(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】LED発光装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/48 20100101AFI20231127BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20231127BHJP
【FI】
H01L33/48
H01L33/50
(21)【出願番号】P 2020043757
(22)【出願日】2020-03-13
【審査請求日】2023-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000131430
【氏名又は名称】シチズン電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097043
【氏名又は名称】浅川 哲
(74)【代理人】
【識別番号】100197996
【氏名又は名称】中村 武彦
(72)【発明者】
【氏名】大森 祐治
(72)【発明者】
【氏名】今井 貞人
(72)【発明者】
【氏名】栗城 新吾
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-130496(JP,A)
【文献】国際公開第2019/244958(WO,A1)
【文献】特開2017-163001(JP,A)
【文献】特開2010-263128(JP,A)
【文献】特開2009-099715(JP,A)
【文献】特開2014-082438(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0237780(US,A1)
【文献】特開2013-098427(JP,A)
【文献】特表2014-525687(JP,A)
【文献】特開2017-162942(JP,A)
【文献】国際公開第2012/165007(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/015058(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103548159(CN,A)
【文献】特開2019-091648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/48-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装基板と、
第1色で発光する複数の第1発光領域及び第2色で発光する複数の第2発光領域
が市松模様状に配列された発光部と、を備
えたLED発光装置において、
前記第1発光領域
は、前記実装基板に実装された第1LEDダイと、第1LEDダイの上面を覆う第1蛍光樹脂層とを含み、
前記第2発光領域は、
前記実装基板に実装された第2LEDダイと、第2LEDダイの上面を覆う第2蛍光樹脂層
とを含み、
前記第1蛍光樹脂層及び前記第2蛍光樹脂層は、それぞれ第1LEDダイ及び第2LEDダイにより励起され、
前記第1LEDダイは、前記実装基板にフェイスアップ実装され、前記第2LEDダイは、前記実装基板にフェイスダウン実装されることを特徴とするLED発光装置。
【請求項2】
実装基板と、
第1色で発光する複数の第1発光領域及び第2色で発光する複数の第2発光領域が市松模様状に配列された発光部と、を備えたLED発光装置において、
前記第1発光領域は、前記実装基板に上下に重ねて実装された第1LEDダイ及び第2LEDダイと、第1LEDの上面を覆う第1蛍光樹脂層とを含み、
前記第2発光領域は、前記第2LEDダイの側面を覆う第2蛍光樹脂層を含み、
前記第1蛍光樹脂層及び前記第2蛍光樹脂層は、それぞれ第1LEDダイ及び第2LEDダイにより励起され、
前記第1LEDダイは、前記第2LEDダイにフェイスアップ実装され、前記第2LEDダイは、前記実装基板にフェイスダウン実装されることを特徴とするLED発光装置。
【請求項3】
前記第1発光領域と前記第2発光領域を合わせた領域は、外縁が八角形となっていることを特徴とする請求項1
又は2に記載のLED発光装置。
【請求項4】
前記第1LEDダイは、個別に上部をドーム状の前記第1蛍光樹脂層で被覆されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のLED発光装置。
【請求項5】
前記第2LEDダイは、個別に上部をドーム状の前記第2蛍光樹脂層で被覆されていることを特徴とする請求項
1に記載のLED発光装置。
【請求項6】
前記第1LEDダイと前記実装基板とを接続するダイボンド材を備え、
前記ダイボンド材は、第1LEDダイと前記第2LEDダイとの間隙で前記実装基板の表面を覆っていることを特徴とする請求項
1に記載のLED発光装置。
【請求項7】
前記実装基板の
上面を基準として、
前記第1LEDダイの上面は、前記第2LEDダイの上面より高く、
前記第2蛍光樹脂層の上面は、前記第1LEDダイの上面より低く、前記第2LEDダイの上面より高いことを特徴とする請求項
1に記載のLED発光装置。
【請求項8】
前記第1LEDダイは、
その平面サイズが前記第2LEDダイ
の平面サイズより小さいことを特徴とする請求項
2に記載のLED発光装置。
【請求項9】
前記第2発光領域に断面が三角形の反射部材を備えることを特徴とする請求項2に記載のLED発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調色可能なLED発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一枚の実装基板上に、第1色で発光する複数の微細な第1発光領域と、第2色で発光する複数の微細な第2発光領域とが集合した発光部を備え、第1発光領域全体の発光量と第2発光領域全体の発光量とを調整し、所望の明るさ及び発光色を得る、調光及び調色が可能なLED発光装置が知られている(例えば、特許文献1の
図1)。
【0003】
そこで、特許文献1の
図1を、本願に添付した図面の
図13に引用し、
図13に示されたLED発光装置(調色LED照明装置)について説明する。なお、()には、特許文献1における用語を示す。引用にあたり、符号を変更した。
【0004】
図13は、従来技術として示すLED発光装置100の平面図である。
図13に示すように、実装基板103(基板)は、上面に、-側の電源電極105a、105b(カソード電極)、+側の電源電極106a、106b(アノード電極)、電源電極105a、105bに接続する配線電極115a、115b(カソード配線)、及び電源電極106a、106bに接続する配線電極116a、116b(アノード配線)を備えている。また、実装基板103の上面に形成されたダム108の内側の領域である発光部102(発光面)には、多数の第1LEDダイ111(LEDチップ)と第2LEDダイ112(LEDチップ)が実装されている。第1LEDダイ111と第2LEDダイ112は、蛍光樹脂で被覆され、三角形配置している。
【0005】
第1LEDダイ111は、8直列×8並列で接続し、第1回路を構成する。第2LEDダイ112は、9直列×9並列で接続し、第2回路を構成する。この第1回路と第2回路は、それぞれ独立して駆動される。また、青色で発光する第1LEDダイ111と蛍光樹脂とを含む第1発光領域は、色温度の高い白色で発光する。第2LEDダイ112を含む第2発光領域は、アンバー色又は色温度の低い白色で発光する。すなわち、LED発光装置100は、第1発光領域と第2発光領域を三角配置し高い混色性を維持しながら、第1回路及び第2回路に供給する電流の調整により、第1発光領域全体と第2発光領域全体の発光量(光束)及びその比を変化させ、所望の強度及び色温度の光を得ている。
【0006】
なお、LED発光装置100において、第1LEDダイ111は、上面にアノードとカソードを備えるフェイスアップ実装用LED素子であり、第2LEDダイ112は、上面にアノード、底面にカソード(又は上面にカソード電極、底面にアノード)を備える垂直電極LED素子である。すなわち、第1LEDダイ111は、直列接続に際し、第1LEDダイ111同士をワイヤで接続する。一方、第2LEDダイ112は、直列接続に際し、一の第2LEDダイ112の上面に設けられたアノード(又はカソード)と、他の第2LEDダイ112が実装された(他の第2LEDダイ112の底面に設けられたカソード(又はアノード)が接続している)配線電極との間をワイヤで接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、
図13に示されたLED発光装置100は、小型化を目指し、第1LEDダイ111及び第2LEDダイ112を接近させようとすると、第2LEDダイ112を実装するため実装基板103に形成した配線電極が邪魔になる。すなわち、配線電極は、ワイヤボンディング用のスペースを必要とすることから、LED発光装置100には、第1LEDダイ111及び第2LEDダイ112を十分に近接させられないという問題が存在する。これに対し、仮に、配線電極を不要にするため第2LEDダイ112をフェイスアップ実装用のLED素子に置き換えると、第1LEDダイ111同士を接続するワイヤと、第2LEDダイ112同士を接続するワイヤが一部で交差する、という課題が生じる(ここで「交差」とは、平面視したときに交差して視認されるが立体的にはショートしていな状態をいう。以下同様。)。
【0009】
ワイヤに交差があると、交差するワイヤの少なくとも一方は、多くの場合、側面視矩形となるような異形形状を取らざるを得なくなる。このため、ワイヤ同士のショートやワイヤ自身の断線といった不具合が起きやすくなる。
【0010】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、調光及び調色が可能でありながら、混色性を高くできる配置でLEDダイ同士を近接させてもワイヤのクロスが存在しないLED発光装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明のLED発光装置は、実装基板と、第1色で発光する複数の第1発光領域及び第2色で発光する複数の第2発光領域が市松模様状に配列された発光部と、を備えたLED発光装置において、前記第1発光領域は、前記実装基板に実装された第1LEDダイと、第1LEDダイの上面を覆う第1蛍光樹脂層とを含み、
前記第2発光領域は、前記実装基板に実装された第2LEDダイと、第2LEDダイの上面を覆う第2蛍光樹脂層とを含み、前記第1蛍光樹脂層及び前記第2蛍光樹脂層は、それぞれ第1LEDダイ及び第2LEDダイにより励起され、前記第1LEDダイは、前記実装基板にフェイスアップ実装され、前記第2LEDダイは、前記実装基板にフェイスダウン実装されることを特徴とする。
【0012】
本発明のLED発光装置の発光部は、微細な発光領域である第1発光領域と第2発光領域の集合体からなる。この発光部において、第1発光領域と第2発光領域は、平面視したとき、前記第1発光領域と前記第2発光領域を近接させる一方で、前記第1発光領域同士及び前記第2発光領域同士を隣接させないように配列している。第1発光領域は、第1蛍光樹脂層を含み、第1蛍光樹脂層は、第1LEDダイにより励起される。同様に、第2発光領域は、第2蛍光樹脂層を含み、第2蛍光樹脂層は、第2LEDダイにより励起される。また、第1LEDダイは、実装基板に対しフェイスアップ実装され、互いにワイヤで接続する。第2LEDダイは、実装基板に対しフェイスダウン実装され、互いに実装基板上に形成された配線電極で接続する。
【0013】
前記第1発光領域と前記第2発光領域を合わせた領域は、外縁が八角形となっていても良い。
【0014】
前記第1LEDダイは、個別に上部をドーム状の前記第1蛍光樹脂層で被覆されていても良い。
【0015】
前記第2LEDダイは、個別に上部をドーム状の前記第2蛍光樹脂層で被覆されていても良い。
【0016】
前記第1LEDダイと前記実装基板とを接続するダイボンド材を備え、前記ダイボンド材は、第1LEDダイと前記第2LEDダイとの間隙で前記実装基板の表面を覆っていて
も良い。
【0017】
前記実装基板の表面を基準として、前記第1LEDダイの上面は、前記第2LEDダイの上面より高く、前記第2蛍光樹脂層の上面は、前記第1LEDダイの上面より低く、前記第2LEDダイの上面より高くても良い。
【0018】
前記第1LEDダイは、前記第2LEDダイ上にフェイスアップ実装されていても良い。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明のLED発光装置は、高い混色性を達成するため、第1発光領域と第2発光領域を近接させながら、第1発光領域同士及び第2発光領域同士を隣接させないようにしている。すなわち、第1発光領域の最初の光源となる第1LEDダイと、第2発光領域の最初の光源となる第2LEDダイを近接させながら、第1LEDダイ同士及び第2LEDダイ同士を隣接させないように第1LEDダイ及び第2LEDダイを一枚の実装基板に実装しているにも関わらず、第1LEDダイをフェイスアップ実装し、第2LEDダイをフェイスダウン実装しているので、ワイヤの交差をなくすことができる。
【0020】
したがって、調光及び調色が可能な本発明のLED発光装置は、混色性を高くできる配置でLEDダイ同士を近接させても、ワイヤのクロスがなくなり、ワイヤボンディングに係るショートや断線などの不具合を解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1実施形態として示すLED発光装置の平面図である。
【
図2】
図1に示すLED発光装置に含まれる第1LEDダイの平面図である。
【
図3】
図1に示すLED発光装置に含まれる第2LEDダイの底面図である。
【
図6】
図1に示すLED発光装置の部分斜視図である。
【
図7】
図1に示すLED発光装置の部分断面図である。
【
図8】
図1に示すLED発光装置の製造方法のフローチャートである。
【
図10】本発明の第2実施形態として示すLED発光装置の部分断面図である。
【
図11】本発明の第3実施形態として示すLED発光装置の部分断面図である。
【
図12】本発明の第4実施形態として示すLED発光装置の部分断面図である。
【
図13】従来技術として示すLED発光装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、
図1~
図12を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。説明のため部材の縮尺は適宜変更している。()には、特許請求の範囲で示した発明特定事項を示す。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態として示すLED発光装置10の平面図である。
図1に示すように、LED発光装置10は、いわゆるCOB(チップオンボード)モジュールであり、実装基板13を備えている。実装基板13には、2つの隅に電源電極18a、18b、19a、19bが形成されている。さらに、電源電極18a、18b、19a、19bより内側の領域に円環状のダム15が形成されている。ダム15の内側の円形の領域(以下「発光部15a」という。)には、透明樹脂層16bが存在する。発光部15aに含
まれる外縁が八角形を成す領域には、第1発光領域11aと第2発光領域12aとが市松模様状に配列している。すなわち、LED発光装置10は、発光部15aにおいて、第1発光領域11aと第2発光領域12aを近接させながら、第1発光領域11a同士及び第2発光領域12a同士を隣接させないようにしている。
【0024】
ここで、
図1は、第1発光領域11a及び第2発光領域12aを便宜的に正方形で表している。すなわち、第1発光領域11a及び第2発光領域12aは、境界がはっきりしない(
図7参照)なかで、
図1では、それぞれ第1発光領域11aに含まれる第1LEDダイ11b(
図7参照)及び第2発光領域12aに含まれる第2LEDダイ12b(
図7参照)と一致するよう描かれている。つまり、
図7に示すように、第1発光領域11aは、第1LEDダイ11bと第1蛍光樹脂層11cを含み、第2発光領域12aは、第2LEDダイ12bと第2蛍光樹脂層12cを含むなかで、LED発光装置10の非点灯時、第1発光領域11aは、第1蛍光樹脂層11cと認識され、第2発光領域12aは、第2蛍光樹脂層12cとして認識される。これに対し、LED発光装置10の点灯時には、第1発光領域11a及び第2発光領域12aは、正方形の角が取れ、周辺部がぼやけて広がり、丸みを帯びた形状として視認される。また、
図1では、第1LEDダイ11b同士を結ぶワイヤ14a(
図3参照)は、目視できるが図示していない。
【0025】
図2は、第1発光領域11aに含まれる第1LEDダイ11bの平面図である。第1LEDダイ11bは、平面サイズが0.6mm×0.6mmで、フェイスアップ実装用の青色発光ダイオードであり、ワイヤボンディングのため、上面の左上隅にアノード21a、右下中央寄りにカソード22aを備えている。アノード21aは、P層23aの上面に形成され、カソード22aは、P層23aから露出したN層24aの上面に形成されている。
【0026】
図3は、第2発光領域12aに含まれる第2LEDダイ12bの底面図である。第2LEDダイ12bは、平面サイズが0.6mm×0.6mmで、フェイスダウン用の青色発光ダイオードであり、実装基板13の上面に形成された配線電極14b(
図7参照)と接続するため、底面にアノード21bとカソード22bを備えている。アノード21bは、底面の左上隅切り欠いた略正方形をなし、P層23bのほぼ全面を占めるように形成されている。カソード22bは、底面の左上隅においてP層23bから露出させたN層24bの表面に形成されている。
【0027】
図4は、第1LEDダイ11b及び第2LEDダイ12bに係る結線状況が目視できるよう、透明樹脂層16b、第1蛍光樹脂層11c、第2蛍光樹脂層12c、ダイボンド材16a(
図7参照)及びダム15(
図1参照)を除去した状態で描いたLED発光装置10の平面図である。
図4に示すように、第1LEDダイ11bと第2LEDダイ12bは、全体として市松模様を構成するようマトリクス配列している。なお、前述のように第2LEDダイ12bはフェイスダウン実装用であるため、実装基板13の上面には第2LEDダイ12bのアノード21b及びカソード22bに接続する配線電極14bが形成されている(
図6及び
図7参照)。しかしながら、
図4では、配線電極14bについて、具体的な形状を図示せず、接続関係を点線で示している。
【0028】
図4に示すように、実装基板13上には、電源電極18a、18b、19a、19bに加え、電源電極18a、18b、19a、19bからそれぞれ弧状に延びた配線電極18a1、18b1、19a1、19b1と、中継用の配線電極19a2とが形成されている。配線電極18a1と配線電極19a2との間、及び電源電極19bと配線電極18b1との間には、それぞれ保護用のツェナーダイオード17a、17bが配置されている。ツェナーダイオード17aは、ワイヤ14aと配線電極18a1とを介して電源電極18aに接続するとともに、ワイヤ14aと配線電極19a2と他のワイヤ14aとを介して電
源電極19aに接続している。同様に、ツェナーダイオード17bは、ワイヤ14aを介して電源電極19bに接続するとともに、ワイヤ14aと配線電極18b1とを介して電源電極18bに接続している。電源電極18a、18b、19a、19bの一部、配線電極18a1、18b1、19a1、19a2、19b1、ツェナーダイオード17a、17b、ワイヤ14aの一部、及び配線電極14bの一部は、ダム15で被覆される(
図1参照)。
【0029】
前述のように、
図4では、結線を分かりやすくするため、ワイヤ14aを実線、配線電極14bを点線で示している。
図4に示すように、第1LEDダイ11b同士及び第1LEDダイ11bと配線電極18a1、19a1とは、ワイヤ14aで接続されている。同様に、第2LEDダイ12b同士及び第2LEDダイ12bと配線電極18b1、19b1とは、実装基板13上に形成した配線電極14bで接続されている。ワイヤ14aと配線電極14bとは、平面視したとき一部分で交差する。
【0030】
発光部15aには、60個の第1LEDダイ11b及び60個の第2LEDダイ12bが実装されている。60個の第1LEDダイ11bは、12個ずつ直列接続して、5本の第1LED列11d(
図5参照)を構成し、5本の第1LED列11dが並列接続している(12直列×5並列)。同様に、60個の第2LEDダイ12bは、12個ずつ直列接続して、5本の第2LED列12d(
図5参照)を構成し、5本の第2LED列12dが並列接続している(12直列×5並列)。第1LED列11dに属する第1LEDダイ11bは、図の左上から右下に向かって折れ曲がりながら斜行する配置をとる。同様に、第2LED列12dに属する第2LEDダイ12bも、図の左上から右下に向かって折れ曲がりながら斜行する配置をとる。LED発光装置10は、取り扱い易さに配慮し、発光領域15aを円形にするとともに、第1LED列11d及び第2LED列12dに含まれる第1LEDダイ11b及び第2LEDダイ12bの直列段数を12段に制限し、第1LED列11d及び第2LED列12dを比較的低い電圧(例えば、2.7(V)×12(段)=32.4(V))で点灯できるようにした。
【0031】
なお、第1LED列11dにおいて、図の上側の端部に配された第1LEDダイ11bに含まれるアノード21a(
図2参照)は、配線電極18a1と接続し、図の下側の端部に配された第1LEDダイ11bに含まれるカソード22a(
図2参照)は、配線電極19a1と接続する。同様に、第2LED列12dにおいて、図の上側の端部に配された第2LEDダイ12bに含まれるカソード22b(
図3参照)は、配線電極19b1と接続し、図の下側の端部に配された第2LEDダイ12bに含まれるアノード21b(
図3参照)は、配線電極18b1と接続する。
【0032】
図5は、LED発光装置10の回路図である。LED発光装置10は、第1色として高い色温度(例えば、5000K)で発光する第1回路11eと、第2色として低い色温度(例えば、3000K)で発光する第2回路12eからなる。
【0033】
図5に示すように、第1回路11eでは、第1LEDダイ11bが12個直列接続した第1LED列11dが5個並列接続している(12直列×5並列)。第1LED列11dに含まれる初段の第1LEDダイ11bのアノード21a(
図2参照)は、配線電極18a1を介して電源電極18aに接続している。第1LED列11dに含まれる最終段の第1LEDダイ11bのカソード22a(
図2参照)は、配線電極19a1を介して電源電極19aに接続している。配線電極18a1、19a1には保護用のツェナーダイオード17aが接続している。
【0034】
同様に、第2回路12eでは、第2LEDダイ12bが12個直列接続した第2LED列12dが5個並列接続している(12直列×5並列)。第2LED列12dに含まれる
初段の第2LEDダイ12bのアノード21b(
図3参照)は、配線電極18b1を介して電源電極18bに接続している。第2LED列12dに含まれる最終段の第2LEDダイ12bのカソード22b(
図3参照)は、配線電極19b1を介して電源電極19bに接続している。配線電極18b1、19b1には保護用のツェナーダイオード17bが接続している。
【0035】
図6は、
図1に示したLED発光装置10に含まれる発光部15aにおいて、ワイヤ14aと配線電極14bが平面視交差する部分を拡大して描いた部分斜視図である。なお、
図6では、図示を簡略化するため、ワイヤ14aが図の左上から右下に向かうよう配列し、配線電極14bが図の左下から右上に向かって配列するよう描いている(
図3には、この結線状態に対応する部分はない。)。また、
図3と同様に、透明樹脂層16b、第1蛍光樹脂層11c、第2蛍光樹脂層12c、ダイボンド材16a(
図7参照)を除去した状態で描いている。
【0036】
図6では、2個の第1LEDダイ11bと2個の第2LEDダイ12bが実装された実装基板13の表面を示している。第1LEDダイ11bは、実装基板13にダイボンディングされ、ワイヤ14aで接続しあっている。ワイヤ14aは、第1LEDダイ11bの中央部に存在するカソード22a(
図2参照)にファーストボンディングされ、左上隅に存在するアノード21a(
図2参照)にセカンドボンディングされる。第2LEDダイ12bは、2つの配線電極14bの端部がそれぞれアノード21b(
図3参照)とカソード22b(
図3参照)に接続するよう実装されている。図の中央部に描かれた配線電極14bは、図の左下の第2LEDダイ12bのカソード22bと右上の第2LEDダイ12bのアノード21bとを接続している。
【0037】
図7は、
図1のAA´線に沿って要部を描いたLED発光装置10の部分断面図である。
図7には、第1発光領域11aと第2発光領域12aがそれぞれ2つずつ示されている。なお、
図7では、ワイヤ14a、配線電極14b、アノード21b及びカソード22bを簡単化して描いている。すなわち、
図3に示したように斜行するワイヤ14a及び配線電極14bを、
図7ではAA´線と平行に配置されているものとして描いているとともに、アノード21b及びカソード22bが断面に現れるようにしている。
【0038】
図7に示すように、第1LEDダイ11bの底面は、実装基板13の上面にダイボンド材16aで接着されている。さらに、ダイボンド材16aは、第1LEDダイ11b及び第2LEDダイ12bの側面を這い上がるようにして覆うとともに、第1LEDダイ11b及び第2LEDダイ12bの間隙で実装基板13の表面を覆っている。ダイボンド材16aは、反射性の微粒子を含有し、第1LEDダイ11b及び第2LEDダイ12bの側面において、高さが半分程度の位置で遮光に十分な厚さ(例えば、30~50μm)を確保できるようにする。第2LEDダイ12bに含まれるアノード21b及びカソード22bは、それぞれ一の配線電極14b及び他の配線電極14bと接続している。この接続は、半田や共晶又は異方性導電接着材で行う。
【0039】
第1蛍光樹脂層11cは、第1LEDダイ11bの上面及び側面の上部を覆い、上部が曲面となるドーム形状(椀形状)を成す。同様に、第2蛍光樹脂層12cも、第2LEDダイ12bの上面及び側面の上部を覆い、上部が曲面となるドーム形状(椀形状)を成す。第1LEDダイ11bの側面を覆う第1蛍光樹脂層11c及びダイボンド材16aは、第1LEDダイ11bの側面から放射される第1LEDダイ11bの発光を抑制している。同様に、第2LEDダイ12bの側面を覆う第2蛍光樹脂層12c及びダイボンド材16aは、第2LEDダイ12bの側面から放射される第2LEDダイ12bの発光を抑制している。透明樹脂層16bは、ダイボンド材16a、第1蛍光樹脂層11c及び第2蛍光樹脂層12cを上部から覆い、それらを封止している。
【0040】
実装基板13は、そのベース材がアルミナからなる白色のセラミクスである。実装基板13の上面には、Cu上にNi、Auを積層した金属膜からなる配線電極14b、18a1、18b1、19a1、19a2、19b1及び電源電極18a、18b、19a、19bが形成されている(
図3参照)。ダイボンド材16aは、樹脂中にAgや酸化チタンからなる反射性微粒子を混練した接着材である。ダム15は、酸化チタンの微粒子を混練した白色のシリコン樹脂からなり、太さが0.7~1.0mm、高さが0.5~0.8mmである。
【0041】
第1蛍光樹脂層11cは、厚さが0.5mm程度で、緑色で発光する蛍光体(例えばLu3Al5O12:Ce)と赤色で発光する蛍光体(例えばCaAlSiN3:Eu)とを含有している。第1発光領域11aの発光色は、第1LEDダイ11bが発する青色光及び第1蛍光樹脂層11cの発光により5000K程度の色温度になる。第2蛍光樹脂層12cは、厚さが0.5mm程度で、緑色で発光する蛍光体(例えばLu3Al5O12:Ce)と赤色で発光する蛍光体(例えばCaAlSiN3:Eu)とを含有しているが、第1蛍光樹脂層11cとは蛍光体の濃度及び比率が異なる。第2発光領域12aの発光色は、第2LEDダイ12bが発する青色光及び第2蛍光樹脂層12cの発光により3000K程度の色温度になる。
【0042】
次に、
図8、
図9によりLED発光装置10の製造方法を説明する。
図8は、LED発光装置10の製造方法に含まれる製造工程を示すフローチャート、
図9は、
図8のフローチャートに示された製造工程の説明図である。なお、特別な指示なしに
図1~
図7に示した部材を引用する。
【0043】
図8に示すように、LED発光装置10の製造方法は、実装基板13や第1LEDダイ11b及び第2LEDダイ12b等を準備する準備工程31、実装基板13に第2LEDダイ12bを実装するフェイスダウン実装工程32、実装基板13に第1LEDダイ11b及びツェナーダイオード17a、17bをダイボンド材16aで接着するダイボンド工程33、第1LEDダイ11b同士等をワイヤ14aで電気的に接続するワイヤボンド工程34、第1LEDダイ11b及び第2LEDダイ12bからなる集合を取り囲むようにして実装基板13上にダム15を形成するダム形成工程35、第1LEDダイ11bの上部を第1蛍光樹脂層11cで被覆する第1蛍光樹脂被覆工程36、第2LEDダイ12bの上部を第2蛍光樹脂層12cで被覆する第2蛍光樹脂被覆工程37、並びにダム15の内側の領域を透明樹脂層16bで被覆する透明樹脂被覆工程38を含む。
【0044】
図9では、
図8に示した各工程を説明するため、製造途上にあるLED発光装置10の断面を模式的に描いている。なお、LED発光装置10は、個別に分離した実装基板13に第1LEDダイ11b及び第2LEDダイ12bを実装し、実装基板13の上面に様々な電子部品や樹脂を配置する工法で製造しても良いし、個片化すると多数の実装基板13が得られる大判基板に様々な電子部品や樹脂を配置し、最後に大判基板を個片化してLED発光装置10を得る、いわゆる集合工法で製造しても良い。大量生産には後者の工法が適しているが、
図9では、簡単のため、前者の工法でLED発光装置10の製造方法を説明する。また、
図9(a)~(h)では、60個の第1LEDダイ11b及び60個の第2LEDダイ12bからなる集合を、それぞれ1個ずつだけで代表的に記載している。
【0045】
図9(a)は、準備工程31の説明図である。準備工程31では、実装基板13、第1LEDダイ11b、第2LEDダイ12b及びツェナーダイオード17a、17bを準備する。実装基板13は、そのベース材がアルミナからなる白色のセラミクスである。実装基板13の上面には、Cu上にNi、Auを積層した金属膜からなる配線電極14b、18a1等及び電源電極18a等が形成されている(
図3参照)。第1LEDダイ11bは
、サファイヤ基板の上面に半導体層(発光層)を備え、第2LEDダイ12bは、サファイヤ基板の底面に半導体層(発光層)を備えている。ツェナーダイオード17a、17bは、第1LEDダイ11b及び第2LEDダイ12bより小型である。
【0046】
図9(b)は、フェイスダウン実装工程32の説明図である。フェイスダウン実装工程32では、まず、配線電極14bの接続しようとする部分に半田ペーストを印刷し、第2LEDダイ12bを仮接着したら、リフロー炉で本接続する。接続は、半田以外に、金錫共晶や異方性接着材を使用することができる。
【0047】
図9(c)は、ダイボンド工程33の説明図である。ダイボンド工程33では、実装基板13に第1LEDダイ11b及びツェナーダイオード17a、17bをダイボンド材16aで接着する。なお、第1LEDダイ11b及びツェナーダイオード17a、17bを実装基板13に搭載する前に、予め各素子を配置する位置にダイボンド材16aを塗っておく。その後、各素子をピッカーで所定の位置に配置する。このとき、ダイボンド材16aの量を調整し、ダイボンド時に第1LEDダイ11b底面からダイボンド材16aをはみ出させ、一部のダイボンド材16aに第1LEDダイ11b及び第2LEDダイ12bの側面を這い上がらせる。これと並行して、隣接する第1LEDダイ11bと第2LEDダイ12bとの間をダイボンド材16aで覆っておく。最後に、LED発光装置10を加熱してダイボンド材16aを硬化する。このとき、第1LEDダイ11bと第2LEDダイ12bの間隔は、0.1~0.4mmである。
【0048】
図9(d)は、ワイヤボンド工程34の説明図である。ワイヤボンド工程34では、第1LEDダイ11b同士、第1LEDダイ11bと配線電極18a1、19a1、ツェナーダイオード17aと電源電極18a及び配線電極19a2、配線電極19a2と電源電極19a、並びにツェナーダイオード17bと電源電極18b及び配線電極19b1、の間をワイヤ14aで電気的に接続する。なお、ワイヤ14aについては、第1LEDダイ11bの近傍のみ描き、他の部分は省略している。
【0049】
図9(e)は、ダム形成工程35の説明図である。ダム形成工程35では、第1LEDダイ11b及び第2LEDダイ12bの集合を取り囲むようにして、実装基板13上にダム15を形成する。ダム15は、白色シリコン樹脂からなり、太さが0.7~1.3mm、高さが0.5~0.8mmである。また、ダム15は、ディスペンサのノズルを移動しながら、粘度(又はチクソ性)が高い状態の白色シリコン樹脂をノズルから吐出して形成する。このとき、ツェナーダイオード17a、17bは、ダム15に埋め込まれる。同様に、配線電極18a1、18b1、19a1、19a2、19b1、及び電源電極18a、18b、19a、19bと第1LEDダイ11bとを接続するワイヤ14aの一部分も、ダム15に埋め込まれる。最後に、LED発光装置10を加熱し、ダム15を硬化する。
【0050】
図9(f)は、第1蛍光樹脂被覆工程36の説明図である。第1蛍光樹脂被覆工程36では、第1LEDダイ11bの上部に第1蛍光樹脂を塗布し第1蛍光樹脂層11cを形成する。第1蛍光樹脂は、緑色で発光する蛍光体(例えばLu
3Al
5O
12:Ce)と赤色で発光する蛍光体(例えばCaAlSiN
3:Eu)とを含有しているシリコン樹脂であり、可動型のノズルにより第1LEDダイ11bの上部にスポット印刷される。スポット印刷により生成された第1蛍光樹脂層11cは、最大の厚さが0.5mm程度でドーム形状となる。第1蛍光樹脂層11cを含む第1発光領域11aの発光色は、第1LEDダイ11bが発する青色光と第1蛍光樹脂層11cの発光により5000K程度になる。
【0051】
図9(g)は、第2蛍光樹脂被覆工程37の説明図である。第2蛍光樹脂被覆工程37では、第2LEDダイ12bの上部に第2蛍光樹脂を塗布し第2蛍光樹脂層12cを形成
する。第2蛍光樹脂も、緑色で発光する蛍光体(例えばLu
3Al
5O
12:Ce)と赤色で発光する蛍光体(例えばCaAlSiN
3:Eu)とを含有しているシリコン樹脂であり、可動型のノズルにより第2LEDダイ12bの上部にスポット印刷される。スポット印刷により生成された第2蛍光樹脂層12cは、最大の厚さが0.5mm程度でドーム形状となる。第2蛍光樹脂層12cを含む第2発光領域12aの発光色は、第2LEDダイ12bが発する青色光と第2蛍光樹脂層12cの発光により3000K程度になる。
【0052】
図9(h)は、透明樹脂被覆工程38の説明図である。透明樹脂被覆工程38では、ダム15の内側の領域に透明樹脂を充填し透明樹脂層16bを形成する。透明樹脂は、透明なシリコン樹脂であり、硬化前は低粘度であり、充填にはディスペンサが使われる。充填後、加熱により透明樹脂を硬化する。
【0053】
なお、第1蛍光樹脂被覆工程36では、第1LEDダイ11bの上部に第1蛍光樹脂をスポット印刷で塗布していた。同様に、第2蛍光樹脂被覆工程37でも、第2LEDダイ12bの上面に第2蛍光樹脂をスポット印刷で塗布していた。しかしながら、塗布方法はスポット印刷に限られず、例えば、スポット印刷の代わりにマスクを使用したスプレイ印刷でも良い。どちらの方法であっても、塗布後、第1蛍光樹脂及び第2蛍光樹は表面張力でドーム形状にする。
【0054】
図1~
図9により説明してきたLED発光装置10は、微細な発光領域である第1発光領域11aと第2発光領域12aの集合体を含む。発光部15aにおいて、第1発光領域11aと第2発光領域12aは、平面視したとき上下及び左右方向で互いに隣接しあい、市松模様配列する。第1発光領域11aは、1個の第1LEDダイ11bを含み、約5000K(第1色)で発光する。同様に、第2発光領域12aは、1個の第2LEDダイ12bを含み、約3000K(第2色)で発光する。第1蛍光樹脂層11cは、第1LEDダイ11bの上面及び上面近傍の側面へのスポット印刷で形成され、上面に曲面を有するドーム状となる。第2LEDダイ12bについても同様である。
【0055】
このLED発光装置10は、第1回路11eに流す電流と第2回路12eに流す電流を個別供給しているので、発光色が調整できる。つまり、第1回路11eの輝度(第1回路11eを構成する全ての第1発光領域11aの光束)と、第2回路12eの輝度(第2回路12eを構成する全ての第2発光領域12aの光束)が独立して制御できるので、LED発光装置10は、任意の輝度で、3000Kから5000Kの間の発光色を得ることができる。
【0056】
前述のように、LED発光装置10の発光部15aは、微細な発光領域である第1発光領域11aと第2発光領域12aの集合体からなる。この発光部15aにおいて、第1発光領域11aと第2発光領域12aは、市松模様状に配列している。第1発光領域11aに含まれる第1LEDダイ11bは、実装基板13にフェイスアップ実装され、互いにワイヤ14aで接続する。第2発光領域12aに含まれる第2LEDダイ12bは、実装基板13にフェイスダウン実装され、互いに実装基板13上に形成された配線電極14bで接続する。つまり、第1LEDダイ11bと第2LEDダイ12bを市松模様配置しても、第1LEDダイ11bをフェイスアップ実装し、第2LEDダイ12bをフェイスダウン実装しているので、ワイヤ14aの交差をなくすことができる。
【0057】
したがって、調光及び調色が可能なLED発光装置10は、混色性を高くできる配置で第1LEDダイ11bと第2LEDダイ12bを近接させても、ワイヤ14aの交差をなくすことにより、ワイヤボンディングに係るショートや断線などの不具合を解消できる。
【0058】
なお、所望とする発光色が、蛍光樹脂の調整だけでは達成できない場合がある。例えば
、第1発光領域11aの発光色である第1色(スペクトル)が、第1蛍光樹脂層11cの調整だけでは達成できないことがある。このとき、第1LEDダイ11bを近紫外発光LEDとしても良い。このようにすると、第1蛍光樹脂層11cが青色蛍光体を含むようになり、青色光のスペクトルが太くなって自然な光に近づく。
【0059】
また、LED発光装置10では、第1蛍光樹脂層11cと第2蛍光樹脂層12cが同じ高さであった。このとき、同じ2種類の蛍光体を第1蛍光樹脂層11cと第2蛍光樹脂層12cの間で濃度及び比率を調整し、第1発光領域11aと第2発光領域12aの発光色を異ならせていた。これに対し、別方として、第1蛍光樹脂層11cと第2蛍光樹脂層12cの高さを異ならせ、第1発光領域11aと第2発光領域12aの発光色を異ならせても良い。
【0060】
また、LED発光装置10では、第1蛍光樹脂層11cと第2蛍光樹脂層12cをそれぞれ第1LEDダイ11bと第2LEDダイ12bにスポット印刷していた。これに対し、例えば、第1蛍光樹脂層11cは、第1LEDダイ11bにスポット印刷で形成し、第2蛍光樹脂層12cには、第2LEDダイ12bを含め発光部15a全体を封止させても良い。このとき、透明樹脂層16bは不要になる。このようにすると製造が容易になる。
【0061】
また、ダイボンド材16aは、第1LEDダイ11bの底面からはみ出し、第1LEDダイ11b及び第2LEDダイ12bの側面を這い上がっていた。このダイボンド材16aは、第1LEDダイ11b及び第2LEDダイ12bの側面放射光を遮るとともに、表面が反射層として機能する。つまり、LED発光装置10は、第1LEDダイ11b及び第2LEDダイ12bの側面に追加的な遮光部材を配置することなく、簡単な構造で側面放射光を抑圧しながら発光効率を高い状態で維持している。
【0062】
また、第1LEDダイ11b及び第2LEDダイ12bの間隙において実装基板13の表面を覆うダイボンド材16aは、実装基板13の表面を反射処理しているかいないかにかかわらず、発光部15aの反射効率を向上させている。
【0063】
(第2実施形態)
第1実施形態として示したLED発光装置10は、第1発光領域11aに含まれる第1LEDダイ11b及び第2発光領域12aに含まれる第2LEDダイ12bの上部に、それぞれスポット印刷で第1蛍光樹脂層11c及び第2蛍光樹脂層12cを形成していた。しかしながら、スポット印刷は、第1LEDダイ11b及び第2LEDダイ12bに対し個別に行われるので製造上の負荷が大きい。前述のように、第1LEDダイ11b(又は第2LEDダイ12b)にドーム状の一の蛍光樹脂層を形成し、充填法により発光色の異なる他の蛍光樹脂層を形成すれば製造負荷を軽減できる。さらに、この一の蛍光樹脂層にも充填法を適用できれば、製造負荷をいっそう軽減できる。そこで、本発明の第2実施形態として、
図10により、第1蛍光樹脂層11c及び第2蛍光樹脂層12cを充填法で形成できるLED発光装置20について説明する。なお、LED発光装置20は、LED発光装置10と基本的な構造が共通するので、説明に際し、
図1~
図5を引用し、
図10において共通の部材には共通の符号を用いる。
【0064】
図10は、
図1のAA´線に沿って要部を描いたLED発光装置20の部分断面図である。
図10には、第1発光領域11aと第2発光領域12aがそれぞれ2つずつ示されている。
図10と
図7を比較すると、LED発光装置20は、LED発光装置10に対し、第2LEDダイ26bの厚さ、第1蛍光樹脂層11c及び第2蛍光樹脂層12cの断面形状、ダイボンド材16aの這い上がり量、透明樹脂層16bが存在しないこと、が異なる。
【0065】
図10に示すように、LED発光装置20では、第1LEDダイ11bと第2LEDダイ26bの厚さが異なる。つまり、実装基板13の上面を基準として、第1LEDダイ11bの上面は、第2LEDダイ26bの上面より高い。このとき、第2蛍光樹脂層12cは、第1LEDダイ11bの占める領域を除き上面が平坦であり、その上面は、第1LEDダイ11bの上面と第2LEDダイ26bの上面の中間の高さとなる。すなわち、第2蛍光樹脂12cの上面は、第1LEDダイ11bの上面より低く、第2LEDダイ26bの上面より高い。また、第1蛍光樹脂層11cは、第1LEDダイ11bと第2蛍光樹脂層12cを一体的及び連続的に覆っている。
【0066】
第1発光領域11aには、第1LEDダイ11b及び第1蛍光樹脂層11cが含まれ、第1発光領域11aの発光色は、第1LEDダイ11b及び第1蛍光樹脂層11cの発光が混色し5000K程度になる。同様に、第2発光領域12aには、第2LEDダイ26b及び第2蛍光樹脂層12cが含まれ、第2発光領域12aの発光色は、第2LEDダイ26b及び第2蛍光樹脂層12cの発光が混色し3000K程度になる。なお、第2発光領域12aでは、第2LEDダイ26bの発光により第1蛍光樹脂層11cも励起されるので、LED発光装置10に含まれる第2発光領域12aと同じ発光色とする場合は、LED発光装置20の第2蛍光樹脂層12cについて成分構成や厚さなどを調整しておく必要がある。
【0067】
LED発光装置20は、
図8に示した第1蛍光樹脂被覆工程36と第2蛍光樹脂被覆工程37の順番を入れ替え、それぞれに充填法を適用し製造する。すなわち、ダム形成工程35が終了したら、ディスペンサで発光部15aに第2蛍光樹脂を充填し、第2蛍光樹脂層12cを形成し(第2蛍光樹脂被覆工程37)、続いて、ディスペンサで発光部15aに第1蛍光樹脂を充填し、第1蛍光樹脂層11cを形成する(第1蛍光樹脂被覆工程36)。
【0068】
以上のように、LED発光装置20は、第1蛍光樹脂層11c及び第2蛍光樹脂層12cの形成にあたり、スポット印刷を適用していないため(併せて透明樹脂層16bを不要としているため)製造が容易になる。
【0069】
なお、LED発光装置20は、第2LEDダイ26bを薄くして、第1LEDダイ11bの上面と第2LEDダイ26bの上面の高さを異ならせていた。しかしながら、第1LEDダイ11bの上面と第2LEDダイ26bの上面の高さを異ならせることについては、この手法に限定されない。例えば、第1LEDダイ11bと第2LEDダイ12b(
図7参照)の厚さが等しいとき、実装基板13の上面に銀ペースト等で台を形成し、そこに第1LEDダイ11bを実装しても良い。
【0070】
(第3実施形態)
第1実施形態及び第2実施形態として示したLED発光装置10、20は、第1発光領域11a及び第2発光領域12aにそれぞれ第1LEDダイ11b及び第2LEDダイ12b、26bが含まれていた。しかしながら、本発明のLED発光装置は、高い混色性を得るためには、第1発光領域11aと第2発光領域12aが近接及び隣接して平面的に配置されればよく、必ずしも第1発光領域11a及び第2発光領域12aにそれぞれ第1LEDダイ及び第2LEDダイが含まれている必要はない。そこで、本発明の第3実施形態として、
図11により、第2発光領域12aに第2LEDダイ32bを含まないLED発光装置30について説明する。なお、LED発光装置30は、LED発光装置10と基本的な構造が共通するので、説明に際し、
図1~
図5を引用し、
図11において共通の部材には共通の符号を用いる。
【0071】
図11は、
図1のAA´線に沿って要部を描いたLED発光装置30の部分断面図であ
る。
図11には、第1発光領域11aと第2発光領域12aがそれぞれ2つずつ示されている。
図11と
図7を比較すると、LED発光装置30は、LED発光装置10に対し、第2LEDダイ32bが第1LEDダイ31bの下方に配置されていること、第1LEDダイ31bの平面サイズが第2LEDダイ32bの平面サイズより小さいこと、透明樹脂層16bが存在しないこと、並びに第1蛍光樹脂層11c、第2蛍光樹脂層12c、ダイボンド材16a及び配線電極14bの断面形状、が異なる。
【0072】
図11に示すように、LED発光装置30では、第2LEDダイ32bが第1LEDダイ31bの下方に配置されている。このとき、第2LEDダイ32bは、実装基板13にフェイスダウン実装され、第1LEDダイ31bは、第2LEDダイ32bにフェイスアップ実装されている。平面視したとき、第1LEDダイ31bは、第2LEDダイ32bより小さい。第2LEDダイ32bは、上面がダイボンド材16aで覆われ、さらに、ダイボンド材16aを介して第1LEDダイ31bとともにドーム状の第1蛍光樹脂層11cで覆われている。第2蛍光樹脂層12cは、第2LEDダイ32b、第1蛍光樹脂層11c及び配線電極14bを一体的及び連続的に封止する。
【0073】
第1発光領域11aには、第1LEDダイ31b及び第1蛍光樹脂層11cが含まれ、第1発光領域11aの発光色は、第1LEDダイ31b及び第1蛍光樹脂層11cの発光が混色し5000K程度になる。これに対し、第2発光領域12aには、第2蛍光樹脂層12cが含まれる一方、第2LEDダイ32bは含まれない。すなわち、第2LEDダイ32bは、第2発光領域12aに含まれる第2蛍光樹脂層12cを励起するだけである。このため、第2発光領域12aの発光色は、第2LEDダイ32bの側面から放射された青色光を波長変換したものとなる。つまり、第2発光領域12a単独では白色光とならない。そこで、LED発光装置30は、第2LEDダイ32bとともに第1LEDダイ31bを同時に点灯し、第1発光領域11aから青色光を獲得することで色温度の低い所望の白色光を得る。
【0074】
LED発光装置30の製造方法は、
図8に示すLED発光装置10の製造方法のフローチャートと一致する(透明樹脂被覆工程38はない)が、各工程の内容が異なる。すなわち、ダイボンド工程33では、ダイボンド材16aを第2LEDダイ32bの上面に塗布し、そこに第1LEDダイ31bを実装する。第1蛍光樹脂被覆工程36では、第1LEDダイ31b全体をドーム状に被覆するようにして第2LEDダイ32bの上面に第1蛍光樹脂をスポット印刷し、第1蛍光樹脂層11cを形成する。第2蛍光樹脂被覆工程37では、ディスペンサで第2蛍光樹脂を発光部15aに充填し、第2蛍光樹脂層12cを形成する。
【0075】
LED発光装置30は、第1LEDダイ31bの側面全体を第1蛍光樹脂層11cで覆っているので、LED発光装置10に比べ、第1発光領域11aにおける発光効率を高くできる。
【0076】
(第4実施形態)
第3実施形態として示したLED発光装置30は、第1発光領域11aが色温度の高い白色で発光し、第2発光領域12aが長波長成分の多い光を発していた。しかしながら、第1発光領域11aが色温度の低い白色で発光し、第2発光領域が色温度の高い白色で発光しても良い。そこで、本発明の第4実施形態として、
図12により、第1発光領域11aの色温度が第2発光領域12aの色温度より低いLED発光装置40について説明する。なお、LED発光装置40は、LED発光装置30と同様に、LED発光装置10と基本的な構造が共通するので、説明に際し、
図1~
図5を引用し、
図12において共通の部材には共通の符号を用いる。
【0077】
図12は、
図1のAA´線に沿って要部を描いたLED発光装置40の部分断面図である。
図12には、第1発光領域11aと第2発光領域12aがそれぞれ2つずつ示されている。
図12と
図11を比較すると、LED発光装置40は、LED発光装置30に対し、反射部材43を備えていること、並びに第1蛍光樹脂層41c及び第2蛍光樹脂層42cの成分構成だけが異なる。
【0078】
図12に示すように、LED発光装置40では、一の第2LEDダイ32bと他の第2LEDダイ32bの間に断面が三角形の反射部材43を備えている。また、第1蛍光樹脂層41cの成分構成は、LED発光装置10に含まれる第2蛍光樹脂層12cと等しい。同様に、第2蛍光樹脂層42cの成分構成は、LED発光装置10に含まれる第1蛍光樹脂層11cと等しい。
【0079】
第1発光領域11aには、第1LEDダイ31b及び第1蛍光層41cが含まれ、第1発光領域11aの発光色は、第1LEDダイ31b及び第1蛍光樹脂層41cの発光が混色し3000K程度になる。これに対し、第2発光領域12aには、第2蛍光樹脂層42cが含まれる一方、第2LEDダイ32bは含まれない。第2LEDダイ32bが点灯すると、第2LEDダイ32bの側面から放射される青色光は、一部が反射部材43で図の上方向に進行方向が変えられ、第2発光領域12aにおける青色光成分となり、残りが第2蛍光樹脂層42cで波長変換され、第2発光領域12aから外部に出射する。この結果、第2発光領域12aの発光色は、5000K程度になる。
【0080】
LED発光装置40の製造方法は、LED発光装置30の製造方法とほぼ等しく、準備工程31(
図8参照)だけが、
図9に示したLED発光装置30の準備工程31と部弁的に異なる。すなわち、LED発光装置40は、準備工程31で反射部材43が取り付けられた実装基板13を準備する。また、LED発光装置40は、反射部材43の代わりに、フィラーを用いて青色光の進行方向を図の上方に向けても良い。
【符号の説明】
【0081】
10、20、30、40…LED発光装置、
11a…第1発光領域、
11b、31b…第1LEDダイ、
11c、41c…第1蛍光樹脂層、
11d…第1LED列、
11e…第1回路、
12a…第2発光領域、
12b、26b、32b…第2LEDダイ、
12c、42c…第2蛍光樹脂層、
12d…第2LED列、
12e…第2回路、
13…実装基板、
14a…ワイヤ、
14b、18a1、18b1、19a1、19a2、19b1…配線電極、
15…ダム、
15a…発光部、
16a…ダイボンド材、
16b…透明樹脂層、
17a、17b…ツェナーダイオード、
18a、18b、19a、19b…電源電極、
21a、21b…アノード、
22a、22b…カソード、
23a、23b…P層、
24a、24b…N層、
31…準備工程、
32…フェイスダウン実装工程、
33…ダイボンド工程、
34…ワイヤボンド工程、
35…ダム形成工程、
36…第1蛍光樹脂被覆工程、
37…第2蛍光樹脂被覆工程、
38…透明樹脂被覆工程、
43…反射部材。