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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】真空遮断器の異常検出システム
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/00 20060101AFI20231127BHJP
   H01H 33/662 20060101ALI20231127BHJP
   H02B 3/00 20060101ALI20231127BHJP
   H01H 33/668 20060101ALI20231127BHJP
   H02B 13/035 20060101ALI20231127BHJP
   G08C 15/00 20060101ALI20231127BHJP
   G08C 19/00 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
H01H33/00 A
H01H33/662 Z
H02B3/00 M
H01H33/668 K
H02B13/035 341Z
G08C15/00 D
G08C19/00 301G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020067225
(22)【出願日】2020-04-03
(65)【公開番号】P2021163709
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠矢 将大
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-129097(JP,A)
【文献】実開昭53-113374(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/00
H01H 33/662
H02B 3/00
H01H 33/668
H02B 13/035
G08C 15/00
G08C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側電極と前記固定側電極との間で電流の開閉を行う可動側電極とを有する真空バルブ、前記真空バルブを絶縁した上で固定するモールド部、前記固定側電極および前記可動側電極に接続され、外部電力系統との接続点となる一次ジャンクション部、前記可動側電極を操作する操作機構部、前記操作機構部の動作を前記可動側電極に伝達するリンク、前記リンクを収容し、前記操作機構部と前記真空バルブを固定する台車部、前記可動側電極に通電する通電棒および前記一次ジャンクション部にそれぞれ取り付けられ、予め設定された温度で変色する温度シールからなる真空遮断器と、
前記温度シールを撮影するカメラ、前記カメラの動作を制御し、前記カメラからの画像情報に基づき、前記温度シールの変色を検出する中央処理装置を有する異常検出装置とを備えたことを特徴とする真空遮断器の異常検出システム。
【請求項2】
前記台車部に取り付けられ、予め設定された温度および湿度で変色する温度シールおよび湿度シールをさらに備え、前記温度シールおよび前記湿度シールの変色を前記カメラで撮影した画像情報に基づいて検出することを特徴とした請求項1に記載の真空遮断器の異常検出システム。
【請求項3】
前記モールド部の上部に取り付けられ、予め設定された温度で変色する温度シールをさらに備え、前記温度シールの変色を前記カメラで撮影した画像情報に基づいて検出することを特徴とした請求項1または請求項2に記載の真空遮断器の異常検出システム。
【請求項4】
固定側電極と、前記固定側電極との間で電流の開閉を行う可動側電極と、前記可動側電極に通電する通電棒と、前記固定側電極および前記可動側電極を収容するセラミックス容器と、一端が前記通電棒に取り付けられ、前記可動側電極が上下に可動しても前記セラミックス容器内の真空度を保つための第一のベローズと、この第一のベローズの他端が取り付けられ、前記第一のベローズを支持するフランジと、前記セラミックス容器および前記フランジに取り付けられ、前記セラミックス容器および前記第一のベローズ間の真空度を保持するための第二のベローズと、前記フランジの外周に取り付けられた位置検出用シールとを備えた真空遮断器、
前記位置検出用シールを撮影するカメラ、前記カメラの動作を制御し、前記カメラからの画像情報に基づき、前記位置検出用シールの位置の変化を検出し、予め設定した値以上に変化したとき異常と判定する中央処理装置を有する異常検出装置を備えたことを特徴とする真空遮断器の異常検出システム。
【請求項5】
固定側電極と、前記固定側電極との間で電流の開閉を行う可動側電極と、前記可動側電極に通電する通電棒と、前記通電棒の可動範囲を規制する係止部と、前記通電棒または前記係止部に取り付けられた位置検出用シールとを備えた真空バルブを、3相分併設してなる真空遮断器、
3相分の前記位置検出用シールを撮影するカメラと、前記カメラの動作を制御し、前記カメラからの画像情報に基づき、3相の前記位置検出用シールの位置の差分を検出し、この差分が予め設定した値以上になったとき異常と判定する中央処理装置を有する異常検出装置を備えたことを特徴とする真空遮断器の異常検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、真空遮断器の異常を検出する異常検出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力系統において回路遮断器を配置して運用する場合、回路遮断器は、開閉動作、環境要因(温度、湿度)などにより様々な異常が発生する可能性があり、異常が発生すると、停電するなど電力系統に多大な影響を及ぼすことになる。このため、特開2004-192441号公報(特許文献1)に示されるように、回路遮断器の異常を検知することが電力系統の安定供給にとって重要となる。これは、電力系統の上位になる程(電圧が高くなる程)、下流への影響が大きくなるため、より重要となる。
【0003】
電力系統における超高圧(72kV以上)の領域で使用されているガス遮断器では、特許文献1に示されるような多くのセンサによる異常検出が知られているが、電力系統における中間の高圧(3.6~72kV)の領域で主に使用されている従来の真空遮断器においては、センサの費用および信頼性の面から採用されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-192441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、真空遮断器における操作機構部の異常は、制御回路の電源情報(電圧、電流)を測定すれば検出することができるが、主回路部の異常は、様々な様相があり、様相に応じてセンサを別々に設け、それぞれの異常を検出する必要がある。
一方、異常検出システム自体の信頼性は、遮断器本体の信頼性よりも高い必要があるが、異常を検出するセンサの種類が増えると、異常検出システム全体の信頼性は個々のセンサの信頼性の積となるため、異常検出システム全体の信頼性が遮断器本体の信頼性よりも低下するという課題がある。
本願は、上述のような問題点を解決するためなされたもので、簡単な構成で信頼性の高い真空遮断器の異常検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に開示される真空遮断器の異常検出システムは、固定側電極と前記固定側電極との間で電流の開閉を行う可動側電極とを有する真空バルブ、前記真空バルブを絶縁した上で固定するモールド部、前記固定側電極および前記可動側電極に接続され、外部電力系統との接続点となる一次ジャンクション部、前記可動側電極を操作する操作機構部、前記操作機構部の動作を前記可動側電極に伝達するリンク、前記リンクを収容し、前記操作機構部と前記真空バルブを固定する台車部、前記可動側電極に通電する通電棒および前記一次ジャンクション部にそれぞれ取り付けられ、予め設定された温度で変色する温度シールからなる真空遮断器と、前記温度シールを撮影するカメラ、前記カメラの動作を制御し、前記カメラからの画像情報に基づき、前記温度シールの変色を検出する中央処理装置を有する異常検出装置とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本願に開示される真空遮断器の異常検出システムによれば、カメラによる撮影画像から真空遮断器の異常検出を行うことが可能となり、簡単な構成で信頼性の高い真空遮断器の異常検出システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る真空遮断器の異常検出システムを示す概要図である。
図2】実施の形態1に係る真空遮断器の異常検出システムに用いられる温度シールの概要を示す平面図である。
図3】実施の形態2に係る真空遮断器の異常検出システムを示す概要図である。
図4】実施の形態3に係る真空遮断器の異常検出システムを示す概要図である。
図5】実施の形態4に係る真空遮断器の異常検出システムの要部構成を示す概要図である。
図6】実施の形態4に係る真空遮断器の異常検出システムに用いられる位置検出用シールの概要を示す平面図である。
図7】実施の形態5に係る真空遮断器の異常検出システムの要部構成を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る真空遮断器の異常検出システムを示す概要図である。
図において、真空遮断器1は、電流の開閉を行う固定側電極および可動側電極を形成する固定側接点2aと可動側接点2bとを含む真空バルブ2を配置した主回路部3、真空バルブ2の固定側接点2aおよび可動側接点2bと外部電力系統との接続点となる一次ジャンクション部4、真空バルブ2の可動側接点2bに通電させる通電棒2cを介して可動側接点2bを移動させる操作機構部5、操作機構部5の動作を主回路部3に伝達するリンク6、リンク6を収容し、操作機構部5と主回路部3とを固定する台車部7、真空バルブ2の外周を含む主回路部3全体を絶縁した上で固定するモールド部8により構成されている。また、主回路部3で抵抗が増加すると、抵抗増加部で異常発熱するため、温度が異常に上昇する可能性が高い真空バルブ2の近傍である通電棒2c、および一次ジャンクション部4にそれぞれ温度シール9、10が貼り付けられている。この温度シール9、10は、周囲温度上限(例えば40℃)と真空遮断器1の規格上の温度上昇上限値(例えば75℃)とを加算した値(115℃)を設定値として変色するもので構成されている。
【0010】
一方、真空遮断器1の外部には、異常検出装置20が配置されており、この異常検出装置20は、真空遮断器1全体が撮影できる位置に配置されたカメラ21と、このカメラ21の動作を制御するとともに撮影された画像情報を処理し、主回路部3の正常または異常の判定を行うCPU(中央処理装置)22と、CPU22の制御プログラムが格納されたROMおよびデータを一時的に保存するRAMを有し、CPU22を動作させるメモリ23と、CPU22の演算結果を表示する表示器24とを備えている。
【0011】
このような構成のもとで、電力系統に真空遮断器1を配置して動作させるとともに予め設定されたプログラムに従ってカメラ21を動作させ、カメラ21から得られる画像情報に基づいてCPU22により真空遮断器1の主回路部3の異常状態を判定する。
【0012】
すなわち、主回路部3で抵抗が増加すると、抵抗増加部で異常発熱することになり、主回路部3における真空バルブ2の近傍である通電棒2cおよび一次ジャンクション部4にそれぞれ設けられた温度シール9および温度シール10の温度が上昇し、この温度が予め設定された温度115℃を超えると、第2図(b)に示すように、温度シール9および温度シール10が変色することになり、これを撮影したカメラ21の画像情報に基づいて、CPU22は、主回路部3が異常発熱していると判定し、表示器24に異常発熱状態にあることを表示することになる。
したがって、温度シール9および温度シール10を真空遮断器1の主回路部3および一次ジャンクション部4に取り付け、これをカメラ21で撮影するという簡単な構成で信頼性の高い真空遮断器の異常検出を行わせることができる。
【0013】
実施の形態2.
図3は、実施の形態2に係る真空遮断器の異常検出システムを示す概要図である。
上述の実施の形態1においては、真空遮断器1の主回路部3および一次ジャンクション部4に温度シール9,10を貼り付けた場合について説明したが、実施の形態2においては、図3に示すように、さらに台車部7に温度シール11、湿度シール12をそれぞれ貼り付けて温度シール11および湿度シール12の変色をカメラ21により検出するように構成されている。
ここで、貼り付ける温度シール11および湿度シール12は、それぞれ周囲温度、湿度が許容できる上限値(例えば、40℃、85%RH)で変色する設定値とする。
このように、台車部7における温度シール11、湿度シール12の変色をカメラ21で撮影することによって、台車部7が真空遮断器1の主回路部3による発熱の影響を受け難いため、真空遮断器1の周囲環境における温度および湿度の異常を検出することができ、真空遮断器1の使用に伴う故障を防止することが可能となる。
【0014】
実施の形態3.
図4は、実施の形態3に係る真空遮断器の異常検出システムを示す概要図である。
図において、実施の形態3に係る真空遮断器の異常検出システムは、温度シール9,10,11、湿度シール12に加えて、真空バルブ2を固定するためのモールド部8の上部に温度シール13を貼り付けて構成されている。
ここで、貼り付ける温度シール13は、周囲温度の上限値(例えば40℃)と主回路通電電流上限値でのモールド部8の温度上昇値(例えば50℃)を加算した値(40+50=90℃)で変色するように設定されている。
このように、モールド部8における温度シール13の変色をカメラ21で撮影することによって、真空遮断器1の主回路部3が異常な温度に上昇した場合、熱が真空バルブ2の上部に伝わるため、温度シール13が変色することになり、カメラ21によって主回路部3において異常が発生していることを検出することが可能となる。
【0015】
実施の形態4.
次に、実施の形態4に係る真空遮断器の異常検出システムについて図5を用いて説明する。
真空遮断器1の要部概要を示す図5において、真空バルブ2は、固定側接点2aと、固定側接点2aに離接する可動側接点2bと、可動側接点2bを支持する通電棒2cと、固定側接点2aおよび可動側接点2bを収容するセラミックス容器2dと、一端が通電棒2cに取り付けられ、可動側接点2bが上下に可動してもセラミックス容器2d内の真空度を保つためのベローズ2eと、このベローズ2eの他端が取り付けられ、ベローズ2eを支持するフランジ2fと、セラミックス容器2dおよびフランジ2fに取り付けられ、セラミックス容器2dおよびベローズ2e間の真空度を保持するためのベローズ2gと、フランジ2fの外周に取り付けられた位置検出用シール2hにより構成されている。
【0016】
ここで、位置検出用シール2hは、例えば、図6に示すように円形状の枠と4分割した塗りつぶしからなるパターンを形成しておき、このような位置検出用シール2hを異常検出装置20のカメラ21によって撮影し、撮影画像から位置検出用シール2hの位置の移動を比較することにより異常を検出するものである。
すなわち、真空バルブ2の内部は、真空度を保つ必要があるが、可動側接点2bが固定側接点2aと離接する時の衝撃等により亀裂が発生し、真空度が劣化する場合がある。この場合、真空バルブ2内に侵入した大気圧によって、ベローズ2gが伸長することになり、ベローズ2g端部のフランジ2fに取り付けた位置検出用シール2hの位置を以前に撮影した位置検出用シール2hの位置とCPU22により比較し、予め設定した値以上に変化したとき真空バルブ2の真空度が劣化しているとして表示器24を動作させることによって、真空遮断器1の異常を検出することが可能となる。


【0017】
実施の形態5.
次に、実施の形態5に係る真空遮断器の異常検出システムについて図7を用いて説明する。
一般的に、真空遮断器1は、3相交流の電力回路に使用されるため、3個の真空遮断器1が併設されて用いられており、このため、図7に示すように、3相の真空バルブ2における通電棒2cの可動範囲を規制する係止部2kにそれぞれ位置検出用シール2hを設け、この位置検出用シール2hを異常検出装置20のカメラ21によって撮影し、3個の位置検出用シール2hの位置を比較することにより異常を検出するものである。
すなわち、真空遮断器1における開閉動作は、リンク6により3相同時に行われるが、リンク6の破損等によってある相が他の相と同時に動作しない欠相が発生する場合があり、この場合、欠相が発生した相の位置検出用シール2hの位置が他の相の位置検出用シール2hの位置と異なることになるため、3相の真空バルブ2における位置検出用シール2hをカメラ21で同時に撮影し、その位置情報を比較することによって真空遮断器1の異常を検出することが可能となる。なお、位置検出用シール2hを係止部2kに代えて通電棒2cに取り付け、複数の位置検出用シール2hによる差分のデータを初期状態における差分のデータと比較することにより、同様に真空遮断器1の異常を判定することができる。
【0018】
なお、本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0019】
1:真空遮断器、 2:真空バルブ、 3:主回路部、 4:一次ジャンクション部、
5:操作機構部、 6:リンク、 7:台車部、 8:モールド部、
9,10,11:温度シール、12:湿度シール、 13:温度シール、
20:異常検出装置、 21:カメラ、 22:CPU、23:メモリ、
24:表示器、 2a:固定側接点、 2b:可動側接点、 2c:通電棒、
2d:セラミックス容器、 2e:ベローズ、 2f:フランジ、 2g:ベローズ、
2h:位置検出用シール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7