(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】便座装置及び便器装置
(51)【国際特許分類】
A47K 13/26 20060101AFI20231127BHJP
A47K 13/12 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
A47K13/26
A47K13/12
(21)【出願番号】P 2020052852
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】平澤 勇人
(72)【発明者】
【氏名】森川 雄大
(72)【発明者】
【氏名】前田 真治
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-170460(JP,A)
【文献】特開2017-124116(JP,A)
【文献】特開2016-34310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 13/00-17/02
E03D 9/00- 9/16
E05D 1/00- 9/00
B65D 43/00-43/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器の上部の後方に設けられ、幅方向の両端部から前記幅方向に突出する軸を有する本体部と、
前記本体部に後端部の幅方向の端部が接続され、前記本体部に対して回転自在であり、前記便器の上部を覆う閉状態と前記便器の上部を開放する開状態とを有する便蓋と、
前記便蓋の前記後端部の前記幅方向の前記端部に設けられ、前記軸に対して取り付け及び取り外して脱着が可能に前記便蓋を装着する脱着機構と、を備え、
前記脱着機構は、内周面が前記軸の外周面に前記便蓋の裏面側から当接し前記軸の外周面に沿って摺動可能な支持壁部と、先端と前記先端と反対側の基端とを有し前記先端が前記軸における前記便蓋の前記裏面と反対側に当接するラッチ部材と、前記ラッチ部材の前記基端に接続される弾性部材と、を有し、
前記ラッチ部材は、前記軸から押圧されると前記押圧の方向に移動する、
便座装置。
【請求項2】
前記軸の下方に配置され、前記便蓋に当接して前記便蓋の回転の範囲を制限するストッパーを備える、
請求項1に記載の便座装置。
【請求項3】
前記ラッチ部材の先端は、前記便蓋の前記裏面側に形成され前記便蓋の前記裏面に近いほど前記弾性部材に近い第1傾斜面を有し、
前記第1傾斜面は、前記便蓋が前記本体部に接続された状態において、前記軸と当接する、
請求項1又は請求項2に記載の便座装置。
【請求項4】
前記ラッチ部材の先端は、前記便蓋の前記裏面と反対側に形成され前記便蓋の前記裏面に近いほど前記弾性部材から遠い第2傾斜面を有する、
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の便座装置。
【請求項5】
前記ラッチ部材を介して前記便蓋の前記裏面と前記反対側に設けられ、前記便蓋の前記裏面から離れる方向及び前記便蓋の先端側に延びる軸ガイド面を有する、
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の便座装置。
【請求項6】
前記第2傾斜面は、前記便蓋の前記幅方向の中央側ほど前記弾性部材に近い、
請求項4に記載の便座装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の便座装置を備える、
便器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、便座装置及び便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、便器の上部に配置され、回転して開閉され、閉状態において便器の上部を覆う便蓋が設けられた便座装置及び便器装置が知られている。便蓋は便座装置の本体部に接続される。便座装置の本体部は、便器の上部の後方に設けられている。本体部は、局部洗浄等の各種機能を有する機能部を備えている。機能部はケースに収容されている。例えば、下記の特許文献1では、便蓋に形成された軸部挿入凹部に本体部に設けられた軸部を着脱し、ロック機構を介して便蓋に対して軸部をロック又はロック解除し、便蓋を横臥姿勢(閉状態)のまま本体部に着脱可能な便蓋を備える便器装置について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の便器装置の使用時には、ロック機構はロックされている。そのため、特許文献1に記載の便器装置は、使用者が便器装置に着座し開状態の便蓋にもたれかかってしまった場合等開状態の便蓋に過度な荷重がかかった場合に、便蓋が外れずに本体部の軸部又は便蓋のロック機構に負荷がかかり、軸部又はロック機構が破損してしまう虞があった。
【0005】
上記事情を踏まえ、本開示は、開状態の便蓋に過度な荷重がかかった場合において、便蓋および本体部の破損が防止される便座装置及び便器装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の態様に係る便器装置は、便器の上部の後方に設けられ、幅方向の両端部から前記幅方向に突出する軸を有する本体部と、前記本体部に後端部の幅方向の端部が接続され、前記本体部に対して回転自在であり、前記便器の上部を覆う閉状態と前記便器の上部を開放する開状態とを有する便蓋と、前記便蓋の前記後端部の前記幅方向の前記端部に設けられ、前記軸に対して取り付け及び取り外して脱着が可能に前記便蓋を装着する脱着機構と、を備え、前記脱着機構は、内周面が前記軸の外周面に前記便蓋の裏面側から当接し前記軸の外周面に沿って摺動可能な支持壁部と、先端と前記先端と反対側の基端とを有し前記先端が前記軸における前記便蓋の前記裏面と反対側に当接するラッチ部材と、前記ラッチ部材の前記基端に接続される弾性部材と、を有し、前記ラッチ部材は、前記軸から押圧されると前記押圧の方向に移動する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の実施形態による便座装置の一例を示す斜視図である。
【
図2】同便座装置の便蓋を閉状態とした場合の部分垂直断面図である。
【
図3】同便蓋の脱落動作を示す部分垂直断面図である。
【
図4】同便蓋の脱落動作を示す部分垂直断面図である。
【
図5】同便蓋の脱落動作を示す部分垂直断面図である。
【
図6】同便蓋の取付け作業時を示す部分垂直断面図である。
【
図7】同便蓋の取付け作業時を示す部分垂直断面図である。
【
図8】本開示の実施形態による便座装置の別の一例を示す部分垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に示すように、実施形態による便器装置Tは、便器11と、便器の上に設置された便座装置1と、を備えている。便座装置1は、機能部21を収容した本体部2と、使用者が着座する便座3と、便鉢12を覆う便蓋4と、を有している。
【0009】
以下では、便器11に対して、便鉢12が配置される側を前後方向の前側、便座装置1の機能部21が設置される便器本体13が配置される側を前後方向の後側と言う。前後方向に直交する水平方向を幅方向と言う。幅方向については、後側から前側に向かって左を左方向とし、後側から前側に向かって右方向と言う。
【0010】
便座3が立ち上がり使用されない状態を便座未使用状態とし、便座3が便器11の上面と略平行に設置された状態を便座使用状態と言う。便蓋4が立ち上がり便鉢12を開放した状態を開状態とし、便蓋4が便座使用状態の便座3を挟んで便鉢12を覆う状態を閉状態と言う。便座3及び便蓋4の各部の形状の説明においては、特に断らない限り、便座使用状態及び閉状態を前提として、各方向を用いる。
【0011】
図1に示すように、便座装置1の本体部2は、便器11の上部の後方に設置されている。本体部2は、各種機能を備えた機能部21と、機能部21を収容するケース22と、を有している。
【0012】
機能部21は、便座を回転させるための便座回転ユニット、便蓋4を回転させるための便蓋回転ユニット、局部洗浄装置、脱臭装置などの各種機能装置を有している。機能部21は、各種機能装置を制御する制御部を有している。機能部21は、各種機能装置に電源を供給する電源部を有している。
【0013】
ケース22は、機能部21の上下方向、前後方向、及び幅方向の左右両側を覆っている。ケース22は、機能部21の幅方向の左右両側を覆っているケース側板部225を有している。ケース側板部225は、機能部21の幅方向の両側に一対配置される。
図2は、右側のケース側板部225の右方の断面による断面図である。
図2に示すように、ケース側板部225は、幅方向に突出する軸22rと、軸22rの下方から幅方向に突出するストッパー22sと、を有している。軸22rには、便座3及び便蓋4が連結されている。
【0014】
便座3は、本体部2に回転自在に取り付けられている。便座3の後端部の幅方向の両端部がケース側板部225から突出した軸22rに接続される。便座3は、軸22r回りに回転自在である。
【0015】
便蓋4は、本体部2に回転自在に取り付けられている。便蓋4は、便鉢12の上部を開閉する。便蓋4は、幅方向の両端の縁4eから裏面4b側に突出する側板部4sと、右側の側板部4sの後側の内側に設けられる第1接続部41と、左側の側板部4sの後側の内側に設けられる第2接続部42と、を有している。第1接続部41と第2接続部42とはケース側板部225から突出した軸22rに接続される。便蓋4は、軸22r回りに回転自在である。便蓋4は、開状態において、第1接続部41及び第2接続部42の後方に位置する側板部4sの後端4rがストッパー22sに当接している。便蓋4は、ストッパー22sと当接し、回転の範囲が制限される。便蓋4は、開状態において、側板部4sの後端4rとストッパー22sとが当接し、裏面4bが略前方を向く姿勢が維持されている。便蓋4が便鉢12の上部を閉じた状態では、便蓋4と便鉢12との間に便座3が配置される。
【0016】
第1接続部41は、脱着機構43を有している。脱着機構43は、軸22rに脱着可能に便蓋4を装着し、第1接続部41を軸22rに回動自在に取付けること、及び第1接続部41を軸22rから取外すことが可能である。脱着機構43は、軸22rの周面に当接して軸22rを支持する支持壁部44と、軸22rを支持壁部44に当接する状態に保持可能であり軸22rを脱着機構43から解放可能であるラッチ機構45と、軸22rが支持壁部44に当接する状態に導入されるとき及び軸22rが脱着機構43から解放されるときに軸22rの経路をガイドするガイド壁部46と、を有している。
【0017】
支持壁部44は、側板部4sから幅方向の内側に突出している。支持壁部44は、側面視において便蓋4の裏面4bと反対側に開口する略U字形状を有している。支持壁部44は、裏面4b側から軸22rに当接する。便蓋4が本体部2に対して回転する状態においては、支持壁部44のU字形状の内周面に軸22rの外周面が当接し、支持壁部44が軸22rの外周面に沿って摺動する。
【0018】
ラッチ機構45は、軸22rを介して便蓋4の裏面4bと反対側に配置されている。ラッチ機構45は、側板部4sから幅方向の内側に突出する枠部45aと、前方の基端が枠部45aに接続されるコイルバネ45bと、コイルバネ45bの後方の先端に接続されるラッチ部材45cと、を有している。
【0019】
枠部45aは、側面視において、外形が、略四角形の一辺が開口を有する形状である。枠部45aは、便蓋4の裏面4bに沿って形成されている。枠部45aは、軸22rの前方の下側に形成されている。枠部45aは、前側に形成されコイルバネ45bが固定される前辺部45dと、上側及び下側に形成されている側辺部45e後側に形成され開口部45gを有する後辺部45fと、を有している。
【0020】
コイルバネ45bは、前方の基端が枠部45aの前辺部45dの後側に接続されている。コイルバネ45bは、伸縮方向Exが、便蓋4の裏面4bに沿い、軸22rと略直交している。コイルバネ45bは、弾性部材に対応する。
【0021】
ラッチ部材45cは、コイルバネ45bの後側の先端と接続している接続部45hと、軸22rに当接する当接部45iと、を有している。接続部45hは、前側に開口45kを有する略箱状の形状を有している。接続部45hには、コイルバネ45bが、開口45kを通って後側の底板部45jの内側面45rに接続されている。接続部45hは、枠部45aに内嵌しており、上側及び下側の側板部45qが枠部45aの側辺部45eに接している。ラッチ機構45に外力が加わっていない状態において、コイルバネ45bが接続部45hの底板部45jを後方に押し、底板部45jの外側面45sが枠部45aの後辺部45fに当接し、静止している。
【0022】
当接部45iと支持壁部44の内周面とは軸22rを挟み、軸22rを当接部45iと支持壁部44とが囲む空間に保持する。当接部45iは、底板部45jの後側に、底板部45jと一体に形成されている。当接部45iは、底板部45jの上下方向の略中央に配置されている。当接部45iは、幅方向に厚みを有する略五角柱形状である。当接部45iの厚みは、接続部45hの幅方向の寸法と同等である。
【0023】
当接部45iは、上側に形成され接続部45hの上側面に略平行な側面45mと、下側に形成され接続部45hの下側面に略平行な側面45nと、後側の先端に凸の角を形成する2つの側面である第1傾斜面45o及び第2傾斜面45pと、を有している。側面45mは、支持壁部44の前側の端部の下側の側面441と近接しており、側面441と略平行である。第1傾斜面45oは、上側に形成され、軸22rに当接し軸22rを第1傾斜面45oと支持壁部44とが囲む空間に保持する。第2傾斜面45pは、下側に形成され、第1傾斜面45oと連続に形成される。
【0024】
第1傾斜面45oは、便蓋4の裏面4bに近いほど弾性部材であるコイルバネ45bに近い。具体的には、第1傾斜面45oは、便蓋4の裏面4bに近いほど前方に傾斜し、便蓋4の裏面4bに近いほどコイルバネ45bに近い面に形成されている。第2傾斜面45pは、第1傾斜面45oを介して便蓋4の裏面4bと反対側に形成されている。第2傾斜面45pは、便蓋4の裏面4bから遠いほど弾性部材であるコイルバネ45bに近い。具体的には、第2傾斜面45pは、便蓋4の裏面4bから遠いほど前方に傾斜し、便蓋4の裏面4bから遠いほどコイルバネ45bに近い面に形成されている。
【0025】
ラッチ機構45に外力が加わっていない状態において、当接部45iは、枠部45aの後辺部45fの開口部45gから突出している。ラッチ機構45に外力が加わっていない状態において、第1傾斜面45o及び第2傾斜面45pは、枠部45aの後辺部45fの後方に位置している。ラッチ機構45に外力が加わっていない状態において、第1傾斜面45oは、軸22rの前部の下部に対向している。
【0026】
ラッチ部材45cは、コイルバネ45bから受けている後向きの力に比べて大きな前向きの力に押圧されると、コイルバネ45bの弾性力に抗しコイルバネ45bを圧縮して前方へ移動する。ラッチ部材45cが前方へ移動すると、ラッチ部材45cと枠部45aの後辺部45fとの当接が解消される。ラッチ部材45cは、ラッチ部材45cに加えられる後向きの力が前向きの力に比べて大きくなると、コイルバネ45bの弾性力に押されて後方へ移動して、枠部45aの後辺部45fと当接するまで移動可能である。
【0027】
ガイド壁部46は、側板部4sから幅方向の内側に突出している。ガイド壁部46は、前側に設けられる第1ガイド壁46aと、後側に設けられる第2ガイド壁46bと、を有している。ガイド壁部46は、互いに対向する軸ガイド面46cを有している。軸ガイド面46cは、第1ガイド壁46aに形成される第1ガイド面46dと、第2ガイド壁46bに形成される第2ガイド面46eと、を有している。
【0028】
第1ガイド壁46aは、ラッチ部材45cを介して便蓋4の裏面4bと反対側に形成されている。第1ガイド壁46aの上側の端部の上側の側面46fは、ラッチ部材45cの側面45nに近接しており、側面45nと略平行である。第1ガイド壁46aの第1ガイド面46dは、第1ガイド壁46aの後側に形成されている。第1ガイド面46dは、ラッチ部材45cが最も後方に位置している状態において第2傾斜面45pと同一面上に位置する46d。第1ガイド面46dは便蓋4の裏面4bから遠いほど前方に傾斜している。換言すれば、第1ガイド面46dは便蓋4の裏面4bから離れる方向及び便蓋4の前側の先端に向かって延びている。
【0029】
第2ガイド壁46bは、支持壁部44の後側の端部から延在している。第2ガイド壁46bの第2ガイド面46eは、支持壁部44の内周面と連続する46e。第2ガイド面46eは、便蓋4の裏面4bから遠いほど後方に傾斜している。
【0030】
第1ガイド壁46aが便蓋4の裏面4bから遠いほど前方に傾斜し、第2ガイド壁46bが便蓋4の裏面4bから遠いほど後方に傾斜している。そのため、ガイド壁部46は、下方ほど第1ガイド壁46aと第2ガイド壁46bとの間隔が広い。
【0031】
第2接続部42は、脱着機構43を有していない。第2接続部42は、側板部4sから幅方向の内側に突出する略円筒状のボス(不図示)を有している。ボスには、ケース側板部225の左側の軸22rが挿入される。便蓋4が自動開閉される場合には、例えばボスの内周面にキーが形成され、軸の外周面にキー溝が形成される。ボスと軸22rとは、キーとキー溝とが係合され、一方の回転に対して他方が追従するように接続されている。
【0032】
次に、
図3~
図5を参照して、開状態の便蓋4に対して裏面4bを押す力が加わった場合の便蓋4の動作について説明する。以下では、
図3に示すように、例えば使用者が開状態の便蓋4にもたれかかる等して、軸22rの上方において便蓋4に後向きの力Fが加わった場合について説明する。以下では、開状態を前提として、各方向を用いる。
【0033】
軸22rの上方において便蓋4に後向きの力Fが加わった場合、便蓋4の後端4rとケース側板部225のストッパー22sとが当接しているため、便蓋4の回転が阻止される。後端4rは、ストッパー22sから後向きの反力Rを受ける。
【0034】
便蓋4は、後向きの力F及び反力Rを受け、後方に押される。便蓋4が後方に押されると、便蓋4に対して軸22rが前方に移動し、軸22rがラッチ部材45cの第1傾斜面45oに当接する。
【0035】
第1傾斜面45oが便蓋4の裏面4bに近いほどコイルバネ45bに近く傾斜しているため、
図4に示すように、軸22rは、ラッチ部材45cに対して略上向きの力Pを加え押圧する。ラッチ部材45cは、上向きの力Pがコイルバネ45bから加えられる略下向きの力に比べて大きくなると、コイルバネ45bの弾性力に抗して、力Pの向きである押圧の方向に沿って上方へ移動する。
【0036】
ラッチ部材45cが上方へ移動すると、軸22rがラッチ機構45の下方を通過可能である。
図5に示すように、軸22rは、ラッチ機構45の下方を通過し、ラッチ機構45から解放される。ラッチ機構45から解放された軸22rは、ガイド壁部46の軸ガイド面46cに沿って脱着機構43から放出される。軸22rが脱着機構43から放出されると、便蓋4の第2接続部42が本体部2から外れ、便蓋4が本体部2から外れる。
【0037】
次に、
図6~
図7を参照して、便蓋4を本体部2に取付ける作業について説明する。
図6に示すように、以下では、取付け作業の説明においては、便蓋4の裏面4bが略水平方向に沿い略下方を向く状態であることを前提として、各方向を用いる。
【0038】
はじめに、作業者は、本体部2の左側の軸22rに、第2接続部42のボスを外嵌させる。次に、作業者は、
図6に示すように、本体部2の右側の軸22rが第1接続部41のガイド壁部46に挟まれる空間に配置されるように、便蓋4の姿勢を調整する。
【0039】
次に、作業者は、便蓋4の右側部分を下方に下げ、
図7に示すように、軸22rにラッチ部材45cの第2傾斜面45pを当接させる。作業者が便蓋4の右側部分を下方に押し込むと、第2傾斜面45pが便蓋4の裏面4bから遠いほどコイルバネ45bに近く傾斜しているため、軸22rは、ラッチ部材45cに対して略前向きの力P’を加え押圧する。ラッチ部材45cは、前向きの力P’がコイルバネ45bから加えられる略後向きの力に比べて大きくなると、コイルバネ45bの弾性力に抗して、力P’の向きである押圧の方向に沿って前方へ移動する。
【0040】
ラッチ部材45cが前方へ移動すると、軸22rがラッチ機構45の右方を通過可能である。軸22rは、ラッチ機構45の右方を通過し、ラッチ機構45と支持壁部44に挟まれる。本体部2の右側の軸22rが、脱着機構43に導入され、便蓋4が本体部2に取り付けられ、
図2に示す閉状態とされる。
【0041】
閉状態において作業者が便蓋4の第1接続部41の近傍を掴んで上方に持ち上げると、脱着機構43から軸22rが放出され、便蓋4が本体部2から外れる。
【0042】
閉状態において作業者が便蓋4の第1接続部41の近傍を掴んで上方に持ち上げると、軸22rは、ラッチ部材45cに対して前向きの力P’を加える。ラッチ部材45cは、前向きの力P’がコイルバネ45bから加えられる後向きの力に比べて大きくなると、コイルバネ45bの弾性力に抗して前方へ移動する。
【0043】
ラッチ部材45cが前方へ移動すると、軸22rがラッチ機構45の後方を通過可能である。軸22rは、ラッチ機構45の後方を通過し、ラッチ機構45から解放される。ラッチ機構45から解放された軸22rは、ガイド壁部46の軸ガイド面46cに沿って脱着機構43から放出される。軸22rが脱着機構43から放出されると、便蓋4の第2接続部42が本体部2から外れ、便蓋4が本体部2から外れる。
【0044】
本実施形態の便座装置1によれば、開状態の便蓋4の裏面4bに後向きの力Fが加わると、第1接続部41に接続された軸22rが、便蓋4に対して前方に移動する。便蓋4に対して前方に移動した軸22rが、脱着機構43のラッチ部材45cに、第1傾斜面45oを介して上向きの力Pを加える。力Pを加えられたラッチ部材45cは、ラッチ部材45cがコイルバネ45bから受ける力に比べて力Pが大きい場合に、コイルバネ45bを押し縮めて上方に移動する。ラッチ部材45cが上方に移動して、軸22rがラッチ機構45を通過する。軸22rが、ラッチ機構45を通過し、脱着機構43から放出され、第1接続部41から解放される。軸22rが、第1接続部41から解放され、便蓋4が本体部2から外れる。そのため、便蓋4に過度な荷重がかかった場合において、便蓋4が本体部2から脱落し、便蓋4および本体部2の破損が防止される。ラッチ機構45の弾性をコイルバネ45bが実現しているため、ラッチ機構45が動作して軸22rが解放されるときの力Fを設計できる。
【0045】
内周面に軸22rの外周面が当接し軸22rの外周面に沿って摺動可能な支持壁部44とラッチ機構45とが便蓋4と軸22rとを脱着させる。支持壁部44とラッチ機構45とが軸22rに対して回転しても、支持壁部44とラッチ機構45と軸22rとの全体的な構造は不変であり、相対的な動作の制限は不変である。そのため、便蓋4と本体部2との相対位置によらず便蓋4と本体部2とを脱着することが可能であり、開状態及び閉状態において便蓋4と本体部2とを脱着することが可能である。
【0046】
開状態において、軸22rの下方に配置されたストッパー22sが、便蓋4の後端4rと当接する。便蓋4に力Fが加わると、ストッパー22sが便蓋4に力Fと略同方向の反力Rを加える。そのため、軸22rが便蓋4に対して前方に進みやすく、便蓋4に過度な荷重がかかった場合に軸22rが脱着機構43から外れやすい。
【0047】
ラッチ部材45cの第1傾斜面45oは、便蓋4の裏面4bに近いほどコイルバネ45bに近い。開状態において便蓋4に力Fが加わったときに便蓋4に対して前方に移動する軸22rが、第1傾斜面45oを介してラッチ部材45cに上向きの力Pを加えやすい。そのため、便蓋4に過度な荷重がかかった場合に軸22rが脱着機構43から外れやすい。
【0048】
第2傾斜面45pは、便蓋4の裏面4bから遠いほどコイルバネ45bに近い。便蓋4を本体部2に取付ける作業において、軸22rをラッチ機構45と支持壁部44とに囲まれる位置に導入するときに、軸22rが、第2傾斜面45pを介してラッチ部材45cに前向きの力P’を加えやすい。そのため、軸22rを脱着機構43に導入しやすい。
【0049】
第2傾斜面45pは、ラッチ機構45に外力が加わっていない状態において、ガイド壁部46の軸ガイド面46cの第1ガイド面46dと同一面上に位置する。便蓋4を本体部2に取付ける作業において、軸22rをガイド壁部46に挟まれる空間を通してラッチ機構45に接触させるときに、軸22rがラッチ部材45cの下側の側面45nに引っかかることが防止される。そのため、軸22rを脱着機構43に導入しやすい。
【0050】
ラッチ機構45において、ラッチ部材45cの接続部45hが枠部45aに内嵌しており、接続部45hの側板部45qが枠部45aの側辺部45eに接している。そのため、コイルバネ45bを介して枠部45aに接続されたラッチ部材45cの移動する方向が枠部45aの形状に沿ってガイドされる。
【0051】
ラッチ機構45において、ラッチ部材45cの当接部45iの側面45mが、支持壁部44の側面441に近接しており、側面441と略平行である。当接部45iの側面45nが、第1ガイド壁46aの側面46fに近接しており、側面46fと略平行である。そのため、ラッチ部材45cが側面441及び側面46fにガイドされ、ラッチ部材45cの動作ががたつきにくい。
【0052】
以上、本開示の各実施形態について図面を参照して詳述した。具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせなども含まれる。
【0053】
図8に示すように、軸22rの下方にストッパー22sを設けず、開状態において軸22rの上方において便蓋4に加わる後向きの力Fの上方に配置されるストッパーSを設けてもよい。この場合、便蓋4に力Fが加わると、便蓋4がストッパーSを支点として力Fの向きに回転する。そのため、軸22rが便蓋4に対して前方に進み、軸22rが脱着機構43から外れる。
【0054】
第2傾斜面又は第1ガイド面が、右側の側板部4sから遠いほどコイルバネ45bに近く傾斜してもよい。換言すれば、第2傾斜面又は第1ガイド面が、幅方向の中央側ほどコイルバネ45bに近く傾斜してもよい。この場合、便蓋4を本体部2に取付ける作業において、軸22rを脱着機構43に導入するときに、側板部4sが左方に傾いていても、軸22rが第2傾斜面又は第1ガイド面に当接しやすく、軸22rを脱着機構43に導入しやすい。
【0055】
当接部の後側の先端が、角を有さず、側面視において半円状であるように形成されていてもよい。
【0056】
弾性部材は、伸縮方向Exが便蓋4の裏面4bに沿わなくてもよく、伸縮方向Exが軸22rと略直交しなくてもよい。弾性部材は、例えばラッチ部材45cの前側の基端に接続され、上下方向に延びるように配置されてもよい。弾性部材は、ラッチ部材45cを介して軸22rから押された場合に、前方に撓んでラッチ部材45cを前方に移動させ、軸22rにラッチ部材45cの後方を通過させてもよい。弾性部材は、ラッチ部材45cを所定の位置に付勢し、軸22rに押されたラッチ部材45cを軸22rに対して退かせることができれば、どのように配置されてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…便座装置、2…本体部、3…便座、4…便蓋、4b…裏面、4e…縁、4r…後端、4s…側板部、11…便器、12…便鉢、13…便器本体、21…機能部、22…ケース、22r…軸、22s…ストッパー、41…第1接続部、42…第2接続部、43…脱着機構、44…支持壁部、441…側面、45…ラッチ機構、45a…枠部、45b…コイルバネ、45c…ラッチ部材、45d…前辺部、45e…側辺部、45f…後辺部、45g…開口部、45h…接続部、45i…当接部、45j…底板部、45k…開口、45m…側面、45n…側面、45o…第1傾斜面、45p…第2傾斜面、45q…側板部、45r…内側面、45s…外側面、46…ガイド壁部、46a…第1ガイド壁、46b…第2ガイド壁、46c…軸ガイド面、46d…第1ガイド面、46e…第2ガイド面、46f…側面、225…ケース側板部、Ex…伸縮方向、F…力、P…力、P’…力、R…力、S…ストッパー、T…便器装置