a3)少なくとも2つの有機官能性シランを、アルカノー
ル、無機酸
、および水と混合することにより生成されるバインダー配合物(BF1)
を組み合わせることにより生成される工程、
(b)第1層(S1’)を作製するために、100℃~275
℃の温度で、前記コーティング組成物(BM1)を固める工程
、
(e)コーティング組成物(BM3)を層(S1’)または存在する場合は層(S2’)に適用する工程であり、前記コーティング組成物(BM3)が、水および無機酸を、以下:
(e1)元素Ti、Al、Zrおよび/またはSiの酸化物から選択され、かつ中央粒径(d50)が15~150n
mである酸化物粒子を含む水性分散体(D5)、
エタノール、および
(e2)少なくとも2つの有機官能性シランを含むバインダー配合物(BF3)
と組み合わせることにより生成される工程、および
(f)層(S3’)を作製するために、100℃~275
℃の温度で、前記コーティング組成物を固める工程
、
を有することを特徴とする、複合
体の製造方法。
【請求項13】
更に、
(c)少なくとも層(S1’)に、コーティング組成物(BM2)を適用する工程であり、前記コーティング組成物(BM2)が、以下:
(c1)元素Ti、Al、Zrおよび/またはSiの酸化物から選択され、かつ中央粒径(d50)が0.5~4μmである酸化物粒子を、水、無機酸、および分散助剤と混合することにより生成される酸化物粒子の分散体(D3)、
(c2)元素Ti、Al、Zrおよび/またはSiの酸化物から選択され、かつ中央粒径(d50)が15~150nmである酸化物粒子を、水と混合することにより生成される酸化物粒子の分散体(D4)、および
(c3)少なくとも2つの有機官能性シランを、アルカノール、無機酸、および水と混合することにより生成されるバインダー配合物(BF2)
を組み合わせることにより生成される工程、
(d)第2層(S2’)を作製するために、100℃~275℃の温度で、前記コーティング組成物(BM2)を固める工程、
(g)コーティング組成物(BM4)を層(S3’)に適用する工程であり、前記コーティング組成物(BM4)が、水および無機酸を以下:
(g1)元素Ti、Al、Zrおよび/またはSiの酸化物から選択され、かつ中央粒径が15~150nmである酸化物粒子を含む水性分散体(D6)、
エタノール、および
(g2)少なくとも2つの有機官能性シランを含むバインダー配合物(BF4)
と組み合わせることにより生成される工程、および
(h)層(S4’)を作製するために、100℃~275℃の温度で、前記コーティング組成物を固める工程
のうちの1以上の工程を有することを特徴とする請求項12記載の複合体の製造方法。
【請求項14】
使用される前記有機官能性シランが、3-グリシジルオキシトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、およびテトラエトキシシランであることを特徴とする請求項
12または13に記載の方法。
【請求項15】
3-グリシジルオキシトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、およびテトラエトキシシランが、2~4:0.5~1.5:
1の質量比でバインダー配合物(BF1)および(BF2)に使用されることを特徴とする請求項
12~14いずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
3-グリシジルオキシトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、およびテトラエトキシシランが、0.5~1.5:1.5~2.5:
1の質量比でバインダー配合物(BF3)および(BF4)に使用されることを特徴とする請求項
12~
15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記コーティング組成物(BM3)と(BM4)は同一組成であることを特徴とする請求項
12~
16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記コーティング組成物(BM1)と(BM2)は同一組成であることを特徴とする請求項
12~
17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
使用される前記基材が、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、ポリアミド、および/またはポリオレフィンから選択される繊維を含むポリマー不織布であることを特徴とする請求項
12~
18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記固化が、熱風オーブン、IRオーブン、または別のオーブンを通過することによって行われる請求項
12~
19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
工程(f)の後、または存在する場合は工程(h)の後に行われる更なる工程(i)において、過フッ素化ポリマーを含むポリマー層が、層(S3’)または存在する場合は層(S4’)に適用されることを特徴とする請求項
12~
20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
過フッ素化ポリマーを含む前記ポリマー層(PS)を適用する前および/または後に、ゴム状ポリマ
ーを含むポリマーコーティング(PB)を適用することを特徴とする請求項
21に記載の方法。
【請求項23】
ガス分離
膜としての、請求項1~10のいずれか1項に記載の複合材料、または請求項
12~
22のいずれか1項に従って製造された複合材料の使用。
【請求項24】
請求項1~
11のいずれか1項に記載の複合材
料を含むガス分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
繊維、好ましくは非導電性材料を含む基材上および前記基材の隙間に、互いに結合しかつ前記基材に部分的に結合されており、Al、Zr、TiおよびSi元素の酸化物から選択される少なくとも1つの酸化物、好ましくはAl2O3、ZrO2、TiO2およびSiO2から選択される少なくとも1つの酸化物を含む酸化物粒子からなる多孔質層(1)を有し、
さらに、少なくとも片側に、互いに結合しかつ前記層(1)に部分的に結合されており、Al、Zr、Ti、およびSi元素の酸化物から選択される少なくとも1つの酸化物、好ましくはAl2O3、ZrO2、TiO2およびSiO2から選択される少なくとも1つの酸化物を含む酸化物粒子からなる多孔質層(2)を有する複合体であって、
前記層(1)に存在する酸化物粒子は、前記層(2)に存在する酸化物粒子よりも大きな中央粒径を有し、
前記層(1)の酸化物粒子の中央粒径(d50)は0.5~4μmであり、かつ
前記層(2)の酸化物粒子の中央粒径(d50)は0.015~0.15μm、好ましくは0.04~0.06μmであること
を特徴とする複合体、
対応する複合体の製造方法、および
その使用、特にガス分離での使用に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガスの生産において、メタンの他に多くの付随物質を含む堆積物が、ますます産出されている。これらの付随物質の一部は、天然ガス中に残留してもよいが、他の部分は、天然ガス処理の過程で除去されなければならない。後者には、導管や容器の腐食を引き起こす可能性がある物質だけでなく、ガスの発熱量を低下させる物質も含まれる。除去されるべき成分、または濃度が著しく低下されるべき成分が過剰に存在する場合、それらは、通常、水、二酸化炭素、窒素、水銀、および硫化水素である。本明細書の文脈では、二酸化炭素の除去が特に重要である。技術水準は、アミンスクラビングによる除去であり、これにより、今日では、約90%の天然ガスが浄化されている。生成されるガス中の不要な付随物質の割合は、将来的に明らかに増加することが予想される。例えばアジアでは、最大50%のCO2を含む第1ソースが産出されている。
【0003】
アミンスクラビングの場合、二酸化炭素の収着後にエネルギーを使用した脱着によってアミンを再生成する必要があるため、最近では、これらの不純物の大部分を除去するための膜の使用も増えている。膜の使用には、(より少ないスペースで足りる)より小さなプラントにすることができる/できるにちがいない、簡単な操作にすることができる/できるにちがいない、そして液体化学薬品を使用しないとすることができる/使用する必要がない、という利点がある。
【0004】
最も一般的に使用される膜は、酢酸セルロースで作製された中空糸膜または平膜の形の非対称ポリマー膜として製造され、使用されている。しかし、使用中の酢酸セルロース膜の分離性能は、様々な効果によって低下するので、使用中に実施される分離は、十分に大きな分離係数を達成しないことがしばしば起こり、あるいは長時間の稼働後に明らかにマイナスの変化が起こる。そのため、例えばポリマーを変性させる等、分離係数(またはクリーンガス選択性)を向上させるための種々の作業がある。
【0005】
実際の用途での分離性能の低下は、多くの場合、ポリマー中の高級炭化水素(本明細書では、5個を超える炭素原子を有する炭化水素と定義する。)の収着と、それに付随するポリマーの軟化に起因する。過フッ素化ポリマーの場合、この効果は明らかに減少するか、またはほとんど無い。したがって、これらのポリマーは、高級炭化水素がこれらの化合物の露点に近い割合でガス中に存在する分離タスク用の選択的材料として、良好な適合性がある。
【0006】
完全にフルオロポリマーのみからなる非対称膜の製造は、経済的に実現不可能であり、したがって、フッ素化ポリマーの割合が最も小さい複合膜しか実現可能でない。ただし、基礎構造は、上記の不純物によっても変性されないように選択される必要がある。結果として、実質的にすべてのポリマーがこの目的のための選択肢に該当しない。
【0007】
特許文献1では、Porogen社が、多孔質PEEKキャリア(PEEKフィルム)の上にフルオロポリマー層を適用することを提案した。そこでの課題は、フルオロポリマーの官能基を介した担体への結合であった。
【0008】
特許文献2は、「多数のオリフィスが設けられ、かつその上にコーティングが存在する二次元の可撓性基材」を有する複合構造を備えた電気セパレータを提案している。基材の材料は、金属、合金、プラスチック、ガラスおよび炭素繊維、またはこれらの材料の組み合わせから選択され、コーティングは、2次元的に連続した多孔質の非導電性セラミックコーティングである。セラミックコーティングの使用は、熱的および化学的安定性を約束する。
【0009】
そのような複合体をポリマーで変性できるという事実は、例えば特許文献3に記載されている。しかし、そこで使用されているポリマーは、本質的に球形構造を有し、かつ複合体内に存在するものである。
【0010】
ジェームズ・エコノミー教授のグループは、選択層が多孔質支持体(例えば、ポリスルホンまたはセラミック膜)に適用される複合薄膜(TFC)の生成の研究プロジェクトに関する報告書を発表した(http://economy.matse。 illinois.edu/membrane.htm)。
【0011】
特許文献4には、セラミック材料が有機分離層により変性されたハイブリッド膜が記載されている。これらは、ポリマー製のキャリアを備えた膜よりも長期安定性に優れると言われているが、ポリマー表面は均一ではない。特許文献5には、同様のハイブリッド膜が記載されているが、そこでは、セラミック膜は、ポリマーキャリア材(特に、ポリマー不織布)をベースとしている。
【0012】
多層の本質的にセラミックの複合材料も、特許文献6からすでに知られている。そこに記載されている複合材料は、バッテリーセパレータとして使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】WO 2007/149640 A2
【文献】DE 198 38 800
【文献】EP 1925047 A1
【文献】DE 10139559 A1
【文献】DE 10208278 A1
【文献】DE 10255121 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明により取り扱われる課題は、ポリマーをベースとする分離活性層を有し、かつ好ましくは従来技術から知られているキャリア材料の1つ以上の欠点を持たない複合膜の製造に適したキャリア材料を提供することであった。
【0015】
驚くべきことに、酸化物粒子層を複数回適用することにより、「非常に滑らかな表面を持ち、かつポリマー分離層のキャリア材料として使用すると、均一なポリマー表面をもたらす複合体」を得られることが見出された。
【0016】
したがって、本発明は、特許請求の範囲に記載され、かつ以下で詳細に説明されるような複合体、複合体の製造方法、およびこれらの複合体の使用を提供するものである。
【0017】
より詳細には、本発明は、
繊維、好ましくは非導電性材料を含む基材上および前記基材の隙間に、互いに結合しかつ前記基材に部分的に結合されており、Al、Zr、TiおよびSi元素の酸化物から選択される少なくとも1つの酸化物、好ましくはAl2O3、ZrO2、TiO2およびSiO2から選択される少なくとも1つの酸化物を含む酸化物粒子からなる多孔質層(1)を有し、
さらに、少なくとも片側に、互いに結合しかつ前記層(1)に部分的に結合されており、Al、Zr、Ti、およびSi元素の酸化物から選択される少なくとも1つの酸化物、好ましくはAl2O3、ZrO2、TiO2およびSiO2から選択される少なくとも1つの酸化物を含む酸化物粒子からなる多孔質層(2)を有する複合体であって、
前記層(1)に存在する酸化物粒子は、前記層(2)に存在する酸化物粒子よりも大きな中央粒径を有し、
前記層(1)の酸化物粒子の中央粒径(d50)は0.5~4μmであり、かつ
前記層(2)の酸化物粒子の中央粒径(d50)は0.015~0.15μm、好ましくは0.04~0.06μmであること
を特徴とする複合体、
対応する複合体の製造方法、および
その使用、特にガス分離での使用を提供する。
【0018】
本発明の複合体は、微細孔を有する非常に滑らかな表面を持つという利点を有しており、そのため、すべてのポイントにおいて実質的に均一な厚さを有する分離活性ポリマー層またはフィルムを適用することが可能である。
【0019】
さらに、本発明の複合体は、通常の方法でさらに処理して膜モジュール(特に、いわゆるスパイラル巻きモジュール)を得られるほどに十分に柔軟であり得るという利点を有する。これらの膜モジュールは、膜の通常の使用形態である。これらは、取り扱いの容易な集合体であり、それにより、その集合体内に配置された膜を、例えば工業プラントに導入することができる。
【0020】
ペルフルオロ化ポリマーからなるまたはのみからなるポリマー層またはポリマーフィルムを有する本発明による複合体は、ガス分離膜(特に、CO2およびメタンの分離のためのもの)として適当であってよい。この分離のクリーンガス選択性(CO2/CH4)は、室温および供給圧力30バールで測定して、>10、好ましくは>13~23であってよい。
【0021】
本発明の文脈では、クリーンガス選択性とは、いずれの場合も同じ測定条件(膜面積、圧力および温度)の下で膜を通過する当該クリーンガスのガスフローの比を指し、各場合の分子は、ガスフローがより低いガスである。膜を通過するガスフローは、通常、GPU(ガス透過ユニット)で報告され、単位面積、単位時間、および単位差圧ごとの標準条件下での透過体積に対応する。1つのGPUのフローは、0.0027m3(STP)/(m2h バール)に相当する。
【0022】
均一な厚さによって達成できるのは、分離活性層(ポリマー層)の表面全体に欠陥(例えば、穴)を生じさせず、表面に均一な透過性を与えることである。これは、適切なガスを使用したポイントフロー測定によって検出できる。
【0023】
本発明によるガス分離膜を通過する(ガス)フローは、二酸化炭素について、20GPUより大きく、好ましくは>50GPUであってよい。ガス分離膜の表面の均一な透過性は、ガス分離膜のいくつかの領域を通過する優先フローを避け、天然ガス中に無視できない濃度で存在する外来物質(例えば、高級炭化水素または硫化水素)によるこれらの領域の急速な減損を避ける。該外来物質は、膜の対応するサブ領域の分離性能の急速な低下をもたらす。
【0024】
使用される酸化物粒子のサイズは、基材の均一な含浸を実現し、それにより、確実に複合体に空洞や空気の混入が生じなくなる。これにより、確実に複合体が圧縮応力下で圧縮されず、複合体の細孔構造が破壊されない。さらに、使用される酸化物粒子のサイズを介して、複合体の細孔径を調整することができる。
【0025】
繊維(特に、不織布基材)を含む基材の適切な組み合わせを、酸化物粒子と組み合わせて使用することにより、本発明による複合体の機械方向で>40N/mの引張強度を得られる。
【0026】
分離活性層の製造に過フッ素化ポリマーを使用することにより、典型的な重要不純物(例えば、プロパン、ブタンもしくはベンゼン、またはトルエンなどの高級炭化水素)の存在下での分離特性の変化を避けることができる。
【0027】
本発明の複合体、本発明による複合体の製造方法、および本発明による複合体の使用は、以下に例として説明されるが、本発明をこれらの例示的な実施形態に限定することを意図しない。化合物の範囲、一般式またはクラスが以下に規定されている場合、これらは、明示的に言及されている化合物の対応する範囲またはグループだけでなく、個々の値(範囲)または化合物を除くことによって得られる化合物のすべてのサブレンジおよびサブグループを包含することを意図している。本明細書の文脈において文献が引用される場合、それらの内容は、特に言及された事項に関して、本発明の開示内容の一部を完全に形成するものとする。以下に数字がパーセントで示されている場合、これらは特に明記しない限り、重量%である。平均(例えば、モル質量平均)が以下で報告される場合、これらは特に明記しない限り、数平均である。材料の特性(例えば、粘度、ガスフロー、選択性など)が以下で言及される場合、これらは特に明記しない限り、25℃での材料の特性である。本発明において化学的(実験)式が使用される場合、規定の指数は、絶対数だけでなく平均値の場合もある。ポリマー化合物に関する指数は、好ましくは平均値である。
【0028】
本発明は、
繊維、好ましくは非導電性材料を含む基材上および前記基材の隙間に、互いに結合しかつ前記基材に部分的に結合されており、Al、Zr、TiおよびSi元素の酸化物から選択される少なくとも1つの酸化物、好ましくはAl2O3、ZrO2、TiO2およびSiO2から選択される少なくとも1つの酸化物を含む酸化物粒子からなる多孔質層(1)を有し、
さらに、少なくとも片側に、互いに結合しかつ前記層(1)に部分的に結合されており、Al、Zr、Ti、およびSi元素の酸化物から選択される少なくとも1つの酸化物、好ましくはAl2O3、ZrO2、TiO2およびSiO2から選択される少なくとも1つの酸化物を含む酸化物粒子からなる多孔質層(2)を有する複合体であって、
前記層(1)に存在する酸化物粒子は、前記層(2)に存在する酸化物粒子よりも大きな中央粒径を有し、
前記層(1)の酸化物粒子の中央粒径(d50)は0.5~4μmであり、かつ
前記層(2)の酸化物粒子の中央粒径(d50)は0.015~0.15μm、好ましくは0.04~0.06μmであること
を特徴とする複合体である。
【0029】
層の中央粒径は、走査型電子顕微鏡写真(例えば、JEOL JSM IT300走査型電子顕微鏡)を撮影し、画像評価を行うことで測定できる。代替的に、ISO 13320に準拠した、静的光散乱法による粒径測定に適した機器(Mastersizer Hydro 2000S、Malvern Panalytical社製、イギリス、マルバーン)を使用して、分散体でコーティングおよび固化する前に、使用する粒子の粒径を測定することもできる。この機器は、レーザー回折を利用して粒径を測定する。この目的のために、測定対象の粒子の屈折率が知られ、ソフトウェアに記録されている必要がある。粒度分布の測定のために、測定対象の固体材料を、1,750rpmの攪拌で、必要に応じて超音波を加え、脱塩水に分散する。レーザー遮光が15%~20%となるように、分散したサンプルの十分なアリコートを、測定機器の分散モジュールにピペットで注入する。
Mastersizer Hydro 2000Sを使用して、サンプルによって散乱された2つのレーザービーム(波長633nmおよび466nm)からの光の強度を測定する。散乱強度の3次元分布を、ミー散乱理論によって評価する。これは、粒径と粒度分布を確認するために使用される。測定結果を分布曲線としても報告する。このようにして得られるのは、平均粒径に関する報告だけでなく、サンプル内の最小および最大粒子に関する情報でもある。d50は、粒径の中央値を示す。これに関連するd50は、体積重量サイズ分布の50%がこの直径よりも小さい直径を指す。したがって、さらなるパラメータは、サンプル内の最小粒子の測定値としてのd10と、より大きな粒子の測定値としてのd90である。d10とd90が近いほど、粒度分布は狭くなる。
【0030】
Al2O3およびSiO2から選択される酸化物を含むかまたはそれらのみを含む酸化物粒子が特に好ましい。0.015~0.15μm、好ましくは0.04~0.06μmの中央粒径(d50)を有する非常に特に好ましい酸化物粒子は、SiO2をベースとするか、またはSiO2のみからなるものである。特に好ましい酸化物粒子の例は、Evonik Resource Efficiency社によってAerosil(登録商標)またはAeroxide(登録商標)のブランド名で販売されている熱分解酸化物粒子、または他のサプライヤーの同等製品である。
【0031】
本発明による複合体は、好ましくは200~1,700秒、好ましくは250~1,200秒、より好ましくは300~800秒のガーレー数を有する。
【0032】
ガーレー数は、多孔質材料の通気性の尺度である。これは、規定条件下で、100cm3の空気が1平方インチのサンプルを拡散するのに必要な秒単位時間として定義される。測定のために、ワッドパンチを使用して、直径44mmの円形サンプルを打ち抜く。試験対象のサンプルは、欠陥、穴がないか、ライトステージ上でチェックされる。視覚的に申し分のないサンプルのみ測定に適する。測定を開始する前に、測定器(デンソメーターモデルNo.4110N、Gurley Precision Instruments社、ニューヨーク州トロイ)でレベルが調整され、外部シリンダーが印までデンソメーターオイルで満たされていることを確認する必要がある。デンソメーター試験操作では、一定の穏やかな圧力下で特定量の空気が特定のサンプル領域を流れるのに必要な時間を測定する。正確な直径と標準重量を有する内部シリンダーによって圧縮空気が生成され、オイルで部分的に満たされた外部シリンダーに自由に流れ、気密性を確保する役割を果たす。
【0033】
本発明による複合体は、好ましくは100~400μm、好ましくは125~200μm、より好ましくは130~170μmの厚さを有する。厚さは、Mitutoyo社製のマイクロメーター(Digimetic Micrometer MDC-25PX、0~25μm)で測定される。
【0034】
本発明による複合体は、好ましくは60~140、好ましくは75~130nmの平均孔径を有する。平均孔径は、Porolux 1000(ポロメーター、ベルギー、エケ)を用いて、以下に記載されるように、ガス流ポロメトリーにより測定される。
【0035】
この目的のために、直径25mmの円形サンプルを分析対象の材料から打ち抜き、細孔から水分を除去するために100℃の乾燥キャビネットで1時間乾燥させ、次いで、すぐにPorefil湿潤用流体内に入れ、存在するすべての細孔がこの液体で満たされるようにする。その後、すべての細孔がPorefilで満たされるように、減圧(150ミリバール)を短時間かけて、デシケーターで該サンプルを脱気する。脱気したサンプルを測定器のサンプルホルダーに入れ、該サンプルホルダーを螺合させる。
【0036】
細孔半径分布の測定は、毛細管流動ポロメトリーの測定原理に基づく。湿潤液で濡らされ脱気されたサンプルを、測定セル内で、段階的に上昇する不活性ガス圧力(窒素)にさらし、加えられた圧力に対応する細孔径は、ガス圧力によって測定される。同時に、圧力上昇時のガス流量を記録する。連続細孔では、湿潤液と窒素の交換が行われる。関係する細孔範囲がカバーされるまで、つまり、測定領域に存在する最小細孔の液体がなくなるまで、これを続ける。その後、測定セル内の圧力を再び下げ、乾燥サンプルで測定を繰り返す。湿潤曲線(wet curve)と乾燥曲線(dry curve)の差を使用して、細孔径分布を計算する。ポロメトリー測定により、存在する最大細孔半径(「バブルポイント」)、および最も一般的かつ最小の細孔径の情報が得られる。
【0037】
本発明による複合体は、層(2)の表面に、好ましくは10μm未満、より好ましくは8μm未満の、後述するようにして測定された表面粗さ(Sdq)を有する。
【0038】
表面粗さについては、共焦点顕微鏡(http://ak-rauheit.de/files/3D%20Kenngr%F6%DFen.pdf)により、2cm×2cmの測定領域について測定する。この測定は、例えば、Nanofocus社(オーバーハウゼン)製のμサーフエキスパート共焦点顕微鏡を使用して行われ得る。これは、800xs型レンズを使用して、3×3の画像をスキャンすることにより行われる。評価は、DIN ISO 25178に準拠した、表面にフィルターが付いていないμサーフ分析プレミアム7.4.8164評価ソフトウェアを使用して行われる。Rdq値は、DIN ISO 4287に準拠して確認される。
【0039】
本発明による好ましい複合体は、200~1,700秒、好ましくは250~1,200秒、より好ましくは300~800秒のガーレー数、100~400μm、好ましくは125~200μm、より好ましくは130~170μmの厚さ、60~140nm、好ましくは75~130nmの(好ましくは最外層の)平均孔径、および/または(好ましくは、および)10μm未満、より好ましくは8μm未満の表面粗さ(Sdq)を有するものである。特に好ましいのは、最も好ましい各パラメータを有する複合体である。
【0040】
本発明による複合体において、基材は、好ましくは不織布、ニットまたはレイドスクリム、好ましくは不織布またはレイドスクリム、より好ましくは不織布である。該繊維は、1~200g/kmであることが好ましい。該繊維は、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリエステル、および/またはポリオレフィン、好ましくはポリアクリロニトリルでできていることが好ましい。該繊維は、10~80g/kmであることがより好ましく、50g/kmであることが最も好ましく、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリエステル、および/またはポリオレフィン、好ましくはポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートでできている。
【0041】
基板は、好ましくは50~150μm、好ましくは100~130μmの厚さを有する。基材は、好ましくは40~150g/m2、好ましくは50~120g/m2、好ましくは50~100g/m2、最も好ましくは60g/m2の基本重量を有する。基材は、50~150μm、好ましくは100~130μmの厚さ、および40~150g/m2、好ましくは50~120g/m2、好ましくは50~100g/m2、最も好ましくは60g/m2の坪量を有することがより好ましい。
【0042】
特に好ましい基材は、言及されたすべてのパラメータを有するもの、最も好ましい基材は、言及された最も好ましい各パラメータを有するものである。
【0043】
本発明による複合体において、ポリマー層(PS)(好ましくは、ガス分離層である。)が、層(2)の上または上方に存在することが好ましい。好ましくは、ポリマー層は、1つ以上の過フッ素化ポリマーを含むか、または好ましくはそれらのみを含む。ポリマーは、コポリマーも意味すると理解されたい。ポリマー層は、過フッ素化ポリマー(好ましくは、フッ素原子と炭素原子の比が2:1~1:2、好ましくは2:1~4:3であるもの)のみを含むことが好ましい。存在する過フッ素化ポリマーは、任意の対応するポリマーであってよい。アモルファスの過フッ素化ポリマーが存在することが好ましい。好ましい過フッ素化ポリマーは、60~90モル%のジオキソール、好ましくは87モル%のジオキソールを有するポリ[4,5-ジフルオロ-2,2-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソール-コ-テトラフルオロエチレン](DuPont社からTEFLON(登録商標)AF 2400として入手可能)、50~80モル%のジオキソール、好ましくは65モル%のジオキソールを有するポリ[4,5-ジフルオロ-2,2-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソール-コ-テトラフルオロエチレン](DuPont社からTEFLON(登録商標)AF 1600として入手可能)、AGC Chemicals Company社製CYTOP(登録商標)シリーズの過フッ素化ポリマー、またはエーテル官能基の割合が30~90モル%、好ましくは40、60または80モル%であるアモルファスのポリ(テトラフルオロエチレン-コ-2,2,4-トリフルオロ-5-トリフルオロメトキシ-1,3-ジオキソール)(Solvay社からHYFLON(登録商標)AD 60またはHYFLON(登録商標)AD 40Hとして入手可能)である。ポリマー層(PS)は、0.05μm~10μm、好ましくは0.1μm~1.5μm、より好ましくは0.1~1.0μmの厚さを有することが好ましい。
【0044】
ゴム状ポリマー、好ましくはシリコーンによって形成されるさらなるポリマーコーティング(PB)が、層(2)とポリマー層(PS)の間および/またはポリマー層(PS)の上に存在することがさらに好ましい。特に適切なゴム状ポリマーは、CO2に対して200バーラー(barrer)(標準条件下のcm3/cm×秒×cmHg)の高い固有ガス透過性を持つものである。好ましいゴム状ポリマーは、シリコーンポリマー(シリコーン)、例えば、ポリジメチルシリコーン、ポリエチルメチルシリコーン、ニトリルシリコーン、ゴム、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)、ポリトリメチルシリルプロペンまたは他の対応するコポリマーである。ポリマーコーティング(PB)は、層(2)とポリマー層との間に存在するポリマーコーティングである場合、0.05μm~10μm、好ましくは3μm~8μmの厚さを有することが好ましく、ポリマー層(PS)の上に存在するポリマーコーティングである場合、好ましくは1μm~4μmの厚さを有することが好ましい。
【0045】
本発明の複合体は、取り扱い時の良好な安定性に関し注目に値する。これは、例えばガス混合物の分離装置への導入時に発生し得る複合体の欠損/損傷の可能性を減らす。典型的な欠損/損傷は、ねじれ、または鋭利な物体による処理を原因とするセラミックの破壊である。
【0046】
本発明による複合体は、可撓性であることが好ましい。本明細書の文脈において、「柔軟な」とは、直径15mmまでのバーまたはチューブの周りに、損傷なく巻き付けることができることを意味する。本発明による特に好ましい複合体は、損傷なしに、最小直径が5mmまでのロッドまたはバーの周りに巻き付けることができる。窒素のガス流量を測定することにより、対応する複合体が損傷を受けないことを簡単に実証できる。これに関連して、窒素で測定されたガス流量が100%以上増えると、複合体の欠損/損傷とみなされる。本発明による複合体の柔軟性のおかげで、これらは、非常に簡単な方法で、平膜の典型的なモジュール形態で導入可能であり、渦巻き型モジュール、プレートまたはフレームモジュール、ポケットモジュール、および平膜用に設計された他の装置での使用に特に適している。
【0047】
本発明による複合体の部分的なセラミック構造のおかげで、これらは、圧縮応力下で、その厚さおよび/または多孔性に、好ましくはほとんど変化がなく、好ましくは全く変化しないという利点も有する。これには、複合体全体が、高い圧縮応力下でも、GPUでほぼ一定のフロー性能を発揮し、さらに、圧縮された多孔質構造により圧力が高くなってもフローが減少しないという利点がある。厚さおよび/または多孔性の変化を測定するために、直径35mmの円形サンプルを、本発明による複合体から切り出し、厚さを測定しながら、油圧プレスで最大52バールの圧力をかける(INSTRON社製の測定器)。厚さを圧縮圧力の関数としてプロットしたダイアグラムを使用して、圧縮応力と緩和を3サイクルした後、弾性成分の厚さの変化を計算できる。本発明による複合体の場合、これは好ましくは8%未満、より好ましくは7%未満である。
【0048】
本発明による複合体は、異なる方法で製造されてもよい。 好ましくは、本発明による複合体は、以下に記載する本発明による方法によって得られる。
【0049】
本発明による複合体(好ましくは、本発明による複合体)の製造方法は、以下の工程:
(a)コーティング組成物(BM1)を、繊維と前記繊維間の隙間とを有する基材に適用する工程であり、前記コーティング組成物が、以下:
(a1)元素Ti、Al、Zrおよび/またはSiの酸化物から選択され、かつ中央粒径(d50)が0.5~4μmである酸化物粒子を、水、無機酸、好ましくは硝酸、および分散助剤と混合することにより生成される酸化物粒子の分散体(D1)、
(a2)元素Ti、Al、Zrおよび/またはSiの酸化物から選択され、かつ中央粒径(d50)が15~150nm、好ましくは40~60nmである酸化物粒子を、水と混合することにより生成される酸化物粒子の分散体(D2)、および
(a3)少なくとも2つの有機官能性シランを、アルカノール、好ましくはエタノール、無機酸、好ましくはホウ酸、および水と混合することにより生成されるバインダー配合物(BF1)
を組み合わせることにより生成される工程、
(b)第1層(S1’)を作製するために、100℃~275℃、好ましくは120℃~240℃の温度で、前記コーティング組成物(BM1)を固める工程、
(c)必要に応じて、少なくとも層(S1’)に、コーティング組成物(BM2)を適用する工程であり、前記コーティング組成物(BM2)が、以下:
(c1)元素Ti、Al、Zrおよび/またはSiの酸化物から選択され、かつ中央粒径(d50)が0.5~4μmである酸化物粒子を、水、無機酸、好ましくは硝酸、および分散助剤と混合することにより生成される酸化物粒子の分散体(D3)、
(c2)元素Ti、Al、Zrおよび/またはSiの酸化物から選択され、かつ中央粒径(d50)が15~150nm、好ましくは40~60nmである酸化物粒子を、水と混合することにより生成される酸化物粒子の分散体(D4)、および
(c3)少なくとも2つの有機官能性シランを、アルカノール、好ましくはエタノール、無機酸、好ましくはホウ酸、および水と混合することにより生成されるバインダー配合物(BF2)
を組み合わせることにより生成される工程、
(d)必要に応じて、第2層(S2’)を作製するために、100℃~275℃、好ましくは120℃~240℃の温度で、前記コーティング組成物(BM2)を固める工程、
(e)コーティング組成物(BM3)を層(S1’)または存在する場合は層(S2’)に適用する工程であり、前記コーティング組成物(BM3)が、水および無機酸を、以下:
(e1)元素Ti、Al、Zrおよび/またはSiの酸化物から選択され、かつ中央粒径(d50)が15~150nm、好ましくは40~60nmである酸化物粒子を含む水性分散体(D5)、
エタノール、および
(e2)少なくとも2つの有機官能性シランを含むバインダー配合物(BF3)
と組み合わせることにより生成される工程、
(f)層(S3’)を作製するために、100℃~275℃、好ましくは120℃~240℃の温度で、前記コーティング組成物を固める工程、
(g)必要に応じて、コーティング組成物(BM4)を層(S3’)に適用する工程であり、前記コーティング組成物(BM4)が、水および無機酸を以下:
(g1)元素Ti、Al、Zrおよび/またはSiの酸化物から選択され、かつ中央粒径が15~150nm、好ましくは40~60nmである酸化物粒子を含む水性分散体(D6)、
エタノール、および
(g2)少なくとも2つの有機官能性シランを含むバインダー配合物(BF4)
と組み合わせることにより生成される工程、および
(h)必要に応じて、層(S4’)を作製するために、100℃~275℃、好ましくは120℃~240℃の温度で、前記コーティング組成物を固める工程
を特徴とする。
【0050】
15~150nm、好ましくは40~60nmの中央粒径(d50)を有する非常に特に好ましく使用される酸化物粒子は、SiO2をベースとするものか、またはそれのみからなるものである。対応する粒子は、例えば、Evonik Resource Efficiency GmbH社からAerosil(登録商標)OX50の名前で入手可能である。
【0051】
バインダー配合物BF1~BF2の製造では、pHが2~5である十分な酸を使用することが好ましい。コーティング組成物BM1~BM4の製造では、pHが2.5~5である十分な量の酸を使用することが好ましい。AMEOを使用してバインダー配合物を製造する場合、pHは、8より大きく、好ましくは8.5~9.5であることが好ましい。特にバインダー配合物にAMEOを使用する場合、バインダー配合物のフィードストックが中間工程なしでコーティング組成物に直接計量添加されるように、バインダー配合物の製造の個々の成分段階を組み合わせることが好ましい。ただし、この手順は、他のすべてのコーティング組成配合物にも使用できる。
【0052】
使用される分散助剤は、任意の適切な分散助剤であってよい。Zschimmer & Schwarz GmbH & Co KG社によりDOLAPIXの名前で、またはEvonik Resource Efficiency GmbH社によりTEGO(登録商標)Dispersの名前で販売されている分散助剤を使用することが好ましい。使用される分散助剤は、より好ましくは、例えば、Zschimmer &Schwarz GmbH & Co KG社によってDOLAPIX CE 64の名前で販売されているカルボン酸製剤である。
【0053】
より容易かつ確実に、表面粗さの低い、好ましくは表面粗さ(Sdq)が10μm未満、より好ましくは8μm未満である複合体を得ることが可能であるため、本発明による方法において、任意の工程(c)と(d)および(g)と(h)を実施することが有利かつ好ましい。したがって、工程(c)と(d)および工程(g)と(h)の両方を実施することが特に好ましい。このようにして、複合体の欠陥(すなわち、例えば、平均孔径、ガーレー数、厚さ、および/または表面粗さがクレームに記載されている値または好ましい値として記載されている値から明確に逸脱している部位)を確実に避けることも可能である。
【0054】
使用される有機官能性シラン、好ましくはアルコキシ官能性シラン、より好ましくはメトキシおよび/またはエトキシ官能性シランは、好ましくは、3-グリシジルオキシトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、および/またはテトラエトキシシランである。使用される有機官能性シランは、好ましくは、3-グリシジルオキシトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、およびテトラエトキシシランである。バインダー配合物(BF1)および/または(BF2)、好ましくはおよび(BF2)では、3-グリシジルオキシトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、およびテトラエトキシシランが、2~4:0.5~1.5:1、より好ましくは2.5~3.5:0.75~1.25:1、最も好ましくは3:1:1の質量比で使用される。バインダー配合物(BF3)および/または(BF4)、および(BF4)では、3-グリシジルオキシトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、およびテトラエトキシシランが、0.5~1.5:1.5~2.5:1、より好ましくは0.75~1.25:1.75~2.25:1、最も好ましくは1:2:1の質量比で使用される。
【0055】
コーティング組成物(BM3)および(BM4)は、同一組成であることが好ましい。同様に、コーティング組成物(BM1)および(BM2)は、同一組成であることが好ましい。このようにして、層(S1’)と(S2’)または(S3’)と(S4’)を作製することにより、均一な構造の層(1)または(2)を得ることができる。これは、複合体中の欠陥の数を回避するのにも役立つ。
【0056】
本発明による方法で使用される基材は、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、ポリアミドおよび/またはポリオレフィン、好ましくはポリエステル、より好ましくはポリエチレンテレフタレートから選択される繊維を含むポリマー不織布であることが好ましい。好ましい使用基材は、好ましくは上記のパラメータ、特にそこで好ましいと記載されているパラメータを有する。
【0057】
コーティング組成物は、例えば、熱風オーブン、IRオーブンまたは別のオーブンを通過させることにより固めることができる。コーティング組成物BM1~BM4は、100~275℃の温度で、より好ましくは120~240℃の温度で固められることが好ましい。
【0058】
工程(f)の後に、または存在する場合は工程(h)の後に実施されるさらなる工程(i)において、ペルフルオロ化ポリマー、好ましくはペルフルオロ化ポリマーを含むかまたはそれのみからなるポリマー層を、層(S3’)または存在する場合は層(S4’)に適用することが好ましい。ポリマー層は、アモルファスの過フッ素化ポリマーを含むかまたはそれのみからなることが好ましい。ポリマーもコポリマーを意味すると理解されたい。フッ素原子と炭素原子の比が2:1~1:2、好ましくは2:1~4:3である過フッ素化ポリマーを使用することが好ましい。使用される過フッ素化ポリマーは、任意の対応するポリマーであってよい。使用される好ましい過フッ素化ポリマーは、60~90モル%のジオキソール、好ましくは87モル%のジオキソールを有するポリ[4,5-ジフルオロ-2,2-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソール-コ-テトラフルオロエチレン](DuPont社からTEFLON(登録商標)AF 2400として入手可能)、50~80モル%のジオキソール、好ましくは65モル%のジオキソールを有するポリ[4,5-ジフルオロ-2,2-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソール-コ-テトラフルオロエチレン](DuPont社からTEFLON(登録商標)AF 1600として入手可能)、AGC Chemicals Company社のCYTOP(登録商標)シリーズの過フッ素化ポリマー、またはアモルファスのポリ(テトラフルオロエチレン-コ-2,2,4-トリフルオロ-5-トリフルオロメトキシ-1,3-ジオキソール)(好ましくは、エーテル官能基の割合が30~90モル%、好ましくは40、60または80モル%であるもの)(例えば、Solvay社からHYFLON(登録商標)AD 60またはHYFLON(登録商標)AD 40Hとして入手可能)である。
【0059】
過フッ素化ポリマーを含むかまたはそれのみからなるポリマー層を、対応するポリマー溶液の単一または反復適用および固化により、適用してもよい。過フッ素化ポリマーの溶液を、層(S3’)に、または存在する場合は好ましくは層(S4’)に適用することが好ましい。適用は、例えば、浸漬(浸漬コーティング)、印刷塗布、ドクターブレード塗布、またはスプレー塗布によって行われてよい。適用は、浸漬コーティングにより行われることが好ましい。溶液中の過フッ素化ポリマーの割合は、好ましくは0.5~10重量%、好ましくは1.5~3.5重量%、より好ましくは2.5重量%である。
【0060】
使用される溶媒は、例えば、フッ素化エーテルまたはアミンであってよい。使用される溶媒は、好ましくは25~250℃の沸点を有する。使用される溶媒は、好ましくは、Cytopシリーズの溶媒(例えば、Asahi Glass Chem社のct-100-solvまたはct-180-solv)(https://www.agc-chemicals.com/jp/en/fluorine/products/detail/index.html?pCode=JP-EN-F019)、種々のGalden製品(例えば、Solvay社のGalden D02TSまたはGalden HT55)もしくは3M社のNovec製品、または類似の溶媒である。使用される溶媒は、好ましくは、Cytop ct 100 solv、Cytop ct 180 solv、Galden HT55、Novec 7300、最も好ましくはCytop ct 100 solvまたはNovec 7300から選択される。
【0061】
固化は、好ましくは25~250℃、好ましくは50~225℃の温度で乾燥することにより行われ、例えばオーブン、熱風オーブンまたは赤外線オーブンで行われてよい。適用は、0.05μm~10μmの厚さを有するポリマー層が得られるのに十分な回数行われることが好ましい。
【0062】
過フッ素化ポリマーを含むポリマー層の適用の前および/または後に、ゴム状ポリマー、好ましくはシリコーンを含むかまたはそれのみからなるコーティングを適用することが好ましい。特に適切なゴム状ポリマーは、CO2に対して、200バーラー(barrer)(標準条件下のcm3/cm×秒×cmHg)の高い固有ガス透過性を持つものである。好ましいゴム状ポリマーは、シリコーンポリマー(シリコーン)、例えば、ポリジメチルシリコーン、ポリエチルメチルシリコーン、ニトリルシリコーン、ゴム、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)、ポリトリメチルシリルプロペン、または対応するコポリマーである。
【0063】
このポリマーコーティングは、例えば、ゴム状ポリマー、好ましくはシリコーンポリマーの溶液を、層(S3’)または存在する場合は層(S4’)および/またはポリマー層に適用することにより、生成されてよい。溶液は、好ましくはポリマーを3~10重量%含む。シリコーンを利用する場合の適切な溶媒は、特にシロキサン化合物、好ましくはヘキサメチルジシロキサンであるが、トルエンまたはイソオクタンも使用可能である。シリコーンがポリマーとして使用される場合、例えば、Momentive社、Panacol社、またはEvonik Hanse Chemie GmbH社から入手可能な多成分システムを利用することが好ましい。例えば、Momentive社のシリコーンRTV-615を使用することができる。ポリマー層の適用前に1つのシリコーンコーティングを適用し、ポリマー層の適用後に1つのシリコーンコーティングを適用することが特に好ましい。層(S3’)または存在する場合は層(S4’)に適用されるシリコーンコーティングは、5~10重量%、好ましくは3~7重量%のシリコーンを含むシリコーン配合物(好ましくは、Momentive社のシリコーンRTV-615)、または溶媒としてのヘキサメチルジシロキサン中の付加架橋シリコーン配合物(Evonik Hanse Chemie GmbH社製)を適用することにより生成されることが好ましい。
【0064】
Evonik Hanse Chemie GmbH社の付加架橋シリコーンの典型的な配合は、さまざまな組成の溶液Aと溶液Bのみからなり、必要に応じて1:10~10:1の比率で組み合わされてよい。溶液Aは、白金触媒(白金-シロキサン錯体)を含み、所望の分子量とビニル基の所望の含有量を有するビニル官能性ポリジメチルシロキサン、所望の分子量を有するビニル官能性QM樹脂、およびシリカ粒子を、種々の割合で含んでいてもよい。溶液Bは、所望の分子量およびSiH基の所望の含有量を有するSiH含有ポリジメチルシロキサン(架橋剤)、および0.02重量%の禁止剤(例えば、アルキノール、ジビニルテトラメチルジシロキサン、メチルビニルシクロテトラシロキサン)を含み、所望の分子量およびビニル基の所望の含有量を有するビニル官能性ポリジメチルシロキサン、所望の分子量を有するビニル官能性QM樹脂、およびシリカ粒子を、種々の割合で含んでいてもよい。
【0065】
ポリマーコーティングの後に適用されるシリコーン配合物は、湿潤架橋シリコーンシステム、または照射(例えば、紫外線照射)により架橋可能なもの(例えば、Evonik Resource Efficiency GmbH社のRCシリコーン製品)であってもよい。良好な適合性を有するポリマー配合物は、好ましくは、それぞれのシリコーンに適した溶媒中に3~7重量%の架橋性シリコーンを含む。
【0066】
ゴム状ポリマー、好ましくはシリコーンを含むかまたはそれのみからなるコーティングの乾燥は、好ましくは、50~150℃で1~30分間行われる。
【0067】
ゴム状ポリマーの溶液の生成において、ポリマー、溶液濃度、さらに溶媒中のポリマー成分の混合時間は、好ましくは、混合物が複合体の細孔構造にわずかに浸透し、好ましくは全く浸透しないように選択される。これは、当業者であれば単純な予備実験により確認できる。
【0068】
ポリマー層またはゴム状ポリマーコーティングをそれぞれ適用する前に、層またはコーティングが適用されるべき層/構造を、プラズマ、好ましくはコロナ(空気プラズマ)で処理することが好ましい。電力について、ゴム状ポリマーを含むコーティングの処理では50~900W 分/m2、好ましくは100~300W 分/m2、セラミック層(すなわち、酸化物粒子を含むもの)の処理では好ましくは300~900W 分/m2、過フッ素化ポリマーを含む層の処理では好ましくは200~400W 分/m2に設定することが好ましい。コロナ処理に適した機器は、Softal社(ハンブルク)から入手可能である。
【0069】
本発明による複合体の製造方法は、連続的にまたはバッチ式で実施されてよい。このプロセスは、ロール・ツー・ロール(roll-to-roll)法として実施されることが好ましい。(a)~(i)の全ての工程、および適切な場合は対応する予備工程を、基材または1回以上コーティングされた基材がロールから巻き戻され、1つ以上の工程または予備工程が実施される装置を通してガイドされ、そして適用された層の固化後に、一回以上コーティングされた基材または本発明の複合体が巻き上げられるような方法で、行うことが好ましい。複合体の巻き取りにおいて、層(S1’)もしくは(S4’)、または存在するポリマー層の接着または損傷を防ぐ中間層がロールに含まれることが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート不織布は、中間層(例えば、基材としても使用されるもの)として適切である。本発明による方法がロール・ツー・ロール法として実施される場合、ウェブ速度は、好ましくは1~500mm/秒、好ましくは20~50mm/秒である。
【0070】
本発明による方法により、本発明による複合体を得ることが可能である。したがって、本発明は、同様に、本発明による複合体を含むガス分離装置、または本発明に従って製造された複合体を提供するものである。
【0071】
本発明による複合体および/または本発明に従って製造された複合体、特に過フッ素化ポリマーを含むかまたはそれのみからなる層を有する複合体は、ガス分離膜として、より好ましくはCO2からのメタンの分離に使用できる。ガス分離膜として使用可能な本発明による好ましい複合体は、クリーンガスとしての二酸化炭素について、>50GPU、好ましくは>80GPUかつ200GPU未満のガスフローを有する。
【0072】
本発明の複合体は、比較的高いクリーンガス選択性と高い二酸化炭素流量とを兼ね備えているため、ガス分離用装置に使用することが好ましい。これにより、プラントでの対応する混合物の分離が効率的になり、したがって、対応する分離プロセスの経済的実行可能性が向上する。
【0073】
本発明によるガス分離膜は、さらなるガス混合物の分離にも適していてもよい。より好ましくは、本発明の複合材料は、CO2からのメタン、CO2からのH2、N2からのH2、N2からのO2またはCH4からのHeの分離、より好ましくはCO2からのCH4の分離に使用される。以下の表Aは、過フッ素化ポリマーを含むかまたはそれのみからなる層が形成された過フッ素化ポリマーに応じて、各ガス混合物に対して達成できるクリーンガス選択性を示す。
【0074】
【0075】
本発明は、例として、
図1および
図2に示される本発明による複合体の画像によって説明されるが、これらに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【
図1】複合体P-VK-11の断面のSEM画像である(実施例を参照)。種々の層(1)および(2)、ポリマー層(PS)/コーティング(PB)、および基材の繊維がはっきり見える。複合体と層(2)の寸法も示す。
【
図2】複合体P-VK-11の断面の拡大SEM画像である(実施例を参照)。 ポリマーコーティング(PB)を含むポリマー層(PS)の構造がはっきり見えるポリマーコーティング(PB)およびポリマー層(PS)の寸法も示す。
【発明を実施するための形態】
【0077】
本発明を以下の実施例により説明するが、これらに限定されない。
【0078】
【0079】
【0080】
実施例1:本発明による複合材料の製造
実施例1a:バインダー配合物Iの製造
250mlビーカーに、最初に、エタノール(14.22g)とホウ酸(2.84g)を入れ、マグネチックスターラーで互いに攪拌した。ホウ酸がほぼ溶解するとすぐに、GLYEO(18.16g)(GLYMO15.5gに相当)、TEOS(5.14g)、およびMTES(5.14g)を連続して添加することができた。(実験条件を変えるために、この部分は、各場合で変更しなければならなかった。)これがよく混合された後、水(0.03g)を加え、加水分解を開始した。混合物をマグネチックスターラーで15時間攪拌した後、攪拌しながら第2の水(7.1g)を加えた。このようにして調製されたシランバインダー配合物を、使用前に、「予備加水分解」が軽減するまでさらに5時間撹拌した。
【0081】
実施例1b:粒子配合物Iの製造
水(11kg)をホッボック(hobbock)に入れた。回転させながら Ox50(5kg)を添加した。この混合物をゆっくりと1時間撹拌した。粒径をさらに小さくするために、混合物を6時間、12L/時間の量でUIP 1000超音波フローセルに導入した。粒径d50を、明細書で規定したように、<60nm未満として測定した。固形分は約30質量%であった。
【0082】
実施例1c:コーティング組成物Iの製造
1000mlビーカーに、水(97g)、Dolapix CE64(0.44g)、および65質量%硝酸溶液(1.84g)を連続的に充填し、それらをマグネチックスターラーで互いに混合した。絶えず攪拌しながら、この混合物に、微粉砕アルミナ(200g)(ct1200SG)を少しずつ加えた。
【0083】
すべての成分が計量され、十分に混合された状態になったら、この分散液を超音波分散フィンガー(Hielscher UP200)で処理して、存在する凝集物を破壊した。エタノール(42g)をこの分散液に加えた後、この混合物を少なくともさらに15時間攪拌した。15時間経過した後、実施例1bに従って調製した30%OX50分散液(13.5g)と水(8.74g)、あるいはAerosil Ox50(4g)と水(18g)を加えた。続いて、調製されたシランバインダー配合物(52.6g)を添加し、分散液全体を、少なくとも15時間、静止状態で再び熟成した。
得られたコーティング組成物は、58.7%の固形分を有し、コーティング実験用にこの形態で利用することができる。
【0084】
実施例1d:バインダー配合物IIの製造
250mlビーカーに、最初に、エタノール(10.45g)とホウ酸(0.84g)を入れ、マグネチックスターラーで互いに攪拌した。ホウ酸がほぼ溶解するとすぐに、GLYEO(5.89g)、TEOS(5.0g)、およびMTES(10g)を連続して添加することができた。(実験条件を変えるために、この部分は、各場合で変更しなければならなかった。)これがよく混合された後、水(0.03g)を加え、加水分解を開始した。混合物をマグネチックスターラー上で1時間攪拌した後、攪拌しながらさらに脱塩水(5.19g)を加えた。このようにして調製されたシランバインダー配合物IIを、使用前に、さらに15時間撹拌した。
【0085】
実施例1e:コーティング組成物IIの製造
1000mlビーカーに、最初に、実施例1bのOx50分散液(101.35g)を充填し、次いで脱塩水(299.88g)と65質量%硝酸溶液(3g)を連続的に添加し、混合物をマグネチックスターラーで15時間撹拌した。
【0086】
調製された(シラン)バインダー配合物II(37.39g)およびエタノール(150.4g)をこの分散液に添加した。その後、この混合物をさらに2日間撹拌した。
【0087】
得られたコーティング組成物IIは、約5.7%のOx50の固形分を有し、コーティング実験用にこの形態で利用することができる。
【0088】
実施例1f:コーティングプロセス
コーティングされるべき材料のストリップ(幅10cm、長さ約1m)(織物、不織布またはニット)を準備した。あるいは、ここで説明するコーティング操作の生成物を使用することもできる。ただし、この場合、後続の処理工程において常に同じ側が処理されることを確保する必要がある。
【0089】
コーティングのために、成分調合済みの分散液(コーティング組成物IまたはIIをタンクに導入する。タンクには、材料ウェブがまたがる回転ロールがある。タンクの充填レベルを、ロールの円周の45度だけが溶液に浸るように調整した。材料ウェブを適切に誘導し、かつ材料ウェブに沿って分散液が流れるのを防ぐために、ウェブ張力を材料ウェブ幅の0.1N/cm以上にした。材料ウェブを、室温かつ標準圧力で42mm/秒の速度で分散液を通過させる。
【0090】
コーティングの終了後、材料ウェブを換気の良い場所でさらに30分間垂直に吊り下げ、その後、グリッド上にある乾燥キャビネットで120℃で1時間乾燥させ固化させた。
【0091】
乾燥した材料ウェブを再度コーティングするか、または完成した複合体を、各試験または用途のために切断または打ち抜きによりサイズに切断してよい。
【0092】
本発明の複合材料の製造のために、コーティング組成物Iで2回、コーティング組成物IIで2回連続してコーティングを行った。すべての実施例で使用されるコーティング組成物IおよびIIは、同一であっても異なっていてもよい。最も適切なフィードストック(基材、コーティング組成物、粒子配合物、バインダー配合物など)を確認するために、予備実験において、コーティング組成物Iのみで適宜1回または2回以上コーティングを行った。対応する表には、コーティング操作の回数がそれぞれ記載されている。
【0093】
実施例1による実験は、異なる粒子配合物、異なるコーティング組成物IおよびII、異なるバインダー混合物IおよびII、および異なるプロセスパラメータを使用して同様に実施された。表2a~2lは、使用された原料と量、および各実験で使用されたプロセスパラメータを示す。
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
実施例2:複合体の特性評価
実施例で製造された複合体を、以下に記載されるようにして特性評価した。結果を表3にまとめる。
【0107】
最小粗さ(Rdq min)、最大粗さ(Rdq max)およびSDQを上記で詳細に説明したようにして測定した。
【0108】
複合体A~D:
すべてのサンプルに、小さい粗さ(Rdq min)を示す個々の領域がある。しかし、撮影された画像から、モノフィラメント織りが構造に関連する理由で一定の間隔で高さと深さを有すると推測することができた。したがって、この材料については今後の評価から除外する。
【0109】
滑らかさが最大である表面を実現するには、最初のセラミック層がすでに実質的に非常に均質でなければならない。したがって、「モノフィラメント織り」のような基材材料は、あまり適切ではないと思われる。
【0110】
ガラス繊維織物は非常に適しているが、フィラメント(個々の繊維間の隙間)の含浸が不十分であるため、これらはセラミック層にひびが入りやすい傾向がある。
【0111】
「湿式(wet-laid)」不織布および紙は、(繊維の突出がなく)非常に滑らかな構造を特徴とし、したがって支持体として良好な適合性がある。ただし、太い個々の繊維を使用する場合は、繊維が実質的に非常に密集している(近い)ので、繊維間の隙間によく注意を払う必要がある。スパンボンド不織布およびメルトブロー不織布は、「乾式(dry-laid)」ニードルフェルト不織布と同様に、適合性が劣る。したがって、特に適切な基材は、PET不織布および炭素繊維不織布である。
【0112】
さらに、個々のコーティング自体では十分に滑らかな表面が得られないため、多層構造を選択する必要がある。第1層は、特に、繊維の隙間を埋めるのに役立つ。その後、該層をより滑らかにする必要がある。それと同時に目指すのは、小さな粒子を使用することで細孔半径を小さくすることである。
【0113】
複合体E~J:
種々の粒子による二重コーティングは、ct1200SGとMZS1が最適であることを示す。これらの場合、繊維の隙間の充填率が最も高く、その結果、表面が比較的均一になる。粒子が細かくかつ大きいと、繊維の隙間の充填が不十分となる(ct3000SGまたはMZS3)。
【0114】
MZS1とMZS3の混合物も比較的良好な表面品質を提供するが、より大きな平均細孔半径と組み合わされる。100nm未満の大きさの細孔を有する材料が、得られる膜表面として提供されるので、その後のさらなる作業は、特にct1200SGで行われた(ただし、MZS1も同様に適切である)。
【0115】
複合体K~Q:
ct1200SG表面に微細なOx50粒子のさらなる層を適用すると、平均細孔径が小さくなり、表面品質が向上する。シランバインダーの含有量に対する粒子含有量の組成の変化が生じた。
【0116】
バインダー含有量が非常に少ないと、バインダー含有量が多い場合よりも表面が不均一になる。しかし、含有量を2倍に増やすと、Sdq値が低下する。Aerosil OX50/シランバインダーの混合比が50:50(g/g)~65:35(g/g)であることが最適である。
【0117】
複合体R~X:
使用された粒子を比較すると、二酸化ケイ素粒子を含むシランバインダーが非常に良好な滑らかな表面をもたらすことにまず注目すべきである。しかし、粒子構造のせいで、Aerosil 90およびAerosil 200(凝集一次粒子)は、コーティングされる基礎構造の細孔に適合し、かつ最適な粒子(粒径)を有する酸化アルミニウムAlu C. Ox-50のようには適切でない。
【0118】
二酸化チタンP25は、選択した条件下でバインダーシステムで限られた程度でしか安定化できないため、非常に粗い表面を形成する。酸化ジルコニウム(Roth社製)は、Ox50とほぼ同じくらい適切である。Levasilは、非常に小さく、かつ非常に安定したSiO2粒子が有するが、これらは非常に小さいため、基礎構造の細孔に吸収される(ct1200SG)。したがって、このサンプルの表面品質は、コーティングされていないct1200SG表面の表面品質とほとんど差がない。
【0119】
複合体2A~2H:
親水化シラン混合物(TEOSとGLYEOの割合が高い)と疎水化シラン混合物(MTESの割合が高い)の両方が滑らかなコーティングをもたらすことを見出した。架橋TEOS成分の含有量が高く(TEOS含有量>25%)生成されたサンプルのみが、より低い表面品質を示した。
【0120】
結果は、選択した粒子システムに本質的に左右されないように見える。つまり、それぞれの粒子システムの傾向(絶対的な結果ではない)は同じである。
【0121】
表面が非常に親水性であるために水滴が吸収される場合、測定不能な接触角(nm)が表3に表示される。
【0122】
複合体2I~2K:
アミノシランとの混合物の製造は、記載の形態では不可能である。サンプルを調製できるようにするために、シラン混合物を、事前に加水分解することなく、粒子分散液がすでに攪拌され加水分解された容器に導入する必要がある(ワンポット法)。さもなければ、予備加水分解物が固化(ゲル化)する。
【0123】
接着促進成分GLYEOのAMEOへの交換は、原則として可能である。より具体的には、この方法で(および確立された変更されたpHのおかげで)他の粒子システム(例えば、P25)を使用することが容易にできる。
【0124】
種々のアルキルシラン(IBTEO)は、MTESとは対照的に、凝集物を形成する傾向を高める。これにより、表面が非常に不均一になる。
【0125】
【0126】
実施例3:複合体を製造するための連続プロセス
本発明による複合体(Aに類似)を、(例えば、支持アンワインダー、コーティングユニット、乾燥機および張力制御付きワインダーから構成されるMatthisにより製造されるような)対応する製造システムにおける連続コーティングプロセスで製造するために、コーティング組成物BM-I-aを、上記のような攪拌された70Lステンレス鋼容器で125倍大きいバッチサイズで製造した。次に、これを、浸漬コーティング法により、幅約30cm、長さ500m未満のポリエステル不織布支持体(05-TH-60W不織布)上に、材料ウェブ幅1N/cmを超える張力を保持して、コーティングした。その過程で支持体も含浸した。これを、ディップコーターの約50cm下流の空気循環オーブン(長さ5m)に導入し、そこで複合材料を140℃で乾燥させた。材料ウェブ速度は1.5m/分であった。
【0127】
材料ウェブを乾燥させた後、所定の張力で巻き取り、すべてのプロセスパラメータを保持したまま、別のコーティング操作で2回目の処理を行った。結果として得られた複合体K-VK-1(複合体Aに類似)を、表4に規定されたパラメータによって記述する。
【0128】
a)親水性複合体
続いて、この複合体K-VK-1を、同一の機械パラメータで稼働する同一システムで約10倍拡大したスケールで製造されたコーティング組成物BM-II-eで2回コーティングした。結果として連続的に生成された複合体K-VK-2(複合体Rに類似)を、表4に規定されたパラメータによって記述する。
【0129】
b)疎水性複合体
続いて、複合体K-VK-1を、同一の機械パラメータで稼働する同一システムで約10倍拡大したスケールで製造されたコーティング組成物BM-II-xで2回コーティングした。結果として連続的に生成された複合体K-VK-3(複合体2Hに類似)を、表4に規定されたパラメータによって記述する。
【0130】
【0131】
例4:ポリマー層を持つ複合体
a)過フッ素化ポリマーの種々の溶液の生成
コーティング用の種々の溶液を、製造業者から供給された対応するポリマーが適切な量の溶媒と混合されるように生成した。溶解操作を助けるために、すべてのポリマーが溶解するまで、混合物を数時間60℃に加熱した。溶液を一晩冷却し、最後の未溶解成分(不純物)を除去するために、翌日、わずかに高い温度で5μmのペーパーフィルターでろ過した。ろ過の完了後、溶液を数ヶ月間保管または処理してもよい。実施例4aで生成された溶液の組成は、以下の表5から分かる。濃度を、Sartorius社(ドイツ)製のMA 150Q残留物測定器で測定した。値は、120℃で乾燥した後の乾燥残留物[%]に対応する。粘度を、Malvern Instruments Limited社(英国ウスターシャー州)製の回転式粘度計(モデル:Kinexus KNX2112m)を使用して、せん断速度100秒-1、温度25℃で測定した。
【0132】
【0133】
b)ポリマー溶液(PL-9)の生成
ヘキサメチルジシロキサン(90g)の中の成分A(10g)(RTV-615A)を最初に丸底フラスコに入れ、60℃に加熱した。所定の温度に達したら、ヘキサメチルジシロキサン(10g)の中の成分B(1g)(RTV-615B)を添加した。これらの条件下で非常によく混ざる成分を、2時間攪拌した後、放冷し、溶液中のヘキサメチルジシロキサンの含有量が92重量%になるまでヘキサメチルジシロキサンで希釈し、粘度をチェックした。これは、初め13m・Pasであったが、時間とともに変化し、継続的に上昇した。この溶液を処理し、粘度が5~50m・Pasの範囲になったらすぐに複合体をコーティングした。粘度を、Malvern Instruments Limited社(英国ウスターシャー州)製の回転式粘度計(モデル:Kinexus KNX2112m)を使用して、せん断速度100秒-1、温度25℃で測定した。理想的な処理時間のポットライフは、約2時間である。
【0134】
c)ポリマー溶液(PL-10)の生成
溶液Aと溶液Bを1:1の(重量)比で組み合わせることにより、溶液を得た。溶液Aは、99.8重量%のビニルジメチルポリシロキサン/ビニル-QM樹脂混合物VQM906と、0.2重量%の触媒511を含有した。溶液Bは、52.99重量%のビニル官能性ポリジメチルシロキサンVS165.000と、38.99重量%のSiH含有ポリジメチルシロキサン架橋剤120と、8重量%のビニルジメチルポリシロキサン/ビニル-QM樹脂混合物VQM 906と、0.02重量%の禁止剤メチルブチノールを含有した。この混合物を、使用する溶液が85重量%のヘキサメチルジシロキサン含有量と9m・Pasの粘度を有するように、使用直前にヘキサメチルジシロキサンで希釈した。後者を、Malvern Instruments Limited社(英国ウスターシャー州)製の回転粘度計(モデル:Kinexus KNX2112m)を使用して、せん断速度100秒-1、温度25℃で測定した。
【0135】
d)ポリマー溶液(PL-11)の生成
ヘキサメチルジシロキサン(90g)中の成分A(10g)(RTV-615A)を最初に丸底フラスコに入れ、60℃に加熱した。所定の温度に達したら、ヘキサメチルジシロキサン(10g)中の成分B(1g)(RTV-615B)を添加した。これらの条件下で非常によく混ざる成分を、2時間攪拌した後、放冷し、溶液中のヘキサメチルジシロキサンの含有量が95重量%になるまで希釈し、粘度をチェックした。これは、初め6m・Pasであったが、時間とともに変化し、継続的に上昇した。この溶液を処理し、粘度が5~50m・Pasの範囲になったらすぐに複合体をコーティングした。後者を、Malvern Instruments Limited社(英国ウスターシャー州)製の回転粘度計(モデル:Kinexus KNX2112m)を使用して、せん断速度100秒-1、温度25℃で測定した。理想的な処理時間のポットライフは、約2時間である。
【0136】
e)ポリマー溶液(PL-12)の生成
c)のようにして生成された溶液を、ヘキサメチルジシロキサンが92重量%ではなく95重量%になるまで、ヘキサメチルジシロキサンで希釈した。2時間均質化した後、これをコーティングに使用した。
【0137】
f)ポリマー溶液(PL-13)の生成
Evonik Resource Efficiency GmbH社製のRCシリコーンタイプ702(70g)とRCシリコーンタイプ902(30g)の混合物を、Obermeier GmbH社製のイソプロパノール(900g)と激しく攪拌しながら混合し、Evonik Resource Efficiency GmbH社製の光開始剤タイプ18(2g)を添加した。この溶液を2日以内に処理されるか、または暗所でよく密封して保管した。
【0138】
g)ポリマーによる複合体のコーティング
複合体を、乾燥キャビネット内で100℃で少なくとも2時間予備乾燥し、実施例1fですでに説明したようにして浸漬コーティング法でコーティングした。この目的のために、Zehntner社製の自動フィルム延伸装置を改造し、滑車機構を使用して、コーティングされるべきウェブ材料を、規定速度42mm/秒で垂直に上方に引っ張り、浸漬コーティング装置から外す。浸漬コーティング装置では、材料ウェブの片側がロールを介して偏向し、したがってコーティング溶液と接触せず、材料ウェブの他方側が、溶液が充填されたタンクを通って運ばれる。
【0139】
コーティングのために、成分調合済みの混合溶液を、材料ウェブがまたがる回転ロールを有するタンクに導入した。タンクの充填レベルを、ロールの円周の45度だけが溶液に浸るように調整した。材料ウェブを適切に誘導し、かつ材料ウェブに沿って溶液が流れるのを防ぐために、ウェブ張力を材料ウェブ幅の約0.1N/cmにした。材料ウェブを、室温かつ標準圧力で42mm/秒の速度で溶液を通過させた。コーティングが完了した後、材料ウェブを、溶媒が大幅に蒸発するように、装置内でさらに15分間室温で懸濁した。
【0140】
材料ウェブを乾燥キャビネット内で120℃で一晩乾燥させた後、特性評価した。使用した複合体とコーティング溶液の相関関係を表6に示す。
【0141】
種々の複合材料のうちいくつかは、100℃で予備乾燥されるのではなく、コロナで処理された。この目的のために、複合体の前面を上向きにして、非導電性材料であるSojitz社製のPET不織布05-TH-60Wに固定し、コロナ処理システム(Softal社(ハンブルク)製)を1.5m/分の速度で通して搬送した。コロナ処理の出力はさまざまに調整されてよい。実験設定も同様に表6に示す。
【0142】
RCシリコーンを使用した場合、乾燥後、溶媒が除去されるとすぐに、1.5m/分のバス速度でUV光(Eltosch社(ハンブルク)のLAB 200UV実験室UV装置)で硬化させた。
【0143】
すべての複合体について、CO2/CH4のクリーンガス選択性とCO2の流量の測定(上記で規定したとおりに実施)によって特性評価した。
【0144】
【0145】
図1および
図2は、異なる倍率での複合体P-VK-11の断面のSEM画像を示す。
【0146】
複合体P-VK-9~P-VK-13は、比較的高いクリーンガス選択性と二酸化炭素の高流量を兼ね備えているため、ガス分離用の装置に使用することが好ましい。これにより、対応する混合物を分離するためのプラントでの使用が効率的になり、したがって、対応する分離プロセスの経済的実行可能性が向上する。
【0147】
複合体P-VK11~P-VK-13は、さらに、複合体の取り扱いに関し非常に優れた耐性を備えている。これにより、ガス混合物分離装置への導入時に起こり得る複合体の欠損または損傷の可能性が減少する。典型的な欠損または損傷は、ねじれ、または鋭利な物体による処理を原因とするセラミックの破壊である。
【0148】
すべての複合体P-VK-1~13は、柔軟性があり、直径15mmまでのバーまたはチューブの周りに損傷なく巻き付けることができる。複合体P-VK-11~P-VK-13は、損傷なく最小直径5mmまで巻き付けることができる。対応する複合体が損傷を受けないことは、処理の前後でクリーンガス選択性が同じであることを測定することにより、簡単に実証できる。この場合、クリーンガス選択性が2単位低下すると、「複合体の欠損」と評価される。
【0149】
複合体の柔軟性のおかげで、これらは、非常に簡単な方法で、平膜の典型的なモジュール形態で導入可能であり、スパイラル巻きモジュール、プレートおよびフレームモジュール、ポケットモジュール、および平膜用に設計された他の装置での使用に特に適する。
【0150】
複合体P-VK-1~13のセラミック構造により、その厚さおよび多孔性は、圧縮応力下で実質的に変化しない。これは、高い圧縮応力下であっても、複合体全体にとって重要であり、GPUで実質的に一定のフロー性能を発揮し、さらに、圧縮された多孔質構造によって高圧になってもフローが減少しない。
【0151】
これらの特性を測定するために、複合体(P-VK-4)を直径35mmの円形サンプルとして切り出し、油圧プレスで最大52バールの圧力をかけ、同時に厚さを測定した(INSTRON社製の測定機器)。厚さを圧縮圧力の関数としてプロットしたダイアグラムを使用して、圧縮応力と緩和を複数回サイクルした後、弾性成分の厚さの変化を計算できる。これは、この複合体ではわずか6%である。