(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
F16F 9/34 20060101AFI20231127BHJP
【FI】
F16F9/34
(21)【出願番号】P 2020088177
(22)【出願日】2020-05-20
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千葉 元大
(72)【発明者】
【氏名】山下 幹郎
(72)【発明者】
【氏名】中山 雅佳
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-231879(JP,A)
【文献】特開平08-014306(JP,A)
【文献】実開平02-047446(JP,U)
【文献】実開昭63-178646(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0041264(US,A1)
【文献】特開2006-170326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体が封入されるシリンダと、
前記シリンダ内に摺動可能に設けられ、該シリンダ内を2室に区画するピストンと、
前記ピストンに連結されると共に前記シリンダの外部に延出されるピストンロッドと、
前記ピストンの移動により作動流体が流れ出す通路と、
内側シートと、
前記内側シートの外側に設けられると共に前記内側シートとの間に前記通路が開口する中間シートと、
前記中間シートの外側に設けられる外側シートと、
前記内側シートに内周部が、前記中間シートに外周部が載置され、前記内周部と前記外周部との間の中間部に低剛性部が形成されるディスク状の第1バルブと、
前記第1バルブの前記内側シートとは反対側に設けられるリテーナと、
前記リテーナに内側が、前記外側シートに外側が載置されるディスク状の第2バルブと、
を有
し、
前記低剛性部は、凹みが形成されている緩衝器。
【請求項2】
前記低剛性部は、前記内側シートの外周よりも外側に位置する請求項
1に記載の緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝器には、ピストンに、第1の伸び側連通路と第2の伸び側連通路とを並列に設け、第1の伸び側連通路を開閉する小径のディスクバルブと、第1の伸び側連通路および第2の伸び側連通路を開閉する大径のディスクバルブと、を設けたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、緩衝器において、ピストン速度が低速の領域での減衰力を上げつつ、ピストン速度が高速の領域での減衰力の増大を抑制する要望がある。
【0005】
したがって、本発明は、ピストン速度が低速の領域での減衰力を上げつつ、ピストン速度が高速の領域での減衰力の増大を抑制することが可能となる緩衝器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る緩衝器は、ピストンの移動により作動流体が流れ出す通路と、内側シートと、前記内側シートの外側に設けられると共に前記内側シートとの間に前記通路が開口する中間シートと、前記中間シートの外側に設けられる外側シートと、前記内側シートに内周部が、前記中間シートに外周部が載置され、前記内周部と前記外周部との間の中間部に低剛性部が形成されるディスク状の第1バルブと、前記第1バルブの前記内側シートとは反対側に設けられるリテーナと、前記リテーナに内側が、前記外側シートに外側が載置されるディスク状の第2バルブと、を有する、構成とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ピストン速度が低速の領域での減衰力を上げつつ、ピストン速度が高速の領域での減衰力の増大を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る実施形態の緩衝器を示す断面図である。
【
図2】本発明に係る実施形態の緩衝器を示す第1バルブおよび第2バルブの閉状態を示す要部の断面図である。
【
図3】本発明に係る実施形態の緩衝器の低剛性ディスクを示す平面図である。
【
図4】本発明に係る実施形態の緩衝器の減衰力特性を示す特性線図である。
【
図5】本発明に係る実施形態の緩衝器の第1バルブおよび第2バルブの開状態を示す要部の断面図である。
【
図6】本発明に係る実施形態の緩衝器の低剛性ディスクの変形例1を示す平面図である。
【
図7】本発明に係る実施形態の緩衝器の低剛性ディスクの変形例2を示す平面図である。
【
図8】本発明に係る実施形態の緩衝器の低剛性ディスクの変形例3を示す平面図である。
【
図9】本発明に係る実施形態の緩衝器の低剛性ディスクの変形例4を示す平面図である。
【
図10】本発明に係る実施形態の緩衝器の低剛性ディスクの変形例5を示すもので、(A)は平面図、(B)は(A)のB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
実施形態の緩衝器11は、鉄道車両や二輪、四輪等の自動車のサスペンション装置に用いられる緩衝器であり、具体的には四輪自動車のサスペンション装置に用いられる緩衝器である。
図1に示すように、緩衝器11は、円筒状の内筒15と、内筒15よりも大径で内筒15の径方向外側に設けられる有底筒状の外筒16とを有するシリンダ17を備えた複筒式の緩衝器である。外筒16と内筒15との間は、リザーバ室18となっている。
【0011】
外筒16は、円筒状の胴部材21と、胴部材21の軸方向の一端部側を閉塞する底部材22とを有しており、胴部材21の底部材22とは反対側は開口部23となっている。底部材22の開口部23とは反対側には取付アイ24が固定されている。
【0012】
緩衝器11は、内筒15の軸方向の一端部に設けられる円環状のバルブボディ27と、内筒15および外筒16の軸方向の他端部に設けられる円環状のロッドガイド28と、を有している。バルブボディ27は、ベースバルブ30を構成するものであり、外周部が段差状をなしている。ロッドガイド28も、外周部が段差状をなしており、その大径部分が胴部材21に嵌合されている。
【0013】
内筒15は、軸方向の一端部が、バルブボディ27の外周部の小径部分に嵌合されており、このバルブボディ27を介して外筒16の底部材22に係合している。また、内筒15は、軸方向の他端部が、ロッドガイド28の外周部の小径部分に嵌合されており、このロッドガイド28を介して外筒16の胴部材21に係合している。この状態で、内筒15は、外筒16に対して径方向に位置決めされる。ここで、バルブボディ27と底部材22との間は、バルブボディ27に形成された通路溝35を介して内筒15と外筒16との間に連通しており、内筒15と外筒16との間と同様、リザーバ室18を構成している。
【0014】
緩衝器11は、ロッドガイド28の底部材22とは反対側に、円環状のロッドシール41を有している。このロッドシール41も、ロッドガイド28と同様に胴部材21の内周部に嵌合されている。胴部材21の底部材22とは反対の端部には、胴部材21をカール加工等の加締め加工によって径方向内方に塑性変形させて係止部43が形成されている。ロッドシール41は、この係止部43とロッドガイド28とに挟持されている。ロッドシール41は、外筒16の開口部23を閉塞するものであり、具体的にはオイルシールである。
【0015】
緩衝器11は、シリンダ17内に設けられるピストン45を有している。ピストン45は、シリンダ17の内筒15に摺動可能に設けられている。ピストン45は、内筒15内を第1室48と第2室49との2室に区画している。第1室48は、内筒15内のピストン45とロッドガイド28との間に設けられ、第2室49は、内筒15内のピストン45とバルブボディ27との間に設けられている。第2室49は、バルブボディ27によって、リザーバ室18と画成されている。シリンダ17内には、第1室48および第2室49に作動流体としての油液が封入されており、リザーバ室18に作動流体としてのガスと油液とが封入されている。
【0016】
緩衝器11は、一端がシリンダ17内に挿入されてピストン45に連結され、他側がシリンダ17から外筒16の開口部23を介して外部に延出されるピストンロッド51を有している。ピストンロッド51は、主軸部52と主軸部52よりも小径の取付軸部53とを有しており、取付軸部53を先頭にしてシリンダ17内に挿入されている。ピストンロッド51には、取付軸部53に、ピストン45がナット54によって連結されている。ピストンロッド51は、主軸部52においてロッドガイド28およびロッドシール41を通って内筒15および外筒16から外部へと延出している。ロッドガイド28は、ピストンロッド51を摺動可能に支持する。ピストンロッド51は、シリンダ17に対して、ピストン45と一体に軸方向に移動する。
【0017】
ロッドシール41は、シリンダ17のピストンロッド51が延出する側の端部に設けられている。ロッドシール41は、外筒16の胴部材21とピストンロッド51の主軸部52との間をシールして、内筒15内の油液と、リザーバ室18内のガスおよび油液とが外部に漏出するのを規制する。
【0018】
ピストン45には、軸方向に貫通する通路55および通路56が形成されている。通路55,56は、第1室48と第2室49とを連通可能となっている。緩衝器11は、通路55を開閉可能なバルブ機構57を、ピストン45の底部材22とは反対側に有している。また、緩衝器11は、通路56を開閉可能な円環状のバルブ機構58を、ピストン45の底部材22側に有している。
【0019】
バルブ機構57は、ピストンロッド51が内筒15および外筒16内への進入量を増やす縮み側に移動しピストン45が第2室49を狭める方向に移動して第2室49の圧力が第1室48の圧力よりも所定値以上高くなると通路55を開いて第2室49の油液を第1室48に流すことになり、その際に減衰力を発生させる。言い換えれば、ピストンロッド51が縮み側に移動してピストン45を移動させると、通路55において油液が第1室48に流れ出す。バルブ機構57は、縮み側の減衰力発生機構である。このバルブ機構57は、通路56の油液の流れを阻害することはない。
【0020】
バルブ機構58は、ピストンロッド51が内筒15および外筒16からの突出量を増やす伸び側に移動しピストン45が第1室48を狭める方向に移動して第1室48の圧力が第2室49の圧力よりも所定値以上高くなると通路56を開いて第1室48の油液を第2室49に流すことになり、その際に減衰力を発生させる。言い換えれば、ピストンロッド51が伸び側に移動してピストン45を移動させることにより、通路56において油液が第2室49に流れ出す。バルブ機構58は、伸び側の減衰力発生機構である。このバルブ機構58は、通路55の油液の流れを阻害することはない。
【0021】
バルブボディ27には、軸方向に貫通する液通路61および液通路62が形成されている。液通路61,62は、第2室49とリザーバ室18とを連通可能となっている。ベースバルブ30は、バルブボディ27の軸方向の底部材22側に、液通路61を開閉可能なバルブ機構65を有している。また、ベースバルブ30は、バルブボディ27の軸方向の底部材22とは反対側に、液通路62を開閉可能なバルブ機構66を有している。
【0022】
ベースバルブ30は、ピストンロッド51が縮み側に移動しピストン45が第2室49を狭める方向に移動して第2室49の圧力がリザーバ室18の圧力よりも所定値以上高くなると、バルブ機構65が液通路61を開いて、第2室49の油液をリザーバ室18に流すことになり、その際に減衰力を発生させる。言い換えれば、ピストンロッド51が縮み側に移動してピストン45を移動させると、液通路61において油液がリザーバ室18に流れ出す。バルブ機構65は、縮み側の減衰力発生機構である。このバルブ機構65は、液通路62の油液の流れを阻害することはない。
【0023】
ベースバルブ30は、ピストンロッド51が伸び側に移動しピストン45が第1室48側に移動して第2室49の圧力がリザーバ室18の圧力より低下すると、バルブ機構66が液通路62を開いて、リザーバ室18の油液を第2室49に流すことになる。言い換えれば、ピストンロッド51が伸び側に移動してピストン45を移動させると、液通路62において油液が第2室49に流れ出す。バルブ機構66は、その際にリザーバ室18から第2室49内に実質的に減衰力を発生させずに油液を流すサクションバルブである。このバルブ機構66は、液通路61の油液の流れを阻害することはない
【0024】
シリンダ17には、ピストンロッド51が突出する側に、有蓋筒状のカバー71が取り付けられている。カバー71は、シリンダ17の胴部材21の開口部23側と、ロッドシール41と、を覆っている。
【0025】
ピストンロッド51には、内筒15内のピストン45とロッドガイド28との間の位置に係止部材81が係止されている。係止部材81は、円環状であり、内側にピストンロッド51の主軸部52を挿通させている。係止部材81は、主軸部52に軸方向の移動が不可となるように固定されている。
【0026】
ピストンロッド51には、内筒15内の係止部材81とロッドガイド28との間の位置に緩衝部材82が設けられている。緩衝部材82は、円環状であり、内側にピストンロッド51の主軸部52を挿通させている。緩衝部材82は、係止部材81に当接しており、ピストンロッド51が伸び切り側の所定位置まで移動すると、ロッドガイド28に当接し、係止部材81とロッドガイド28とに挟まれて弾性変形することにより衝撃を緩和する。
【0027】
次に、実施形態の要部である伸び側のバルブ機構58について説明する。
ピストン45は、ピストンロッド51の取付軸部53に取り付けられる略円板状の金属製のピストン本体101と、ピストン本体101の外周面に装着されて、内筒15内に摺接する合成樹脂製の摺接部材102とを有している。
【0028】
図2に示すように、ピストン本体101には、径方向の中央に、軸方向に貫通する挿通穴100が形成されている。この挿通穴100にピストンロッド51の取付軸部53が嵌合されている。
【0029】
ピストン本体101は、摺接部材102が装着される円環状の主体部111と、主体部111よりも軸方向の第2室49側に設けられる円環状の鍔状部112と、主体部111と鍔状部112とを繋ぐ円環状の首部113と、を有している。主体部111の外径は、鍔状部112の外径よりも大径であり、鍔状部112の外径は、首部113の外径よりも大径である。
【0030】
ピストン本体101の鍔状部112には、その軸方向の主体部111とは反対側に、挿通穴100よりも径方向の外側にて軸方向に突出する円環状の内側シート121と、内側シート121よりも径方向の外側にて軸方向に突出する円環状の中間シート122と、中間シート122よりも径方向の外側にて軸方向に突出する円環状の外側シート123とが形成されている。
【0031】
ここで、ピストン本体101の軸方向、すなわちピストン45の軸方向において、中間シート122の先端面は、内側シート121の先端面よりも若干主体部111とは反対側に位置しており、外側シート123の先端面は、中間シート122の先端面よりも主体部111とは反対側に位置している。言い換えれば、ピストン45の軸方向において、外側シート123は、中間シート122よりも突出方向の高さ位置が高くなっており、中間シート122は、内側シート121よりも突出方向の高さ位置が若干高くなっている。
【0032】
ピストン本体101には、一端が内側シート121と中間シート122との間に開口して軸方向に貫通する通路穴131が、周方向に間隔をあけて複数カ所形成されている。通路穴131は、主体部111、首部113および鍔状部112を貫通している。複数の通路穴131は、内側シート121と中間シート122との間の円環状の環状凹部132で互いに連結されている。
【0033】
複数の通路穴131および環状凹部132は、ピストン45を軸方向に貫通して第1室48と第2室49との間で油液を流通させる上記した通路56の一部の通路部133を構成している。言い換えれば、ピストン45は、内側シート121と、内側シート121の外側に設けられると共に内側シート121との間に通路56の通路部133が開口する中間シート122と、中間シート122の外側に設けられる外側シート123と、を有している。
【0034】
また、ピストン本体101には、一端が主体部111の鍔状部112側の端部に開口して主体部111を軸方向に貫通する通路穴135が周方向に間隔をあけて複数カ所形成されている。通路穴135は、通路穴131よりもピストン45の径方向における外側に設けられている。通路穴135は、ピストン45を軸方向に貫通して第1室48と第2室49との間で油液を流通させる上記した通路55を構成している。
【0035】
ピストン本体101の内側シート121、中間シート122および外側シート123は、実施形態の要部である伸び側のバルブ機構58を構成している。バルブ機構58は、ピストン45の軸方向の鍔状部112に、鍔状部112側から順に重ねられる、小径ディスク141、低剛性ディスク142、リテーナディスク143、リテーナディスク144、大径ディスク145、バルブディスク146、リテーナディスク147、バックアップディスク148およびワッシャ149を有している。
【0036】
小径ディスク141、低剛性ディスク142、リテーナディスク143,144,147、大径ディスク145、バルブディスク146、バックアップディスク148およびワッシャ149は、いずれも金属製の有孔円板状である。小径ディスク141、低剛性ディスク142、リテーナディスク143,144,147、大径ディスク145、バルブディスク146、バックアップディスク148およびワッシャ149は、それぞれの内周側にピストンロッド51の取付軸部53が嵌合されることになり、この状態で、ピストン本体101の内側シート121とナット54とによって少なくとも内周側が軸方向にクランプされる。
【0037】
小径ディスク141は、厚さ一定の平板状である。小径ディスク141には、ピストンロッド51の取付軸部53を嵌合させる嵌合穴151が径方向の中央部に軸方向に貫通して形成されている。小径ディスク141は、外径が、中間シート122の先端面の外径よりも若干大径であって、外側シート123の先端面の内径よりも小径である。小径ディスク141は、内側シート121および中間シート122に当接する。言い換えれば、小径ディスク141は、内側シート121および中間シート122に載置される。
【0038】
小径ディスク141の外周部には、中間シート122に当接した状態で中間シート122を径方向に横断する切欠部152が形成されている。切欠部152は、小径ディスク141を小径ディスク141の軸方向、言い換えれば小径ディスク141の厚さ方向に貫通している。切欠部152は、小径ディスク141にその周方向に等間隔で複数形成されている。複数の切欠部152の小径ディスク141の径方向における最も嵌合穴151側の端部位置を結んだ円の直径は内側シート121の先端面の外径よりも大径であって、中間シート122の先端面の内径よりも小径となっている。小径ディスク141の切欠部152を除く外周縁部153は、嵌合穴151と同軸の同一円上に配置されている。
【0039】
低剛性ディスク142には、ピストンロッド51の取付軸部53を嵌合させる嵌合穴161が径方向の中央部に軸方向に貫通して形成されている。嵌合穴161は嵌合穴151と同径である。低剛性ディスク142は、外径が小径ディスク141の最大外径と同径である。低剛性ディスク142の外周縁部162は、円形であり、低剛性ディスク142の全周にわたって嵌合穴161と同軸の同一円上に配置されている。
【0040】
低剛性ディスク142は、厚さ一定の平板状である。低剛性ディスク142は、低剛性ディスク142の軸方向、言い換えれば低剛性ディスク142の厚さ方向に貫通する貫通孔163が形成された、くり抜き構造となっている。
図3に示すように、低剛性ディスク142には、同形状の貫通孔163が複数、具体的には3箇所形成されている。貫通孔163は、円弧状、言い換えればR形状であり、複数が、嵌合穴161および外周縁部162と同軸の同一円上に配置されている。
【0041】
複数の円弧状の貫通孔163が形成されることによって、低剛性ディスク142は、低剛性ディスク142の径方向において、複数の貫通孔163よりも内側の平板状の内側板部166と、複数の貫通孔163よりも外側の平板状の外側板部167と、これらを繋ぐ平板状の連結板部168とを有している。低剛性ディスク142には、連結板部168が、低剛性ディスク142の周方向において隣り合う貫通孔163と貫通孔163との間に設けられており、貫通孔163と同数、具体的には3箇所形成されている。
【0042】
複数の貫通孔163が形成されることによって、低剛性ディスク142は、貫通孔163が一切形成されない場合よりも低剛性となっており、小径ディスク141よりも低剛性となっている。低剛性ディスク142は、内側板部166と外側板部167との間の部分が、複数の貫通孔163が形成されることにより、内側板部166および外側板部167よりも低剛性となる平板状の低剛性部171となっている。低剛性部171は、複数の連結板部168を有している。
【0043】
内側板部166の外径、言い換えれば、複数の貫通孔163の低剛性ディスク142の径方向における小径側の端縁部を結ぶ円の直径は、ピストン45の内側シート121の先端面の外径と同等になっている。また、外側板部167の内径、言い換えれば、複数の貫通孔163の低剛性ディスク142の径方向における大径側の端縁部を結ぶ円の直径は、ピストン45の外側シート123の先端面の内径よりも小径になっている。外側板部167の内径は、小径ディスク141の最小外径、つまり複数の切欠部152の小径ディスク141の径方向における最も嵌合穴151側の端部位置を結んだ円の直径よりも小径となっている。外側板部167と内側板部166との間の低剛性部171は、内側シート121の先端面の外周よりもピストン45の径方向における外側に位置している。
【0044】
小径ディスク141およびこれに当接する低剛性ディスク142は、ディスク状の第1バルブ177を構成している。第1バルブ177は、内側シート121に内周部175が載置されると共に、中間シート122に外周部176が載置されている。第1バルブ177には、内周部175と外周部176との間の中間部178に低剛性部171が形成されている。第1バルブ177は、中間シート122の先端面に対し離着座することで通路56の通路部133を開閉する。
【0045】
リテーナディスク143は、厚さ一定の平板状である。リテーナディスク143には、ピストンロッド51の取付軸部53を嵌合させる嵌合穴181が径方向の中央部に軸方向に貫通して形成されている。嵌合穴181は嵌合穴151と同径である。リテーナディスク143は、外径が内側シート121の先端面の外径と同等になっている。よって、リテーナディスク143は、外径が低剛性ディスク142の内側板部166の外径と同等である。リテーナディスク143は、低剛性ディスク142の内側板部166に当接する。リテーナディスク143の外周縁部は、円形であり、リテーナディスク143の全周にわたって嵌合穴181と同軸の同一円上に配置されている。
【0046】
リテーナディスク144は、リテーナディスク143と同じ共通部品である。リテーナディスク144は、リテーナディスク143に当接する。リテーナディスク143,144が、第1バルブ177の内側シート121とは反対側に設けられるリテーナ185を構成している。
【0047】
大径ディスク145は、厚さ一定の平板状である。大径ディスク145には、ピストンロッド51の取付軸部53を嵌合させる嵌合穴191が径方向の中央部に軸方向に貫通して形成されている。嵌合穴191は嵌合穴151と同径である。大径ディスク145は、外径が外側シート123の先端面の外径よりも若干大径であり、リテーナディスク144よび外側シート123に当接する。言い換えれば、大径ディスク145は、リテーナ185および外側シート123に直接載置される。
【0048】
大径ディスク145の外周部には、外側シート123に当接した状態で外側シート123を径方向に横断する切欠部192が形成されている。切欠部192は、大径ディスク145を大径ディスク145の軸方向、言い換えれば大径ディスク145の厚さ方向に貫通している。切欠部192は、大径ディスク145にその周方向に等間隔で複数形成されている。複数の切欠部192の大径ディスク145の径方向における最も嵌合穴191側の端部位置を結んだ円の直径はリテーナディスク144の外径よりも大径であり、外側シート123の先端面の内径よりも小径となっている。大径ディスク145の切欠部192を除く外周縁部193は、嵌合穴191と同軸の同一円上に配置されている。
【0049】
バルブディスク146は、厚さ一定の平板状である。バルブディスク146には、ピストンロッド51の取付軸部53を嵌合させる嵌合穴201が径方向の中央部に軸方向に貫通して形成されている。嵌合穴201は嵌合穴151と同径である。バルブディスク146は、外径が大径ディスク145の最大外径と同等になっている。バルブディスク146の外周縁部202は、円形であり、バルブディスク146の全周にわたって嵌合穴201と同軸の同一円上に配置されている。バルブディスク146には、低剛性ディスク142の貫通孔163、言い換えれば低剛性部171のような部分は、形成されていない。バルブディスク146は、嵌合穴201以外の穴がないプレーンディスクである。
【0050】
大径ディスク145およびこれに当接するバルブディスク146は、ディスク状の第2バルブ205を構成している。第2バルブ205は、リテーナ185に径方向の内側部分が載置されると共に、外側シート123に径方向の外側部分が載置される。第2バルブ205は、ピストン45の鍔状部112の中間シート122および外側シート123の間の部分と、第1バルブ177と、リテーナ185とで、ピストン内室208を形成している。ピストン内室208は、通路56の一部であり、通路部133とで通路56を構成している。第2バルブ205は、外側シート123の先端面に対し離着座することで、通路56のピストン内室208を開閉する。第2バルブ205は、外径が、第1バルブ177の外径よりも大径である。
【0051】
第1バルブ177は、小径ディスク141が中間シート122から離座した開状態で、通路56の通路部133とピストン内室208とを連通させる一方、小径ディスク141が中間シート122に着座した閉状態で、通路部133とピストン内室208との連通を抑制する。第1バルブ177の小径ディスク141に形成された切欠部152内は、小径ディスク141が中間シート122に着座し第1バルブ177が通路部133を最も閉じた状態にあっても通路部133とピストン内室208とを連通させる第1固定オリフィス211となっている。
【0052】
第2バルブ205は、大径ディスク145が外側シート123から離座した開状態で、通路56のピストン内室208と第2室49とを連通させる一方、大径ディスク145が外側シート123に着座した閉状態で、ピストン内室208と第2室49との連通を抑制する。第2バルブ205の大径ディスク145に形成された切欠部192内は、大径ディスク145が外側シート123に着座し第2バルブ205がピストン内室208を最も閉じた状態にあってもピストン内室208と第2室49とを連通させる第2固定オリフィス212となっている。第2固定オリフィス212の流路面積は、第1固定オリフィス211の流路面積よりも大きい。
【0053】
リテーナディスク147は、リテーナディスク143,144と同じ共通部品である。リテーナディスク147は、バルブディスク146に当接する。
【0054】
バックアップディスク148には、ピストンロッド51の取付軸部53を嵌合させる嵌合穴221が径方向の中央部に軸方向に貫通して形成されている。嵌合穴221は嵌合穴151と同径である。バックアップディスク148は、外径がリテーナディスク147の外径よりも大径であり、中間シート122の先端面の外径よりも若干大径になっている。バックアップディスク148は、リテーナディスク147に当接する。バックアップディスク148の外周縁部は、円形であり、バックアップディスク148の全周にわたって嵌合穴221と同軸の同一円上に配置されている。
【0055】
ワッシャ149は、小径ディスク141、低剛性ディスク142、リテーナディスク143,144,147、大径ディスク145、バルブディスク146およびバックアップディスク148のいずれよりも厚さが厚く高剛性となっている。ワッシャ149には、ピストンロッド51の取付軸部53を嵌合させる嵌合穴231が径方向の中央部に軸方向に貫通して形成されている。嵌合穴231は嵌合穴151と同径である。ワッシャ149は、外径が、リテーナディスク147の外径よりも大径であってバックアップディスク148の外径よりも若干小径になっている。ワッシャ149は、バックアップディスク148およびナット54に当接する。ワッシャ149の外周縁部は、円形であり、ワッシャ149の全周にわたって嵌合穴231と同軸の同一円上に配置されている。
【0056】
小径ディスク141の内周側の部分と、低剛性ディスク142の内側板部166と、リテーナディスク143,144と、大径ディスク145の内周側の部分と、バルブディスク146の内周側の部分と、リテーナディスク147と、バックアップディスク148の内周側の部分と、ワッシャ149の内周側の部分とが、ピストン45の内側シート121とナット54とで軸方向にクランプされてピストンロッド51に固定されている。
【0057】
バルブ機構58は、上記したように、ピストン45の内側シート121、中間シート122および外側シート123と、小径ディスク141、低剛性ディスク142、リテーナディスク143,144,147、大径ディスク145、バルブディスク146、バックアップディスク148およびワッシャ149とを有している。よって、バルブ機構58は、通路56を開閉する直列の第1バルブ177および第2バルブ205を有している。また、バルブ機構58は、通路56の一部を構成し、通路56を介して第1室48と第2室49とを常時連通させるための直列の第1固定オリフィス211および第2固定オリフィス212を有している。
【0058】
緩衝器11は、例えば、ピストンロッド51が車両の車体側に取り付けられ、取付アイ24が車両の車輪側に取り付けられて、車体と車輪との相対的な振動を緩衝する。
【0059】
バルブ機構58は、ピストンロッド51が伸び側に移動しピストン45が第1室48側に移動して第1室48の圧力が上昇すると、第1室48から通路56を介して第2室49に油液を流すことになる。その際に、ピストン45のシリンダ17に対する移動速度であるピストン速度に応じて、第1バルブ177および第2バルブ205が開閉する。
【0060】
すなわち、バルブ機構58は、
図4に実線で示すように、ピストン速度が所定の第1閾値v1よりも低い第1速度領域では、第1バルブ177および第2バルブ205が共に閉状態にあり、よって、通路56は、第1固定オリフィス211によって絞られた流路で油液を第1室48から第2室49に流す。これにより、オリフィス特性の減衰力を発生させる。
【0061】
また、バルブ機構58は、ピストン速度が第1閾値v1以上で第1閾値v1よりも高い第2閾値v2よりも低い第2速度領域では、第1バルブ177が中間シート122から離座して開弁するものの、第2バルブ205は閉状態にあるため、通路56は、第2固定オリフィス212によって絞られた流路で油液を第1室48から第2室49に流す。これにより、
図4に実線で示すように、オリフィス特性の減衰力を発生させる。ここで、第2速度領域のピストン速度の増加に対する減衰力の増加率は、第1速度領域の同増加率よりも低くなる。
【0062】
また、バルブ機構58は、ピストン速度が第2閾値v2以上の第3速度領域では、
図5に示すように、第1バルブ177が中間シート122から離座して開弁したまま、第2バルブ205が外側シート123から離座して開弁する。よって、通路56は、第1バルブ177および第2バルブ205が開かれた状態で油液を第1室48から第2室49に流す。これにより、
図4に実線で示すように、バルブ特性の減衰力を発生させる。
【0063】
ここで、第3速度領域のピストン速度の増加に対する減衰力の増加率は、第2速度領域の同増加率よりも低くなる。なお、このとき、第1バルブ177は、低剛性部171を有することから、変形し易く、中間シート122から大きく離間して流路面積を大きくすることができる。よって、第1バルブ177が通路56を介する油液の流れの絞りとなってしまうことを抑制できる。したがって、第3速度領域での減衰力の増大を抑制することができる。
【0064】
上記した特許文献1には、ピストンに、第1の伸び側連通路と第2の伸び側連通路とを並列に設け、第1の伸び側連通路を開閉する小径のディスクバルブと、第1の伸び側連通路および第2の伸び側連通路を開閉する大径のディスクバルブと、を設けた緩衝器が記載されている。この緩衝器は、第1の伸び側連通路に対して小径のディスクバルブと大径のディスクバルブとが直列に設けられているため、小径のディスクバルブおよび大径のディスクバルブが共に開弁するピストン速度の高速度領域では、小径のディスクバルブが絞りとなってしまい、減衰力が高くなってしまう可能性がある。
【0065】
これに対し、実施形態の緩衝器11は、内側シート121と、内側シート121の外側に設けられると共に内側シート121との間に通路56の通路部133が開口する中間シート122と、中間シート122の外側に設けられる外側シート123と、内側シート121に内周部175が、中間シート122に外周部176が載置され、内周部175と外周部176との間の中間部178に低剛性部171が形成されるディスク状の第1バルブ177と、第1バルブ177の内側シート121とは反対側に設けられるリテーナ185と、リテーナ185に内側が、外側シート123に外側が載置されるディスク状の第2バルブ205と、を有している。このように、通路56に対し第1バルブ177および第2バルブ205を直列に設けると共に第1バルブ177に低剛性部171を設けているため、ピストン速度が低速の領域での減衰力を上げつつ、ピストン速度が高速の領域での減衰力の増大を抑制することができる。
【0066】
すなわち、
図4に示す破線は、実施形態のバルブ機構58に対して、第1バルブ177を設けていない比較例1の減衰力特性である。この比較例1は、ピストン速度が第2閾値v2より低い微低速領域での減衰力が、
図4に実線で示す実施形態のバルブ機構58よりも低くなってしまう。これに対して、実施形態では、バルブ機構58に第1バルブ177を設けることで、
図4に実線で示すように、
図4に破線で示す比較例1よりも微低速領域の減衰力を高くできる。
【0067】
図4に示す二点鎖線は、実施形態のバルブ機構58に対して、第1バルブ177の低剛性ディスク142にかえて、剛性が高いプレーンディスクを設けた比較例2の第2閾値v2以上の速度領域での減衰力特性である。この比較例2は、ピストン速度が第2閾値v2より低い微低速領域は、
図4に実線で示すように、
図4に破線で示す比較例1よりも減衰力を高くできるものの、ピストン速度が第2閾値v2以上の高速度領域での減衰力が、
図4に二点鎖線で示すように、
図4に破線で示す比較例1よりも大幅に高くなってしまう。
【0068】
これに対して、実施形態では、バルブ機構58の第1バルブ177に低剛性部171を設けることで、比較例2よりも第1バルブ177の開弁時の中間シート122からのリフト量を大きくできる。よって、
図4に実線で示すように、
図4に二点鎖線で示す比較例2よりも、ピストン速度が第2閾値v2以上の高速度領域の減衰力を低くできて、第1バルブ177のない
図4に破線で示す比較例1と同等の減衰力特性とすることができる。
【0069】
つまり、実施形態では、バルブ機構58に第1バルブ177を設けると共に、第1バルブ177に低剛性部171を設けることで、微低速領域での減衰力を第1バルブ177がない場合よりも高くしつつ、高速度領域での減衰力の増大を第1バルブ177がない場合とほぼ同様に抑えることができる。
【0070】
低剛性部171は、複数の貫通孔163が低剛性ディスク142に形成されることで剛性が低くされるため、第1バルブ177の剛性を大きく落とすことができると共に、第1バルブ177に容易に低剛性部171を形成することができる。
【0071】
また、貫通孔163が円弧状をなしているため、第1バルブ177の低剛性ディスク142に生じる応力を緩和することができる。
【0072】
また、低剛性部171は、内側シート121の外周よりも外側に位置するため、第1バルブ177の剛性を大きく落とすことができる。
【0073】
なお、リテーナディスク143を低剛性ディスク142と同外径で嵌合穴以外に貫通孔のないプレーンディスクに置き換えることで、第1バルブ177のリフト量を抑制することもできる。このようにすれば、ピストン速度の低速域、中速域の減衰力を維持しつつ、高速域の減衰力の調整および低剛性ディスク142の応力を緩和することが可能である。
【0074】
また、低剛性ディスク142の貫通孔163のくり抜き形状および数の少なくともいずれか一方を変更し、剛性を変化させることで、第1バルブ177のリフト量を調整し、ピストン速度が高速域での減衰力を調整することが可能である。
【0075】
[変形例1]
例えば、上記低剛性ディスク142にかえて、
図6に示すような変形例1の低剛性ディスク142aを用いても良い。低剛性ディスク142aは、低剛性ディスク142と同様の内側板部166および外側板部167を有しており、連結板部168とは異なる2箇所の同形状の連結板部168aと、貫通孔163とは異なる2箇所の同形状の貫通孔163aとを有している。言い換えれば、低剛性ディスク142aは、内側板部166および外側板部167の間に、低剛性部171とは異なる低剛性部171aを有している。
【0076】
2箇所の連結板部168aは、低剛性ディスク142aの中心を通る同一直線上に配置された2箇所の外側接続部261aを有しており、これら外側接続部261aが外側板部167と接続されている。2箇所の外側接続部261aは、外側板部167の周方向に180度位相を異ならせて配置されており、いずれも外側板部167の内周縁部から外側板部167の径方向内側に突出している。
【0077】
また、2本の連結板部168aは、低剛性ディスク142aの中心を通る同一直線上に配置された2箇所の内側接続部262aを有しており、これら内側接続部262aが内側板部166と接続されている。2箇所の内側接続部262aは、内側板部166の周方向に180度位相を異ならせて配置されており、いずれも内側板部166の外周縁部から内側板部166の径方向外側に突出している。2箇所の外側接続部261aは、いずれも、2箇所の内側接続部262aのうちの一方との低剛性ディスク142aの周方向における距離が他方よりも近くなっている。言い換えれば、2か所の内側接続部262aは、いずれも、2か所の外側接続部261aのうちの一方との低剛性ディスク142aの周方向における距離が他方よりも近くなっている。
【0078】
一方で低剛性ディスク142aの周方向において遠い外側接続部261aと内側接続部262aとの距離は、他方で低剛性ディスク142aの周方向において遠い外側接続部261aと内側接続部262aとの距離と同等になっている。
【0079】
さらに、2箇所の連結板部168aは、低剛性ディスク142aの周方向に遠い外側接続部261aと内側接続部262aとを接続させるように2箇所の連結腕部263aが設けられている。すなわち、低剛性ディスク142aには、一方で低剛性ディスク142aの周方向において遠い一方の外側接続部261aと一方の内側接続部262aとを接続させる一方の連結腕部263aが設けられており、これら外側接続部261a、内側接続部262aおよび連結腕部263aが一方の連結板部168aを構成している。また、低剛性ディスク142aには、他方で低剛性ディスク142aの周方向において遠い他方の外側接続部261aと他方の内側接続部262aとを接続させる他方の連結腕部263aが設けられており、これら外側接続部261a、内側接続部262aおよび連結腕部263aが他方の連結板部168aを構成している。
【0080】
2箇所の連結腕部263aは、内側板部166の外周面および外側板部167の内周面に沿って円弧状に延びており、内側板部166および外側板部167と同心の同一円上に配置されている。2箇所の連結腕部263aは、外側板部167の内周面からの径方向距離と、内側板部166の外周面からの径方向距離とが同等になっている。
【0081】
このような構成の低剛性ディスク142aは、内側板部166と外側板部167と2箇所の連結板部168aとの間に、低剛性ディスク142aの厚さ方向に貫通する2箇所の貫通孔163aが形成されている。内側板部166と外側板部167との間の複数の連結板部168aを有する低剛性部171aは、複数の貫通孔163aが形成されることにより、複数の貫通孔163aが形成されていないディスクよりも低剛性となっており、小径ディスク141よりも低剛性となる。
【0082】
[変形例2]
また、上記低剛性ディスク142にかえて、
図7に示すような変形例2の低剛性ディスク142bを用いても良い。低剛性ディスク142bは、低剛性ディスク142と同様の内側板部166および外側板部167を有しており、連結板部168とは異なる1つの連結板部168bと、貫通孔163とは異なる2箇所の貫通孔163b1,163b2とを有している。言い換えれば、低剛性ディスク142bは、内側板部166および外側板部167の間に、低剛性部171とは異なる低剛性部171bを有している。
【0083】
連結板部168bは、低剛性ディスク142bの径方向において、中心よりも一側に配置された1箇所の外側接続部261bを有しており、この外側接続部261bが外側板部167と接続されている。外側接続部261bは、外側板部167の内周縁部から外側板部167の径方向内側に突出している。
【0084】
また、連結板部168bは、低剛性ディスク142bの径方向において、中心よりも同じ逆側、すなわち外側接続部261bとは反対側に、低剛性ディスク142bの周方向に間隔をあけて配置された2箇所の内側接続部262bを有しており、これら内側接続部262bが内側板部166と接続されている。2箇所の内側接続部262bは、内側板部166の径方向における中心よりも同じ逆側、すなわち外側接続部261bとは反対側に、内側板部166の周方向に並んで配置されており、いずれも内側板部166の外周縁部から内側板部166の径方向外側に突出している。
【0085】
2箇所の内側接続部262bを結ぶ直線の中点から、この線に垂直な直線上に、低剛性ディスク142bの中心および外側接続部261bが配置されている。外側接続部261bと一方の内側接続部262bとの距離は、外側接続部261bと他方の内側接続部262bとの距離と同等になっている。この距離は、2箇所の内側接続部262bを結ぶ距離よりも長い。
【0086】
さらに、連結板部168bは、1箇所の外側接続部261bの外側板部167とは反対側から低剛性ディスク142bの周方向両側に延出して、両側の内側接続部262bに接続するように2箇所の連結腕部263bが設けられている。すなわち、低剛性ディスク142bには、外側接続部261bと一方の内側接続部262bとを接続させる一方の連結腕部263bと、外側接続部261bと他方の内側接続部262bとを接続させる他方の連結腕部263bとが設けられている。
【0087】
2箇所の連結腕部263bは、内側板部166の外周面および外側板部167の内周面に沿う一つの円弧状に延びており、内側板部166および外側板部167と同心の同一円上に配置されている。2箇所の連結腕部263bは、外側板部167の内周面からの径方向距離と、内側板部166の外周面からの径方向距離とが同等になっている。
【0088】
このような構成の低剛性ディスク142bには、内側板部166と外側板部167と連結板部168bとの間に、低剛性ディスク142bの厚さ方向に貫通する貫通孔163b1が形成されている。また、低剛性ディスク142bには、内側板部166と連結板部168bとの間に、低剛性ディスク142bの厚さ方向に貫通する貫通孔163b2が形成されている。内側板部166と外側板部167との間の連結板部168bを有する低剛性部171bは、複数の貫通孔163b1,163b2が形成されることにより、貫通孔163b1,163b2が形成されていないディスクよりも低剛性であり、小径ディスク141よりも低剛性となる。
【0089】
[変形例3]
また、上記低剛性ディスク142にかえて、
図8に示すような変形例3の低剛性ディスク142cを用いても良い。低剛性ディスク142cは、低剛性ディスク142と同様の内側板部166および外側板部167を有しており、連結板部168とは異なる1つの連結板部168cと、貫通孔163とは異なる2箇所の貫通孔163c1,163c2とを有している。言い換えれば、低剛性ディスク142cは、内側板部166および外側板部167の間に、低剛性部171とは異なる低剛性部171cを有している。
【0090】
連結板部168cは、低剛性ディスク142cにおいて1箇所のみ設けられている。連結板部168cは、低剛性ディスク142cの径方向において、中心よりも一側に配置された1箇所の外側接続部261cを有しており、この外側接続部261cが外側板部167と接続されている。外側接続部261cは、外側板部167の内周縁部から外側板部167の径方向内側に突出している。
【0091】
また、連結板部168cは、低剛性ディスク142cの径方向において、中心よりも逆側、すなわち外側接続部261cとは反対側に配置された1箇所の内側接続部262cを有しており、この内側接続部262cが内側板部166と接続されている。1箇所の内側接続部262cは、内側板部166の外周縁部から内側板部166の径方向外側に突出している。
【0092】
1箇所の外側接続部261cと1箇所の内側接続部262bとは、低剛性ディスク142cの周方向において180度位相を異ならせている。言い換えれば、外側接続部261cと低剛性ディスク142cの中心と内側接続部262cとを結ぶ線が直線状をなす。
【0093】
さらに、連結板部168cは、外側接続部261cの外側板部167とは反対側から低剛性ディスク142cの周方向両側に延出して、内側接続部262cに接続するように2箇所の連結腕部263cが設けられている。すなわち、低剛性ディスク142cには、一方で外側接続部261cと内側接続部262cとを接続させる一方の連結腕部263cと、他方で外側接続部261cと内側接続部262cとを接続させる他方の連結腕部263cとが設けられている。
【0094】
2箇所の連結腕部263cは、内側板部166の外周面および外側板部167の内周面に沿う一つの円形状に延びており、内側板部166および外側板部167と同心の同一円上に配置されている。2箇所の連結腕部263cは、外側板部167の内周面からの径方向距離と、内側板部166の外周面からの径方向距離とが同等になっている。
【0095】
このような構成の低剛性ディスク142cは、外側板部167と連結板部168cとの間に、低剛性ディスク142cの厚さ方向に貫通する貫通孔163c1が形成されている。また、低剛性ディスク142cは、内側板部166と連結板部168cとの間に、低剛性ディスク142cの厚さ方向に貫通する貫通孔163c2が形成されている。内側板部166と外側板部167との間の連結板部168cを有する低剛性部171cは、複数の貫通孔163c1,163c2が形成されることにより、貫通孔163c1,163c2が形成されていないディスクよりも低剛性であり、小径ディスク141よりも低剛性となる。
【0096】
[変形例4]
また、上記低剛性ディスク142にかえて、
図9に示すような変形例4の低剛性ディスク142dを用いても良い。低剛性ディスク142dは、低剛性ディスク142と同様の内側板部166および外側板部167を有しており、連結板部168とは異なる2つの同形状の連結板部168dと、貫通孔163とは異なる2箇所の同形状の貫通孔163dとを有している。言い換えれば、低剛性ディスク142dは、内側板部166および外側板部167の間に、低剛性部171とは異なる低剛性部171dを有している。
【0097】
2本の連結板部168dは、低剛性ディスク142dの中心を通る同一直線上に配置された2箇所の外側接続部261dを有しており、これら外側接続部261dが外側板部167と接続されている。2箇所の外側接続部261dは、外側板部167の周方向に180度位相を異ならせて配置されており、いずれも外側板部167の内周縁部から外側板部167の径方向内側に突出している。
【0098】
また、2本の連結板部168dは、低剛性ディスク142dの中心を通る同一直線上に配置された2箇所の内側接続部262dを有しており、これらが内側板部166と接続されている。2箇所の内側接続部262dは、内側板部166の周方向に180度位相を異ならせて配置されており、いずれも内側板部166の外周縁部から内側板部166の径方向外側に突出している。2箇所の外側接続部261dは、いずれも、2箇所の内側接続部262dのうちの一方との低剛性ディスク142dの周方向における距離が他方よりも近くなっている。言い換えれば、2箇所の内側接続部262dは、いずれも、2箇所の外側接続部261dのうちの一方との低剛性ディスク142dの周方向における距離が他方よりも近くなっている。
【0099】
一方で低剛性ディスク142dの周方向において近い外側接続部261dと内側接続部262dとの距離は、他方で低剛性ディスク142dの周方向において近い外側接続部261dと内側接続部262dとの距離と同等になっている。
【0100】
さらに、2本の連結板部168dは、低剛性ディスク142dの周方向に近い外側接続部261dと内側接続部262dとを接続させるように2箇所の連結腕部263dが設けられている。すなわち、低剛性ディスク142dには、一方で低剛性ディスク142dの周方向において近い一方の外側接続部261dと一方の内側接続部262dとを接続させる一方の連結腕部263dが設けられており、これら外側接続部261d、内側接続部262dおよび連結腕部263dが一方の連結板部168dを構成している。また、低剛性ディスク142dには、他方で低剛性ディスク142dの周方向において近い他方の外側接続部261dと他方の内側接続部262dとを接続させる他方の連結腕部263dが設けられており、これら外側接続部261d、内側接続部262dおよび連結腕部263dが他方の連結板部168dを構成している。
【0101】
2箇所の連結腕部263dは、2箇所の外側円弧状部301と、2箇所の折返部302と、2箇所の内側円弧状部303とを有している。一方の連結腕部263dは、一方の外側円弧状部301と、一方の折返部302と、一方の内側円弧状部303とからなっており、他方の連結腕部263dは、他方の外側円弧状部301と、他方の折返部302と、他方の内側円弧状部303とからなっている。
【0102】
一方の外側円弧状部301は、一方の外側接続部261dから、これに近い側の一方の内側接続部262dを越えて、他方の外側接続部261dの手前まで、内側板部166の外周面および外側板部167の内周面に沿って円弧状に延びている。一方の折返部302は、一方の外側円弧状部301の一方の外側接続部261dとは反対側の端部から内側板部166側に折り返す。一方の内側円弧状部303は、一方の折返部302の一方の外側円弧状部301とは反対側の端部から、内側板部166の外周面および外側板部167の内周面に沿って円弧状に延びて、一方の内側接続部262dに接続されている。
【0103】
他方の外側円弧状部301は、他方の外側接続部261dから、これに近い側の他方の内側接続部262dを越えて、一方の外側接続部261dの手前まで、内側板部166の外周面および外側板部167の内周面に沿って円弧状に延びている。他方の折返部302は、他方の外側円弧状部301の他方の外側接続部261dとは反対側の端部から内側板部166側に折り返す。他方の内側円弧状部303は、他方の折返部302の他方の外側円弧状部301とは反対側の端部から、内側板部166の外周面および外側板部167の内周面に沿って円弧状に延びて、他方の内側接続部262dに接続されている。
【0104】
一方の外側円弧状部301および他方の外側円弧状部301は、内側板部166および外側板部167と同心の一つの円上に配置されており、一方の内側円弧状部303および他方の内側円弧状部303は、内側板部166および外側板部167と同心の一つの円上に配置されている。
【0105】
このような構成の低剛性ディスク142dは、内側板部166と外側板部167と2箇所の連結板部168dとの間に、低剛性ディスク142dの厚さ方向に貫通する2箇所の同形状の貫通孔163dが形成されている。内側板部166と外側板部167との間の複数の連結板部168dを有する低剛性部171dは、複数の貫通孔163dが形成されることにより、貫通孔163dが形成されていないディスクよりも低剛性であり、小径ディスク141よりも低剛性となる。
【0106】
[変形例5]
また、上記低剛性ディスク142にかえて、
図10に示すような変形例5の低剛性ディスク142eを用いても良い。低剛性ディスク142eは、低剛性ディスク142と同様の内側板部166および外側板部167を有しており、連結板部168とは異なる一つの低剛性部171eを有している。低剛性ディスク142eは、内側板部166および外側板部167の間に、厚さ方向に貫通する貫通孔は形成されていない。言い換えれば、低剛性ディスク142eは、内側板部166および外側板部167の間に、低剛性部171とは異なる低剛性部171eを有している。
【0107】
低剛性ディスク142eには、軸方向一側の面から低剛性ディスク142eの軸方向、言い換えれば低剛性ディスク142eの厚さ方向に凹む凹部311が形成されている。凹部311は、低剛性ディスク142eの円周方向に全周にわたって連続する円環状である。凹部311は、嵌合穴161および外周縁部162と同軸の円形状をなしている。
【0108】
凹部311が形成されることによって、低剛性ディスク142eは、低剛性ディスク142eの径方向において、内側板部166と外側板部167とを繋ぐように平板状の低剛性部171eが設けられている。内側板部166と外側板部167との間の低剛性部171eは、凹部311が形成されることにより、内側板部166および外側板部167よりも軸方向の厚さが薄く低剛性となっている。低剛性部171eが形成されることによって、低剛性ディスク142eは、凹部311が形成されていないディスクよりも低剛性となっており、小径ディスク141よりも低剛性となる。
【0109】
ここで、低剛性ディスク142eは、凹部311が小径ディスク141に対向する向きで小径ディスク141に重ねられても良く、凹部311が小径ディスク141とは反対に向く向きで小径ディスク141に重ねられても良い。
【0110】
このような低剛性ディスク142eは、凹みである凹部311が形成されることで剛性が低くされるため、容易に低剛性部171eを形成することができる。また、凹部311を円環状に形成することができるため、低剛性ディスク142eをその周方向に均等に剛性を低下させることができる。さらに、凹部311が円環状をなしているため、低剛性ディスク142eに生じる応力を緩和することができる。なお、凹部311を低剛性ディスク142eの軸方向両側に形成しても良い。
【0111】
以上の実施形態では、ピストン45に設けられる伸び側のバルブ機構58を例にとり説明したが、ピストン45に設けられる縮み側のバルブ機構57をバルブ機構58と同様の構造にすることも可能である。また、ベースバルブ30を構成する縮み側のバルブ機構65をバルブ機構58と同様の構造にすることも可能であり、ベースバルブ30を構成する伸び側のバルブ機構66をバルブ機構58と同様の構造にすることも可能である。
【0112】
以上に述べた実施形態の第1の態様は、作動流体が封入されるシリンダと、前記シリンダ内に摺動可能に設けられ、該シリンダ内を2室に区画するピストンと、前記ピストンに連結されると共に前記シリンダの外部に延出されるピストンロッドと、前記ピストンの移動により作動流体が流れ出す通路と、内側シートと、前記内側シートの外側に設けられると共に前記内側シートとの間に前記通路が開口する中間シートと、前記中間シートの外側に設けられる外側シートと、前記内側シートに内周部が、前記中間シートに外周部が載置され、前記内周部と前記外周部との間の中間部に低剛性部が形成されるディスク状の第1バルブと、前記第1バルブの前記内側シートとは反対側に設けられるリテーナと、前記リテーナに内側が、前記外側シートに外側が載置されるディスク状の第2バルブと、を有する。これにより、ピストン速度が低速の領域での減衰力を上げつつ、ピストン速度が高速の領域での減衰力の増大を抑制することができる。
【0113】
第2の態様は、第1の態様において、前記低剛性部は、複数の貫通孔が形成されている。
【0114】
第3の態様は、第2の態様において、前記貫通孔は、円弧状である。
【0115】
第4の態様は、第1の態様において、前記低剛性部は、凹部が形成されている。
【0116】
第5の態様は、第1乃至第4のいずれか一態様において、前記低剛性部は、前記内側シートの外周よりも外側に位置する。
【符号の説明】
【0117】
11 緩衝器
17 シリンダ
45 ピストン
48 第1室
49 第2室
51 ピストンロッド
56 通路
121 内側シート
122 中間シート
123 外側シート
163,163a,163b1,163b2,163c1,163c2,163d 貫通孔
171,171a~171e 低剛性部
175 内周部
176 外周部
177 第1バルブ
178 中間部
185 リテーナ
205 第2バルブ
311 凹部