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特許7390956建設作業支援システムおよび建設作業支援方法
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  • 特許-建設作業支援システムおよび建設作業支援方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】建設作業支援システムおよび建設作業支援方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 1/00 20060101AFI20231127BHJP
   G06Q 50/08 20120101ALI20231127BHJP
【FI】
E04G1/00 ESW
G06Q50/08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020057532
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021156016
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】久保田 善経
(72)【発明者】
【氏名】篠田 二郎
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-516028(JP,A)
【文献】特開平07-049910(JP,A)
【文献】特開2005-213972(JP,A)
【文献】特開2019-175144(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110411364(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0068035(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 1/00 - 7/34
G06Q 50/08
G06F 30/10 -30/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設現場における作業を支援する建設作業支援システムであって、
複数種類の足場の形状を含む足場情報を記憶する足場情報記憶部と、
レーザスキャナにより前記建設現場の3次元点群データを取得する点群データ取得部と、
前記建設現場における建設対象物の3次元設計データと前記3次元点群データとを比較するデータ比較部と、
前記データ比較部の比較結果に基づいて、前記建設現場で今後実施される作業内容に適合する前記足場情報を前記足場情報記憶部から抽出し、前記建設現場での作業に従事する作業員に提示する足場情報提示部と、
を備えることを特徴とする建設作業支援システム。
【請求項2】
前記点群データ取得部により取得された前記3次元点群データから足場に対応する点群を抽出し、当該足場に対応する前記足場情報を前記足場情報記憶部に記憶する足場情報登録部を更に備える、
ことを特徴とする請求項1記載の建設作業支援システム。
【請求項3】
前記3次元設計データは、前記建設対象物を構成する各部材の部材モデルを含んでおり、
前記足場情報は、個々の前記部材モデルに関連づけられている、
ことを特徴とする請求項1または2記載の建設作業支援システム。
【請求項4】
前記足場情報は、足場の形状、寸法、組み立て手順、当該足場に適合する前記作業の種類の少なくともいずれか1つを含んでいる、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の建設作業支援システム。
【請求項5】
前記レーザスキャナを搭載し、前記建設現場を自動巡回する自動巡回移動体をさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の建設作業支援システム。
【請求項6】
建設現場における作業を支援する建設作業支援方法であって、
複数種類の足場の形状を含む足場情報を記憶する足場情報記憶部と、
レーザスキャナにより前記建設現場の3次元点群データを取得する点群データ取得工程と、
前記建設現場における建設対象物の3次元設計データと前記3次元点群データとを比較するデータ比較工程と、
前記データ比較工程での比較結果に基づいて、前記建設現場で今後実施される作業内容に適合する前記足場情報を前記足場情報記憶部から抽出し、前記建設現場での作業に従事する作業員に提示する足場情報提示工程と、
を含んだことを特徴とする建設作業支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設現場における作業を支援する建設作業支援システムおよび建設作業支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場では、実施作業に応じた足場の組み立てや作業終了後の解体などが日常的に行われている。
例えば下記特許文献1は、建設用仮設足場構成体に関する発明であり、上下方向に立設され、前記上下方向に挿入されて接続される2乃至4個のコ字状の受部を形成してなる接続受部を配設してなる縦支柱と、縦支柱の接続受部に挿入されて接続される両端部に挿入係合部を有する横支柱とを具備し、縦支柱の接続受部は、金属板に平面視でコ字状の受部及び当該コ字状の受部を連続形成した連結部、及び前記連結部に設けた縦支柱の支柱本体と長円孔、円孔、三角形孔、長方形孔、スリットの何れか1つ以上を用いて溶接した構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5753620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
足場の設置の際には、設置作業を行う作業員に対して作業管理者等から足場の形状や組み立て方などを指示する場合がある。しかしながら、足場の形状は写真や図面などの2次元の情報で説明するのが困難なため、説明に時間がかかる場合があり、また作業員とのコミュニケーションギャップも生じやすい。また、足場の形状は、その時々の現場の状態や作業内容によって異なり、適切な写真や図面が常に用意されているとは限らない
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、建設現場における足場の設置作業の効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明にかかる建設作業支援システムは、建設現場における作業を支援する建設作業支援システムであって、複数種類の足場の形状を含む足場情報を記憶する足場情報記憶部と、レーザスキャナにより前記建設現場の3次元点群データを取得する点群データ取得部と、前記建設現場における建設対象物の3次元設計データと前記3次元点群データとを比較するデータ比較部と、前記データ比較部の比較結果に基づいて、前記建設現場で今後実施される作業内容に適合する前記足場情報を前記足場情報記憶部から抽出し、前記建設現場での作業に従事する作業員に提示する足場情報提示部と、を備えることを特徴とする。
本発明にかかる建設作業支援方法は、建設現場における作業を支援する建設作業支援方法であって、複数種類の足場の形状を含む足場情報を記憶する足場情報記憶部と、レーザスキャナにより前記建設現場の3次元点群データを取得する点群データ取得工程と、前記建設現場における建設対象物の3次元設計データと前記3次元点群データとを比較するデータ比較工程と、前記データ比較工程での比較結果に基づいて、前記建設現場で今後実施される作業内容に適合する前記足場情報を前記足場情報記憶部から抽出し、前記建設現場での作業に従事する作業員に提示する足場情報提示工程と、を含んだことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、建設現場における足場の設置作業の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態にかかる建設作業支援システムの概要構成を示す図である。
図2】建設作業支援システムの機能的構成を示すブロック図である。
図3】建設作業支援システムにおける作業支援のフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる建設作業支援システムおよび建設作業支援方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。
図1は、実施の形態にかかる建設作業支援システムの概要構成を示す図である。
建設作業支援システム10は、建設現場における作業進捗を管理する。建設現場とは、ビルやマンション、倉庫などの建築建設現場であってもよいし、ダムや橋、トンネルなどの土木建設現場であってもよい。
建設作業支援システム10は、作業支援装置12、自動巡回移動体14(14A,14B)、設計データ作成装置16を備える。
【0009】
作業支援装置12は、CPU、制御プログラムなどを格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、各種データを書き換え可能に保持するEEPROM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成されるコンピュータである。
作業支援装置12は、例えば建設現場の管理棟など建設現場の近傍に設置されており、建設現場の作業員や作業管理者等に利用される。図1では、作業支援装置12をノート型パソコンとして図示しているが、デスクトップ型パソコンやタブレット端末等であってもよい。
【0010】
自動巡回移動体14(14A,14B)は、レーザスキャナ18を搭載し、建設現場を自動巡回する。自動巡回移動体14は、例えば建設現場内を巡回する巡回経路が設定されており、建設現場内に設置されたビーコンやGPSなどにより現在位置を確認しながら、所定のスキャン地点においてレーザスキャナ18で周囲をスキャンし、建設現場内の点群データを取得する。
【0011】
図1では、自動巡回移動体14の一例としてドローン14Aと台車ロボット14Bとを図示しているが、自律的に移動できる機器であれば従来公知の様々な機器を自動巡回移動体14として利用することができる。例えば天井高さが高い建物を建設する建設現場(または建物のうち天井高さが高い箇所)ではドローン14Aを用い、その他の現場では台車ロボット14Bを用いる、など使い分けをしてもよい。
【0012】
レーザスキャナ18(3次元レーザースキャナ)は、計測対象物にレーザを放射状に照射し、レーザの反射時間から求められる計測対象までの距離と照射角度に基づいて計測対象物の表面形状の3次元座標を取得する。レーザスキャナ18の性能にもよるが、毎秒数万点程度の速度で非接触により計測し、高密度で面的な点群データを得ることができる。
また、レーザスキャナ18に内蔵されたカメラによって計測箇所で画像を撮影し、画像の色やレーザの反射強度(計測対象の材質や色によって変化するレーザの反射具合)に応じて点群データを着色することもできる。
また、1か所からでは計測ができない計測対象の裏側や広範囲なエリアでも、複数のスキャンデータ間でターゲットを共通点にして合成したり、座標付けをすることができる。
【0013】
本実施の形態では、自動巡回移動体14が建設現場を自動巡回し、建設現場各部の点群データを取得するものとするが、これに限らず、例えば建設現場の作業員がレーザスキャナ18を所持して建設現場内を巡回し、所定の地点でスキャン作業を行い、建設現場各部の点群データを取得するようにしてもよい。
また、ドローン14Aや台車ロボット14Bを自動巡回させるのではなく、遠隔操作により巡回およびスキャン作業を実施するようにしてもよい。
【0014】
設計データ作成装置16は、作業支援装置12と同様に、CPU、制御プログラムなどを格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、各種データを書き換え可能に保持するEEPROM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成されるコンピュータである。
図1では、設計データ作成装置16をデスクトップ型パソコンとして図示しているが、ノート型パソコン等であってもよい。
【0015】
設計データ作成装置16は、例えば建設工事を請け負う事業者等に設置されており、建設現場における建設対象物の設計データの作成に利用される。より詳細には、設計データ作成装置16には設計用アプリケーションがインストールされており、設計者の操作により建築対象物の設計図または施工図としての3次元設計データを作成する。
設計データ作成装置16は、過去に建設した建設物の設計データ(後述するBIMモデル)である過去設計データ160(図2参照)を記憶している。設計者は、今回の建設対象物と類似する建設物の3次元設計データを、過去設計データ160内から検索し、類似する箇所を部分的に再利用したり、参考にしながら設計作業を行う。これにより、設計作業を効率化することができる。
【0016】
本実施の形態では、3次元設計データとして、BIM(Building Information Modeling)モデルを用いる。
BIMでは、コンピュータ上に作成した3次元の建物のデジタルモデルに、コストや仕上げ、管理情報などの属性データを追加した建築物のデータベースを建設作業の各フェーズで活用する。BIMモデルは、建設対象物を構成する各部材(パーツ)の部材モデルを含んでいる。部材モデルには、部材の寸法(幅や奥行き、高さ等)に加え、素材や組み立てる工程(時間)なども含めることができる。
なお、3次元設計データはBIMモデルに限らず、同等の機能を実現できればどのような形式のデータであってもよい。
【0017】
本実施の形態では、BIMモデルを構成する各部材モデルには、当該部材の施工に際して用いた足場の情報(足場情報)が含まれている。すなわち、BIMモデル内に足場情報が含まれている。
足場情報は、足場の形状、寸法、設置位置(部材との位置関係や距離)、使用部材の型番、組み立て手順、当該足場に適合する作業の種類の少なくともいずれか1つを含んでいる。例えば足場の形状は、好ましくは3次元モデル、または写真や図面などで示される。また、組み立て手順は、例えば3次元モデルを用いた動画や実際の組み立て作業を映した動画等で示される。なお、足場情報に含まれる情報の種類は任意であるが、少なくとも足場の形状を含むことが好ましい。
【0018】
本実施の形態では、上記過去設計データ160内のBIMモデルに足場情報が含まれており、例えばBIMモデル作成時に過去設計データ160内のデータを流用することにより、新規に作成するBIMモデル内にも足場情報を含めることができる。
より詳細には、設計者が建築対象物のBIMモデルを作成する際、過去設計データ160内のBIMモデルと類似する箇所を部分的に再利用したり、参考にする。この時、BIMモデルの再利用部分(または参考部分)の構成部品に足場情報が登録されている場合、現在作成中のBIMモデルの同種の部品に当該データをインポートすることにより、今回作成するBIMモデル内に足場情報を含めることができる。
また、例えば設計用アプリケーションに、現在設計中の建設対象物と類似度が高い過去データ内の足場情報を抽出する機能を持たせてもよい。設計者は、必要に応じて抽出された足場情報を、今回設計するBIMモデル内の部材モデル内に含ませる。類似度が高い、とは、例えば建物の用途や種類、構造、利用者層、施主が共通する場合などである。
【0019】
図2は、建設作業支援システムの機能的構成を示すブロック図である。
作業支援装置12は、上記CPUが上記制御プログラムを実行することにより、点群データ取得部122、データ比較部124、足場情報提示部126、足場情報登録部128として機能する。
また、作業支援装置12の記憶領域(ストレージ)であるEEPROMには、建設現場での作業の足場情報を含むBIMモデルが記憶されている。すなわち、作業支援装置12の記憶領域は、BIMモデル記憶部120および足場情報記憶部120Aとして機能する。
なお、BIMモデルおよび足場情報の記憶場所は作業支援装置12内に限らず、作業支援装置12がアクセス可能な外部ストレージ等であってもよい。
【0020】
BIMモデル記憶部120は、建設現場における建設対象物の3次元設計データであるBIMモデルを記憶する。上述のように、BIMモデルは建設対象物を構成する各部材(パーツ)の部材モデルを含んでおり、各部材モデルは、それぞれの部材を扱った作業に適合する足場に関する足場情報(足場情報データ)を含んでいる。よって、BIMモデル記憶部120は、複数種類の足場の形状を含む足場情報を記憶する足場情報記憶部120Aを兼ねている。
【0021】
点群データ取得部122は、レーザスキャナ18により取得された建設現場の3次元点群データを取得する。本実施の形態では、点群データ取得部122は、自動巡回移動体14の自動巡回中(または作業員による巡回中)にレーザスキャナ18が取得した3次元点群データを、レーザスキャナ18のメモリから読み出す、またはレーザスキャナ18から送信させることにより、建設現場の3次元点群データを取得する。取得した3次元点群データは、作業支援装置12の記憶領域に記憶され、以下に説明する各種処理に利用される。
【0022】
データ比較部124は、BIMモデル(建設現場における建設対象物の3次元設計データ)と点群データ取得部122で取得した3次元点群データとを比較する。
BIMモデルには、建設対象物を構成する全ての部材が含まれているため、建設途中における3次元点群データと比較した場合でも、各点に対応する部材が存在するはずである。
例えば心材が露出した状態の壁をスキャンした点群データとBIMモデルとを比較すると、点群としてスキャンされた心材の位置とBIMモデル上の心材の位置が略一致する。
よって、データ比較部124は、建設現場上の同一領域に対応する3次元点群データとBIMモデルとを比較して、それぞれの部材の存在範囲に点群が存在する否かを判断する。
【0023】
そして、データ比較部124は、BIMモデルを構成する各部材モデル(建設対象物を構成する各部材)を、以下の3状態に分類する。
1.未着手:注目する部品の存在範囲に点群データが存在しない。
2.完了:注目する部品の形状と当該部分の点群データの形状との誤差が所定範囲内に収まっている。
3.仕掛:注目する部品の形状と当該部分の点群データの形状との誤差が所定範囲内に収まっていないが、注目する部品の存在範囲に点群データは存在する。
なお、分類判定の誤りを防止するため、データ比較部124による部材の分類結果(特に「完成」について)は、作業管理者等が実際に部材の作業状況を確認してから承認するようにしてもよい。
【0024】
足場情報提示部126は、データ比較部124の比較結果に基づいて、建設現場で今後実施される作業内容に適合する足場情報を足場情報記憶部120Aから抽出し、建設現場での作業に従事する作業員に提示する。
足場情報提示部126は、例えば上記「仕掛」および「未着手」に分類された部品モデルに登録されている足場情報を抽出する。作業管理者(または作業員)は、抽出された足場情報から、現場での作業進捗状態に応じて当日に提示する足場情報を選択する。また、例えば足場情報提示部126が予め定められた作業予定(作業支援装置12に登録された作業予定データ)に基づいて、当日に作業予定の部材を特定し、この部材に関連づけられた足場情報を抽出するようにしてもよい。
【0025】
さらに足場情報提示部126は、抽出した足場情報を建設現場での作業に従事する作業員に提示する。
足場情報提示部126は、例えば作業支援装置12のディスプレイ12Aに3次元表示されたBIMモデル上に足場情報を表示する。好ましくは、BIMモデル上に足場モデルを表示し、足場の形状、寸法、設置位置(部材との位置関係や距離)を3次元的に把握できるようにすることが好ましい。
その他、例えば個々の作業員が携帯する携帯情報端末に足場情報を送信するなど、足場情報提示部126による足場情報の提示方法は、従来公知の様々な方法を採ることができる。
【0026】
足場情報登録部128は、BIMモデル内の部材モデルに対して新たな足場情報を関連づける。
本実施の形態では、足場情報登録部128は、点群データ取得部122により取得された3次元点群データから足場に対応する点群を抽出し、当該足場に対応する足場情報を足場情報記憶部120Aに記憶する。
より詳細には、本実施の形態では、建設現場のスキャンにより取得した3次元点群データに対して、BIMモデルとの比較前に所定の前処理を行う。前処理とは、3次元点群データから仮設の手すりや足場、仮置き資材などに対応する不要な部分(点群)を削除する処理、3次元点群データとBIMデータとの座標系(原点、スケール、方向)を一致させる処理などである。足場情報登録部128は、この処理内で足場に対応する点群を取り除く際、その足場を用いて施工した部品を選択し(作業者等からの選択を受け)、足場の形状等の情報を足場情報として紐づける。
このような登録処理は、例えば作業員や作業管理者等が手動で行ってもよいし、例えば足場情報登録部128が足場の形状的特徴を機械学習により学習し、点群データから足場を自動的に抽出することにより行ってもよい。
また、足場情報登録部128は、新たな足場情報の登録を受けると、例えば設計データ作成装置16の過去設計データ160内に記憶された当該建設対象物のBIMモデルを更新し、次回以降の設計データに今回登録された足場情報を反映できるようにしてもよい。
【0027】
図3は、建設作業支援システムにおける作業支援のフローを示す図である。
設計者は、設計データ作成装置16の過去設計データ160(足場情報を含む)を利用しながら今回の建設対象物のBIMモデル(3次元設計データ)を作成する(ステップS300)。作成されたBIMモデルは、建設対象物の建設現場に設置される作業支援装置12に記憶される(ステップS302)。なお、当該BIMモデルは、設計データ作成装置16にも過去設計データ160として記憶される。
【0028】
建設作業が始まると、定期的に自動巡回移動体14が建設現場内を巡回し、レーザスキャナ18で周囲をスキャンし、建設現場内の点群データを取得する(ステップS304)。上述のように、このステップは自動巡回ではなく、作業員等がレーザスキャナ18を持って建設現場内を巡回して行ってもよい。
【0029】
つぎに、作業支援装置12(作業支援装置)の点群データ取得部122により、レーザスキャナ18で取得した点群データを読み込み、今回スキャン時の点群データ(以下「今回スキャンデータ」という)や画像データを取得する(ステップS306)。ステップS304およびS306が点群データ取得工程に対応する。
【0030】
取得された今回スキャンデータは、必要に応じてノイズ除去や座標軸の統一などの前処理が行われる(ステップS308)。
この時、今回スキャンデータ内に新規な足場が見つかった場合、足場情報登録部128は、新規な足場の形状等を足場情報としてBIMモデル内の部材モデルに関連づける(ステップS310:足場情報登録工程)。また、足場情報登録部128は、設計データ作成装置16の過去設計データ160内に記憶された本建設対象物のBIMモデルを、新たに足場情報を加えたBIMモデルで更新することにより、足場情報の追加を反映させる(ステップS312)。なお、ステップS312の処理は、ステップS310の後即座に行う必要はなく、例えば建設現場での作業終了後など任意のタイミングに行えばよい。
【0031】
データ比較部124は、今回スキャンデータとBIMモデルとを比較し、BIMモデル内の各部材について、未着手、完成、仕掛のいずれかの状態に分類する(ステップS314:データ比較工程)。
つぎに、足場情報提示部126は、上記「仕掛」および「未着手」に分類された部品モデルに登録されている足場情報を抽出し、さらに作業管理者が今回提示する足場情報を選択する(ステップS316)。そして、足場情報提示部126は、例えば作業支援装置12のディスプレイ12Aに3次元表示したBIMモデル上に足場情報を表示する(ステップS318)。作業管理者等は、例えば上記ディスプレイ12Aを見ながら作業員に対して足場作成の指示を行う。また、作業員が直接上記ディスプレイ12Aを見て足場の形状等を確認するようにしてもよい。
【0032】
以上説明したように、実施の形態にかかる建設作業支援システム10は、建設対象物の3次元設計データと実際の建設現場の3次元点群データとの比較結果に基づいて、今後実施される作業内容と関連する足場情報を提示する。よって、足場の設置に際して作業員に対して客観的な資料を提示することができ、建設現場での作業効率を向上させる上で有利となる。
建設現場では、日々異なる作業が行われており、必要な足場も都度異なる。よって、現場において適切な足場はどのようなものかを作業員や作業管理者が完全に把握するのは難しい場合がある。建設作業支援システム10で足場情報を提供することにより、作業者や作業管理者等の現場経験が少なくても適切な足場を設置することができ、建設現場での生産性を向上させる上で有利となる。
また、本実施の形態では、3次元設計データの部材モデル中に足場情報を関連づけるので、部材単位で足場情報を設定することができ、現場の状況に適した足場情報を精度よく提供する上で有利となる。
また、他の建設物を設計する際に3次元設計データを流用することにより、簡単に足場情報を引き継ぐことができ、作業管理者や設計者等の負担を軽減する上で有利となる。
また、本実施の形態のように自動巡回移動体14により3次元点群データを取得すれば、作業員等が建設現場を巡回してスキャンを行うのと比較して、作業員等の負担を軽減し、建設作業の効率を向上させる上で有利となる。
【符号の説明】
【0033】
10 建設作業支援システム
12 作業支援装置
120 BIMモデル記憶部
120A 足場情報記憶部
122 点群データ取得部
124 データ比較部
126 足場情報提示部
128 足場情報登録部
14 自動巡回移動体
16 設計データ作成装置
160 過去設計データ
18 レーザスキャナ
図1
図2
図3