IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ タツタ電線株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-LANケーブル 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】LANケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01B 11/04 20060101AFI20231127BHJP
   H01B 7/02 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
H01B11/04
H01B7/02 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020016697
(22)【出願日】2020-02-04
(65)【公開番号】P2021125325
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-12-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.平成31年2月6日にタツタ電線株式会社がダイトロン株式会社に販売 2.平成31年2月7日にタツタ電線株式会社が三菱重工エンジニアリング株式会社に販売 3.平成31年3月5日にタツタ電線株式会社が日本車輌製造株式会社に販売
(73)【特許権者】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】谷川 昌弘
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-203157(JP,A)
【文献】実開平05-059715(JP,U)
【文献】特開2003-338225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 11/04
H01B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対撚りの素線からなる撚線を備え、複数の前記撚線の集合体が、筒状に形成された単層構造又は多層構造の被覆材により被覆されたLANケーブルであって、
前記集合体と前記被覆材との間には空間が形成され、該空間にはポリプロピレン樹脂により形成された介在であるポリプロピレン製ヤーンが充填されており、
断面図において、前記撚線の外接円と前記被覆材の内周円との間の面積を求め、前記面積と単位長さとの積を前記介在の収容空間とし、前記収容空間のすべてに前記ポリプロピレン樹脂を充填したときの該ポリプロピレン樹脂の質量を100%としたときに、充填された前記介在の単位長さあたりの質量割合が、25%以上55%以下である、LANケーブル。
【請求項2】
前記被覆材は、複数の樹脂層を有する前記多層構造であり、
前記樹脂層は、内側に配された第1の樹脂層と、外側に配された第2の樹脂層とを含み、
前記第1の樹脂層の硬度が、前記第2の樹脂層の硬度よりも高い、請求項1に記載のLANケーブル。
【請求項3】
前記第1の樹脂層がポリエチレン樹脂を含み、前記第2の樹脂層がポリエチレン樹脂及びエチレン酢酸ビニル共重合樹脂を含む、請求項2に記載のLANケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LANケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
LANケーブルは、対撚りの素線からなる撚線を備え、筒状に形成された被覆材に複数の前記撚線の集合体が収容されている。従来のLANケーブルのいくつかは、前記被覆材が単層構造を有している。また、他のLANケーブルは、前記被覆材が樹脂組成物により形成された複数の樹脂層を有している。
【0003】
前記集合体を被覆する筒状となるように前記樹脂層を形成する際には、従来、クロスヘッドを装着した押出機が用いられている。例えば、前記樹脂層は、樹脂組成物を押出機で溶融混練しつつ押出機の先端方向に移動させ、該溶融混練によって得られた混練物を押出機の先端に装着されたクロスヘッドに供給し、該混練物をクロスヘッドのダイ-ニップル間に形成された円形の吐出口から筒状に押出しつつ前記集合体を含む線状のコアをクロスヘッドのニップルを通じて押出方向に移動させることによって、前記集合体に被覆される。
【0004】
ところで、LANケーブルには、漏話特性が一定以上であることが求められる。漏話特性の向上は、前記集合体を構成する素線や撚線が適切な配置に調節されることが重要である。例えば、特許文献1には、被覆材が樹脂層として内部シース、外部シースを有するLANケーブルにおいて、複数の対撚線(ツイストぺア)の位置ずれを防止するために、複数の対撚線の周囲を介在で覆ったことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-172788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような素線や撚線が適切な配置に調節されないことによって漏話特性が低下することを防ぐ意味では、撚線の集合体と被覆材との間の空間にポリプロピレン製ヤーンなどの介在を多く充填して、被覆材と撚線とが直に接触しないようにする方法が考えられるが、本発明者が鋭意検討したところ、むしろ介在が不足した状態とする方が、漏話特性に優れたLANケーブルを製造し易いという知見を得た。
【0007】
すなわち、本発明は、漏話特性に優れたLANケーブルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るLANケーブルは、
対撚りの素線からなる撚線を備え、複数の前記撚線の集合体が、筒状に形成された単層構造又は多層構造の被覆材により被覆されたLANケーブルであって、
前記集合体と前記被覆材との間には空間が形成され、該空間にはポリプロピレン樹脂により形成された介在が充填されており、
断面図において、前記撚線の外接円と前記被覆材の内周円との間の面積を求め、前記面積と単位長さとの積を前記介在の収容空間とし、前記収容空間のすべてに前記ポリプロピレン樹脂を充填したときの該ポリプロピレン樹脂の質量を100%としたときに、充填された前記介在の単位長さあたりの質量割合が、25%以上55%以下である。
【0009】
斯かる構成によれば、充填された介在の質量割合が55%以下であることによって、集合体と被覆材との間に形成された空間に一定以上の空気が充填された状態となり得るため、漏話特性が優れたものとなる。また、該質量割合が25%以上であることによって、撚線の配置状態が安定化されるため、漏話特性が優れたものとなる。
【0010】
前記LANケーブルは、好ましくは、
前記被覆材は、複数の樹脂層を有する前記多層構造であり、
前記樹脂層は、内側に配された第1の樹脂層と、外側に配された第2の樹脂層とを含み、
前記第1の樹脂層の硬度が、前記第2の樹脂層の硬度よりも高い。
【0011】
ここで、LANケーブルには、施工性を向上させるために、可撓性が一定以上であることも求められる。しかしながら、本発明者が検討したところ、可撓性を向上させるために、被覆材の樹脂層に比較的硬度の低い樹脂を採用すると、漏話特性が低下するという知見を得た。これは、樹脂層の硬度が低くなると、押出機による樹脂層形成の際、樹脂の溶融混練物が集合体を構成することとなるコアに密着するため、コアに圧力が加わることとなり、これに伴って、各撚線の配置が変化して漏話特性が低下するものと考えられる。
よって、上記構成によれば、内側に配された第1の樹脂層の硬度が比較的高いことによって、集合体の配置状態が安定化されるため、漏話特性が優れたものとなり、また、外側に配された第2の樹脂層の硬度が比較的低いことによって、LANケーブルが曲げ易くなるため、施工性が向上する。
【0012】
前記LANケーブルは、好ましくは、
前記第1の樹脂層がポリエチレン樹脂を含み、前記第2の樹脂層がポリエチレン樹脂及びエチレン酢酸ビニル共重合樹脂を含む。
【0013】
斯かる構成によれば、第2の樹脂層がエチレン酢酸ビニル共重合樹脂を含むことによって、第1の樹脂層よりも硬度が比較的低くなるため、漏話特性及び施工性がさらに向上する。
【発明の効果】
【0014】
以上の通り、本発明によれば、漏話特性に優れたLANケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、一実施形態に係るLANケーブルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係るLANケーブルについて説明する。
【0017】
図1に示されるように、本実施形態のLANケーブル1は、中心線10と、対撚りの素線20からなる撚線30とを備え、中心線10の周りに複数の撚線30が集合して1つの集合体40を形成しており、集合体40が筒状に形成された多層構造の被覆材50により被覆されている。本実施形態のLANケーブル1は、4つの撚線30を有しているが、これに限定されず、例えば2つの撚線30を有していてもよい。また、本実施形態のLANケーブル1は、多層構造の被覆材50を有しているが、単層構造の被覆材50を有していてもよい。
【0018】
中心線10は、高弾性率を有する繊維により形成されており、これによって、LANケーブル1に抗張力が付与される。かかる繊維としては、例えば、アラミド繊維やポリアリレート系の繊維が挙げられる。
【0019】
撚線30は、一対の素線20が撚り合わされることにより構成されている。素線20の撚りピッチは、短い方が漏話特性を向上させる上で好ましく、通常9~18mmである。また、4つの撚線30は、それぞれの撚りピッチが異なっていることが好ましく、これによって、漏話特性が向上する。
【0020】
素線20は、導体21が絶縁体22により被覆された絶縁素線である。導体21は、単線の銅線又は複数の銅線が撚り合わされた撚線により構成されている。導体21の外径は通常0.5~0.6mmである。なお、導体21は、他の導電性材料により形成されていてもよく、例えば、アルミ線により形成されていてもよい。
【0021】
絶縁体22は、電気絶縁性の樹脂組成物により形成されている。かかる樹脂組成物としては、例えば、ポリエチレン樹脂(PE)が挙げられる。絶縁体22の厚みは、通常0.1~0.25mmである。
【0022】
本実施形態では、中心線10の周りに4つの撚線30が集合することにより、集合体40を形成している。
【0023】
集合体40と被覆材50との間には空間が形成されており、該空間にはポリプロピレン樹脂(PP)により形成された介在60が充填されている。前記ポリプロピレン樹脂は、ホモポリマー、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーのいずれであってもよい。前記ポリプロピレン樹脂は、通常、比重ρが0.90~0.91のものが使用される。
【0024】
本実施形態では、後述するように、LANケーブルの漏話特性を向上させるために、介在60の充填量が調節される。従って、該充填量の調節が容易になるという観点から、介在60は、PPヤーンにより構成されていることが好ましい。
【0025】
上記のような構成により、本実施形態のLANケーブル1の断面図には、撚線30に外接する4つの外接円C1と、被覆材50の内周円C2とが描かれる。本実施形態では、内周円C2は、集合体40の外接円に一致するものとする。この場合、断面図には、外接円C1と内周円C2との間に、4つの介在領域Aが形成される。そして、1つの介在領域Aの面積をSとすると、LANケーブル1は、単位長さあたりにおいて、4つの介在領域Aの合計面積4Sと単位長さとの積として算出される容積Vを有する収容空間Rを有するものとなる。LANケーブル1は、この収容空間Rに介在60を特定の充填量で収容したものとなっている。
【0026】
本実施形態では、収容空間Rに充填された介在60の充填量は、収容空間Rのすべてにポリプロピレン樹脂が充填されたときの該ポリプロピレン樹脂の質量Mを100%としたときに、収容空間Rに実際に充填されている介在60の質量Mの割合、すなわち、質量Mに対する質量Mの質量割合P(%)として表される。質量割合Pは、55%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、45%以下であることがさらに好ましい。これによって、LANケーブル1の漏話特性が向上する。これについて、比誘電率の観点から考察すると、ポリプロピレン樹脂の比誘電率は約2.0であり、空気の比誘電率は1.0であることから、介在60の充填量に上記のような上限が設定されることで、収容空間R内に適度な量の空気が存在することとなり、これに伴って、収容空間Rにおける比誘電率が低下し、漏話特性が向上するものと考えられる。
【0027】
また、質量割合Pは、25%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、35%以上であることがさらに好ましく、40%以上であることがより一層好ましい。これによって、集合体40の配置状態が安定化されるため、LANケーブル1の漏話特性が向上する。
【0028】
介在領域Aの面積Sは、例えば、外接円C1の直径r及び内周円C2の直径rから算出される。外接円C1の直径rは、試験片における撚線の素線の径をJIS C 3005に規定の試験方法に準拠して測定し、その値を1.71倍した値とする。また、内周円C2の直径rは、上記JISに規定された試験方法に準拠した方法により測定された値とする。
【0029】
本実施形態では、M及びMは、以下に示されるように、PPヤーンの繊度(デニール)に換算した値を採用するものとする。また、M及びMは、1つの介在領域Aに対応する収容空間R(V/4の容積に対応)に充填されたポリプロピレン樹脂又はPPヤーンの質量として説明する。
【0030】
としては、ポリプロピレン樹脂の比重ρと介在領域Aの面積S(mm)との積により算出される収容空間Rにおけるポリプロピレン樹脂の質量w(g/m)を、1デニールの質量w(g/m、すなわちw=1/9000)で割ることによって、繊度(デニール)に換算した値を採用するものとする。すなわち、Mは、M=w/wにより算出される値を採用するものとする。
【0031】
としては、例えば、LANケーブル1から単位長さ分の3個の試験片を切り出し、各試験片に含まれるPPヤーンの質量(g/m)を測定し、各質量の平均値を単位長さあたりのLANケーブル1に含まれるPPヤーンの質量w(g/m)とし、質量wを1デニールの質量w(g/m)で割ることによって、繊度(デニール)に換算した値を採用するものとする。すなわち、Mは、M=w/wにより算出される値を採用するものとする。
【0032】
質量割合P(%)は、M/M×100により算出される値を採用するものとする。
【0033】
次に、被覆材50について詳述する。
【0034】
本実施形態の被覆材50は、多層構造であり、集合体40を保護するための樹脂層52を有している。樹脂層52は、押出機によりチューブ状に形成された押出チューブで構成されている。樹脂層52は、内側に配された第1の樹脂層521と、外側に配された第2の樹脂層522とを含んでいることが好ましい。本実施形態では、第1の樹脂層521は、被覆材50の一部を構成する押え巻きテープ51を介在させて集合体40を被覆している。また、第2の樹脂層522は、最も外側に配されている。
【0035】
第1の樹脂層521の硬度は、第2の樹脂層522の硬度よりも高いことが好ましい。これについて次に詳述する。LANケーブルでは、通常、第2の樹脂層522の厚みは、第1の樹脂層521の厚みよりも大きく形成される。このため、LANケーブル1を曲げ易くするためには、比較的厚みの大きい第2の樹脂層522の硬度が低くなるように形成されることが好ましい。しかしながら、樹脂層の硬度を低くすると、押出機による樹脂層形成の際、樹脂の溶融混練物が集合体を形成することとなるコアに密着するため、コアに圧力が加わり、これに伴って、各撚線の配置が変化して漏話特性が低下する要因となり得る。よって、厚みが比較的大きい第2の樹脂層522の硬度を比較的低く設定してLANケーブル1に曲げ易さを付与するためには、厚みが比較的小さい第1の樹脂層521の硬度を比較的高く設定して各撚線の配置状態を安定化させることが好ましい。
【0036】
より具体的には、第1の樹脂層521の厚みは0.2~0.4mmであり、第2の樹脂層522の厚みは1.0~1.8mmであることが好ましい。また、第1の樹脂層521のショアD硬度が40~45であり、且つ、第2の樹脂層522のショアD硬度が33~38であることが好ましい。なお、ショアD硬度は、JIS K 7215に規定された試験方法により測定された値が採用される。
【0037】
上記のような硬度を達成する上では、第1の樹脂層521がポリエチレン樹脂を含み、且つ、第2の樹脂層522がポリエチレン樹脂及びエチレン酢酸ビニル共重合樹脂を含むことが好ましい。第2の樹脂層522に含まれるエチレン酢酸ビニル共重合樹脂の割合は、第2の樹脂層522の質量に対して、10~30質量%であることが好ましい。また、前記エチレン酢酸ビニル共重合樹脂に含まれる酢酸ビニルの含有量は、10~40%であることが好ましい。
【0038】
押え巻きテープ51としては、ポリエチレン、ポリスチレン若しくはポリエステルなどのプラスチックテープ、又は、紙テープなどが挙げられる。
【0039】
本実施形態の被覆材50は、上記に加え、第1の樹脂層521及び第2の樹脂層522の間に配された複数の遮蔽層53を有している。遮蔽層53は、内側に配された第1の遮蔽層531と、外側に配された第2の遮蔽層532とを含んでいる。なお、遮蔽層53は、第1の遮蔽層531又は第2の遮蔽層532のいずれか一方のみであってもよい。
【0040】
第1の遮蔽層531は、金属箔が貼り付けられた樹脂テープにより形成されている。金属箔としては、アルミニウム箔が好ましい。樹脂テープとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル系の樹脂テープが好ましい。第1の遮蔽層531の厚みは、通常0.03~0.07mmである。
【0041】
第2の遮蔽層532は、すずめっき軟銅線により形成された編組により構成されている。第2の遮蔽層532の厚みは、通常0.2~0.4mmである。
【0042】
以上のように、例示として実施形態を示したが、本発明に係るLANケーブルは、上記実施形態の構成に限定されるものではない。また、本発明に係るLANケーブルは、上記作用効果により限定されるものでもない。本発明に係るLANケーブルは、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0043】
例えば、上記実施形態では、断面図において、被覆材50の内周円C2が集合体40の外接円に一致していることによって、撚線30の外接円C1と被覆材50の内周円C2との間に4つの介在領域Aが形成されているが、これに限定されず、例えば、外接円C1と被覆材50の内周円とが互いに接していないことによって、介在領域Aが1つにつながっていてもよい。この場合の面積Sは、例えば、1つにつながった介在領域の全体面積の4分の1の値が採用される。
【実施例
【0044】
以下、実施例により本発明をさらに説明する。
【0045】
[製造例1]
JIS C 3102に定められた電気用軟銅線7本を撚り合わせて導体(外径0.6mm)を形成し、ポリエチレン製の絶縁体により被覆し、素線を形成した(外径1.0mm)。素線を対撚りし、4つの撚線を形成した。
アラミド繊維により形成された中心線の周りに4つの撚線をPPヤーンと共に撚り合わせ、集合体を形成した。
次に、押え巻きテープにより被覆した。このとき、LANケーブルの1つの介在領域に対応する単位長さあたりに含まれるPPヤーンが4000デニールとなるように調節した。なお、使用したPPヤーンの繊度には±500デニールのバラつきがあるため、M=3500~4500デニールとする
次に、押出機により、耐熱ポリエチレンを被覆することにより、第1の樹脂層(厚み0.3mm、外径5.1mm、ショアD硬度41)を形成した。次に、アルミニウム箔付き樹脂テープを被覆し、第1の遮蔽層を形成した。また、JIS C 3152に定められたすずめっき軟銅線により編組を形成し、第2の遮蔽層(外径5.7mm)とした。最後に、耐熱ポリエチレンを被覆することにより、第2の樹脂層(厚み1.4mm、ショアD硬度37)を形成し、長さ100mのLANケーブル(質量90kg/km)とした。
本LANケーブルは、撚線の外接円C1の直径rが1.71mmであり、被覆材の内周円C2の直径rが4.4mmであった。また、直径r及び直径rから算出される、1つの介在領域Aの面積Sは1.36mmであった。表1に、本LANケーブルに関する、介在の質量割合Pを求めるための数値及び質量割合Pを示した。
【0046】
【表1】
【0047】
上記の他、製造例1に準じて、M=5000(4500~5500)デニール及びM=3000(2500~3500)デニールとなるように調節し、介在の質量割合Pが、45.0%(40.5~49.5%)及び27.0%(22.5~31.5%)のLANケーブルを製造した。
【0048】
[漏話特性の評価方法]
ANSI/TIA-568-B.2のカテゴリ5の規格に準拠して、各LANケーブルの1~100MHzでの近端漏話減衰量を測定し、規格値との最小マージンを求めることにより評価した。結果を表2に示した。なお、最小マージンの値が大きいほど、漏話特性が優れたLANケーブルである。
【0049】
【表2】
【0050】
表2に示されるように、介在の質量割合Pを100%よりも小さくすることにより、漏話特性の向上が認められた。特に、質量割合Pを36.0%としたLANケーブルでは、漏話特性が大きく改善することが認められた。
【符号の説明】
【0051】
1:LANケーブル、
10:中心線、
20:素線、21:導体、22:絶縁体、
30:撚線、
40:集合体、
50:被覆材、51:押え巻きテープ、
52:樹脂層、521:第1の樹脂層、522:第2の樹脂層、
53:遮蔽層、531:第1の遮蔽層、532:第2の遮蔽層、
60:介在、
C1:外接円、C2:内周円、A:介在領域
図1