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  • 特許-簡易防護服 図1
  • 特許-簡易防護服 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】簡易防護服
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/00 20060101AFI20231127BHJP
【FI】
A41D13/00 102
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020078630
(22)【出願日】2020-04-27
(65)【公開番号】P2021172924
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-01-16
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)▲1▼配布日 2020年4月27日 ▲2▼配布場所 大津市民病院内(滋賀県大津市本宮2丁目9番9号) (2)▲1▼配布日 2020年4月27日 ▲2▼配布場所 長浜市立湖北病院内(滋賀県長浜市木之本町黒田1221番地) (3)▲1▼配布日 2020年4月27日 ▲2▼配布場所 市立豊中病院内(大阪府豊中市柴原町4丁目14番1号) (4)▲1▼配布日 2020年4月21日 ▲2▼配布場所 経済産業省(東京都千代田区霞が関1-3-1)
(73)【特許権者】
【識別番号】000206473
【氏名又は名称】大倉工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520149548
【氏名又は名称】奥田 章
(72)【発明者】
【氏名】安部 昭男
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智大
(72)【発明者】
【氏名】安田 匡弘
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 美貴
(72)【発明者】
【氏名】奥田 章
【審査官】原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-170330(JP,A)
【文献】特開2004-187913(JP,A)
【文献】実公昭47-037718(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のプラスチックフィルムからなる腕防護用チューブと、円筒状のプラスチックフィルムからなる胴体防護用チューブと、からなる簡易防護服であって、
前記腕防護用チューブは、中央部分に衿ぐりを有し、更に該衿ぐりと相対する位置に胴部挿入用穴を有し、
前記胴体防護用チューブは、相対する位置に二つの袖ぐりを有することを特徴とする簡易防護服。
【請求項2】
前記胴体防護用チューブが、肩線シール部を備えることを特徴とする請求項1記載の簡易防護服。
【請求項3】
前記腕防護用チューブ及び/又は前記胴体防護用チューブに引裂き用ノッチが形成されていることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の簡易防護服。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウィルスや細菌が衣服や人体に付着することを防止する簡易防護服に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ウィルス等の感染から人体を保護するためのディスポーザブルタイプの感染症防護服に関する考案である。当該考案において提案されている防護服は、つなぎ形態の防護服であって、本体の前面に上方より股下近傍位置まで開閉可能なファスナーを有する。当該防護服は製造に際して縫製が必要である為、ウィルスの感染拡大が止まらないオーバーシュートの局面においては、製造が間に合わない恐れがある。
【0003】
特許文献2は、ディスポーザブル滅菌衣に関する発明である。該滅菌衣は、袋のシール部の中央に人の頭部が貫通できる大きさの型抜きを行い、側面に腕が貫通できる大きさの型抜きを行うことにより製造できるため、迅速に大量生産することができる。しかしながら腕部分が保護されておらず、該発明では防護服との併用(特許文献2[0015])が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3141379号公報
【文献】特開2004-187913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は製造に際して縫製などが必要なく、極めて簡単に大量生産することが可能な簡易防護服の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると上記課題を解決する為の手段として、
[1] 円筒状のプラスチックフィルムからなる腕防護用チューブと、円筒状のプラスチックフィルムからなる胴体防護用チューブと、からなる簡易防護服であって、前記腕防護用チューブは、中央部分に衿ぐりを有し、更に該衿ぐりと相対する位置に胴部挿入用穴を有し、前記胴体防護用チューブは、相対する位置に二つの袖ぐりを有することを特徴とする簡易防護服が提供される。
[2] 前記胴体防護用チューブが、肩線シール部を備えることを特徴とする[1]記載の簡易防護服が提供される。
[3] 前記腕防護用チューブ及び/又は前記胴体防護用チューブに引裂き用ノッチが形成されていることを特徴とする[1]または[2]のいずれかに記載の簡易防護服が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の簡易防護服は、円筒状に成形されたプラスチックフィルムの一部をくり抜くことにより成形することができるので、非常に簡単に大量生産することができる。よって、ウィルス感染者等が急増した際であっても、医療現場に迅速かつ大量に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の簡易防護服を構成する腕防護用チューブと胴体防護用チューブの平面図である。
図2】本発明の簡易防護服の使用方法を説明する為の図面である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく同様の効果を奏する範囲において種々の実施形態をとることができる。
図1に示すように、本発明の簡易防護服は、腕部分を防護する腕防護用チューブ1と、胴体部分を防護する胴体防護用チューブ2とからなる。
【0010】
[腕防護用チューブ]
腕防護用チューブ1は、円筒状のプラスチックフィルムからなり、中央部分に衿ぐり11を有し、該衿ぐり11と相対する位置に胴部挿入用穴12を有する。
腕防護用チューブ1の径は、腕を挿入することができれば特に限定されるものではないが、折径αが150~500mm、特に200~400mm程度であることが好ましい。折径αが小さすぎると腕を挿入し難くなり、折径αが大きすぎると腕防護用チューブを着けた際の作業性が低下する恐れがある。また腕防護用チューブ1の長さβは、人が手を広げた際の右手首から左手首までの長さと同等か、それよりも若干長いことが望ましい。具体的には1500~2200mm、特に1600~2000mm程度が望ましい。尚、本発明の腕防護用チューブ1はプラスチックフィルムからなる為、使用前に着用者のサイズに合わせて切断することもできる。
【0011】
衿ぐり11は、人が頭部を通過させ得る大きさでなければならず、該衿ぐり11の幅γは180~300mm、特に200~250mm程度であることが望ましい。また胴部挿入用穴12は、人の胴部を通過させ得るおおきさでなければならず、穴12の幅δは300~600mm、特に400~500mmであることが望ましい。
尚、図1では、衿ぐり11は半円形にくり抜かれており、胴部挿入用穴12は半円が連結したような形状にくり抜かれているが、これに限定されるものではない。例えば、台形状等のくり抜きでもよく、フィルムをくり抜かず切断しただけの形状(切れ目)であってもよい。
【0012】
腕防護用チューブ1の製造方法は特に限定されるものではなく、例えば円筒状のプラスチックフィルムを製造した後、一部をくり抜いて衿ぐり11や胴部挿入用穴12を成形すればよい。尚、円筒状のプラスチックフィルムの製造は、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリウレタンなどの各種熱可塑性樹脂のペレットから一旦、長方形のフィルムを製造した後、対向する二辺をヒートシールして円筒状に成形してもよいが、熱可塑性樹脂を溶融させて環状のダイスから押出すインフレーション押出成形法を用いることが好ましい。該方法によると、熱可塑性樹脂ペレットから円筒状のチューブをダイレクトに得ることができる為、その後フィルムの一部をくり抜くだけで、腕防護用チューブ1を製造することができる。
【0013】
[胴体防護用チューブ]
胴体防護用チューブ2もまた、円筒状のプラスチックフィルムからなるもので、二つの袖ぐり21を備える。胴体防護用チューブ2の径は、人の胴体を挿入し得る大きさであれば特に限定されないが、挿入のしやすさと、挿入後の作業性を考慮すると、折径Αが700~1200mm、特に800~1100mmであることが好ましい。胴体防護用チューブ2の長さBは作業性と防護性の兼ね合いから適宜決定すればよく、例えば900~1500mm、或いは1100~1400mm程度である。長さBが長い程防護製には優れるが、着用時には歩き難くなる。尚、本発明の胴体防護用チューブ2は、腕防護用チューブ1と同様に、使用前に着用者のサイズに合わせて、切断することもできる。
【0014】
袖ぐり21は、相対する位置にあれば、胴体防護用チューブ2のいずれの位置にあってもよいが、胴体防護用チューブ2の中央よりも偏った位置にあることが望ましい。詳しくは、胴体防護用チューブの一方の開口辺2Lから10~150mm、特に40~80mm内側に寄った位置にあることが望ましい。該胴体防護用チューブ2を被って、袖ぐり21から腕を出した際に、開口辺2Lから袖ぐり21までの距離Cが短すぎると、袖ぐり21が破れて開口辺2Lと結合する恐れがある。また距離Cが長すぎると、肩の部分に余分なプラスチックフィルムが存在することになり、着心地が悪化する。
【0015】
袖ぐり21の幅Dは、腕挿入のしやすさと、挿入後の作業性を考慮すると80~300mm、特に200~250mm程度であることが望ましい。尚、袖ぐり21の幅Dは、上述した腕防護用チューブ1の折径αよりも小さいことが好ましい。腕防護用チューブ1の折径αの方が大きいと、腕防護用チューブ1を着用し、更に胴体防護用チューブ2を被ったときに、袖ぐり21において、腕防護用チューブ1と胴体防護用チューブ2の間に隙間ができにくくなる為、ウィルスや細菌が簡易防護服中に侵入することを抑制できる。該袖ぐり21も、上述した衿ぐり11と同様に、台形状等のくり抜きでもよく、フィルムをくり抜かず切断しただけの形状(切れ目)であってもよい。
【0016】
また、胴体防護用チューブ2の袖ぐり21に近い側の開口辺2Lは両端に肩線シール部22を備えることが望ましい。開口辺2Lが、人が頭部を通過させ得る幅Eを残して、肩線シール部22により閉じられていると、該開口辺2Lからウィルスや細菌などが侵入することを防止できる。また使用中に胴体防護用チューブ2がずれ落ちることを防止できる。人が頭部を通過させ得る幅Eは、250~450mm、特に300~400mmであることが望ましい。
【0017】
胴体防護用チューブ2の製造方法も特に限定されるものではない。上述した腕防護用チューブ1と同様に、円筒状のプラスチックフィルムを製造した後、一部をくり抜いて袖ぐり21を形成すればよい。また必要に応じ、円筒状の胴体防護用チューブ2の一方の開口辺2Lを、中央部を残しヒートシールし、肩線シール22を形成してもよい。また円筒状のプラスチックフィルムの製造には、上述したようにインフレーション押出成形法を採用することが望ましい。
尚、胴体防護用チューブ2は、大型のプラスチック袋を利用して製造することもできる。プラスチック袋の底シール部の中央部分をくり抜き、頭部を通過させる穴(図1の幅Eの部分の代わり)として利用し、袋の側辺をくり抜き、袖ぐり21としてもよい。
【0018】
また図1に示す胴体防護用チューブ2は、開口辺2Lの中央に引裂き用ノッチ23を備える。使用後の簡易防護服は、その表面にウィルスや細菌等が付着している恐れがある為、該表面が人体や衣服に触れないよう、引裂かれて脱ぎ捨てられることが好ましい。よって本発明の腕防護用チューブ1や胴体防護用チューブ2には、引裂きの契機となるノッチが形成されていることが望ましい。
【0019】
次に、本発明の簡易防護服の使用方法について図2に基づき説明する。
初めに、腕防護用チューブ1を着用する。該チューブ1の胴部挿入用穴12に頭部を通し、更に頭部を衿ぐり11から出すとともに、防護用チューブ1の内側に腕を通す(図2(A))。次いで、胴体防護用チューブ2を被り、腕を袖ぐり21から出す(図2(B))。これで簡易防護服の着用は完了である。尚、胴体防護用チューブ2の袖ぐり21部分に粘着テープ等を貼り、腕防護用チューブ1との間に隙間ができないようにしておくと、防護性が高まる。更に防護手袋等を着用し、腕防護用チューブ1と防護手袋等との間も粘着テープなどを利用して、隙間ができないようにしておくことが望ましい。
【0020】
尚、本発明では、気密性と作業性を考慮し、腕防護用チューブ1を着用した後、胴体防護用チューブ2を着用する方法を提案するが、胴体防護用チューブ2を着用した後腕防護用チューブ1を着用してもよく、予め腕防護用チューブ1と胴体防護用チューブを重ね合わせておき、二つを一度に着用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の簡易防護服は、安価に大量生産が可能であるので、手術用外衣として用いてもよく、また従来の防護服と重ねて使用してもよい。また医療用に限らず、衣服の汚れを防止する目的で、エプロンや作業服の代替として用いることも可能である。更にプラスチックフィルムからなり、防水性に優れるため、雨合羽の代替として使用することもできる。
【符号の説明】
【0022】
1 腕防護用チューブ
11 衿ぐり
12 胴部挿入用穴
2 胴体防護用チューブ
21 袖ぐり
22 肩線シール部
23 引裂き用ノッチ

図1
図2