(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】造形用セメント組成物
(51)【国際特許分類】
C04B 28/04 20060101AFI20231127BHJP
C04B 7/345 20060101ALI20231127BHJP
C04B 14/42 20060101ALI20231127BHJP
C04B 24/06 20060101ALI20231127BHJP
C04B 22/14 20060101ALI20231127BHJP
B28B 1/30 20060101ALI20231127BHJP
B28B 1/29 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
C04B28/04
C04B7/345
C04B14/42 Z
C04B24/06 A
C04B22/14 A
B28B1/30
B28B1/29 Z
(21)【出願番号】P 2019230439
(22)【出願日】2019-12-20
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【氏名又は名称】衡田 直行
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100162145
【氏名又は名称】村地 俊弥
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 真一
(72)【発明者】
【氏名】前堀 伸平
(72)【発明者】
【氏名】丸田 浩
(72)【発明者】
【氏名】小川 洋二
【審査官】大西 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-140906(JP,A)
【文献】特開2020-200215(JP,A)
【文献】特開2011-032107(JP,A)
【文献】特開2007-186372(JP,A)
【文献】原啓史, 森泰一郎, 樋口隆行, 盛岡実,急硬性成分が異なる超速硬セメントを用いたモルタルの基礎性状,Cement Science and Concrete Technology,日本,一般社団法人 セメント協会,2016年03月31日,Vol. 69,p. 154-160
【文献】急硬性セメント混和材 デンカコスミック,デンカ株式会社,2015年06月
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00-32/02
C04B 40/00-40/06
B28B 1/00- 1/54
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポルトランドセメント、超速硬セメント、繊維
、凝結遅延剤
、及び凝結促進剤を含む造形用セメント組成物であって、
上記超速硬セメントが、アウイン(3CaO・3Al
2
O
3
・CaSO
4
)を15質量%以上の割合で含むセメントであり、
上記凝結促進剤が、硫酸ナトリウムであり、
上記ポルトランドセメントと上記超速硬セメントの合計100質量%中の上記超速硬セメントの割合が20~80質量%であり、
上記ポルトランドセメントと上記超速硬セメントの合計100質量部に対して、上記繊維の量が
0.5~4.4質量部であり、上記凝結遅延剤の量が
0.5~1.8質量部
であり、上記凝結促進剤の量が0.8~2.5質量部であることを特徴とする造形用セメント組成物。
【請求項2】
細骨材を含む請求項
1に記載の造形用セメント組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の造形用セメント組成物と、水の混合物であるモルタルからなる造形物製造用組成物であって、
「JIS R 5201:2015(セメントの物理試験方法)」に記載の方法に準拠して、15回の落下運動を行わずに測定したモルタルフロー値(0打)が120mm未満である、造形物製造用組成物。
【請求項4】
請求項
3に記載の
造形物製造用組成物を用いた、造形物の製造方法であって
、
上記造形物製造用組成物を用いた付加製造技術によって、上記造形物を作製する工程、を含む造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造形用セメント組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、樹脂等の造形用材料を、連続的に積載台(台座)の上に押し出しながら逐次固化させて積層することにより、繊細な形状を造形することができる付加製造装置が普及している。
そして、最近では樹脂のほかに、セメントや石膏等の水硬性材料と付加製造装置を用いて造形物を造形する方法が提案されている。例えば、特許文献1には、セメント質混錬物と付加製造装置を用いて、繊細かつ多様なデザインを有する造形物を製造できる付加製造方法として、(A)造形用セメント組成物と水を混錬してセメント質混錬物を得るための混錬工程と、(B)該セメント質混錬物を押し出して硬化させて造形物を得るための押し出し工程を、少なくとも含む、付加製造方法が記載されている。
【0003】
一方、特許文献2には、埋め込み金具などの拘束によるひび割れを防止する目的で、尿素を配合したセメント組成物を用いたセメント質硬化体の製造方法として、セメント、BET比表面積5~25m2/gの微粉末、細骨材、減水剤及び水に加えて、収縮低減剤及び/又は尿素を含む配合物を成形し、一次養生し、脱型した後、さらに二次養生するセメント質硬化体の製造方法であって、収縮低減剤及び/又は尿素の配合量が、セメント100質量部に対して0.5~3.0質量部であることを特徴とするセメント質硬化体の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-122539号公報
【文献】特開2008-230955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、造形用セメント組成物と水を混合してなる造形物製造用組成物を、調製(混合)直後に適度の流動性を有し、かつ、該流動性を長時間(例えば、2時間)維持しうるものにすることができ、付加製造技術においてノズル等を用いて造形を行う際に、上記造形物製造用組成物の造形直後の形状が崩れず、かつ、上記造形物製造用組成物が速硬性に優れることから、上記造形物製造用組成物を積層しても、造形物の形状(特に、積層された造形物の下部分)が崩れず、更には、寸法安定性に優れた造形物(硬化体)を得ることができる造形用セメント組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポルトランドセメント、超速硬セメント、繊維、及び凝結遅延剤を特定の量で含む造形用セメント組成物によれば、上記目的を達成でできることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[4]を提供するものである。
[1] ポルトランドセメント、超速硬セメント、繊維、及び凝結遅延剤を含む造形用セメント組成物であって、上記ポルトランドセメントと上記超速硬セメントの合計100質量%中の上記超速硬セメントの割合が20~80質量%であり、上記ポルトランドセメントと上記超速硬セメントの合計100質量部に対して、上記繊維の量が0.3~4.8質量部であり、上記凝結遅延剤の量が0.1~5質量部であることを特徴とする造形用セメント組成物。
[2] 凝結促進剤を含み、かつ、上記ポルトランドセメントと上記超速硬セメントの合計100質量部に対して、上記凝結促進剤の量が5質量部以下である前記[1]に記載の造形用セメント組成物。
[3] 細骨材を含む前記[1]又は[2]に記載の造形用セメント組成物。
[4] 前記[1]~[3]のいずれかに記載の造形用セメント組成物を用いた、造形物の製造方法であって、上記造形用セメント組成物を構成する各材料、及び、水を混合して、造形物製造用組成物を調製する工程、及び、上記造形物製造用組成物を用いた付加製造技術によって、上記造形物を作製する工程、を含む造形物の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の造形用セメント組成物によれば、該造形用セメント組成物と水を混合してなる造形物製造用組成物を、調製(混合)直後に適度の流動性を有し、かつ、流動性を長時間(例えば、2時間)維持しうるものにすることができる。
また、付加製造技術においてノズル等を用いて造形を行う際に、上記造形物製造用組成物が適度な流動性を有する(すなわち、過剰な流動性を有さない)ため、造形直後の上記造形物製造用組成物の形状が崩れず、かつ、上記造形物製造用組成物が速硬性に優れるため、上記造形物製造用組成物を積層しても、造形物の形状(特に、積層された造形物の下部分)が崩れず、更には、寸法安定性に優れた造形物(硬化体)を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の造形用セメント組成物は、ポルトランドセメント、超速硬セメント、繊維、及び凝結遅延剤を含む造形用セメント組成物であって、ポルトランドセメントと超速硬セメントの合計100質量%中の超速硬セメントの割合が20~80質量%であり、ポルトランドセメントと超速硬セメントの合計100質量部に対して、繊維の量が0.3~4.8質量部であり、凝結遅延剤の量が0.1~5質量部であるものである。
ポルトランドセメントの例としては、白色ポルトランドセメント、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントを挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、着色を自由に行うことができ、意匠性に優れる観点から、白色ポルトランドセメントが好ましい。
【0009】
超速硬セメントの例としては、C12A7(12CaO・7Al2O3)、C3A(3CaO・Al2O3)、C11A7・CaF2(11CaO・7Al2O3・CaF2)、NC8A3(Na2O・8CaO・3Al2O3)、アウイン(3CaO・3Al2O3・CaSO4)、CA(CaO・Al2O3)、CA2(CaO・2Al2O3)から選ばれる1種以上の鉱物を15質量%以上含むセメントが挙げられる。
中でも、速硬性に優れ、凝結遅延剤による可使時間のコントロールが容易である観点から、アウイン(3CaO・3Al2O3・CaSO4)を15質量%以上含むセメントが好適である。
アウイン(3CaO・3Al2O3・CaSO4)を15~35質量%含むセメントの市販品としては、太平洋セメント社製の商品名「スーパージェットセメント」が挙げられる。
【0010】
ポルトランドセメントと超速硬セメントの合計100質量%中の超速硬セメントの割合は、20~80質量%、好ましくは25~75質量%、より好ましくは28~72質量%である。上記割合が20質量%未満であると、調製直後の流動性が過剰になる。上記割合が80質量%を超えると、造形物の寸法安定性が低下する。
【0011】
本発明の造形用セメント組成物は、ポルトランドセメント及び超速硬セメント以外のセメントを、本発明の目的を阻害しない範囲内で含んでいてもよい。
他のセメントの例としては、高炉セメント、フライアッシュセメント等の混合セメントや、エコセメント等が挙げられる。
造形用セメント組成物中の他のセメントの含有率は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。
【0012】
繊維の例としては、ガラス繊維、金属繊維、有機繊維、炭素繊維等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、経済性とセメントの親和性の観点から、ガラス繊維が好適である。
繊維の形状および寸法は、好ましくは、長さが0.1mm以上、長さ/直径の比が20以上であり、より好ましくは、長さが0.1~30mm、長さ/直径の比が20~1,000であり、さらに好ましくは、長さが1~10mmで、長さ/直径の比が50~500であり、さらに好ましくは、長さが2~5mm、長さ/直径の比が100~400である。
繊維の長さが0.1mm以上であれば、強度(例えば、曲げ強度や破壊強度)の向上効果がより大きくなる。該長さが30mm以下であれば、混練の際にファイバーボールがより生じにくくなる。
また、繊維の長さ/直径の比が20以上であれば、同一配合量(同一体積)での繊維の本数が多くなり、強度(例えば、曲げ強度や破壊強度)の向上効果がより大きくなる。また、該比が1,000以下であると、繊維自身の強度が十分となり、張力を受けた際により切れにくくなる。
【0013】
ポルトランドセメントと超速硬セメントの合計(以下、「セメント合計」ともいう。)100質量部に対する繊維の量は、0.3~4.8質量部、好ましくは0.4~4.6質量部、より好ましくは0.5~4.4質量部である。上記量が0.3質量部未満であると、造形物の曲げ強度や破壊エネルギーが低下する。上記量が4.8質量部を超えると、混練直後の流動性が低下する。また、混練時の作業性等を確保するために単位水量が増加し、造成物の強度の低下を招くことがある。
【0014】
ガラス繊維の例としては、耐アルカリ性のガラス繊維等が挙げられる。耐アルカリ性のガラス繊維は、セメントとの親和性や経済性の観点から好適である。
耐アルカリ性のガラス繊維の例としては、酸化ジルコニウム(ZrO2)を14質量%以上含有するものが挙げられる。
ガラス繊維の形状および寸法は、好ましくは、長さが2mm以上で、長さ/直径の比が20以上であり、より好ましくは、長さが2~30mmで、長さ/直径の比が20~200である。ガラス繊維の長さが2mm以上であれば、曲げ強度の向上効果がより大きくなる。該長さが30mm以下であれば、混練の際にファイバーボールがより生じにくくなる。
また、ガラス繊維の長さ/直径の比が20以上であれば、同一配合量(同一体積)でのガラス繊維の本数が多くなり、曲げ強度の向上効果がより大きくなる。また、該比が200以下であると、ガラス繊維自身の強度が十分となり、張力を受けた際により切れにくくなる。
【0015】
金属繊維の例としては、鋼繊維およびアモルファス繊維等が挙げられる。これらの中でも、鋼繊維は、高い強度を有し、かつコストや入手のし易さの点でも優れているため好適である。
金属繊維の寸法、長さ/直径の比および配合量は、ガラス繊維と同様である。
【0016】
有機質繊維の例としては、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、アラミド繊維、および炭素繊維からなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。これらの中でも、ビニロン繊維およびポリプロピレン繊維は、高い強度を有し、かつコストが低く入手のし易さの点でも優れているため好適である。
有機質繊維の形状および寸法は、好ましくは、長さが2mm以上で、長さ/直径の比が20以上であり、より好ましくは、長さが2~30mmで、長さ/直径の比が20~500である。有機質繊維の長さが2mm以上であれば、破壊強度の向上効果がより大きくなる。該長さが30mm以下であれば、混練の際にファイバーボールがより生じにくくなる。
また、有機質繊維の長さ/直径の比が20以上であれば、同一配合量(同一体積)での有機質繊維の本数が多くなり、破壊強度の向上効果がより大きくなる。また、該比が500以下であると、有機質繊維自身の強度が十分となり、張力を受けた際により切れにくくなる。
【0017】
また、炭素繊維の例としては、PAN系炭素繊維やピッチ系炭素繊維が挙げられる。また、炭素繊維の寸法、アスペクト比および配合量は、有機繊維と同様である。
【0018】
凝結遅延剤の例としては、クエン酸及びその塩、ヘプトン酸及びその塩、コハク酸及びその塩、酒石酸及びその塩、グルコン酸及びその塩、リンゴ酸及びその塩等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、造形物製造用組成物の流動性をより長時間保持することができる観点から、クエン酸が好ましい。
セメント合計100質量部に対する凝結遅延剤の量は、0.1~5質量部、好ましくは0.5~3質量部、より好ましくは0.8~2質量部、特に好ましくは1.0~1.8質量部である。該量が0.1質量部未満であると、造形物製造用組成物の流動性を長時間(例えば、2時間)保持することができず、可使時間が短くなる。該量が5質量部を超えると、造形物製造用組成物の凝結が終結するまでの時間が過度に長くなる。
【0019】
本発明の造形用セメント組成物は、凝結促進剤を含んでもよい。
凝結促進剤の例としては、硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、乳酸カルシウム、炭酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アルミニウム、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、亜硝酸カリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、入手の容易性等の観点から、硫酸ナトリウムが好ましい。
セメント合計100質量部に対する凝結促進剤の量は、好ましくは5質量部以下、より好ましくは0.1~4質量部、さらに好ましくは0.5~3質量部、特に好ましくは0.8~2.5質量部である。造形用セメント組成物が凝結促進剤を5質量部以下の量で含むことで、造形物製造用組成物の凝結が開始するまでの時間を短くすることができ、作業性を向上することができる。
【0020】
本発明の造形用セメント組成物は、発熱量を下げる観点から細骨材を含むことが好ましい。
細骨材の例としては、石灰石粉末、川砂、山砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂、スラグ細骨材、及び軽量細骨材等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、着色を自由に行うことができ、意匠性に優れる観点から、石灰石粉末を使用することが好ましい。
セメント合計100質量部に対する細骨材の量は、好ましくは100~700質量部、より好ましくは120~500質量部、特に好ましくは150~400質量部である。
【0021】
本発明の造形用セメント組成物は、必要に応じて他の材料を含んでもよい。必要に応じて含まれる他の材料としては、粗骨材や、AE剤、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、及び高性能AE減水剤等の各種混和剤や、フライアッシュ、シリカフューム、高炉スラグ微粉末等の各種混和材等が挙げられる。
なお、本発明において、造形用セメント組成物とは、ペースト、モルタルまたはコンクリートを調製するための水は含まれないものとする。
【0022】
上述した造形用セメント組成物を用いた造形物の製造方法の一例としては、造形用セメント組成物を構成する各材料、及び、水を混合して、造形物製造用組成物を調製する工程、及び、上記造形物製造用組成物を用いた付加製造技術によって、造形物を作製する工程を含む造形物の製造方法等が挙げられる。
水としては、特に限定されず、水道水、スラッジ水等を使用することができる。
水と造形用セメント組成物の質量比(水/造形用セメント組成物)は、好ましくは0.10~0.60、より好ましくは0.11~0.40、特に好ましくは0.12~0.30である。該比が0.10以上であれば、付加製造技術によって造形物を作製するのに必要な流動性を確保することができる。該比が0.60以下であれば、造形物の強度をより向上することができる。
【0023】
各材料を混合する手段としては、特に限定されるものではなく、モルタルやコンクリートの練り混ぜにおいて一般的に使用されるミキサを使用することができる。
具体的には、縦型ミキサ、横型ミキサ、ナウターミキサ、傾胴ミキサ、強制ミキサ、二軸ミキサ等が挙げられる。縦型ミキサとしては、例えば、ホバート社製の「ホバートミキサ」、ヘンシェル社製の「ヘンシェルミキサ」等が挙げられる。横型ミキサとしては、例えば、レディゲ社製の「レディゲミキサ」等が挙げられる。
付加製造技術によって造形物を作製する方法の例としては、造形物製造用組成物を、ノ
ズル等から押し出して堆積させる方法等が挙げられる。造形物の作成手段としては、市販されている付加製造装置(3Dプリンタ)を用いることができる。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[使用材料]
(1)ポルトランドセメント;白色ポルトランドセメント、太平洋セメント社製
(2)超速硬セメント;アウイン(3CaO・3Al2O3・CaSO4)の含有率;15~35質量%、太平洋セメント社製、商品名「スーパージェットセメント」
(3)繊維;耐アルカリガラス繊維、長さ:3mm、直径:13.5μm、長さ/直径:222、日本電気硝子社製
(4)細骨材;石灰石砂、最大粒径0.3mm
(5)減水剤;粉末状のポリカルボン酸系減水剤、太平洋マテリアル社製、商品名:NF-200
(6)凝結促進剤;硫酸ナトリウム、試薬
(7)凝結遅延剤;クエン酸、試薬
(8)水;上水道水
【0025】
[実施例1~5、比較例1~2]
表1に示す配合量の上記各材料を、ホバートミキサに投入して、2分間混合して、造形物製造用組成物を調製した。
得られた造形物製造用組成物について、以下の方法に従って、モルタルフロー値、終結時間、長さ変化率を得た。結果を表1に示す。
【0026】
[モルタルフロー値]
調製直後の造形物製造用組成物(造形用セメント組成物と水を混合してなるモルタル)のモルタルフロー値(0打)を、「JIS R 5201:2015(セメントの物理試験方法)」に記載の方法に準拠して、15回の落下運動を行わずに測定した。上記モルタルフロー値(0打)が120mm未満のものは、調製直後の流動性が適切であるとして「〇」と評価し、上記モルタルフロー値(0打)が120mm以上のものは「×」と評価した。
また、調製直後から、30分間経過毎に低速で10秒間の攪拌を行いながら、120分間経過後、造形物製造用組成物のモルタルフロー値(15打)を、「JIS R 5201:2015(セメントの物理試験方法)」に準拠して、15回の落下運動を行って測定した。上記モルタルフロー値(15打)が120mm以上のものは、造形物製造用組成物の流動性を長時間保持することができ、可使時間が長いものであるとして「〇」と評価し、上記モルタルフロー値(15打)が120mm未満のものは「×」と評価した。
【0027】
[終結時間]
「JIS A 1147:2007(コンクリートの凝結時間試験方法)」に記載の方法に準拠して、造形用製造用組成物の凝結の終結時間を測定した。上記終結時間が4時間未満であるものは、速硬性に優れるものであるとして「〇」と評価し、上記終結時間が4時間以上である物は「×」と評価した。
[長さ変化率]
「JIS A 1129-3:2010(モルタル及びコンクリートの長さ変化測定方法-第3部:ダイヤルゲージ方法)」に記載の方法に準拠して、造形用製造用組成物の長さ変化率を測定した。該長さ変化率は、成形後24時間後に脱型した供試体の基長を測定し、次いで、該供試体を20℃の水中において保管した後、材齢28日における供試体の長さを測定し、これらの測定値を用いて算出した。
上記長さ変化率が1,000×10-6未満であるものは、寸法安定性に優れるものとして「〇」と評価し、上記長さ変化率が1,000×10-6以上であるものは「×」と評価した。
【0028】
【0029】
表1から、本発明の造形用セメント組成物を用いた造形物製造用組成物(実施例1~5について、調製直後のモルタルフロー値(0打)が105~117mmであり、調整後120分間経過後のモルタルフロー(15打)が141~169mmであることから、実施例1~5の造形物製造用組成物は、調製直後に適度な流動性を有し、かつ、該流動性を2時間維持できることがわかる。
また、本発明の造形用セメント組成物を用いた造形物製造用組成物(実施例1~5)の終結時間が、2時間25分~3時間20分であることから、実施例1~5の造形物製造用組成物は、速硬性に優れたものであることがわかる。
さらに、本発明の造形用セメント組成物を用いた造形物製造用組成物(実施例1~5)の長さ変化率が、705~891×10-6であることから、実施例1~5の造形物製造用組成物は、寸法安定性に優れたものであることがわかる。
【0030】
また、セメント合計100質量部に対する繊維の量が0.1質量部である比較例1の調製直後のモルタルフロー(0打)が134mmであることから、比較例1の造形物製造用組成物は、調製直後に適度な流動性を有していないことがわかる。
また、セメント合計100質量部に対する繊維の量が5.0質量部である比較例2の調製後120分間経過後のモルタルフロー(15打)は、流動性が全くなく測定不可であったことから、比較例2の造形物製造用組成物は、適度な流動性を2時間維持できないことがわかる。