(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】泡沫分離装置とこれを備えた飼育装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/24 20230101AFI20231127BHJP
A01K 63/04 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
C02F1/24 C
A01K63/04 Z
(21)【出願番号】P 2020016413
(22)【出願日】2020-02-03
【審査請求日】2022-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】高田 明広
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-277361(JP,A)
【文献】特開2006-334568(JP,A)
【文献】特開2001-224422(JP,A)
【文献】特開2002-346547(JP,A)
【文献】特開2004-209473(JP,A)
【文献】特開2005-125205(JP,A)
【文献】特開2020-018211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/20- 1/26
1/30- 1/38
A01K 61/00-61/65
61/80-63/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体と液体の気液混合物が供給され、前記気液混合物から発生した泡沫を分離する本体容器と、
前記本体容器の上方で前記本体容器と接続され、前記本体容器から流入する泡沫を回収する泡沫回収容器と、を有し、
前記泡沫回収容器は、前記本体容器に接続された泡沫流入開口と、前記泡沫流入開口の上方に設けられた気体排出開口と、前記泡沫流入開口と前記気体排出開口との間に設けられた遮へい体と、を有し、前記遮へい体は、前記泡沫流入開口のいずれの位置からみても前記泡沫流入開口と前記気体排出開口との間に介在し、且つ前記泡沫回収容器の内部空間を介して前記泡沫流入開口と前記気体排出開口とが連通するように設けら
れ、前記泡沫流入開口は前記気体排出開口より大きい、泡沫分離装置。
【請求項2】
前記気体はオゾンを含み、前記泡沫回収容器は密閉されている、請求項1に記載の泡沫分離装置。
【請求項3】
前記遮へい体と一体化され、前記泡沫回収容器の底面に支持された、前記遮へい体の支持構造体を有する、請求項1または2に記載の泡沫分離装置。
【請求項4】
前記支持構造体は前記遮へい体の周縁部から下方に延びる3本以上の脚部である、請求項3に記載の泡沫分離装置。
【請求項5】
前記遮へい体と前記支持構造体の組立体は前記底面に自立している、請求項3または4に記載の泡沫分離装置。
【請求項6】
前記泡沫回収容器は前記気体排出開口を備えた蓋を有し、
前記蓋に取り付けられ、前記遮へい体を上方から支持する、前記遮へい体の支持構造体を有する、請求項1または2に記載の泡沫分離装置。
【請求項7】
前記泡沫回収容器の側面または前記気体排出開口に取り付けられ、前記遮へい体を下方から支持する、前記遮へい体の支持構造体を有する、請求項1または2に記載の泡沫分離装置。
【請求項8】
前記遮へい体は上面に突起を有し、前記突起は鉛直方向にみて前記
気体排出開口と重ならない位置に設けられ、前記突起の頂部は前記遮へい体の最上部をなす、請求項1から7のいずれか1項に記載の泡沫分離装置。
【請求項9】
前記遮へい体の上面は、中央部から周縁部に向けて下り勾配となっている、請求項1から8のいずれか1項に記載の泡沫分離装置。
【請求項10】
前記本体容器と前記泡沫回収容器の前記内部空間とを接続し、上端部に前記泡沫流入開口が設けられ、前記上端部より下方で前記泡沫回収容器の底面を貫通する連結管を有し、
前記遮へい体は、前記泡沫回収容器の内側側面と前記連結管の外側側面との間の空間まで延びる側壁を有し、前記側壁は前記泡沫流入開口を全周に渡って取り囲んでいる、請求項1から9のいずれか1項に記載の泡沫分離装置。
【請求項11】
前記遮へい体は前記泡沫の向きを変える、請求項1から10のいずれか1項に記載の泡沫分離装置。
【請求項12】
水槽と、
前記水槽の貯留水を浄化する請求項1から1
1のいずれか1項に記載の泡沫分離装置と、
前記水槽の貯留水を前記泡沫分離装置に供給し、前記泡沫分離装置で泡沫が分離された
貯留水を前記水槽に戻す循環経路と、を有する飼育装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泡沫分離装置とこれを備えた飼育装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水生動物を飼育する飼育装置では、水槽の貯留水の定常的な浄化が必要な場合がある。貯留水の浄化手段として泡沫分離装置を用いた浄化方法が知られている。この方法の概要は以下のとおりである。まず、水槽の貯留水を抜き出し、抜き出した貯留水に空気を混入し、微細な空気を含む気液混合物を形成する。気液混合体は泡沫分離装置の本体容器に導入される。気液混合体は微小な気泡が有機物や細菌などを付着させながら本体容器の内部空間を上昇する。浄化された気液混合体は下降流となって泡沫から分離し、排出ポートから排出される。気泡の一部は泡沫となって、本体容器の頂部に接続された泡沫回収容器に導入され、回収される。泡沫回収容器は、本体容器に接続された泡沫流入開口と、その上方に設けられた気体排出開口とを有している。特許文献1には、泡沫分離装置の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
泡沫は流動性が低いため、泡沫回収容器に導入された泡沫の一部は泡沫回収容器に滞留する。特に、泡沫流入開口と気体排出開口との間には大量の泡沫が滞留することがある。気体排出開口が泡沫で閉塞されると、泡沫容器回収容器と、気体排出開口が設けられた蓋との隙間から、泡沫が泡沫回収容器の外部へ流出する可能性がある。また、泡沫回収容器の内圧が上昇し、泡沫の流入量低下が生じる可能性がある。
【0005】
本発明は、泡沫分離装置において、泡沫による気体排出開口の閉塞を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の泡沫分離装置は、気体と液体の気液混合物が供給され、気液混合物から発生した泡沫を分離する本体容器と、本体容器の上方で本体容器と接続され、本体容器から流入する泡沫を回収する密閉された泡沫回収容器と、を有している。泡沫回収容器は、本体容器に接続された泡沫流入開口と、泡沫流入開口の上方に設けられた気体排出開口と、泡沫流入開口と気体排出開口との間に設けられた遮へい体と、を有している。遮へい体は、泡沫流入開口のいずれの位置からみても泡沫流入開口と気体排出開口との間に介在し、且つ泡沫回収容器の内部空間を介して泡沫流入開口と気体排出開口とが連通するように設けられている。泡沫流入開口は気体排出開口より大きい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、泡沫分離装置において、泡沫による気体排出開口の閉塞を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】泡沫分離装置を備えた飼育装置の概略構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る泡沫分離装置の概要図である。
【
図4】遮へい体と支持構造体の一実施形態を示す斜視図である。
【
図5】遮へい体と支持構造体の他の実施形態を示す断面図である。
【
図6】遮へい体と支持構造体の他の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のいくつかの実施形態について図面を参照して説明する。まず、
図1を参照して飼育装置の概略構成について説明する。
図1は飼育装置の概略構成図である。
【0010】
飼育装置1は、水槽2と、水槽2が載置される架台3と、を有している。水槽2はアクリル板で形成され、概ね直方体の形状を有している。架台3の内部には、水槽2の貯留水を浄化する浄化装置11が配置されている。
【0011】
図2は飼育装置1の概略構成図である。水槽2の内部には少なくとも二重管構成のパイプ12が設けられている。パイプ12は被処理水である水槽2の貯留水を浄化装置11に供給するとともに、浄化装置11で処理された処理水を水槽2に戻す。パイプ12は水槽2の底部で原水供給管13に接続されている。被処理水は原水供給管13から原水槽14に供給され、原水槽14に一時的に貯留される。原水槽14に貯留された被処理水は原水ポンプ15によってストレーナ16に送られ、比較的大きな異物が除去され、さらにフィルター17で微小な異物が除去される。フィルター17としては限外ろ過膜(UFフィルター)、精密ろ過膜(MFフィルター)などを用いることができる。
【0012】
フィルター17の出口は活性炭原水槽18に接続されている。活性炭原水槽18に貯留された被処理水は活性炭原水ポンプ19によって活性炭装置20に導入される。後述のように被処理水はオゾンを含むことがあるため、被処理水に含まれる可能性のあるオゾンが活性炭装置20で除去される。オゾンが除去された被処理水は温度調整装置21に導入され、温度調整される。温度調整装置21は冷却用のチラー(図示せず)、加温用のヒータ(図示せず)、またはこれらの両者を備えているが、飼育装置1の設置環境によってはこれらのいずれかを省略することができ、温度調整装置21そのものを省略することもできる。温度調整装置21は戻り管25に接続されており、戻り管25は水槽2の底部でパイプ12に接続されている。浄化され温度調整された被処理水は処理水として、戻り管25及びパイプ12を通って水槽2に戻される。
【0013】
一方、フィルター17を出た被処理水の一部は泡沫分離装置22に導入される。被処理水は連続的に泡沫分離装置22に導入されてもよいし、必要に応じて泡沫分離装置22に導入されてもよい。泡沫分離装置22は気泡の供給装置(図示せず)を備え、被処理水に微小な気泡を導入する。気泡は有機物や細菌などを付着させながら泡沫分離装置22の内部を上昇し、上部の泡沫回収部32(
図3参照)で捕捉される。また、泡沫分離装置22はオゾンガスを供給するオゾン供給装置23に接続されている。オゾンは気泡となって有機物や細菌を捕捉するだけでなく、被処理水中の有機物を分解処理する。分解された有機物も泡沫によって除去される。泡沫分離装置22は戻り管26を介して原水槽14に接続されており、有機物や細菌が除去された被処理水は原水槽14に戻される。このため、原水槽14に貯留される被処理水はオゾンを含む場合があり、上述のように活性炭装置20で処理される。泡沫分離装置22にはオゾン分解触媒装置24が接続されている。オゾン分解触媒装置24は、泡沫分離装置22から排出される排オゾンを分解する。分解された排オゾンは必要に応じてオゾン濃度を測定し外部に排出することができる。なお、泡沫は海水で発生しやすいため、泡沫分離装置22を用いる場合、被処理水は海水であることが好ましい。
【0014】
このように、被処理水はパイプ12、原水供給管13、原水槽14、原水ポンプ15、ストレーナ16、フィルター17、活性炭原水槽18、活性炭原水ポンプ19、活性炭装置20、温度調整装置21を通って処理水(浄化された貯留水)となり、戻り管25及びパイプ12を通って水槽2に戻される。また、一部の被処理水は泡沫分離装置22で泡沫が分離された後、原水槽14に戻され、上述の設備を通って水槽2に戻される。このように、水槽2の貯留水が循環浄化されるため、外部から補給する新鮮な水の量を抑制することができる。
【0015】
次に、
図3を参照して泡沫分離装置22の構成についてさらに詳細に説明する。泡沫分離装置22は、本体容器31と、本体容器31の上方で本体容器31と接続された泡沫回収容器32と、を有している。本体容器31と泡沫回収容器32はいずれも円筒形であり、透明な樹脂で作成されている。特に泡沫回収容器32を透明な樹脂で作成することにより、内部に滞留した汚染水を目視確認することができる。本体容器31の頂部34に上部開口35が設けられている。上部開口35の側面にはねじ(図示せず)が切られている。内筒33が本体容器31の底面36から本体容器31の内部を上方に延び、頂部34の下方で終端している。従って、本体容器31の底面36から内筒33の頂部33aまでの空間は、内筒33によって内側空間37と外側空間38とに仕切られている。一方、本体容器31の内筒33の頂部33aより上方の空間39は、内筒33によって仕切られていない一体の空間とされている。内筒33は本体容器31の側面40から斜め上方に延び、その上方で上下方向に延びていてもよい。
【0016】
本体容器31の外側には供給ポンプ41が設けられている。供給ポンプ41の入口管42はフィルター17と接続されており、フィルター17で異物が除去された被処理水が供給ポンプ41に供給される。入口管42はオゾン供給装置23に接続されており、入口管42の内部で気体のオゾンと被処理水の気液混合物が生成される。気体として、さらに空気を被処理水に導入してもよい。換言すれば、気液混合物は、オゾンを含む気体と、液体である被処理水と、の混合物である。供給ポンプ41の出口に接続された出口管43は本体容器31と内筒33を貫通して内側空間37と連通しており、気液混合物は供給ポンプ41によって内側空間37の下部に供給される。供給ポンプ41とオゾン供給装置23と出口管43は、オゾンを含む気体と液体との気液混合物を内側空間37に供給する供給手段を構成する。
【0017】
外側空間38には気液混合物を排出する排出ポート44が設けられている。排出ポート44は排出配管45に接続され、排出配管45は戻り管26を介して原水槽14に接続されている。排出配管45は立上がり部46を有している。立上がり部46は内筒33の頂部33aの上方まで延びている。これによって、本体容器31内の被処理水の水位を高く維持し、泡沫を効率よく上方に押し上げることができる。ただし、被処理水が本体容器31の上部開口35から流出しないように立上がり部46の最高部の高さは概ね上部開口35の高さと同程度以下とすることが好ましい。
【0018】
泡沫回収容器32は、本体部47と、本体部47の上部開口を覆う蓋51と、を有している。泡沫回収容器32の内部空間は、中空の連絡管48によって本体容器31の上部開口35と接続されている。連結管48の側面の下端部にはねじが切られ、上部開口35の側面に切られたねじと係合することによって、泡沫回収容器32が本体容器31に固定される。連結管48の上端部に泡沫流入開口56が設けられ、連結管48は上端部より下方で、本体部47の底面47aを貫通している。泡沫回収容器32は、上部開口35を通って本体容器31から流入する泡沫を回収する。泡沫回収容器32の内側側面と連結管48の外側側面との間には、汚染水が溜まるリング状の空間49が形成される。
【0019】
蓋51には気体排出開口50が設けられ、気体排出開口50は泡沫流入開口56の上方に設けられている。泡沫流入開口56と気体排出開口50は同軸の円形形状を有し、泡沫流入開口56の直径が気体排出開口50の直径より大きい。蓋51の内面には位置決めのための環状体52が設けられている。蓋51は環状体52が本体部47の外側側面に接するように本体部47に対して位置決めされる。環状体52は省略してもよい。蓋51の下面には本体部47の上端部に沿った溝が形成され、溝の内部にはリング状のパッキン53が設けられている。蓋51の外面には、本体部47の内部空間を介して泡沫流入開口56と連通するノズル54が設けられている。ノズル54にはオゾン分解触媒装置24に接続されるチューブ55が装着される。蓋51は適宜の方法で泡沫回収容器32に取り付けられ、泡沫回収容器32とともに密閉容器を構成する。これによって、毒性のあるオゾンの泡沫分離装置22からの漏出が抑制される。
【0020】
本実施形態の泡沫分離装置22は以下のように作動する。被処理液にオゾンが導入された気液混合物が、入口管42及び供給ポンプ41を通って本体容器31の内側空間37の下部に供給される。気液混合物は、オゾンの気泡が(空気が導入される場合はさらに空気の気泡が)有機物や細菌などを付着させながら内側空間37を上昇する。この過程で被処理水がオゾンによって殺菌されるとともに、気泡の一部は被処理水の水面に達し泡沫となる。つまり、気液混合物から泡沫が発生する。泡沫には有機物や細菌などが付着しており、且つオゾンを含んでいる。泡沫は気液混合物に押し上げられ、上部開口35から泡沫回収容器32に流入する。一方、浄化された気液混合物は内筒33を超え、外側空間38に入り、外側空間38を下降する。気液混合物は排出ポート44から排出配管45に排出され、立上がり部46で再び上昇し、原水槽14に供給される。一方、上部開口35から泡沫流入開口56を通って泡沫回収容器32に流入した排オゾンガスは気体排出開口50及びノズル54を通って泡沫回収容器32から排出され、オゾン分解触媒装置24で処理される。泡沫は、連絡管48の頂部を超えて連絡管48の周囲のリング状の空間49に流入し、時間とともに液体化し、汚染水として滞留する。空間49に滞留した汚染水は、例えば蓋51を本体部47に対してずらし、細いチューブを本体部47の内部に差込み、サイホン効果によって汚染水を吸い出すことによって除去することができる。
【0021】
本実施形態では被処理水とオゾンの気液混合物は内側空間37に供給されるが、外側空間38に供給されてもよい、すなわち、外側空間38を気液混合物が上昇し、その上方に泡沫が形成され、浄化された気液混合物が内側空間37を下降するようにしてもよい。また、図示は省略するが、排出配管45は本体容器31に内蔵してもよい。その場合、外側空間38を径方向に仕切る仕切り壁を設け(すなわち、本体容器31を三重円筒構成とし)、仕切り壁の内側空間を下降してきた被処理液が仕切り壁の下端で上方にUターンし、仕切り壁の外側空間を上昇し、本体容器31の外壁に設けたノズルから排出する構成とすることができる。また、本実施形態ではオゾンを入口管42に導入しているが、本体容器31に直接導入してもよい。圧力的に問題がなければ供給ポンプ41を削除してもよい。
【0022】
泡沫は流動性が低いため、泡沫回収容器32の内部空間、特に気体排出開口50と泡沫流入開口56との間に滞留する可能性がある。滞留した泡沫で気体排出開口50が閉塞されると、泡沫流入開口56からの泡沫の流入が阻害されたり、泡沫回収容器32の内圧上昇によってオゾンが漏洩したりする可能性が生じる。このため、泡沫が気体排出開口50を閉塞する可能性を低減することが好ましい。本実施形態では、泡沫流入開口56と気体排出開口50との間に、泡沫の気体排出開口50への流入を抑えるための遮へい体61が設けられている。
【0023】
図4(a)は泡沫回収容器32の斜視図であり、内部に設けられた遮へい体61とその支持構造体62とを破線で示している。
図4(b)は遮へい体61と支持構造体62の斜視図である。遮へい体61は、泡沫流入開口56と気体排出開口50との間に位置する本体部61aと、本体部61aに接続された側壁61bと、を有している。本体部61aは概ね円形の板状の部材であり、泡沫流入開口56のいずれの位置からみても、泡沫流入開口56と
気体排出開口50との間に介在するように設けられている。換言すれば、本体部61aが遮光性の材料で形成される場合、本体部61aは泡沫流入開口56のいずれの位置からみても
気体排出開口50を直視できないように設けられている。本体部61aに開口は設けられていない。本実施形態では、泡沫流入開口56と
気体排出開口50と本体部61aは同軸であり、本体部61aの直径は泡沫流入開口56と
気体排出開口50のいずれよりも大きい。従って、鉛直方向にみて、本体部61aは泡沫流入開口56と気体排出開口50の両者を覆っている。泡沫流入開口56と気体排出開口50は同軸でなくてもよく、例えば、気体排出開口50が蓋51の周縁部の近傍に設けられていてもよい。この場合は、本体部61aは泡沫流入開口56と同軸である必要はなく、気体排出開口50のほうにずれていてもよい。要するに、本体部61aは、泡沫流入開口56を下面、気体排出開口50と上面とする錐台を本体部61aが切断可能な位置関係で設けられていればよい。本体部61aは水平に設置されているが、この条件が満たされる限り斜めに設置されてもよいし、曲面状であってもよい。
【0024】
側壁61bは本体部61aの周縁部にその全周で接続され、空間49まで延び、泡沫流入開口56を全周に渡って取り囲んでいる。本実施形態では、側壁61bは円筒形の胴である。遮へい体61は、下端が開口とされ上端が閉じたカップ状の形状を有し、泡沫流入開口56と気体排出開口50は、泡沫回収容器32の内部空間の折れ曲がった複雑な流路を介して連通する。泡沫流入開口56から泡沫回収容器32に流入した泡沫は側壁61bと連結管48との間のリング状の空間を下降し、側壁61bの下端で上昇流に転じ、側壁61bと本体部47との間のリング状の空間を上昇し、側壁61bの上端で内側に向きを変え、本体部61aと蓋51との間の空間を進み、気体排出開口50に達する。この間に、泡沫は空間49に捕捉され、気体排出開口50に達することが防止される。
【0025】
遮へい体61は支持構造体62によって本体部47の底面47aに支持されている。支持構造体62は、遮へい体61と一体化され等間隔で設けられた脚部である。脚部62は側壁61bの下端周縁部から下方に延びている。泡沫は脚部62の間を通過するため、脚部62が泡沫の流動を阻害することはない。遮へい体61と支持構造体62の組立体は本体部47の底面47aに自立している。すなわち、支持構造体62は本体部47の底面47aに接合、係合などの手段によって固定されておらず、単に載置されているだけである。組立体が自立できるようにするため、脚部62は3本以上設けられている。遮へい体61や泡沫回収容器32の内部を洗浄するときは、蓋51を外し、遮へい体61と支持構造体62の組立体を取り外す。遮へい体61と支持構造体62は一体化されており、且つ自立構造のため、遮へい体61を持ち上げるだけで容易に取り外すことができる。遮へい体61と支持構造体62の組立体を取り外す際は、組立体を上方に引き上げる必要があるが、予めチューブ55を取り外すことによって、引き上げのためのスペースを確保することができる。
【0026】
遮へい体61と支持構造体62の組立体は本体部47の底面47aに固定されていてもよい。また、遮へい体61と支持構造体62の組立体は取り外し可能に取り付けられていてもよい。後者の例として、例えば、本体部47の底面47aに脚部62が係合する穴ないしスリットを設けることができる。あるいは、脚部62の下端に径方向に延びる舌部ないし爪部を設け、本体部47の底面47aに組立体を回転させることで舌部ないし爪部と係合する係合部を設けてもよい。
【0027】
遮へい体61と支持構造体62の組立体はPVDF(ポリフッ化ビニリデン),PTFEなどのフッ素樹脂、PVC(ポリ塩化ビニル)などオゾン耐性の高い材料で形成することが好ましい。これらの材料は耐腐食性も備えているため、被処理水が海水である場合にも好適に用いることができる。オゾン耐性と耐腐食性を備えた金属(例えばチタン)を用いることもできる。
【0028】
本実施形態は蓋51を除き市販の泡沫分離装置をほぼそのまま利用することができるため、コスト的なメリットも大きい。すなわち、市販の泡沫分離装置はオゾンを利用しないため、通気用の穴が蓋についていることがある。本実施形態は上述した蓋51を使用するが、それ以外の部分については市販の製品を流用することができる。上述のように、遮へい体61と支持構造体62の組立体は自立構造のため、市販の泡沫分離装置に組立体を支持するため構造部材を取り付ける必要もない。
【0029】
次に、遮へい体61の他の実施形態を説明する。ここでは上述の実施形態との違いを中心に説明する。説明を省略した点は上述の実施形態と同様である。
【0030】
図5(a)は他の実施形態の泡沫回収容器32の断面図であり、
図5(b)は遮へい体61と支持構造体62の斜視図である。遮へい体61の本体部61aは上面に突起64を有している。突起64は互いに平行に延びる2本の突条であり、鉛直方向にみて気体排出開口50は2本の突条の間に位置している。突起64の数、形状、位置はこれに限定されず、鉛直方向にみて気体排出開口50と重ならない位置に設けられれば特に限定されない。折れ曲がる突条で気体排出開口50を囲んでもよいが、突条で気体排出開口50が包囲されないように、突条の中心線が開いた線であることが好ましい。遮へい体61と支持構造体62の組立体が自立構造の場合、すなわち組立体が本体部47に固定されていない場合、泡沫の上昇流で組立体が浮き上がる可能性がある。組立体が浮き上がると本体部61aの上面が
気体排出開口50を閉塞する可能性がある。本実施形態によれば、仮に組立体が浮き上がっても、突起64の頂部が遮へい体61の最上部をなすため、突起64が蓋51に当接する。このため、本体部61aの上面と気体排出開口50との間に隙間が形成され、気体排出開口50の閉塞が生じにくくなる。
【0031】
図6はさらに他の実施形態の泡沫回収容器32の断面図を示している。
図6(a)を参照すると、遮へい体61の本体部61aは円錐形状となっており、
図6(b)を参照すると、遮へい体61の本体部61aはドーム形状となっている。これらの実施形態のように、遮へい体61の本体部61aの上面が中央部から周縁部に向けて下り勾配となっていることで、遮へい体61の本体部61aと蓋51との間の泡沫が本体部61aの上面に沿って落下するため、
気体排出開口50の閉塞が生じにくくなる。
【0032】
図6(c)を参照すると、側壁61bが省略されている。本実施形態では泡沫回収容器32の内部空間の流路形状は単純となるが、本体部61aは、泡沫流入開口56のいずれの位置からも気体排出開口50を直視できないように設けられているため、本発明の効果を奏することができる。また、遮へい体61の構造が単純化し、遮へい体61の作成コストが抑制できる。
【0033】
図6(d)を参照すると、遮へい体61の支持構造体65は蓋51の下面に取り付けられている。支持構造体65は遮へい体61を上方から支持する。本実施形態では蓋51を取り外すことで遮へい体61を同時に取り外すことができるため、泡沫回収容器32の内部の清掃が容易となる。支持構造体65は上述の脚部と同様の構成を有し、本体部61aの周縁部に間隔をおいて取り付けられている。支持構造体65は、遮へい体61と同一の素材で遮へい体61と一体形成されるが、ひも状の素材を用いて遮へい体61を吊るすようにしてもよい。後者の場合、遮へい体61が上下に動く可能性があるため、
図5に示す突起64を遮へい体61に設けてもよい。
【0034】
図6(e)を参照すると、支持構造体66は泡沫回収容器32(本体部47)の側面に取り付けられている。支持構造体66は側面に間隔をおいて設けられた複数のフランジまたは突起であり、遮へい体61はフランジまたは突起の上面で下方から支持される。泡沫は隣接するフランジまたは突起の間の空間から上方に流入する。
【0035】
図6(f)を参照すると、支持構造体67は泡沫流入開口56に取り付けられている。支持構造体67は本体部61aに接続された脚部68と、脚部68から径方向に延びるフランジ部69と、フランジ部69の内側端部に接続されたスリーブ70と、を有している。スリーブ70は連結管48の外周に嵌められ、フランジ部69の内側端部が連結管48の頂部で下方から支持される。支持構造体67は遮へい体61と一体形成される。本実施形態ではスリーブ70が遮へい体61の径方向の移動を規制するため、遮へい体61の径方向の位置ずれを防止することができる。また、市販の泡沫分離装置に対する改造も不要である。
【0036】
図3,5,6に示した実施形態は可能な範囲で組み合わせることもできる。例えば、
図6(d)~6(f)に示す各実施形態において、側壁61bを設けることができる。
図6(a)~6(b)に示す各実施形態において、側壁61bを省略することができる。また、本実施形態はオゾンが導入される泡沫分離装置22を対象とするが、泡沫はオゾンを含まない気液混合物でも発生し得る。本発明はオゾンの有無にかかわらず、気液混合物が供給される泡沫分離装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 飼育装置
11 浄化装置
22 泡沫分離装置
23 オゾン供給装置(気液混合物の供給手段)
31 本体容器
32 泡沫回収容器
33 内筒
41 供給ポンプ(気液混合物の供給手段)
43 出口管(気液混合物の供給手段)
44 排出ポート
50 気体排出開口
51 蓋
56 泡沫流入開口
61 遮へい体
61a 本体部
61b 側壁
62,65~67 支持構造体
64 突起