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特許7390972水素供給システムおよび船舶への水素供給方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】水素供給システムおよび船舶への水素供給方法
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/00 20060101AFI20231127BHJP
   B63H 21/38 20060101ALI20231127BHJP
   B63B 11/04 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
F17C13/00 301Z
B63H21/38 B
B63B11/04 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020086469
(22)【出願日】2020-05-18
(65)【公開番号】P2021181790
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】391018019
【氏名又は名称】JFEコンテイナー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】六川 庄一
(72)【発明者】
【氏名】高野 俊夫
【審査官】田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-032053(JP,A)
【文献】特開2018-176867(JP,A)
【文献】特開昭56-131497(JP,A)
【文献】特表平08-510428(JP,A)
【文献】特開2020-031517(JP,A)
【文献】特開2000-095020(JP,A)
【文献】特開2017-137926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 13/00
F17C 5/06
B63H 21/38
B63B 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陸上輸送手段に連結される台車と、前記台車に積まれる荷台と、前記荷台に積まれ、水素が充填される複数の燃料充填容器と、を有し、
水素供給設備で前記燃料充填容器に水素ガスの充填が行われる第一工程と、前記第一工程の後、駆動源の燃料に水素が用いられた船舶が停泊する停泊場所に前記陸上輸送手段によって移動する第二工程と、前記第二工程の後、前記船舶に牽引により積み込まれ、前記駆動源に前記燃料充填容器の水素を供給した後、前記船舶から牽引により積み降ろされる第三工程と、前記第三工程の後、前記水素供給設備に前記陸上輸送手段によって移動する第四工程と、を繰り返す水素供給ユニットを3台以上備え、
少なくとも3台の前記水素供給ユニットは、
同時刻において前記第一工程~前記第四工程のうちそれぞれ異なる工程を行う
水素供給システム。
【請求項2】
前記燃料充填容器は、円筒形状の円筒部を有し、アルミニウム合金またはプラスチックで構成されており、少なくとも前記円筒部の外周にCFRPが巻き付けられている
請求項1に記載の水素供給システム。
【請求項3】
各前記燃料充填容器は、最大安定傾斜角が左右とも35度以上となるように前記荷台に積まれている
請求項1または2に記載の水素供給システム。
【請求項4】
前記船舶は、後部に前記水素供給ユニットが積み込まれる積載スペースが形成されている
請求項1~3のいずれか一項に記載の水素供給システム。
【請求項5】
陸上輸送手段に連結される台車と、前記台車に積まれる荷台と、前記荷台に積まれ、水素が充填される複数の燃料充填容器と、を有した水素供給ユニットを3台以上備え、
各前記水素供給ユニットが、
水素供給設備で前記燃料充填容器に水素ガスの充填が行われる第一工程と、前記第一工程の後、駆動源の燃料に水素が用いられた船舶が停泊する停泊場所に前記陸上輸送手段によって移動する第二工程と、前記第二工程の後、前記船舶に牽引により積み込まれ、前記駆動源に前記燃料充填容器の水素を供給した後、前記船舶から牽引により積み降ろされる第三工程と、前記第三工程の後、前記水素供給設備に前記陸上輸送手段によって移動する第四工程と、を繰り返すようにし、
少なくとも3台の前記水素供給ユニットが、
同時刻において前記第一工程~前記第四工程のうちそれぞれ異なる工程を行うようにする
船舶への水素供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、駆動源の燃料に水素が用いられた船舶に対して水素を輸送して供給する水素供給システム、および、駆動源の燃料に水素が用いられた船舶への水素供給方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶においては駆動源の燃料として重油が広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のように、燃料に重油が用いられている船舶はCOを多く排出するため、そのことが地球温暖化につながってしまう。そこで、環境保全の観点から、COの排出量を低減するため、駆動源の燃料に水素が用いられた船舶がある。この船舶には、主に水素ガスが充填された燃料充填容器によって水素が供給される。また、燃料充填容器への水素ガスの充填は、水素ステーションなどの水素充填施設で行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-011479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、燃料充填容器への水素ガスの充填が行われる水素ステーションなどの水素供給設備の数は全国的に少なく、船舶が停泊する港などの停泊場所の位置によっては、停泊場所と水素供給設備との距離が遠く、燃料充填容器の輸送に時間がかかる。そのため、船舶に燃料充填容器を積み込むまでの待ち時間がかかり、船舶への水素ガスの供給に時間がかかるという課題があった。
【0005】
本開示は、以上のような課題を解決するためになされたもので、船舶への水素ガスの供給を円滑に行うことができる水素供給システムおよび船舶への水素供給方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る水素供給システムは、陸上輸送手段に連結される台車と、前記台車に積まれる荷台と、前記荷台に積まれ、水素が充填される複数の燃料充填容器と、を有し、水素供給設備で前記燃料充填容器に水素ガスの充填が行われる第一工程と、前記第一工程の後、駆動源の燃料に水素が用いられた船舶が停泊する停泊場所に前記陸上輸送手段によって移動する第二工程と、前記第二工程の後、前記船舶に牽引により積み込まれ、前記駆動源に前記燃料充填容器の水素を供給した後、前記船舶から牽引により積み降ろされる第三工程と、前記第三工程の後、前記水素供給設備に前記陸上輸送手段によって移動する第四工程と、を繰り返す水素供給ユニットを3台以上備え、少なくとも3台の前記水素供給ユニットは、同時刻において前記第一工程~前記第四工程のうちそれぞれ異なる工程を行うものである。
【0007】
また、本開示に係る船舶への水素供給方法は、陸上輸送手段に連結される台車と、前記台車に積まれる荷台と、前記荷台に積まれ、水素が充填される複数の燃料充填容器と、を有した水素供給ユニットを3台以上備え、各前記水素供給ユニットが、水素供給設備で前記燃料充填容器に水素ガスの充填が行われる第一工程と、前記第一工程の後、駆動源の燃料に水素が用いられた船舶が停泊する停泊場所に前記陸上輸送手段によって移動する第二工程と、前記第二工程の後、前記船舶に牽引により積み込まれ、前記駆動源に前記燃料充填容器の水素を供給した後、前記船舶から牽引により積み降ろされる第三工程と、前記第三工程の後、前記水素供給設備に前記陸上輸送手段によって移動する第四工程と、を繰り返すようにし、少なくとも3台の前記水素供給ユニットが、同時刻において前記第一工程~前記第四工程のうちそれぞれ異なる工程を行うようにする方法である。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る水素供給システムおよび船舶への水素供給方法によれば、第一工程と、第二工程と、第三工程と、第四工程と、を繰り返す水素供給ユニットを3台以上備え、少なくとも3台の水素供給ユニットは、同時刻において第一工程~第四工程のうちそれぞれ異なる工程を行う。そのため、船舶に燃料充填容器を積み込むまでの待ち時間を短縮でき、船舶への水素ガスの供給を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係る水素供給システムに用いられる水素供給ユニットを模式的に示す斜視図である。
図2】実施の形態に係る水素供給システムを示す模式図である。
図3】実施の形態に係る水素供給システムに用いられる水素供給ユニットの船舶を模式的に示す平面図である。
図4】実施の形態に係る水素供給システムに用いられる水素供給ユニットの船舶への水素供給方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本開示が限定されるものではない。また、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。
【0011】
実施の形態.
図1は、実施の形態に係る水素供給システムに用いられる水素供給ユニット100を模式的に示す斜視図である。
【0012】
実施の形態に係る水素供給ユニット100は、台車10と、台車10に積まれる荷台20と、荷台20に積まれる複数の燃料充填容器30と、を備えている。水素供給ユニット100は、トラックあるいはトレーラーなどの陸上輸送手段300(後述する図2参照)を用いて輸送される。
【0013】
台車10は、本体部11と連結部12と車輪13とを備えている。本体部11は平板形状を有し、上面に荷台20が積まれるものである。連結部12は本体部11の前側に設けられ、陸上輸送手段300に取り付けられるものである。車輪13は本体部11の下面に設けられ、陸上輸送手段300によって連結部12が引っ張られると回転して台車10を動かすものである。また、本体部11および連結部12は、強度を持たせるため金属製である。
【0014】
荷台20は、内部に複数の段が縦方向に形成された直方体形状を有しており、各段に複数の燃料充填容器30が横向きで積まれるものである。また、荷台20は、強度を持たせるため金属製である。また、荷台20は、台車10に例えば緊締装置(図示せず)でしっかりと固定されている。なお、荷台20の形状は直方体形状に限定されず、複数の燃料充填容器30を積める構造であれば他の形状でもよい。また、荷台20は、各段に複数の燃料充填容器30が横向きで積まれる構造に限定されず、内部に複数の段が横方向に形成され、各段に複数の燃料充填容器30が縦向きで積まれる構造でもよい。
【0015】
燃料充填容器30は、燃料ガスを充填するものであり、燃料ガスには水素ガスが用いられている。水素ガスは、燃料充填容器30内で圧縮されて貯蔵される。燃料充填容器30は、円筒形状の円筒部30aとドーム形状のドーム部30bとを有し、たとえば、アルミニウム合金またはプラスチックなどで構成されている。また、燃料充填容器30のドーム部30bには、燃料ガスを供給または充填するための配管が接続される燃料ガス供給バルブ31が設けられている。
【0016】
また、燃料充填容器30は、少なくとも円筒部30aの外周にCFRP(炭素繊維強化樹脂)が巻き付けられている。CFRP(炭素繊維強化樹脂)は、燃料充填容器30の所要の耐圧性である機械的強度を向上させるために設けられている。燃料充填容器30を上記の構成とすることで、所要の強度を確保しつつ、従来の燃料ガスを充填する鋼製容器などよりも軽量化することができる。また、燃料充填容器30は、荷台20に例えばベルト(図示せず)でしっかりと固定されている。
【0017】
水素供給ユニット100は、公道を走る車両の一種であるため、道路運送車両法の規定により、車両を右側または左側に傾けていった場合に転倒しない最大の角度である最大安定傾斜角(転倒角度とも言う)が左右とも35度以上である必要がある。そこで、各燃料充填容器30は、水素供給ユニット100の最大安定傾斜角が左右とも35度以上となるように積まれている。例えば、各燃料充填容器30は、荷台20の各段において、縦横等間隔で同一方向に向けられて積まれている。各燃料充填容器30をこのように積むことで、道路運送車両法の規定を満たすことができる。
【0018】
図2は、実施の形態に係る水素供給システムを示す模式図である。なお、図2では、水素供給ユニット100を輸送する陸上輸送手段300としてトラックを示しているが、それに限定されない。
【0019】
図2に示すように、実施の形態に係る水素供給システムでは、3台以上の水素供給ユニット100を備えている。各水素供給ユニット100は、第一工程、第二工程、第三工程、第四工程を順番に繰り返す。
【0020】
第一工程は、最初に、または後述する第四工程の後、水素ステーションなどの水素供給設備200で水素供給ユニット100に水素ガスの充填が行われる工程である。
【0021】
第二工程は、第一工程の後、水素供給ユニット100が陸上輸送手段300によって、水素供給設備200から駆動源の燃料に水素が用いられた船舶400が停泊する港などの停泊場所500に移動する工程である。
【0022】
第三工程は、第二工程の後、水素供給ユニット100が、船舶400に牽引により積み込まれ、駆動源に水素を供給した後、船舶400から牽引により積み降ろされる工程である。なお、第三工程の積み込み時において、水素供給ユニット100は、第二工程で用いられる陸上輸送手段300によって牽引されてもよいし、それとは別の車両などの牽引手段によって牽引されてもよい。また、第三工程の積み下ろし時において、水素供給ユニット100は、第四工程で用いられる陸上輸送手段300によって牽引されてもよいし、それとは別の車両などの牽引手段によって牽引されてもよい。
【0023】
第四工程は、第三工程の後、水素供給ユニット100が陸上輸送手段300によって、停泊場所500から水素供給設備200に移動する工程である。
【0024】
そして、少なくとも3台の水素供給ユニット100は、同時刻においてそれぞれ異なる工程を行う。
【0025】
なお、3台の水素供給ユニット100を、それぞれ第一の水素供給ユニット100a、第二の水素供給ユニット100b、第三の水素供給ユニット100cと称する場合、例えば、第一の水素供給ユニット100aが、第一工程を行っているとき、第二の水素供給ユニット100bは、第三工程を行っており、第三の水素供給ユニット100cは、第二工程または第四工程を行っている。
【0026】
そして、船舶400に積まれた第二の水素供給ユニット100bは、駆動源に水素を供給して燃料充填容器30内が空になった後、船舶400が停泊場所500に停まったタイミングで船舶400から積み下ろされる。また、陸上輸送手段300によって水素供給設備200から運ばれてきた、燃料充填容器30内に水素が充填されている第三の水素供給ユニット100cは、船舶400に積み込まれる。また、第一の水素供給ユニット100aは、水素供給設備200で水素ガスの充填が行われる。
【0027】
ここで、従来、船舶400から燃料充填容器30を積み下ろす際、および、船舶400に燃料充填容器30を積み込む際には、船舶400または停泊場所500に設置されたクレーンなどの装置を用いて燃料充填容器30を持ち上げる必要があった。そのため、設備コストおよび手間がかかっていた。
【0028】
しかし、実施の形態に係る水素供給ユニット100は、複数の燃料充填容器30が積まれた荷台20と台車10とが一体となった構成である。また、燃料充填容器30に貯蔵される燃料は水素であり従来の水素以外の燃料よりも軽く、燃料充填容器30自体も従来の燃料ガスを充填する鋼製容器などよりも軽い。
【0029】
そのため、従来に比べて水素供給ユニット100を軽量化することができる。その結果、水素供給ユニット100を牽引して、船舶400からの燃料充填容器30の積み下ろし、および、船舶400への燃料充填容器30の積み込みを容易に行うことができるため、クレーンなどの装置が不要となる。そのため、設備コストを削減でき、手間も省くことができる。
【0030】
さらに、実施の形態では、水素供給ユニット100を軽量化することができるため、重心の位置が下がる。そのため、水素供給ユニット100の最大安定傾斜角を大きくすることができ、道路運送車両法の規定による制約を受けづらくなるので、燃料充填容器30の搭載量を増やすことができる。さらに、実施の形態では、水素供給ユニット100を軽量化することができるため、船舶400に積まれている時の復元力、つまり波で傾いても元の位置に戻る力への悪影響を少なくすることができる。
【0031】
また、船舶400から積み下ろされた第二の水素供給ユニット100bは、陸上輸送手段300によって水素供給設備200に運ばれ、水素供給設備200で水素ガスの充填が行われる。また、船舶400に積み込まれた第三の水素供給ユニット100cは、船舶400の駆動源に水素を供給する。また、水素供給設備200で水素ガスの充填が行われた第一の水素供給ユニット100aは、船舶400が停泊する停泊場所500に運ばれる。
【0032】
ここで、従来、燃料充填容器30への水素の供給が行われる水素ステーションなどの水素供給設備200の数は全国的に少なく、船舶400が停泊する停泊場所500の位置によっては、停泊場所500と水素供給設備200との距離が遠く、燃料充填容器30の輸送に時間がかかる。そのため、船舶400に燃料充填容器30を積み込むまでの待ち時間がかかり、船舶400への水素ガスの供給に時間がかかっていた。
【0033】
しかし、実施の形態に係る水素供給システムでは、3台以上の水素供給ユニット100を備えており、そのうち少なくとも3台の水素供給ユニット100は、同時刻においてそれぞれ異なる工程を行う。そのため、船舶400に燃料充填容器30を積み込むまでの待ち時間を短縮でき、船舶400への水素ガスの供給にかかる時間を短縮することができる。
【0034】
また、船舶400が停泊する停泊場所500に水素ステーションなどの水素供給設備200を新たに設置する必要がなく、既存の水素供給設備を使用することができるため、設備コストを抑制することができる。また、船舶400の数が増えても水素供給ユニット100の数を増やせばよいため、拡張性が高い。
【0035】
図3は、実施の形態に係る水素供給システムに用いられる水素供給ユニット100の船舶400を模式的に示す平面図である。
【0036】
図3に示すように、水素供給ユニット100は、船舶400の後部に形成された積載スペース410に積載される。この積載スペース410は、駆動源および座席などの船舶400の既存の設備と競合しない位置に形成されている。
【0037】
このように、水素供給ユニット100の積載スペース410を船舶400の後部に形成することで、船舶400から燃料充填容器30の積み下ろし、および、船舶400への燃料充填容器30の積み込みを行いやすくすることができる。また、積載スペース410は、駆動源および座席などの船舶400の既存の設備と競合しない位置に形成されているため、積載スペース410を形成するために既存の設備を移動させるおよび撤去する必要がなく、既存のスペースを有効利用することができる。
【0038】
図4は、実施の形態に係る水素供給システムに用いられる水素供給ユニット100の船舶400への水素供給方法を説明する図である。
【0039】
まず、各燃料充填容器30の燃料ガス供給バルブ31に、集合配管421の一方(以下、分岐側と称する)の端部422を接続する。そして、集合配管421のもう一方(以下、集合側と称する)の端部423を船舶400に設けられている接続配管424の燃料側配管425に接続する。この接続配管424の駆動側配管426には、延長ホース432を介して船舶400の駆動源が接続されている。
【0040】
なお、接続配管424の燃料側配管425は複数設けられており、燃料側配管425のそれぞれに集合配管421の集合側の端部423が接続される。つまり、接続配管424には、複数の集合配管421が接続される。
【0041】
接続配管424の駆動側配管426には、開閉により配管内の水素ガスの流れを許容または遮断する第一開閉弁428が設けられている。さらに、接続配管424の駆動側配管426の第一開閉弁428よりも駆動源側には、燃料充填容器30内の高圧の水素ガスを減圧させる減圧弁427が設けられている。
【0042】
接続配管424の燃料側配管425には、開閉により配管内の水素ガスの流れを許容または遮断する第二開閉弁429がそれぞれ設けられている。また、接続配管424の燃料側配管425には、配管内の水素ガスの圧力を検知する圧力計430がそれぞれ設けられている。また、接続配管424には、異常時に開放して水素ガスを外部に放出するための安全弁431が設けられている。
【0043】
そして、第一開閉弁428および第二開閉弁429を開状態にして、減圧弁427を開状態にすることで、燃料充填容器30内の高圧の水素ガスが減圧弁427で減圧されて、船舶400の駆動源に供給される。なお、減圧弁427は、圧力計430が検知する圧力に基づいて所定の開度に制御される。そうすることで、所定の圧力の水素ガスを船舶400の駆動源に供給することができる。
【0044】
以上、実施の形態に係る水素供給システムは、陸上輸送手段300に連結される台車10と、台車10に積まれる荷台20と、荷台20に積まれ、水素が充填される複数の燃料充填容器30と、を有し、水素供給設備200で燃料充填容器30に水素ガスの充填が行われる第一工程と、第一工程の後、駆動源の燃料に水素が用いられた船舶400が停泊する停泊場所500に陸上輸送手段300によって移動する第二工程と、第二工程の後、船舶400に牽引により積み込まれ、駆動源に燃料充填容器30の水素を供給した後、船舶400から牽引により積み降ろされる第三工程と、第三工程の後、水素供給設備200に陸上輸送手段300によって移動する第四工程と、を繰り返す水素供給ユニット100を3台以上備え、少なくとも3台の水素供給ユニット100は、同時刻においてそれぞれ異なる工程を行うものである。
【0045】
また、実施の形態に係る船舶400への水素供給方法は、陸上輸送手段300に連結される台車10と、台車10に積まれる荷台20と、荷台20に積まれ、水素が充填される複数の燃料充填容器30と、を有した水素供給ユニット100を3台以上備え、各水素供給ユニット100が、水素供給設備200で燃料充填容器30に水素ガスの充填が行われる第一工程と、第一工程の後、駆動源の燃料に水素が用いられた船舶400が停泊する停泊場所500に陸上輸送手段300によって移動する第二工程と、第二工程の後、船舶400に牽引により積み込まれ、駆動源に燃料充填容器30の水素を供給した後、船舶400から牽引により積み降ろされる第三工程と、第三工程の後、水素供給設備200に陸上輸送手段300によって移動する第四工程と、を繰り返すようにし、少なくとも3台の水素供給ユニット100が、同時刻において第一工程~第四工程のうちそれぞれ異なる工程を行うようにする方法である。
【0046】
実施の形態に係る水素供給システムおよび船舶400への水素供給方法によれば、第一工程と、第二工程と、第三工程と、第四工程と、を繰り返す水素供給ユニット100を3台以上備え、少なくとも3台の水素供給ユニット100は、同時刻においてそれぞれ異なる工程を行う。そのため、船舶400に燃料充填容器30を積み込むまでの待ち時間を短縮でき、船舶400への水素ガスの供給を円滑に行うことができる。
【0047】
また、実施の形態に係る水素供給システムによれば、水素供給ユニット100は、複数の燃料充填容器30が積まれた荷台20と台車10とが一体となった構成である。さらに、燃料充填容器30に貯蔵される燃料は水素であり従来の水素以外の燃料よりも軽く、燃料充填容器30自体も従来の燃料ガスを充填する鋼製容器などよりも軽い。
【0048】
そのため、従来に比べて水素供給ユニット100を軽量化することができる。その結果、水素供給ユニット100を牽引して、船舶400からの燃料充填容器30の積み下ろし、および、船舶400への燃料充填容器30の積み込みを容易に行うことができるため、クレーンなどの装置が不要となる。そのため、設備コストを削減でき、手間も省くことができる。
【0049】
また、実施の形態に係る水素供給システムにおいて、燃料充填容器30は、円筒形状の円筒部30aを有し、アルミニウム合金またはプラスチックで構成されており、少なくとも円筒部30aの外周にCFRPが巻き付けられている。
【0050】
実施の形態に係る水素供給システムによれば、燃料充填容器30は、円筒形状の円筒部30aを有し、アルミニウム合金またはプラスチックで構成されており、少なくとも円筒部30aの外周にCFRPが巻き付けられている。そのため、燃料充填容器30を、所要の強度を確保しつつ、従来の燃料ガスを充填する鋼製容器などよりも軽量化することができる。そして、水素供給ユニット100を軽量化することができるため、重心の位置が下がり、最大安定傾斜角を大きくすることができる。そのため、道路運送車両法の規定による制約を受けづらくなるので、燃料充填容器30の搭載量を増やすことができる。また、水素供給ユニット100を軽量化することができるため、船舶400に積まれている時の復元力への悪影響を少なくすることができる。
【0051】
また、実施の形態に係る水素供給システムにおいて、各燃料充填容器30は、最大安定傾斜角が左右とも35度以上となるように荷台20に積まれている。
【0052】
実施の形態に係る水素供給システムによれば、各燃料充填容器30は、最大安定傾斜角が左右とも35度以上となるように荷台20に積まれている。そのため、道路運送車両法の規定を満たすことができる。
【0053】
また、実施の形態に係る水素供給システムにおいて、船舶400は、後部に水素供給ユニット100が積み込まれる積載スペース410が形成されている。
【0054】
実施の形態に係る水素供給システムによれば、船舶400は、後部に水素供給ユニット100が積み込まれる積載スペース410が形成されている。そのため、船舶400から燃料充填容器30の積み下ろし、および、船舶400への燃料充填容器30の積み込みを行いやすくすることができる。
【符号の説明】
【0055】
10 台車、11 本体部、12 連結部、13 車輪、20 荷台、30 燃料充填容器、30a 円筒部、30b ドーム部、31 燃料ガス供給バルブ、100 水素供給ユニット、100a 第一の水素供給ユニット、100b 第二の水素供給ユニット、100c 第三の水素供給ユニット、200 水素供給設備、300 陸上輸送手段、400 船舶、410 積載スペース、421 集合配管、422 端部、423 端部、424 接続配管、425 燃料側配管、426 駆動側配管、427 減圧弁、428 第一開閉弁、429 第二開閉弁、430 圧力計、431 安全弁、432 延長ホース、500 停泊場所。
図1
図2
図3
図4