(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】コンクリート構造物
(51)【国際特許分類】
E02B 3/06 20060101AFI20231127BHJP
E02D 27/32 20060101ALI20231127BHJP
E02D 5/28 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
E02B3/06
E02D27/32 A
E02D5/28
(21)【出願番号】P 2020011834
(22)【出願日】2020-01-28
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今津 雄吾
(72)【発明者】
【氏名】明石 直人
(72)【発明者】
【氏名】定木 紳
(72)【発明者】
【氏名】千葉 博之
(72)【発明者】
【氏名】藤井 誠司
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-168600(JP,A)
【文献】特開平08-120638(JP,A)
【文献】特開2018-025042(JP,A)
【文献】特開2004-036212(JP,A)
【文献】特開2000-248526(JP,A)
【文献】特開平08-100464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/06
E02D 27/32
E02D 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の杭と、
プレキャストコンクリート造であって、平面視でX方向に延在する第1X腕部と、前記X方向に直交するY方向に延在する第1Y腕部とが直交して+字形を形成する複数の第1梁と、
プレキャストコンクリート造であって、平面視で前記X方向に延在する第2X腕部と、前記第2X腕部から前記Y方向に突出する第2Y腕部とによってT字形を形成する複数の第2梁と、
2つの前記第1梁におけるそれぞれの前記第1X腕部の端部同士と、前記第2梁における前記第2Y腕部の端部との間にコンクリートが打設されて固定された第1接合部と、
2つの前記第2梁におけるそれぞれの前記第2X腕部の端部同士と、前記第1梁における前記第1Y腕部の端部との間にコンクリートが打設されて固定された第2接合部と、
を備え、
前記第1接合部および前記第2接合部はそれぞれ前記杭で支持されて
おり、
前記第1X腕部、前記第1Y腕部、前記第2X腕部および前記第2Y腕部の各端部には、突出する突出鋼が設けられ、
前記杭の頂部には前記突出鋼を支持する受桁鋼が設けられていることを特徴とするコンクリート構造物。
【請求項2】
前記第1接合部には、2つの前記第2梁における前記第2Y腕部の端部同士がコンクリートで固定されていることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート構造物。
【請求項3】
前記第1梁における前記第1X腕部と前記第1Y腕部とが交差する交差部が前記杭で支持されていることを特徴とする請求項1または2に記載のコンクリート構造物。
【請求項4】
前記交差部には杭孔が形成され、
前記杭は、前記杭孔に挿入され、該杭孔内でコンクリートによって固定されていることを特徴とする請求項3に記載のコンクリート構造物。
【請求項5】
複数の前記杭は、鉛直方向に延在する直杭と、鉛直方向に対して傾斜する斜杭とに分類され、
前記第1接合部は、複数の前記斜杭によって支持されることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のコンクリート構造物。
【請求項6】
前記第1X腕部、前記第1Y腕部、前記第2X腕部および前記第2Y腕部の各端部には、前記突出鋼より下部から突出する複数の鉄筋が設けられ、
前記杭には、頂部よりも下部に前記鉄筋を支持するプレートが設けられることを特徴とする請求項
1に記載のコンクリート構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャストコンクリート造の梁を杭で支持するコンクリート構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば桟橋等の構造物は、杭の頭部と梁とが結合され、その上面に床が形成された構成となっている。これらの梁にはプレキャストコンクリート造(以下、PC造という)が用いられる場合がある。PC造の梁を用いると現場打ちコンクリートの箇所を大幅に減らすことができる。
【0003】
特許文献1に開示されているように、PC造の梁は直線状のものがある。また、特許文献2に開示されているように、PC造の梁には平面視で+字状やL字状のものがある。特許文献1に記載の構造物では直線状の梁が格子状に配置され、その格子の各交差部が杭で支持されている。特許文献2に記載の構造物では+字状やL字状の梁の重心部や、L字屈曲部が1本の杭で支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-120638号公報
【文献】特開2018-168600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の構造物では、構造物の規模に応じて直線状の梁が多数必要となり、それに応じて各梁を杭に載せる工数が増大するため工期が長い。また、特許文献2に記載の構造物では、各梁が基本的に1本の杭で支持されている。最終的には各梁の端部同士が接合されるが、その前工程段階においては1本の杭から腕部が延出する状態となり、不安定であることから何らかの安定化手段を別途用意する必要がある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、工期の短縮を図るとともに容易な施工が可能なコンクリート構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかるコンクリート構造物は、複数の杭と、プレキャストコンクリート造であって、平面視でX方向に延在する第1X腕部と、前記X方向に直交するY方向に延在する第1Y腕部とが直交して+字形を形成する複数の第1梁と、プレキャストコンクリート造であって、平面視で前記X方向に延在する第2X腕部と、前記第2X腕部から前記Y方向に突出する第2Y腕部とによってT字形を形成する複数の第2梁と、2つの前記第1梁におけるそれぞれの前記第1X腕部の端部同士と、前記第2梁における前記第2Y腕部の端部との間にコンクリートが打設されて固定された第1接合部と、2つの前記第2梁におけるそれぞれの前記第2X腕部の端部同士と、前記第1梁における前記第1Y腕部の端部との間にコンクリートが打設されて固定された第2接合部と、を備え、前記第1接合部および前記第2接合部はそれぞれ前記杭で支持されていることを特徴とする。
【0008】
このように、本発明に係るコンクリート構造物では、少なくとも+字形の第1梁およびT字形の第2梁を用い、第1接合部および第2接合部がそれぞれ杭で支持されている。これにより、仮載置時に第1梁は各腕の端部の4点で支持され、第2梁は各腕の端部の3点で支持され安定性および施工性が向上し、工期の短縮を図るとともに容易な施工が可能となる。
【0009】
前記第1接合部には、2つの前記第2梁における前記第2Y腕部の端部がコンクリートで固定されていてもよい。
【0010】
前記第1梁における前記第1X腕部と前記第1Y腕部とが交差する交差部が前記杭で支持されていてもよい。
【0011】
前記交差部には杭孔が形成され、前記杭は、前記杭孔に挿入され、該杭孔内でコンクリートによって固定されていてもよい。
【0012】
複数の前記杭は、鉛直方向に延在する直杭と、鉛直方向に対して傾斜する斜杭とに分類され、前記第1接合部は、複数の前記斜杭によって支持されていてもよい。
【0013】
前記第1X腕部、前記第1Y腕部、前記第2X腕部および前記第2Y腕部の各端部には、突出する突出鋼が設けられ、前記杭の頂部には前記突出鋼を支持する受桁鋼が設けられていてもよい。
【0014】
前記第1X腕部、前記第1Y腕部、前記第2X腕部および前記第2Y腕部の各端部には、前記突出鋼より下部から突出する複数の鉄筋が設けられ、前記杭には、頂部よりも下部に前記鉄筋を支持するプレートが設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかるコンクリート構造物では、工期の短縮を図るとともに容易な施工が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態にかかるコンクリート構造物を示す一部省略平面図である。
【
図2】
図2は、コンクリート構造物の構成要素を示し、(a)は第1梁の斜視図であり、(b)は第2梁の斜視図であり、(c)は第3梁の斜視図である。
【
図3】
図3は、杭を説明する図であり、(a)は複数の梁の斜視図であり、(b)は直杭の頂部を示す斜視図であり、(c)は斜杭の頂部を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、コンクリート構造物の施工工程を説明する図であり、(a)は、杭に対して第1梁、第2梁および第3梁を取り付けた施工状態を示す斜視図であり、(b)は、各第1梁、第2梁、第3梁間の腕間空洞部にコンクリートを打設した施工状態を示す斜視図であり、(c)は、第1梁、第2梁、第3梁の上面に床板を敷設した施工状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明のコンクリート構造物の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0018】
図1は、本発明の実施形態にかかるコンクリート構造物10を示す一部省略平面図である。コンクリート構造物10は、複数の杭12と、複数の第1梁14、第2梁16および第3梁18とを有する。これらの構成要素は、例えば第1梁14が2基、第2梁16が6基、第3梁18が2基、杭12が18本である。この場合のコンクリート構造物10のサイズは、例えば平面視で25m×10m程度である。コンクリート構造物10は、例えば海上の桟橋に適用されるが、陸上構造物であってもよい。第1梁14、第2梁16および第3梁18は、それぞれPC造である。
【0019】
以下、説明の便宜上、平面上でX方向と、これに直交するY方向とを
図1に示すように規定する。コンクリート構造物10では、上面が複数の床板30(
図5(c)参照)で覆われ、さらに舗装が施されるが、
図1では床板30および舗装を省略している。コンクリート構造物10全体の説明に先立ち、まずその構成要素である第1梁14、第2梁16、第3梁18、および杭12について説明する。
【0020】
図2は、コンクリート構造物10の構成要素を示し、(a)は第1梁14の斜視図であり、(b)は第2梁16の斜視図であり、(c)は第3梁18の斜視図である。
【0021】
図2(a)に示すように、第1梁14は、X方向に延在する第1X腕部14aと、Y方向に延在する第1Y腕部14bとが交差部14cで直交して+字形を形成する。交差部14cには上下方向に貫通する杭孔14dが形成されている。
【0022】
第1X腕部14aの両端面14aaおよび第1Y腕部14b両端面14baの略中央からは、突出鋼20が突出している。突出鋼20はH形鋼である。突出鋼20は、端面14aaからはX方向に突出し、端面14baからはY方向に突出する。突出鋼20は、「H」字を横にした向きに設定されており、上下に平面部が設けられる。
【0023】
端面14aa,14baにおける突出鋼20よりも下部からは複数の鉄筋22が突出している。この場合、鉄筋22は端面14aa,14baの下端から突出している。鉄筋22は、端面14aaからはX方向に突出し、端面14baからはY方向に突出する。
【0024】
端面14aa,14baにおける突出鋼20よりも上部からは複数の鉄筋25が突出している。この場合、鉄筋25は端面14aa,14baの上端からやや下方の位置から突出している。鉄筋25は、鉄筋22と同様に端面14aaからはX方向に突出し、端面14baからはY方向に突出する。
【0025】
図2(b)に示すように、第2梁16はX方向に延在する第2X腕部16aと、該第2X腕部16aからY方向に突出する第2Y腕部16bとによってT字形を形成する。第2X腕部16aと第2Y腕部16bとは、交差部16cで交差する。第2X腕部16aおよび第2Y腕部16bは、第1Y腕部14bとほぼ同じ太さである。
【0026】
第2X腕部16aの両端面16aaおよび第2Y腕部16bの両端面16baからは、端面14aaおよび端面14baと同様に、それぞれ突出鋼20、複数の鉄筋22、および鉄筋25が突出している。
【0027】
図2(c)に示すように、第3梁18は、X方向に延在する第3X腕部18aと、Y方向に延在する第3Y腕部18bとが交差部18cで直交している。交差部18cには上下方向に貫通する杭孔18dが形成されている。第3梁18はY方向に対称である。
【0028】
第3X腕部18aのうち長い突出側の端面18aaおよび第3Y腕部18bの両端面18baからは、端面14aaおよび端面14baと同様に、それぞれ突出鋼20、複数の鉄筋22、および複数の鉄筋25が突出している。なお、設計条件によって第3梁18は第2梁16のようなT字形状としてもよい。
【0029】
各梁14,16,18で、突出鋼20および鉄筋22は各腕部に一部または大部分が埋め込まれている。第1梁14、第2梁16および第3梁18は、それぞれPC造であり、あらかじめプレキャスト製作ヤードで製作されている。各梁14,16,18におけるX方向腕とY方向腕の太さや長さは現地条件や設計条件によって設定される。
【0030】
図3は、杭12を説明する図であり、(a)は複数の杭12の斜視図であり、(b)は直杭12Aの頂部を示す斜視図であり、(c)は斜杭12Bの頂部を示す斜視図である。
【0031】
図3(a)に示すように、杭12は複数が地面(海底、湖底、川底を含む)に打ち込まれている。杭12は、例えば鋼管である。杭12は、鉛直方向に延在する直杭12Aと、鉛直方向に対してやや傾斜する斜杭12Bとに分類される。斜杭12Bは2本の頂部がほぼ接して杭対23を形成している。高さ方向をZ方向としたとき、斜杭12BはY-Z平面内で傾斜しており、傾斜角度の絶対値はそれぞれ等しい。
【0032】
図3(b)に示すように、直杭12Aの頂部には、上記の突出鋼20(
図2参照)を支持する受桁鋼24Aが設けられる。受桁鋼24Aは、H形鋼を十字に形成してものであり、4本の腕部24aを備える。受桁鋼24Aは直杭12Aに溶接されている。各腕部24aは直杭12Aの頂部縁に接して、該頂部縁からやや突出している。腕部24aの端面は、「H」字を横にした向きに設定されており、上下に平面部が設けられる。
【0033】
直杭12Aには、頂部よりもやや下部に上記の鉄筋22(
図2参照)を支持するプレート26Aが設けられる。プレート26Aは、直杭12Aの外周面に沿う切欠26aと、該切欠26aの開口26bと、該開口26bの反対側で突出する羽根部26cとを備える。プレート26Aは、例えば鋼板であり、直杭12Aに溶接されていて三方向に突出している。
【0034】
図3(c)に示すように、2本の斜杭12Bの頂部には、上記の突出鋼20(
図2参照)を支持する受桁鋼24Bが設けられる。受桁鋼24Bは、H形鋼を十字に形成してものであり、4本の腕部24aを備える。腕部24aは斜杭12Bの配列方向(X方向)に長く、その直交方向(Y方向)には短い。受桁鋼24Bは斜杭12Bに溶接されている。各腕部24aは2つの斜杭12Bの頂部縁に接して、該頂部縁からやや突出している。
【0035】
2本の斜杭12Bには、頂部よりもやや下部に上記の鉄筋22(
図2参照)を支持するプレート26Bが設けられる。プレート26Bは、例えば鋼板であり、斜杭12Bの周面に溶接されていて突出している。プレート26Bは、斜杭12BからX方向に突出する一対のX方向板26Baと、Y方向に突出する一対のY方向板26Bbとに分類される。X方向板26Baは2本の斜杭12Bのうちいずれか一方に溶接され、Y方向板26Bbは2本の斜杭12Bの間で両者に溶接されている。X方向板26BaとY方向板26Bbとは同じ高さに設定されている。受桁鋼24A,24Bおよびプレート26A,26Bは、杭12の打設後に、各杭12に設ければよい。
【0036】
なお、コンクリート構造物10における四隅の直杭12AにはX方向に突出する複数の鉄筋27(
図5(a)参照)が設けられる。鉄筋27は上記の鉄筋22と同様の部材であり、プレート26Aに溶接する。
【0037】
概略的には、受桁鋼24A,24Bは、主に第1梁14、第2梁16および第3梁18の重量を支持し、プレート26A,26Bおよび鉄筋22は、主に後述する第1接合部28A,第2接合部28Bおよび第3接合部28Cの重量を支持する。
【0038】
図4は、杭12および第2梁16の斜視図である。
図5は、コンクリート構造物10の施工工程を説明する図であり、(a)は、杭12に対して第1梁14、第2梁16および第3梁18を取り付けた施工状態を示す斜視図であり、(b)は、各第1梁14、第2梁16、第3梁18間の腕間空洞部にコンクリートを打設した施工状態を示す斜視図であり、(c)は、第1梁14、第2梁16、第3梁18の上面に床板30を敷設した施工状態を示す斜視図である。
【0039】
図4に示すように、第2梁16における第2X腕部16aから突出する突出鋼20は、直杭12Aにおける受桁鋼24Aの1本の腕部24aに対して載置・溶接されて支持される。第2梁16における第2X腕部16aから突出する複数の鉄筋22は、直杭12Aにおけるプレート26Aに対してそれぞれ載置・溶接されて支持される。
【0040】
第2梁16における第2Y腕部16bから突出する突出鋼20は、杭対23における受桁鋼24Bの1本の腕部24aに対して載置・溶接されて支持される。第2梁16における第2Y腕部16bから突出する複数の鉄筋22は、杭対23におけるプレート26BのY方向板26Bbに対してそれぞれ載置・溶接されて支持される。
【0041】
また、対向する鉄筋25同士は配筋材29によって接続される。この接続には所定の継手31が用いられる。また、対向する部分がない鉄筋25については、符号29Aで示すように先端にフックを付けて自身と直交する配筋材29に対して定着させる。その他、スターラップ等の必要な配筋を実施する。
【0042】
図5(a)に示すように、第1梁14における第1X腕部14aから突出する突出鋼20は、杭対23における受桁鋼24bのX方向の腕部24aに対して載置・溶接されて支持される。第1梁14における第1X腕部14aから突出する複数の鉄筋22は、杭対23におけるプレート26BのX方向板26Baに対してそれぞれ載置・溶接されて支持される。
【0043】
第1梁14における第1Y腕部14bから突出する突出鋼20は、直杭12Aにおける受桁鋼24AのY方向の腕部24aに対して載置・溶接されて支持される。第1梁14における第1Y腕部14bから突出する複数の鉄筋22は、直杭12Aにおけるプレート26Aの羽根部26cに対してそれぞれ載置・溶接されて支持される。
【0044】
第3梁18における第3X腕部18aから突出する突出鋼20は、杭対23における受桁鋼24bのX方向の腕部24aに対して載置・溶接されて支持される。第3梁18における第3X腕部18aから突出する複数の鉄筋22は、杭対23におけるプレート26BのX方向板26Baに対してそれぞれ載置・溶接されて支持される。
【0045】
第3梁18における第3Y腕部18bから突出する突出鋼20は、直杭12Aにおける受桁鋼24AのY方向の腕部24aに対して載置・溶接されて支持される。第3梁18における第3Y腕部18bから突出する複数の鉄筋22は、直杭12Aにおけるプレート26Aの羽根部26cに対してそれぞれ載置・溶接されて支持される。
【0046】
図1に戻り、コンクリート構造物10では、複数の第1梁14がX方向に配列されている。複数の第1梁14の両端には第3梁18が配設されている。第1梁14の第1X腕部14aと第3梁18の第3X腕部18aとは直線状に配設されている。すなわち、一対の第3梁18が、コンクリート構造物10のX方向両端を形成している。
【0047】
コンクリート構造物10では、Y方向の両端に複数の第2梁16がX方向に配列されている。X方向に隣り合う第2梁16同士は、各第2X腕部16aが直線状に配設されている。Y方向に隣り合う第2梁16同士は、各第2Y腕部16bが対向している。コンクリート構造物10では、複数の第1梁14、第2梁16および第3梁18により格子が形成されている。格子の各枡目は、例えばほぼ正方形である。
【0048】
このようなコンクリート構造物10では、第1梁14および第2梁16をX方向に適度な数だけ配列することにより、X方向に長尺な形状とすることができ、例えば桟橋などの建造物に好適である。また、桟橋などの長尺建造物の場合、適度な長さのコンクリート構造物10を1ブロックとして、X方向に複数設けてもよい。また、仮想線で示すように第1梁14をY方向にも配列すると、コンクリート構造物10をY方向にも広げることができる。コンクリート構造物10を1ブロックとしてY方向に複数設けてもよい。
【0049】
コンクリート構造物10では、第1接合部28A、第2接合部28Bおよび第3接合部28Cがそれぞれ杭12で支持されている。
【0050】
第1接合部28Aは、X方向に並ぶ2つの第1梁14におけるそれぞれの第1X腕部14aの端部同士と、少なくとも第2梁16における1本の第2Y腕部16bの端部との間にコンクリートが打設されて固定された部分である。本実施例における第1接合部28Aでは、Y方向に並ぶ2つの第2梁16における第2Y腕部16bの端部同士が接続されている。第1接合部28Aは、複数(この場合では2本)の斜杭12Bによって支持される。
【0051】
第2接合部28Bは、X方向に並ぶ2つの第2梁16におけるそれぞれの第2X腕部16aの端部同士と、第1梁14における第1Y腕部14bの端部との間にコンクリートが打設されて固定された部分である。
【0052】
第3接合部28Cはコンクリート構造物10の四隅に形成され、1つの第2梁16における第2X腕部16aの端部と、第3梁18における第3Y腕部18bの端部との間にコンクリートが打設されて固定された部分である。第3接合部28CはX方向にやや突出する形状であり、鉄筋27(
図5(a)参照)によって支持される。この突出部は、コンクリート構造物10をX方向に複数配列する場合の相互接続部として利用できる。
【0053】
第1接合部28A、第2接合部28Bおよび第3接合部28Cは、Z方向厚みが第1梁14、第2梁16、第3梁18と等しい。第1接合部28A、第2接合部28Bおよび第3接合部28Cは、杭12の頂部、突出鋼20および鉄筋22を内部に含んでおり、一体化が図られている。接合部28A~28Cは、対応するプレート26A,26Bが底面の一部を形成している。
【0054】
第1梁14の交差部14cおよび第3梁18の交差部18cは、直杭12Aで支持されている。すなわち、交差部14cの杭孔14dおよび交差部18cの杭孔18dにはそれぞれ直杭12Aが挿入され、該杭孔14d,18d内で直杭12Aがコンクリートによって固定されている。
【0055】
次に、コンクリート構造物10の施工方法について説明する。
【0056】
まず、現地施工前あるいは同時進行で第1梁14、第2梁16および第3梁18を必要数製作しておく。
【0057】
そして現地施工では、地面に複数の杭12を
図3(a)に示すように打設する。さらに、杭12のうち直杭12Aには
図3(b)に示すように受桁鋼24Aおよびプレート26Aを溶接し、斜杭12Bには
図3(c)に示すように受桁鋼24Bおよびプレート26Bを溶接する。
【0058】
図5(a)に示すように、第1梁14、第2梁16および第3梁18を設置する。この工程では、例えば、各梁14,16,18一基の重量を50t程度の規模にした場合、プレキャスト製作ヤード付近の岸壁から310t吊クレーン付きスパッド台船で積込み、桟橋新設箇所に設置する。このとき、各突出鋼20を受桁鋼24A,24Bに載置し、鉄筋22をプレート26A,26Bに載置する。
【0059】
第2梁16および第3梁18は3本の腕部の端部がそれぞれ杭12で支持されており、いわゆる三点支持となって安定しており、バランスがよい。
【0060】
各杭孔14d,18dには直杭12Aが挿入される。杭孔14d,18dに挿入された直杭12Aは、Y方向に関して中間にあり、中間直杭12Aとも呼び得る。この中間直杭12Aは、杭孔14d,18dに挿入される分だけ他のものより長く設定してもよい。この時点では、中間直杭12Aは、各梁14,16,18の支持作用はない。つまり、この時点では第1梁14は第1X腕部14aの両端と第1Y腕部14bの両端が杭12で支持されていてX方向およびY方向について安定しており、バランスがよい。
【0061】
このように、第1梁14、第2梁16および第3梁18は、杭12によって3点または4点で支持され、しかも各重心は支持点を頂部とする三角形または四角形のほぼ中央にあることから安定度が高い。したがって、各梁14,16,18をクレーンなどによって設置する際にわずかに傾いた状態で降ろしても水平に載置されることになり、荷下ろし作業が容易となる。
【0062】
特許文献2では各梁が1本の杭で支持されることから、安定を図るためには、各杭に高い位置精度が求められ、梁を精度よく杭頭に載置し、そのまま溶接などの固定処理が必要である。これに対して、本実施形態では、杭12の打ち込みにある程度の誤差が許容されるとともに、各梁14,16,18の載置にある程度の誤差が許容され、しかも溶接などの固定処理をすぐに実施しなくとも適度な安定性が得られる。各梁14,16,18は安定して載置されていることから、多少の風や振動(地震や波浪などによる)を受けても落下することはない。
【0063】
また、特許文献1のように直線状の梁を縦横に配置して桟橋を構築する際には部材数が多く、クレーンなどによる載置回数が多くなるが、コンクリート構造物10ではT字または+字の各梁14,16,18を用いることから部材数および載置回数が少なくて済む。
【0064】
この後、突出鋼20を受桁鋼24A,24Bに溶接し、鉄筋22をプレート26A,26Bに溶接する。また、対向する鉄筋25同士を配筋材29および継手31によって接続する(
図4参照)。煩雑となることを避けるため
図5では配筋材29および継手31を省略している。さらに、第1梁14、第2梁16および第3梁18間の腕間空洞部で、第1接合部28A、第2接合部28Bおよび第3接合部28Cとなる部分を型枠板(図示略)で覆う。杭孔14d,18dと直杭12Aとの隙間部分における下面も型枠板で塞ぐ。型枠板と各梁の各腕で囲まれた空間部にコンクリートを打設する。
【0065】
コンクリート構造物10では、各梁14,16,18がT字または+字であることから、特許文献1のような直線状の梁を敷設する場合と比べてコンクリートの打設箇所は少なく、工期の短縮を図ることができる。すなわち、直線状の梁を縦横に配設する場合と比較して、各梁14,16,18ではPC造により交差部14c,16c,18cが予め形成されていることから、この部分のコンクリート打設が不要であり、工期が短縮される。ほぼ全量を場所打ちコンクリート施工とする従来の桟橋施工に比べて約25%の工期短縮(延長170mの桟橋建設の場合の試算)が見込まれる。
【0066】
また、杭孔14d,18dと直杭12Aとの隙間部分にもコンクリートを打設する。この部分は容積が十分に小さく、コンクリート打設が容易である。そして、コンクリートを養生・固化させる。接合部28A~28Cは、体積が比較的小さいため養生が容易である。
【0067】
コンクリートを養生・固化させた後に型枠板を取り外すと、
図5(b)に示すように、第1接合部28A、第2接合部28Bおよび第3接合部28Cが形成される。接合部28A~28Cには、必要に応じて表面仕上げを行う。さらに、
図5(c)に示すように、第1梁14、第2梁16、第2梁18、第1接合部28A,第2接合部28Bおよび第3接合部28C(以下、格子構造体という)の各上面に複数の床板30を敷設・固定して、格子構造体とその升目部分を覆う。複数の床板30によって平面が形成される。床板30は矩形であって、それぞれ格子構造体によって3辺が支持される。
図5(c)では床板30のうち端部の1枚を浮かせた状態で示している。さらに、床板30によって形成された平面上に舗装を行うことによってコンクリート構造物10が出来上がる。
【0068】
また、コンクリート構造物10では、各梁14,16,18を従来(例えば、特許文献1に記載のもの)の直線形の梁からT字形・+字形ピースの組み合わせとしたことで、場所打ちコンクリートによる連結部が大幅に減少し、工期短縮が可能となる。また、T字形の第2梁16および第3梁18は3点支持、+字形の第1梁14は仮載置時には4点、施工終了時には5点支持となることから、それぞれ安定性および施工性が向上する。
【0069】
コンクリート構造物10では各梁14,16,18の仮置き時の安定化のための特別な処理、例えば、各杭12の上部にコンクリートを打設してベース部を形成し、且つ杭頭を平坦にする処理などが不要である。
【0070】
安定性の向上に伴い各梁14,16,18の形状の自由度が増すため、杭12も合理的な配置とすることができるほか、斜杭12Bを含む形式の桟橋にも対応可能となる。また、各梁14,16,18の大型化も可能となる。
【0071】
コンクリート構造物10は、Y方向に関する中央部が比較的負荷が大きくなると想定される。この部分は、中間杭としての直杭12Aと一対の斜杭12Bからなる杭対23とが交互に設けられており、しかもその間隔が比較的短いため高強度である。杭対23を構成する一対の斜杭12Bは、コンクリート構造物10の長尺方向(本実施例の場合X方向)に並んでおり、短尺方向(本実施例の場合Y方向)には直杭12Aと同じ幅で足りる。したがって、第1梁14の第1X腕部14aおよび第1接合部28AをY方向に過度に厚くする必要がない。
【0072】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0073】
10 コンクリート構造物、12 杭、12A 直杭、12B 斜杭、14 第1梁、14a 第1X腕部、14b 第1Y腕部、14d,18d 杭孔、16 第2梁、16a 第2X腕部、16b 第2Y腕部、18 第3梁、18a 第3X腕部、18b 第3Y腕部、20 突出鋼、22,27 鉄筋、23 杭対、24A,24B 受桁鋼、26A,26B プレート、28A 第1接合部、28B 第2接合部、28C 第3接合部、29 配筋材、30 床板