IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友理工株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ブラケット付防振装置 図1
  • 特許-ブラケット付防振装置 図2
  • 特許-ブラケット付防振装置 図3
  • 特許-ブラケット付防振装置 図4
  • 特許-ブラケット付防振装置 図5
  • 特許-ブラケット付防振装置 図6
  • 特許-ブラケット付防振装置 図7
  • 特許-ブラケット付防振装置 図8
  • 特許-ブラケット付防振装置 図9
  • 特許-ブラケット付防振装置 図10
  • 特許-ブラケット付防振装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】ブラケット付防振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 13/10 20060101AFI20231127BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20231127BHJP
   F16F 15/04 20060101ALI20231127BHJP
   B60K 5/12 20060101ALN20231127BHJP
【FI】
F16F13/10 F
F16F15/08 W
F16F15/04 A
B60K5/12 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020068791
(22)【出願日】2020-04-07
(65)【公開番号】P2021165573
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2023-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】田中 信伍
(72)【発明者】
【氏名】安藤 龍一
(72)【発明者】
【氏名】大木 健司
(72)【発明者】
【氏名】近藤 弘基
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-190600(JP,A)
【文献】特開2018-162824(JP,A)
【文献】特開2018-040405(JP,A)
【文献】特開2018-080788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 13/10
F16F 15/08
F16F 15/04
B60K 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の取付部材と第二の取付部材とを本体ゴム弾性体によって連結した防振装置本体と、該防振装置本体が差し入れられる挿入開口部を有するブラケットとを備え、
該第二の取付部材が幅方向両側に一対の嵌着部を有していると共に、
該ブラケットが該幅方向両側に一対の対向壁部を有し、該一対の対向壁部の各対向内面には該挿入開口部から奥方へ向けて延びる嵌着溝が形成されており、
該第二の取付部材の該一対の嵌着部が該ブラケットの該一対の嵌着溝に該挿入開口部から組付方向である該奥方へ向けて挿入されて、該防振装置本体が該ブラケットに組み付けられているブラケット付防振装置であって、
前記第二の取付部材から該奥方へ向けて突出する可撓性のフックが設けられており、
該第二の取付部材の前記ブラケットへの該組付方向と反対の抜け方向において該フックが該ブラケットに係止されて、該第二の取付部材が前記挿入開口部を通じた該ブラケットからの抜けを防止されていると共に、
該フックと該ブラケットの係止面が該第二の取付部材の前記一対の嵌着部よりも該奥方に離れて位置しており、且つ、
該フックが該第二の取付部材の該一対の嵌着部から奥方へ向けて突出していると共に、
前記幅方向における該フックの外面が該幅方向における該一対の嵌着部の外面よりも該幅方向の内側に位置しているブラケット付防振装置。
【請求項2】
第一の取付部材と第二の取付部材とを本体ゴム弾性体によって連結した防振装置本体と、該防振装置本体が差し入れられる挿入開口部を有するブラケットとを備え、
該第二の取付部材が幅方向両側に一対の嵌着部を有していると共に、
該ブラケットが該幅方向両側に一対の対向壁部を有し、該一対の対向壁部の各対向内面には該挿入開口部から奥方へ向けて延びる嵌着溝が形成されており、
該第二の取付部材の該一対の嵌着部が該ブラケットの該一対の嵌着溝に該挿入開口部から組付方向である該奥方へ向けて挿入されて、該防振装置本体が該ブラケットに組み付けられているブラケット付防振装置であって、
前記第二の取付部材から該奥方へ向けて突出する可撓性のフックが設けられており、
該第二の取付部材の前記ブラケットへの該組付方向と反対の抜け方向において該フックが該ブラケットに係止されて、該第二の取付部材が前記挿入開口部を通じた該ブラケットからの抜けを防止されていると共に、
該フックと該ブラケットの係止面が該第二の取付部材の前記一対の嵌着部よりも該奥方に離れて位置しており、且つ、
該フックが枠状部を備え、該ブラケットが該枠状部に挿入される突起を備えており、該枠状部と該突起において該フックと該ブラケットが係止されているブラケット付防振装置。
【請求項3】
前記ブラケットが前記一対の対向壁部を前記奥方において相互に連結する奥壁部を備え、
該奥壁部には前記フックが挿入される挿入部が設けられており、
前記突起が該挿入部において前記幅方向の内側から外側へ向けて突出している請求項に記載のブラケット付防振装置。
【請求項4】
前記ブラケットには、前記フックの撓み変形を許容する変形許容空所が設けられている請求項1~の何れか一項に記載のブラケット付防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のエンジンマウント等に用いられるブラケット付防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両のエンジンマウント等に用いられる防振装置が知られている。また、防振装置は、車両に対して取り付けられるブラケットを備える場合もあり、例えば、特開2018-162824号公報(特許文献1)に示されている。特許文献1の防振装置は、第1取付部と第2取付部が弾性体によって連結された本体部が、第2取付部においてブラケットに取り付けられた構造を有している。また、本体部は、ブラケットのガイド部によって案内されて、ブラケットにより区画された挿入空間内へ側方から挿入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-162824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1では、本体部の第2取付部に被ガイド部が設けられている。そして、被ガイド部における挿入方向の奥側に設けられた本体係合部が、ブラケットのガイド部に設けられたブラケット係合部に係合されることにより、本体部がブラケットの挿入空間から挿入方向とは逆向きに抜け出すのを抑制する抜止構造が構成される。
【0005】
しかしながら、特許文献1の構造では、本体係合部が第2取付部の被ガイド部に設けられていると共に、ブラケット係合部がブラケットのガイド部に設けられていることから、それら本体係合部とブラケット係合部の形状やサイズ等の設計自由度が小さかった。蓋し、本体係合部とブラケット係合部の形状やサイズ等は、本体部のブラケットに対する挿入時に被ガイド部をガイド部によって案内可能となるように設計される必要があり、ガイド部または被ガイド部の一部としての設計が求められるからである。
【0006】
本発明の解決課題は、防振装置本体のブラケットからの抜けを係止によって制限する抜止構造を、大きな設計自由度をもって設けることができる、新規な構造のブラケット付防振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0008】
第一の態様は、第一の取付部材と第二の取付部材とを本体ゴム弾性体によって連結した防振装置本体と、該防振装置本体が差し入れられる挿入開口部を有するブラケットとを備え、該第二の取付部材が幅方向両側に一対の嵌着部を有していると共に、該ブラケットが該幅方向両側に一対の対向壁部を有し、該一対の対向壁部の各対向内面には該挿入開口部から奥方へ向けて延びる嵌着溝が形成されており、該第二の取付部材の該一対の嵌着部が該ブラケットの該一対の嵌着溝に該挿入開口部から組付方向である該奥方へ向けて挿入されて、該防振装置本体が該ブラケットに組み付けられているブラケット付防振装置であって、前記第二の取付部材から該奥方へ向けて突出する可撓性のフックが設けられており、該第二の取付部材の前記ブラケットへの該組付方向と反対の抜け方向において該フックが該ブラケットに係止されて、該第二の取付部材が前記挿入開口部を通じた該ブラケットからの抜けを防止されていると共に、該フックと該ブラケットの係止面が該第二の取付部材の前記一対の嵌着部よりも該奥方に離れて位置しており、且つ、該フックが該第二の取付部材の該一対の嵌着部から奥方へ向けて突出していると共に、前記幅方向における該フックの外面が該幅方向における該一対の嵌着部の外面よりも該幅方向の内側に位置しているものである。
【0009】
本態様に従う構造とされたブラケット付防振装置によれば、第二の取付部材のフックがブラケットに係止されることによって、第二の取付部材のブラケットからの抜けが防止されている。
【0010】
フックは、防振装置本体のブラケットに対する挿入方向の奥方へ向けて第二の取付部材から突出して設けられており、フックとブラケットの係止面が第二の取付部材の一対の嵌着部よりも奥方に離れて位置している。それゆえ、フックは、第二の取付部材において案内作用を発揮する部分ではなくてもよく、案内作用を発揮する構造に限定されないことから、大きな自由度で設計することが可能とされる。
【0011】
第二の取付部材から奥方へ向けて突出したフックが、ブラケットに対して嵌着部よりも奥方に離れた位置において係止されている。これにより、嵌着部の嵌着溝への挿入によってブラケットの挿入開口部が変形したとしても、挿入開口部の変形がフックとブラケットの係止部分に影響し難く、フックとブラケットが安定して係止される。また、フックが第二の取付部材から奥方へ向けて突出していることにより、第二の取付部材をブラケットの挿入開口部から挿入する際に、フックが挿入作業の邪魔になり難く、挿入作業時にフックに引っ掛かるなどしてフックが損傷するのを防ぐこともできる。しかも、防振装置本体がブラケットに挿入される際に、奥方へ突出したフックが最初に挿入されることにより、フックがブラケットによって保護される。
【0013】
また、本態様に従う構造とされたブラケット付防振装置によれば、一対の嵌着部が設けられる幅方向両側において、フックとブラケットの係止による抜止構造が設けられて、フックとブラケットの係止によって発揮される抜け抗力が、防振装置本体とブラケットの間にバランスよく及ぼされる。
【0014】
フックが一対の嵌着部から奥方へ向けて突出していることにより、フックとブラケットの係止面が一対の嵌着部よりも奥方に設定される。それゆえ、フックとブラケットの係止面の構造が、ブラケットの嵌着溝によって案内される一対の嵌着部の構造によって制限されない。
【0016】
更にまた、本態様に従う構造とされたブラケット付防振装置によれば、フックの幅方向外面が嵌着部の幅方向外面よりも幅方向の内側に位置していることにより、防振装置本体をブラケットに挿入する際に、フックの幅方向外面がブラケットに干渉し難くなる。また、例えば、幅方向においてフックが嵌着部よりも薄肉とされることにより、フックに必要な可撓性がフックの形状によって容易に設定可能とされる。
【0017】
の態様は、第一の取付部材と第二の取付部材とを本体ゴム弾性体によって連結した防振装置本体と、該防振装置本体が差し入れられる挿入開口部を有するブラケットとを備え、該第二の取付部材が幅方向両側に一対の嵌着部を有していると共に、該ブラケットが該幅方向両側に一対の対向壁部を有し、該一対の対向壁部の各対向内面には該挿入開口部から奥方へ向けて延びる嵌着溝が形成されており、該第二の取付部材の該一対の嵌着部が該ブラケットの該一対の嵌着溝に該挿入開口部から組付方向である該奥方へ向けて挿入されて、該防振装置本体が該ブラケットに組み付けられているブラケット付防振装置であって、前記第二の取付部材から該奥方へ向けて突出する可撓性のフックが設けられており、該第二の取付部材の前記ブラケットへの該組付方向と反対の抜け方向において該フックが該ブラケットに係止されて、該第二の取付部材が前記挿入開口部を通じた該ブラケットからの抜けを防止されていると共に、該フックと該ブラケットの係止面が該第二の取付部材の前記一対の嵌着部よりも該奥方に離れて位置しており、且つ、該フックが枠状部を備え、ブラケットが該枠状部に挿入される突起を備えており、該枠状部と該突起において該フックと該ブラケットが係止されているものである。
【0018】
本態様に従う構造とされたブラケット付防振装置によれば、上記[0009]~[0011]に記載の効果に加えて、第二の取付部材から奥方へ突出するフックが枠状部を備えており、枠状部に挿入される突起がブラケットに設けられていることにより、枠状部と突起による係止構造をスペース効率よく設けることができる。また、可撓性のフックに枠状部を設ける方が、ブラケットに枠状部を設けるよりも製造が容易になり易い。
【0019】
の態様は、第の態様に記載されたブラケット付防振装置において、前記ブラケットが前記一対の対向壁部を前記奥方において相互に連結する奥壁部を備え、該奥壁部には前記フックが挿入される挿入部が設けられており、前記突起が該挿入部において前記幅方向の内側から外側へ向けて突出しているものである。
【0020】
本態様に従う構造とされたブラケット付防振装置によれば、ブラケットの挿入部へ挿入されたフックに対して外力が作用し難いことから、フックと突起との係止が解除され難く、フックと突起の係止による抜け抗力を安定して得ることができる。特に、フックが第二の取付部材から奥方へ向けて突出していることから、ブラケットにおいて挿入開口部と反対側の奥方に設けられる奥壁部を利用することにより、挿入部と突起を嵌着溝から奥方へ離れた位置へ容易に設けることができる。
【0021】
挿入部において突起が幅方向の内側から外側へ向けて突出していることにより、突起がブラケットの嵌着溝に対してより離れた側に設けられて、突起をより大きな形状自由度で形成することができる。特に、挿入部がブラケットにおいて一対の対向壁部ではなく奥壁部に設けられていることにより、挿入部において突起を幅方向の内側から外側へ向けて突出させ易い。
【0022】
の態様は、第一~第の何れか1つの態様に記載されたブラケット付防振装置において、前記ブラケットには、前記フックの撓み変形を許容する変形許容空所が設けられているものである。
【0023】
本態様に従う構造とされたブラケット付防振装置によれば、ブラケットに変形許容空所が設けられることによって、フックの撓み変形がブラケットによって拘束されることなく許容される。それゆえ、フックがブラケットに対してより小さな力によって係止される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、防振装置本体のブラケットからの抜けを係止によって防止する抜止構造を、大きな設計自由度をもって構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第一の実施形態としてのエンジンマウントを示す斜視図
図2図1に示すエンジンマウントの正面図
図3図1に示すエンジンマウントの背面図
図4図1に示すエンジンマウントの断面図であって、図5のIV-IV断面に相当する図
図5図4のV-V断面図
図6図2のVI-VI断面図
図7図1に示すエンジンマウントを構成するマウント本体の斜視図
図8図1に示すエンジンマウントを構成するアウタブラケットの背面図
図9図1に示すエンジンマウントの斜視断面図
図10】本発明の別の一実施形態としてのエンジンマウントの一部を示す斜視断面図
図11】本発明のまた別の一実施形態としてのエンジンマウントの一部を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
図1~6には、本発明に係るブラケット付防振装置の第一の実施形態として、自動車用のエンジンマウント10が示されている。エンジンマウント10は、防振装置本体としてのマウント本体12を備えている。マウント本体12は、図7に示すように、第一の取付部材14と第二の取付部材16が本体ゴム弾性体18によって連結された構造を有している。以下の説明において、原則として、上下方向とはマウント中心軸方向である図2中の上下方向を、左右方向とは幅方向である図2中の左右方向を、それぞれ言う。また、原則として、前後方向とは図6中の上下方向であって、前方とは図6中の下方を、後方とは図6中の上方を、それぞれ言う。また、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材については符号を省略する場合がある。
【0028】
第一の取付部材14は、金属や合成樹脂などで形成された高剛性の部材であって、図4,5に示すように、中実の円形ブロック状とされている。第一の取付部材14は、下方に向けて小径となっている。第一の取付部材14は、上面に開口して上下方向に延びるねじ穴20を有している。
【0029】
第二の取付部材16は、固着部材22を備えている。固着部材22は、第一の取付部材14と同様に高剛性の部材であって、略円環形状とされている。固着部材22の外周部分は、内周部分よりも下方へ突出して上下寸法が大きくされている。固着部材22の左右方向の両端部分は、それぞれガイド部24とされている。ガイド部24は、固着部材22において上下寸法が大きくされた外周部分によって構成されており、左右方向の両面がガイド面26とされている。ガイド面26は、左右方向に対して略直交して広がる平面とされている。ガイド面26は、後述するマウント本体12のアウタブラケット68に対する挿入時の案内作用を有利に得るために、前後方向に延びていることが望ましく、本実施形態では前後寸法が上下寸法よりも大きくされている。
【0030】
固着部材22には、一対のフック28,28が設けられている。各フック28は、図7に示すように、横転U字状に延びており、直線的に延びる両端部分である弾性支持部30,30と、それら弾性支持部30,30をつなぐ中央の湾曲部分である係止部32とを有している。弾性支持部30は、少なくとも左右方向の弾性的な曲げ変形を許容されており、これによってフック28が左右方向において可撓性を有している。本実施形態では、フック28の全体が枠状とされており、弾性支持部30,30と係止部32によって枠状部が構成されている。
【0031】
フック28,28は、固着部材22の左右両端部分に設けられており、固着部材22のガイド部24,24から前方へ延び出している。即ち、各フック28の弾性支持部30,30が固着部材22のガイド部24に一体的につながっていると共に、フック28の係止部32が固着部材22から前方へ突出している。各フック28は、弾性支持部30,30が上下方向において相互に対向して配置される向きに設けられている。フック28,28の左右方向外側の面は、後述する嵌着部110の左右方向外面を構成するガイド面26,26に対して、左右方向の内側に位置している。各フック28の上下寸法は、固着部材22の上下寸法よりも小さくされており、フック28,28の上面が固着部材22の上面よりも下方に位置していると共に、フック28,28の下面が固着部材22の下面よりも上方に位置している。
【0032】
第一の取付部材14と第二の取付部材16の固着部材22は、図4,5に示すように、略同一中心軸上で上下に離れて配置されて、本体ゴム弾性体18によって弾性連結されている。本体ゴム弾性体18は、略円錐台形状とされて、小径側となる上部に第一の取付部材14が固着されていると共に、大径側となる下部の外周面に第二の取付部材16の固着部材22が固着されている。本体ゴム弾性体18は、例えば、成形時に第一の取付部材14と第二の取付部材16の固着部材22とに加硫接着されている。
【0033】
本体ゴム弾性体18は、下方に向けて開口する凹状部34を備えている。この凹状部34は、周壁の上部が上方に向けて小径となるテーパ形状とされている。本体ゴム弾性体18は、凹状部34が形成されることによって、下方に向けて外周へ傾斜するテーパ状の断面形状を有している。
【0034】
固着部材22には、第二の取付部材16を構成する仕切部材36が取り付けられている。仕切部材36は、全体として略円板形状とされており、仕切部材本体38と蓋部材40の間に可動部材42を配した構造を有している。
【0035】
仕切部材本体38は、外周部分を周方向に一周に満たない長さで延びる周溝44が、上面に開口して形成されている。周溝44の一方の端部には、周溝44の下壁部を貫通する下連通孔46が形成されている。仕切部材本体38の内周部分には、環状の収容凹所48が上面に開口して形成されている。収容凹所48の下壁部には、複数の下透孔50が貫通形成されている。
【0036】
蓋部材40は、薄肉の円板形状とされており、仕切部材本体38の上面に重ね合わされて固定されている。蓋部材40には、周溝44の他方の端部を覆う部分に上連通孔52が形成されている(図6参照)。蓋部材40には、図6に示すように、収容凹所48を覆う部分に複数の上透孔54が形成されている。
【0037】
仕切部材本体38の収容凹所48には、可動部材42が収容されている。可動部材42は、略円環板形状のゴム弾性体であって、内周端部と外周端部がそれぞれ上側へ突出して厚肉とされている。そして、可動部材42が収容凹所48に差し入れられた状態において、蓋部材40が仕切部材本体38に固定されることにより、可動部材42が仕切部材本体38と蓋部材40の間において収容凹所48に収容されている。可動部材42は、厚肉とされた内周端部と外周端部が、仕切部材本体38と蓋部材40の上下方向間において挟持されており、それら内周端部と外周端部との径方向間において厚さ方向の弾性変形を許容されている。
【0038】
仕切部材36の下方には、薄肉のエラストマで形成された可撓性膜56が設けられている。可撓性膜56は、外周端部が厚肉とされて、仕切部材本体38の下面に重ね合わされている。そして、可撓性膜56の外周端部に対して、環状の支持部材58が下方から重ね合わされており、後述するマウント本体12のアウタブラケット68への装着状態において、可撓性膜56の外周端部が仕切部材本体38と支持部材58の間で挟持されている。
【0039】
支持部材58は、本実施形態において第二の取付部材16を構成する部材であって、固着部材22と同様に高剛性の部材とされている。支持部材58は、後述するマウント本体12のアウタブラケット68への装着状態において、内周部分が可撓性膜56を挟持すると共に、外周部分が仕切部材本体38の下面に当接する。これにより、固着部材22と仕切部材36と支持部材58とが上下方向において相互に位置決めされて、それら固着部材22と仕切部材36と支持部材58とによって本実施形態の第二の取付部材16が構成される。
【0040】
本体ゴム弾性体18の一体加硫成形品を構成する固着部材22に対して、仕切部材36と可撓性膜56が取り付けられることにより、本体ゴム弾性体18と仕切部材36の間には、壁部の一部が本体ゴム弾性体18で構成された受圧室60が形成されている。また、仕切部材36と可撓性膜56の間には、壁部の一部が可撓性膜56で構成された平衡室62が形成されている。受圧室60と平衡室62には、非圧縮性流体が封入されている。非圧縮性流体は特に限定されるものではないが、例えば水やエチレングリコールなどが採用される。非圧縮性流体は、混合液であっても良い。
【0041】
受圧室60と平衡室62は、周溝44を含んで構成されるオリフィス通路64によって、相互に連通されている。オリフィス通路64は、仕切部材36の外周部分を周方向に延びており、一方の端部が上連通孔52において受圧室60に連通されていると共に、他方の端部が下連通孔46において平衡室62に連通されている。そして、第一の取付部材14と第二の取付部材16の間に上下方向の振動が入力されて、受圧室60と平衡室62の間に内圧差が生じると、受圧室60と平衡室62の間でオリフィス通路64を通じた流体流動が生じて、流体の流動作用に基づく高減衰作用などの防振効果が発揮されるようになっている。オリフィス通路64は、流動流体の共振周波数であるチューニング周波数が、通路断面積と通路長さの比によって防振対象振動の周波数に調節されており、例えば、エンジンシェイクに相当する10Hz程度の低周波に設定される。
【0042】
収容凹所48に配された可動部材42の上下両面には、受圧室60の液圧と平衡室62の液圧との各一方が及ぼされている。そして、第一の取付部材14と第二の取付部材16の間に上下方向の振動が入力されて、受圧室60と平衡室62の間に内圧差が生じると、可動部材42が厚さ方向に弾性変形して、受圧室60の液圧を平衡室62に伝達して逃すようになっている。
【0043】
低周波大振幅振動が入力される場合には、オリフィス通路64を通じた流体流動が共振状態で積極的に生じて、高減衰による防振効果が発揮される。低周波大振幅振動が入力される場合には、可動部材42の変形が入力振動に追従しきれず、可動部材42の変形による液圧を逃す作用が低減されることから、オリフィス通路64を通じた流体の流動が効率的に生じる。中乃至高周波の小振幅振動が入力される場合には、オリフィス通路64が反共振によって実質的な目詰まり状態になるが、可動部材42が共振状態で積極的に弾性変形して液圧を逃すことにより、低動ばね化による防振効果が発揮される。
【0044】
マウント本体12には、図1~5に示すように、インナブラケット66とブラケットとしてのアウタブラケット68が取り付けられている。
【0045】
インナブラケット66は、板状の部材であって、第一の取付部材14の上面に重ね合わされて前方(図5中の右方)へ延び出す連結部70と、連結部70の前方に一体形成された取付部72とを、備えている。連結部70は、第一の取付部材14の上面に重ね合わされる部分に、上下方向に貫通するボルト孔74を備えている。取付部72は、連結部70に対して左右両側へ突出しており、上下方向に貫通するボルト孔76,76を備えている。そして、インナブラケット66は、連結部70のボルト孔74に挿通された連結ボルト78が、第一の取付部材14のねじ穴20に螺着されることにより、第一の取付部材14に固定されて、マウント本体12に取り付けられている。なお、インナブラケット66は、後述するマウント本体12がアウタブラケット68に装着された状態において、取付部72がアウタブラケット68よりも前方に突出しており、連結部70がアウタブラケット68の挿通孔92(後述)に挿通されて第一の取付部材14に固定される。
【0046】
アウタブラケット68は、図8に示すように、一対の対向壁部80,80を備えている。対向壁部80,80は、それぞれ上下方向に延びており、左右方向で相互に対向して設けられている。対向壁部80,80の上端部は、一体形成された天壁部82によって相互に連結されている。対向壁部80,80の下端部は、一体形成された底壁部84によって相互に連結されている。対向壁部80,80の下端部には、左右方向の外側へ向けて突出する取付片86がそれぞれ設けられており、各取付片86には上下方向に貫通するボルト孔88が形成されている(図1参照)。
【0047】
アウタブラケット68は、対向壁部80,80の前端部分を一体的につなぐ奥壁部90を備えている。奥壁部90は、前後方向に対する交差方向に広がる板状とされており、左右両端部が対向壁部80,80につながっている。奥壁部90の上端部は、天壁部82に対して下側へ離れており、奥壁部90と天壁部82の間には、前後方向に貫通する挿通孔92が形成されている。
【0048】
アウタブラケット68において、対向壁部80,80と天壁部82と底壁部84と奥壁部90とによって囲まれた空間は、マウント本体12が収容されるマウント収容空所94とされている。マウント収容空所94は後方へ向けて開放された凹所状とされており、マウント収容空所94の後方への開口が挿入開口部96とされている(図1参照)。また、マウント収容空所94は、上部において挿通孔92を通じて前方へ向けて開放されている(図5参照)。
【0049】
一対の対向壁部80,80によって構成されたマウント収容空所94の壁内面は、対向内面98,98とされている。対向内面98,98には、嵌着溝100,100が開口している。嵌着溝100,100は、前後方向へ直線的に延びており、後端部が一対の対向壁部80,80の後端まで達して挿入開口部96においてアウタブラケット68の後面に開口している。換言すれば、嵌着溝100,100は、挿入開口部96から奥方である前方へ向けて直線的に延びている。嵌着溝100,100は、一対の対向内面98,98の下部に設けられており、対向内面98,98は、上部よりも下部において左右方向の対向面間距離が大きくされている。
【0050】
奥壁部90には、図2,6にも示すように、一対の挿入部102,102が形成されている。挿入部102,102は、奥壁部90を前後方向に貫通する孔であって、嵌着溝100,100の延長上に配置されている。アウタブラケット68における挿入部102,102の壁部には、突起104,104が設けられている。突起104,104は、奥壁部90に一体形成されており、挿入部102,102において左右方向の内側から外側へ向けて突出している。突起104,104は、上下寸法が挿入部102,102の上下寸法よりも小さくされており、挿入部102,102の上下方向の中央部分において部分的に設けられている。突起104,104は、突出先端面が後方に向けて左右方向の内側へ傾斜する傾斜面106,106とされており、後方に向けて突出寸法が小さくされている。本実施形態では、奥壁部90が左右方向の両端部分において後方へ突出しており、突起104,104が奥壁部90の左右方向両端部分の後端に設けられていることから、突起104,104を含む奥壁部90の左右方向両端部分は、奥壁部90の左右方向中央部分に対してクランク状の横断面形状をもって設けられている。
【0051】
アウタブラケット68における挿入部102,102の左右外側には、それぞれ変形許容空所108が形成されている。変形許容空所108,108は、図6に示すように、対向壁部80,80の前端部分に設けられており、対向壁部80,80の前面および左右内面に開口する切欠き状の凹所とされている。変形許容空所108,108は、挿入部102,102とつながっている。変形許容空所108,108は突起104,104よりも後方にまで延びており、本実施形態では、突起104,104が変形許容空所108,108の前後中央部分に位置している。変形許容空所108,108の左右方向の深さは、突起104,104の左右方向の突出高さよりも大きくされていることが望ましい。
【0052】
アウタブラケット68は、図1~6に示すように、マウント本体12に取り付けられている。即ち、マウント本体12は、アウタブラケット68のマウント収容空所94に対して、後端の挿入開口部96から組付方向である前方へ向けて差し入れられる。その際に、マウント本体12の第二の取付部材16は、図4に示すように、左右両端部分である嵌着部110,110が、一対の対向壁部80,80の嵌着溝100,100に対して、挿入開口部96側から前方へ向けて挿入される。本実施形態の嵌着部110,110は、第二の取付部材16の構成部材である固着部材22と仕切部材36と支持部材58との左右両端部分によって構成されている。また、第二の取付部材16の支持部材58は、左右方向の両端部分だけでなく、左右方向の中間部分もアウタブラケット68の底壁部84の上面に重ね合わされている。これらにより、第二の取付部材16がアウタブラケット68に固定されて、マウント本体12がアウタブラケット68に上下方向と略直交する後方から組み付けられている。
【0053】
第二の取付部材16の嵌着部110,110が嵌着溝100,100に嵌め合わされることにより、固着部材22と支持部材58の間には、上下方向において接近方向の力が作用する。これにより、固着部材22と仕切部材36の間において本体ゴム弾性体18の下端部が上下方向に圧縮されると共に、仕切部材36と支持部材58の間において可撓性膜56の外周端部が上下方向に圧縮される。その結果、受圧室60および平衡室62の壁部における流体密性が高められて、液漏れなどの不具合が回避される。
【0054】
図6図9に示すように、マウント本体12がアウタブラケット68に組み付けられることによって、第二の取付部材16の固着部材22に一体形成されたフック28,28は、アウタブラケット68に設けられた突起104,104に係止される。即ち、マウント本体12がアウタブラケット68のマウント収容空所94に対して前方へ向けて差し入れられると、フック28,28がアウタブラケット68の挿入部102,102へ差し入れられ、フック28,28の先端部分である係止部32,32がアウタブラケット68の突起104,104に当接する。フック28,28の係止部32,32が突起104,104の傾斜面106,106に押し当てられると、フック28,28の弾性支持部30,30が撓んで、係止部32,32が左右方向の外側へ移動し、係止部32,32が突起104,104を乗り越える。係止部32,32が突起104,104を乗り越えることによって、係止部32,32と傾斜面106,106の当接が解除され、弾性支持部30,30が元の形状に復元することから、各突起104は、各フック28における弾性支持部30,30と係止部32とによって構成された枠状部の内周へ挿入される。これにより、フック28,28において枠状部を構成する係止部32,32は、突起104,104に対して前後方向において重なる位置で突起104よりも前方に位置せしめられて、突起104に対して前後方向において係止される。そして、マウント本体12がアウタブラケット68に対して組付方向と反対の後方へ挿入開口部96を通じて抜けようとする際に、マウント本体12のアウタブラケット68に対する後方(抜け方向)への移動が、フック28,28の係止部32,32と突起104,104の係止によって制限される。なお、係止部32,32と突起104,104の係止において、フック28,28における係止部32,32の後面が突起104,104に当接する第一係止面112とされると共に、突起104,104の前面が係止部32,32に当接する第二係止面114とされる。
【0055】
フック28,28がマウント本体12において嵌着部110,110よりも奥側に設けられていると共に、突起104,104がアウタブラケット68の嵌着溝100,100よりも奥側に設けられている。そして、フック28,28と突起104,104の係止面112,114は、第二の取付部材16の嵌着部110,110およびアウタブラケット68の嵌着溝100,100に対して、奥側に離れて位置している。これにより、フック28,28および突起104,104は、マウント本体12のアウタブラケット68への組付けに際して案内作用を発揮する嵌着部110,110および嵌着溝100,100とは独立しており、案内作用を発揮し得る形状やサイズ等に制限されることがない。それゆえ、フック28,28および突起104,104を大きな設計自由度で設けることが可能であり、フック28,28と突起104,104の係止による抜け抗力を有効に得ることができる。また、フック28,28と突起104,104は、マウント本体12のアウタブラケット68への組付けに際して、案内作用を得るための摺接等が求められないことから、係止によるマウント本体12のアウタブラケット68からの抜止機能を満たす性能とされていればよく、過度の耐久性や耐荷重性が求められることもない。
【0056】
マウント本体12とアウタブラケット68の分離を防止する抜止機構は、マウント本体12の嵌着部110,110がアウタブラケット68の嵌着溝100,100へ嵌め合わされたマウント本体12とアウタブラケット68の組付構造とは独立して設けられている。それゆえ、嵌着部110,110と嵌着溝100,100の嵌め合わせによるマウント本体12とアウタブラケット68の組付強度を十分に確保しながら、マウント本体12のアウタブラケット68からの抜けを阻止することができる。
【0057】
フック28,28は、マウント本体12においてアウタブラケット68への組付方向の奥側(前側)に設けられている。それゆえ、マウント本体12のアウタブラケット68への組付けに際して、アウタブラケット68のマウント収容空所94へフック28,28が最初に差し入れられる。その結果、マウント本体12のアウタブラケット68への組付作業において、フック28,28がアウタブラケット68によって保護されて、フック28,28の損傷が回避され易い。
【0058】
フック28,28の左右方向の外面は、第二の取付部材16のガイド面26,26よりも左右方向において内側に位置している。それゆえ、ガイド部24,24が嵌着溝100,100に嵌め入れられて、ガイド面26,26が嵌着溝100,100の内面に摺接する際に、フック28,28が嵌着溝100,100の内面に接するのを回避できる。
【0059】
また、固着部材22のガイド面26,26よりも前方へ突出したフック28,28の左右方向外面間の距離は、嵌着溝100,100における対向内面98,98間の距離よりも小さくされている。それゆえ、マウント本体12のアウタブラケット68(マウント収容空所94)への組付けに際して、先ずフック28,28がアウタブラケット68に対して嵌め合わされることなく挿入される。これにより、マウント本体12とアウタブラケット68の左右方向における相対移動量が、フック28,28とアウタブラケット68の当接によって制限され、マウント本体12がアウタブラケット68に対してある程度位置決めされる。このように、フック28,28は、マウント本体12をアウタブラケット68に組み付ける際の位置決めとしての機能も有し得ることから、マウント本体12のアウタブラケット68に対する組付けが容易になる。
【0060】
フック28,28は、第二の取付部材16における嵌着部110,110から突出している。それゆえ、マウント本体12の左右方向の両端部分において、フック28,28と突起104,104の係止による抜止構造が設けられて、抜け抗力をバランスよく得ることができる。
【0061】
嵌着部110,110が嵌着溝100,100によって案内される方向と、フック28,28と突起104,104を係止させるための入力方向とが、互いに略同じ方向とされている。それゆえ、嵌着部110,110を嵌着溝100,100に嵌め入れるだけで、フック28,28と突起104,104が簡単に係止される。
【0062】
特に本実施形態では、フック28,28に当接する突起104,104の先端面が傾斜面106,106とされており、マウント本体12とアウタブラケット68の間に組付けのために及ぼされる前後方向の力の一部が、傾斜面106,106からの当接反力としてフック28,28に対する左右方向外向きの分力に変換される。それゆえ、嵌着部110,110を嵌着溝100,100に嵌め入れることによって、フック28,28の係止部32が左右方向の外側へ移動して突起104,104を乗り越え、係止部32,32と突起104,104が簡単に係止される。
【0063】
突起104,104に係止されたフック28,28の係止部32,32は、アウタブラケット68の奥壁部90を貫通する挿入部102,102に挿入されている。それゆえ、係止部32,32がアウタブラケット68によって保護されて、係止部32,32の損傷やフック28,28と突起104,104の係止の解除などが防止される。また、挿入部102,102が貫通孔とされていることにより、例えば、フック28,28の係止部32,32と突起104,104が適切に係止された状態にあるか否かなどを、挿入部102,102を通じた前方からの目視によって容易に確認することができる。
【0064】
突起104,104は、挿入部102,102の後端部分に設けられていることから、突起104,104よりも前方に位置するフック28,28の係止部32,32は、挿入部102,102から前方へ突出することなく、挿入部102,102の内側に収容状態で配される。これにより、外部からフック28,28に触れ難くなっており、例えば、係止部32,32に対して意図しない外力が加わって、フック28,28が損傷するのを回避できると共に、フック28,28(係止部32,32)と突起104,104の係止が解除されるのを防ぐことができる。
【0065】
突起104,104は、挿入部102,102において左右方向の内側から外側へ向けて突出している。これによれば、フック28,28の係止部32,32が突起104,104を乗り越える際に、フック28,28が左右方向の外側へ撓むことから、マウント本体12の左右方向の両端部分に設けられたフック28,28がマウント本体12に干渉し難く、撓み変形を十分に許容し易くなる。
【0066】
突起104,104が挿入部102,102において左右方向の内側から外側へ向けて突出しており、突起104,104がアウタブラケット68の嵌着溝100,100に対してより離れて設けられていることにより、突起104,104をより大きな形状自由度で形成することができる。特に、挿入部102,102は、アウタブラケット68において、対向壁部80,80ではなく奥壁部90に設けられていることから、突起104,104を挿入部102,102において左右方向の内側から外側へ向けて突出させ易くなっている。
【0067】
アウタブラケット68における挿入部102,102の左右方向外側には、変形許容空所108,108が設けられている。これにより、フック28,28の係止部32,32が突起104,104を乗り越える際に、フック28,28の撓み変形による係止部32,32の左右外側への移動が変形許容空所108,108によって十分に許容されて、係止部32,32が突起104,104を乗り越えやすい。しかも、変形許容空所108,108は、奥壁部90によって連結された対向壁部80,80の前端部分に設けられていることから、対向壁部80,80における対向内面98,98間の距離を大きくすることなく、フック28,28の変形を十分に許容することができ、アウタブラケット68の小型化が図られる。
【0068】
マウント本体12のアウタブラケット68への組付方向を含む前後方向において、挿入部102,102が奥壁部90を直線的に貫通して設けられていると共に、突起104,104が挿入部102,102の壁内面において突出している。それゆえ、アウタブラケット68を鋳造(ダイカスト)によって成形する際に、前後に分割された成形用の金型によって奥壁部90を形成することにより、突起104,104を備えた挿入部102,102を簡単に形成することができる。また、嵌着溝100,100も前後方向に延びていることから、前後に分割された成形用の金型によって一対の対向壁部80,80の対向内面98,98を成形することで、嵌着溝100,100と挿入部102,102の両方を簡単に形成することができる。また、対向壁部80,80に設けられた変形許容空所108,108は、対向壁部80,80の前面に開口する切欠き状の凹所であることから、変形許容空所108,108も前後に分割された成形用金型によって簡単に形成することができる。要するに、本実施形態のアウタブラケット68によれば、簡単な型割構造によって、マウント本体12とアウタブラケット68の分離を防止する抜止機構と、マウント本体12とアウタブラケット68の組付構造とを、何れも実現可能となる。
【0069】
なお、インナブラケット66とアウタブラケット68がマウント本体12に装着されたエンジンマウント10は、例えば、インナブラケット66が、取付部72のボルト孔76,76に挿通される図示しないボルトによって、図示しないパワーユニットに取り付けられる。また、エンジンマウント10は、例えば、アウタブラケット68が、取付片86,86のボルト孔88,88に挿通される図示しないボルトによって、図示しない車両ボデーに取り付けられる。これらにより、パワーユニットが車両ボデーに対してエンジンマウント10を介して防振連結される。
【0070】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、第二の取付部材16とアウタブラケット68を固定する具体的な構造は、必ずしも前記実施形態の構造に限定されない。すなわち、前記実施形態では、第二の取付部材16を構成する固着部材22と仕切部材36と支持部材58との左右両端部分が、嵌着溝100,100に嵌め入れられる嵌着部110,110とされていたが、例えば、第二の取付部材16の固着部材22の左右両端部分だけが嵌着溝に嵌め入れられる嵌着部とされていてもよい。
【0071】
また、前記実施形態では、第二の取付部材16の嵌着部110,110とアウタブラケット68の嵌着溝100,100の内面とが、直接的に接するように嵌め合わされていたが、例えば、第二の取付部材16の嵌着部110,110にゴム弾性体が固着されるなどして、第二の取付部材16の嵌着部110,110とアウタブラケット68の嵌着溝100,100の内面とが、ゴム弾性体を介して間接的に接するようにしてもよい。このように、第二の取付部材16の嵌着部110,110とアウタブラケット68の嵌着溝100,100の内面との間にゴム弾性体を介在させることにより、部品の寸法誤差による固定力のばらつきや、マウント本体12のアウタブラケット68に対する組付けに必要な力のばらつきが低減される等の効果を得ることができる。なお、嵌着部110,110にゴム弾性体を設ける場合に、ゴム弾性体は、本体ゴム弾性体18と独立していてもよいし、本体ゴム弾性体18と一体形成されていてもよい。
【0072】
フック28の具体的な形状は、特に限定されない。例えば、図10に示すフック120のように、可撓性の弾性支持部の先端側に枠状部が設けられた構造であってもよい。具体的には、フック120は、板状の弾性支持部122の前側にU字状の係止部32が設けられた構造とされ得る。このフック120は、弾性支持部122の板厚方向への弾性的な曲げ変形によって、係止部32が突起104を乗り越えて突起104に係止される。
【0073】
例えば、図11に示すフック130のように、枠状部を持たない構造とすることもできる。具体的には、フック130は、板状とされた弾性支持部122の前端部分に左右方向に突出する係止爪132が設けられた構造とされ得る。このフック130は、弾性支持部122の板厚方向への弾性的な曲げ変形によって、係止爪132が突起104を乗り越えて突起104に係止される。図11では、突起104の突出先端面が傾斜面106とされておらず、係止爪132の弾性支持部122からの左右方向における突出高さが前方へ向けて小さくなっており、係止爪132の突出先端面が傾斜面134とされている。このように、フック130側に設けられる傾斜面134によって、フック130を撓み変形させる力が発揮されるようにしてもよい。
【0074】
フックは、左右方向の2箇所に設けられていなくてもよく、左右方向の1箇所または3箇所以上に設けられていてもよい。また、上下方向において相互に離れた複数箇所にフックをそれぞれ設けることもできる。フックの左右方向および上下方向の配置は、特に限定されず、例えば、嵌着部110,110を外れた部分にフックを設けることもできる。
【0075】
アウタブラケット68においてフック28に係止される部分は、必ずしも突起104に限定されない。具体的には、例えば、フック28は、アウタブラケット68の奥壁部90を貫通して、奥壁部90の前面に係止されていてもよい。また、アウタブラケット68にフック28と係止される突起104を設ける場合に、突起104の突出方向は必ずしも限定されず、例えば、対向壁部80の対向内面から左右内側へ向けて突出していてもよいし、挿入部102の内面において上下方向に突出していてもよい。
また、本発明は、もともと以下(i)~(vi)に記載の各発明を何れも含むものであり、その構成および作用効果に関して、付記しておく。
本発明は、
(i) 第一の取付部材と第二の取付部材とを本体ゴム弾性体によって連結した防振装置本体と、該防振装置本体が差し入れられる挿入開口部を有するブラケットとを備え、該第二の取付部材が幅方向両側に一対の嵌着部を有していると共に、該ブラケットが該幅方向両側に一対の対向壁部を有し、該一対の対向壁部の各対向内面には該挿入開口部から奥方へ向けて延びる嵌着溝が形成されており、該第二の取付部材の該一対の嵌着部が該ブラケットの該一対の嵌着溝に該挿入開口部から組付方向である該奥方へ向けて挿入されて、該防振装置本体が該ブラケットに組み付けられているブラケット付防振装置であって、前記第二の取付部材から該奥方へ向けて突出する可撓性のフックが設けられており、該第二の取付部材の前記ブラケットへの該組付方向と反対の抜け方向において該フックが該ブラケットに係止されて、該第二の取付部材が前記挿入開口部を通じた該ブラケットからの抜けを防止されていると共に、該フックと該ブラケットの係止面が該第二の取付部材の前記一対の嵌着部よりも該奥方に離れて位置しているブラケット付防振装置、
(ii) 前記フックが前記第二の取付部材の前記一対の嵌着部から奥方へ向けて突出している(i)に記載のブラケット付防振装置、
(iii) 前記幅方向における前記フックの外面が該幅方向における前記一対の嵌着部の外面よりも該幅方向の内側に位置している(ii)に記載のブラケット付防振装置、
(iv) 前記フックが枠状部を備え、前記ブラケットが該枠状部に挿入される突起を備えており、該枠状部と該突起において該フックと該ブラケットが係止されている(i)~(iii)の何れか一項に記載のブラケット付防振装置、
(v) 前記ブラケットが前記一対の対向壁部を前記奥方において相互に連結する奥壁部を備え、該奥壁部には前記フックが挿入される挿入部が設けられており、前記突起が該挿入部において前記幅方向の内側から外側へ向けて突出している(iv)に記載のブラケット付防振装置、
(vi) 前記ブラケットには、前記フックの撓み変形を許容する変形許容空所が設けられている(i)~(v)の何れか一項に記載のブラケット付防振装置、
に関する発明を含む。
上記(i)に記載の発明では、第二の取付部材のフックがブラケットに係止されることによって、第二の取付部材のブラケットからの抜けが防止されている。フックは、防振装置本体のブラケットに対する挿入方向の奥方へ向けて第二の取付部材から突出して設けられており、フックとブラケットの係止面が第二の取付部材の一対の嵌着部よりも奥方に離れて位置している。それゆえ、フックは、第二の取付部材において案内作用を発揮する部分ではなくてもよく、案内作用を発揮する構造に限定されないことから、大きな自由度で設計することが可能とされる。第二の取付部材から奥方へ向けて突出したフックが、ブラケットに対して嵌着部よりも奥方に離れた位置において係止されている。これにより、嵌着部の嵌着溝への挿入によってブラケットの挿入開口部が変形したとしても、挿入開口部の変形がフックとブラケットの係止部分に影響し難く、フックとブラケットが安定して係止される。また、フックが第二の取付部材から奥方へ向けて突出していることにより、第二の取付部材をブラケットの挿入開口部から挿入する際に、フックが挿入作業の邪魔になり難く、挿入作業時にフックに引っ掛かるなどしてフックが損傷するのを防ぐこともできる。しかも、防振装置本体がブラケットに挿入される際に、奥方へ突出したフックが最初に挿入されることにより、フックがブラケットによって保護される。
上記(ii)に記載の発明では、一対の嵌着部が設けられる幅方向両側において、フックとブラケットの係止による抜止構造が設けられて、フックとブラケットの係止によって発揮される抜け抗力が、防振装置本体とブラケットの間にバランスよく及ぼされる。フックが一対の嵌着部から奥方へ向けて突出していることにより、フックとブラケットの係止面が一対の嵌着部よりも奥方に設定される。それゆえ、フックとブラケットの係止面の構造が、ブラケットの嵌着溝によって案内される一対の嵌着部の構造によって制限されない。
上記(iii)に記載の発明では、フックの幅方向外面が嵌着部の幅方向外面よりも幅方向の内側に位置していることにより、防振装置本体をブラケットに挿入する際に、フックの幅方向外面がブラケットに干渉し難くなる。また、例えば、幅方向においてフックが嵌着部よりも薄肉とされることにより、フックに必要な可撓性がフックの形状によって容易に設定可能とされる。
上記(iv)に記載の発明では、第二の取付部材から奥方へ突出するフックが枠状部を備えており、枠状部に挿入される突起がブラケットに設けられていることにより、枠状部と突起による係止構造をスペース効率よく設けることができる。また、可撓性のフックに枠状部を設ける方が、ブラケットに枠状部を設けるよりも製造が容易になり易い。
上記(v)に記載の発明では、ブラケットの挿入部へ挿入されたフックに対して外力が作用し難いことから、フックと突起との係止が解除され難く、フックと突起の係止による抜け抗力を安定して得ることができる。特に、フックが第二の取付部材から奥方へ向けて突出していることから、ブラケットにおいて挿入開口部と反対側の奥方に設けられる奥壁部を利用することにより、挿入部と突起を嵌着溝から奥方へ離れた位置へ容易に設けることができる。挿入部において突起が幅方向の内側から外側へ向けて突出していることにより、突起がブラケットの嵌着溝に対してより離れた側に設けられて、突起をより大きな形状自由度で形成することができる。特に、挿入部がブラケットにおいて一対の対向壁部ではなく奥壁部に設けられていることにより、挿入部において突起を幅方向の内側から外側へ向けて突出させ易い。
上記(vi)に記載の発明では、ブラケットに変形許容空所が設けられることによって、フックの撓み変形がブラケットによって拘束されることなく許容される。それゆえ、フックがブラケットに対してより小さな力によって係止される。
【符号の説明】
【0076】
10 エンジンマウント(防振装置)
12 マウント本体(防振装置本体)
14 第一の取付部材
16 第二の取付部材
18 本体ゴム弾性体
20 ねじ穴
22 固着部材
24 ガイド部
26 ガイド面
28 フック(第一の実施形態)
30 弾性支持部
32 係止部
34 凹状部
36 仕切部材
38 仕切部材本体
40 蓋部材
42 可動部材
44 周溝
46 下連通孔
48 収容凹所
50 下透孔
52 上連通孔
54 上透孔
56 可撓性膜
58 支持部材
60 受圧室
62 平衡室
64 オリフィス通路
66 インナブラケット
68 アウタブラケット(ブラケット)
70 連結部
72 取付部
74 ボルト孔
76 ボルト孔
78 連結ボルト
80 対向壁部
82 天壁部
84 底壁部
86 取付片
88 ボルト孔
90 奥壁部
92 挿通孔
94 マウント収容空所
96 挿入開口部
98 対向内面
100 嵌着溝
102 挿入部
104 突起
106 傾斜面
108 変形許容空所
110 嵌着部
112 第一係止面(係止面)
114 第二係止面(係止面)
120 フック(第二の実施形態)
122 弾性支持部
130 フック(第三の実施形態)
132 係止爪
134 傾斜面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11