(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】超音波振動子の駆動方法、駆動回路、および超音波霧化装置
(51)【国際特許分類】
B06B 1/06 20060101AFI20231127BHJP
B05B 17/06 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
B06B1/06 A
B05B17/06
(21)【出願番号】P 2020019434
(22)【出願日】2020-02-07
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000136354
【氏名又は名称】株式会社フコク
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】植田 一之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 光明
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-343200(JP,A)
【文献】特開昭53-142198(JP,A)
【文献】実開昭56-093094(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/00 - 3/04
H02N 2/00 - 2/18
B05B 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する面の面積が等しい円盤状の超音波霧化用振動子
を駆動する超音波振動子の駆動方法において、
前記超音波霧化用振動子は、
前記超音波霧化用振動子の一方の面の全領域以下に形成された第1電極と、
前記超音波霧化用振動子の他方の面に前記第1電極よりも狭い領域を有するとともに、前記第1電極の領域内にすべてが含まれるように形成された第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極の間に駆動電圧を印加すると、前記一方の面の全領域と前記他方の面の前記全領域との間で対向する方向に振動する第1振動モードと、前記他方の面に形成された第2電極領域と前記一方の面の該第2電極領域との間で前記対向する方向に振動する第2振動モードと、
を有し、
前記超音波霧化用振動子の
前記第2振動モードの周波数で当該超音波霧化用振動子を駆動させる、超音波振動子の駆動方法。
【請求項2】
前記超音波霧化用振動子を前記対向する方向に振動させる周波数(駆動周波数)は、前記第2振動モードの共振周波数(FrB)の周波数から±3%以内に設定されている、請求項1に記載の超音波振動子の駆動方法。
【請求項3】
前記第1振動モードは、前記超音波霧化用振動子を第1共振周波数で振動させ、前記第2振動モードは、前記超音波霧化用振動子を前記第1共振周波数よりも高い周波数である第2共振周波数で振動させる、請求項1または2に記載の超音波振動子の駆動方法。
【請求項4】
駆動電圧を印加すると振動する超音波霧化用振動子
を駆動する超音波振動子の駆動回路であって、
前記超音波霧化用振動子と並列に接続された疑似振動子(補償用回路)と、
前記超音波霧化用振動子が振動するとき前記超音波霧化用振動子に流れる電流に対応する電圧から、前記疑似振動子に前記駆動電圧が印加された際、前記疑似振動子に流れる電流に対応する電圧を減算する減算手段と、
前記駆動電圧の位相と前記減算した後の電圧の位相との位相差に応じた電圧を検出する位相差検出手段と、
前記検出した電圧に基づいて前記駆動電圧の周波数を制御する電圧制御発振手段と、
を有し、
前記制御された駆動電圧の周波数で
前記超音波霧化用振動子を振動
させる、超音波振動子の駆動回路。
【請求項5】
超音波霧化用振動子を備え、
前記超音波霧化用振動子を請求項1
から3の
いずれか1項に記載の超音波振動子の駆動方法
によって駆動して前記超音波霧化用振動子において発生した超音波から液体に振動エネルギーを与えることにより、前記液体を霧化する超音波霧化装置。
【請求項6】
超音波霧化用振動子と、
前記超音波霧化用振動子を駆動する請求項4に記載の超音波振動子の駆動回路と、
を有し、
前記超音波霧化用振動子において発生した超音波から液体に振動エネルギーを与えることにより、前記液体を霧化する超音波霧化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体に超音波エネルギーを直接与えることで霧を発生させる超音波振動子の駆動方法、駆動回路、および超音波霧化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波振動によって水等の液体を霧化して加湿器や吸入器等として使用する超音波霧化装置が知られている。
図22に示すように、超音波霧化装置100は、液体Fを収容する容器10と、液体Fに超音波振動を与える超音波振動子40とを備えている。
【0003】
超音波霧化装置100では、超音波振動子40に高周波の電圧が印加されると、容器10内の液体Fに超音波Sの振動が伝わり、液面が隆起した液柱Rが形成される。液体Fの表面張力によって保たれる液柱Rの表面が、超音波Sの振動によって破られることにより霧化粒子(霧)Mが発生する。
【0004】
超音波霧化装置100では、超音波振動子40から発生した超音波Sの振動エネルギーのすべてを、霧化粒子(霧)Mの発生に結び付けることは困難であり、高い霧化効率を得るための様々な試みがなされている。特許文献1には、霧の発生量が最大となる周波数として、振動子の直列共振周波数frまたは並列共振周波数faの間のリアクタンスが誘導性となる領域を選択する技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、圧電振動子の等価回路の駆動電圧の位相と直列共振回路電流の位相とを一致させることにより、駆動周波数が直列共振周波数に自動追尾し、圧電振動子を最大パワーで駆動する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭50-156018号公報
【文献】特開2012-110867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、霧の発生が最大となる周波数の範囲が、直列共振周波数(共振周波数)と並列共振周波数(反共振周波数)の範囲と比較して狭い。このため、共振周波数と反共振周波数との間の周波数で振動子を駆動しても、高い霧化効率を得ることは困難である。また、発振回路をコルピッツ型で構成しているため、電池などを電源とする低電力駆動を行うことが難しい。
【0008】
また、特許文献2に記載された技術では、圧電振動子を最大パワーで駆動する圧電振動子の等価回路として、直列共振回路が1つの場合を想定しているため、直列共振回路が複数存在する場合、駆動周波数を制御することは困難である。
【0009】
本発明の目的は、上述した課題を鑑み、低電力駆動においても高い霧化効率を得るという課題を解決する超音波振動子の駆動方法、駆動回路、および超音波霧化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記課題を解決するものであり、以下を包含する。
[1] 対向する面の面積が等しい円盤状の超音波霧化用振動子を駆動する超音波振動子の駆動方法において、前記超音波霧化用振動子は、前記超音波霧化用振動子の一方の面の全領域以下に形成された第1電極と、前記超音波霧化用振動子の他方の面に前記第1電極よりも狭い領域を有するとともに、前記超音波霧化用振動子の平面視において、前記第1電極の領域内にすべてが含まれるように形成された第2電極と、前記第1電極と前記第2電極の間に駆動電圧を印加すると、前記一方の面の全領域と前記他方の面の前記全領域との間で対向する方向に振動する第1振動モードと、前記他方の面に形成された第2電極領域と前記一方の面の該第2電極領域との間で前記対向する方向に振動する第2振動モードと、を有し、前記超音波霧化用振動子の第2振動モードの周波数で、当該超音波霧化用振動子を駆動させる、超音波振動子の駆動方法。
【0011】
[2] 前記超音波霧化用振動子を前記対向する方向に振動させる周波数(駆動周波数)は、前記第2振動モードの共振周波数(FrB)である周波数の±3%以内に設定されている、[1]に記載の超音波振動子の駆動方法。
【0012】
[3] 前記第1振動モードは、前記超音波霧化用振動子を第1共振周波数で振動させ、前記第2振動モードは、前記超音波霧化用振動子を前記第1共振周波数よりも高い周波数である第2共振周波数で振動させる、[1]または[2]に記載の超音波振動子の駆動方法。
【0013】
[4] 駆動電圧を印加すると振動する超音波霧化用振動子を駆動する超音波振動子の駆動回路であって、前記超音波霧化用振動子と並列に接続された疑似振動子(補償用回路)と、前記超音波霧化用振動子が振動するとき前記超音波霧化用振動子に流れる電流に対応する電圧から、前記疑似振動子に前記駆動電圧が印加された際、前記疑似振動子に流れる電流に対応する電圧を減算する減算手段と、前記駆動電圧の位相と前記減算した後の電圧の位相との位相差に応じた電圧を検出する位相差検出手段と、前記検出した電圧に基づいて前記駆動電圧の周波数を制御する電圧制御発振手段と、を有し、前記制御された駆動電圧の周波数で前記超音波霧化用振動子を振動させる、超音波振動子の駆動回路。
【0014】
[5] 超音波霧化用振動子を備え、前記超音波霧化用振動子を[1]から[3]のいずれか1項に記載の超音波振動子の駆動方法によって駆動して前記超音波霧化用振動子において発生した超音波から液体に振動エネルギーを与えることにより、前記液体を霧化する超音波霧化装置。
【0015】
[6] 超音波霧化用振動子と、前記超音波霧化用振動子を駆動する[4]に記載の超音波振動子の駆動回路と、を有し、前記超音波霧化用振動子において発生した超音波から液体に振動エネルギーを与えることにより、前記液体を霧化する超音波霧化装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、低電力駆動においても高い霧化効率を得ることが可能な超音波振動子の駆動方法、駆動回路、および超音波霧化装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態の超音波振動子の構造を模式的に示す平面図である。
【
図2】
図1のX-X断面を示す超音波振動子に交流電圧を印加した状態を示す回路図である。
【
図3】
図2の回路において各振動モードにおける振動子の周波数とインピーダンスとの関係を示す図である。
【
図4】超音波霧化用振動子の振動モードと発生する超音波との関係を説明する図である。
【
図5】高電力で駆動したときの超音波振動子の周波数と霧化量との関係を示す図である。
【
図6】低電力で駆動したときの超音波振動子の周波数と霧化量との関係を示す図である。
【
図7】本発明の第2実施形態の超音波振動子の駆動回路を模式的に示すブロック図である。
【
図8】第2実施形態の疑似振動子の具体例を示す回路である。
【
図9】疑似振動子をLCR直列回路とCの並列回路とで構成したときの等価回路を示す図である。
【
図10】LCR直列回路で構成した疑似振動子の有無における周波数、インピーダンスおよび位相差特性の関係を示す図である。
【
図11】疑似振動子をセラミック発振子で構成したときの等価回路を示す図である。
【
図12】セラミック発振子で構成した疑似振動子の有無における周波数、インピーダンスおよび位相差特性の関係を示す図である。
【
図13】セラミック発振子で構成した疑似振動子の有無において霧化量を比較した状態を示す図である。
【
図14】本発明の第3実施形態の超音波振動子の駆動回路を模式的に示すブロック図である。
【
図15】第3実施形態における超音波振動子の構造を模式的に示す平面図である。
【
図16】
図15のY-Y断面を示す超音波振動子に交流電圧を印加した状態を示す回路図である。
【
図17】
図16の回路における振動子の周波数とインピーダンスおよび位相差特性との関係を示す図である。
【
図18】第3実施形態の変形例である超音波振動子の構造を模式的に示す平面図である。
【
図19】第3実施形態の変形例である超音波振動子の構造を模式的に示す平面図である。
【
図20】第3実施形態の変形例である超音波振動子の構造を模式的に示す平面図である。
【
図21】第1実施形態の超音波振動子を超音波霧化装置に適用した場合の霧化状態を示す模式図である。
【
図22】超音波霧化装置における霧化状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0019】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態を、
図1および
図2を用いて説明する。
図1は、第1実施形態の超音波振動子の構造を模式的に示す平面図である。
図2は、
図1のX-X断面を示す超音波振動子に交流電圧を印加した状態を示す回路図である。
図1および
図2に示すように、対向する上面(天面)と下面(底面)との面積が等しい円盤状の超音波霧化用振動子2の上面の全領域以下に電極(A;第1電極)5を形成している。また、超音波霧化用振動子2の下面のうち、電極(A;第1電極)5よりも狭い領域(部分領域)を覆い、かつ電極(A)5の領域内にすべてが含まれるように電極(B;第2電極)6を形成している。そして、電極(A)5と電極(B)6との間に振動子駆動電圧(交流電圧)V
0を印加し、交流電流I
0を流す。なお、上述した超音波振動子の上面(天面)と下面(底面)の面積が等しいとは、製造上等の理由で、上面(天面)と下面(底面)の面積が異なる場合を含む。
【0020】
本実施形態の場合、略円盤状の振動子の上面と下面とに電極を形成し、電極間に交流電圧を印加すると、逆圧電効果により超音波霧化用振動子2が縦方向(厚さ方向、対向する方向)に振動する一次振動が発生する。そして、この一次振動は、超音波霧化用振動子2に形成した電極の面積によって複数の振動モードを有する。1つは、超音波霧化用振動子2の全領域に相当し、超音波霧化用振動子2の全体を縦方向に振動させる一次振動12(以下、振動モードAという。)である。もう1つは、電極(B)6の面積に相当し、超音波霧化用振動子2の一部(電極(B)6の面積に対応する電極領域)を縦方向に振動させる一次振動13(以下、振動モードBという。)である。このとき、超音波霧化用振動子2の共振周波数には、振動モードAを生じさせる共振周波数FrA14と、振動モードBを生じさせる共振周波数FrB15とが存在する。
なお、電極の形成方法は、スクリーン印刷や、金属粉末や溶融金属を用いた各種コーティング方法、スパッタリングや蒸着により作成した膜をフォトリソグラフィ等の微細加工技術を用いて形成する方法等公知の技術を用いることができる。また、略円盤状の振動子とは、振動子の2次元平面形状が、真円を含み、一見して円形状と把握できる場合を含み、さらに、2次元平面における長軸方向の半径と短軸方向の半径の比が0.8以上をも含む。
【0021】
次に、
図2の回路における超音波霧化用振動子2の周波数とインピーダンスとの関係を、
図3を参照しつつ説明する。
図3は、
図2に示した回路を用いて、超音波霧化用振動子2のインピーダンスの周波数特性の実測値(Z実測)と、振動モードA(一次振動12)および振動モードB(一次振動13)における振動子の周波数とインピーダンスとの関係を示す図である。横軸が振動子の周波数(MHz)、縦軸がインピーダンスZ(Ω)である。
図3を参照すると、超音波霧化用振動子2全体の周波数は、共振周波数Fr16と反共振周波数Fa17とを有している。また、振動モードAを生じさせる共振周波数FrA14と、超音波霧化用振動子2全体の共振周波数Fr16とは略一致していることが分かる。さらに、振動モードBを生じさせる共振周波数FrB15は、超音波霧化用振動子2全体の共振周波数Fr16と反共振周波数Fa17との間にあり、振動モードAを生じさせる共振周波数FrA14よりも高い周波数であることが分かる。以下説明する実施形態において、超音波霧化用振動子2の共振周波数として、振動モードBを生じさせる共振周波数FrB15を使用することを前提として説明を行う。その理由について、
図4を用いて説明する。
図4は、超音波霧化用振動子の振動モードと発生する超音波との関係を説明する図である。
【0022】
図1、
図2で説明した超音波霧化用振動子2に電極(A)5と電極(B)6との間に電源7から振動子駆動電圧V
0を印加し、交流電流I
0を流す。そうすると、
図4(a)に示すように、逆圧電効果によって、超音波霧化用振動子2が縦方向に振動する。駆動電圧の周波数を振動モードAの共振周波数FrA14に設定し、超音波霧化用振動子2を振動させると、超音波霧化用振動子2全体を振動させることになるので、多大な振動エネルギーを要する。これに対して
図4(b)に示すように、振動モードBの共振周波数FrB15で超音波霧化用振動子2を振動させると、超音波霧化用振動子2のうち電極B(6)に対応する部分の一次振動13(振動モードB)で、霧化量最大効率(
図5)で縦方向に振動する。これは、振動モードBの共振周波数FrB15で超音波霧化用振動子2を振動させた場合、主として超音波エネルギーを放射する電極(B)6に対応する部分を振動させることになるので、振動させるエネルギーが少なくて済む。
【0023】
超音波霧化装置に超音波霧化用振動子2を取り付けて液体を霧化状態にする際、後述するように、機構上の制約から、超音波霧化用振動子2から発生する超音波として、
図4(c)に示すように、表面中央部分の所定の領域から発生するものを使用する。したがって、
図4(a)に示す一次振動12(振動モードA)を用いた場合、
図4(d)に示すように超音波霧化用振動子2の左右両端部分(P1、P2)の一次振動12が無駄になってしまう。そこで、本実施形態では、
図4(b)に示すように、電極B(6)による逆圧電効果によって、超音波霧化用振動子2の電極B(6)に対応する部分(P3)の一次振動13(振動モードB)を用いることとしている。
【0024】
<実施例1>
次に、超音波霧化装置において高い霧化効率を得るために、超音波霧化用振動子2の発振周波数と超音波霧化装置の霧化量との関係について、以下の条件の下で実験を行った。
図5は、高電力で超音波霧化装置を駆動したときの超音波霧化用振動子2の周波数と霧化量との関係を表したものである。横軸が振動子の周波数(MHz)、縦軸がインピーダンスZ(Ω)および霧化量(%)である。測定条件は、振動モードBを生じさせる共振周波数FrB15が1.705MHz、超音波霧化用振動子2の入力電力が22W、霧化用の噴霧液が水道水、水温が23℃である。超音波霧化装置を10分間駆動し、超音波霧化装置の駆動前後の重量差から霧化量を算出した。
【0025】
実験の結果、超音波霧化用振動子2の電極(B)6の面積に対応する部分を縦方向に振動させる振動モードBを生じさせる共振周波数FrB15=1.705MHzにおいて、霧化量が100%に達した。そして、超音波霧化用振動子2の周波数が、1.705MHz±0.05MHz、すなわち、共振周波数FrB15±3%の周波数の範囲内であれば、霧化量が最大値に対して80%以上となり、高い霧化効率が得られることが分かった。
【0026】
<実施例2>
次に、超音波霧化装置において高い霧化効率を得るために、超音波霧化用振動子2の発振周波数と超音波霧化装置の霧化量との関係について、以下の条件の下で実験を行った。
図6は、低電力で超音波霧化装置を駆動したときの超音波霧化用振動子2の周波数と霧化量との関係を表したものである。横軸が振動子の周波数(MHz)、縦軸がインピーダンスZ(Ω)および霧化量(%)である。測定条件は、振動モードBを生じさせる共振周波数FrB15が1.705MHz、超音波霧化用振動子2の入力電力が10W、霧化用の噴霧液が水道水、水温が23℃である。超音波霧化装置を10分間駆動し、超音波霧化装置の駆動前後の重量差から霧化量を算出した。
【0027】
実験の結果、超音波霧化用振動子2の電極(B)6の面積に対応する部分を縦方向に振動させる振動モードBを生じさせる共振周波数FrB15=1.705MHzにおいて、霧化量が100%に達した。そして、超音波霧化用振動子2の周波数が、1.705MHz±0.025MHz、すなわち、共振周波数FrB15±1.4%の周波数の範囲内であれば、霧化量が最大値に対して80%以上となり、高い霧化効率を得ることができることが分かった。これにより、低電力で超音波霧化装置を駆動した場合であっても、高い霧化効率を達成することができる。
【0028】
本実施形態では、超音波霧化用振動子2を逆圧電効果により振動させるモードとして、振動モードBの共振周波数FrB15を超音波霧化用振動子2の駆動周波数とすることで、高い霧化効率を得ることが可能になる。さらに、本実施形態によれば、電池などを一例とする低電力駆動においても高い霧化効率を得ることが可能になる。そして、これらの効果を得るためには、超音波霧化用振動子2の駆動周波数を、少なくとも振動モードBの共振周波数の±3%以内に設定することが好ましい。
【0029】
(第2実施形態)
<超音波振動子の駆動回路の構成>
次に、本発明の第2実施形態を、
図7を用いて説明する。
図7は、第2実施形態の超音波振動子の駆動回路を模式的に示すブロック図である。
図7に示すように、超音波振動子の駆動回路200は、駆動信号発生用増幅回路20と、超音波霧化用振動子2と、疑似振動子22(補償用回路)と、減算回路24とから構成される。また、超音波振動子の駆動回路200は、位相差検出回路26と、VCO(Voltage Controlled Oscillator:電圧制御発振器)18とから構成される。
【0030】
駆動信号発生用増幅回路20は、VCO18から出力される駆動周波数信号19を入力として、超音波霧化用振動子2を駆動するための振動子駆動電圧V
0を出力する。超音波霧化用振動子2は、駆動信号発生用増幅回路20から出力される振動子駆動電圧V
0を入力として振動する。超音波霧化用振動子2は、超音波霧化用振動子2に直列に接続された電流検出用素子(後述する
図9のコンデンサC1)から振動子駆動電流に相当する電圧信号21を減算回路24に出力する。疑似振動子22は、駆動信号発生用増幅回路20から出力される振動子駆動電圧V
0を入力として、疑似振動子22(補償用回路)に流れる電流相当の電圧信号23を減算回路24に出力する。疑似振動子22に流れる電流は、疑似振動子22に直列に接続された電流検出用素子(後述する
図9のコンデンサC2)から検出する。なお、コンデンサC1およびC2は抵抗素子でも同様の検出が可能となるが、消費電力の発生しないコンデンサの方が望ましい。
【0031】
減算回路24は、振動子駆動電流に相当する電圧信号21から疑似振動子22(補償用回路)に流れる電流相当の電圧信号23を減算する。減算回路24は、減算後得られた減算後信号25を位相差検出回路26に出力する。位相差検出回路26は、駆動信号発生用増幅回路20から出力された振動子駆動電圧V0と減算回路24から出力された減算後信号25とを入力として、両信号の位相差に応じた電圧をVCO制御信号27として出力する。VCO18は、VCO制御信号27を入力として、VCO制御信号27の値に応じて駆動信号発生用増幅回路20に出力する駆動周波数信号19の周波数を変化させる。この駆動回路200の回路構成により、超音波霧化用振動子2の振動周波数を、常に所定の範囲内に抑えることができる。この点に関しては、以下の動作の欄において説明する。
【0032】
ここで、疑似振動子22(補償用回路)の具体的な回路構成について
図8を参照しつつ説明する。
図8(a)に示すように、疑似振動子22(補償用回路)は、コイル(L)、コンデンサ(C)、抵抗(R)を直列に接続した回路にコンデンサCを並列に接続した回路構成28を有している。また、疑似振動子22(補償用回路)は、
図8(b)に示すように、LCR直列回路にコンデンサCを並列に接続した回路構成で示されるような圧電振動子、セラミック発振子、水晶振動子などの電子部品29を有している。さらに、疑似振動子22(補償用回路)は、
図8(c)に示すように、複数のLCR直列回路とコンデンサCとを並列に接続した回路構成30を有している。なお、
図8(c)では、2つのLCR直列回路が並列接続している例について図示しているが、LCR直列回路が並列接続する数は、任意の数とすることが可能である。これにより、直列共振回路が複数存在する場合であっても、後述するように、駆動周波数を制御することが可能になる。
【0033】
<超音波駆動回路の動作>
次に、超音波振動子の駆動回路200の動作について
図7を参照しつつ説明する。まず、減算回路24から出力される減算後信号25と、駆動信号発生用増幅回路20から出力される振動子駆動電圧V
0の信号との間に生じる位相差をΦと仮定する。そして、所望の共振周波数(振動モードBを生じさせる共振周波数FrB15)(以下、駆動周波数ともいう。)で超音波霧化用振動子2が振動したとき、振動子駆動電圧V
0の信号と減算後信号25との間に生じる位相差を、特にΦBとする。
【0034】
駆動回路200の周波数が、振動モードBを生じさせる共振周波数FrB15より高くなると、上記位相差Φは、共振周波数FrB15で超音波霧化用振動子2を駆動したときの位相差ΦBよりも大きくなる特性を有している。また、駆動回路200の周波数が、振動モードBを生じさせる共振周波数FrB15より低くなると、上記位相差Φは、共振周波数FrB15で超音波霧化用振動子2を駆動したとき時の位相差ΦBよりも小さくなる特性を有している。したがって、位相差検出回路26は、次に述べるような動作を行う。それは、入力される2つの信号(振動子駆動電圧V0の信号、減算後信号25)の位相差Φが、位相差ΦBよりも大きくなると出力するVCO制御信号27を小さくするように動作する。また、入力される2つの信号の位相差Φが、位相差ΦBよりも小さくなると出力するVCO制御信号27を大きくするように動作する。
【0035】
VCO18は、入力されるVCO制御信号27が大きいと、出力する駆動周波数信号19を高くし、VCO制御信号27が小さいと、出力する駆動周波数信号19を低くすることで、駆動周波数を自動的に共振周波数FrB15に追従させる動作を行う。これにより、超音波霧化用振動子2の駆動周波数を、所定の範囲内に抑えることができる。すなわち、駆動周波数近傍における位相差Φの周波数特性において、位相差Φと周波数との関係(位相差特性)が、後述するように、その傾きとして、変極点および平坦な特性を有していない単一勾配を有することで所望の駆動周波数を、所定の範囲内に抑えることができる。また、本実施形態によれば、超音波振動子の駆動回路200は、駆動信号発生用増幅回路20と、超音波霧化用振動子2と、疑似振動子22(補償用回路)と、減算回路24と、位相差検出回路26と、VCO18といった部品からのみ構成される。そのため、放熱のための部材(ヒートシンクなど)を設ける必要がない。これにより、機構上の制約が少なくて済むという効果がある。
【0036】
<具体例1>
次に、疑似振動子22(補償用回路)として、LCR直列回路を用いた場合について
図9を参照しつつ説明する。
図9は、超音波霧化用振動子2と疑似振動子22(補償用回路)とをLCR直列回路とCの並列回路で構成したときの等価回路である。
図9において、超音波霧化用振動子2は、振動モードAを生じさせる直列共振回路120と、振動モードBを生じさせる直列共振回路130と、制動容量140とから構成されている。振動モードAを生じさせる直列共振回路120は、コイルLm1、コンデンサCm1および抵抗Rm1が直列に接続されたLCR直列回路である。また、振動モードBを生じさせる直列共振回路130は、コイルLm2、コンデンサCm2および抵抗Rm2が直列に接続されたLCR直列回路である。この2つの振動モードの直列共振回路に、制動容量140が並列に接続されている。さらに、疑似振動子22(補償用回路)は、コイルLm1´、コンデンサCm1´および抵抗Rm1´が直列に接続されたLCR直列回路と、コンデンサCd´とが並列に接続された回路である。
【0037】
図9において、疑似振動子22(補償用回路)のコイルLm1´、コンデンサCm1´、抵抗Rm1´、コンデンサCd´の各定数と、超音波霧化用振動子2の振動モードAを生じさせる直列共振回路120のコイルLm1、コンデンサCm1、抵抗Rm1、制動容量であるコンデンサCdの各定数とを略同一の定数にする。これは、
図7の減算回路24において、振動子駆動電流に相当する電圧信号21から疑似振動子22に流れる電流相当の電圧信号23を減算することにより、減算後信号25を、振動モードBを生じさせる直列共振回路130に流れる電流に相当する電圧信号のみが残存するようにするためである。
図10に、疑似振動子22をLCR直列回路で構成したときの周波数と、インピーダンスおよび位相差特性との関係を示す。
図10の点線31は、疑似振動子22を用いた場合、振動子駆動電流に相当する電圧信号21(Io)から疑似振動子22に流れる電流相当の電圧信号23(Ip)を減算した減算後信号25と、振動子駆動電圧V
0の信号との周波数に対する位相差特性である。
【0038】
一方、疑似振動子22(補償用回路)を用いない場合、振動子駆動電流に相当する電圧信号21(Io)と振動子駆動電圧V
0の信号との周波数に対する位相差特性は、
図10の一点鎖線32に示すような特性となる。この場合、位相差特性(一点鎖線32)は、振動モードBを生じさせる共振周波数FrB15近傍Lに変極点を有しているため、位相差検出回路26(
図7)を用いて駆動周波数を一義的に決定することが困難になる。他方、位相差特性(点線31)は、振動モードBを生じさせる共振周波数FrB15近傍Nに単一勾配(
図10では右上がり)を有しているため、位相差検出回路26(
図7)を用いて駆動周波数を一義的に決定することができる。このように、振動モードAと振動モードBとの2つの振動モードを有している場合、共振周波数(本具体例ではFrB15)近傍における位相差Φの特性が単一勾配になるようにしている。これにより、所望の駆動周波数を、常に所定の周波数とすることができる。
【0039】
<具体例2>
次に、疑似振動子22(補償用回路)として、セラミック発振子(疑似共振回路)を用いた場合について
図11を参照しつつ説明する。
図11は、疑似振動子22(補償用回路)をセラミック発振子22´で構成したときの等価回路を示す図である。
図11において、超音波霧化用振動子2は、振動モードAを生じさせる直列共振回路121と、振動モードBを生じさせる直列共振回路131と、制動容量141とから構成されている。振動モードAを生じさせる直列共振回路121は、コイルL3、コンデンサC7および抵抗R4が直列に接続されたLCR直列回路である。また、振動モードBを生じさせる直列共振回路131は、コイルL4、コンデンサC1および抵抗R1が直列に接続されたLCR直列回路である。この2つの振動モードの直列共振回路に、制動容量141が並列に接続されている。さらに、セラミック発振子22´は、コイルL1、コンデンサC5および抵抗R2が直列に接続されたLCR直列回路と、コンデンサC2およびC4とが並列に接続された回路で構成されている。
【0040】
図11の等価回路において、超音波霧化用振動子2には、超音波霧化用振動子2の振動子駆動電流に相当する電圧V1を減衰させる電圧信号減衰用コンデンサC6(33)が設けられている。セラミック発振子22´には、セラミック発振子22´に流れる電流に相当する電圧V2を減衰させる電圧信号減衰用コンデンサC3(34)が設けられている。セラミック発振子22´は一般に市販されており、予め定数が定められたものしか存在しない。したがって、セラミック発振子22´の等価回路の定数は、超音波霧化用振動子2の振動モードAを生じさせる共振周波数FrA14を有する直列共振回路121および制動容量141の定数とは一致しない。すなわち、超音波霧化用振動子2の直列共振回路121および制動容量141に流れる電流値とセラミック発振子22´に流れる電流値との間には差が存在するため、電流値に相当する電圧信号を減算回路24においてそのまま減算したとしても所望の位相差特性を得ることはできない。
【0041】
そこで、超音波霧化用振動子2の出力端に、振動子用電圧信号減衰用コンデンサC6(33)を直列に接続している。また、セラミック発振子22´の出力端に疑似振動子用電圧信号減衰用コンデンサC3(34)を直列に接続している。これにより、各々の出力端の電圧を分圧している。したがって、分圧後振動子駆動電流に相当する電圧信号21´(
図11のV1)と、分圧後疑似振動子(補償用回路)に流れる電流相当の電圧信号23´(
図11のV2)との出力レベルを夫々調整することができる。そして、減算回路24において、分圧後振動子駆動電流に相当する電圧信号21´から分圧後疑似振動子(補償用回路)に流れる電流相当の電圧信号23´を減算している。これにより、減算後信号25を、振動モードBを生じさせる直列共振回路131に流れる電流に相当する電圧信号のみが残存するようにしている。減算後信号25の周波数に対する位相差特性は、
図12に示すような特性となる。
図12は、疑似振動子(補償用回路)をセラミック発振子で構成したときの周波数と、インピーダンスおよび位相差特性との関係を示す図である。
図12の点線31´は、セラミック発振子22´を用いた場合、振動子駆動電流に相当する電圧信号21´からセラミック発振子22´に流れる電流相当の電圧信号23´を減算した減算後信号25と、振動子駆動電圧V
0の信号との周波数に対する位相差特性である。
【0042】
一方、セラミック発振子22´を用いない場合、振動子駆動電流に相当する電圧信号21´と振動子駆動電圧V
0の信号との周波数に対する位相差特性は、
図12の一点鎖線32´に示すような特性となる。この場合、位相差特性(一点鎖線32´)は、振動モードBを生じさせる共振周波数FrB15近傍L´に変極点を有しているため、位相差検出回路26(
図7)を用いて駆動周波数を一義的に決定することが困難になる。他方、位相差特性(点線31´)は、振動モードBを生じさせる共振周波数FrB15近傍Nに´単一勾配(
図12では右上がり)を有しているため、位相差検出回路26(
図7)を用いて駆動周波数を一義的に決定することができる。このように、振動モードAと振動モードBとの2つの振動モードを有している場合、共振周波数(本具体例ではFrB15)近傍における位相差Φの周波数特性が単一勾配になるようにしている。これにより、所望の駆動周波数を、常に所定の周波数とすることができる。
【0043】
このように、本実施形態では、振動モードBを生じさせる共振周波数FrB15を示す直列共振回路に流れる電流信号を取り出すことによって、高い霧化効率を得ることとしている。なお、セラミック発振子22´は、振動モードAを生じさせる共振周波数FrA14に近い共振周波数を持つ部品を選定した上で、コンデンサC12、C6(33)、C3(34)の定数を調整することで、単一勾配の位相差特性が得られる。本実施形態では、振動モードAと振動モードBとを生じさせる回路を持つ超音波霧化用振動子2の振動子駆動電流に相当する電圧信号21から、振動モードAを生じさせる回路を持つ疑似振動子22に流れる電流相当の電圧信号23を減ずる例について説明している。これ以外に、超音波霧化用振動子2の回路と疑似振動子22の回路との夫々に、振動モードAを生じさせる回路が複数個並列に接続されおり、減算により、振動モードBを生じさせる直列共振回路130、131に流れる電流に相当する電圧信号のみが残存するようにしてもよい。これにより、直列共振回路が複数存在する場合であっても、駆動周波数を制御することが可能になる。
【0044】
<実施例3>
次に、超音波霧化装置において高い霧化効率を得るために、疑似振動子(補償用回路)の有無と超音波霧化装置の霧化量との関係について、以下の条件の下で実験を行った。
図13は、セラミック発振子で構成した疑似振動子(補償用回路)の有無において霧化量を比較した状態を表したものである。横軸が疑似振動子22(セラミック発振子22´)の有無、縦軸が霧化量(%)である。測定条件は、超音波霧化用振動子2は、振動モードAを生じさせる共振周波数FrA14が4.0MHz、振動モードBを生じさせる共振周波数FrB15が4.2MHzである。セラミック発振子22´は、振動モードAを生じさせる共振周波数FrA14に近いFRA14´が4.0MHz、超音波霧化用振動子2の入力電力が2.2W、霧化用の噴霧液が水道水、水温が23℃である。超音波霧化装置を10分間駆動し、超音波霧化装置の駆動前後の重量差から霧化量を算出した。
【0045】
実験の結果、セラミック発振子22´がある場合、セラミック発振子22´がない場合と比較して40%以上霧化量が増加し、セラミック発振子22´を用いることにより、高い霧化効率が得られることが分かった。これにより、低電力で超音波霧化装置を駆動した場合であっても、高い霧化効率を達成することができる。なお、実施例3では疑似振動子22としてセラミック発振子22´を用いているが、水晶発振子のような振動子を用いてもよい。
【0046】
(第3実施形態)
<超音波振動子の駆動回路の構成>
次に、本発明の第3実施形態を、
図14を用いて説明する。
図14は、第3実施形態の超音振動子の駆動回路を模式的に示すブロック図である。
図14に示すように、超音波振動子の駆動回路201は、駆動信号発生用増幅回路20と、超音波霧化用振動子2と、フィードバック用電極35と、位相差検出回路26と、VCO18とから構成される。ここでは、
図7と異なる部分についてのみ説明する。
【0047】
超音波霧化用振動子2は、駆動信号発生用増幅回路20から出力される振動子駆動電圧V
0を入力として振動する。超音波霧化用振動子2が振動子駆動電圧V
0を入力として振動すると、フィードバック用電極35は、圧電効果によって生じた電圧をフィードバック用電極発生信号36として位相差検出回路26に出力する。位相差検出回路26は、駆動信号発生用増幅回路20から出力された振動子駆動電圧V
0とフィードバック用電極35から出力されたフィードバック用電極発生信号36とを入力し、両信号の位相差に応じた電圧をVCO制御信号27として出力する。VCO18は、VCO制御信号27を入力として、VCO制御信号27の値に応じて駆動信号発生用増幅回路20に出力する駆動周波数信号19の周波数を変化させる。この駆動回路201の回路構成により、超音波霧化用振動子2の振動周波数の変動範囲を、所定の範囲内に抑えることができる。駆動回路201における位相差検出回路26、VCO18、および駆動信号発生用増幅回路20の動作は、
図7で説明した駆動回路200の動作と同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0048】
<フィードバック用電極を用いた駆動周波数決定方法>
本実施形態のフィードバック用電極を用いた駆動周波数の決定方法について
図15および
図16を用いて説明する。
図15は、第3実施形態における超音波振動子の構造を模式的に示す平面図である。
図16は、
図15のY-Y断面を示す超音波振動子に交流電圧を印加した状態を示す回路図である。
図15および
図16に示すように、電極(A)5と電極(B)6とを超音波霧化用振動子2に形成する構成は、上記第1実施形態の
図1、
図2において説明したとおりである。本実施形態では、さらに、超音波霧化用振動子2の下面(底面)のうち、電極(B)6の外側に円環状のフィードバック用電極(C)35を形成している。そして、電極(A)5と電極(B)6との間に振動子駆動電圧V
0を印加し、交流電流I
0を流す。このとき、逆圧電効果により超音波霧化用振動子2が縦方向に振動する一次振動が発生する。そして、この一次振動によって超音波霧化用振動子2に圧電効果が発生し、
図16に示すように電極(A)5とフィードバック用電極(C)35との間に、フィードバック用電極発生信号36として電圧V
1が発生する。
【0049】
ここで、
図16の駆動回路201における超音波霧化用振動子2の周波数と、インピーダンスおよび位相差特性との関係を、
図17を参照しつつ説明する。振動子駆動電圧V
0の信号と圧電効果により発生したフィードバック用電極発生信号36との周波数に対する位相差特性は、
図17に示すようになる。振動子駆動電圧V
0の信号とフィードバック用電極発生信号36との周波数に対する位相差特性37は、振動モードBを生じさせる共振周波数FrB15近傍Kに単一勾配(
図17では右上がり)を有している。これにより、位相差検出回路26(
図14)を用いて駆動周波数を一義的に決定することができる。
【0050】
<変形例>
図15、
図16に示したフィードバック用電極(C)35の形状以外の形状であっても、同様の効果を得ることができる。例えば、
図18に示すようにフィードバック用電極(C)35の円環を複数個(
図18の場合は90度毎に4つ)に分割したものでもよい。また、
図19に示すように超音波霧化用振動子2の外周面に円形のフィードバック用電極(C)35を設けたものであってもよい。さらに、
図20に示すように超音波霧化用振動子2の外周面に多角形(
図20では六角形)のフィードバック用電極(C)35を設けものであってもよい。フィードバック用電極(C)35の形状は、これ以外にも様々な形状を採ることが可能である。
【0051】
(超音波霧化装置)
上記説明した第1実施形態の超音波振動子を搭載した超音波霧化装置について
図21を参照しつつ説明する。
図21は、容器(液槽)10の底面部に第1実施形態の超音波振動子を載置し、容器(液槽)10内に液体Fを入れた超音波霧化装置101の断面図である。容器10と超音波霧化用振動子2との間の液体漏れ防止用にゴムパッキン4を設置する。
図2において説明したように、略円盤状の超音波霧化用振動子2の上面(天面)の全領域以下を覆うように電極(A)5が形成され、液体Fの底面(液面)と接触している。また、超音波霧化用振動子2の下面(底面)で、電極(A)よりも狭い領域を覆い、かつ電極(A)の領域内にすべてが含まれるように電極(B)6が形成されている。超音波霧化用振動子2に縦方向の一次振動モードに応じた共振周波数を発生させるため、2つの電極間に振動子駆動電圧V
0を印加すると、超音波霧化用振動子2から超音波Sが発生する。超音波Sの音圧が高い中心位置で波が立ち、さらに超音波エネルギーが集中し液柱Rを作り出す。このとき、液柱Rの表面では液面に無数の毛細表面波を作り、液体の表面張力を減少させ、液体Fを分裂させることで、液滴が霧化粒子(霧)Mとして飛散する。
【0052】
振動子駆動電圧V
0の印加によって発生する逆圧電効果により、超音波霧化用振動子2が一次振動13(振動モードB)で発振することによって超音波Sが発生する。この場合、電極(B)6の直径は、ゴムパッキン4の内径よりも小さい寸法となるように設定することが好ましい。これは、上記
図4において説明したのと同様の理由によるものである。すなわち、超音波霧化用振動子2から発生する超音波Sは電界11の範囲内で発生するが、電極(B)6の外径がゴムパッキン4の内径よりも大きい場合、次のような問題が発生するからである。それは、電極(B)6の外径をゴムパッキン4の内径よりも大きくした場合、電極(B)とゴムパッキン4とが重なる部分では、超音波Sのエネルギーがゴムパッキン4によって吸収され失われてしまうという問題である。この場合、ゴムパッキン4の内径面積に相当する超音波Sだけが霧化のために使用されることになるため、霧化効率が悪化してしまう。そこで、電極(B)6の内径をゴムパッキン4の内径以下とし、電極(A)5と電極(B)6との間に振動子駆動電圧V
0を印加して超音波霧化用振動子2を駆動することにより、電極(B)6の面積に対応した範囲に電界11が発生する。そして、電極B(6)の面積に対応する範囲に発生する一次振動13(振動モードB)の共振周波数FrB15を超音波霧化用振動子2の発振周波数とする。
【0053】
このように、電極(B)6の内径を、ゴムパッキン4の内径以下の寸法にすることで超音波霧化用振動子2から発生する超音波Sのエネルギーを効率的に液体Fに伝達することが可能になる。これにより、高い霧化効率を達成することができる。なお、図示はしていないが、
図16で説明した超音波振動子を、超音波霧化装置101の容器(液槽)10の底面部に載置しても、同様の効果を得ることができる。
【0054】
なお、
図21に示した超音波霧化装置101は、上記第1実施形態の超音波振動子を搭載した例について説明を行っているが、上記第2実施形態または第3実施形態で説明した超音波振動子の駆動回路を搭載してもよい。
【0055】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0056】
2 超音波霧化用振動子
5 第1電極(電極A)
6 第2電極(電極B)
7 電源
22 疑似振動子(補償用回路)
22´ セラミック発振子
35 フィードバック用電極