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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】ベンゾトリアゾール化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 249/20 20060101AFI20231127BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20231127BHJP
   C08F 20/38 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
C07D249/20 504
C07D249/20 CSP
C09K3/00 104C
C08F20/38
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019550335
(86)(22)【出願日】2018-10-26
(86)【国際出願番号】 JP2018039952
(87)【国際公開番号】W WO2019087983
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-08-23
(31)【優先権主張番号】P 2017210517
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018127835
(32)【優先日】2018-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000114318
【氏名又は名称】ミヨシ油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 信裕
(72)【発明者】
【氏名】金子 恒太郎
(72)【発明者】
【氏名】河合 功治
【審査官】伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2003/029227(WO,A1)
【文献】特表平06-505743(JP,A)
【文献】特開2003-168243(JP,A)
【文献】特開2002-172865(JP,A)
【文献】米国特許第03629192(US,A)
【文献】米国特許第03629191(US,A)
【文献】特開昭63-055542(JP,A)
【文献】特表2012-532196(JP,A)
【文献】国際公開第2016/021664(WO,A1)
【文献】SAPOZHNIKOV, O. Y. et al.,Russian Chemical Bulletin, International Edition,2004年,Vol. 53, No. 3,pp. 588-595,Scheme 8 compound 14(b)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C09K
C08F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
【化1】
(式中、 6 ~R 9 のうちいずれかは、下記式(i-1):
【化2】
(式(i-1)中12は下記式(i-2):
【化3】
(式中、R12a、R12b、及びR12cはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~18の1価の炭化水素基を示し、A1カルボニル基、エステル基、カルバメート基、ウレタン基、アミド基、尿素基、イミド基、カルボジイミド基、及びフェニレン基から選ばれる2価の基を示し、Xは、-X1-、-X2-、-X 1 -O-X 2 -、-X 2 -O-X 1 -、及び-X 2 -O-X 2 から選ばれる2価の基を示す(X1 は炭素数1~20の2価の炭化水素基を示し、X2は2価の芳香族基を示す。)。)で表される1価の基を示す。)で表わされる1価の硫黄含有基であり、R 6 ~R 9 のうちそれ以外は水素原子を示す。R 1 ~R 5 は、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、及びヒドロキシ基から選ばれる1価の基である。)で表わされるベンゾトリアゾール化合物。
【請求項2】
式(i-2)におけるXは、アルキレン基-(CH2n-(nは1以上の整数を示す。)である請求項1に記載のベンゾトリアゾール化合物。
【請求項3】
式(i-2)におけるX2は、フェニレン基である請求項1に記載のベンゾトリアゾール化合物。
【請求項4】
式(i-2)におけるXは、-X 2 -O-X 1 であり、X1はアルキレン基-(CH2n-(nは1以上の整数を示す。)であり、X2はフェニレン基である請求項1に記載のベンゾトリアゾール化合物。
【請求項5】
式(i-2)におけるA1はエステル基である請求項1~4のいずれか一項に記載のベンゾトリアゾール化合物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のベンゾトリアゾール化合物を原料モノマーとして含む重合体。
【請求項7】
下記式(I):
【化4】
(式中、 6 ~R 9 のうちいずれかは、下記式(i-1):
【化5】
(式(i-1)中12は下記式(i-3):
【化6】
(式中、A2カルボニル基、エステル基、カルバメート基、ウレタン基、アミド基、尿素基、イミド基、及びカルボジイミド基から選ばれる2価の基を示し、 a は、炭素数1~20の2価の炭化水素基、又は2価の芳香族基を示し、X b は、炭素数1~20の1価の炭化水素基、又は1価の芳香族基を示す。)で表わされる1価の硫黄含有基であり、R 6 ~R 9 のうちそれ以外は水素原子を示す。R 1 ~R 5 は、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、及びヒドロキシ基から選ばれる1価の基であり、ヒドロキシ基をR 1 ~R 5 のいずれかに1つ以下有する。)で表わされるベンゾトリアゾール化合物。
【請求項8】
式(i-3)におけるXaは、アルキレン基-(CH2n-(nは1以上の整数を示す。)又は置換及び中断されない2価の芳香族基である請求項7に記載のベンゾトリアゾール化合物。
【請求項9】
式(i-3)におけるXaは、2価の芳香族基である請求項7に記載のベンゾトリアゾール化合物。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか一項に記載のベンゾトリアゾール化合物を添加した、有機材料又は無機材料用組成物。
【請求項11】
請求項1~5、7~9のいずれか一項に記載のベンゾトリアゾール化合物からなる紫外線吸収剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線吸収作用を持つベンゾトリアゾール化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂部材は紫外線の作用により劣化し、変色や機械的強度の低下等の品質劣化を引き起こして長期の使用を阻害する。このような品質劣化を防止したり、あるいは透過光の波長を制御したりするために、樹脂部材に紫外線吸収剤を配合することが一般に行われている。
【0003】
従来、有機系の紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、シアノアクリレート系、サリシレート系等の紫外線吸収剤が知られている。ベンゾトリアゾール化合物等の従来における有機系の紫外線吸収剤は、添加した紫外線吸収剤の樹脂からのブリードアウト、樹脂、モノマーとの相溶性が低いと高濃度での添加が困難なこと等が課題とされている。特許文献1~5には、2-フェニルベンゾトリアゾール骨格に、アルキレン基やあるいは基端にエーテル酸素を導入したアルキレン基を介して、モノマーや樹脂との反応性を持つアクリロイルオキシ基を導入した化合物が開示されている。この化合物は、モノマーや樹脂との反応性を持つため、ブリードアウトを抑制し得る。しかし、モノマーや樹脂への溶解性、高分子量化を可能とする反応性、樹脂部材の透明性を全体的に満足するためには更に改良の余地があった。また、360~400nm付近の有害な長波長の紫外線吸収効率は低いものであり、これを補うために添加量を増量すると400nm以上の波長光を吸収し、黄色化を生じる問題があった。
【0004】
本発明者らは、特に、380~400nmまでの有害光を効率よく十分に吸収し、かつ初期の黄色化の要因となる400nm以上の波長光の吸収を抑制する紫外線吸収剤として、硫黄含有基を有する2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体を提案した(特許文献6、7)。この紫外線吸収剤は、その光学的特性から、250~400nmまでの波長領域の光を十分に吸収することができ、しかも、紫外線吸収効果(モル吸光係数)が高く、少量の添加で、その波長光を効率よく吸収でき、さらに、350~390nmの吸収ピークの傾きが従来の紫外線吸収剤よりも大きく400nm付近以上の波長光の吸収を抑制し、配合した部材の初期の黄色化を抑制することができる。実施例では2-フェニルベンゾトリアゾール骨格に硫黄原子を介してアリル基を結合した化合物を合成しているが、高分子量化を可能とする反応性、樹脂原料のモノマーへの溶解性にはさらに改良の余地があった。
【0005】
有機系の紫外線吸収剤は、紫外線吸収剤を含む樹脂組成物を加熱して成形、加工する際に紫外線吸収剤が熱分解し、樹脂部材の紫外線吸収能の低下、そして、透明樹脂部材の場合、その透明性を損ない、さらには、成形、加工装置内を汚染させる可能性があり、より耐熱性に優れた有機系の紫外線吸収剤が求められている。特許文献6、7では、2-フェニルベンゾトリアゾール誘導体の硫黄含有基として、脂肪族や芳香族等の炭素と水素からなる炭化水素基が基端の硫黄に結合した硫黄含有基を合成しているが、高い成形加工温度が求められる樹脂に対して使用すると、紫外線吸収剤の分解による紫外線吸収能の低下、透明樹脂部材における透明性の損失や、加工する際に装置を汚染する懸念があった。そのため、より高い成形加工温度が求められる樹脂に対しても適用が可能となるような、耐熱性に優れた紫外線吸収剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-25811号公報
【文献】特開2000-119569号公報
【文献】特開2001-234072号公報
【文献】特開2002-226521号公報
【文献】特開2002-226522号公報
【文献】国際公開第2016/021664号
【文献】国際公開第2016/174788号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、360~400nmの長波長の紫外線を効率よく吸収し、樹脂原料のモノマーへの溶解性が良く高濃度での溶解が可能で、かつ良好な反応性で重合し、高分子量の樹脂部材、さらには透明の樹脂部材が得られるベンゾトリアゾール化合物とそれを原料モノマーとして含む重合体を提供することを課題としている。
【0008】
また本発明は、360~400nmの長波長の紫外線を効率よく吸収し、耐熱性に優れたベンゾトリアゾール化合物を提供することも課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するものとして、本発明のベンゾトリアゾール化合物は、下記式(I)で表される。
【0010】
【化1】
【0011】
式中、R1~R9はそれぞれ独立に、下記式(i-1)で表わされる1価の硫黄含有基、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、芳香族基、不飽和基、窒素含有基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、及びハロゲン原子から選ばれる1価の基を示す。R1~R9のうち少なくとも1つは式(i-1)で表わされる1価の硫黄含有基である。
【0012】
【化2】
【0013】
式(i-1)中、R10は芳香族基、不飽和基、窒素含有基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、及びハロゲン原子から選ばれる1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、両端の少なくともいずれかが中断されるか、又は炭素-炭素結合が中断されていてもよい炭素数1~20の2価の炭化水素基を示し、R11はmが2以上の場合はそれぞれ独立に芳香族基、不飽和基、窒素含有基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、及びハロゲン原子から選ばれる1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、両端の少なくともいずれかが中断されるか、又は炭素-炭素結合が中断されていてもよい炭素数1~20の2価の炭化水素基を示す。lは0又は1の整数を示し、mは0~3の整数を示す。
<1> 本発明における第1の態様では、R12は下記式(i-2)で表される1価の基を示す。
【0014】
【化3】
【0015】
式中、R12a、R12b、及びR12cはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~18の1価の炭化水素基を示し、A1は窒素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、リン含有基、及びフェニレン基から選ばれる2価の基を示し、Xは、-X1-、-X2-、-X1-(Y)p-X2-、-X2-(Y)p-X1-、及び-X2-(Y)p-X2-から選ばれる2価の基を示す(X1は芳香族基、不飽和基、窒素含有基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、及びハロゲン原子から選ばれる1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、両端の少なくともいずれかが中断されるか、又は炭素-炭素結合が中断されていてもよい炭素数1~20の2価の炭化水素基を示し、X2は2価の芳香族基を示し、Yはヘテロ原子を示し、pは0又は1の整数を示す)。
<2> 本発明における第2の態様では、R12は下記式(i-3)で表される1価の基を示す。
【0016】
【化4】
【0017】
(式中、A2は窒素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、及びリン含有基から選ばれるいずれかの2価の基を示し、Xaは、-Xa1-、-Xa2-、-Xa1-(Yaq-Xa2-、-Xa2-(Yaq-Xa1-、及び-Xa2-(Yaq-Xa2-から選ばれる2価の基を示し(Xa1は芳香族基、不飽和基、窒素含有基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、及びハロゲン原子から選ばれる1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、両端の少なくともいずれかが中断されるか、又は炭素-炭素結合が中断されていてもよい炭素数1~20の2価の炭化水素基を示し、Xa2は2価の芳香族基を示し、Yaはヘテロ原子を示し、qは0又は1の整数を示す。)、Xbは、-Xb1、-Xb2、-Xa1-(Ybr-Xb2、-Xa2-(Ybr-Xb1、及び-Xa2-(Ybr-Xb2から選ばれる1価の基を示す(Xb1は芳香族基、不飽和基、窒素含有基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、及びハロゲン原子から選ばれる1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、基端が中断されるか、又は炭素-炭素結合が中断されていてもよい炭素数1~20の1価の炭化水素基を示し、Xb2は1価の芳香族基を示し、Ybはヘテロ原子を示し、rは0又は1の整数を示す。Xa1とXa2は前記と同義であるがXaのものとは各々独立である。)で表される1価の基を示す。
【発明の効果】
【0018】
上記第1の態様に係る本発明のベンゾトリアゾール化合物は、樹脂原料のモノマーへの溶解性が良く高濃度での溶解が可能で、かつ良好な反応性で重合し、高分子量の樹脂部材、さらには透明の樹脂部材が得られる。また、硫黄含有基にR12のA1として窒素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、リン含有基、フェニレン基を導入することで耐熱性が向上する。
【0019】
上記第2の態様に係る本発明のベンゾトリアゾール化合物は、硫黄含有基にR12のA2として窒素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、リン含有基を導入することで耐熱性が向上し、その熱分解が抑制され、紫外線吸収能や外観の低下を抑制できる。特に加熱成形や加工をする過程で熱分解されにくいため、より高い成形加工温度が求められる樹脂に対しても紫外線吸収剤としての適用が可能となる。
【0020】
また、上記第1及び第2の態様に係る本発明のベンゾトリアゾール化合物は、2-フェニルベンゾトリアゾール骨格に硫黄を導入した構造によって、その光学的特性から、250~400nmまでの波長領域の光を十分に吸収することができ、しかも、紫外線吸収効果(モル吸光係数)が高く、少量の添加で、その波長光を効率よく吸収できる。さらに、350~390nmの吸収ピークの傾きが従来の紫外線吸収剤よりも大きく400nm付近以上の波長光の吸収を抑制し、配合した部材の初期の黄色化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施例である化合物1の紫外-可視吸収スペクトル(UVチャート)である。
図2】本発明の実施例である化合物2の紫外-可視吸収スペクトル(UVチャート)である。
図3】本発明の実施例である化合物3の紫外-可視吸収スペクトル(UVチャート)である。
図4】本発明の実施例である化合物4の紫外-可視吸収スペクトル(UVチャート)である。
図5】本発明の実施例である化合物5の紫外-可視吸収スペクトル(UVチャート)である。
図6】本発明の実施例である化合物6の紫外-可視吸収スペクトル(UVチャート)である。
図7】本発明の実施例である化合物7の紫外-可視吸収スペクトル(UVチャート)である。
図8】本発明の実施例である化合物8の紫外-可視吸収スペクトル(UVチャート)である。
図9】本発明の実施例である化合物9の紫外-可視吸収スペクトル(UVチャート)である。
図10】比較例である化合物10の紫外-可視吸収スペクトル(UVチャート)である。
図11】比較例である化合物11の紫外-可視吸収スペクトル(UVチャート)である。
図12】比較例である化合物12の紫外-可視吸収スペクトル(UVチャート)である。
図13】本発明の化合物1と化合物4、比較例である化合物11と化合物12を用いた共重合体フィルムの紫外-可視吸収スペクトル(UVチャート)である。
図14】本発明の実施例である化合物13の紫外-可視吸収スペクトル(UVチャート)である。
図15】本発明の実施例である化合物14の紫外-可視吸収スペクトル(UVチャート)である。
図16】本発明の実施例である化合物15の紫外-可視吸収スペクトル(UVチャート)である。
図17】本発明の実施例である化合物16の紫外-可視吸収スペクトル(UVチャート)である。
図18】本発明の実施例である化合物17の紫外-可視吸収スペクトル(UVチャート)である。
図19】本発明の実施例である化合物18の紫外-可視吸収スペクトル(UVチャート)である。
図20】本発明の実施例である化合物19の紫外-可視吸収スペクトル(UVチャート)である。
図21】本発明の実施例である化合物20の紫外-可視吸収スペクトル(UVチャート)である。
図22】本発明の実施例である化合物21の紫外-可視吸収スペクトル(UVチャート)である。
図23】本発明の実施例である化合物22の紫外-可視吸収スペクトル(UVチャート)である。
図24】本発明の実施例である化合物23の紫外-可視吸収スペクトル(UVチャート)である。
図25】本発明の実施例である化合物24の紫外-可視吸収スペクトル(UVチャート)である。
図26】本発明の実施例である化合物25の紫外-可視吸収スペクトル(UVチャート)である。
図27】本発明の実施例である化合物26の紫外-可視吸収スペクトル(UVチャート)である。
図28】本発明の実施例である化合物27の紫外-可視吸収スペクトル(UVチャート)である。
図29】本発明の実施例である化合物28の紫外-可視吸収スペクトル(UVチャート)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明を詳細に説明する。
(式(I)で表わされるベンゾトリアゾール化合物)
[置換基等]
本発明において、「芳香族基、不飽和基、窒素含有基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、及びハロゲン原子から選ばれる1価もしくは2価の基」には、耐熱性、屈折率、融点、耐光性、樹脂に対する相溶性等を調整できる基が含まれ、例えば、次のものが挙げられる。
【0023】
芳香族基は、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等の芳香環を含み、炭素数が好ましくは6~18、より好ましくは6~14である。1価の芳香族基としては、例えば、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2,5-ジメチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2,4,5-トリメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、4-ビフェニル基、2-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、2-エトキシフェニル基、3-エトキシフェニル基、4-エトキシフェニル基、2-クロロフェニル基、2-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基、2-トリフルオロメチルフェニル基、4-トリフルオロメチルフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントラセニル基、2-アントラセニル基、9-アントラセニル基等が挙げられる。2価の芳香族基としては、例えば、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,2-フェニレン基、1,8-ナフチレン基、2,7-ナフチレン基、2,6-ナフチレン基、1,4-ナフチレン基、1,3-ナフチレン基、9,10-アントラセニレン基、1,8-アントラセニレン基、2,7-アントラセニレン基、2,6-アントラセニレン基、1,4-アントラセニレン基、1,3-アントラセニレン基等が挙げられる。
【0024】
不飽和基は、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、炭素-酸素二重結合(カルボニル基、アルデヒド基、エステル基、カルボキシ基、カルバメート基、尿素基、アミド基、イミド基、カルバモイル基、ウレタン基等)、炭素-窒素二重結合(イソシアネート基等)、炭素-窒素三重結合(シアノ基、シアナト基等)等の炭素-炭素又は炭素-ヘテロ原子の不飽和結合を含み、炭素数が好ましくは1~10、より好ましくは1~8である。不飽和基としては、例えば、アクリロイル基、メタクロイル基、マレイン酸モノエステル基、スチリル基、アリル基、ビニル基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、アルデヒド基、エステル基、カルボキシ基、カルバメート基、尿素基、アミド基、イミド基、カルバモイル基、シアノ基、シアナト基、イソシアネート基、ウレタン基等が挙げられる。
【0025】
窒素含有基は、シアノ基、ニトロ基又は1~3級アミノ基を含み、炭素数が好ましくは0~10である。窒素含有基としては、例えば、シアノ基、シアナト基、イソシアネート基、ニトロ基、ニトロアルキル基、アミド基、尿素基、ウレタン基、イミド基、カルボジイミド基、アゾ基、ピリジン基、イミダゾール基、アミノ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、アミノアルキル基、3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミジルメチル基、2-[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル-)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール-イル]-メチル基等が挙げられる。
【0026】
硫黄含有基は、チオール基、チオエーテル基、スルフィド基、ジスルフィド基、チオエステル基、チオアミド基、スルホニル基、スルホ基、チオカルボニル基、又はチオ尿素基を含み、炭素数が好ましくは0~10である。硫黄含有基としては、例えば、チオメトキシ基、チオエトキシ基、チオ-n-プロポキシ基、チオイソプロポキシ基、チオ-n-ブトキシ基、チオ-t-ブトキシ基、チオフェノキシ基、p-メチルチオフェノキシ基、p-メトキシチオフェノキシ基、チオフェン基、チアゾール基、チオール基、スルホ基、スルフィド基、ジスルフィド基、チオエステル基、チオアミド基、スルホニル基、チオカルボニル基、チオ尿素基、チオカルバメート基、ジチオカルバメート基等が挙げられる。
【0027】
酸素含有基は、芳香環基又は脂環式基を含む場合には炭素数が好ましくは6~12、芳香環基又は脂環式基を含まない場合には炭素数が好ましくは0~18である。酸素含有基としては、例えば、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、ナフトキシ基、フェニルメトキシ基、フェニルエトキシ基、アセトキシ基、アセチル基、アルデヒド基、カルボキシ基、エーテル基、カルボニル基、エステル基、オキサゾール基、モルホリン基、カルバメート基、カルバモイル基、ポリオキシエチレン基等が挙げられる。
【0028】
リン含有基は、ホスフィン基、ホスファイト基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、リン酸基、又はリン酸エステル基を含み、芳香環基又は脂環式基を含む場合には炭素数が好ましくは6~22、芳香環基又は脂環式基を含まない場合には炭素数が好ましくは0~6である。リン含有基としては、例えば、トリメチルホスフィン基、トリブチルホスフィン基、トリシクロヘキシルホスフィン基、トリフェニルホスフィン基、トリトリルホスフィン基、メチルホスファイト基、エチルホスファイト基、フェニルホスファイト基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、リン酸基、リン酸エステル基等が挙げられる。
【0029】
脂環式基は、炭素数が好ましくは3~10、より好ましくは3~8である。脂環式基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基やこれらを骨格として含む基等が挙げられる。
【0030】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0031】
前記の式(I)で表わされるベンゾトリアゾール化合物は、ベンゾトリアゾール系の骨格に結合するR1~R9の少なくともいずれかの位置に、前記の式(i-1)で表わされる1価の硫黄含有基を含む。
【0032】
式(i-1)において、R10は芳香族基、不飽和基、窒素含有基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、及びハロゲン原子から選ばれる1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、両端の少なくともいずれかが中断されるか、又は炭素-炭素結合が中断されていてもよい炭素数1~20、好ましくは1~10、より好ましくは1~5、さらに好ましくは1~3の2価の炭化水素基を示す。
【0033】
10の2価の炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。その中でも脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖又は分岐のアルキレン基、直鎖又は分岐のアルケニレン基、直鎖又は分岐のアルキニレン基等が挙げられる。具体的には、例えば、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、1-メチルエタン-1,2-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、2-メチルプロパン-1,3-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ペンタン-1,4-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、ウンデカン-1,11-ジイル基、ドデカン-1,12-ジイル基、トリデカン-1,13-イル基、テトラデカン-1,14-イル基、ペンタデカン-1,15-イル基、ヘキサデカン-1,16-イル基、ヘプタデカン-1,17-イル基、オクタデカン-1,18-イル基、ノナデカン-1,19-イル基、エイコサン-1,20-イル基等が挙げられる。これらの中でも、アルキレン基が好ましく、直鎖のアルキレン基がより好ましい。
【0034】
2価の炭化水素基が、前記1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、両端の少なくともいずれかが中断されるか、又は炭素-炭素結合が中断される場合、前記1価もしくは2価の基の数は、特に限定されないが、その例としては、2個以下、あるいは1個以下が挙げられる。
【0035】
前記1価もしくは2価の基の芳香族基、不飽和基、窒素含有基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、ハロゲン原子の具体例としては、前記[置換基等]の欄に例示したものが挙げられる。
【0036】
式(i-1)において、lは0又は1の整数を示し、好ましくは、lは0である。
【0037】
式(i-1)において、R11はmが2以上の場合はそれぞれ独立に芳香族基、不飽和基、窒素含有基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、及びハロゲン原子から選ばれる1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、両端の少なくともいずれかが中断されるか、又は炭素-炭素結合が中断されていてもよい炭素数1~20、好ましくは1~10、より好ましくは1~5、さらに好ましくは1~3の2価の炭化水素基を示す。
【0038】
11の2価の炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。その中でも脂肪族炭化水素基が好ましく、R10の2価の炭化水素基で前記に例示したものが挙げられる。これらの中でも、アルキレン基が好ましく、直鎖のアルキレン基がより好ましい。
【0039】
11の2価の炭化水素基が、前記1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、両端の少なくともいずれかが中断されるか、又は炭素-炭素結合が中断される場合、前記1価もしくは2価の基の数は、特に限定されないが、その例としては、2個以下、あるいは1個以下が挙げられる。
【0040】
前記1価もしくは2価の基の芳香族基、不飽和基、窒素含有基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、ハロゲン原子の具体例としては、前記[置換基等]の欄に例示したものが挙げられる。
【0041】
式(i-1)において、mは0~3の整数を示し、好ましくは、mは0又は1であり、より好ましくは、mは0である。
【0042】
<第1の実施形態>
以下、式(i-1)におけるR12が、上記<1>である第1の実施形態について説明する。第1の実施形態のベンゾトリアゾール化合物は、樹脂原料のモノマーへの溶解性が良く高濃度での溶解が可能で、かつ良好な反応性で重合し、高分子量の樹脂部材、さらには透明の樹脂部材が得られる。また、硫黄含有基にR12のA1として窒素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、リン含有基、フェニレン基を導入することで耐熱性が向上する。
【0043】
式(i-1)において、R12は、上記式(i-2)で表される1価の基である。第1の実施形態のベンゾトリアゾール化合物は、ベンゾトリアゾール系の骨格に、硫黄を含む結合基を介してこの式(i-2)で表される1価の基を有することを特徴としている。
【0044】
式(i-2)において、R12a、R12b、及びR12cはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~18の1価の炭化水素基を示す。
【0045】
炭素数1~18の1価の炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。その中でも脂肪族炭化水素基が好ましい。脂肪族炭化水素基としては、直鎖又は分岐のアルキル基、直鎖又は分岐のアルケニル基、直鎖又は分岐のアルキニル基等が挙げられる。これらの中でも、直鎖又は分岐のアルキル基が好ましい。直鎖又は分岐のアルキル基としては、例えば、メチル基、エタン-1-イル基、プロパン-1-イル基、1-メチルエタン-1-イル基、ブタン-1-イル基、ブタン-2-イル基、2-メチルプロパン-1-イル基、2-メチルプロパン-2-イル基、ペンタン-1-イル基、ペンタン-2-イル基、ヘキサン-1-イル基、ヘプタン-1-イル基、オクタン-1-イル基、ノナン-1-イル基、デカン-1-イル基、ウンデカン-1-イル基、ドデカン-1-イル基、トリデカン-1-イル基、テトラデカン-1-イル基、ペンタデカン-1-イル基、ヘキサデカン-1-イル基、ヘプタデカン-1-イル基、オクタデカン-1-イル基等が挙げられる。
【0046】
樹脂原料のモノマーとの反応性、溶解性を考慮すると、1価の炭化水素基は、好ましくは炭素数1~13、より好ましくは1~5、さらに好ましくは1~3、特に好ましくは1である。また、好ましい態様は、(1) R12a、R12b、R12cが水素原子、(2) R12aが炭素数1~3の1価の炭化水素基、R12b、R12cが水素原子、(3) R12aが水素原子、R12bが炭素数1~13の1価の炭化水素基、R12cが水素原子である。特に、(1)のR12a、R12b、R12cが水素原子であるか、(2)のうちR12aが炭素数1の1価の炭化水素基、R12b、R12cが水素原子であるか、又は、(3)のうちR12aが水素原子、R12bが炭素数1の1価の炭化水素基、R12cが水素原子であるものが好ましい態様である。 式(i-2)において、A1は窒素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、リン含有基、及びフェニレン基から選ばれるいずれかの2価の基を示す。
【0047】
式(i-2)において、窒素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、及びリン含有基としては、例えば、前記[置換基等]の欄に例示したもののなかで2価の基が挙げられる。
【0048】
2価の窒素含有基としては、アミド基、尿素基、ウレタン基、イミド基、カルボジイミド基、アゾ基、ピリジン基、イミダゾール基、トルイジン基、ニトロアルキル基、2級アミノ基、アミノアルキル基等が挙げられる。中でも二重結合を有する2価の窒素含有基が好ましく、例えば、アミド基、尿素基、ウレタン基、イミド基、カルボジイミド基、アゾ基、ピリジン基、イミダゾール基、トルイジン基、ニトロアルキル基等が挙げられる。
【0049】
2価の酸素含有基としては、エーテル基、カルボニル基、エステル基、オキサゾール基、カルバメート基、カルバモイル基等が挙げられる。中でも二重結合を有する2価の酸素含有基が好ましく、例えば、カルボニル基、エステル基、オキサゾール基、カルバメート基、カルバモイル基等が挙げられる。
【0050】
2価の硫黄含有基としては、チオエーテル基、スルフィド基、ジスルフィド基、チオエステル基、チオアミド基、スルホニル基、スルホキシド基、チオカルボニル基、チオ尿素基、チオカルバメート基、ジチオカルバメート基、チオフェン基、チアゾール基等が挙げられる。中でも二重結合を有する2価の硫黄含有基が好ましく、例えば、チオエステル基、チオアミド基、スルホニル基、スルホキシド基、チオカルボニル基、チオ尿素基、チオカルバメート基、ジチオカルバメート基、チオフェン基、チアゾール基等が挙げられる。
【0051】
2価のリン含有基としては、リン酸エステル基、ホスホン酸エステル等が挙げられる。中でも二重結合を有する2価のリン含有基が好ましく、例えば、リン酸エステル基、ホスホン酸エステル等が挙げられる。
【0052】
1は、好ましくは、エステル基、フェニレン基、及びアミド基から選ばれる2価の基である。エステル基は-C(=O)O-又は-OC(=O)-である。フェニレン基はo-フェニレン基、m-フェニレン基、又はp-フェニレン基である。アミド基は-NHC(=O)-又は-C(=O)NH-である。樹脂原料のモノマーとの反応性、溶解性を考慮すると、A1はエステル基が好ましく、その中でもXに酸素原子が結合した-X-O-C(=O)-のエステル基がより好ましい。
【0053】
また、A1がエステル基、ウレタン基、アミド基又は尿素基であると、後述の第2の実施形態と同様な傾向で、硫黄含有基に二重結合を有する窒素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、リン含有基を導入することで耐熱性が向上し、その熱分解が抑制され、紫外線吸収能や外観の低下を抑制できる。すなわち、樹脂原料のモノマーへの溶解性が良く高濃度での溶解が可能で、かつ良好な反応性で重合し、高分子量の樹脂部材、さらには透明の樹脂部材が得られるとともに、耐熱性に優れたものとすることができる。
【0054】
式(i-2)において、Xは、-X1-、-X2-、-X1-(Y)p-X2-、及び-X2-(Y)p-X1-から選ばれる2価の基であってよく、具体的には-X1-、-X2-、-X1-(Y)p-X2-、-X2-(Y)p-X1-、及び-X2-(Y)p-X2-から選ばれる2価の基を示す。ここでX1は芳香族基、不飽和基、窒素含有基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、及びハロゲン原子から選ばれる1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、両端の少なくともいずれかが中断されるか、又は炭素-炭素結合が中断されていてもよい炭素数1~20の2価の炭化水素基を示し、X2は2価の芳香族基を示し、Yはヘテロ原子を示し、pは0又は1の整数を示す。
【0055】
2価の炭化水素基X1としては、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。その中でも脂肪族炭化水素基が好ましく、R10の2価の炭化水素基で前記に例示したものが挙げられる。これらの中でも、アルキレン基が好ましく、直鎖のアルキレン基がより好ましい。
【0056】
2価の炭化水素基X1が、前記1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、両端の少なくともいずれかが中断されるか、又は炭素-炭素結合が中断される場合、前記1価もしくは2価の基の数は、特に限定されないが、その例としては、2個以下、あるいは1個以下が挙げられる。
【0057】
前記1価もしくは2価の基の芳香族基、不飽和基、窒素含有基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、ハロゲン原子の具体例としては、前記[置換基等]の欄に例示したものが挙げられる。
【0058】
2価の芳香族基X2は、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等の芳香環を含み、炭素数が好ましくは6~18、より好ましくは6~14である。2価の芳香族基としては、前記[置換基等]の欄に例示したものが挙げられる。
【0059】
ヘテロ原子Yは、特に限定されるものではないが、酸素原子、硫黄原子等が挙げられる。
【0060】
式(i-2)のXにおいて、好ましくは、X1は置換及び中断されない炭素数1~20の2価の炭化水素基を示し、X2は2価の芳香族基を示し、Yは酸素原子又は硫黄原子を示す。
【0061】
式(i-2)のXにおいて、X1は置換及び中断されない炭素数1~20の2価のアルキレン基-(CH2n-(nは1~20の整数を示す。)がより好ましい。Xが、-X1-である場合は、Xはアルキレン基-(CH2n-(nは1~20の整数を示す。)が好ましい。
【0062】
1、Xがアルキレン基-(CH2n-である場合、樹脂原料のモノマーへの溶解性と樹脂部材の透明性を得ながら、特に樹脂原料のモノマーとの反応性が良好でより高い分子量での重合が可能である点を考慮すると、nは2以上が好ましく、3以上がより好ましい。nの上限は特に限定されないが、樹脂原料のモノマーへの溶解性、樹脂部材の透明性、特に樹脂原料のモノマーとの反応性を考慮すると、10以下が好ましく、6以下がより好ましい。つまり、nは2~10が好ましく、3~10がより好ましく、2~6がさらに好ましく、3~6が特に好ましい。
【0063】
上記式(i-2)のXにおいて、X2は2価のフェニレン基がより好ましい。X2が2価のフェニレン基である場合において、上記式(i-2)のXが、-X2-である場合は、Xはフェニレン基である。X2が2価のフェニレン基である場合において、上記式(i-2)のXが、-X1-(Y)p-X2-又は-X2-(Y)p-X1-である場合は、-X2-(Y)p-X1-が好ましく、X1はアルキレン基-(CH2n-(nは1~20の整数を示す。)であり、Yは酸素原子であることがより好ましい。この場合、アルキレン基-(CH2n-のnは2~10が好ましく、3~10がより好ましく、2~6がさらに好ましく、3~6が特に好ましい。
【0064】
式(i-1)で表される1価の基として特に好ましい例としては、l、mが0であり、R12cは水素原子である次の式(i-1-1)、(i-1-2)、(i-1-3)で表される基が挙げられる。
【0065】
【化5】
【0066】
(式中、R12a、R12b、A1、nは前記と同義である。)
【0067】
【化6】
【0068】
(式中、R12a、R12b、A1、nは前記と同義である。)
【0069】
【化7】
【0070】
(式中、R12a、R12b、A1は前記と同義である。)
第1の実施形態のベンゾトリアゾール化合物によれば、樹脂原料のモノマーへの溶解性が良く高濃度での溶解も可能で、かつ良好な反応性で重合し、高分子量の樹脂部材、さらには透明の樹脂部材が得られる。また、硫黄含有基にR12のA1として窒素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、リン含有基、フェニレン基を導入することで耐熱性が向上する。第1の実施形態のベンゾトリアゾール化合物は、ベンゾトリアゾール系の骨格に、硫黄を含む結合基を介して上記式(i-2)で表される1価の基を反応性官能基として有し、そのビニル基と反応する官能基を含有する有機、無機化合物、特に樹脂原料のモノマーや樹脂を用いて反応、共重合、成形加工して樹脂部材を得る場合、第1の実施形態のベンゾトリアゾール化合物が、対象とする化合物、特に樹脂原料のモノマーもしくは樹脂の官能基と共重合又は反応し、マトリックスに固定化され、ブリードアウト、溶出することなく、紫外線吸収能を長期間保持することができる。そして、モノマー、樹脂を選定することにより透明性を保持したマトリックス、樹脂部材が得られる。
【0071】
第1の実施形態の化合物は、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収骨格に硫黄含有基及び式(i-2)の官能基を導入したことで、モノマーや樹脂に対して反応性が良好で、モノマーに対して相溶性が良く、高分子量で、必要に応じて高い透明性を維持しながら高い紫外線吸収能を樹脂成形体等に付与することができる。
【0072】
<第2の実施形態>
以下、式(i-1)におけるR12が、上記<2>である第2の実施形態について説明する。第2の実施形態のベンゾトリアゾール化合物は、硫黄含有基及び硫黄含有基にR12のA2として窒素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、リン含有基を導入することで耐熱性が向上し、その熱分解が抑制され、紫外線吸収能や外観の低下を抑制できる。特に加熱成形や加工をする過程で熱分解されにくいため、より高い成形加工温度が求められる樹脂に対しても紫外線吸収剤としての適用が可能となる。
【0073】
式(i-1)において、R12は、上記式(i-3)で表される1価の基である。第2の実施形態のベンゾトリアゾール化合物は、ベンゾトリアゾール系の骨格に、硫黄を含む結合基を介してこの式(i-3)で表される1価の基を有することを特徴としている。
【0074】
式(i-3)において、A2は窒素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、及びリン含有基から選ばれる2価の基を示し、例えば、前記[置換基等]の欄に例示したもののなかで2価の基が挙げられる。
【0075】
2価の窒素含有基としては、アミド基、尿素基、ウレタン基、イミド基、カルボジイミド基、アゾ基、ピリジン基、イミダゾール基、トルイジン基、ニトロアルキル基、2級アミノ基、アミノアルキル基等が挙げられる。中でも二重結合を有する2価の窒素含有基が好ましく、例えば、アミド基、尿素基、ウレタン基、イミド基、カルボジイミド基、アゾ基、ピリジン基、イミダゾール基、トルイジン基、ニトロアルキル基等が挙げられる。
【0076】
2価の酸素含有基としては、エーテル基、カルボニル基、エステル基、オキサゾール基、カルバメート基、カルバモイル基等が挙げられる。中でも二重結合を有する2価の酸素含有基が好ましく、例えば、カルボニル基、エステル基、オキサゾール基、カルバメート基、カルバモイル基等が挙げられる。
【0077】
2価の硫黄含有基としては、チオエーテル基、スルフィド基、ジスルフィド基、チオエステル基、チオアミド基、スルホニル基、スルホキシド基、チオカルボニル基、チオ尿素基、チオカルバメート基、ジチオカルバメート基、チオフェン基、チアゾール基等が挙げられる。中でも二重結合を有する2価の硫黄含有基が好ましく、例えば、チオエステル基、チオアミド基、スルホニル基、スルホキシド基、チオカルボニル基、チオ尿素基、チオカルバメート基、ジチオカルバメート基、チオフェン基、チアゾール基等が挙げられる。
【0078】
2価のリン含有基としては、リン酸エステル基、ホスホン酸エステル等が挙げられる。中でも二重結合を有する2価のリン含有基が好ましく、例えば、リン酸エステル基、ホスホン酸エステル等が挙げられる。
【0079】
このように、R12にA2を導入することで耐熱性が向上し、その熱分解が抑制され、紫外線吸収能や外観の低下を抑制できる。また、特に加熱成形や加熱加工するする過程で熱分解され難いため、より高い成形加工温度が要求される樹脂に対しても紫外線吸収剤としての適用が可能となる。
【0080】
式(i-3)において、Xaは、-Xa1-、-Xa2-、-Xa1-(Yaq-Xa2-、-Xa2-(Yaq-Xa1-、及び-Xa2-(Yaq-Xa2-から選ばれる2価の基を示す。ここでXa1は芳香族基、不飽和基、窒素含有基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、及びハロゲン原子から選ばれる1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、両端の少なくともいずれかが中断されるか、又は炭素-炭素結合が中断されていてもよい炭素数1~20の2価の炭化水素基を示し、Xa2は2価の芳香族基を示し、Yaはヘテロ原子を示し、qは0又は1の整数を示す。Xbは、-Xb1、-Xb2、-Xa1-(Ybr-Xb2、-Xa2-(Ybr-Xb1、及び-Xa2-(Ybr-Xb2から選ばれる1価の基を示す。ここでXb1は芳香族基、不飽和基、窒素含有基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、及びハロゲン原子から選ばれる1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、基端が中断されるか、又は炭素-炭素結合が中断されていてもよい炭素数1~20の1価の炭化水素基を示し、Xb2は1価の芳香族基を示し、Ybはヘテロ原子を示し、rは0又は1の整数を示す。Xa1とXa2は前記と同義であるがXaのものとは各々独立である。
【0081】
2価の炭化水素基Xa1としては、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。その中でも脂肪族炭化水素基が好ましく、R10の2価の炭化水素基で前記に例示したものが挙げられる。これらの中でも、アルキレン基が好ましく、直鎖のアルキレン基がより好ましい。
【0082】
2価の炭化水素基Xa1が、前記1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、両端の少なくともいずれかが中断されるか、又は炭素-炭素結合が中断される場合、前記1価もしくは2価の基の数は、特に限定されないが、その例としては、2個以下、あるいは1個以下が挙げられる。前記1価もしくは2価の基の芳香族基、不飽和基、窒素含有基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、ハロゲン原子の具体例としては、前記[置換基等]の欄に例示したものが挙げられる。
【0083】
2価の芳香族基Xa2は、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等の芳香環を含み、炭素数が好ましくは6~18、より好ましくは6~14である。2価の芳香族基としては、前記[置換基等]の欄に例示したものが挙げられる。
【0084】
1価の炭化水素基Xb1としては、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。その中でも脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖又は分岐のアルキル基、直鎖又は分岐のアルケニル基、直鎖又は分岐のアルキニル基等が挙げられ、直鎖のアルキル基が好ましい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エタン-1-イル基、プロパン-1-イル基、1-メチルエタン-1-イル基、ブタン-1-イル基、ブタン-2-イル基、2-メチルプロパン-1-イル基、2-メチルプロパン-2-イル基、ペンタン-1-イル基、ペンタン-2-イル基、2-メチルブタン-1-イル基、ヘキサン-1-イル基、3-メチルペンタン-1-イル基、2-メチルペンタン-1-イル基、ヘプタン-1-イル基、2-メチルヘキサン-イル基、3-メチルヘキサン-イル基、3-エチルペンタン-1-イル基、オクタン-1-イル基、2-エチルヘキサン-1-イル基、3-エチルヘキサン-1-イル基、2-メチルへプタン-1-イル基、3-メチルへプタン-1-イル基、4-メチルへプタン-1-イル基、1,1,3,3-テトラメチルブチル-1-イル基、ノナン-1-イル基、3-エチルへプタン-1-イル基、4-エチルヘプタン-1-イル基、2-メチルオクタン-1-イル基、3-メチルオクタン-1-イル基、4-メチルオクタン-1-イル基、デカン-1-イル基、4-プロピルへプタン-1-イル基、3-エチルオクタン-1-イル基、4-エチルオクタン-1-イル基、ウンデカン-1-イル基、ドデカン-1-イル基、2-メチルウンデカン-1-イル基、2-エチルデカン-1-イル基、トリデカン-1-イル基、テトラデカン-1-イル基、ペンタデカン-1-イル基、ヘキサデカン-1-イル基、ヘプタデカン-1-イル基、オクタデカン-1-イル基、ノナデカン-1-イル基、エイコサン-1-イル基等が挙げられる。アルケニル基としては、例えば、エテン-1-イル基、プロペン-1-イル基、ブテン-1-イル基、ペンテン-1-イル基、2-メチル-1-ブテン-1-イル基、3-メチル-1-ブテン-1-イル基、2-メチル-2-ブテン-1-イル基、ヘプテン-1-イル基、オクテン-1-イル基、ノネン-1-イル基、デセン-1-イル基、ウンデセン-1-イル基、ドデセン-1-イル基、トリデセン-1-イル基、テトラデセン-1-イル基、ペンタデセン-1-イル基、ヘキサデセン-1-イル基、オクタデセン-1-イル基、ノナデセン-1-イル基、エイコセン-1-イル基等が挙げられる。アルキニル基としては、例えば、エチン-1-イル基、プロピン-1-イル基、ブチン-1-イル基、ペンチン-1-イル基、2-メチル-1-ブチン-1-イル基、3-メチル-1-ブチン-1-イル基、2-メチル-2-ブチン-1-イル基、ヘキシン-1-イル基、ヘプチン-1-イル基、オクチン-1-イル基、ノニン-1-イル基、デシン-1-イル基、ウンデシン-1-イル基、ドデシン-1-イル基、トリデシン-1-イル基、テトラデシン-1-イル基、ペンタデシン-1-イル基、ヘキサデシン-1-イル基、オクタデシン-1-イル基、ノナデシン-1-イル基、エイコシン-1-イル基等が挙げられる。また、1価の炭化水素基Xb1としては、上記式(i-2)のうちA1に結合する1価の基である、-(R12a)=(R12b)(R12c)が挙げられる。
【0085】
1価の炭化水素基Xb1が、前記1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、基端が中断されるか、又は炭素-炭素結合が中断される場合、前記1価もしくは2価の基の数は、特に限定されないが、その例としては、2個以下、あるいは1個以下が挙げられる。前記1価もしくは2価の基の芳香族基、不飽和基、窒素含有基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、ハロゲン原子の具体例としては、前記[置換基等]の欄に例示したものが挙げられる。1価の芳香族基Xb2は、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等の芳香環を含み、炭素数が好ましくは6~18、より好ましくは6~14である。1価の芳香族基としては、前記[置換基等]の欄に例示したものが挙げられる。
【0086】
ヘテロ原子Ya、Ybは、特に限定されるものではないが、酸素原子、硫黄原子等が挙げられる。
【0087】
好ましくは、式(i-3)のXaにおいて、Xa1は置換及び中断されない炭素数1~20の2価の炭化水素基、Xa2は2価の芳香族基、Yaは酸素原子又は硫黄原子を示し、Xbにおいて、Xb1は置換及び中断されない炭素数1~20の1価の炭化水素基、Xb2は1価の芳香族基、Ybは酸素原子又は硫黄原子、Xa1は置換及び中断されない炭素数1~20の2価の炭化水素基、Xa2は2価の芳香族基(Xa1とXa2はXaのものとは各々独立である。)を示す。
【0088】
式(i-3)のXaにおいて、Xa1は置換及び中断されない炭素数1~20の2価のアルキレン基-(CH2n-(nは1~20の整数を示す。)がより好ましい。Xaが、-Xa1-である場合は、Xaはアルキレン基-(CH2n-(nは1~20の整数を示す。)が好ましい。
【0089】
aがアルキレン基-(CH2n-である場合、耐熱性がより向上する点を考慮すると、nは2以上が好ましく、3以上がより好ましい。nの上限は特に限定されないが、10以下が好ましく、6以下がより好ましい。つまり、nは2~10が好ましく、2~6がより好ましく、3~6が特に好ましい。
【0090】
式(i-3)のXaにおいて、2価の芳香族基Xa2を含むと耐熱性がより向上する点で好ましく、この場合Xaは、-Xa2-、-Xa1-(Yaq-Xa2-、-Xa2-(Yaq-Xa1-、-Xa2-(Yaq-Xa2-のうちのいずれかの2価の基である。
【0091】
式(i-3)のXaにおいて、qは0が好ましい。
【0092】
式(i-3)のXbにおいて、耐熱性がより向上する点を考慮すると、芳香族基であるXa2又はXb2を含む、-Xb2、-Xa1-(Ybr-Xb2、-Xa2-(Ybr-Xb1、-Xa2-(Ybr-Xb2のうちいずれかが好ましい。式(i-3)のXa、Xbがアルキル基、A2がエステル基である場合には、耐熱性がより向上する点を考慮すると、その炭素数は1以上が好ましく、6以上がより好ましく、14以上がさらに好ましい。
【0093】
式(i-3)のXbにおいて、例えば、Xb1は置換及び中断されない炭素数1~20の1価のアルキル基、Xb2は1価の芳香族基、Ybは酸素原子又は硫黄原子、Xa1は置換及び中断されない炭素数1~20の2価のアルキル基、Xa2は2価の芳香族基を示すものであってよい。これとは別の例として、Xbは、式(i-2)のうちA1に結合する1価の基である、-(R12a)=(R12b)(R12c)であってよく、耐熱性に優れたものとすることができるとともに、前述の第1の実施形態と同様に、樹脂原料のモノマーへの溶解性が良く高濃度での溶解が可能で、かつ良好な反応性で重合し、高分子量の樹脂部材、さらには透明の樹脂部材が得られる。
【0094】
式(i-3)のXbにおいて、rは0が好ましい。
【0095】
さらに、耐熱性を向上させる点としては、式(i-3)のA2はアミド基、エステル基、ウレタン基、尿素基が好ましい。アミド基は-NHC(=O)-又は-C(=O)NH-、エステル基は-C(=O)O-又は-OC(=O)-、ウレタン基は-NHC(=O)O-又は-OC(=O)NH-、尿素基は-NHC(=O)NH-である。その中でも、エステル基、アミド基がより好ましく、アミド基が特に好ましい。一方で、式(i-3)のXa、Xbにおいて、Xa、Xbが脂肪族炭化水素基(アルキル基、アルキレン基)と芳香族基もしくは両方が脂肪族炭化水素基(アルキル基、アルキレン基)である場合、XaとXbの総炭素数は2以上が好ましく、5以上がより好ましく、10以上がさらに好ましく、18以上が特に好ましい。また、Xa、Xbの組み合わせは、Xa、Xbの両方が芳香族基である化合物がより好ましい。 紫外線吸収剤を、樹脂をはじめとする有機物及び無機物と加熱下で反応、混合、混練する場合や、紫外線吸収剤を含む樹脂部材を加熱により加工、成形する場合、紫外線吸収剤の熱分解温度が低いと分解し、紫外線吸収の効果を十分発揮できず、装置を汚染し、透明樹脂部材の場合、透明性の損失を防ぐため、熱分解温度が高い方が望ましい。第1の実施形態のベンゾトリアゾール化合物は、上記式(i-1)で表されるチオエーテル基を導入することにより、耐熱性が向上する。第1の実施形態のベンゾトリアゾール化合物の5%重量減少温度は、255℃以上が好ましく、270℃以上がより好ましく、280℃以上がさらに好ましく、290℃以上が特に好ましく、300℃以上が一層好ましく、310℃以上が殊更好ましい。一般的な樹脂の軟化温度である100~250℃(「よくわかるプラスチック」、監修:日本プラスチック工業連盟、出版:日本実業出版社)よりも5%重量減少温度が高いため、成形加工温度100~200℃の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂をはじめ、200~250℃より高い成形加工温度が求められる熱可塑性樹脂に対しても適用が可能となる。
【0096】
第1及び第2の実施形態に係る本発明のベンゾトリアゾール化合物は、式(I)において、R1~R9のうち少なくとも1つは式(i-1)で表わされる1価の硫黄含有基である。その中でも、実際の合成の容易性、吸収特性やコスト、耐熱性、あるいは、樹脂原料のモノマーとの相溶性を良好なものとすることで、本発明の化合物を添加した樹脂部材の白濁を抑制し、高濃度の添加での高い紫外線吸収能の発現を可能とする点等を考慮すると、R1~R9のうち1~2個が式(i-1)で表わされる1価の硫黄含有基であることが好ましく、1個が式(i-1)で表わされる1価の硫黄含有基であることがより好ましい。 式(I)における式(i-1)で表わされる1価の硫黄含有基の位置は、特に限定されるものではなく、式(i-1)で表される1価の硫黄含有基は、式(I)のR6~R9のうちのいずれかに有することが好ましく、R6、R9の位置がより好ましい。
【0097】
式(I)において、R1~R9が式(i-1)で表わされる1価の硫黄含有基以外の基である場合、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、芳香族基、不飽和基、窒素含有基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、及びハロゲン原子から選ばれる1価の基を示す。
【0098】
1~R9が1価の炭化水素基である場合、この1価の炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。その中でも脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖又は分岐のアルキル基、直鎖又は分岐のアルケニル基、直鎖又は分岐のアルキニル基等が挙げられる。具体的には、例えば、メチル基、エタン-1-イル基、プロパン-1-イル基、1-メチルエタン-1-イル基、ブタン-1-イル基、ブタン-2-イル基、2-メチルプロパン-1-イル基、2-メチルプロパン-2-イル基、ペンタン-1-イル基、ペンタン-2-イル基、2-メチルブタン-1-イル基、ヘキサン-1-イル基、2-メチルペンタン-1-イル基、3-メチルペンタン-1-イル基、ヘプタン-1-イル基、3-エチルペンタン-1-イル基、2-メチルヘキサン-イル基、3-メチルヘキサン-イル基、オクタン-1-イル基、2-メチルへプタン-1-イル基、3-メチルへプタン-1-イル基、4-メチルへプタン-1-イル基、2-エチルヘキサン-1-イル基、3-エチルヘキサン-1-イル基、1,1,3,3-テトラメチルブチルノナン-1-イル基、3-エチルへプタン-1-イル基、4-エチルヘプタン-1-イル基、2-メチルオクタン-1-イル基、3-メチルオクタン-1-イル基、4-メチルオクタン-1-イル基、デカン-1-イル基、4-プロピルへプタン-1-イル基、3-エチルオクタン-1-イル基、4-エチルオクタン-1-イル基、ウンデカン-1-イル基、ドデカン-1-イル基、2-メチルウンデカン-1-イル基、2-エチルデカン-1-イル基、トリデカン-1-イル基、テトラデカン-1-イル基、ペンタデカン-1-イル基、ヘキサデカン-1-イル基、ヘプタデカン-1-イル基、オクタデカン-1-イル基等が挙げられる。これらの中でも、炭素数1~8の直鎖又は分岐のアルキル基が好ましく、炭素数1~4の直鎖又は分岐のアルキル基がより好ましい。
【0099】
1~R9が芳香族基、不飽和基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、及びハロゲン原子から選ばれる1価の基である場合、その具体例としては、前記[置換基等]の欄に例示したものが挙げられる。
【0100】
式(I)において、5位のR9に式(i-1)で表わされる1価の硫黄含有基を有する場合、式(i-1)で表わされる1価の硫黄含有基以外の基として、R6、R7、R8がいずれも水素原子であることが好ましい。また、R1、R2、R3、R4、R5の組み合わせのうち好ましい例を挙げると次のとおりである。
[1] 炭素数1~18の炭化水素基(アルケニル基、アルキニル基を含む炭素数2~18の炭化水素基を含む。)、ヒドロキシ基、炭素数6~18の芳香族基、炭素数1~18のエーテル基、炭素数1~18のアルコキシ基、炭素数1~18のエステル基、(メタ)アクリロイルオキシ基及び/又は炭素数1~20のポリオキシエチレン基、又はそれらの置換基で水素原子が置換されるか、基端が中断されるか炭素-炭素結合が中断されてもよい炭素数1~18の炭化水素基から選ばれる置換基を1つ以上含む。
[2] [1]において、置換基が炭素数1~10の炭化水素基、及びヒドロキシ基から選ばれる少なくとも1種である。
[3] [2]において、置換基が炭素数1~8の炭化水素基、及びヒドロキシ基から選ばれる少なくとも1種である。
[4] [1]~[3]のいずれかにおいて、置換基の炭化水素基が直鎖又は分岐のアルキル基である。
[5] [4]において、置換基がメチル基、t-ブチル基、及びヒドロキシ基から選ばれる少なくとも1種である。
[6] [5]において、置換基がメチル基、t-ブチル基、及びヒドロキシ基から選ばれる少なくとも1種であり、かつヒドロキシ基は1つ以下である。
[7] [1]から[6]のいずれかにおいて、置換基の数が2~4個である。
[8] [1]から[7]のいずれかにおいて、R1~R4のいずれかの位置に置換基を有し、それ以外のR1~R5は水素原子である。
[9] [1]から[8]のいずれかにおいて、R1、R2、R4のいずれかの位置に置換基を有し、それ以外のR1~R5は水素原子である。
[10] [9]において、R1はヒドロキシ基、R2はt-ブチル基、R4はメチル基であり、R3、R5は水素原子である。
【0101】
式(I)で表わされる本発明のベンゾトリアゾール化合物を含有する透明樹脂部材は、その相溶性による樹脂の透明性に加えて、紫外線吸収のピークの特性から、黄色化を抑制しながら長波長領域の波長の吸収を可能とする。具体的には、紫外線吸収能の特性から400~500nm(可視域)をカットすることなく、UV-A領域でも、より長波長の360~400nm付近の紫外線をシャープにカットすることが可能である。このため、樹脂部材は、黄色着色が抑制された、外観に優れるものが得られる。すなわち、その光学的特性から、250~400nmまでの波長領域の光を十分吸収することができる。しかも、紫外線吸収効果(モル吸光係数)が高く、少量の添加で、その波長光を十分吸収でき、クロロホルム溶液中で350~390nmの吸収ピークの傾きが従来の紫外線吸収剤よりも大きいことから、樹脂部材の黄色化を抑制することができる。また、式(i-3)において、Xaに芳香族基を導入した化合物は、250~320nmの領域の吸収ピークが大きくなり、さらに、Xbに芳香族基及び/又はA2にアミド基、尿素基等の窒素含有基(特に尿素基)を導入すると、その吸収ピークは一層大きくなり、低波長~長波長の広範囲に紫外線を吸収することができる。~400nmまでの幅広い波長領域の有害光を吸収し、黄色化の要因となる400nm付近以上の波長光の吸収を抑制し、黄色化を抑え外観に優れた樹脂部材を得るためには、100μMクロロホルム溶液における光の吸収ピークが350~390nmにあることが好ましく、360~380nmにあることがより好ましく、特に360~375nmにあることが好ましい。また、それらの波長領域にある吸収ピークは、最大吸収波長(λmax)であることが好ましい。さらに、その波長ピークは、400nm付近よりも長波長の光の吸収を抑制するために、長波長側の吸収スペクトルはシャープな方が(傾きの絶対値が大きい方が)良く、吸収ピークの長波長側の傾き(吸収ピークと長波長側の吸収スペクトルのピークエンドを結んだ直線の傾きの絶対値)が0.025以上であることが好ましく、0.030以上がより好ましく、0.040以上がさらに好ましく、0.042以上が特に好ましく、0.043以上が殊更好ましい。また、少量で効率よく吸収するためには、上記の350~390nmの吸収ピークのモル吸光係数(最大モル吸光係数:ελmax)は、17000L/(mol・cm)以上が好ましく、18000L/(mol・cm)以上がより好ましく、20000L/(mol・cm)以上がさらに好ましく、21000L/(mol・cm)以上が特に好ましい。
【0102】
式(I)で表わされるベンゾトリアゾール化合物を製造する際には、特に限定されないが、後述の実施例の開示と公知の技術が参照される。
【0103】
(本発明のベンゾトリアゾール化合物を添加した組成物)
本発明のベンゾトリアゾール化合物の用途は、特に限定されないが、本発明のベンゾトリアゾール化合物を紫外線吸収剤として添加した組成物への適用が挙げられる。
【0104】
本発明において、組成物の用語には、固形状や流動状、ゲル状、ゾル状などその性状を問わず、本発明のベンゾトリアゾール化合物を添加した組成物が包含され、部材の他、部材を製造するための原料も包含する。本発明において、部材の用語には、特に限定されないが、例えば、後記に例示した用途に使用されるものが含まれ、任意の形状を持つ形状物が包含される。また、本発明のベンゾトリアゾール化合物を添加した組成物とは、添加後に本発明のベンゾトリアゾール化合物が反応したものを包含し、例えば後述の本発明の重合体を包含する。
【0105】
本発明のベンゾトリアゾール化合物を添加した組成物の材料としては、有機材料、無機材料が挙げられる。本発明のベンゾトリアゾール化合物は、種々の有機材料、無機材料との親和性、相溶性、反応性が高く、本発明のベンゾトリアゾール化合物を混合、溶解、分散、反応させた場合、均質な部材を得ることができ、特に透明な部材を用いた場合には透明性に優れた部材を得ることができる。
【0106】
(重合体)
以下、上記第1の実施形態に係るベンゾトリアゾール化合物を用いた本発明の重合体について説明する。
【0107】
本発明の重合体は、本発明のベンゾトリアゾール化合物を原料モノマーとして含む。本発明の重合体は、透明性の高い樹脂部材を得るのに適しており、好ましい態様において透明であるが、本発明の重合体は透明なものに必ずしも限定されない。
【0108】
本発明の重合体は、特に限定されないが、本発明のベンゾトリアゾール化合物の単独重合体、本発明のベンゾトリアゾール化合物のビニル基と反応し得る他の樹脂原料のモノマーとの共重合体が挙げられ、2種以上のベンゾトリアゾール化合物、モノマーとの共重合体としてもよい。本発明のベンゾトリアゾール化合物を、反応性官能基を末端又は側鎖に有する高分子化合物と反応させてブロック共重合体又はグラフト共重合体としてもよい。
【0109】
また、本発明の重合体は、本発明のベンゾトリアゾール化合物を樹脂に混合したものや、反応性官能基を有する有機化合物、無機化合物、特に樹脂と混合もしくはコーティングした後、反応させたものであってもよい。
【0110】
上記共重合体の原料となるモノマーの具体例としては、特に限定されないが、(メタ)アクリレート系モノマー、スチレン系モノマー、アクリルアミド系モノマー、オレフィン系モノマー、ビニル系モノマー等が挙げられる。
【0111】
(メタ)アクリレート系モノマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸へプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸シクロプロピル、(メタ)アクリル酸シクロブチル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸o-トリル、(メタ)アクリル酸m-トリル、(メタ)アクリル酸p-トリル、(メタ)アクリル酸2,3-キシリル、(メタ)アクリル酸2,4-キシリル、(メタ)アクリル酸2,5-キシリル、(メタ)アクリル酸2,6-キシリル、(メタ)アクリル酸3,4-キシリル、(メタ)アクリル酸3,5-キシリル、(メタ)アクリル酸1-ナフチル、(メタ)アクリル酸2-ナフチル、(メタ)アクリル酸ビナフチル、メタクリル酸アントリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3-ジヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル、2-ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルアミノエチル、シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド等が挙げられる。
【0112】
スチレン系モノマーとしては、特に限定されるものではないが、例えばスチレン、α-メチルスチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、イソブチルスチレン、t-ブチルスチレン、s-ブチルスチレン、ペンチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレン、オクチルスチレン等のアルキルスチレン;クロロスチレン、フルオロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレン等のハロゲン化スチレン;p-メトキシスチレン等のアルコキシスチレン;p-フェニルスチレン等のアリールスチレン;スチレンスルホン酸又はそのアルカリ金属塩、ニトロスチレン、アミノスチレン、ヒドロキシスチレン、4(トリメトキシシリル)スチレン等が挙げられる。
【0113】
アクリルアミド系モノマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、(メタ)N,N-ジエチルアクリルアミド、(メタ)N,N-ジプロピルアクリルアミド、(メタ)N,N-ジイソプロピルアクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ビスヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ビスヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ビスヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ビスヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0114】
オレフィン系モノマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、4-フェニル-1-ブテン、6-フェニル-1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ヘキセン、4-メチル-1-ヘキセン、5-メチル-1-ヘキセン、3,3-ジメチル-1-ペンテン、3,4-ジメチル-1-ペンテン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、ビニルシクロヘキサン、ヘキサフルオロプロペン、テトラフルオロエチレン、2-フルオロプロペン、フルオロエチレン、1,1-ジフルオロエチレン、3-フルオロプロペン、トリフルオロエチレン、3,4-ジクロロ-1-ブテン、ブタジエン、ヘキサジエン、イソプレン、ジシクロペンタジエン、ノルボルネン、アセチレン等が挙げられる。
【0115】
ビニル系モノマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルアルコール、アリルアルコール、(メタ)アクリロニトリル、メタクリロニトリル、N-ビニルピロリドン、塩化ビニル、臭化ビニル、ヨウ化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニリデン、ヨウ化ビニリデン、ビニルスルホン酸及びその塩、メタリルスルホン酸及びその塩、2-アクリルアミド-2-メチルスルホン酸及びその塩等、N-ビニル-2-ピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルピペラジン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾールが挙げられる。
【0116】
本発明のベンゾトリアゾール化合物は、上記モノマーに対して優れた溶解性を有し、高濃度で混合させることが可能であり、高濃度で添加しても、本発明のベンゾトリアゾール化合物はモノマーに均一に溶解し、高い透明性を維持することができる。
【0117】
本発明の重合体は、特に限定されないが、例えば、次の(1)~(3)の方法で製造することができる。ベンゾトリアゾール化合物の単独重合体を製造する場合は、他のモノマーを使用せず同様の方法で行う。
(1) 本発明のベンゾトリアゾール化合物と他のモノマーとを混合し、溶媒中又は無溶媒で重合開始剤を添加し撹拌すると共に、加熱、紫外線照射や乾燥し、反応後に溶媒を除去する方法
(2) 本発明のベンゾトリアゾール化合物とモノマーを含有するコーティング液を基材に塗布し、加熱、紫外線照射や乾燥で成膜する方法
(3) 本発明のベンゾトリアゾール化合物をモノマーと混合し、金型やガラス型に注型し加熱、紫外線照射や乾燥で硬化させ成形する方法
これらの方法のうち、(2)の本発明のベンゾトリアゾール化合物とモノマーを含有するコーティング液を塗布し成膜する方法は、透明な複層構造、フィルム、又はシートを得る点から本発明において好適である。
【0118】
この方法では、本発明のベンゾトリアゾール化合物とモノマーを、有機溶媒又は水系溶媒に希釈して、あるいは希釈しないでコーティング液を調製し、基材に塗布し成膜する。必要に応じて、乾燥、冷却、加熱、紫外線照射を行い、膜強度を向上させる。
【0119】
加熱及び乾燥により成膜する場合((3)についても)には、必要に応じてコーティング液には重合開始剤を添加する。重合開始剤としては、加熱の際にラジカルを発生するものであればよい。
【0120】
例えば、特に限定されないが、過酸化物系重合開始剤、アゾ化合物系重合開始剤、過硫酸塩系ラジカル重合開始剤を用いることができる。過酸化物系重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、オルトクロロベンゾイルペルオキシド、オルトメトキシベンゾイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド等が挙げられる。
【0121】
また、アゾ化合物系重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,3-ジメチルブチロニトリル)、2,2'-アゾビス-(2-メチルブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,3,3-トリメチルブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-イソプロピルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2'-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4'-アゾビス(4-シアノバレリン酸)、ジメチル-2,2'-アゾビスイソブチレート等が挙げられる。
【0122】
更には、過硫酸塩系ラジカル重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0123】
紫外線照射により成膜する場合には、必要に応じてコーティング液には光重合開始剤を添加する。光重合開始剤としては、紫外線が照射された際にラジカルを発生するものであればよい。特に限定されるものではないが、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類等を用いることができる。
【0124】
コーティング液には、必要に応じて、希釈のための溶媒を加えてもよい。溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素類;n-ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素類、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール等のエーテル類;メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類;、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n-ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸n-ペンチル、γ-プチロラクトン等のエステル類;メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;水等が挙げられる。
【0125】
コーティング液には、必要に応じて、消泡剤、レベリング剤、酸化防止剤、光安定剤、重合禁止剤、触媒、染料、顔料等の添加剤を配合してもよい。
【0126】
作製したコーティング液は、特に限定されるものではないが、バーコーター、グラビアコーター、コンマコーター、リップコーター、カーテンコーター、ロールコーター、ブレードコーター、スピンコーター、リバースコーター、ダイコーター、スプレー、ディッピング等の適宜の方法によって基材に塗布することができる。
【0127】
コーティング用の基材としては、特に限定されるものではないが、例えば、樹脂板、樹脂フィルム、樹脂シート、ガラス、建材、金属板、木材等が挙げられる。
【0128】
(部材)
以下、上記第1及び第2の実施形態に係るベンゾトリアゾール化合物を添加した本発明の部材、特に樹脂部材(本発明の重合体を含む。)について説明する。
【0129】
本発明のベンゾトリアゾール化合物は、有機、無機材料、特に樹脂に混合、混練して使用することもできる。又は第1の実施形態の本発明のベンゾトリアゾール化合物のビニル基と反応可能な置換基を有する有機、無機材料と混合、反応させて、有機、無機材料に紫外線吸収能を付与することもできる。これらは基材として有機、無機材料を用いた本発明の部材とされ、その中でも基材として樹脂を用いた場合には、本発明の樹脂部材とされる。
【0130】
本発明のベンゾトリアゾール化合物を混合、混練する樹脂としては、特に限定されないが、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリマレイミド、ポリアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエステル、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル-塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂、スチレン-イソプレン共重合体、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルスルホン酸及びその塩、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶プラスチック等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アクリルメラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、エピスルフィド樹脂、ナイロン樹脂等が挙げられる。中でも透明な樹脂を好ましく用いることができ、例えばポリカーボネート、ポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アクリルメラミン樹脂が挙げられる。より好ましくは、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、メラミン樹脂、アクリルメラミン樹脂が挙げられる。
【0131】
紫外線吸収剤を樹脂をはじめとする有機物及び無機物と加熱下で反応、混合、混練する場合や、紫外線吸収剤を含む樹脂部材を加熱により加工、成形する場合、紫外線吸収剤の熱分解温度が低いと分解し、紫外線吸収の効果を十分発揮できないため、熱分解温度が高い方が望ましい。この点から、上記第1の場合も含めて、本発明のベンゾトリアゾール化合物の5%重量減少温度は、255℃以上が好ましく、270℃以上がより好ましく、280℃以上がさらに好ましく、290℃以上が特に好ましく、300℃以上が一層好ましく、310℃以上が殊更好ましい。
【0132】
本発明の樹脂部材の成形方法は、特に限定されないが、射出成形法、押出成形法、カレンダー成形法、ブロー成形法、圧縮成形法等を用いることができる。押出機を使用する場合は、押出機によりフィルム化するか、あるいは押出機により原反を作製し、その後、1軸又は2軸に延伸してフィルムにする方法で樹脂部材を製造することができる。
【0133】
なお、混練する際に、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、高屈折率剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、可塑剤等の通常の樹脂成形に用いる添加剤を添加してもよい。
【0134】
本発明の樹脂部材を機能性の光学層を有するフィルムや部材の一部として使用する場合の膜厚は、樹脂材料の種類、密着性、硬度、光学特性等の要求される物性を満足することができる範囲内であれば特に限定されるものではないが、例えば50nm~250μmの範囲内である。
【0135】
本発明の樹脂部材は、合成樹脂が使用される全ての用途に使用でき、特に限定されるものではないが、特に日光又は紫外線を含む光に晒される可能性のある用途に特に好適に使用できる。例えば、ガラス代替品とその表面コーティング材、住居、施設、輸送機器等の窓ガラスとそのコーティング材、採光ガラス及び光源保護ガラス用のコーティング材、住居、施設、輸送機器等の照明保護部材のコーティング材、住居、施設、輸送機器等のウインドウフィルム、住居、施設、輸送機器等の内外装材及び内外装用塗料及び該塗料によって形成させる塗膜、蛍光灯、水銀灯、ハロゲン電球、LEDライト等の光源用部材、精密機械、電子電気機器用部材、各種ディスプレイから発生する電磁波等の遮断用材、食品、化学品、薬品、化粧品等の容器又は包装材、農工業用シート又はフィルム材、印刷物、染色物、染顔料等の退色防止剤、安全ガラス、ガラス中間層、化粧品、衣料用繊維製品及び繊維、カーテン、絨毯、壁紙等の家庭用内装品、プラスチックレンズ、コンタクトレンズ、義眼等の医療用器具、光学フィルター、標示板、標示器等とその表面コーティング材等を挙げることができる。
【0136】
中でも、本発明の樹脂部材は、マトリックスの透明性を維持しつつ、紫外線吸収能や、高屈折率の付与が可能である点から、特に光学材料、中でも機能性の光学層を有するフィルムや部材、粘着剤、接着剤、光学成形品に好適である。
【0137】
機能性の光学層を有するフィルムや部材としては、単層フィルムや、基材フィルム又は基板に、各種用途に応じた1層又は複層の光学層が設けられた多層フィルムや光学層付き基板でもよく、複層の光学層が設けられる場合にはその少なくとも1層に本発明の樹脂部材が使用される。
【0138】
機能性の光学層を有するフィルムや部材のうち、光学フィルムとしては、基材フィルムに各種用途に応じた機能層が設けられたものであってもよく、特に限定されるものではないが、例えば、各種光ディスク基板保護フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、配向フィルム、偏光フィルム、偏光層保護フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルム、視野角向上フィルム、電磁波シールドフィルム、防眩フィルム、遮光フィルム及び輝度向上フィルム等が挙げられる。
【0139】
機能性の光学層を有する部材としては、特に限定されるものではないが、例えば、パネル基板等の表面に、反射防止層、ハードコート層、帯電防止層、密着安定層、保護層、電磁波シールド層、赤外線カット層等の少なくともいずれかを、1層又は複層で積層した部材等が挙げられる。
【0140】
また本発明の樹脂部材は、太陽電池用表面保護フィルムに好適である。太陽電池素子は通常、一対の基板の間に、太陽電池として働く活性層が設けられた構成をしているが、フレキシブルな太陽電池は、その部材として用いられるガスバリアフィルム等のポリエステル材料や、有機太陽電池においては活性層そのものが、紫外線を吸収して劣化してしまうため、紫外線吸収性の保護フィルムを必要とする。また、太陽電池は、屋外で、永年に渡って設置されるため、このような保護フィルムには、高い耐候性が求められる。更に、太陽電池は、光エネルギーを吸収して電力に変換することから、このような保護フィルムには、高い透明性が求められる。すなわち、フレキシブルな太陽電池を保護するための保護フィルムは、高い透明性、高い紫外線吸収能、高い耐候性、及びフレキシブル性が求められるが、本発明の樹脂部材はこのような用途に適している。
【0141】
また本発明の樹脂部材は、眼鏡用プラスチックのレンズ素子、コンタクトレンズ、光ピックアップレンズ、カメラ用レンズ及びレンチキュラーレンズ等の光学レンズ、プリズム、フィルター、並びにタッチパネル用基板及び導光板等の光学基板、光ファイバー、情報記録基盤等の光学成形品に好適に用いることができる。光学レンズとしては、フレネルレンズフィルム、レンチキュラーレンズフィルム等のレンズフィルムのようなプラスチックレンズや、小型化した光学機能素子で集光性や光拡散性を高める目的や撮像素子の受光素子への集光等の目的で使用される、数μmサイズの微小径のマイクロレンズを使用したマイクロレンズアレイにも好適である。
【0142】
また本発明の樹脂部材は、ディスプレイ用基板及びフィルム、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、電子ペーパー等のフラットパネルディスプレイ用基板及びフィルム又は液晶ディスプレイ、信号、ネオンサイン等のバックライト用基板及びフィルム等にも好適である。
【0143】
また、本発明のベンゾトリアゾール化合物は、無機材料に適用することもできる。無機材料としては、特に限定されないが、例えば、ゾルゲル法によるシリカ質材料、ガラス、水ガラス、低融点ガラス、石英、シリコン樹脂、アルコキシシラン、シランカップリング剤等が挙げられる。ガラスとしては、特に限定されないが、例えば、酸化珪素、無アルカリガラス、ソーダガラス等が挙げられる。水ガラスとしては、特に限定されないが、水溶性アルカリ金属塩の水溶液、例えば、珪酸ソーダ、珪酸カリウム等が挙げられる。低融点ガラスとしては、特に限定されないが、例えば、主成分として酸化鉛(PbO)と無水ほう酸(B23)とを含むガラス等が挙げられる。シリコン樹脂としては、特に限定されないが、例えば、メチルシリコン樹脂、メチルフェニルシリコン樹脂、及びエポキシ樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂等で変性された有機樹脂変性シリコン樹脂等が挙げられる。アルコキシシランとしては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3,3,3-トリフロロプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。シランカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランN-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-イソシアネートプロピルエトキシシラン等が挙げられる。
【0144】
また、本発明のベンゾトリアゾール化合物は、上記の機能を持ちながら、紫外線吸収剤によって安定化、機能化することが求められる用途に使用され、特に限定されないが、例えば、ガラス代替品、住居、施設、輸送機器等の窓ガラス、採光ガラス、住居、施設、輸送機器等の照明部材及び保護部材、住居、施設、輸送機器等の内外装材及び内外装用塗料及び該塗料によって形成させる塗膜、蛍光灯、水銀灯、ハロゲン電球、LEDライト等の光源用部材、精密機械、電子電気機器用部材、各種ディスプレイから発生する電磁波等の遮断用材、食品、化学品、薬品等の容器又は包装材、印刷物、染色物、染顔料等の退色防止剤、樹脂部材の保護膜、安全ガラス、ガラス中間層、化粧品、衣料用繊維製品及び繊維、カーテン、絨毯、壁紙等の家庭用内装品、プラスチックレンズ、義眼等の医療用器具、光学フィルター、バックライトディスプレーフィルム、プリズム、鏡、写真材料等の光学用品、文房具、標示板、標示器等とその表面コーティング材等にも用いることができる。
【実施例
【0145】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
1.紫外線吸収剤の合成
<中間体化合物の合成>
下記式で表される中間体1~7を合成した。
<中間体1>
【0146】
【化8】
【0147】
2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(5.00g 15.8mmol)、2-メルカプトエタノール(2.48g 31.7mmol)、炭酸カリウム(4.82g 69.7mmol)及び、よう化カリウム(3.95g 47.5mmol)を、DMF13mL中で、8時間135~140℃で加熱撹拌を行った。反応終了後、pH調製、濾過、MeOH洗浄を行い、カラム精製後、再結晶をすることで、淡黄色固体の中間体1を得た。
<中間体2>
【0148】
【化9】
【0149】
2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(6.85g 21.7mmol)、3-メルカプト-1-プロパノール(3.00g 32.5mmol)、炭酸カリウム(6.60g 47.7mmol)及び、よう化カリウム(0.25g 1.52mmol)を、DMF30mL中で、8時間135~140℃で加熱撹拌を行った。反応終了後、pH調製、濾過、MeOH洗浄を行い、再結晶をすることで、淡黄色固体の中間体2を得た。
<中間体3>
【0150】
【化10】
【0151】
2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(18.82g 59.6mmol)、6-メルカプト-1-ヘキサノール(12.00g 89.4mmol)、炭酸カリウム(18.21g 131.1mmol)及び、よう化カリウム(0.69g 4.17mmol)を、DMF60mL中で、10時間135~140℃で加熱撹拌を行った。反応終了後、pH調製、濾過、MeOH洗浄を行い、再結晶をすることで、淡黄色固体の中間体3を得た。
<中間体4>
【0152】
【化11】
【0153】
2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(25.0g 79.2mmol)、4-ヒドロキシベンゼンチオール(20.0g 158.3mmol)、炭酸カリウム(24.1g, 174.2mmol)及びヨウ化カリウム(0.92g5.54mmol)を、DMF66mL中で、125℃、12時間反応した。反応終了後、pHを調整した後、濾過、メタノール洗浄、水洗を行い、再結晶、カラム精製をすることにより、淡黄色固体の中間体4を得た。
<中間体5>
【0154】
【化12】
【0155】
中間体4(0.50g 1.23mmol)、6-ブロモ-1-ヘキサノール(0.23g 1.29mmol)、炭酸カリウム(0.33g 2.46mmol)をアセトニトリル15mL中で、80℃、15時間反応を行った。反応終了後、酸処理、水洗を行い、有機層をエバポレートし、黄色の粗生成物を得た後、カラム精製することで、淡黄色液体の中間体5を合成した。
<中間体6>
【0156】
【化13】
【0157】
2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(5.00g 15.8mmol)、4-アミノベンゼンチオール(2.97g 23.8mmol)、炭酸カリウム(4.81g, 34.8mmol)及びよう化カリウム(0.18g1.11mmol)を、DMF30g中で、135℃、3時間反応した。反応終了後、pHを調整した後、濾過、水洗、MeOH洗浄を行い、再結晶することにより、淡黄色固体の中間体6を得た。
<中間体7>
【0158】
【化14】
【0159】
4-アミノベンゼンチオール(1.50g 12.0mmol)とイソシアン酸オクタデシル(3.54g 12.0mmol)、DMF10mL中で、8時間90℃で加熱攪拌を行った。反応終了後、MeOHを加え析出した結晶を濾過することで、乳白色の粗生成物を得た。このようして得られた粗生成物をMeOHにて再結晶することで、白色の中間体7を得た。
【0160】
下記化学式で表される化合物1~9、13~27を合成した。
<化合物1>
【0161】
【化15】
【0162】
中間体3(0.50g 1.21mmol)、アクリル酸(0.13g 1.82mmol)とp-トルエンスルホン酸(0.023g 0.12mmol)をトルエン15mL中で、18時間80~90℃で加熱撹拌を行った。反応終了後、キョーワード500を加え1時間攪拌し、濾過を行い、ろ液をエバポレートし、黄色の粗生成物を得た後、再結晶することで、淡黄色固体の化合物1を合成した。物性値を下記に示す。
FT-IR(KBr):3099cm-1:O-H伸縮振動 1719cm-1:C=O伸縮振動 1411, 1362cm-1:トリアゾール環伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ 1.31-1.54 (m, 13H, -O-CH2CH2CH 2CH 2CH2CH2-S-, -Ph-OH-CH3-C(CH 3)3) , 1.68 (quin, 2H, -O-CH2CH 2CH2CH2CH2CH2-S-), 1.74 (quin, 2H, -O-CH2CH2CH2CH2CH 2CH2-S-) , 2.38 (s, 3H, -Ph-OH-CH 3-C(CH3)3) , 3.03 (t, 2H, -O-CH2CH2CH2CH2CH2CH 2-S-), 4.17 (t, 2H, -O-CH 2CH2CH2CH2CH2CH2-S-), 6.12 (q, 1H, CH2=CH-C(=O)-O-), 6.37, 5.79 (d, 1H, CH 2=CH-C(=O)-O-), 7.16 (s, 1H), 7.38 (d, 1H), 7.71 (s, 1H), 7.81 (d, 1H), 8.05 (S, 1H), (insg.5arom. CH), 11.59 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3 400MHz): δ 20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 25.6 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 28.5~29.5 (C=C-C(=O)-O-CH2CH2(CH2)3CH2-S), 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3) , 33.1 (C=C-C(=O)-O-(CH2)4 CH2CH2-S), 35.4(C=C-C(=O)-O-(CH2)5 CH2-S), 64.4 (C=C-C(=O)-O-CH2(CH2)5-S), 113.8, 117.6, 119.3, 128.6, 129.3 (CHarom), 125.4, 141.2, 143.4 (C arom), 128.3 (Carom-CH3), 137.4(C arom-S), 139.1(C arom-C(CH3)3), 146.7(C arom-OH) 128.7 (C=C-C(=O)-O-) , 130.6 (C=C-C(=O)-O-) , 166.3 (C=C-C(=O)-O-)
<化合物2>
【0163】
【化16】
【0164】
中間体1(0.60g 1.68mmol)、メタクリル酸(0.22g 2.51mmol)とp-トルエンスルホン酸(0.0319g 0.168mmol)をトルエン15mL中で、18時間80~90℃で加熱撹拌を行った。反応終了後、キョーワード500を加え1時間攪拌し、濾過を行い、ろ液をエバポレートし液状の粗生成物を得た後、カラム精製することで、淡黄色粘性液体の化合物2を得た。物性値を下記に示す。
FT-IR(KBr):2956cm-1:O-H伸縮振動 1720cm-1:C=O伸縮振動 1451, 1359cm-1:トリアゾール環伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ 1.49 (S, 9H, -Ph-OH-CH3-C(CH 3)3) , 1.92 (S, 3H, CH2=C(CH 3)-C(=O)-O-), 2.39 (s, 3H, -Ph-OH-CH 3-C(CH3)3) , 3.33 (t, 2H, -O-CH2CH 2-S-), 4.41 (t, 2H, -O-CH 2CH2-S-), 5.56 (S, 1H, CH 2=C(CH3)-C(=O)-O-), 6.09 (S, 1H, CH 2=C(CH3)-C(=O)-O-), 7.18 (s, 1H), 7.44 (d, 1H), 7.83 (s, 1H), 7.89 (d, 1H), 8.06 (S, 1H), (insg.5arom. CH), 11.57 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3 400MHz): δ 18.3 (C=C(CH3)-C(=O)-O-), 20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 32.1 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 35.4(C=C-C(=O)-O-CH2 CH2-S), 62.8 (C=C-C(=O)-O-CH2CH2-S), 115.7, 118.0, 119.4, 128.9, 129.6 (CHarom), 125.4, 141.5, 143.2 (C arom), 128.3 (Carom-CH3), 135.9(C arom-S), 139.2(C arom-C(CH3)3), 146.7(C arom-OH) 126.1 (C=C(CH3)-C(=O)-O-) , 135.8 (C=C(CH3)-C(=O)-O-) , 167.1 (C=C(CH3)-C(=O)-O-)
<化合物3>
【0165】
【化17】
【0166】
中間体2(3.00g 8.08mmol)、メタクリル酸(1.04g 12.11mmol)とp-トルエンスルホン酸(0.15g 0.81mmol)をトルエン50mL中で、18時間80~90℃で加熱撹拌を行った。反応終了後、キョーワード500を加え1時間攪拌し、濾過を行い、ろ液をエバポレートし、黄色の粗生成物を得た後、再結晶することで、淡黄色固体の化合物3を合成した。物性値を下記に示す。
FT-IR(KBr):2958cm-1:O-H伸縮振動 1706cm-1:C=O伸縮振動 1453, 1392cm-1:トリアゾール環伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ 1.49 (S, 9H, -Ph-OH-CH3-C(CH 3)3) , 1.96 (S, 3H, CH2=C(CH 3)-C(=O)-O-), 2.01 (quin, 2H, -O-CH2CH 2CH2-S-) , 2.38 (s, 3H, -Ph-OH-CH 3-C(CH3)3) , 3.13 (t, 2H, -O-CH2CH2CH 2-S-), 4.31 (t, 2H, -O-CH 2CH2CH2-S-), 5.60 (S, 1H, CH 2=C(CH3)-C(=O)-O-), 6.14 (S, 1H, CH 2=C(CH3)-C(=O)-O-), 7.17 (s, 1H), 7.40 (d, 1H), 7.76 (s, 1H), 7.81 (d, 1H), 8.05 (S, 1H), (insg.5arom. CH), 11.58 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3 400MHz): δ 18.4 (C=C(CH3)-C(=O)-O-), 20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 28.1 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3) , 29.9 (C=C-C(=O)-O-CH2 CH2CH2-S), 35.4 (C=C-C(=O)-O-CH2CH2 CH2-S), 63.0 (C=C-C(=O)-O-CH2CH2CH2-S), 114.5, 117.8, 119.3, 128.8, 129.4 (CHarom), 125.4, 141.4, 143.3 (C arom), 128.3 (Carom-CH3), 136.8 (C arom-S), 139.2 (C arom-C(CH3)3), 146.7(C arom-OH), 125.7 (C=C(CH3)-C(=O)-O-), 136.2 (C=C(CH3)-C(=O)-O-), 167.3 (C=C(CH3)-C(=O)-O-)
<化合物4>
【0167】
【化18】
【0168】
中間体3(0.60g 1.50mmol)、メタクリル酸(0.22g 2.55mmol)とp-トルエンスルホン酸(0.0323g 0.17mmol)をトルエン15mL中で、18時間80~90℃で加熱撹拌を行った。反応終了後、キョーワード500を加え1時間攪拌し、濾過を行い、ろ液をエバポレートし、黄色の粗生成物を得た後、再結晶することで、淡黄色固体の化合物4を合成した。物性値を下記に示す。
FT-IR(KBr):2943cm-1:O-H伸縮振動 1712cm-1:C=O伸縮振動 1433, 1362cm-1:トリアゾール環伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ 1.44-1.54 (m, 13H, -O-CH2CH2CH 2CH 2CH2CH2-S-, -Ph-OH-CH3-C(CH 3)3) , 1.70 (quin, 2H, -O-CH2CH 2CH2CH2CH2CH2-S-), 1.74 (quin, 2H, -O-CH2CH2CH2CH2CH 2CH2-S-) , 1.94 (S, 3H, CH2=C(CH 3)-C(=O)-O-), 2.38 (s, 3H, -Ph-OH-CH 3-C(CH3)3) , 3.05 (t, 2H, -O-CH2CH2CH2CH2CH2CH 2-S-), 4.14 (t, 2H, -O-CH 2CH2CH2CH2CH2CH2-S-), 5.54 (S, 1H, CH 2=C(CH3)-C(=O)-O-), 6.09 (S, 1H, CH 2=C(CH3)-C(=O)-O-), 7.16 (s, 1H), 7.37 (d, 1H), 7.71 (s, 1H), 7.82 (d, 1H), 8.05 (S, 1H), (insg.5arom. CH), 11.59 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3 400MHz): δ 18.3 (C=C(CH3)-C(=O)-O-), 20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 25.6 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 28.5~29.5 (C=C(CH3)-C(=O)-O-CH2CH2(CH2)3CH2-S) , 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3) , 33.1 (C=C(CH3)-C(=O)-O-(CH2)4 CH2CH2-S), 35.4 (C= C(CH3)-C(=O)-O- CH2(CH2)4 CH2-S), 64.6 (C= C(CH3)-C(=O)-O-CH2(CH2)4CH2-S), 113.8, 117.6, 119.3, 128.7, 129.3 (CHarom), 125.4, 141.2, 143.3 (C arom), 128.3 (Carom-CH3), 137.8 (C arom-S), 139.1 (C arom-C(CH3)3), 146.7(C arom-OH), 125.3 (C=C(CH3)-C(=O)-O-), 137.8 (C=C(CH3)-C(=O)-O-), 167.3 (C=C(CH3)-C(=O)-O-)
<化合物5>
【0169】
【化19】
【0170】
中間体4(0.50g 1.23mmol)、メタクリロイルクロリド(0.26g 2.47mmol)とトリエチルアミン(0.21g 2.71mmol)を塩化メチレン15mL中で、15時間室温で攪拌を行った。反応終了後、クロロホルムと水を加え二層とし、酸処理、水洗を行い、有機層をエバポレートし、黄色の粗生成物を得た後、再結晶することで、淡黄色固体の化合物5を合成した。物性値を下記に示す。
FT-IR(KBr): FT-IR(KBr):2956cm-1:O-H伸縮振動 1724cm-1:C=O伸縮振動 1446, 1391cm-1:トリアゾール環伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ 1.48 (s, 9H, -Ph-OH-CH3-C(CH 3)3) , 2.08 (S, 3H, CH2=C(CH 3)-C(=O)-O-), 2.38 (s, 3H, -Ph-OH-CH 3-C(CH3)3), 5.79 (S, 1H, CH 2=C(CH3)-C(=O)-O-), 6.37 (S, 1H, CH 2=C(CH3)-C(=O)-O-), 7.12 (s, 1H), 7.18(d, 2H), 7.35 (d, 1H), 7.51 (d, 2H), 7.70 (s, 1H), 7.82 (d, 1H), 8.04 (s, 1H), (insg.9arom. CH), 11.55 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3 400MHz): δ 18.4 (C=C(CH3)-C(=O)-O-), 20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 25.6 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3) , 116.7, 118.1, 119.3, 128.7, 129.3, 125.4, 134.0 (CHarom), 125.4, 141.7, 143.2 (C arom), 128.3 (C arom-CH3), 128.9 (C arom-S), 137.3 (C arom-S), 139.2 (C arom-C(CH3)3), 146.7(C arom-OH), 151.1(C arom-O-), 125.4 (C=C(CH3)-C(=O)-O-), 135.7 (C=C(CH3)-C(=O)-O-), 167.3 (C=C(CH3)-C(=O)-O-)
<化合物6>
【0171】
【化20】
【0172】
中間体5(0.50g 0.98mmol)を用いて、メタクリル酸(0.13g 1.48mmol)とp-トルエンスルホン酸(0.0188g 0.0989mmol)をトルエン15mL中で、18時間80~90℃で加熱撹拌を行った。反応終了後、キョーワード500を加え1時間攪拌し、濾過を行い、ろ液をエバポレートすることで粗生成物を得た。このようして得られた粗生成物をカラム精製することで、淡黄色の粘性液体化合物6を得た。物性値を下記に示す。
FT-IR(KBr):2958cm-1:O-H伸縮振動 1716cm-1:C=O伸縮振動 1453, 1392cm-1:トリアゾール環伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ1.31-1.46 (m, 4H, -O-CH2CH2CH 2CH 2CH2CH2-O-Ph-) ,1.47 (s, 9H, -Ph-OH-CH3-C(CH 3)3) , 1.72 (quin, 2H, -O-CH2CH 2CH2CH2CH2CH2-O-Ph-), 1.84 (quin, 2H, -O-CH2CH2CH2CH2CH 2CH2-O-Ph-) , 1.95 (S, 3H, CH2=C(CH 3)-C(=O)-O-), 2.36 (s, 3H, -Ph-OH-CH 3-C(CH3)3), 4.01 (t, 2H, -O-CH2CH2CH2CH2CH2CH 2-O-Ph-), 4.17 (t, 2H, -O-CH 2CH2CH2CH2CH2CH2-O-Ph-),5.56 (S, 1H, CH 2=C(CH3)-C(=O)-O-), 6.11 (S, 1H, CH 2=C(CH3)-C(=O)-O-), 6.94(d, 2H), 7.12 (s, 1H), 7.31 (d, 1H), 7.42 (s, 1H), 7.51 (d, 2H), 7.76 (d, 1H), 8.04 (s, 1H), (insg.9arom. CH), 11.57 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3 400MHz): 18.3 (C=C(CH3)-C(=O)-O-), 20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 25.8 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 28.6~29.1 (O-CH2CH2(CH2)3CH2-O-Ph) , 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3) , 30.4 (O- CH2 CH2(CH2)4-O-Ph), 35.4 (O-CH2(CH2)4CH2-O-Ph), 38.8 (O-CH2(CH2)4 CH2-O-Ph), 113.7, 115.9, 117.7, 119.3, 128.7, 130.9, 136.5 (CHarom), 125.2, 141.3, 143.3 (C arom), 128.3 (C arom-CH3), 128.8 (C arom-S), 136.4 (C arom-S), 139.1 (C arom-C(CH3)3), 146.7(C arom-OH), 160.1(C arom-O-), 125.4 (C=C(CH3)-C(=O)-O-), 135.7 (C=C(CH3)-C(=O)-O-), 167.8 (C=C(CH3)-C(=O)-O-)
<化合物7>
【0173】
【化21】
【0174】
中間体3(2.00g 4.84mmol)クロトン酸(0.63g 7.26mmol)とp-トルエンスルホン酸(0.0912g 0.48mmol)をトルエン50mL中で、18時間80~90℃で加熱撹拌を行った。反応終了後、キョーワード500を加え1時間攪拌し、濾過を行い、ろ液をエバポレートし、黄色の粗生成物を得た後、再結晶することで、淡黄色固体の化合物7を合成した。物性値を下記に示す。
FT-IR(KBr):2953cm-1:O-H伸縮振動 1719cm-1:C=O伸縮振動 1446, 1392cm-1:トリアゾール環伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ 1.42-1.64 (m, 13H, -O-CH2CH2CH 2CH 2CH2CH2-S-, -Ph-OH-CH3-C(CH 3)3) , 1.66 (quin, 2H, -O-CH2CH 2CH2CH2CH2CH2-S-), 1.74 (quin, 2H, -O-CH2CH2CH2CH2CH 2CH2-S-) , 1.87 (S, 3H, CH 3CH=CH-C(=O)-O-), 2.38 (s, 3H, -Ph-OH-CH 3-C(CH3)3) , 3.03 (t, 2H, -O-CH2CH2CH2CH2CH2CH 2-S-), 4.14 (t, 2H, -O-CH 2CH2CH2CH2CH2CH2-S-), 5.82 (d, 1H, CH3CH=CH-C(=O)-O-), 6.97 (quin, 1H, CH3CH=CH-C(=O)-O-), 7.16 (s, 1H), 7.35 (d, 1H), 7.70 (s, 1H), 7.81 (d, 1H), 8.04 (S, 1H), (insg.5arom. CH), 11.59 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3 400MHz): δ 18.0 (CH3C=C-C(=O)-O-), 20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 25.6 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 28.5~28.5 (CH3C=C-C(=O)-O-CH2CH2(CH2)3CH2-S), 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3) , 33.1 (CH3C=C-C(=O)-O-(CH2)4 CH2CH2-S), 35.4 (CH3C=C-C(=O)-O-(CH2)5 CH2-S), 64.1 (CH3C=C-C(=O)-O-CH2(CH2)5-S), 113.8, 117.6, 119.3, 128.7, 129.3 (CHarom), 125.4, 141.2, 143.2 (C arom), 128.3 (Carom-CH3), 137.8(C arom-S), 139.1 (C arom-C(CH3)3), 146.8 (C arom-OH) 122.8 (CH3C=C-C(=O)-O-) , 144.5 (CH3 C=C-C(=O)-O-) , 166.6 (CH3C=C-C(=O)-O-)
<化合物8>
【0175】
【化22】
【0176】
中間体3(1.00g 4.84mmol)、2-ヘキセン酸(0.42g 7.26mmol)とp-トルエンスルホン酸(0.0461g 0.48mmol)をトルエン50mL中で、18時間80~90℃で加熱撹拌を行った。反応終了後、キョーワード500を加え1時間攪拌し、濾過を行い、ろ液をエバポレートし、黄色の粗生成物を得た後、再結晶することで、淡黄色固体の化合物8を合成した。物性値を下記に示す。
FT-IR(KBr):2956cm-1:O-H伸縮振動 1715cm-1:C=O伸縮振動 1446, 1391cm-1:トリアゾール環伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ0.92 (m, 3H, CH 3CH2CH2CH=CH-C(=O)-O-) , 1.49-1.55 (m, 15H, -O-CH2CH2CH 2CH 2CH2CH2-S-, CH3CH 2CH2CH=CH-C(=O)-O-, -Ph-OH-CH3-C(CH 3)3) , 1.68 (quin, 2H, -O-CH2CH 2CH2CH2CH2CH2-S-), 1.75 (quin, 2H, -O-CH2CH2CH2CH2CH 2CH2-S-) , 2.17 (q, 2H, CH3CH2CH 2CH=CH-C(=O)-O-), 2.38 (s, 3H, -Ph-OH-CH 3-C(CH3)3) , 3.04 (t, 2H, -O-CH2CH2CH2CH2CH2CH 2-S-), 4.13 (t, 2H, -O-CH 2CH2CH2CH2CH2CH2-S-), 5.83 (d, 1H, CH3(CH2)2CH=CH-C(=O)-O-), 6.96 (S, 1H, CH3(CH2)2CH=CH-C(=O)-O-), 7.17 (s, 1H), 7.36 (d, 1H), 7.71 (s, 1H), 7.82 (d, 1H), 8.05 (s, 1H), (insg.5arom. CH), 11.60 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3 400MHz): δ 13.7 (CH3(CH2)2C=C-C(=O)-O-), 20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 25.6 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 28.6~28.6 (CH3(CH2)2C=C-C(=O)-O-CH2CH2(CH2)3CH2-S), 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3) , 34.2 (CH3(CH2)2C=C-C(=O)-O-(CH2)4 CH2CH2-S), 35.4 (CH3(CH2)2C=C-C(=O)-O-(CH2)5 CH2-S), 64.1 (CH3(CH2)2C=C-C(=O)-O-CH2(CH2)5-S), 113.8, 117.6, 119.3, 128.7, 129.3 (CHarom), 125.4, 141.2, 143.4 (C arom), 128.3 (Carom-CH3), 137.8(C arom-S), 139.1 (C arom-C(CH3)3), 149.3 (C arom-OH) 121.3 (CH3(CH2)2=C-C(=O)-O-) , 146.7 (CH3(CH2)2 C=C-C(=O)-O-) , 166.8 (CH3(CH2)2C=C-C(=O)-O-)
<化合物9>
【0177】
【化23】
【0178】
中間体3(0.27g 0.66mmol)、2-ヘキサデセン酸(0.25g 0.98mmol)とp-トルエンスルホン酸(0.0125g 0.0655mmol)をトルエン15mL中で、18時間80~90℃で加熱撹拌を行った。反応終了後、キョーワード500を加え1時間攪拌し、濾過を行い、ろ液をエバポレートし、液状の粗生成物を得た後、カラム精製することで淡黄色粘性液体の化合物9を得た。物性値を下記に示す。
FT-IR(KBr):2925cm-1:O-H伸縮振動 1723cm-1:C=O伸縮振動 1464, 1391cm-1:トリアゾール環伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ0.94 (t, 3H, CH 3CH2CH2CH=CH-C(=O)-O-) , 1.32-1.57 (m, 35H, -O-CH2CH2CH 2CH 2CH2CH2-S-, CH3(CH 2)11CH2CH=CH-C(=O)-O-, -Ph-OH-CH3-C(CH 3)3) , 1.68 (quin, 2H, -O-CH2CH 2CH2CH2CH2CH2-S-), 1.75 (quin, 2H, -O-CH2CH2CH2CH2CH 2CH2-S-) , 2.17 (q, 2H, CH3(CH2)11CH 2CH=CH-C(=O)-O-), 2.38 (s, 3H, -Ph-OH-CH 3-C(CH3)3) , 3.04 (t, 2H, -O-CH2CH2CH2CH2CH2CH 2-S-), 4.14 (t, 2H, -O-CH 2CH2CH2CH2CH2CH2-S-), 6.96 (d, 1H, CH3(CH2)12CH=CH-C(=O)-O-), 7.53 (q, 1H, CH3(CH2)12CH=CH-C(=O)-O-), 7.17 (s, 1H), 7.36 (d, 1H), 7.71 (s, 1H), 7.82 (d, 1H), 8.05 (s, 1H), (insg.5arom. CH), 11.60 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3 400MHz): δ 14.0 (CH3(CH2)12C=C-C(=O)-O-), 20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 23.0 (CH3 CH2CH2(CH2)10C=C-C(=O)-O-), 25.6 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 28.0~30.4 (CH3CH2CH2 (CH2)9CH2C=C-C(=O)-O-), 28.5~28.6 (CH3(CH2)12C=C-C(=O)-O-CH2CH2(CH2)3CH2-S), 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3) , 31.9 (CH3CH2 CH2(CH2)10C=C-C(=O)-O-), 32.2 (CH3(CH2)11 CH2C=C-C(=O)-O-), 33.1 (CH3(CH2)12C=C-C(=O)-O-(CH2)4 CH2CH2-S), 35.4 (CH3(CH2)12C=C-C(=O)-O-(CH2)5 CH2-S), 64.1 (CH3(CH2)12C=C-C(=O)-O-CH2(CH2)5-S), 113.8, 117.6, 119.3, 128.7, 129.3 (CHarom), 125.4, 141.2, 143.4 (C arom), 128.3 (Carom-CH3), 137.8(C arom-S), 139.1 (C arom-C(CH3)3), 149.7 (C arom-OH) 121.1 (CH3(CH2)12=C-C(=O)-O-) , 146.7 (CH3(CH2)12 C=C-C(=O)-O-) , 166.9 (CH3(CH2)12C=C-C(=O)-O-)
<化合物13>
【0179】
【化24】
【0180】
中間体1(0.40g 1.21mmol)、アセチルクロリド(0.18g 0.18mmol)とトリエチルアミン(0.19g 2.46mmol)を塩化メチレン15mL中で、18時間室温で撹拌を行った。反応終了後、水、クロロホルムを加え酸処理、水洗を行い、有機層をエバポレートすることで粗生成物を得た。このようして得られた粗生成物をカラム精製及び再結晶することで、淡黄色固体の化合物13を得た。物性値を下記に示す。
FT-IR(KBr):3011cm-1:O-H伸縮振動 1744cm-1:C=O伸縮振動 1448, 1361cm-1:トリアゾール環伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ 1.49 (s, 9H, -Ph-OH-CH3-C(CH 3)3) , 2.05 (s, 3H, CH 3-C=O-O-), 2.39 (s, 3H, -Ph-OH-CH 3-C(CH3)3) , 3.28 (t, 2H, -C=O-O-CH2CH 2-S) , 4.33 (t, 2H, -C=O-O-CH 2CH2-S)
7.18 (d, 2H), 7.74(s, 1H), 7.83 (d, 1H), 7.87 (s, 1H), 8.06 (s, 1H), (insg.5arom. CH), 11.62 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3 400MHz): δ 20.8 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 29.6 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3) , 32.2 (-C=O-O-CH2 CH2-S) , 35.4 (CH3-C(=O)-O-), 62.5 (-C=O-O-CH2CH2-S)
115.8, 118.0, 119.4, 128.4, 135.8 (CHarom), 125.4, 141.6, 143.3 (C arom), 128.9 (Carom-CH3), 129.7 (C arom-S), 139.2 (C arom-C(CH3)3), 146.8(C arom-OH), 170.7 (CH3-C=O-O-)
<化合物14>
【0181】
【化25】
【0182】
中間体1(2.00g 5.59mmol)、塩化ベンゾイル(1.18g 8.39mmol)とトリエチルアミン(0.89g 11.19mmol)を塩化メチレン30mL中で、18時間室温で撹拌を行った。反応終了後、水、クロロホルムを加え酸処理、水洗を行い、有機層をエバポレートすることで粗生成物を得た。このようして得られた粗生成物をカラム精製及び再結晶することで、淡黄色固体の化合物14を得た。物性値を下記に示す。
FT-IR(KBr):2963cm-1:O-H伸縮振動 1719cm-1:C=O伸縮振動 1449, 1357cm-1:トリアゾール環伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ 1.50 (s, 9H, -Ph-OH-CH3-C(CH 3)3) , 2.39 (s, 3H, -Ph-OH-CH 3-C(CH3)3) , 3.41 (t, 2H, -C=O-O-CH2CH 2-S) , 4.59 (t, 2H, -C=O-O-CH 2CH2-S)7.19 (s, 1H), 7.38(t, 2H), 7.45 (d, 1H), 7.50 (t, 1H), 7.81 (d, 1H), 7.91~7.96 (m, 3H), 8.05 (s, 1H), (insg.10arom. CH), 11.54 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3 400MHz): δ 20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 29.6 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3) , 32.5 (-C=O-O-CH2 CH2-S) , 35.4 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 63.4 (-C=O-O-CH2CH2-S)116.3, 118.0, 119.4, 128.3 , 128.9, 129.8 , 133.1, 135.8 (CHarom), 125.4, 141.6, 143.3 (C arom), 128.3 (Carom-CH3), 129.7 (C arom-S), 139.2 (C arom-C(CH3)3), 146.8(C arom-OH), 166.3 (Ph-C(=O)-O-)
<化合物15>
【0183】
【化26】
【0184】
中間体2(0.50g 1.35mmol)、デカン酸(0.35g 2.02mmol)とp-トルエンスルホン酸(0.0256g 0.14mmol)をトルエン15mL中で、18時間80~90℃で加熱撹拌を行った。反応終了後、キョーワード500を加え1時間攪拌し、濾過を行い、ろ液をエバポレートすることで粗生成物を得た。このようして得られた粗生成物をカラム精製することで、薄黄色の固体化合物15を合成した。物性値を下記に示す。
FT-IR(KBr):3339cm-1:O-H伸縮振動 1685cm-1:C=O伸縮振動 1470, 1359cm-1:トリアゾール環伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ0.87 (t, 3H, CH 3(CH2)6-C=O-O-), 1.25 (m, 8H, CH3(CH 2)4CH2CH2-C=O-O-), 1.49 (s, 9H, -Ph-OH-CH3-C(CH 3)3), 1.63 (quin, 4H, CH3(CH2)13CH2CH 2CH2-C=O-O-CH2CH 2(CH2)4-S), 1.73 (quin, 2H, -C=O-O-CH2CH 2CH2-S), 2.06 (quin, 2H, CH3(CH2)4CH 2CH2-C=O-O-), 2.38 (s, 3H, -Ph-OH-CH 3-C(CH3)3), 3.11 (t, 2H, -C=O-O-CH2CH2CH 2-S), 4.23 (t, 2H, -C=O-O-CH 2CH2CH2-S), 7.17(s, 1H), 7.37 (s, 1H), 7.75 (d, 1H), 7.81 (d, 1H), 8.05 (s, 1H), (insg.5arom. CH), 11.58 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3 400MHz): 14.1 (CH3(CH2)6-C=O-O-), 20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 22.7 (CH3 CH2(CH2)5-C=O-O-), 25.0 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 28.1 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3) ,29.3~29.6 (CH3CH2(CH2)3CH2CH2-C=O-O-) , 28.1 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3) , 30.0 (-C=O-O-CH2 CH2CH2-S), 31.9 (CH3(CH2)4 CH2CH2-C=O-O-), 34.3 (CH3(CH2)5 CH2-C=O-O-), 35.4 (-C=O-O-CH2CH2 CH2-S), 62.5 (-C=O-O-CH2CH2CH2-S), 114.7, 117.8, 119.4, 128.3, 136.9 (CHarom), 125.4, 141.4, 143.4 (C arom), 128.8 (Carom-CH3), 129.5 (C arom-S), 139.2 (C arom-C(CH3)3), 146.7(C arom-OH), 173.8 (CH3(CH2)16-C=O-O-)
<化合物16>
【0185】
【化27】
【0186】
中間体3(0.30g 0.73mmol)、ステアリン酸(0.31g 1.10mmol)とp-トルエンスルホン酸(0.013g 0.073mmol)をトルエン5mL中で、18時間80~90℃で加熱撹拌を行った。反応終了後、キョーワード500を加え1時間攪拌し、濾過を行い、ろ液をエバポレートすることで粗生成物を得た。このようして得られた粗生成物を再結晶することで、薄黄色の固体化合物16を合成した。物性値を下記に示す。
FT-IR(KBr):2917cm-1:O-H伸縮振動 1733cm-1:C=O伸縮振動 1463, 1376cm-1:トリアゾール環伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ0.89 (t, 3H, CH 3(CH2)16-C=O-O-), 1.27 (m, 28H, CH3(CH 2)13CH2CH2CH2-C=O-O-(CH2)2CH2CH 2(CH2)2-S), 1.41 (quin, 2H, CH3(CH2)13CH 2CH2CH2-C=O-O-) , 1.49 (m, 11H, -C=O-O-(CH2)2CH 2CH2(CH2)2-S -Ph-OH-CH3-C(CH 3)3), 1.60 (quin, 4H, CH3(CH2)13CH2CH 2CH2-C=O-O-CH2CH 2(CH2)4-S), 1.73 (quin, 2H, -C=O-O-(CH2)4CH 2CH2-S), 2.28 (t, 2H, CH3(CH2)13CH2CH2CH 2-C=O-O-), 2.38 (s, 3H, -Ph-OH-CH 3-C(CH3)3), 3.03 (t, 2H, -C=O-O-(CH2)5CH 2-S), 4.01 (t, 2H, -C=O-O-CH 2(CH2)5-S), 7.16(s, 2H), 7.35 (s, 1H), 7.70 (d, 1H), 7.81 (d, 1H), 8.04 (s, 1H), 7.76 (d, 1H), 8.04 (s, 1H), (insg.9arom. CH), 11.60 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3 400MHz): 14.5 (CH3(CH2)16-C=O-O-), 20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 23.1 (CH3 CH2(CH2)15-C=O-O-), 25.1 (CH3(CH2)13 CH2CH2CH2-C=O-O-), 25.8 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 28.5~29.7 (CH3 CH2(CH2)13CH2CH2-C=O-O-CH2CH2(CH2)3CH2-S) , 29.7 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3) , 31.9 (-C=O-O-CH2 CH2(CH2)4-S), 33.4 (CH3(CH2)14 CH2CH2-C=O-O-), 34.4 (CH3(CH2)15 CH2-C=O-O-), 35.8 (-C=O-O-(CH2)5 CH2-S), 64.1 (-C=O-O-CH2(CH2)5-S), 113.7, 117.6, 119.3, 128.3, 137.8 (CHarom), 125.4, 141.2, 143.4 (C arom), 128.7 (Carom-CH3), 129.3 (C arom-S), 139.1 (C arom-C(CH3)3), 146.7(C arom-OH), 174.0 (CH3(CH2)16-C=O-O-)
<化合物17>
【0187】
【化28】
【0188】
中間体4(0.40g 0.99mmol)、アセチルクロリド(0.16g 1.97mmol)とトリエチルアミン(0.17g 2.18mmol)を塩化メチレン30mL中で、18時間室温で撹拌を行った。反応終了後、水、クロロホルムを加え酸処理、水洗を行い、有機層をエバポレートすることで粗生成物を得た。このようして得られた粗生成物をカラム精製及び再結晶することで、淡黄色固体の化合物17を得た。物性値を下記に示す。
FT-IR(KBr):2968cm-1:O-H伸縮振動 1762cm-1:C=O伸縮振動 1448, 1367cm-1:トリアゾール環伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ 1.48 (s, 9H, -Ph-OH-CH3-C(CH 3)3) , 2.32 (s, 3H, CH 3-C=O-O-), 2.37 (s, 3H, -Ph-OH-CH 3-C(CH3)3) , 7.12 (d, 2H), 7.17(s, 1H), 7.35 (d, 1H), 7.48 (d, 2H), 7.70 (s, 1H), 7.82 (d, 1H), 8.04 (s, 1H), (insg.9arom. CH), 11.54 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3 400MHz): δ 20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 21.1 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3) , 35.4 (CH3-C(=O)-O-), 116.9, 118.1, 119.4, 122.9, 128.9, 129.7, 133.9 (CHarom), 125.4, 141.7, 143.2 (C arom), 128.3 (Carom-CH3), 130.9 (C arom-S), 137.1 (C arom-S), 139.2 (C arom-C(CH3)3), 146.7(C arom-OH), 150.8(C arom-O-), 169.1 (CH3-C(=O)-O-)
<化合物18>
【0189】
【化29】
【0190】
中間体4(0.40g 0.99mmol)、ステアリルクロリド(0.60g 1.97mmol)とトリエチルアミン(0.17g 2.18mmol)を塩化メチレン30mL中で、18時間室温で撹拌を行った。反応終了後、水、クロロホルムを加え酸処理、水洗を行い、有機層をエバポレートすることで粗生成物を得た。このようして得られた粗生成物をカラム精製及び再結晶することで、淡黄色固体の化合物18を得た。物性値を下記に示す。
FT-IR(KBr):2918cm-1:O-H伸縮振動 1756cm-1:C=O伸縮振動 1471, 1376cm-1:トリアゾール環伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ0.88 (t, 3H, CH 3(CH2)16-C=O-O-), 1.25 (m, 26H, CH3(CH 2)13CH2 CH2CH2-C=O-O-), 1.41 (quin, 2H, CH3(CH2)13CH 2CH2CH2-C=O-O-) , 1.48 (m, 9H, -Ph-OH-CH3-C(CH 3)3), 1.78 (quin, 2H, CH3(CH2)13CH2CH 2CH2-C=O-O-), 2.36 (s, 3H, -Ph-OH-CH 3-C(CH3)3), 2.56 (t, 2H, CH3(CH2)13CH2CH2CH 2-C=O-O-), 7.11 (d, 2H), 7.13(s, 1H), 7.34 (d, 1H), 7.48 (d, 2H), 7.68 (s, 1H), 7.80 (d, 1H), 8.03 (s, 1H), (insg.9arom. CH), 11.54 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3 400MHz): 14.1 (CH3(CH2)16-C=O-O-), 20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 22.7 (CH3 CH2(CH2)15-C=O-O-), 24.9(-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 29.1~29.7 (CH3(CH2)13CH2(CH2)2-C=O-O-), 29.7 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 31.9 (CH3(CH2)13 CH2(CH2)2-C=O-O-), 34.4 (CH3(CH2)14 CH2CH2-C=O-O-), 35.4 (CH3(CH2)15 CH2-C=O-O-),
116.7, 118.1, 119.4, 122.9, 128.9, 129.6, 134.0 (CHarom), 125.4, 141.6, 143.2 (C arom), 128.3 (Carom-CH3), 130.6 (C arom-S), 137.3 (C arom-S), 139.2 (C arom-C(CH3)3), 146.8(C arom-OH), 150.8(C arom-O-), 172.0 (CH3(CH2)16-C(=O)-O-)
<化合物19>
【0191】
【化30】
【0192】
中間体4(0.40g 0.99mmol)、塩化ベンゾイル(0.28g 1.97mmol)とトリエチルアミン(0.17g 2.18mmol)を塩化メチレン30mL中で、18時間室温で撹拌を行った。反応終了後、水、クロロホルムを加え酸処理、水洗を行い、有機層をエバポレートすることで粗生成物を得た。このようして得られた粗生成物をカラム精製及び再結晶することで、淡黄色固体の化合物19を得た。物性値を下記に示す。
FT-IR(KBr):2962cm-1:O-H伸縮振動 1738cm-1:C=O伸縮振動 1487, 1355cm-1:トリアゾール環伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ 1.49 (s, 9H, -Ph-OH-CH3-C(CH 3)3), 2.37 (s, 3H, -Ph-OH-CH 3-C(CH3)3) , 7.16 (s, 2H), 7.25(d, 2H), 7.36 (d, 1H), 7.50~7.56 (m, 4H), 7.63 (t, 1H), 7.72 (s, 1H), 8.04 (s, 1H), 8.20 (d, 1H), (insg.14arom. CH), 11.56 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3 400MHz): δ20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3) , 35.4 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 116.9, 118.1, 119.4, 123.1, 128.7 , 128.9, 129.7 , 130.2, 133.8, 134.0 (CHarom), 125.4, 141.7, 143.2 (C arom), 128.3 (Carom-CH3), 129.3(C arom-C(=O)-O-Ph), 131.0 (C arom-S), 137.1 (C arom-S), 139.2 (C arom-C(CH3)3), 146.8(C arom-OH), 151.1(Ph-C(=O)-O-C arom), 164.9 (Ph-C(=O)-O-)
<化合物20>
【0193】
【化31】
【0194】
中間体3(5.00g 12.10mmol)とイソシアン酸オクタデシル(4.69g 12.71mmol)、クロロベンゼン/O-ジクロロベンゼン(80/20)50mL中で、8時間130℃で加熱攪拌を行った。反応終了後、MeOHを加え析出した結晶を濾過することで、黄色の粗生成物を得た。このようして得られた粗生成物をカラム精製、再結晶することで、薄黄色の固体化合物20を合成した。物性値を下記に示す。
FT-IR(KBr): FT-IR(KBr):3065cm-1:O-H伸縮振動 1685cm-1:C=O伸縮振動 1470, 1359cm-1:トリアゾール環伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ0.88 (t, 3H, CH 3(CH2)17-HNC(=O)-O-), 1.24 (m, 28H, CH3(CH 2)13CH2CH2CH2-HNC(=O)-O-(CH2)2CH2CH 2(CH2)2-S), 1.41~1.49 (m, 13H, CH3(CH2)13CH 2CH2CH2-HNC(=O)-O-(CH2)2CH 2CH2(CH2)2-S -Ph-OH-CH3-C(CH 3)3), 1.62 (m, 2H, -HNC(=O)-O-CH2CH 2(CH2)4-S), 1.75 (t, 2H, quin, 2H, -HNC(=O)-O-(CH2)4CH 2CH2-S), 2.38 (s, 3H, -Ph-OH-CH 3-C(CH3)3), 3.03 (m, 2H, -HNC(=O)-O-(CH2)5CH 2-S), 3.13 (m, 2H, CH3(CH2)13CH2CH 2CH2-HNC(=O)-O-), 4.01 (t, 2H, -HNC(=O)-O-CH 2(CH2)5-S), 4.61 (m, 1H, -HNC(=O)-O-), 7.16(s, 1H), 7.35 (d, 1H), 7.70 (s, 1H), 7.81 (d, 1H), 8.05 (s, 1H), (insg.5arom. CH), 11.60 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3 400MHz):δ14.1 (CH3(CH2)17-HNC(=O)-O-), 20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 22.7 (CH3 CH2(CH2)16-HNC(=O)-O-), 25.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 26.8 (CH3(CH2)14 CH2CH2CH2-C=O-O-), 28.6~29.7 (CH3 CH2(CH2)14CH2CH2-HNC(=O)-O-CH2CH2(CH2)3CH2-S) , 29.7 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3) , 31.9 (-HNC(=O)-O-CH2 CH2(CH2)4-S), 33.2 (CH3(CH2)15 CH2CH2-HNC(=O)-O-), 35.4 (-HNC(=O)-O-(CH2)5 CH2-S), 41.1 (CH3(CH2)16 CH2-HNC(=O)-O-), 64.6 (-HNC(=O)-O-CH2(CH2)5-S), 113.9, 117.6, 119.3, 128.3, 137.8 (CHarom), 125.5, 141.3, 143.4 (C arom), 128.7 (Carom-CH3), 129.4 (C arom-S), 139.2 (C arom-C(CH3)3), 146.7(C arom-OH), 156.0 (-HNC(=O)-O-)
<化合物21>
【0195】
【化32】
【0196】
2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(3.15g 9.97mmol)、4-アセトアミドベンゼンチオール(2.50g 14.96mmol)、炭酸カリウム(3.03g, 21.94mmol)及びよう化カリウム(0.12g0.7mmol)を、DMF30g中で、135℃、12時間反応した。反応終了後、pHを調整し、濾過、水洗を行い、数回再結晶することで、淡黄色固体の化合物21を得た。物性値を下記に示す。
FT-IR(KBr): FT-IR(KBr):2963cm-1:O-H伸縮振動 1653cm-1:C=O伸縮振動 1445, 1396cm-1:トリアゾール環伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ 1.48 (s, 9H, -Ph-OH-CH3-C(CH 3)3) , 2.21 (s, 3H, CH 3-C=O-NH-), 2.37 (s, 3H, -Ph-OH-CH 3-C(CH3)3) , 7.17(s, 1H), 7.31 (d, 1H), 7.48 (d, 2H), 7.56 (d, 3H), 7.79 (d, 1H), 8.02 (s, 1H), (insg.9arom. CH), 11.54 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3 400MHz): δ 20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 24.7 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3) , 35.4 (CH3-C(=O)-NH-), 115.6, 117.9, 119.3, 120.7, 127.9, 128.8, 134.5 (CHarom), 125.4, 141.5, 143.2 (C arom), 128.3 (Carom-CH3), 129.1 (C arom-S), 138.4 (C arom-S), 138.2 (C arom-NH),139.2 (C arom-C(CH3)3), 146.7(C arom-OH), 168.3 (CH3-C(=O)-NH-)
<化合物22>
【0197】
【化33】
【0198】
ステアリン酸(0.70g 2.47mmol)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物(0.41g, 2.71mmol)及びN,N'-ジイソプロピルカルボジイミド(0.35g 2.76mmol)、MEK14gを加え、窒素雰囲気下にて、65~75℃で1時間反応させた後、中間体6(1.00g 2.47mmol)を加え、4時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、析出した結晶を濾過した。得られた濾物をMeOHで洗浄し、再結晶することで、淡黄色固体の化合物22を得た。物性値を下記に示す。
FT-IR(KBr): FT-IR(KBr):2958cm-1:O-H伸縮振動 1655cm-1:C=O伸縮振動 1464, 1396cm-1:トリアゾール環伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ0.88 (t, 3H, CH 3(CH2)16-C(=O)NH-), 1.25 (m, 26H, CH3(CH 2)13CH2CH2-C(=O)NH-), 1.48 (s, 9H, -Ph-OH-CH3-C(CH 3)3), 1.74 (quin, 2H, CH3(CH2)13CH 2CH2-C(=O)NH-), 2.37 (m, 5H, -Ph-OH-CH 3-C(CH3)3, CH3(CH2)13CH2CH 2-C(=O)NH-), 7.16 (m, 1H, CH3(CH2)16-C(=O)NH-), 7.17(s, 1H), 7.33 (d, 1H), 7.48 (d, 2H), 7.58 (m, 3H), 7.79 (d, 1H), 8.02 (s, 1H), (insg.9arom. CH), 11.55 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3 400MHz): δ14.1 (CH3(CH2)16-C(=O)NH-), 20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 22.7 (CH3 CH2(CH2)15-C(=O)NH-), 25.6 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 29.3~29.7 (CH3 CH2(CH2)12CH2CH2CH2-C(=O)NH-) , 29.7 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3) , 31.9 (CH3(CH2)13 CH2CH2CH2-C(=O)NH-), 35.4 (CH3(CH2)14 CH2CH2-C(=O)NH-), 37.9 (CH3(CH2)15 CH2-C(=O)NH-), 115.5, 117.9, 119.3, 120.7, 127.6, 128.8, 134.6 (CHarom), 125.4, 141.5, 143.2 (C arom), 128.3 (Carom-CH3), 129.0 (C arom-S), 138.6 (C arom-S), 139.1 (C arom-C(CH3)3), 138.1 (C arom-NH), 146.7(C arom-OH), 171.6 (CH3(CH2)17-C(=O)NH-)
<化合物23>
【0199】
【化34】
【0200】
中間体6(0.50g 1.24mmol)と塩化ベンゾイル(0.26g 1.86mmol)を塩化メチレン10mL中で、18時間室温で撹拌を行った。反応終了後、反応溶液にメタノールを添加し、析出物を濾過することで、黄色の粗生成物を得た。このようして得られた粗生成物を再結晶することで、淡黄色固体の化合物23を得た。物性値を下記に示す。
FT-IR(KBr): FT-IR(KBr):2955m-1:O-H伸縮振動 1654cm-1:C=O伸縮振動 1449, 1396cm-1:トリアゾール環伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ1.48 (s, 9H, -Ph-OH-CH3-C(CH 3)3), 2.37 (s, 3H, -Ph-OH-CH 3-C(CH3)3), 7.90 (m, 1H, Ph-C(=O)NH-), 7.16(s, 1H), 7.33 (d, 1H), 7.50-7.57 (m, 5H), 7.63 (s, 1H), 7.73 (d, 2H), 7.82 (d, 1H), 7.90 (m, 2H), 8.04 (s, 1H), (insg.14arom. CH), 11.55 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3 400MHz): δ20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3) , 35.4 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 115.8, 118.0, 119.3, 121.1, 127.0 , 128.4, 128.9 , 132.1, 134.5 (CHarom), 125.4, 141.5, 143.2 (C arom), 128.3 (Carom-CH3), 128.8(C arom-C(=O)NH-), 129.2 (C arom-S), 138.1 (C arom-S), 138.5(Ph-C(=O)NH-C arom), 139.2 (C arom-C(CH3)3), 146.8(C arom-OH), 165.7 (Ph-C(=O)NH-)

<化合物24>
【化35】
中間体6(1.00g 2.47mmol)と2-ナフトイルクロリド(0.71g 3.71mmol)を塩化メチレン2mL中で、3時間室温で撹拌を行った。反応終了後、析出物を濾過し、粗生成物を再結晶することで、淡黄色固体の化合物24を得た。物性値を下記に示す。
FT-IR(KBr): FT-IR(KBr):2956m-1:O-H伸縮振動 1659cm-1:C=O伸縮振動 1445, 1397cm-1:トリアゾール環伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ1.48 (s, 9H, -Ph-OH-CH3-C(CH 3)3), 2.37 (s, 3H, -Ph-OH-CH 3-C(CH3)3), 7.16(s, 1H), 7.35 (d, 1H), 7.55-7.63 (m, 5H), 7.65 (s, 1H), 7.77 (d, 2H), 7.84 (d, 1H), 7.91-7.99 (m, 4H), 8.04 (m, 2H), (insg.14arom. CH), 8.41 (s, 1H, Np-C(=O)NH-), 11.55 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3 400MHz): δ20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3) , 35.4 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 115.8, 118.0, 119.3, 121.1, 127.1 , 127.7, 127.9, 128.1, 128.9 , 129.2, 132.1, 134.5 (CHarom), 135.0, 131.9 (Np-C arom), 123.4, 141.6, 143.2 (C arom), 128.3 (Carom-CH3), 128.8(C arom-C(=O)NH-), 129.2 (C arom-S), 138.1 (C arom-S), 138.6(Np-C(=O)NH-C arom), 139.2(C arom-C(CH3)3), 146.7(C arom-OH), 165.7(Np-C(=O)NH-)

<化合物25>
【0201】
【化36】
【0202】
中間体6(1.00g 2.47mmol)とイソシアン酸エチル(1.18g 16.54mmol)、DMF20mL中で、16時間100℃で加熱攪拌を行った。反応終了後、トルエンと水を加え、水洗し、有機層を減圧留去することで、黄色の固体を得た。このようにして得られた粗生成物をカラム精製、再結晶することで、薄黄色の固体化合物25を合成した。物性値を下記に示す。FT-IR(KBr): FT-IR(KBr):2968cm-1:O-H伸縮振動 1639cm-1:C=O伸縮振動 1436, 1392cm-1:トリアゾール環伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ1.13 (t, 3H, CH 3CH2-NH-C(=O)NH-), 1.41 (s, 9H, -Ph-OH-CH3-C(CH 3)3), 2.30 (m, 3H, -Ph-OH-CH 3-C(CH3)3), 3.26 (quin, 2H, CH3CH 2-NH-C(=O)NH-), 4.63 (m, 1H, CH3CH2-NHC(=O)NH-), 6.31 (m, 1H, CH3CH2-NHC(=O)NH-)
7.08(s, 1H), 7.23 (d, 1H), 7.30 (d, 2H), 7.38 (m, 2H), 7.49 (d, 1H), 7.71 (s, 1H), 7.95 (s, 1H), (insg.9arom. CH), 11.47 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3400MHz): δ14.1 (CH3CH2-HNC(=O)NH-), 20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3) , 35.4 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 35.4 (CH3 CH2-HNC(=O)NH-), 115.3, 117.9, 119.3, 121.1, 126.2, 128.8, 134.9 (CHarom), 125.3, 141.4, 143.2 (C arom), 128.3 (Carom-CH3), 128.9 (C arom-S), 138.7 (C arom-S), 139.1 (C arom-C(CH3)3), 139.1 (C arom-NH), 146.7(C arom-OH), 154.8 (CH3CH2-HNC(=O)NH-)
<化合物26>
【0203】
【化37】
【0204】
中間体7(1.00g 2.38mmol)、2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(0.60g 1.90mmol)、炭酸カリウム(0.58g 4.18mmol)及び、よう化カリウム(0.002g 0.11mmol)を、DMF20mL中で、8時間135~140℃で加熱撹拌を行った。反応終了後、pH調製、濾過、MeOH洗浄を行い、カラム精製後、再結晶をすることで、黄色固体の化合物26を得た。物性値を下記に示す。
FT-IR(KBr): FT-IR(KBr):2916cm-1:O-H伸縮振動 1636cm-1:C=O伸縮振動 1465, 1396cm-1:トリアゾール環伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ0.88 (t, 3H, CH 3(CH2)17-NHC(=O)NH-), 1.25 (m, 28H, CH3(CH 2)14CH2CH2CH2-NHC(=O)NH-), 1.48 (m, 11H, -Ph-OH-CH3-C(CH 3)3, CH3(CH2)14CH 2CH2CH2-NHC(=O)NH-), 1.56 (m, 2H, CH3(CH2)14CH2CH 2CH2-NHC(=O)NH-), 2.37 (s, 3H, -Ph-OH-CH 3-C(CH3)3), 3.27 (quin, 2H, CH3(CH2)14CH2CH2CH 2-NHC(=O)NH-), 4.68 (m, 1H, CH3(CH2)14CH2CH2CH2-NHC(=O)NH-), 6.35 (m, 1H, CH3(CH2)14CH2CH2CH2-NHC(=O)NH-),7.15(s, 1H), 7.32 (d, 1H), 7.38 (d, 2H), 7.45 (d, 2H), 7.56 (s, 1H), 7.78 (d, 1H), 8.02 (s, 1H), (insg.9arom. CH), 11.55 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3400MHz): 14.1 (CH3(CH2)17-NHC(=O)NH-), 20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 22.7 (CH3 CH2(CH2)16-NHC(=O)NH-), 26.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 29.4~29.7 (CH3 CH2(CH2)13CH2CH2CH2-NHC(=O)NH-) , 29.7 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3) , 31.9 (CH3(CH2)14 CH2CH2CH2-NHC(=O)NH-), 35.4 (CH3(CH2)15 CH2CH2-NHC(=O)NH-), 40.6 (CH3(CH2)16 CH2-NHC(=O)NH-),115.1, 117.8, 119.3, 120.9, 126.2, 128.7, 134.9 (CHarom), 125.3, 141.4, 143.2 (C arom), 128.2 (Carom-CH3), 128.9 (C arom-S), 138.7 (C arom-S), 139.1 (C arom-C(CH3)3), 139.7 (C arom-NH), 146.7(C arom-OH), 155.4 (CH3(CH2)17-NHC(=O)NH-)
<化合物27>
【0205】
【化38】
【0206】
中間体6(1.00g 2.47mmol)とイソシアン酸フェニル(0.31g 2.60mmol)、DMF20mL中で、8時間100℃で加熱攪拌を行った。反応終了後、水を加え析出した結晶を濾過することで、黄色の固体を得た。このようにして得られた粗生成物をカラム精製、再結晶することで、薄黄色の固体化合物27を合成した。物性値を下記に示す。
FT-IR(KBr): FT-IR(KBr):2961cm-1:O-H伸縮振動 1659cm-1:C=O伸縮振動 1444, 1396cm-1:トリアゾール環伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): δ1.48 (s, 9H, -Ph-OH-CH3-C(CH 3)3), 2.36 (s, 3H, -Ph-OH-CH 3-C(CH3)3), 6.60 (m, 1H, -Ph-NHC(=O)NH-), 6.73 (m, 1H, -Ph-NHC(=O)NH-)
7.16(m, 2H), 7.32 (d, 1H), 7.38 (m, 4H), 7.44 (m, 4H), 7.57 (s, 1H), 7.80 (d, 1H), 8.02 (s, 1H), (insg.14arom. CH), 11.55 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3400MHz): δ20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3) , 35.4 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 115.5, 117.9, 119.3, 121.1, 121.9, 128.8, 129.0, 129.7, 129.6, 134.7(CHarom), 125.0, 141.5, 143.2 (C arom), 128.3 (Carom-CH3), 125.4 (Ph-S-C arom), 127.2 (C arom-S-Ph), 139.1(C arom-C(CH3)3), 137.5(Ph-HN-C(=O)-NH-C arom), 138.4(C arom-HN-C(=O)-NH-Ph), 146.7(C arom-OH), 152.7 (-HN-C(=O)-NH-)
<化合物28>
【0207】
【化39】
【0208】
中間体6(0.10g 0.25mmol)とイソシアン酸4-メトキシフェニル(0.0369g 0.25mmol)、DMF5mL中で、18時間100℃で加熱攪拌を行った。反応終了後、水を加え析出した結晶を濾過することで、黄色の固体を得た。このようにして得られた粗生成物をカラム精製、再結晶することで、薄黄色の固体化合物28を合成した。物性値を下記に示す。
FT-IR(KBr): FT-IR(KBr):2964cm-1:O-H伸縮振動 1673cm-1:C=O伸縮振動 1409, 1358cm-1:トリアゾール環伸縮振動
1H-NMR (CDCl3 400MHz): 1.48 (s, 9H, -Ph-OH-CH3-C(CH 3)3), 2.36 (m, 3H, -Ph-OH-CH 3-C(CH3)3), 3.80 (s, 3H, CH 3O-Ph-), 6.55 (m, 1H, -Ph-NHC(=O)NH-), 6.77 (m, 1H, -Ph-NHC(=O)NH-), 6.89(d, 2H), 7.15(s, 1H), 7.28 (m, 3H), 7.39 (m, 4H), 7.76 (d, 1H), 8.01 (s, 1H), (insg.13arom. CH), 11.54 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C-NMR (CDCl3 400MHz): δ20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 35.4 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 55.6 (CH3-O-Ph-)
115.0, 117.9, 119.1, 120.8, 120.9, 128.8, 129.0, 129.5, 129.6, 134.8(CHarom), 125.0, 141.5, 143.2 (C arom), 128.3 (Carom-CH3), 125.4 (Ph-S-C arom), 127.2 (C arom-S-Ph), 139.1(C arom-C(CH3)3), 137.5(Ph-HN-C(=O)-NH-C arom), 138.4(C arom-HN-C(=O)-NH-Ph), 146.7(C arom-OH), 152.7 (-HN-C(=O)-NH-)
化合物10、化合物29及び化合物30は、国際公開第2016/021664号に記載の方法で合成した。
【0209】
化合物11及び化合物12は、東京化成工業(株)製の試薬を用いた。
【0210】
2.紫外線吸収性能の評価(1)
化合物1~12をクロロホルム100μMで希釈して10mm石英セルに収容し、紫外可視分光光度計(日本分光社製V-550)を用いて吸収スペクトルを測定した(図1~12)。
【0211】
その結果、本発明の化合物1~9は、紫外線の波長領域に吸収帯が存在し、フィルム、樹脂に添加した際、紫外線吸収剤として機能することが示された。
【0212】
ベンゾトリアゾール基に、上記式(i-2)で表わされる反応性官能基を有するチオエーテル基を導入した本発明のベンゾトリアゾール系化合物1~9は、従来の反応性紫外線吸収剤(化合物11)及び長波長吸収タイプの紫外線吸収剤(化合物12)に比べ長波長領域にピークトップがシフトし、より長波長領域の360~400nm付近の紫外線吸収に優れることを確認した。式(i-2)のXに芳香族基を導入した化合物5,6は、総体的に250~320nmの領域の吸収ピークが大きくなり(吸光度が大きくなり)、低波長~長波長の広範囲に紫外線を吸収することができる。
【0213】
化合物1~12の吸収スペクトルから、350~390nmの波長領域の吸収ピーク(最大吸収波長:λmax)、吸光度を読み取り、そのピークのモル吸光係数(最大モル吸光係数:εmax)を下記式により求めた(表1)。
【0214】
【数1】
【0215】
その結果、チオエーテル基及びアクリロイルオキシ基を導入した本発明の化合物1~9は、化合物10,11,12よりモル吸光係数が21000以上と高く、少量の添加で効率よく紫外線を吸収することが示された。
【0216】
また、化合物1~12の吸収スペクトルから、350~390nmにある吸収ピークにおける長波長側の吸収スペクトルとベースライン(380~500nmの吸収スペクトルの傾きが0のライン)との交点をピークエンドとして(例:図1)、下記式により、350~390nmの波長領域にある吸収ピークの長波長側の傾きの絶対値を求めた(表2)。
【0217】
【数2】
【0218】
その結果、化合物1~9の傾きの絶対値は、いずれも、0.040以上であり、化合物10,11,12(傾きの絶対値:0.022~0.038)より大きく、ピークがシャープであり、硫黄含有基(チオエーテル基)及びアクリロイルオキシ基を導入した本発明の化合物1~9は、400~500nm(可視域)のカットが少なく、フィルム、樹脂部材、特に透明樹脂部材に対する黄色抑制効果に優れていることが示唆された。特に、0.042以上の化合物1~6は、その効果に優れる。
【0219】
【表1】
【0220】
【表2】
【0221】
3.反応性の評価(1)
メタクリル酸メチル(4.99mmol)、化合物1~6,10,11(0.15mmol)、トルエン(0.5g)、MEK(0.5g)を入れ、1時間窒素置換した後、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)(0.15mmol)を加え、90~96℃で10時間加熱攪拌することで共重合反応を行った。その際、NMRにて二重結合に結合した水素原子のピークを所定の時間毎(1,5,10時間)測定し、反応率を算出した(表3)。
【0222】
その結果、反応性官能基にメタクリル又はアクリル基を持たない化合物10と比較し、メタクリル又はアクリル基を持つ化合物1~6,11は、10時間後の反応率が約70%以上であり、反応性が高いことを確認した。
【0223】
その中でも、硫黄含有基(チオエーテル基)を持たない化合物11と比較すると、硫黄含有基(チオエーテル基)を持つ化合物1~6は、10時間後の反応率が約99%以上であり、反応性が高く、より高い分子量で重合が可能なことが示唆され、アクリロイルオキシ基(メタクリル、アクリル基)の官能基及び硫黄含有基(チオエーテル基)の導入により、反応性が向上することを確認した。
【0224】
さらに、アクリル基を有する化合物1は5,10時間後の反応率が高く、また、Xがアルキレン基でメタクリル基を有する化合物2~4の中では、メタクリル基から硫黄含有基(チオエーテル基)までのアルキレン基の炭素数が3以上の化合物3,4は、アルキレン基の炭素数が2の化合物2より1,5,10時間後の反応率が高く、反応性が良好であることが確認された。
【0225】
【表3】
【0226】
4.共重合体フィルムの評価
上記の3.反応性の評価(1)で重合した化合物1~6の反応溶液に、クロロホルム1mLを加え、スライドガラスに10μL滴下した後、溶媒を除去することにより、フィルムを作成した。その透明性を次の基準で評価した(表4)。
評価基準
○:白濁がなく透明
△:一部白濁が見られるが透明
×:白濁が見られ透明性が悪い
【0227】
その結果、化合物1~6において、透明性が良好な重合体が得られることを確認した。
【0228】
また、化合物1,4,11,12に関し、上記で得られた溶液50μLをスライドガラス上にスピンコートし、溶媒を除去することにより、膜厚1~10μmのフィルムを作製した。さらに得られたフィルムの吸光度を紫外可視分光光度計により測定した(図13)。
【0229】
紫外-可視吸収スペクトル測定から、本発明の化合物1,4を含む重合体は、化合物11、12より、黄色化を抑制し長波長吸収に優れていることを確認した。
【0230】
【表4】
【0231】
5.フィルムからの溶出(ブリードアウト)の評価
上記の反応性の評価(1)では、化合物1~6は、反応性基のプロトンがほぼ全て消失し、樹脂中に紫外線吸収剤が固定化されたことから、ブリードアウトせず、透明性を保持し、紫外線吸収能を長期間保持できることが示唆されるが、実際に、フィルムに取込まれた紫外線吸収剤の溶出、ブリードアウトを確認するため、化合物4,12を用いたフィルムを次の操作で作成した。化合物4は3.反応性の評価(1)で得られた溶液を、化合物12はメタクリル酸メチルのみを3.反応性の評価(1)の条件で重合した溶液に化合物12を添加することで得られた溶液をスライドガラスに1mL塗布し、溶媒を除去し、透明のフィルムを作成した。得られたフィルム/スライドガラスをヘプタン135mLに浸漬させ60℃の恒温槽で2.5時間浸した後、ヘプタンを減圧留去し、溶出物をTHFで溶解しHPLC(高速液体クロマトグラフィー、ThermoFisheSIRNTIFIC製、Ultimete3000)で確認した。
【0232】
その結果、反応性官能基を持たない化合物12を用いたフィルムは白濁し、溶出物中に化合物12のピークが検出され、溶出が確認された。一方で、反応性官能基を持つ化合物4は、浸漬後のフィルムは透明で溶出物中に化合物4のピークは検出されず、溶出が確認されなかった。
【0233】
以上の結果、反応性官能基を有する本発明の化合物は、モノマーと反応し樹脂中に固定化され、ブリードアウト、溶出せず、透明性を保持し、紫外線吸収能を長期間保持できるとことが示唆された。
【0234】
6.各種モノマーへの溶解性及び反応性の評価(2)
表5に示す組み合わせで、化合物1~6,10,11(0.1g)に対し、(メタ)アクリレート系モノマーのメタクリル酸メチル、スチレン系モノマーのスチレン、ビニル系モノマーの酢酸ビニル、アクリルアミド系モノマーのジメチルアクリルアミド、オレフィン系モノマーのヘキサジエンを所定の濃度になるよう加え、超音波を5分照射し溶解性を確認した後、室温(20~30℃)に4時間静置し、析出の有無を確認することにより、最大溶解度を求めた。
【0235】
さらに、化合物1~6,10,11をメタクリル酸メチル、スチレン、酢酸ビニルのモノマーに対し最大溶解度の濃度で添加、溶解し、1時間窒素置換した後、モノマーに対して0.03モル%の1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)を加え、90~96℃で10時間加熱攪拌することで共重合反応を行い、重合体の透明性を確認した。表に、溶解可能な最大濃度、及び重合体の透明性を次の基準で評価した結果を示した(表5)。
評価基準
○:白濁がなく透明
△:一部白濁が見られるが透明
×:白濁が見られ透明性が悪い
【0236】
その結果、(メタ)アクリレート系モノマーのメタクリル酸メチル、スチレン系のスチレンに対して、比較例の反応性紫外線吸収剤(化合物10,11)と比べ、本発明の化合物1~6はいずれも高濃度で添加が可能で、透明性も良好な重合体が得られた。
【0237】
また、ビニル系モノマーの酢酸ビニル、アクリルアミド系モノマーのジメチルアクリルアミド、オレフィン系のヘキサジエンに対しても同様な溶解性の傾向を示し、化合物1~3,5,6は、酢酸ビニルの系で、透明な重合体が得られた。
【0238】
同様な評価方法で、ビニル系モノマーのアクリロニトリルに対しても、それぞれ化合物1は2wt%、化合物2は5wt%、化合物3は5wt%、化合物4は1wt%、溶解可能であった。
【0239】
【表5】
【0240】
7.5%重量減少温度の評価(1)
化合物1~8,10~12について、示差熱熱重量同時測定装置(SII社製、TG/DTA6200)を用いて、昇温温度:10℃/min、測定範囲:25℃~550℃で測定を行い、重量変化(TG)が5重量%減少した温度を読み取った(表6)。
【0241】
その結果、比較例の化合物10~12と比較して、本発明の化合物の5%重量減少分解温度はいずれも280℃以上であり、その中でも化合物1,4~6,8は、310℃以上と高く、耐熱性が向上した。また、それらの5%重量減少分解温度は化合物1~8>化合物10>化合物11,12の関係にあり、硫黄含有基(チオエーテル基)の導入、さらにはアクリロイルオキシ基の導入、特にXに芳香族基の導入によって(化合物5,6>化合物4)、耐熱性が向上されることが示唆された。
【0242】
つまり、化合物1~8の5%重量減少分解温度は、ほとんどの一般的な樹脂の軟化温度は100~250℃(「よくわかるプラスチック」、監修:日本プラスチック工業連盟、出版:日本実業出版社)よりも高く、200~250℃より高い成形加工温度が求められる熱可塑性樹脂に対しても適用が可能となり、また、高温での反応も可能であり、樹脂部材の紫外線吸収能の付与、透明樹脂部材の透明性の低下の抑制が可能となる。
【0243】
【表6】
【0244】
8.紫外線吸収性能の評価(2)
化合物11~28をクロロホルム100μMで希釈して10mm石英セルに収容し、紫外可視分光光度計(日本分光社製V-550)を用いて吸収スペクトルを測定した(図11,12,14~29)。
【0245】
その結果、本発明の化合物13~28は、紫外線の波長領域に吸収帯が存在し、フィルム、樹脂に添加した際、紫外線吸収剤として機能することが示された。
【0246】
ベンゾトリアゾール基に、上記式(i-3)をチオエーテル基(上記式(i-1))に導入した本発明のベンゾトリアゾール系化合物13~28は、従来のエステル基を有する紫外線吸収剤(化合物11)及び長波長吸収タイプの紫外線吸収剤(化合物12)に比べ長波長領域にピークトップがシフトし、より長波長領域の360~400nm付近の紫外線吸収に優れることを確認した。式(i-3)のXaに芳香族基を導入しベンゾトリアゾール基~硫黄原子~芳香族基(Xa)でπ電子系からなる化合物17~19,21~28は、Xaがアルキレン基の化合物14,16等より、250~320nmの領域の吸収ピークが大きく(吸光度が大きく)、それらの中でも、π電子系を伸長し、Xa、Xbに芳香族基を導入しA2がエステル基の酸素含有基を導入した化合物19、さらに、Xaに芳香族基を導入しA2がアミド基、尿素基等の窒素含有基を導入した化合物21~28、その中でも、尿素基の化合物25~28は250~320nmの領域の吸収ピークが、さらに大きくなり(吸光度が大きくなり)、低波長~長波長の広範囲に紫外線を吸収することができる。
【0247】
化合物11~28の吸収スペクトルから、350~390nmの波長領域の吸収ピーク(最大吸収波長:λmax)、吸光度を読み取り、そのピークのモル吸光係数(最大モル吸光係数:εmax)を下記式により求めた(表7)。
【0248】
【数3】
【0249】
その結果、本発明の化合物13~28は、化合物11,12よりモル吸光係数が21000以上と高く、少量の添加で効率よく紫外線を吸収することが示された。
【0250】
また、化合物11~28の吸収スペクトルから、350~390nmにある吸収ピークにおける長波長側の吸収スペクトルとベースライン(380~500nmの吸収スペクトルの傾きが0のライン)との交点をピークエンドとして(例:図1)、下記式により、350~390nmの波長領域にある吸収ピークの長波長側の傾きの絶対値を求めた(表8)。
【0251】
【数4】
【0252】
その結果、化合物13~28の傾きの絶対値は、いずれも、0.040以上であり、化合物11,12(傾きの絶対値:0.032~0.038)より大きく、ピークがシャープであり、本発明の化合物13~28は、400~500nm(可視域)のカットが少なく、フィルム、樹脂部材、特に透明樹脂部材に対する黄色抑制効果に優れていることが示唆された。
【0253】
【表7】
【0254】
【表8】
【0255】
9.5%重量減少温度の評価(2)
本発明の化合物について、示差熱熱重量同時測定装置(SII社製、TG/DTA6200)を用いて、昇温温度:10℃/min、測定範囲:25℃~550℃で測定を行い、重量変化(TG)が5重量%減少した温度を読み取った(表9)。
【0256】
式i-3中のXa、Xbがアルキレン基の化合物13,15,16,20と硫黄含有基にアルキレン基を含む比較例18の化合物29(277℃)と比較し、二重結合を有する窒素含有基、酸素含有基(エステル、ウレタン)が導入された本発明の化合物13,15,16,20は、いずれも5%重量減少分解温度が280℃以上で高く、その中でも、化合物15,16,20は290℃以上、さらに、化合物15,16は310℃以上であり、耐熱性が向上した。また、それらの5%重量減少分解温度は化合物13,15,16,20>化合物29>化合物11,12の関係にあり、硫黄含有基(チオエーテル基)の導入、さらには二重結合を有する窒素含有基、酸素含有基の導入によって、耐熱性が向上されることが示唆された。
【0257】
さらに、Xa、Xbのいずれか一方もしくは両方が芳香族基である化合物14,17,18,19,21,22,23,24と硫黄含有基に芳香族を含む比較例19の化合物30(293℃)と比較し、二重結合を有する窒素含有基、酸素含有基(エステル、アミド)が導入された本発明の化合物14,17,18,19,21,22,23,24は、いずれも5%重量減少分解温度が310℃以上で高く、耐熱性が向上した。
【0258】
これらのことから、5%重量減少分解温度の向上には、エステル、アミド、ウレタンをはじめとする二重結合を有する窒素含有基、酸素含有基の導入が必須であることが示唆された。
【0259】
一方で実施例77~88から式(i-3)におけるXa、Xb、A2と耐熱性(5%重量減少分解温度)については、下記の傾向が認められた。
【0260】
aのアルキレン基の炭素数について、Xaがアルキレン基、Xbがアルキル基、A2がエステル基の化合物13,15,16の5%重量減少分解温度を比較したところ、Xaの炭素数が2以上の化合物13(炭素数2,283℃)、化合物15(炭素数3,327℃)及び化合物16(炭素数6,357℃)は、比較例の化合物29(277℃)より高く、それらの中でも炭素数3以上の化合物15及び化合物16は、化合物13より5%重量減少分解温度が高く、耐熱性に優れることが示唆された。
【0261】
bのアルキル基の炭素数について、Xaがアルキレン基、Xbがアルキル基、A2がエステル基の場合、その炭素数について、Xaがアルキレン基、Xbがアルキル基、A2がエステル基の化合物13,15,16の5%重量減少分解温度を比較したところ、Xbの炭素数が1以上の化合物13(炭素数1,283℃)、化合物15(炭素数9,327℃)及び化合物16(炭素数17,357℃)は、比較例の化合物29(277℃)より高く、それらの中でも炭素数6以上の化合物15及び化合物16は化合物13より、さらに、炭素数14以上の化合物16は化合物13,15より、5%重量減少分解温度が高く、耐熱性に優れることが示唆された。
【0262】
2について、Xaがアルキレン基、Xbがアルキル基の化合物16,20の5%重量減少分解温度を比較したところ、ウレタン基を含む化合物20(299℃)よりエステル基を含む化合物16(357℃)が高く、さらに、Xaが芳香族基、Xbがアルキル基の化合物18,22を比較した結果、エステル基を含む化合物18(346℃)よりアミドを含む化合物22(371℃)が、また、同様にXaが芳香族基、Xbがアルキル基の化合物17,21、Xaが芳香族基、Xbが芳香族基の化合物19,23を比較しても、エステル基を含む化合物17(319℃)、化合物19(365℃)より、アミドを含む化合物21(352℃)、化合物23(389℃)が高く、二重結合を有する窒素含有基、酸素含有基の中でも、ウレタン、エステル、アミドの順で耐熱性が優れていた。
【0263】
2について、XaとXbが同一でA2がエステルとアミドの化合物の5%重量減少分解温度を比較したところ、化合物17(319℃)と化合物21(352℃)、化合物18(346℃)と化合物22(371℃)、化合物19(365℃)と化合物23(389℃)のいずれにおいてもエステルよりアミドが5%重量減少分解温度が高く、アミドが耐熱性に優れていた。
【0264】
a、Xbが脂肪族炭化水素基(アルキル基、アルキレン基)と芳香族基もしくは、Xa、Xbが脂肪族炭化水素基(アルキル基、アルキレン基)の場合、Xa、Xbの総炭素数について、A2がエステル基の化合物13~18の5%重量減少分解温度を比較したところ、総炭素数5以上の17(炭素数7,319℃),14(炭素数8,319℃),15(炭素数12,327℃),16(炭素数23,357℃),18(炭素数23,346℃)は、化合物13(炭素数3,283℃)より、炭素数10以上の化合物15,16,18は、化合物13,17,14より、炭素数18以上の化合物16,18は化合物13,17,14,15より高く、耐熱性が優れていた。
【0265】
また、Xa、Xbの組み合わせについて、Xaの炭素数6、A2がエステル基の化合物16,18,19を同様に比較した場合、Xa:脂肪族炭化水素基(アルキル基、アルキレン基)とXb:芳香族基からなる化合物18(346℃)およびXa:脂肪族炭化水素基(アルキル基、アルキレン基)とXb:脂肪族炭化水素基(アルキル基、アルキレン基)からなる化合物16(357℃)より、Xa:芳香族基とXb:芳香族基からなる化合物19(365℃)が高い傾向が認められた。
【0266】
【表9】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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