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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】芝刈機
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/73 20060101AFI20231127BHJP
   A01D 34/68 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
A01D34/73 101
A01D34/68 K
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020051732
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021145648
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】栗原 麻衣
(72)【発明者】
【氏名】鶴岡 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】南 文雄
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 広貴
(72)【発明者】
【氏名】高嶋 志歩
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-188337(JP,A)
【文献】特開2015-188335(JP,A)
【文献】特開2020-188712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/73
A01D 34/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方が開放されたハウジングと、前記ハウジングの内部において上下方向に向けて支持された回転軸と、前記回転軸を回転中心として回転可能に前記ハウジングの内部に収納され前記回転軸から径方向の両方へ延びたカッタブレードと、を備えた芝刈機において、
前記カッタブレードは、
該カッタブレードの長手方向の両端部において、カッタブレードの回転方向の反対側である後側の後側端部から前記後側かつ上方へ向けて張り出された翼部を有し、
前記翼部は、該翼部のうち前記径方向の外側に位置する翼外側端部において、前記径方向外側に向かうに従い上面から下面へ向けて傾斜するとともに該翼外側端部の厚みが減少するように断面が先細り状に面取りされた翼面取り部を有することを特徴とする芝刈機。
【請求項2】
前記カッタブレードは、
該カッタブレードの前記両端部において、前記回転方向側である前側の前側端部における前記径方向の外端から前記翼外側端部まで前記後側へ延び、前記翼外側端部に連続するブレード外側端部を有し、
前記ブレード外側端部と前記前側端部とが交差して角部を形成していることを特徴とする請求項1に記載の芝刈機。
【請求項3】
前記カッタブレードは、
前記ブレード外側端部が、前記径方向外側に向かうに従い前記上面から前記下面へ向けて傾斜するとともに該ブレード外側端部の厚みが減少するように断面が先細り状に面取りされたブレード面取り部を有することを特徴とする請求項2に記載の芝刈機。
【請求項4】
前記回転軸には、前記カッタブレードと、前記カッタブレードよりも上方に、上側のカッタブレードと、が備えられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の芝刈機。
【請求項5】
前記上側のカッタブレードは、該上側のカッタブレードの長手方向の両端部において、前記径方向の外側に位置する外側端部が前記径方向外側に向かうに従い下面から上面へ向けて傾斜するとともに該外側端部の厚みが減少するように断面が先細り状に面取りされたブレード外面取り部を有することを特徴とする請求項4に記載の芝刈機。
【請求項6】
前記上側のカッタブレードは、
前記回転方向の反対側である後側に位置する他の後側端部が前記後側に向うに従い前記下面から前記上面へ向けて傾斜するとともに該他の後側端部の厚みが減少するように断面が先細り状に面取りされたブレード後面取り部を有することを特徴とする請求項5に記載の芝刈機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芝刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
芝刈機は、下方が開放されているハウジング内に収納されたカッタブレードを、芝草に沿って回転させることにより、芝草を刈るものである。カッタブレードのなかには、回転軸に対し両方向へ径方向に延び、長手方向の両端部において前縁に左右の刃が形成され、前縁から後上方へ向けて左右のエアリフト部(以下、翼部という)が湾曲状に延びたものがある(例えば特許文献1参照)。
カッタブレードの左右の翼部により空気の旋回流や上昇気流が発生することにより、ハウジングの内部において芝草を細かく裁断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6151659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の芝刈機は、カッタブレードが回転することにより騒音が発生し、この観点から改良の余地が残されている。特に、芝刈機の使用場所によっては騒音抑制が重視されることが考えられる。
【0005】
本発明は、カッタブレードの回転により発生する騒音を低減できる芝刈機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の芝刈機は、以下の構成を採用した。
(1)下方が開放されたハウジング(例えば、実施形態のハウジング11)と、前記ハウジングの内部において上下方向に向けて支持された回転軸(例えば、実施形態の回転軸16a)と、前記回転軸を回転中心として回転可能に前記ハウジングの内部に収納され前記回転軸から径方向の両方へ延びたカッタブレード(例えば、実施形態の下部カッタブレード15)と、を備えた芝刈機(例えば、実施形態の芝刈機10)において、前記カッタブレードは、該カッタブレードの長手方向の両端部(例えば、実施形態の長手方向の両端部45)において、カッタブレードの回転方向の反対側である後側の後側端部(例えば、実施形態の第2後側端部47)から前記後側かつ上方へ向けて張り出された翼部(例えば、実施形態の翼部42)を有し、前記翼部は、該翼部のうち前記径方向の外側に位置する翼外側端部(例えば、実施形態の翼外側端部53)において、前記径方向外側に向かうに従い上面(例えば、実施形態の上面15a)から下面(例えば、実施形態の下面15b)へ向けて傾斜するとともに該翼外側端部の厚みが減少するように断面が先細り状に面取りされた翼面取り部(例えば、実施形態の翼面取り部51)を有している。
【0007】
この構成によれば、カッタブレードの長手方向の両端部から翼部が回転方向の反対側で、かつ上方へ向けて翼部が張り出されている。また、この翼部の翼外側端部に翼面取り部を有する。よって、カッタブレードが回転した状態において、翼部に沿って上方へ案内する空気を翼面取り部で外方へ円滑に流すことができる。これにより、空気の流れの乱れを少なく抑えることができ、カッタブレードの回転により発生する風切り音等の騒音を低減できる。
【0008】
ところで、例えば、カッタブレードで刈った芝草がハウジングの内部において、旋回流及び上昇気流により案内され、芝草がカッタブレードで細かく裁断される。ここで、翼外側端部の翼面取り部は先縁が薄く形成されている。これにより、ハウジングの内部の芝草を翼面取り部で一層細かく裁断できる。
また、ハウジングと翼外側端部との間に入り込んだ芝草を、翼面取り部で細かく裁断することにより、芝草がハウジングと翼外側端部との間でつまることを防止できる。
【0009】
(2)前記カッタブレードは、該カッタブレードの前記長手方向の両端部において、前記回転方向側である前側の前側端部(例えば、実施形態の第2前側端部46)における前記径方向の外端から前記翼外側端部まで前記後側へ延び、前記翼外側端部に連続するブレード外側端部(例えば、実施形態のブレード外側端部54)を有し、前記ブレード外側端部と前記前側端部とが交差して角部(例えば、実施形態の角部56)を形成していてもよい。
【0010】
この構成によれば、翼外側端部にブレード外側端部を連続させ、ブレード外側端部と前側端部とを交差して角部を形成した。よって、芝草を角部でしっかりと捉えて、捉えた芝草をカッタブレードで刈ることができる。これにより、芝草の裁断性を一層良好に確保でき、芝刈機の省エネルギ化を実現できる。
また、ブレード外側端部と前側端部とを交差して角部を形成することにより、交差する角部の形状を簡素にでき、角部を容易に加工できる。
【0011】
(3)前記カッタブレードは、前記ブレード外側端部が、前記径方向外側に向かうに従い前記上面から前記下面へ向けて傾斜するとともに該ブレード外側端部の厚みが減少するように断面が先細り状に面取りされたブレード面取り部(例えば、実施形態のブレード面取り部52)を有していてもよい。
【0012】
この構成によれば、ブレード外側端部にも、翼面取り部と同様のブレード面取り部を形成した。よって、カッタブレードが回転した状態において、カッタブレードに沿って案内された空気を翼面取り部及びブレード面取り部で外方へ円滑に流すことができる。これにより、空気の流れの乱れを少なく抑えることができ、カッタブレードの回転により発生する風切り音等の騒音を一層良好に低減できる。
【0013】
また、翼面取り部及びブレード面取り部は先縁が薄く形成されている。これにより、ハウジングの内部において旋回流及び上昇気流により案内されている芝草を、翼面取り部及びブレード面取り部で一層細かく裁断できる。
また、ハウジングと翼外側端部の間や、ハウジングとブレード面取り部との間に入り込んだ芝草を、翼面取り部及びブレード面取り部で細かく裁断することにより、芝草がハウジングと翼外側端部との間でつまることを一層良好に防止できる。
【0014】
(4)前記回転軸には、前記カッタブレードと、前記カッタブレードよりも上方に、上側のカッタブレード(例えば、実施形態の上部カッタブレード14)と、が備えられていてもよい。
【0015】
この構成によれば、カッタブレードは、翼面取り部が下方へ向けて傾斜するように面取りされ、ブレード面取り部が下方へ向けて傾斜するように面取りされている。よって、カッタブレードの上側にもう一つのカッタブレードが設けられていても、カッタブレードに沿って案内された空気を翼面取り部及びブレード面取り部で外方へ円滑に流すことができる。これにより、空気の流れの乱れを少なく抑えることができ、カッタブレードの回転により発生する風切り音等の騒音を一層良好に低減できる。
また、カッタブレードは、翼部が形成され、翼部で旋回流及び上昇気流を発生する。これにより、カッタブレードを下側のカッタブレードとすることにより、上側のカッタブレードに芝草を案内することができる。
【0016】
(5)前記上側のカッタブレードは、該上側のカッタブレードの長手方向の両端部(例えば、実施形態の長手方向の両端部35)において、前記径方向の外側に位置する外側端部(例えば、実施形態の第1外側端部37)が前記径方向外側に向かうに従い下面(例えば、実施形態の下面14b)から上面(例えば、実施形態の上面14a)へ向けて傾斜するとともに該外側端部の厚みが減少するように断面が先細り状に面取りされたブレード外面取り部(例えば、実施形態の第1ブレード外面取り部32)を有していてもよい。
【0017】
この構成によれば、上側のカッタブレードの外側端部にブレード外面取り部を有する。よって、上側のカッタブレードが回転した状態において、上側のカッタブレードに沿って案内された空気をブレード外面取り部で外方へ円滑に流すことができる。これにより、空気の流れの乱れを少なく抑えることができ、上側のカッタブレードの回転により発生する風切り音等の騒音を低減できる。
【0018】
また、ブレード外面取り部は先縁が薄く形成されている。これにより、ハウジングの内部において旋回流及び上昇気流により案内されている芝草を、ブレード外面取り部で一層細かく裁断できる。
また、ブレード外面取り部との間に入り込んだ芝草を、ブレード外面取り部で細かく裁断することにより、芝草がブレード外面取り部との間でつまることを一層良好に防止でき、芝刈機の省エネルギ化を実現できる。
【0019】
(6)前記上側のカッタブレードは、前記回転方向の反対側である後側に位置する他の後側端部(例えば、実施形態の第1後側端部38)が前記後側に向うに従い前記下面から前記上面へ向けて傾斜するとともに該他の後側端部の厚みが減少するように断面が先細り状に面取りされたブレード後面取り部(例えば、実施形態のブレード後面取り部33)を有していてもよい。
【0020】
この構成によれば、上カッタブレードの後側端部にブレード後面取り部を有する。よって、上カッタブレードが回転した状態において、上カッタブレードに沿って案内された空気をブレード後面取り部で回転後方へ円滑に流すことができる。これにより、空気の流れの乱れを少なく抑えることができ、上カッタブレードの回転により発生する風切り音等の騒音を一層良好に低減できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、翼部の翼外側端部に翼面取り部を有ことにより、カッタブレードの回転により発生する騒音を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る実施形態の芝刈機を示す側面図である。
図2】実施形態の上部カッタブレード及び下部カッタブレードを示す側面図である。
図3】実施形態の上部カッタブレードを示す平面図である。
図4図3のIV-IV線で破断した断面図である。
図5図3のV-V線で破断した断面図である。
図6】実施形態の下部カッタブレードを示す斜視図である。
図7図6のVII-VII線で破断した断面図である。
図8図6のVIII-VIII線で破断した断面図である。
図9】実施形態の上部カッタブレード及び下部カッタブレードを示す平面図である。
図10図9のX-X線で破断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は作業者から見た方向に従う。
図1図2に示すように、芝刈機10は、ロータリ式のブレードで芝草を刈る歩行型自走式作業機である。芝刈機10は、ハウジング11と、ハウジング11の前部に備えた左右の前輪12と、ハウジング11の後部に備えた左右の後輪13と、ハウジング11の中央の内部に収納された芝刈用の上部カッタブレード(上側のカッタブレード)14及び下部カッタブレード(カッタブレード、下側のカッタブレード)15と、ハウジング11の上部に備えたエンジン(動力源)16と、ハウジング11から後方へ延びた操作ハンドル17と、を備えている。なお、芝刈機10の動力源としてエンジン16を例示するが、その他の例として、例えば電動モータを動力源としてもよい。
【0024】
芝刈機10は、エンジン16によって上部カッタブレード14及び下部カッタブレード15を回転させることにより、芝草を刈り取るとともに、ハウジング11の内部に空気の流れ(旋回流)を発生させるように構成されている。また、芝刈機10は、発生した旋回流により、上部カッタブレード14及び下部カッタブレード15で刈った芝草をハウジング11の内部で細かく裁断し、裁断した芝草を刈り芝収納体22に送り込んで収納する。以下、上部カッタブレード14及び下部カッタブレード15によって刈られた芝草のことを「刈り芝」ということがある。
【0025】
ハウジング11は、下端面(芝地Grに対向する面)だけが全面的に開放された下方開放のハウジングである。ハウジング11は、上部カッタブレード14及び下部カッタブレード15によって刈られた刈り芝を、旋回流によって旋回運動させつつ、刈り芝搬出通路21へ向かわせるためのスクロール部を有する。すなわち、ハウジング11は、平面視渦巻状に形成された渦巻ケーシング(spiral case、scroll case)である。
刈り芝搬出通路21の後端にはグラスバッグ等の刈り芝収納体22を取付け可能である。刈り芝は、ハウジング11の内部で出力軸(以下、回転軸という)16a回りを旋回しながら刈り芝搬出通路21へ送られ、刈り芝搬出通路21を経て刈り芝収納体22に収納される。
【0026】
ハウジング11は、機体の役割を兼ねている。すなわち、ハウジング11の上面には、エンジン16が重ねられ、重ねられエンジン16がボルトによりハウジング11の上面に一体的に組み付けられている。エンジン16の回転軸16aは、ハウジング11の内部において芝地Grへ向けて下方に延びている。
すなわち、回転軸16aは、ハウジング11の内部に位置し、ハウジング11の上下方向に延びた状態に支持されている。結果として、回転軸16aは、水平な芝地(すなわち、地面)Grに対して略垂直に支持されている。
【0027】
回転軸16aには、ハウジング11の内部に収納された状態において、2枚のカッタブレード(上部カッタブレード14及び下部カッタブレード15)がクラッチ18を介して上側と下側とに取り付けられている。すなわち、上部カッタブレード14及び下部カッタブレード15は、上部カッタブレード14に下部カッタブレード15が下方から重ねられた状態においてクラッチ18の下部に取り付けられている。上部カッタブレード14は、上面14aを上向きにして配置されている。また、下部カッタブレード15は、上面15aを上向きにして配置されている。
【0028】
この状態において、エンジン16を駆動して回転軸16aを回転することにより、上部カッタブレード14及び下部カッタブレード15が回転軸16aを中心とする周方向において回転方向Raに回転する。以下、上部カッタブレード14及び下部カッタブレード15の回転方向Raを、単に「回転方向Ra」ということがある。
上部カッタブレード14及び下部カッタブレード15は、ハウジング11の内部において、回転軸16a(軸心SC)を回転中心として周方向に回転可能に支持されている。
【0029】
図3から図5に示すように、上部カッタブレード14は、回転軸16a(軸心SC)に対して径方向の両方へ延びた、平面視略平板状の細長い部材、すなわち平面視略帯板状の部材である。より詳しく述べると、上部カッタブレード14は、回転軸16a(軸心SC)に対して径方向に真っ直ぐな、平板によって構成されている。
上部カッタブレード14の上面14aは、回転軸16aの軸方向において上方を向いている。上部カッタブレード14の下面14bは、回転軸16aの軸方向において下方を向いている。
【0030】
上部カッタブレード14は、一対の第1刃部31と、一対の第1ブレード外面取り部(ブレード外面取り部)32と、一対のブレード後面取り部33と、を有している。
第1刃部31は、回転方向Ra側に位置する第1前側端部36に沿って長手方向に延びている。第1刃部31は、回転方向に向うに従い上面14aから下面14bに向けて下方へ傾斜するように断面が先細り状に形成されている。
【0031】
第1ブレード外面取り部32は、上部カッタブレード14の長手方向の両端部35,35において、回転軸16a(軸心SC)に対して径方向の外側に位置する第1外側端部(外側端部)37に形成されている。第1外側端部37は、回転軸16a(軸心SC)を中心とする周方向に沿って形成されている。すなわち、第1ブレード外面取り部32は、第1外側端部37が径方向外側に向うに従い下面14bから上面14aに向けて上方で、かつ外方へ傾斜するように面取りされることにより断面が先細り状に形成されている。
【0032】
第1ブレード外面取り部32は、例えば、先縁32aの厚さT1が0.1~1.0mmに薄く設定され、面取り幅W1が5~10mmに設定されている。これにより、第1ブレード外面取り部32の傾斜面を、上部カッタブレード14の下面14bに対して滑らかに傾斜させることができる。なお、第1ブレード外面取り部32を、下方へ膨出する湾曲状に形成してもよい。
【0033】
ブレード後面取り部33は、回転方向Raの反対側に位置する第1後側端部(他の後側端部)38に沿って延びている。第1後側端部38は、平面視で第1ブレード外面取り部32に向けて傾斜状に形成されている。ブレード後面取り部33は、回転方向の反対側に向うに従い第1後側端部38が下面14bから上面14aに向けて上方へ傾斜するように面取りされることにより断面が先細り状に形成されている。
【0034】
ブレード後面取り部33は、例えば、先縁33aの厚さT2が0.1~1.0mmに薄く設定され、面取り幅W2が5~10mmに設定されている。これにより、ブレード後面取り部33の傾斜面を、上部カッタブレード14の下面14bに対して滑らかに傾斜させることができる。なお、ブレード後面取り部33を、下方へ膨出する湾曲状に形成してもよい。
【0035】
図6から図8に示すように、下部カッタブレード15は、回転軸16a(軸心SC)に対して径方向の両方へ延びた、平面視略平板状の細長い部材、つまり平面視略帯板状の部材である。より詳しく述べると、下部カッタブレード15は、回転軸16a(軸心SC)に対し径方向に概ね真っ直ぐな平板によって、長手方向の中央部が上方に湾曲するように形成されている。
下部カッタブレード15の上面15aは、回転軸16aの軸方向において上方を向いている。下部カッタブレード15の下面15bは、回転軸16aの軸方向において下方を向いている。
【0036】
下部カッタブレード15は、一対の第2刃部41と、一対の翼部(エアリフト部)42と、一対の第2ブレード外面取り部43と、を有している。
第2刃部41は、下部カッタブレード15の長手方向の両端部45において、回転方向Ra側に位置する第2前側端部(前側端部)46に沿って長手方向に延びている。第2刃部41は、回転方向に向うに従い上面15aから下面15bに向けて下方へ傾斜するように断面が先細り状に形成されている。
【0037】
翼部42は、長手方向の両端部45において、回転方向Raの反対側の第2後側端部(後側端部)47から回転方向Raの反対側で、かつ上方へ向けて湾曲状に張り出されている。翼部42は、下部カッタブレード15が回転方向Raへ回転したときに、空気の旋回流及び上昇気流を発生させるための部分である。
翼部42で上昇気流を発生させることにより、上昇気流で芝草を立ち上げ、立ち上げた芝草を上部カッタブレード14で良好に刈ることができる。
また、翼部42で旋回流及び上昇気流を発生させることにより、上部カッタブレード14及び下部カッタブレード15で刈られた刈り芝を、ハウジング11の内部において旋回移動させて細かく裁断できる。
【0038】
第2ブレード外面取り部43は、翼面取り部51と、ブレード面取り部52と、を有する。
翼面取り部51は、翼部42のうち、回転軸16a(軸心SC)に対して径方向の外側に位置する翼外側端部53に形成されている。すなわち、翼面取り部51は、径方向外側に向うに従い翼外側端部53が上面15aから下面15bに向けて下方へ傾斜するように面取りされることにより断面が先細り状に形成されている。
【0039】
翼面取り部51は、例えば、先縁51aの厚さT3が0.1~1.0mmに薄く設定され、面取り幅W3が5~10mmに設定されている。これにより、翼面取り部51の傾斜面を、下部カッタブレード15の上面15aに対して滑らかに傾斜させることができる。なお、翼面取り部51を、上方へ膨出する湾曲状に形成してもよい。
【0040】
翼外側端部53には、ブレード外側端部54が、回転軸16a(軸心SC)を中心とする周方向(具体的には、回転方向Ra)に連続して形成されている。翼外側端部53及びブレード外側端部54により、周方向に沿って(具体的には、翼外側端部53は周方向で、かつ上方へ向けて)延びる第2外側端部55が形成されている。
ブレード外側端部54は、第2前側端部46の外端部から翼外側端部53まで回転方向Raの反対側に延び、翼外側端部53に連続して形成されている。
ブレード外側端部54は、第2前側端部46に交差するように形成されている。ブレード外側端部54と第2前側端部46とが交差して角部56が形成されている。角部56は、例えば、実施形態では平面視において略直交するように形成されているが、これに限定しない。ブレード外側端部54にブレード面取り部52が形成されている。
【0041】
ブレード面取り部52は、ブレード外側端部54に沿って回転方向Raへ翼面取り部51に連続するように延びている。ブレード面取り部52は、翼面取り部51と同様に、ブレード外側端部54が径方向外側に向うに従い上面15aから下面15bに向けて下方へ傾斜するように面取りされることにより断面が先細り状に形成されている。
【0042】
ブレード面取り部52は、例えば、翼面取り部51と同様に、先縁52aの厚さT3が0.1~1.0mmに薄く設定され、面取り幅W3が5~10mmに設定されている。これにより、ブレード面取り部52の傾斜面を、下部カッタブレード15の上面15aに対して滑らかに傾斜させることができる。なお、ブレード面取り部52を、上方へ膨出する湾曲状に形成してもよい。
【0043】
翼面取り部51及びブレード面取り部52により、回転方向Raへ連続する第2ブレード外面取り部43が形成されている。すなわち、第2ブレード外面取り部43は、径方向外側に向うに従い第2外側端部55が上面15aから下面15bに向けて下方へ傾斜するように面取りされることにより断面が先細り状に形成されている。
また、第2ブレード外面取り部43は、第2刃部41に交差するように形成されている。第2ブレード外面取り部43及び第2刃部41の交差箇所は、ブレード外側端部54及び第2前側端部46の角部56と同じ部位である。角部56は、例えば、実施形態では平面視において略直交するように形成されている。これにより、角部56の形状を簡素にでき、角部56(すなわち、下部カッタブレード15)を容易に加工できる。
【0044】
つぎに、上部カッタブレード14及び下部カッタブレード15の回転により発生する風切り音等の騒音を低減する例を図5図8から図10に基づいて説明する。
図9図10に示すように、上部カッタブレード14は、第1刃部31が回転方向Ra側に位置するように回転軸16aに取り付けられている。また、下部カッタブレード15は、第2刃部41が回転方向Ra側に位置するように回転軸16aに取り付けられている。
この状態において、上部カッタブレード14及び下部カッタブレード15が回転方向Raに回転することにより第1刃部31及び第2刃部41で芝草を刈る(裁断する)。この際に、下部カッタブレード15の翼部42で上昇気流を発生させることにより、芝草を立ち上げ、立ち上げた芝草を上部カッタブレード14で良好に刈ることができる。
【0045】
また、上部カッタブレード14及び下部カッタブレード15が回転方向Raに回転することにより、上部カッタブレード14及び下部カッタブレード15間の空間61に空気が矢印Aの如く進入する。進入した空気が、下部カッタブレード15の翼部42によって旋回流及び上昇気流に発生する。よって、上部カッタブレード14及び下部カッタブレード15によって刈られた刈り芝を、ハウジング11(図1参照)の内部において旋回移動させて細かく裁断できる。
【0046】
ここで、図8から図10に示すように、空間61に進入した空気の一部を、下部カッタブレード15の第2ブレード外面取り部43(すなわち、ブレード面取り部52及び翼面取り部51)に沿って矢印Bの如く外方に円滑に流すことができる。これにより、空気の流れの乱れを少なく抑えることができ、上部カッタブレード14及び下部カッタブレード15の回転により発生する風切り音等の騒音を低減できる。
【0047】
また、図9図10に示すように、上部カッタブレード14の第1後側端部38にブレード後面取り部33が形成されている。空間61に進入した空気の一部を、ブレード後面取り部33で回転後方へ矢印Aの如く円滑に流すことができる。これにより、空気の流れの乱れを少なく抑えることができ、上部カッタブレード14及び下部カッタブレード15の回転により発生する風切り音等の騒音を一層良好に低減できる。
【0048】
さらに、図5図9図10に示すように、上部カッタブレード14の第1外側端部37に第1ブレード外面取り部32が形成されている。空間61に進入した空気の一部を、第1ブレード外面取り部32で矢印Cの如く外方へ円滑に流すことができる。これにより、空気の流れの乱れを少なく抑えることができ、上部カッタブレード14及び下部カッタブレード15の回転により発生する風切り音等の騒音を一層良好に低減できる。
【0049】
ここで、下部カッタブレード15は、第2ブレード外面取り部43(すなわち、ブレード面取り部52及び翼面取り部51)が下方へ向けて傾斜するように面取りされている。よって、下部カッタブレード15の上側にもう一つの上部カッタブレード14が設けられていても、下部カッタブレード15に沿って案内された空気を第2ブレード外面取り部43で外方へ円滑に流すことができる。
これにより、空気の流れの乱れを少なく抑えることができ、上部カッタブレード14及び下部カッタブレード15の回転により発生する風切り音等の騒音を一層良好に低減できる。
【0050】
ついで、上部カッタブレード14及び下部カッタブレード15で芝草を刈る例を図3図5図6図8に基づいて説明する。
図3図5図6図8に示すように、下部カッタブレード15が回転することにより、下部カッタブレード15の翼部42により旋回流及び上昇気流を発生させる。よって、上部カッタブレード14及び下部カッタブレード15で刈った刈り芝が、ハウジング11(図1参照)の内部において、旋回流及び上昇気流により旋回移動する。刈り芝が旋回移動することにより、刈り芝を上部カッタブレード14や下部カッタブレード15に案内できる。これにより、上部カッタブレード14及び下部カッタブレード15で刈り芝が細かく裁断される。
【0051】
ここで、第2ブレード外面取り部43は先縁(ブレード面取り部52及び翼面取り部51の各先縁52a,51a)の厚さが薄く形成されている。さらに、第1ブレード外面取り部32の先縁32aの厚さが薄く形成されている。これにより、上部カッタブレード14及び下部カッタブレード15で刈り芝を一層細かく裁断できる。
【0052】
この際に、ハウジング11の内部の刈り芝が、ハウジング11と第2ブレード外面取り部43(すなわち、ブレード面取り部52及び翼面取り部51)との間に入り込むことが考えられる。あるいは、ハウジング11と第1ブレード外面取り部32との間に刈り芝が入り込むことが考えられる。
この場合においても、薄く形成された第2ブレード外面取り部43の先縁や、第1ブレード外面取り部32の先縁32aで、入り込んだ刈り芝を良好に裁断できる。これにより、刈り芝がハウジング11と第2ブレード外面取り部43との間つまることや、刈り芝がハウジング11と第1ブレード外面取り部32との間つまることを防止でき、芝刈機10の省エネルギ化を実現できる。
【0053】
また、第2ブレード外面取り部43と第2刃部41とが交差して角部56が形成されている。よって、芝草を角部56でしっかりと捉えて、捉えた芝草を上部カッタブレード14及び下部カッタブレード15(特に、下部カッタブレード15)で刈ることができる。これにより、芝草の裁断性を一層良好に確保でき、芝刈機10の省エネルギ化を実現できる。
【0054】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれらに限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能であり、上述した変形例を適宜組み合わせることも可能である。
例えば、前記実施形態では、芝刈機10として歩行型自走式芝刈機を例示したが、その他の例として、乗用型自走式芝刈機、無人走行式芝刈機等の他の芝刈機に本発明を適用させてもよい。
【0055】
また、前記実施形態では、上部カッタブレード14及び下部カッタブレード15を備えた例について説明したが、その他の例として、下部カッタブレード15のみを備えてもよい。
さらに、前記実施形態では、下部カッタブレード15に第2ブレード外面取り部43(すなわち、翼面取り部51及びブレード面取り部52)を形成した例について説明したが、その他の例として、翼面取り部51のみを形成してもよい。
【0056】
また、前記実施形態では、第1ブレード外面取り部32において先縁32aの厚さT1を0.1~1.0mm、面取り幅W1を5~10mmに形成した例について説明したが、この形状に限定するものではない。
さらに、ブレード後面取り部33において先縁33aの厚さT2を0.1~1.0mm、面取り幅W2を5~10mmに形成した例について説明したが、この形状に限定するものではない。
また、翼面取り部51において先縁51aの厚さT3を0.1~1.0mm、面取り幅W3を5~10mmに形成した例について説明したが、この形状に限定するものではない。
さらに、ブレード面取り部52において先縁52aの厚さT3を0.1~1.0mm、面取り幅W3を5~10mmに形成した例について説明したが、この形状に限定するものではない。
【符号の説明】
【0057】
10 芝刈機
11 ハウジング
14 上部カッタブレード(上側のカッタブレード)
14a,15a 上面
14b,15b 下面
15 下部カッタブレード(カッタブレード、下側のカッタブレード)
16a 回転軸
32 第1ブレード外面取り部(ブレード外面取り部)
33 ブレード後面取り部
35 上部カッタブレードの両端部
37 第1外側端部(外側端部)
38 第1後側端部(他の後側端部)
42 翼部
43 第2ブレード外面取り部
45 下部カッタブレードの両端部
46 第2前側端部(前側端部)
47 第2後側端部(後側端部)
51 翼面取り部
52 ブレード面取り部
53 翼外側端部
54 ブレード外側端部
56 角部
Ra 回転方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10