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特許7390946空調制御装置、撮影装置、空調制御システム、空調システム及び空調制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】空調制御装置、撮影装置、空調制御システム、空調システム及び空調制御方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/30 20180101AFI20231127BHJP
   F24F 11/49 20180101ALI20231127BHJP
   F24F 11/63 20180101ALI20231127BHJP
   F24F 11/89 20180101ALI20231127BHJP
   F24F 140/00 20180101ALN20231127BHJP
   F24F 120/12 20180101ALN20231127BHJP
【FI】
F24F11/30
F24F11/49
F24F11/63
F24F11/89
F24F140:00
F24F120:12
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020050668
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021148385
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100181618
【弁理士】
【氏名又は名称】宮脇 良平
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【弁理士】
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】泉原 浩子
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-138902(JP,A)
【文献】特開2012-042197(JP,A)
【文献】特開2018-179446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/30
F24F 11/49
F24F 11/63
F24F 11/89
F24F 140/00
F24F 120/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影装置による撮影に基づいて室内機による室内空間の空調を制御する空調制御装置であって、
前記撮影装置が鏡を介して前記室内空間における前記室内機を含む第1の領域を撮影することにより得られた第1の画像内における前記室内機の設置位置を特定する位置特定手段と、
前記撮影装置が前記鏡を介さずに前記室内空間における前記室内機を含まない第2の領域を撮影することにより得られた第2の画像内における、前記位置特定手段により特定された前記設置位置に対応する対応領域の状態に応じた制御信号を前記室内機に出力する空調制御手段と、を備える、
空調制御装置。
【請求項2】
前記空調制御手段は、前記第1の領域が撮影される際に、前記室内機を運転させ、
前記位置特定手段は、前記第1の画像内における、運転中の前記室内機に設けられている空調空気の吹き出し口の位置を、前記設置位置として特定する、
請求項1に記載の空調制御装置。
【請求項3】
前記位置特定手段は、前記第1の画像内における前記室内機の設置角度を更に特定し、
前記空調制御手段は、前記第2の画像内における前記対応領域の状態と、前記位置特定手段により特定された前記設置角度と、に応じた前記制御信号を前記室内機に出力する、
請求項1又は2に記載の空調制御装置。
【請求項4】
前記室内機は、前記室内空間に空調空気を吹き出す複数の吹き出し口を有し、
前記空調制御手段は、前記第1の領域が撮影される際に、前記室内機に、前記複数の吹き出し口のうちの一部の吹き出し口から空調空気を吹き出させ、
前記位置特定手段は、前記第1の画像のうちから前記一部の吹き出し口を特定することにより、前記設置角度を特定する、
請求項3に記載の空調制御装置。
【請求項5】
前記複数の吹き出し口は、四角形状に配置されている4つの吹き出し口であり、
前記一部の吹き出し口は、前記4つの吹き出し口のうちの隣り合う2辺に配置されている吹き出し口である、
請求項4に記載の空調制御装置。
【請求項6】
前記空調制御装置は、複数の室内機による前記室内空間の空調を制御し、
前記空調制御手段は、前記第1の領域が撮影される際に、前記複数の室内機のうちの、前記設置位置の特定対象となる室内機を運転させ、
前記位置特定手段は、前記鏡を介して前記第1の領域を撮影することにより得られた前記第1の画像内における前記特定対象の室内機の設置位置を特定し、
前記特定対象の室内機を変えて、前記空調制御手段及び前記位置特定手段の処理を繰り返すことにより、前記第1の画像内における前記複数の室内機の設置位置を特定する繰り返し手段、を更に備える、
請求項1から5のいずれか1項に記載の空調制御装置。
【請求項7】
前記第2の画像のうちから人又は物を認識する認識手段、を更に備え、
前記空調制御手段は、前記認識手段により前記第2の画像内における前記対応領域に前記人又は物が認識された場合、前記認識手段により認識された前記人又は物の数又は温度に応じた前記制御信号を前記室内機に出力する、
請求項1から6のいずれか1項に記載の空調制御装置。
【請求項8】
室内機により空調される室内空間を撮影する撮影装置であって、
前記室内空間を撮影する撮影手段を有する撮影ユニットと、
鏡を有し、前記撮影ユニットに取り外し可能に装着される鏡モジュールと、を備え、
前記撮影手段は、前記鏡モジュールが前記撮影ユニットに装着されている状態では、前記鏡を介して前記室内空間における前記室内機を含む第1の領域を撮影し、前記鏡モジュールが前記撮影ユニットに装着されていない状態では、前記鏡を介さずに前記室内空間における前記室内機を含まない第2の領域を撮影する、
撮影装置。
【請求項9】
前記鏡モジュールが前記撮影ユニットに装着されている状態において、前記撮影手段と前記鏡モジュールとを回転させる回転駆動手段、を更に備える、
請求項8に記載の撮影装置。
【請求項10】
前記第1の領域は、前記第2の領域よりも広い、
請求項8又は9に記載の撮影装置。
【請求項11】
前記撮影手段は、前記室内空間を赤外線で撮影する、
請求項8から10のいずれか1項に記載の撮影装置。
【請求項12】
室内機による室内空間の空調を制御する空調制御システムであって、
前記室内空間を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段が鏡を介して前記室内空間における前記室内機を含む第1の領域を撮影することにより得られた第1の画像内における前記室内機の設置位置を特定する位置特定手段と、
前記撮影手段が前記鏡を介さずに前記室内空間における前記室内機を含まない第2の領域を撮影することにより得られた第2の画像内における、前記位置特定手段により特定された前記設置位置に対応する対応領域の状態に応じた制御信号を前記室内機に出力する空調制御手段と、を備える、
空調制御システム。
【請求項13】
請求項12に記載の空調制御システムと、前記室内機と、を備える、
空調システム。
【請求項14】
室内機による室内空間の空調を制御する空調制御方法であって、
鏡を介して前記室内空間における前記室内機を含む第1の領域を撮影し、
前記第1の領域の撮影により得られた第1の画像内における前記室内機の設置位置を特定し、
前記鏡を介さずに前記室内空間における前記室内機を含まない第2の領域を撮影し、
前記第2の領域の撮影により得られた第2の画像内における、特定された前記設置位置に対応する対応領域の状態に応じて、前記室内機を制御する、
空調制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空調制御装置、撮影装置、空調制御システム、空調システム及び空調制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
室内空間を撮影装置により撮影し、その撮影画像に基づいて室内空間の空調を制御する技術が知られている。例えば、特許文献1は、対象空間を空調する複数の室内機のそれぞれに、対象空間の熱画像データを取得する熱画像センサが設けられている空調システムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/51479号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
撮影装置による撮影に基づいて室内空間の空調を制御する技術において、撮影装置が室内機とは別体として設けられている場合がある。撮影装置が室内機とは別体として設けられている場合、撮影に基づいて的確に空調を制御するためには、撮影装置と室内機との相対的な位置関係の情報が必要になる。そのため、撮影装置に対する室内機の相対的な設置位置の情報を、少ない作業量で精度良く取得することも求められている。
【0005】
本開示は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、撮影装置に対する室内機の相対的な設置位置を少ない作業量で精度良く特定することが可能な空調制御装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示に係る空調制御装置は、
撮影装置による撮影に基づいて室内機による室内空間の空調を制御する空調制御装置であって、
前記撮影装置が鏡を介して前記室内空間における前記室内機を含む第1の領域を撮影することにより得られた第1の画像内における前記室内機の設置位置を特定する位置特定手段と、
前記撮影装置が前記鏡を介さずに前記室内空間における前記室内機を含まない第2の領域を撮影することにより得られた第2の画像内における、前記位置特定手段により特定された前記設置位置に対応する対応領域の状態に応じた制御信号を前記室内機に出力する空調制御手段と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示は、撮影装置が鏡を介して室内空間における室内機を含む第1の領域を撮影することにより得られた第1の画像内における室内機の設置位置を特定し、撮影装置が鏡を介さずに室内空間における室内機を含まない第2の領域を撮影することにより得られた第2の画像内における、特定された設置位置に対応する対応領域の状態に応じた制御信号を室内機に出力する。従って、本開示によれば、撮影装置に対する室内機の相対的な設置位置を少ない作業量で精度良く特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る空調システムの全体構成を示すブロック図
図2】実施の形態1に係る空調システムにより空調される室内空間の鳥瞰図
図3】実施の形態1において、鏡モジュールの装着時における撮影装置及び室内機を示す図
図4】実施の形態1に係る撮影装置の撮影ユニットのハードウェア構成を示すブロック図
図5】実施の形態1において、鏡モジュールの非装着時における撮影装置及び室内機を示す図
図6】実施の形態1に係る空調制御装置のハードウェア構成を示すブロック図
図7】実施の形態1に係る空調システムの機能的な構成を示すブロック図
図8】実施の形態1において初期設定時に撮影された第1の撮影画像の例を示す図
図9図8に示した第1の撮影画像から変換された第1の俯瞰画像の例を示す図
図10】実施の形態1における設置位置データベースに記憶されるデータの例を示す図
図11】実施の形態1において第1の俯瞰画像内を複数の小領域に区分けした例を示す図
図12】実施の形態1において運用時に撮影された第2の撮影画像の例を示す図
図13図12に示した第2の撮影画像から変換された第2の俯瞰画像の例を示す図
図14】実施の形態1における室内状態データベースに記憶されるデータの例を示す図
図15】実施の形態1に係る空調制御装置により実行される初期設定処理の流れを示すフローチャート
図16】実施の形態1に係る空調制御装置により実行される運用処理の流れを示すフローチャート
図17】実施の形態2における室内機に設けられている4つの吹き出し口の配置例を示す図
図18図17に示した4つの吹き出し口が撮影された画像の例を示す図
図19】実施の形態2における設置位置データベースに記憶されるデータの例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付す。
【0010】
(実施の形態1)
図1に、実施の形態1に係る空調システム1の全体構成を示す。空調システム1は、空調対象の空間を空調する設備である。空調とは、空調対象の空間の空気の温度、湿度、清浄度又は気流等を調整することであって、具体的には、暖房、冷房、除湿、加湿、空気清浄等である。
【0011】
図1に示すように、空調システム1は、空調制御システム10と、複数の空調機40と、を備える。ここで、空調制御システム10は、複数の撮影装置20と、空調制御装置30と、を備える。また、複数の空調機40のそれぞれは、室内空間2の外部に設置される室外機41と、室内空間2の内部に設置される室内機42と、を備える。
【0012】
図2に、空調システム1による空調対象の空間である室内空間2の例を示す。室内空間2は、例えばオフィスビル、工場、住宅等における一室である。複数の室内機42及び複数の撮影装置20のそれぞれは、一例として、室内空間2の天井部に設置されている。複数の室内機42のそれぞれは、室内空間2の各エリアをできるだけ均一に空調することができるように、ほぼ等間隔を空けた位置に分散して設置されている。
【0013】
複数の撮影装置20のそれぞれは、赤外線カメラを備えており、赤外線カメラにより室内空間2を撮影することで室内空間2における熱分布を示す熱画像を取得する。室内空間2には、予め定められた数の室内機42毎に1つの撮影装置20が設置されている。図2の例では、4つの室内機42に対して1つの撮影装置20が、その4つの室内機42のほぼ中央の位置に設置されており、周囲4つの室内機42により空調されるエリアを撮影する。
【0014】
各撮影装置20が室内機42とは別体で設けられているため、1台の撮影装置20で複数の室内機42により空調される領域を撮影することができる。また、撮影装置20及びその制御アプリケーションを後付けで導入することが容易になる。更には、1台の室内機42に対して1台の撮影装置20が設けられている場合に比べて、複数の室内機42に対して1台の撮影装置20が設けられれば良いため、コスト低減が可能になる。
【0015】
図3に示すように、各撮影装置20は、撮影ユニット20aと、鏡モジュール20bと、を備える。撮影ユニット20aは、撮影装置20の主要な機能である撮影機能を含むユニットである。
【0016】
図4に示すように、各撮影装置20の撮影ユニット20aは、制御部21と、記憶部22と、撮影部23と、回転駆動部24と、通信部25と、を備える。これら各部は通信バスを介して接続されている。
【0017】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備える。CPUは、中央処理装置、中央演算装置、プロセッサ、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)等とも呼び、撮影装置20の制御に係る処理及び演算を実行する中央演算処理部として機能する。制御部21において、CPUは、ROMに格納されているプログラム及びデータを読み出し、RAMをワークエリアとして用いて、撮影装置20を統括制御する。
【0018】
また、制御部21は、DSP、GPU(Graphics Processing Unit)等の画像処理用のプロセッサと、処理される画像を一時的に保存するバッファメモリと、を備える。制御部21は、周知の画像処理の手法を用いて、撮影部23により得られた撮影画像を処理する。
【0019】
記憶部22は、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)等の不揮発性の半導体メモリを備えており、いわゆる二次記憶装置又は補助記憶装置としての役割を担う。記憶部22は、制御部21が各種処理を行うために使用するプログラム及びデータを記憶する。また、記憶部22は、制御部21が各種処理を行うことにより生成又は取得するデータを記憶する。
【0020】
撮影部23は、室内空間2を撮影する。具体的に説明すると、撮影部23は、赤外線で室内空間2を撮影する赤外線センサを備える。赤外線カメラは、赤外線を集光するレンズ、レンズによる集光位置に配置された撮像素子、撮像素子により得られた画像を表す電気信号をデジタルデータに変換するA/D(Analog/Digital)変換器等を含む。撮影部23は、赤外線で室内空間2を撮影することにより、室内空間2の熱分布を表す熱画像を取得する。撮影部23は、撮影手段として機能する。
【0021】
回転駆動部24は、モータ、アクチュエータ等の駆動部材を備えており、撮影部23を回転させてその光軸の向きを変化させる。具体的に説明すると、回転駆動部24は、撮影部23を、図2において点線矢印で示す範囲で、鉛直方向の回転軸の周りに回転させる。これにより、回転駆動部24は、撮影部23に、撮影装置20の周囲に設置された4つの室内機42により空調されるエリアを撮影させる。回転駆動部24は、回転駆動手段として機能する。
【0022】
通信部25は、空調制御装置30と通信するための通信インタフェースを備える。通信部25は、空調制御装置30との間で有線又は無線により通信可能に接続されており、有線LAN(Local Area Network)、無線LAN等の周知の通信規格に則って通信する。
【0023】
図3に戻って、鏡モジュール20bは、鏡を有し、撮影ユニット20aに取り外し可能に装着されるモジュールである。鏡モジュール20bは、撮影ユニット20aの前方に設置され、撮影ユニット20aが天井部を撮影できるようにする。鏡モジュール20bは、鏡部27と、装着部28と、を備える。
【0024】
鏡部27は、赤外線を反射する鏡を備える。鏡部27は、撮影部23の前方に設置され、撮影部23に天井部を撮影させる。撮影部23は、例えば図3において破線で示すように、鏡部27で反射される撮影範囲R1を撮影する。鏡部27を用いることで、撮影部23は、鏡モジュール20bが撮影ユニット20aに装着されていない状態では死角となる天井部に設置されている室内機42を撮影することができる。なお、鏡部27の鏡面は、図3に示したように平面であることに限らず、曲面であっても良い。
【0025】
装着部28は、鏡モジュール20bを撮影ユニット20aに取り外し可能に装着するための、留め金、粘着テープ、磁石等の部材を備える。一例として、先端部が鈎状に曲がった形状の留め金を装着部28が備える場合、鏡モジュール20bは、装着部28の先端部が撮影ユニット20aの端部に引っ掛けられることで、撮影ユニット20aに装着される。
【0026】
鏡モジュール20bが撮影ユニット20aに装着されている状態において、鏡部27の鏡面は、天井部に設置されている室内機42を撮影範囲R1に含めることができるように、鉛直上向きから傾けられている。この傾きの角度は、撮影装置20と室内機42との距離、及び、撮影部23と鏡部27との距離に基づいて、予め適切な値に設定される。
【0027】
より詳細には、鏡部27の角度は、撮影部23がなるべく多くの室内機42を撮影することができるように設置される。具体的には、鏡モジュール20bが撮影ユニット20aに装着された状態における天井部の撮影範囲R1が、鏡モジュール20bが撮影ユニット20aに装着されない状態における床部の撮影範囲R2よりも広くなるように、鏡部27の角度は調整される。
【0028】
回転駆動部24は、鏡モジュール20bが撮影ユニット20aに装着されている状態において、撮影部23と鏡モジュール20bとを回転させる。言い換えると、鏡モジュール20bは、撮影ユニット20aに装着されている場合、撮影部23の回転と同じ向きに同じ角速度で回転し、撮影部23の光軸の向きの変化に合わせて鏡部27の向きを変える。これにより、撮影部23は、天井部において撮影装置20の周囲に設置されている4つの室内機42を、鏡部27を介して撮影することができる。
【0029】
次に、図5に、鏡モジュール20bが撮影ユニット20aから取り外された場合における撮影装置20の状態を示す。鏡モジュール20bが撮影ユニット20aから取り外された場合、撮影部23は、図5において破線で示す撮影範囲R2を撮影する。具体的には、撮影部23の前方から鏡部27が無くなるため、撮影部23は、天井部から下方向を見下ろすように撮影することで、室内空間2内における人が存在する範囲を撮影する。一方で、撮影範囲R2には、室内機42が設置されている天井部は含まれない。
【0030】
図2に戻って、空調制御装置30は、複数の撮影装置20による室内空間2の撮影に基づいて、複数の空調機40による室内空間2の空調を制御する装置である。空調制御装置30は、一例として、室内空間2に存在するユーザにより操作され、各空調機40に様々な指令を送信するリモコンであって、室内空間2の側壁に設置されている。
【0031】
図6に示すように、空調制御装置30は、制御部31と、記憶部32と、操作受付部33と、表示部34と、通信部35と、を備える。これら各部は通信バスを介して接続されている。
【0032】
制御部31は、CPU、ROM及びRAMを備える。CPUは、中央処理装置、中央演算装置、プロセッサ、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSP等とも呼び、空調制御装置30の制御に係る処理及び演算を実行する中央演算処理部として機能する。制御部31において、CPUは、ROMに格納されているプログラム及びデータを読み出し、RAMをワークエリアとして用いて、空調制御装置30を統括制御する。
【0033】
記憶部32は、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM等の不揮発性の半導体メモリを備えており、いわゆる二次記憶装置又は補助記憶装置としての役割を担う。記憶部32は、制御部31が各種処理を行うために使用するプログラム及びデータを記憶する。また、記憶部32は、制御部31が各種処理を行うことにより生成又は取得するデータを記憶する。
【0034】
操作受付部33は、タッチパネル、スイッチ、押圧ボタン等の入力デバイスを備えており、ユーザから操作入力を受け付ける。具体的には、操作受付部33は、試運転の指示、空調運転の変更等の操作を受け付ける。
【0035】
表示部34は、LCD(Liquid Crystal Display)パネル、有機EL(Electro-Luminescence)等の表示デバイスを備える。表示部34は、図示しない表示駆動回路によって駆動され、制御部31による制御のもとで様々な画像を表示する。
【0036】
通信部35は、複数の撮影装置20及び複数の空調機40を含む外部の装置と通信するための通信インタフェースを備える。通信部35は、各撮影装置20及び各空調機40との間で有線又は無線により通信可能に接続されており、有線LAN、無線LAN等の周知の通信規格に則って通信する。
【0037】
図1に戻って、複数の空調機40のそれぞれは、空調対象の空間である室内空間2を空調する。各空調機40は、一例として、CO(二酸化炭素)、HFC(ハイドロフルオロカーボン)等を冷媒として用いたヒートポンプ式の空調設備である。
【0038】
室外機41と室内機42とは、図示を省略するが、冷媒が流れる冷媒回路を介して接続されている。室外機41は、冷媒を圧縮して冷凍回路を循環させる圧縮機と、冷媒回路を流れる冷媒の方向を切り換える四方弁と、冷媒回路を流れる冷媒と室外の空気との間で熱交換を行う室外熱交換器と、冷媒回路を流れる冷媒を減圧して膨張させる膨張弁と、室外の空気を室外熱交換器に送る室外ファンと、を備える。室内機42は、冷媒回路を流れる冷媒と室内空間2の空気との間で熱交換を行う室内熱交換器と、室内空間2の空気を室内熱交換器に送る室内ファンと、を備える。
【0039】
室外機41と室内機42とは、いずれもCPU、ROM、RAM、通信インタフェース及び読み書き可能な不揮発性の半導体メモリを備えており、空調制御装置30から送信される制御信号に応じて強調動作し、空調装置40全体を制御する。具体的に説明すると、室外機41は、圧縮機の駆動周波数、四方弁の切り換え、室外ファンの回転速度、及び、膨張弁の開度を制御する。また、室内機42は、室内ファンの回転速度を制御する。これにより、室内空間2が空調される。
【0040】
次に、図7を参照して、空調システム1の機能的な構成について説明する。
【0041】
図7に示すように、複数の撮影装置20のそれぞれは、機能的に、撮影制御部210と、送信部220と、を備える。これらの各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現される。ソフトウェア及びファームウェアは、プログラムとして記述され、ROM又は記憶部22に格納される。そして、CPUが、ROM又は記憶部22に記憶されたプログラムを実行することによって、これらの各機能を実現する。
【0042】
撮影制御部210は、撮影部23に室内空間2を撮影させることにより、室内空間2が撮影された撮影画像を取得する。具体的に説明すると、撮影制御部210は、回転駆動部24を駆動させて撮影部23を、図2において点線矢印で示した範囲で回転させながら、撮影部23に撮影させる。これにより、撮影制御部210は、自装置の周囲に設置されている4つの室内機42により空調される空間の撮影画像を取得する。
【0043】
撮影制御部210は、このような室内空間2の撮影を一定の周期で繰り返し実行することにより、室内空間2の時系列的な変化を捉える。撮影制御部210は、制御部21が撮影部23及び回転駆動部24と協働することにより実現される。撮影制御部210は、撮影制御手段として機能する。
【0044】
より詳細には、撮影制御部210は、(1)空調システム1の初期設定時と(2)空調システム1の運用時との2つの場面において、室内空間2を撮影する。空調システム1の初期設定時とは、空調システム1が室内空間2に設置されて最初に稼働する前において、空調システム1が室内空間2を適切に空調できるように設定される場面である。これに対して、空調システム1の運用時とは、初期設定がされた後において、空調システム1が通常に運用されて室内空間2が空調される場面である。
【0045】
(1)第1に、空調システム1の初期設定時について説明する。初期設定時において、空調システム1は、室内空間2における複数の室内機42の設置位置を特定する。そのために、撮影制御部210は、図3に示したように、鏡モジュール20bが撮影ユニット20aに装着された状態において、撮影部23に室内空間2を撮影させる。空調システム1の管理者、設置業者等の作業者は、初期設定の前に、鏡モジュール20bを撮影ユニット20aに装着する。
【0046】
各撮影装置20において、撮影制御部210は、鏡モジュール20bが撮影ユニット20aに装着されている状態において、回転駆動部24により撮影部23を回転させながら、撮影部23に室内空間2を撮影させる。これにより、撮影制御部210は、撮影部23に、鏡部27を介して室内空間2における室内機42を含む第1の領域を撮影させる。
【0047】
ここで、第1の領域は、鏡モジュール20bが撮影ユニット20aに装着されている状態で撮影部23により撮影可能な領域であって、具体的には、図3に示した撮影範囲R1が回転駆動部24により鉛直方向を軸として回転した場合に通る領域に相当する。第1の領域には、天井部において撮影装置20の周囲に設置されている4つの室内機42が含まれる。
【0048】
撮影制御部210は、撮影部23が回転により光軸の向きを変えながら撮影した複数の撮影画像を繋ぎ合わせて、パノラマ画像化を行う。これにより、撮影制御部210は、鏡を介して室内空間2の第1の領域が撮影された第1の撮影画像を取得する。
【0049】
図8に、初期設定時において撮影部23により撮影された第1の撮影画像51の例を示す。第1の撮影画像51は、鏡部27を介して赤外線により撮影された、天井部の熱分布を表す熱画像である。具体的には、第1の撮影画像51には、撮影装置20の周囲に設置されている4つの室内機42が撮影される。撮影制御部210は、このような第1の撮影画像51を一定の周期で取得し、内部メモリに保存する。
【0050】
より詳細には、運転中の室内機42は、冷風又は温風を吹き出しているため、その周囲の領域の温度がそれ以外の領域とは異なる。そのため、例えば第1の撮影画像51において4つの室内機42のうちの最も左側の室内機42が空調運転中である場合、その室内機42は、それ以外の空調運転中でない室内機42とは異なる温度で撮影される。
【0051】
図7に戻って、送信部220は、撮影制御部210により撮影された第1の撮影画像51を、通信部25を介して空調制御装置30に送信する。具体的に説明すると、送信部220は、空調制御装置30からの要求に応じて、内部メモリに保存されている第1の撮影画像51を空調制御装置30に送信する。送信部220は、制御部21が通信部25と協働することにより実現される。送信部220は、送信手段として機能する。
【0052】
空調制御装置30は、機能的に、空調制御部310と、撮影画像取得部320と、位置特定部340と、関連付け部350と、繰り返し部360と、認識部380と、を備える。これらの各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現される。ソフトウェア及びファームウェアは、プログラムとして記述され、ROM又は記憶部32に格納される。そして、CPUが、ROM又は記憶部32に記憶されたプログラムを実行することによって、これらの各機能を実現する。
【0053】
また、空調制御装置30は、設置位置データベースDB1と、室内状態データベースDB2と、を備える。これらは、記憶部32内の適宜の記憶領域に構築される。
【0054】
空調制御部310は、複数の空調機40を制御して、室内空間2を空調する。具体的に説明すると、空調制御部310は、通信部35を介して複数の空調機40のうちの少なくとも1つに試運転の制御信号を送信する。空調機40は、制御信号を受信すると、受信した制御信号に従って冷房、暖房等の運転モードと目標温度、風向き、風量等の空調パラメータとを決定し、室内空間2を空調する。空調制御部310は、制御部31が通信部35と協働することにより実現される。空調制御部310は、空調制御手段として機能する。
【0055】
より詳細には、空調システム1の初期設定時において、空調制御部310は、複数の室内機42のうちの、設置位置の特定対象となる室内機42を運転させる。具体的に説明すると、初期設定時には、鏡モジュール20bが撮影ユニット20aに装着された状態で、鏡部27を介して室内空間2における第1の領域が撮影される。その際に、空調制御部310は、室内空間2を空調する複数の室内機42のうちから特定対象の室内機42を1つ決定する。そして、空調制御部310は、決定した特定対象の室内機42に制御信号を送信し、予め定められた運転モードで空調の試運転を開始させる。
【0056】
ここで、試運転の運転モードは、冷房、暖房等に予め設定されている。また、試運転の設定温度も、20℃、30℃等の適宜の値に予め定められている。一方で、空調制御部310は、複数の室内機42のうちの特定対象以外の室内機42には制御信号を送信せず、停止状態のまま維持する。
【0057】
撮影画像取得部320は、複数の撮影装置20のそれぞれにおいて撮影された第1の撮影画像51を取得する。具体的に説明すると、撮影画像取得部320は、各撮影装置20に第1の撮影画像51の要求を送信する。各撮影装置20において、送信部220は、空調制御装置30から要求を受信すると、その応答として、撮影部23により鏡部27を介して撮影された第1の撮影画像51を空調制御装置30に送信する。
【0058】
より詳細には、撮影画像取得部320は、予め定められた周期で繰り返し各撮影装置20から第1の撮影画像51を取得し、取得した第1の撮影画像51を内部メモリに保存する。第1の撮影画像51を繰り返し取得することで、試運転中の室内機42による温度の変動を捉えることができる。
【0059】
このように、撮影画像取得部320は、通信部35を介して各撮影装置20と通信することにより、鏡部27を介して撮影された第1の撮影画像51を取得する。撮影画像取得部320は、制御部31が通信部35と協働することにより実現される。撮影画像取得部320は、撮影画像取得手段として機能する。
【0060】
位置特定部340は、撮影画像取得部320により取得された第1の撮影画像51に基づいて、複数の室内機42の設置されている設置位置を特定する。
【0061】
第1に、位置特定部340は、撮影画像取得部320により繰り返し取得された複数の第1の撮影画像51のうちから、室内機42の設置位置の特定に使用する画像を選定する。設置位置の特定対象となる室内機42が試運転を開始した後、その室内機42の付近の温度が変化するまでにはある程度の時間を必要とする。位置特定部340は、試運転による温度の変化が安定した後の画像を使用して室内機42の設置位置を特定する。
【0062】
具体的に説明すると、位置特定部340は、撮影画像取得部320により取得された複数の第1の撮影画像51における温度の変化を解析する。そして、位置特定部340は、単位時間当たりの温度の変化が基準値よりも小さくなったタイミングにおける第1の撮影画像51を、室内機42の設置位置の特定に使用する画像として選定する。
【0063】
第2に、位置特定部340は、選定された第1の撮影画像51を、第1の俯瞰画像61に変換する。図9に、第1の俯瞰画像61の例を示す。第1の俯瞰画像61は、撮影装置20を中心として、室内空間2を天井部から俯瞰した様子を表す画像である。第1の俯瞰画像61は、鏡を介して第1の領域を撮影することにより得られた第1の画像に相当する。
【0064】
第1の撮影画像51は、鏡部27を介して天井部が撮影された画像であるため、近くは大きく、遠くは小さく見えるという歪みが大きい。そのため、第1の撮影画像51からは、室内空間2における室内機42の設置位置を特定することが困難である。このような理由により、位置特定部340は、第1の撮影画像51を、室内空間2における位置の特定に適した形式の画像である第1の俯瞰画像61に変換する。
【0065】
第1の撮影画像51における画素位置と第1の俯瞰画像61における画素位置との対応関係は、撮影部23により鏡部27を介して撮影される第1の領域が一定である限り、一意に定められる。このような対応関係を定めた変換テーブルは、予め生成されて記憶部32に記憶される。位置特定部340は、記憶部32に記憶されている変換テーブルを参照して、第1の撮影画像51を第1の俯瞰画像61に変換する。
【0066】
第3に、位置特定部340は、第1の俯瞰画像61内における室内機42の設置位置を特定する。具体的に説明すると、位置特定部340は、赤外線により得られた熱画像である第1の俯瞰画像61を、周知の画像認識の手法を用いて解析する。そして、位置特定部340は、試運転中の室内機42から吹き出される空調空気の温度を検出することにより、設置位置の特定対象となる室内機42の設置位置を特定する。
【0067】
より詳細には、位置特定部340は、第1の俯瞰画像61内における、運転中の室内機42に設けられている空調空気の吹き出し口の位置を、室内機42の設置位置として特定する。図9に示すように、試運転中の室内機42の付近の温度は、空調空気が吹き出されているため、運転していない他の室内機42の付近の温度とは異なる。位置特定部340は、第1の俯瞰画像61において、周囲と比べて温度が閾値よりも大きく異なる箇所を抽出する。これにより、試運転中の室内機42の吹き出し口の位置を特定する。
【0068】
このように、位置特定部340は、鏡を介して第1の領域を撮影することにより得られた第1の俯瞰画像61内における、試運転中の室内機42の設置位置を特定する。位置特定部340は、制御部31が記憶部32と協働することにより実現される。位置特定部340は、位置特定手段として機能する。
【0069】
なお、特定対象の室内機42が複数の撮影装置20による撮影範囲に含まれる場合、位置特定部340は、特定対象の室内機42に最も近い撮影装置20の撮影により特定された設置位置を、特定対象の室内機42の設置位置として用いる。
【0070】
図7に戻って、関連付け部350は、位置特定部340により特定された設置位置を室内機42に関連付けて、設置位置データベースDB1に保存する。設置位置データベースDB1は、室内空間2を空調する複数の室内機42の設置位置を記憶するデータベースである。
【0071】
具体的には図10に示すように、設置位置データベースDB1は、複数の室内機42のそれぞれについて、室内機42の管理番号と設置位置とを関連付けて記憶する。関連付け部350は、位置特定部340により試運転中の室内機42の設置位置が特定されると、特定された設置位置を、空調制御部310により試運転の制御信号が送信された先の室内機42の管理番号と関連付けて、設置位置データベースDB1に保存する。
【0072】
より詳細には、関連付け部350は、第1の俯瞰画像61内における室内機42の設置位置を、第1の俯瞰画像61内に区分けされた小領域の単位で設置位置データベースDB1に保存する。具体的には図11に示すように、関連付け部350は、第1の俯瞰画像61内を複数の小領域に区分けする。図11の例では、第1の俯瞰画像61は、縦方向と横方向にそれぞれ16分割され、合計256個の小領域に区分けされる。
【0073】
関連付け部350は、このような256個の小領域のそれぞれに0から255の番号を付ける。関連付け部350は、位置特定部340により特定された室内機42の設置位置に該当する小領域の番号を、設置位置データベースDB1に設置位置として格納する。関連付け部350は、制御部31が記憶部32と協働することにより実現される。関連付け部350は、関連付け手段として機能する。
【0074】
図7に戻って、繰り返し部360は、特定対象の室内機42を変えて、上述した空調制御部310、撮影画像取得部320、位置特定部340、及び関連付け部350の処理を繰り返す。これにより、繰り返し部360は、第1の俯瞰画像61内における複数の室内機42の設置位置を特定し、特定した設置位置を複数の室内機42のそれぞれと関連付ける。
【0075】
具体的に説明すると、空調制御部310は、複数の室内機42のうちから、既に設置位置の特定対象として選択した室内機42とは異なる1つの室内機42を、新たな特定対象として選択する。そして、空調制御部310は、新たな特定対象の室内機42に対して制御信号を送信して、試運転を開始させる。
【0076】
新たな特定対象の室内機42に試運転を開始させると、撮影画像取得部320は、各撮影装置20から第1の撮影画像51を取得する。位置特定部340は、第1の撮影画像51を第1の俯瞰画像61に変換し、第1の俯瞰画像61内における新たな特定対象の室内機42の設置位置を特定する。関連付け部350は、特定された設置位置を、新たな特定対象の室内機42と関連付けて設置位置データベースDB1に保存する。
【0077】
このように、繰り返し部360は、複数の室内機42のそれぞれを順に設置位置の特定対象として選択し、上述した処理を繰り返す。これにより、繰り返し部360は、各室内機42の設置位置を特定し、各室内機42に関連付けて設置位置データベースDB1に保存する。繰り返し部360は、制御部31により実現される。繰り返し部360は、繰り返し手段として機能する。
【0078】
(2)第2に、空調システム1の運用時について説明する。鏡モジュール20bは、初期設定時には撮影ユニット20aに装着されていたが、運用時には、図5に示したように撮影ユニット20aから取り外される。作業者は、初期設定が終了した後、鏡モジュール20bを撮影ユニット20aから取り外す。これにより、各撮影装置20により室内空間2の床部の撮影が可能になる。
【0079】
各撮影装置20において、撮影制御部210は、鏡モジュール20bが撮影ユニット20aから取り外された状態で、回転駆動部24により撮影部23を回転させながら、撮影部23に室内空間2を撮影させる。これにより、撮影制御部210は、撮影部23に、鏡部27を介さずに室内空間2における室内機42を含まない第2の領域を撮影させる。
【0080】
ここで、第2の領域は、鏡モジュール20bが撮影ユニット20aから取り外された状態で撮影部23により撮影可能な範囲であって、具体的には、図5に示した撮影範囲R2が回転駆動部24により鉛直方向を軸として回転した場合に通る領域に相当する。第2の領域には、天井部に設置されている室内機42が含まれず、室内空間2に存在する人及び物が含まれる。
【0081】
上述したように、天井部の撮影範囲R1は床部の撮影範囲R2よりも広くなるように鏡部27の傾きの角度が設定されているため、鏡を介して撮影される第1の領域は、鏡を介さずに撮影される第2の領域よりも広い範囲の領域となる。このように第1の領域を第2の領域よりも広くすることにより、第2の領域に対して多くの室内機42の設置位置を特定することができるため、第2の領域における空調を制御する際に、多くの室内機42を連携して制御することが可能になる。更には、複数の撮影装置20により撮影される第1の領域が一部で重なるように第1の領域を広くすることにより、複数の撮影装置20により得られた設置位置の特定結果を統合することができる。
【0082】
撮影制御部210は、撮影部23が回転により光軸の向きを変えながら撮影した複数の撮影画像を繋ぎ合わせて、パノラマ画像化を行う。これにより、撮影制御部210は、鏡を介さずに室内空間2の第2の領域が撮影された第2の撮影画像を取得する。
【0083】
図12に、運用時において撮影制御部210により取得された第2の撮影画像52の例を示す。第2の撮影画像52は、鏡部27を介さずに赤外線により撮影された、室内空間2の熱分布を表す熱画像である。一例として、第2の撮影画像52には、室内空間2に存在する人P1,P2が撮影されている。
【0084】
このように、各撮影装置20の撮影制御部210は、室内空間2を撮影部23に回転させながら撮影させることで、室内空間2に人又は物が存在する場合に、その人又は物が撮影された第2の撮影画像52を取得する。撮影制御部210は、このような第2の撮影画像52を一定の周期で取得し、内部メモリに保存する。
【0085】
送信部220は、撮影制御部210により取得された第2の撮影画像52を、通信部25を介して空調制御装置30に送信する。具体的に説明すると、送信部220は、空調制御装置30からの要求に応じて、内部メモリに保存されている第2の撮影画像52を空調制御装置30に送信する。
【0086】
空調制御装置30において、撮影画像取得部320は、複数の撮影装置20のそれぞれにおいて撮影された第2の撮影画像52を取得する。具体的に説明すると、撮影画像取得部320は、各撮影装置20に第2の撮影画像52の要求を送信する。各撮影装置20において、送信部220は、空調制御装置30から要求を受信すると、その応答として、撮影部23により鏡部27を介さずに撮影された第2の撮影画像52を空調制御装置30に送信する。
【0087】
より詳細には、撮影画像取得部320は、予め定められた周期で繰り返し各撮影装置20から第2の撮影画像52を取得し、取得した第2の撮影画像52を内部メモリに保存する。第2の撮影画像52を繰り返し取得することで、室内空間2に存在する人の動きを捉えることができる。
【0088】
なお、第2の撮影画像52を取得する周期は、一定でも良いし、変動するものであっても良い。例えば、室内空間2における人の動きが大きい場合には、その動きを的確に捉えるために、撮影画像取得部320は、短い周期で第2の撮影画像52を取得しても良い。
【0089】
認識部380は、撮影画像取得部320により取得された第2の撮影画像52のうちから、空調の目標となる人又は物を認識する。ここで、人は、具体的には、室内空間2の居住者、利用者等である。また、物は、室内空間2の空調に影響する熱源となる物であって、例えばコンピュータ、電気機器、熱源機、窓等である。
【0090】
第1に、認識部380は、第1の俯瞰画像61との間で位置を直接的に比較することができるように、撮影画像取得部320により取得された第2の撮影画像52を、第2の俯瞰画像62に変換する。図13に、第2の俯瞰画像62の例を示す。第2の俯瞰画像62は、撮影装置20を中心として、室内空間2を天井部から俯瞰した様子を表す画像であって、第1の俯瞰画像61と同じく図11に示した256個の小領域に区分けされる画像である。第2の俯瞰画像62は、鏡を介さずに室内空間2における室内機42を含まない第2の領域を撮影することにより得られた第2の画像に相当する。
【0091】
第2の撮影画像52における画素位置と第2の俯瞰画像62における画素位置との対応関係は、撮影部23により撮影される第2の領域が一定である限り、一意に定められる。このような対応関係を定めた変換テーブルは、予め生成されて記憶部32に記憶される。認識部380は、記憶部32に記憶されている変換テーブルを参照して、第2の撮影画像52を第2の俯瞰画像62に変換する。
【0092】
第2に、認識部380は、第2の俯瞰画像62のうちから、空調の目標となる人又は物を認識する。具体的に説明すると、認識部380は、第2の俯瞰画像62を周知の画像認識の手法を用いて解析し、第2の俯瞰画像62の中に、人又は物の特徴を満たすエリアが含まれるか否かを判定する。例えば、認識部380は、温度が特定の閾値よりも高く、且つ、面積が予め定められた範囲に収まるエリアに、人又は物が存在していると判定する。
【0093】
認識部380は、例えば図13に示した第2の俯瞰画像62のうちから、室内空間2に存在する人P1,P2を認識する。このように第2の俯瞰画像62のうちから人又は物を認識すると、認識部380は、その人又は物の位置、数及び温度を特定する。そして、認識部380は、特定した人又は物の位置、数及び温度を、室内状態データベースDB2に保存する。
【0094】
室内状態データベースDB2は、室内空間2の状態を記憶するデータベースである。具体的には図14に示すように、室内状態データベースDB2は、認識部380により認識された人又は物のそれぞれについて、第2の俯瞰画像62内における位置と温度とを記憶する。ここで、認識部380により認識された人又は物の位置は、設置位置データベースDB1と同様に、256個に区分けされた小領域の単位で室内状態データベースDB2に保存される。認識部380は、制御部31が記憶部32と協働することにより実現される。認識部380は、認識手段として機能する。
【0095】
図7に戻って、空調制御部310は、設置位置データベースDB1に記憶されている室内機42の設置位置と、室内状態データベースDB2に記憶されている室内空間2における人又は物の状態と、を参照して、室内空間2における空調を制御する。具体的には、空調制御部310は、第2の俯瞰画像62内における、各室内機42の設置位置に対応する対応領域の状態に応じて、各室内機42に制御信号を出力する。
【0096】
ここで、室内機42の設置位置に対応する対応領域とは、第1の俯瞰画像61内において特定された設置位置に対応する、第2の俯瞰画像62内における領域である。具体的には、室内機42の設置位置に対応する対応領域は、その室内機42により空調される領域に相当する。また、対応領域の状態とは、その対応領域における空調の目標となる人又は物の有無と、人又は物が存在する場合にその数及び温度と、である。空調制御部310は、室内状態データベースDB2を参照して、対応領域の状態を判定する。
【0097】
空調制御部310は、認識部380により第2の俯瞰画像62内における室内機42の対応領域に人又は物が認識された場合、認識された人又は物の数及び温度に応じて、その室内機42に空調させる。具体的に説明すると、空調制御部310は、認識された人又は物の数がより多いほど、空調に大きな熱負荷を要するため、空調の強度をより強く設定する。また、空調制御部310は、認識された人又は物の温度と空調の目標温度との差がより大きいほど、空調の強度をより強く設定する。ここで、空調の強度をより強く設定するとは、例えば、冷房の目標温度をより下げること、風量をより大きくすること等である。
【0098】
また、空調制御部310は、操作受付部33を介してユーザから空調操作が受け付けられた場合、受け付けられた空調操作に基づいて、複数の室内機42による室内空間2の空調を制御する。
【0099】
一例として、室内空間2を空調する複数の室内機42の全てに対して運転をONにする空調操作がユーザから受け付けられた場合について説明する。空調制御部310は、室内状態データベースDB2から室内空間2に存在する人又は物の位置を読み出す。更に、空調制御部310は、設置位置データベースDB1から複数の室内機42の設置位置を読み出して、複数の室内機42のうちの、人又は物の位置に最も近い位置に設置されている室内機42を特定する。そして、空調制御部310は、人又は物の位置に最も近い位置に設置されている室内機42に対して空調をONにし、それ以外の室内機42に対して空調をOFFにするように、各室内機42に制御信号を送信する。
【0100】
このように、空調制御部310は、複数の室内機42のうちの、室内空間2に存在する人又は物の位置を空調可能な室内機42に、人又は物の状態に応じた内容で空調させる。そのため、室内空間2を適切に空調することができる。
【0101】
以下、空調制御装置30において実行される処理の流れについて、図15及び図16に示すフローチャートを参照して、説明する。
【0102】
第1に、図15を参照して、空調制御装置30により実行される初期設定処理の流れを説明する。図15に示す初期設定処理は、鏡モジュール20bが撮影ユニット20aに装着された状態において、作業者からの指示により開始される。
【0103】
初期設定処理を開始すると、空調制御装置30において、制御部31は、空調の試運転の指示を受け付ける(ステップS11)。作業者は、初期設定処理を開始する場合、鏡モジュール20bが撮影ユニット20aに装着し、操作受付部33を介して空調の試運転の指示を入力する。
【0104】
試運転の指示を受け付けると、制御部31は、試運転の内容を決定する(ステップS12)。第1に、制御部31は、設置位置データベースDB1を参照して、複数の室内機42のうちから、設置位置データベースDB1において設置位置が未だに記憶されていない室内機42を、特定対象の室内機42と決定する。試運転を開始した段階では、設置位置データベースDB1にはいずれの室内機42の設置位置も保存されていない。そのため、制御部31は、例えば管理番号が最も小さい室内機42を特定対象として決定する。第2に、制御部31は、試運転の運転モード及び設定温度を、予め定められた試運転の運転モード及び設定温度に決定する。
【0105】
試運転の内容を決定すると、制御部31は、決定した内容で試運転を実行する(ステップS13)。具体的に説明すると、制御部31は、複数の室内機42のうちの特定対象の室内機42に、決定した運転モード及び設定温度で空調させる。
【0106】
試運転を実行すると、制御部31は、各撮影装置20から第1の撮影画像51を取得する(ステップS14)。具体的に説明すると、制御部31は、各撮影装置20に要求を送信し、鏡部27を介して室内機42が撮影された第1の撮影画像51を、一定周期で繰り返し取得する。
【0107】
第1の撮影画像51を取得すると、制御部31は、取得した第1の撮影画像51のうちから、室内機42の設置位置を特定するために使用する画像を選定する(ステップS15)。具体的に説明すると、制御部31は、繰り返し取得した複数の第1の撮影画像51における温度を解析し、温度の変化が基準値よりも小さくなったタイミングにおける第1の撮影画像51を選定する。
【0108】
第1の撮影画像51を選定すると、制御部31は、選定した第1の撮影画像51を、例えば図9に示した第1の俯瞰画像61に変換する(ステップS16)。
【0109】
第1の撮影画像51を第1の俯瞰画像61に変換すると、制御部31は、第1の俯瞰画像61における試運転中の室内機42の設置位置を特定する(ステップS17)。具体的に説明すると、制御部31は、試運転中の室内機42から吹き出される空調空気により温度が局所的に変化している位置を、試運転中の室内機42の設置位置として特定する。
【0110】
試運転中の室内機42の設置位置を特定すると、制御部31は、設置位置データベースDB1を更新する(ステップS18)。具体的に説明すると、制御部31は、特定した試運転中の室内機42の設置位置を、その室内機42に関連付けて、設置位置データベースDB1に保存する。このとき、制御部31は、図11に示した256個の小領域の単位で、室内機42の設置位置を設置位置データベースDB1に保存する。
【0111】
設置位置データベースDB1を更新すると、制御部31は、全ての室内機42の設置位置を特定したか否かを判定する(ステップS19)。全ての室内機42の設置位置を特定していない場合(ステップS19;NO)、制御部31は、処理をステップS12に戻す。具体的に説明すると、制御部31は、ステップS12において、未だ設置位置を特定していない室内機42を特定対象の室内機42として新たに決定する。そして、制御部31は、新たに決定した特定対象の室内機42に対してステップS12~S18と同様の処理を実行し、その設置位置を特定して設置位置データベースDB1に保存する。
【0112】
最終的に、全ての室内機42の設置位置を特定し終えると(ステップS19;YES)、制御部31は、図15に示した初期設定処理を終了する。
【0113】
第2に、図16を参照して、空調制御装置30により実行される運用処理の流れを説明する。初期設定処理が終了した後、作業者は、鏡モジュール20bを撮影ユニット20aから取り外す。このように鏡モジュール20bが撮影ユニット20aから取り外された状態で、図16に示す運用処理は実行される。
【0114】
運用処理を開始すると、空調制御装置30において、制御部31は、各撮影装置20から第2の撮影画像52を取得する(ステップS21)。具体的に説明すると、制御部31は、各撮影装置20に要求を送信し、鏡部27を介さずに室内空間2が撮影された第2の撮影画像52を、一定周期で繰り返し取得する。
【0115】
第2の撮影画像52を取得すると、制御部31は、取得した第2の撮影画像52を、例えば図13に示した第2の俯瞰画像62に変換する(ステップS22)。
【0116】
第2の撮影画像52を第2の俯瞰画像62に変換すると、制御部31は、第2の俯瞰画像62のうちから人又は物を認識する(ステップS23)。具体的に説明すると、制御部31は、第2の俯瞰画像62の中に、空調の目標となる人又は物が存在しているか否かを判定する。そして、制御部31は、人又は物が存在している場合に、その位置、数、及び温度を特定する。
【0117】
人又は物を認識すると、制御部31は、室内状態データベースDB2を更新する(ステップS24)。具体的に説明すると、制御部31は、認識された人又は物のそれぞれの位置と温度とを室内状態データベースDB2に保存する。
【0118】
室内状態データベースDB2を更新すると、制御部31は、操作受付部33を介してユーザから空調操作を受け付けたか否かを判定する(ステップS25)。空調操作を受け付けていない場合(ステップS25;NO)、制御部31は、処理をステップS21に戻す。言い換えると、制御部31は、空調操作を受け付けていない間、第2の撮影画像52から人又は物を認識し、その結果に基づいて室内状態データベースDB2を更新する処理を繰り返す。
【0119】
これに対して、空調操作を受け付けた場合(ステップS25;YES)、制御部31は、空調の制御内容を決定する(ステップS26)。具体的に説明すると、制御部31は、操作受付部33を介してユーザから受け付けられた空調操作と、設置位置データベースDB1及び室内状態データベースDB2に記憶されているデータと、に基づいて、空調の制御内容を決定する。
【0120】
制御内容を決定すると、制御部31は、決定した制御内容に従って制御信号を送信し、制御対象の室内機42に室内空間2を空調させる(ステップS27)。各室内機42は、空調制御装置30から制御信号を受信すると、受信した制御信号に従って冷房、暖房等の運転モードと目標温度、風向き、風量等の空調パラメータとを決定し、室内空間2を空調する。
【0121】
制御信号を送信すると、制御部31は、処理をステップS21に戻し、ステップS21~S27の処理を繰り返す。これにより、制御部31は、空調システム1が正常に動作可能な状態にある間、室内空間2が撮影された第2の撮影画像52に基づいて室内空間2を空調する処理を繰り返し実行する。
【0122】
以上説明したように、実施の形態1に係る空調システム1は、鏡を介して撮影された第1の撮影画像51に基づいて、室内空間2における複数の室内機42の設置位置を特定する。そして、実施の形態1に係る空調システム1は、鏡を介さずに撮影された第2の撮影画像52に基づいて室内空間2における人又は物を認識し、認識結果と室内機42の設置位置とに応じて、室内機42による空調を制御する。これにより、室内機42とは別体として撮影装置20が設けられている空調システム1において、撮影装置20に対する室内機42の相対的な設置位置を、少ない作業量で精度良く特定することができる。その結果として、室内空間2の空調を的確に制御することにつながる。
【0123】
室内機42の設置位置を手動で測定及び設定することも考えられるが、特に室内機42の台数が多い場合、室内機42の正確な設置位置を測定してその情報を室内機42に関連付けるためには、多くの作業量を必要とする。これに対して、実施の形態1に係る空調システム1は、撮影ユニット20aに鏡モジュール20bを取り付けるという簡単な方法で室内機42の設置位置を正確に特定することができるため、少ない作業量で撮影装置20に対する室内機42の相対的な位置関係を取得することができる。特に、鏡モジュール20bは安価であり、且つ、使用後に取り外して再利用することが可能であることから、低コストで実現することができる。
【0124】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態1と同様の構成及び機能については適宜説明を省略する。
【0125】
上記実施の形態1に係る空調制御装置30は、室内空間2における室内機42の設置位置を特定した。これに対して、実施の形態2に係る空調制御装置30は、設置位置に加えて、室内空間2における室内機42の設置角度を更に特定する。
【0126】
図17に、実施の形態2において室内空間2を空調する複数の室内機42のそれぞれに設けられている吹き出し口43a~43dの配置例を示す。図17に示すように、各室内機42は、室内空間2に空調空気を吹き出す複数の吹き出し口43a~43dを有する。具体的には、各室内機42は、室内空間2側から見て四角形状に配置されている4つの吹き出し口43a~43dを有する。
【0127】
空調制御部310は、空調システム1の初期設定時において、複数の室内機42のうちの設置位置の特定対象の室内機42に試運転を実行させる。その際、空調制御部310は、第1の撮影画像51から室内機42の設置角度が判別できるように、特定対象の室内機42に、複数の吹き出し口43a~43dのうちの一部の吹き出し口から空調空気を吹き出させる。
【0128】
具体的に説明すると、空調制御部310は、特定対象の室内機42に、4つの吹き出し口43a~43dのうちの隣り合う2辺に配置されている吹き出し口43a,43bを開かせて、空調空気を吹き出させる。一方で、空調制御部310は、特定対象の室内機42に残りの2辺の吹き出し口43c,43dを閉じさせて、空調空気を吹き出させない状態にする。
【0129】
このように4つの吹き出し口43a~43dのうちの2つの吹き出し口43a,43bから空調空気を吹き出している状態で、各撮影装置20は、鏡部27を介して室内空間2における第1の領域を撮影する。
【0130】
撮影画像取得部320は、複数の撮影装置20のそれぞれにおいて撮影された第1の撮影画像51を取得する。撮影画像取得部320により第1の撮影画像51が取得されると、位置特定部340は、取得された第1の撮影画像51を第1の俯瞰画像61に変換する。そして、位置特定部340は、第1の俯瞰画像61内における室内機42の設置位置に加えて、室内機42の設置角度を更に特定する。
【0131】
図18に、2つの吹き出し口43a,43bから空調空気を吹き出している状態の室内機42を撮影することにより得られた第1の俯瞰画像61における、室内機42が撮影された部分を拡大した様子を示す。図18に示すように、2つの吹き出し口43a,43bから空調空気を吹き出している状態の室内機42が撮影された場合、第1の俯瞰画像61における2つの吹き出し口43a,43bの領域の温度が、それ以外の領域とは異なる。そのため、第1の俯瞰画像61のうちから、隣り合う2つの吹き出し口43a,43bにより形成されるL字状の領域を検出することが可能になる。
【0132】
位置特定部340は、このような第1の俯瞰画像61に基づいて、室内機42の設置位置と設置角度とを特定する。第1に、位置特定部340は、室内機42の設置位置として、第1の俯瞰画像61内における空調空気を吹き出している吹き出し口43a,43bの位置を特定する。その際、位置特定部340は、実施の形態1と同様に、室内機42の設置位置を、図11に示した小領域の単位で特定する。
【0133】
第2に、位置特定部340は、第1の俯瞰画像61内における空調空気を吹き出している2つの吹き出し口43a,43bを特定することにより、室内機42の設置角度を特定する。具体的に説明すると、位置特定部340は、第1の俯瞰画像61内における空調空気を吹き出している2つの吹き出し口43a,43bにより形成されるL字状の領域の向きを検出する。そして、位置特定部340は、検出したL字状の領域の向きと、吹き出し口43a,43bの識別情報とから、室内機42の設置角度を特定する。
【0134】
ここで、室内機42の設置角度は、室内空間2の天井部において室内機42がどの向きに設置されているかを表す値である。一例として、室内機42の設置角度は、撮影装置20の基準方向を0°として、天井面から床面を見て反時計回りに計測した角度で表す。具体的に図18において、位置特定部340は、破線で示す基準方向に対する、2つの吹き出し口43a,43bの中央部の方向までの角度である45°を、室内機42の設置角度として特定する。
【0135】
関連付け部350は、位置特定部340により特定された設置位置と設置角度とを室内機42に関連付けて、設置位置データベースDB1に保存する。実施の形態2において、設置位置データベースDB1は、室内空間2を空調する複数の室内機42の設置位置と設置角度とを記憶する。具体的には図19に示すように、設置位置データベースDB1は、複数の室内機42のそれぞれについて、室内機42の管理番号と設置位置と設置角度とを関連付けて保存する。
【0136】
空調システム1の運用時において、空調制御部310は、実施の形態1と同様に、位置特定部340により特定された室内機42の設置位置に対応する対応領域の状態に応じて、室内機42を制御する。これに加えて、実施の形態2では、空調制御部310は、設置位置データベースDB1に記憶されている設置角度を参照して、室内機42の設置角度に応じて室内機42を制御する。
【0137】
具体的に説明すると、空調制御部310は、認識部380により室内空間2に人又は物が認識された場合、認識された人又は物の位置に向けて風を当てるように室内機42に制御信号を送信する。これにより、在室者が気流感を感じられるようになる。或いは、これとは逆に、空調制御部310は、認識された人又は物の位置に風を当てないように室内機42に制御信号を送信しても良い。
【0138】
このように、実施の形態2では、空調制御部310は、室内機42の設置位置に加えて設置角度に基づいて、室内機42から特定の方向に空調空気を吹き出すように制御する。これにより、室内機42の設置位置のみに応じて空調を制御する場合に比べて、室内空間2を的確に空調することができる。
【0139】
(変形例)
以上、実施の形態を説明したが、各実施の形態を組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【0140】
例えば、上記実施の形態では、位置特定部340は、鏡を介して撮影された第1の撮影画像51を第1の俯瞰画像61に変換してから、第1の俯瞰画像61内における室内機42の設置位置を特定した。しかしながら、位置特定部340は、第1の撮影画像51をそのまま用いて、第1の撮影画像51内における室内機42の設置位置を特定しても良い。そして、位置特定部340は、特定した第1の撮影画像51内における設置位置を、予め定められた変換テーブルに従って、第1の俯瞰画像61における位置に変換しても良い。この場合、第1の撮影画像51が第1の画像に相当する。
【0141】
同様に、上記実施の形態では、認識部380は、鏡を介さずに撮影された第2の撮影画像52を第2の俯瞰画像62に変換してから、第2の俯瞰画像62における人又は物を認識した。しかしながら、認識部380は、第2の撮影画像52のうちから人又は物を認識し、認識した人又は物の位置を第2の俯瞰画像62内における位置に変換しても良い。この場合、第2の撮影画像52が第2の画像に相当する。このように、設置位置の特定処理と変換処理との順序、及び、人又は物の認識処理と変換処理との順序は、どちらが先であっても良い。
【0142】
上記実施の形態では、撮影装置20と空調制御装置30とは別の独立した装置であった。しかしながら、撮影装置20が空調制御装置30の機能の一部又は全部を備えていても良い。例えば、撮影装置20が、位置特定部340又は認識部380の機能を備えていても良い。撮影装置20が位置特定部340の機能を備える場合、撮影装置20は、第1の撮影画像51に基づいて室内機42の設置位置を特定し、特定した設置位置を示す送信情報を空調制御装置30に送信する。また、撮影装置20が認識部380の機能を備える場合、撮影装置20は、第2の撮影画像52に基づいて人又は物を認識し、認識結果を示す送信情報を空調制御装置30に送信する。このように、空調制御システム10における各機能を撮影装置20と空調制御装置30とのどちらが備えていても良い。
【0143】
上記実施の形態2では、室内機42は、四角形状に配置された4つの吹き出し口43a~43dを備えていた。そして、室内機42は、その設置角度を特定できるようにするため、4つの吹き出し口43a~43dのうちの2つを開放した。しかしながら、室内機42に設けられる吹き出し口の数は4つに限らない。例えば、室内機42は2つの吹き出し口を備えており、設置角度を特定できるようにするために、2つの吹き出し口のうちの1つを開放しても良い。
【0144】
上記実施の形態では、位置特定部340は、特定対象の室内機42が複数の撮影装置20による撮影範囲に含まれる場合、特定対象の室内機42に最も近い撮影装置20の撮影により特定された設置位置を、特定対象の室内機42の設置位置として用いた。しかしながら、位置特定部340は、複数の撮影装置20の撮影により特定された設置位置の平均値又は代表値を、特定対象の室内機42の設置位置として用いても良い。或いは、複数の撮影装置20の撮影により特定された室内機42の設置位置は、それぞれ別々に設置位置データベースDB1に保存され、空調制御に活用されても良いし、複数の撮影装置20間における位置関係を特定するために用いられても良い。
【0145】
上記実施の形態では、室内空間2内に複数の撮影装置20が設置されていた。しかしながら、空調システム1に備えられる撮影装置20の数は、1つであっても良い。また、撮影装置20は、室内空間2内における必要な範囲の熱分布を取得することができるものであれば、撮影部23を回転駆動させることができなくても良い。
【0146】
上記実施の形態では、撮影装置20は、赤外線で室内空間2を撮影することにより、室内空間2の熱画像を取得した。しかしながら、撮影装置20は、赤外線に限らず、例えば可視光で室内空間2を撮影することにより、可視画像を取得しても良い。そして、位置特定部340は可視画像内から特定対象を特定しても良いし、認識部380は可視画像内から人又は物を認識しても良い。可視画像を用いることで、特定対象は可視画像で特定可能なものであれば良いため、特定又は認識がより容易且つ高精度になる。
【0147】
上記実施の形態では、室内空間2内に複数の室内機42が設置されていた。しかしながら、室内空間2内に1つのみの室内機42が設置されていても良い。すなわち、空調システム1が備える室内機42の個数は1つであっても良い。また、空調機40は、1つの室外機41に対して複数の室内機42が接続された、いわゆるマルチエアコンであっても良い。
【0148】
上記実施の形態では、制御部21,31において、CPUがROM又は記憶部22,32に記憶されたプログラムを実行することによって、図7に示した各部として機能した。しかしながら、制御部21,31は、専用のハードウェアであってもよい。専用のハードウェアとは、例えば単一回路、複合回路、プログラム化されたプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又は、これらの組み合わせ等である。制御部21,31が専用のハードウェアである場合、各部の機能それぞれを個別のハードウェアで実現してもよいし、各部の機能をまとめて単一のハードウェアで実現してもよい。
【0149】
また、各部の機能のうち、一部を専用のハードウェアによって実現し、他の一部をソフトウェア又はファームウェアによって実現してもよい。このように、制御部21,31は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又は、これらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
【0150】
本開示に係る撮影装置20又は空調制御装置30の動作を規定する動作プログラムを既存のパーソナルコンピュータ又は情報端末装置等のコンピュータに適用することで、当該コンピュータを、撮影装置20又は空調制御装置30として機能させることも可能である。
【0151】
また、このようなプログラムの配布方法は任意であり、例えば、CD-ROM(Compact Disk ROM)、DVD(Digital Versatile Disk)、MO(Magneto Optical Disk)、又は、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布してもよいし、インターネット等の通信ネットワークを介して配布してもよい。
【0152】
本開示は、本開示の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この開示を説明するためのものであり、本開示の範囲を限定するものではない。すなわち、本開示の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして特許請求の範囲内及びそれと同等の開示の意義の範囲内で施される様々な変形が、この開示の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0153】
1 空調システム、2 室内空間、10 空調制御システム、20 撮影装置、20a 撮影ユニット、20b 鏡モジュール、21 制御部、22 記憶部、23 撮影部、24 回転駆動部、25 通信部、27 鏡部、28 装着部、30 空調制御装置、31 制御部、32 記憶部、33 操作受付部、34 表示部、35 通信部、40 空調機、41 室外機、42 室内機、43a,43b,43c,43d 吹き出し口、51,52 撮影画像、61,62 俯瞰画像、210 撮影制御部、220 送信部、310 空調制御部、320 撮影画像取得部、340 位置特定部、350 関連付け部、360 繰り返し部、380 認識部、DB1 設置位置データベース、DB2 室内状態データベース、P1,P2 人、R1,R2 撮影範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10
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