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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】集塵システム、蓄熱システム
(51)【国際特許分類】
   F27D 17/00 20060101AFI20231127BHJP
   B01D 46/02 20060101ALI20231127BHJP
   F28D 20/00 20060101ALI20231127BHJP
   F28D 20/02 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
F27D17/00 105A
B01D46/02 A
F28D20/00 G
F28D20/02 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020509359
(86)(22)【出願日】2019-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2019014341
(87)【国際公開番号】W WO2019189886
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-11-16
(31)【優先権主張番号】P 2018064930
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229047
【氏名又は名称】日本スピンドル製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】木嶋 敬昌
(72)【発明者】
【氏名】山本 敬介
(72)【発明者】
【氏名】三坂 浩司
【審査官】櫻井 雄介
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-161379(JP,U)
【文献】特開2013-108697(JP,A)
【文献】特開2000-342925(JP,A)
【文献】特開昭58-202016(JP,A)
【文献】特開2007-046113(JP,A)
【文献】特開2013-137125(JP,A)
【文献】特開2010-151432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 17/00
F28D 20/00
F28D 20/02
B01D 46/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体の内部に炉からの塵芥を含む含塵空気を導入する導入部と、
前記塵芥を捕集するフィルタと、
前記筐体の内部から空気を排出する排出部と、
前記筐体の内部と外部とを区画する壁部材と、を具備する集塵機と、
前記炉からの塵芥を含む含塵空気の熱を蓄熱する蓄熱装置と、を備え、
前記蓄熱装置は、化学蓄熱材を備え、前記壁部材の近傍に配置された蓄熱部であり、
前記蓄熱部は、前記壁部材が所定温度以上であるときに前記壁部材から前記筐体の外部へ流出する熱を吸収して蓄え、前記壁部材が所定温度未満であるときに放熱して前記壁部材を加熱し、
前記筐体は、第1室と、前記フィルタを通過して空気が移動可能な第2室とを有し、前記導入部は前記第1室に塵芥を含む含塵空気を導入し、前記排出部は前記第2室から空気を排出し、前記壁部材は、前記第2室の内部と前記筐体の外部とを区画する第2壁部材を備え、前記蓄熱部は、前記第2壁部材を加熱する第2蓄熱部を備えることを特徴とする、集塵システム。
【請求項2】
前記蓄熱部は、前記導入部が前記筐体の内部に含塵空気を導入しているときに前記壁部材から前記筐体の外部へ流出する熱を吸収して蓄え、前記導入部が前記筐体の内部に含塵空気を導入していないときに放熱して前記壁部材を加熱することを特徴とする、請求項に記載の集塵システム。
【請求項3】
前記筐体は、第1室と、前記フィルタを通過して空気が移動可能な第2室とを有し、前記導入部は前記第1室に塵芥を含む含塵空気を導入し、前記排出部は前記第2室から空気を排出し、前記壁部材は、前記第1室の内部と前記筐体の外部とを区画し、且つ、前記フィルタの鉛直方向下方に位置する第1壁部材を備え、前記蓄熱部は、前記第1壁部材を加熱する第1蓄熱部を備えることを特徴とする、請求項又はに記載の集塵システム。
【請求項4】
筐体と、
前記筐体の内部に炉からの塵芥を含む含塵空気を導入する導入部と、
前記塵芥を捕集するフィルタと、
前記筐体の内部から空気を排出する排出部と、
前記筐体の内部と外部とを区画する壁部材と、を具備する集塵機と、
前記炉からの塵芥を含む含塵空気の熱を蓄熱する蓄熱装置と、を備え、
前記蓄熱装置は、化学蓄熱材を備え、前記壁部材の外面に接触して配置された蓄熱部であり、
前記筐体は、第1室と、前記フィルタを通過して空気が移動可能な第2室とを有し、前記導入部は前記第1室に塵芥を含む含塵空気を導入し、前記排出部は前記第2室から空気を排出し、前記壁部材は、前記第1室の内部と前記筐体の外部とを区画し、且つ、前記フィルタの鉛直方向下方に位置する第1壁部材を備え、前記蓄熱部は、前記第1壁部材を加熱する第1蓄熱部を備えることを特徴とする、集塵システム。
【請求項5】
前記蓄熱部は、前記壁部材が所定温度以上であるときに前記壁部材から前記筐体の外部へ流出する熱を吸収して蓄え、前記壁部材が所定温度未満であるときに放熱して前記壁部材を加熱することを特徴とする、請求項4に記載の集塵システム。
【請求項6】
前記蓄熱部は、前記導入部が前記筐体の内部に含塵空気を導入しているときに前記壁部材から前記筐体の外部へ流出する熱を吸収して蓄え、前記導入部が前記筐体の内部に含塵空気を導入していないときに放熱して前記壁部材を加熱することを特徴とする、請求項4又は5に記載の集塵システム。
【請求項7】
前記筐体は、第1室と、前記フィルタを通過して空気が移動可能な第2室とを有し、前記導入部は前記第1室に塵芥を含む含塵空気を導入し、前記排出部は前記第2室から空気を排出し、前記壁部材は、前記第2室の内部と前記筐体の外部とを区画する第2壁部材を備え、前記蓄熱部は、前記第2壁部材を加熱する第2蓄熱部を備えることを特徴とする、請求項4から6のいずれか一項に記載の集塵システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ごみ焼却炉、製鋼炉などの炉設備に利用する集塵システム、蓄熱システムに関する。
【背景技術】
【0002】
焼却炉の排ガス等から塵芥を除去する集塵機が知られている。特許文献1に記載された集塵機は、筐体内において含塵空気導入室側から浄化空気室側に通流する含塵空気中に含まれる塵芥をフィルタ部にて捕集して、焼却炉や破砕設備等から供給される含塵空気を浄化する装置である。この装置は、フィルタ部に捕集され付着した塵芥を、圧縮空気噴出部により浄化空気室側からフィルタ部を介して含塵空気導入室側に圧縮空気を噴出させて払い落とし、清掃することができるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-175622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
都市ゴミ等を焼却すると、その際に発生する燃焼排ガスには、塩化水素や硫黄酸化物などの有害物質が含まれる。これらの物質を中和・除去するため、燃焼排ガスに、消石灰や水酸化ナトリウム等のアルカリ薬剤が加えられる。そうすると、中和により生成する中和生成物が、燃焼排ガス中に含まれることになる。この状態の燃焼排ガスが、上記の集塵機へ導入されると、中和生成物が、集塵機のフィルタの表面や、筐体の内面に付着する。また、炉から集塵機までの燃焼排ガスの流路にも付着する。
【0005】
一部の中和生成物は、潮解性を有する。そのため、集塵機の温度が低下すると、燃焼排ガスに含まれる水蒸気により中和生成物が潮解する場合がある。フィルタの表面に付着した中和生成物が潮解すると、フィルタの目詰まりが生じ、集塵機の性能が低下するおそれがある。また、流路に付着した中和生成物は、配管の腐食などを促進するおそれがある。
そのため、集塵機や配管の温度の低下時には、中和生成物が潮解することを抑制するために、集塵機や配管などをヒータで加温し、高温に維持する必要がある。
【0006】
本発明の課題は、炉設備の燃焼排ガスの熱を利用して、集塵機や配管など熱を必要とする箇所を適宜加温することが可能な集塵システム又は蓄熱システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、炉から排出される含塵空気の熱を蓄熱装置で蓄熱することにより、集塵機や配管など熱を必要とする箇所で適宜放熱できることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の集塵システム、蓄熱システムである。
【0008】
上記課題を解決するための本発明の集塵システムは、筐体と、前記筐体の内部に炉からの塵芥を含む含塵空気を導入する導入部と、前記塵芥を捕集するフィルタと、前記筐体の内部から空気を排出する排出部と、前記筐体の内部と外部とを区画する壁部材と、を具備する集塵機と、前記炉からの塵芥を含む含塵空気の熱を蓄熱する蓄熱装置と、を備えることを特徴とする。
この集塵システムによれば、炉からの塵芥を含む含塵空気の熱を蓄熱する蓄熱装置を備えることから、必要に応じて蓄熱した熱を利用して集塵機や他の設備を加温することが可能となる。
【0009】
さらに、本発明の集塵システムの一実施態様としては、蓄熱装置は、壁部材の近傍に配置された蓄熱部であることを特徴とする。
この特徴によれば、蓄熱装置が集塵機の一部に蓄熱部として備えるため、蓄熱装置から放熱した熱を集塵機に効率よく供給することができる。
【0010】
さらに、本発明の集塵システムの一実施態様としては、蓄熱部は、壁部材が所定温度以上であるときに壁部材から筐体の外部へ流出する熱を吸収して蓄え、壁部材が所定温度未満であるときに放熱して壁部材を加熱することを特徴とする。
この特徴によれば、蓄熱部の放熱を、集塵機の壁部材が所定の温度未満であるときに行うため、蓄熱した熱を集塵機の加温が必要なときに利用することが可能となる。
【0011】
さらに、本発明の集塵システムの一実施態様としては、蓄熱部は、導入部が筐体の内部に含塵空気を導入しているときに壁部材から筐体の外部へ流出する熱を吸収して蓄え、導入部が筐体の内部に含塵空気を導入していないときに放熱して壁部材を加熱することを特徴とする。
この特徴によれば、炉設備が稼働し、炉から排出される含塵空気が集塵機に供給されるときには蓄熱し、炉設備の稼働が停止すると壁部材を加熱するため、炉設備の停止時における集塵機の温度の低下を防止し、フィルタ等の表面に付着した中和生成物の潮解を抑制することができる。
【0012】
さらに、本発明の集塵システムの一実施態様としては、筐体は、第1室と、フィルタを通過して空気が移動可能な第2室とを有し、導入部は第1室に塵芥を含む含塵空気を導入し、排出部は第2室から空気を排出し、壁部材は、第1室の内部と筐体の外部とを区画し、且つ、フィルタの鉛直方向下方に位置する第1壁部材を備え、蓄熱部は、第1壁部材を加熱する第1蓄熱部を備えることを特徴とする。
この特徴によれば、フィルタの鉛直方向下方に位置する第1壁部材に蓄熱部を備えるため、蓄熱部が放熱する際に、フィルタを効率的に加熱することができる。また、第1壁部材の蓄熱部は、フィルタの中和生成物を含む塵芥が蓄積する側を加熱するため、中和生成物の潮解を効果的に抑制することができる。
【0013】
さらに、本発明の集塵システムの一実施態様としては、筐体は、第1室と、フィルタを通過して空気が移動可能な第2室とを有し、導入部は第1室に塵芥を含む含塵空気を導入し、排出部は第2室から空気を排出し、壁部材は、第2室の内部と筐体の外部とを区画する第2壁部材を備え、蓄熱部は、第2壁部材を加熱する第2蓄熱部を備えることを特徴とする。
この特徴によれば、フィルタの排出部側の第2室の第2壁部材に蓄熱部を備えるため、フィルタを通過した微細な中和生成物の潮解を効果的に抑制することができる。
【0014】
さらに、本発明の集塵システムの一実施態様としては、壁部材を加熱するヒータを更に備えることを特徴とする。
この特徴によれば、蓄熱装置において蓄熱した熱が不足する場合でも、ヒータにより熱を供給し、集塵機や配管など熱を必要とする箇所を適宜加温することが可能である。
【0015】
さらに、本発明の集塵システムの一実施態様としては、ヒータは、集塵機の温度が所定温度よりも低い場合に加熱を行うことを特徴とする。
この特徴によれば、蓄熱装置において蓄熱した熱が不足する場合でも、集塵機の温度を適切に維持することができる。
【0016】
さらに、本発明の集塵システムの一実施態様としては、ヒータは、集塵機の温度が所定の温度よりも低く、且つ、集塵機が所定の時間よりも長く停止した後に稼働した場合に、加熱を行うことを特徴とする。
この特徴によれば、集塵機が所定時間停止し、温度が設定した温度に低下した際に、ヒータが稼働するため、ヒータの稼働を必要最低限に抑えることができる。
【0017】
さらに、本発明の集塵システムの一実施態様としては、蓄熱装置は、化学蓄熱材を備えることを特徴とする。
この特徴によれば、蓄熱装置が化学蓄熱材により蓄熱するため、加熱が必要な箇所や時間に放熱することが可能となる。
【0018】
さらに、本発明の集塵システムの一実施態様としては、蓄熱装置に対して水又は水蒸気を供給する給水部を更に備えることを特徴とする。
化学蓄熱材は、例えば、酸化カルシウム(CaO)と水蒸気のように、水又は水蒸気を供給することにより放熱する化学蓄熱材を利用することが可能である。上記の特徴によれば、蓄熱装置に対して水又は水蒸気を供給する給水部を備えるため、必要に応じて化学蓄熱材の放熱を行うことができる。
【0019】
上記課題を解決するための本発明の蓄熱システムは、炉からの塵芥を含む含塵空気の熱を蓄熱する蓄熱装置と、含塵空気が蓄熱装置に流入する前に含塵空気から塵芥を除去する除塵機を備えることを特徴とする。
含塵空気の通路を微細化すると、含塵空気と蓄熱材との熱交換効率を高めることができる。一方で、含塵空気には、大量の塵芥が含まれており、含塵空気の通路を微細化すると、塵芥により閉塞するおそれがある。上記特徴によれば、含塵空気が蓄熱装置に流入する前に含塵空気から塵芥を除去することから、塵芥による閉塞を抑制することができる。
また、含塵空気を蓄熱装置に流入させると、塵芥に含まれる潮解性の中和生成物などにより、蓄熱装置を腐食するなどの問題が生じる。しかし、上記の特徴によれば、蓄熱装置に含塵空気が流入する前に、除塵機で含塵空気から塵芥が除去されるため、塵芥に含まれる潮解性の中和生成物などが低減することから、蓄熱装置の腐食などを抑制することができる。
【0020】
さらに、本発明の蓄熱システムの一実施態様としては、除塵機は、含塵空気の温度が500℃以上で塵芥を除去することを特徴とする。
ダイオキシンなどの有害物質は、含塵空気中の塵芥と気体成分との反応により生じるものであり、含塵空気が300~500℃まで冷却する際に発生する。上記特徴によれば、500℃以上で含塵空気から塵芥を除去するため、除塵後の空気の温度が蓄熱装置で低下しても、ダイオキシンなどの有害物質の発生が抑制されるという効果を奏する。
【0021】
さらに、本発明の蓄熱システムの一実施態様としては、含塵空気が通過する主流路より分岐した副流路を備え、前記蓄熱装置は、前記副流路に配置することを特徴とする。
この特徴によれば、副流路に蓄熱装置が配置されるため、主流路を使用して炉設備の操業を稼働しつつ、副流路に設置された蓄熱装置を適宜交換することができるという効果を奏する。
【0022】
さらに、本発明の蓄熱システムの一実施態様としては、前記蓄熱装置は、化学蓄熱材を有することを特徴とする。
この特徴によれば、必要な時に発熱反応により放熱させることができるため、熱エネルギーを保管したり、農業用ビニールハウスの熱源や、農業用温水殺菌用の熱源や、災害時の入浴用の熱源など炉設備以外での熱源として利用したりすることができる。
【0023】
上記課題を解決するための本発明の蓄熱装置は、化学蓄熱材を有する蓄熱装置であって、前記蓄熱システムから着脱可能であることを特徴とする。
この蓄熱装置によれば、炉から排出される含塵空気の熱を蓄熱装置に蓄熱し、集塵機や配管などの熱を必要とする箇所で適宜放熱できるだけでなく、炉設備外に持ち出して、熱源が必要とされる場所で放熱することも可能である。
【0024】
上記課題を解決するための本発明の炉設備は、前記の集塵システム、又は、前記の蓄熱システムを備えることを特徴とする。
この炉設備によれば、炉設備の燃焼排ガスの熱を利用して、集塵機や配管など熱を必要とする箇所を適宜加温することが可能であり、集塵機や配管などをヒータで加温するためのエネルギーを低減することができる。
【0025】
上記課題を解決するための本発明の集塵システムは、前記の蓄熱システムの蓄熱装置から発生する熱が供給される集塵機を備えることを特徴とする。
この集塵システムによれば、炉からの塵芥を含む含塵空気の熱を蓄熱する蓄熱装置を備えることから、必要に応じて蓄熱した熱を利用して集塵機や他の設備を加温することが可能となる。また、蓄熱装置に含塵空気が流入する前に、除塵機で含塵空気から塵芥が除去されるため、塵芥に含まれる潮解性の中和生成物などが低減することから、蓄熱装置の腐食などを抑制することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、炉設備での燃焼排ガスの熱を利用して、集塵機や配管など熱を必要とする箇所を適宜加温することが可能な炉設備を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1の実施態様の炉設備の構成を示す概略説明図である。
図2】本発明の第2の実施態様の炉設備の構成を示す概略説明図である。
図3】本発明の第3の実施態様の炉設備の構成を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の炉設備は、含塵空気を排出する炉と、含塵空気の熱を蓄熱する蓄熱装置を備えるものである。ここで、炉設備とは、含塵空気を排出する炉であれば、特に限定されない。含塵空気を排出する炉としては、例えば、ごみ焼却炉や火葬炉などの焼却炉、窯やロータリーキルンなどの焼成炉、製鋼炉や溶鉱炉などの溶錬炉、囲炉裏やストーブやオーブンなどの暖炉、蒸気船や蒸気機関車などの動力源となるボイラなどが挙げられる。製鋼炉は、操業と停止を頻繁に繰り返すことから、集塵機や配管などの低温化しやすいという観点から、本発明の炉設備の効果をより発揮することができる。
【0029】
また、本発明の集塵システムは、炉からの塵芥を含む含塵空気から塵芥を除去するための集塵機と、炉からの塵芥を含む含塵空気の熱を蓄熱する蓄熱装置と、を備えることを特徴とするものである。
【0030】
また、本発明の蓄熱システムは、炉からの塵芥を含む含塵空気の熱を蓄熱する蓄熱装置と、含塵空気が蓄熱装置に流入する前に含塵空気から塵芥を除去する除塵機を備えることを特徴とするものである。
【0031】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る炉設備、集塵システム及び蓄熱システムの実施態様を詳細に説明する。なお、実施態様の記載については、本発明に係る炉設備、集塵システム及び蓄熱システムを説明するために例示したに過ぎず、これに限定されるものではない。
【0032】
〔第1の実施態様〕
図1は、本発明の第1の実施態様における炉設備200の構造を示す概略説明図である。なお、炉設備200は、集塵機206、蓄熱装置203、除塵機202を備えており、本発明では、集塵機206と蓄熱装置203を備えるシステムを「集塵システム」、蓄熱装置203と除塵機202を備えるシステムを「蓄熱システム」という。
【0033】
図1に示すように、炉設備200は、炉201と集塵機206を備え、炉201から排出された含塵空気Gは、主流路L1を通過して集塵機206に導入され、集塵機206で塵芥を除去したのちに大気へ排出される。なお、炉201から排出された含塵空気Gの温度は、1000℃程度であり、水冷ダクトやガスクーラー等を経由して200℃以下まで温度を低下したのちに集塵機206に導入する。
【0034】
また、主流路L1は、分岐した副流路L2を備え、副流路L2には、上流側から除塵機202、蓄熱装置203、吸引ポンプ207が設置されている。そして、副流路L2の終点は、主流路L1と合流しており、吸引ポンプ207を通過した含塵空気Gは、主流路L1に戻るにように構成されている。
【0035】
また、副流路L2には、除塵機202と蓄熱装置203の間にバルブV1、蓄熱装置203と吸引ポンプ207の間にV2が設けられており、副流路L2への含塵空気Gの流通を制御することができる。
【0036】
主流路L1には、主流路L1から副流路L2へ含塵空気Gが流入する領域、及び、副流路L2から主流路L1へ含塵空気Gが戻る領域に、それぞれ圧力センサP1及びP2を備えており、圧力センサP1の圧力は、圧力センサP2の圧力よりも高く設定されている。これにより、主流路L1から副流路L2に自然と含塵空気Gが流入することができる。なお、圧力センサP1の圧力が、圧力センサP2の圧力よりも高い場合には、吸引ポンプ207は、副流路L2の含塵空気Gの流通量を調整するためのものであり、必須の構成ではない。
【0037】
[除塵機]
除塵機202は、含塵空気Gから塵芥を除去するためのものである。除塵機202は、含塵空気Gから塵芥を除去できる固気分離装置であれば、特に制限されず、例えば、フィルタや粒子充填層などを通過させるろ過分離装置や、電気集塵機や、重力により分離する重力分離装置や、サイクロンなど遠心力により分離する遠心分離装置などが挙げられる。
除塵機202により、含塵空気Gから塵芥が除去されるため、後段の蓄熱装置203に大量の塵芥が流入することによる閉塞を抑制することができる。また、潮解性を有する物質も除去され、蓄熱装置203の腐食を抑制できるという効果も奏する。
【0038】
除塵機202は、含塵空気Gの温度が500℃以上で塵芥を除去することが好ましい。ダイオキシンなどの有害物質は、含塵空気G中の塵芥と気体成分との反応により生じるものであり、含塵空気Gが300~500℃まで冷却する際に発生する。よって、500℃以上で含塵空気から塵芥を除去することにより、除塵後の空気の温度が蓄熱装置で低下しても、ダイオキシンなどの有害物質の発生が抑制されるという効果を奏する。
また、除塵機202は、含塵空気Gの温度が800℃以下で塵芥を除去することが好ましい。含塵空気Gの温度が800℃以下の場合、除塵機202が高度な耐熱性を有する必要がなくなるため、多様な除塵機を利用することができる。
【0039】
除塵機202は、500℃以上で塵芥を除去するという観点から、耐熱性に優れたものを使用することが好ましい。耐熱性に優れた除塵機としては、例えば、セラミックフィルターや、電気集塵機や、サイクロンなどが挙げられる。
【0040】
[蓄熱装置]
蓄熱装置203は、蓄熱材を有する装置であり、除塵機202で除塵された含塵空気Gの熱を蓄熱材に蓄熱するものである。蓄熱装置203の構造は、含塵空気Gが蓄熱材に熱を供給できる構造物であれば、特に制限されないが、例えば、蓄熱材を内部に収納した収納容器と、含塵空気Gが通過するための熱交換チューブを備えており、熱交換チューブが収納容器の内部に蛇行して配置されているものが挙げられる。含塵空気Gは、この熱交換チューブを通過する際に、熱交換チューブの管壁を介して容器内部の蓄熱材に熱を供給する。
【0041】
蓄熱材としては、例えば、加熱時に蓄熱生成物と生成流体に分離し、放熱時にこの逆の反応を行う化学蓄熱材や、所定の温度で相転移し、潜熱を吸収又は放出する潜熱蓄熱材や、顕熱を吸収又は放出する顕熱蓄熱材などが挙げられる。
【0042】
化学蓄熱材を構成する蓄熱生成物と生成流体としては、例えば、酸化カルシウム(CaO)と水蒸気(HO)、塩化カルシウム(CaCl)と水蒸気(HO)、臭化カルシウム(CaBr)と水蒸気(HO)、ヨウ化カルシウム(CaI)と水蒸気(HO)、酸化マグネシウム(MgO)と水蒸気(HO)、塩化マグネシウム(MgCl)と水蒸気(HO)、塩化亜鉛(ZnCl)と水蒸気(HO)、塩化ストロンチウム(SrCl)とアンモニア(NH)、臭化ストロンチウム(SrBr)とアンモニア(NH)、酸化カルシウム(CaO)と二酸化炭素(CO)、酸化マグネシウム(MgO)と二酸化炭素等(CO)が挙げられる。取り扱いが容易であるという観点から、化学蓄熱材は、生成流体として水蒸気を利用するものであることが好ましい。
また、蓄熱装置は、高温での化学蓄熱時に特に効果を発揮する構成であるため、本発明における化学蓄熱材としては、高温での化学蓄熱が可能な蓄熱生成物と生成流体として、酸化カルシウムと水蒸気の組み合わせ(400~500度)や酸化マグネシウムと水蒸気の組み合わせ(300~400度)を用いることが好ましい。
【0043】
潜熱蓄熱材としては、例えば、マンニトール(166.5℃)、トランスポリブタジエン(145℃)、エリスリトール(119℃)、塩化マグネシウム6水和物(117℃)などが挙げられる(括弧内は相転移温度)。
また、顕熱蓄熱材としては、煉瓦、砂利などが挙げられる。
【0044】
第1の実施態様の蓄熱装置203は、内部に水酸化カルシウムが収納された収納容器と、水回収タンク204を備え、収納容器と水回収タンク204は、配管で連結されている。また、この配管には、バルブV3が設置されており、開閉を操作することができる。
【0045】
蓄熱装置203に含塵空気Gが流入し、含塵空気Gの熱が水酸化カルシウムに供給されると、吸熱反応により水酸化カルシウムが酸化カルシウムと水蒸気に分離する。そして、分離された水蒸気が水回収タンク204に移動し、次いで、バルブV3を閉じることにより酸化カルシウムと水蒸気を分離することができる。
【0046】
一方、放熱時には、バルブV3を開放することにより、水蒸気が蓄熱装置203の収納容器側に移動させる。これにより、酸化カルシウムと水蒸気が反応して、水酸化カルシウムを生成し、熱を発生する。
【0047】
また、第1の実際態様の蓄熱装置203は、含塵空気Gが流通する熱交換チューブとは別の熱交換チューブを備えており、この別の熱交換チューブは、蓄熱装置203と集塵機206の間に循環流路L3を形成している。循環流路L3には、送風機205により清浄な空気が循環する。
【0048】
酸化カルシウムと水蒸気の発熱反応により発生した熱は、循環流路L3を流通する空気を加熱し、加熱された空気は、集塵機206を加温することができる。これにより、集塵機206の温度を高温に維持し、中和生成物の潮解を抑制することができる。なお、この加熱された空気は、集塵機206だけでなく、加温が必要な箇所に供給することができる。
【0049】
なお、第1の実施態様の蓄熱装置203において、化学蓄熱材を収納する収納容器は、カートリッジ式として取り外して交換可能なものである。取り外す際には、バルブV1及びV2を閉じることにより、炉設備200の操業を停止することなく、交換することができる。そして、取り外した蓄熱装置203は、加温が必要な場所に輸送して、利用することが可能となる。
【0050】
[集塵機]
集塵機206は、炉201からの塵芥を含む含塵空気Gから塵芥を除去するため装置であり、主流路L1と連結されている。炉設備からの排ガスは、集塵機206により塵芥が除去された後に設備外の大気へ放出する。
【0051】
集塵機206は、含塵空気Gから塵芥を除去できる固気分離装置であれば、特に制限されず、例えば、フィルタや粒子充填層などを通過させるろ過分離装置や、電気集塵機や、重力により分離する重力分離装置や、サイクロンなど遠心力により分離する遠心分離装置などが挙げられる。塵芥をより確実に回収できるという観点から、通常はフィルタによるろ過分離装置が利用される。
【0052】
なお、炉設備200の炉201から排出された含塵空気Gは1000℃以上であり、集塵機206は、含塵空気Gの温度を約200℃まで低下した位置に配置する。炉201から排出された含塵空気Gの温度を低下する手段は特に制限されないが、蓄熱装置203による熱の回収のほか、蒸気等により冷却、自然放熱などが挙げられる。集塵機102に供給される含塵空気Gの温度を約200℃以下、好ましくは100℃以下とすることにより、集塵機102の耐熱性が要求されないことから汎用の集塵機を利用することが可能となる。
また、集塵機206の温度は、結露を防止するという観点から、50℃以上に維持することが好ましい。
【0053】
〔第2の実施態様〕
第2の実際態様の炉設備300は、炉201と集塵機206を連結する主流路L1に除塵機202及び蓄熱装置203を備えたものである。なお、水回収タンク204及びバルブV3の作用については、第1の実施態様と同様であるため説明を省略する。
【0054】
第2の実施態様の炉設備300は、含塵空気Gの温度が低下した際に、蓄熱装置203により含塵空気Gを加温して、集塵機206の温度を高温に維持するものである。この炉設備300によれば、蓄熱装置203により含塵空気Gを直接加熱し、集塵機206を加温するため、熱交換が少なく蓄熱した熱を効果的に利用することができるという効果を奏する。
【0055】
〔第3の実施態様〕
図3に第3の実施態様を示す。第3の実施態様では、蓄熱装置の機能が、蓄熱部として集塵機に設置された集塵システムである。蓄熱装置を蓄熱部として集塵機に設けることにより、蓄熱部から放熱された熱を集塵機に効率よく供給することができる。
【0056】
さらに、図面を用いて詳細に説明する。第3の実施態様では、図3に示される集塵機(集塵システム)100が説明される。以下の説明では、図3における左右方向が集塵機100の左右方向99である。図3における上下方向が集塵機100の上下方向97である。図3の紙面に垂直な方向が集塵機100の前後方向であり、紙面手前の方が前方、紙面奥の方が後方である。上下方向97は、鉛直方向の一例である。
【0057】
集塵機100は、区画壁4により内部が集塵室(第1室)2と清浄室(第2室)3とに区画された筐体1と、この区画壁4に設けられて、筐体1内を集塵室2側から清浄室3側へ流動する含塵空気G中に含まれる塵芥を捕集するフィルタ機構Fと、エアーコンプレッサ6、ヘッダ管13、ダイヤフラム弁14、インジェクターパイプ11、噴射機構J、ヒータ25及び蓄熱材41、42a、42b、43a、43b、45、46を備えて構成されている。第3の実施態様の集塵機100が特徴とするところは、集塵機100が蓄熱部を備える点である。例えば、下右蓄熱部45は、下右壁部材35が所定温度以上であるときに下右壁部材35から筐体1の外部へ流出する熱を吸収して蓄え、下右壁部材35が所定温度未満であるときに放熱して下右壁部材35を加熱する。
【0058】
第3の実施態様において、フィルタ機構Fは、複数の有底筒状のフィルタ5を備えて構成されて、それら複数のフィルタ5が、各々の基端のフィルタ開口部5wが清浄室3に臨む姿勢で、上下方向97に視てマトリックス状に並ぶ状態で、区画壁4に支持されている。詳しくは、フィルタ機構Fは、複数のフィルタ5が左右方向99に直線の1行に並ぶフィルタ行Frを、そのフィルタ行Frにおける複数のフィルタ5の並び方向に直交する方向(前後方向)に複数列備えて構成されている。
【0059】
噴射機構Jは、インジェクターパイプ11に設けられた噴射孔12を介して吐出された圧縮空気Hを清浄室3側からフィルタ機構Fにパルス状に噴射して、フィルタ機構Fに捕集された塵芥を払い落とす機構である。インジェクターパイプ11は、1本のインジェクターパイプ11に設けられた噴射孔12が、列状に並ぶ複数のフィルタ開口部5wの各々に対向する状態となるように、かつ、マトリックス状に並ぶ状態のフィルタ開口部5wに対応するように、複数本が並列して清浄室3内に配置されている。
【0060】
噴射機構Jは、エアーコンプレッサ6からの圧縮空気Hを貯留するヘッダ管13と、ダイヤフラム弁14とを備える。噴射機構Jは、ダイヤフラム弁14の開弁状態への切り換えにより、ヘッダ管13に貯留されている圧縮空気Hを、インジェクターパイプ11内に噴射するように構成されている。なお、インジェクターパイプ11は、基端側が開口端11wとされ、先端側が閉塞端11sとされている。また、ヘッダ管13には、ヘッダ管13内の圧縮空気Hの圧力を検出する貯留圧力検出器15が設けられている。なお、貯留圧力検出器15の代わりに、例えばエアーコンプレッサ6と圧縮空気断続弁17の間に供給空気の圧力を検出する検出器が設けられていてもよい。
【0061】
また、集塵機100には、噴射機構Jの作動等の集塵機100の運転を制御する制御部21等が備えられている。
【0062】
以下、集塵機100の各部について、さらに詳細に説明する。
[筐体1]
筐体1は、区画壁4により内部が上下方向97に区画され、下方に含塵空気Gが供給される集塵室2、上方に区画壁4に設けられたフィルタ5により浄化された浄化空気Cが通流する清浄室3が形成されている。集塵室2は、第1室の一例である。清浄室3は、第2室の一例である。
筐体1は、集塵室2におけるフィルタ5が配置される箇所及び清浄室3が形成される箇所における外形が、上下方向97に視て概略矩形に形成され、集塵室2におけるフィルタ5が配置される箇所の下側の外形が、漏斗形状に形成されている。
【0063】
そして、筐体1の漏斗形状に形成された部位の上部には、焼却炉や製鋼炉等(図示省略)からの含塵空気Gを集塵室2内に導入する含塵空気導入路7が接続されている。なお、含塵空気導入路7は筐体1に設けられていてもよい。筐体1の矩形に形成された部位の上部には、フィルタ5により浄化された浄化空気Cを清浄室3から排出する浄化空気排出路8が接続されている。詳しくは、筐体1における区画壁4及びフィルタ5よりも上方に、浄化空気排出路8が接続されている。この浄化空気排出路8の下流側には吸引装置(図示省略)が設けられ、清浄室3内の浄化空気Cを外部空間に吸引することができるように構成されている。含塵空気導入路7は、導入部の一例である。浄化空気排出路8は、排出部の一例である。
【0064】
筐体1の漏斗形状に形成された部位の下方の端部には、排出口9が形成されるとともに、その排出口9にロータリーバルブ10が設けられ、フィルタ5の再生時(フィルタ5に捕集された塵芥の払い落とし時)に生じた集塵室2内の塵芥等を排出できるように構成されている。
【0065】
以上述べた構成により、焼却炉や製鋼炉等で発生した含塵空気Gは、吸引装置(図示省略)の吸引力により含塵空気導入路7を通して集塵室2内に導入され、フィルタ5を通過することにより塵芥が捕集されて浄化空気Cとなって、清浄室3内から浄化空気排出路8を通して、集塵機100の下流側に接続された外部空間に排出される。
【0066】
[フィルタ5]
フィルタ5は、有底のかご形状(例えば、複数の直線棒状体を、環状に形成された複数のリング状枠体に取り付けた有底筒状のかご形状)に形成された支持体(図示省略)の外側に、含塵空気Gを通流可能に構成された袋状(有底筒状)のバグ(図示省略)が被せられたバグフィルタとして構成されている。
バグは、含塵空気G中の塵芥を良好に捕集できる濾布により構成され、例えば、内側が布で当該布の外側に貼り付けた不織布により形成される基布、不織布、織布等により構成される。
また、濾布の素材は、合成繊維やガラス繊維等からなる。
バグの下部は袋状で、上部の開口部がフィルタ開口部5wとされ、バグの上端部が支持体と区画壁4との間に挟持されて固定されている。
なお、フィルタ5は、無底筒状のバグ(図示省略)に、例えば、濾布以外の非通気性材料によって構成した底部を配設したもの等から構成することもできる。
【0067】
そして、各フィルタ5は、上端部にフィルタ開口部5wが形成された状態で、区画壁4に垂下状態で取り付けられる。
第3の実施態様では、14個のフィルタ5が直線状のフィルタ並び方向(左右方向99)に等間隔で1行に並べられて、フィルタ行Frが形成され、さらに、複数行、例えば、15行(奇数行)のフィルタ行Frが、フィルタ並び方向に直交する方向(前後方向)に等間隔で並べられて、210個のフィルタ5が配置されている。
なお、フィルタ行Frを構成するフィルタ5の個数(列数)、フィルタ行Frの行数、バグの形状等については、塵芥の処理量等との関係で適宜変更することが可能である。
【0068】
[噴射機構J]
インジェクターパイプ11は、開口端11w側の端部を筐体1の側壁から外部に突出させ、かつ、残りの部分を、14個のフィルタ開口部5wの並び方向に沿わせた横向きの姿勢で、1行に並ぶ14個のフィルタ開口部5wに対向させて清浄室3内に位置させた状態で、15行のフィルタ行Frの各々に対して配設されている。
なお、噴射孔12は、インジェクターパイプ11に形成された円形の穿孔により構成される。また、各インジェクターパイプ11には、フィルタ5のフィルタ開口部5wに一対一で対応するように、14個の噴射孔12が等間隔で設けられている。
なお、各噴射孔12は、各フィルタ5の軸心に沿う方向視において、各噴射孔12の中心が各フィルタ開口部5wの略中心に位置するように、インジェクターパイプ11に設けられている。
また、各噴射孔12の開口縁部には、バーリング加工により、リング状の立ち上がり部分がインジェクターパイプ11の径方向外方に向けて突出するように備えられている。この噴射孔12の開口縁部のリング状の立ち上がり部分により、噴射孔12から噴射される圧縮空気Hの拡散が抑制されるので、各噴射孔12から各フィルタ5のフィルタ開口部5wに圧縮空気Hが噴射される際に、圧縮空気Hが外部に漏れるのが十分に抑制されるようになっている。なお、必ずしも噴射孔12の開口縁部は、バーリング加工が施されていなくともよい。
【0069】
ダイヤフラム弁14には、ダイヤフラムに背圧を印加する圧力室及びその圧力室を排気する排気路を開閉する電磁弁が備えられている。そして、電磁弁が閉状態では、圧力室には連通孔を通じて一次圧(ヘッダ管13内の圧力)が導かれて、ダイヤフラムに圧力室の圧力がかかり、ダイヤフラムに付設された弁体が弁座に押し付けられて、ダイヤフラム弁14が閉弁状態になる。一方、電磁弁が開状態では、圧力室の圧力が抜かれて低下して、ダイヤフラムが一次圧(ヘッダ管13内の圧力)により押され、ダイヤフラムに付設された弁体が弁座から離れて、ダイヤフラム弁14が開弁状態になる。つまり、電磁弁の開閉作動により、ダイヤフラム弁14が開弁状態と閉弁状態とに切り換えられる。
【0070】
そして、エアーコンプレッサ6とヘッダ管13とが、圧縮空気供給路16にて接続されて、エアーコンプレッサ6から吐出された圧縮空気Hがヘッダ管13に供給されるようになっている。
圧縮空気供給路16には、ヘッダ管13への圧縮空気Hの供給を断続する圧縮空気断続弁17が設けられている。
そして、制御部21は、フィルタ5の再生を行う必要がある所定の再生タイミングになると、圧縮空気断続弁17を開弁し、貯留圧力検出器15により検出されるヘッダ管13内の圧縮空気Hの圧力が所定の目標貯留圧力になると、圧縮空気断続弁17を閉弁するように構成されている。なお、必ずしも検出された圧縮空気Hの圧力に応じて圧縮空気断続弁17を閉弁しなくともよい。例えば、予め圧縮空気Hの圧力が目標貯留圧力となる時間を推定しておき、その時間に対応するように圧縮空気断続弁17を閉弁するタイミングを定めていてもよい。
つまり、エアーコンプレッサ6からの圧縮空気Hが目標貯留圧力でヘッダ管13内に貯留される。
【0071】
制御部21は、貯留圧力検出器15により検出されるヘッダ管13内の圧力が所定の目標貯留圧力になるのに伴って、圧縮空気断続弁17を閉弁すると、7個のダイヤフラム弁14のうちの所定の1個のダイヤフラム弁14を予め設定された設定再生時間の間、開弁するように構成されている。ちなみに、設定再生時間は、ヘッダ管13内に貯留されている圧縮空気Hの略全量がインジェクターパイプ11の噴射孔12から噴射するのに要する時間よりも僅かに短い時間に設定されている。
つまり、ダイヤフラム弁14が開弁されると、圧縮空気断続弁17が閉弁されていることにより、ヘッダ管13へのエアーコンプレッサ6からの圧縮空気Hの供給が断たれた状態で、ヘッダ管13内に貯留されている高圧の圧縮空気Hが、2本(又は1本)のインジェクターパイプ11を通してそのインジェクターパイプ11に設けられた14個の噴射孔12からパルス状に噴射することになる。これにより、フィルタ5に捕集された塵芥が払い落とされる。
なお、以上の噴射機構Jの制御は貯留圧力検出器15により検出された貯留圧力に応じて圧縮空気断続弁16やダイヤフラム弁14の開閉を制御する例を説明したが、供給空気の圧力を検出する検出器が設けられている場合、その供給空気に応じて圧縮空気断続弁16やダイヤフラム弁14の開閉を制御してもよい。
【0072】
[壁部材]
図3に示されるように、筐体1は、上壁部材31と、右壁部材32と、左壁部材33と、奥壁部材34と、前壁部材(不図示)と、下右壁部材35と、下左壁部材36とを有する。筐体1の内部と外部とが、これら壁部材により区画される。これら壁部材は、例えば、ステンレス鋼の板状部材、一般構造圧延鋼の板状部材、耐硫酸露点腐食鋼板等を用いることができる。
【0073】
以下、説明の便宜上、右壁部材32における区画壁4の上方の部位を右上壁部材32aと記載し、右壁部材32における区画壁4の下方の部位を右下壁部材32bと記載する場合がある。
左壁部材33における区画壁4の上方の部位を左上壁部材33aと記載し、左壁部材33における区画壁4の下方の部位を左下壁部材33bと記載する場合がある。
奥壁部材34における区画壁4の上方の部位を奥上壁部材34aと記載し、奥壁部材34における区画壁4の下方の部位を奥下壁部材34bと記載する場合がある。
前壁部材における区画壁4の上方の部位を前上壁部材と記載し、前壁部材における区画壁4の下方の部位を前下壁部材と記載する場合がある。
なお、右上壁部材32aと右下壁部材32b、左上壁部材33aと左下壁部材33b、奥上壁部材34aと左下壁部材34b、前上壁部材と前下壁部材は、第3の実施態様のように一体の部材であってもよいし、別の部材であってもよい。
【0074】
筐体1の清浄室3は、上壁部材31と、右上壁部材32aと、左上壁部材33aと、奥上壁部材34aと、前上壁部材と、によって、筐体1の外部と区画されている。上壁部材31、右上壁部材32a、左上壁部材33a、奥上壁部材34a、及び前上壁部材は、壁部材及び第2壁部材の一例である。
筐体1の集塵室2は、右下壁部材32bと、左下壁部材33bと、奥下壁部材34bと、前下壁部材と、下右壁部材35と、下左壁部材36と、によって、筐体1の外部と区画されている。右下壁部材32b、左下壁部材33b、奥下壁部材34b、前下壁部材、下右壁部材35、及び下左壁部材36は、壁部材の一例である。
図3に示されるように、下右壁部材35、及び下左壁部材36は、フィルタ5の下方に位置する。下右壁部材35、及び下左壁部材36は、上述した漏斗形状を構成している。下右壁部材35、及び下左壁部材36は、壁部材及び第1壁部材の一例である。
【0075】
[ヒータ25]
図3に示されるように、ヒータ25が、下右壁部材35及び下左壁部材36の外面に接触して配置されている。ヒータ25は、通電により発熱して、接触する下右壁部材35、下左壁部材36、右下蓄熱部45及び左下蓄熱部46(後述)を加熱する。ヒータ25の通電/非通電は、制御部21により制御される。
【0076】
詳細には、制御部21は、筐体1の下右壁部材35に設けられた温度センサ23により温度を検出し、その検出温度が予め定められた閾値温度よりも高い場合にはヒータ25を非通電(OFF)とし、低い場合にはヒータを通電(ON)とする。このヒータ25の通電と後述する蓄熱部からの放熱により、集塵機の筐体1の内部をある程度高温状態に維持することができる。
【0077】
[蓄熱材]
第3の実施態様では、筐体1の壁部材31~36の外面に接触して、複数の蓄熱部(上蓄熱部41、右上蓄熱部42a等)が配置される。第3の実施態様では、蓄熱部は、潜熱蓄熱材を備えて構成される。例えば、蓄熱部は、中空の容器の内部に潜熱蓄熱材を充填して構成される。潜熱蓄熱材は、所定の相転移温度で相転移し、潜熱を吸収/放出する材料である。第3の実施態様の蓄熱材としては、例えば、マンニトール(166.5℃)、トランスポリブタジエン(145℃)、エリスリトール(119℃)、塩化マグネシウム6水和物(117℃)等を用いることができる(括弧内は相転移温度)。蓄熱部を壁部材の外面に接触して設けることで、蓄熱部の潜熱蓄熱材が、壁部材が相転移温度以上であるときに、壁部材から筐体1の外部へ流出する熱を相転移により吸収して蓄える。そして蓄熱部の潜熱蓄熱材は、壁部材が相転移温度未満であるときに、相転移により放熱して、壁部材を加熱する。
【0078】
ここで、集塵機100が、ゴミ焼却炉の燃焼排ガスの処理に用いられる例を考える。蓄熱部の潜熱蓄熱材として、エリスリトール(相転移温度119℃)を用いるとする。燃焼排ガスの温度は、160℃~200℃程度である。含塵空気導入路7から燃焼排ガスが筐体1の内部へ導入されているときは、壁部材の温度は相転移温度の119℃以上となるので、蓄熱部の潜熱蓄熱材は、相転移により壁部材から熱を奪って潜熱として蓄える。含塵空気導入路7からの燃焼排ガスの導入が停止すると、壁部材及び蓄熱部の温度は徐々に低下する。壁部材及び蓄熱部の温度が潜熱蓄熱材の相転移温度(119℃)を下回ると、蓄熱部の潜熱蓄熱材が相転移し、潜熱を放出するので、壁部材が加熱される。以上のようにして、集塵機100の壁部材の温度の低下が抑制される。
【0079】
特に、蓄熱部の潜熱蓄熱材として、相転移温度が、燃焼排ガス中の中和生成物の潮解する温度よりも高いものを用いることで、壁部材の温度が中和生成物の潮解する温度まで低下することを抑制でき好ましい。また、蓄熱部の潜熱蓄熱材として、相転移温度が、集塵機100に導入される気体の温度よりも低いものを用いることで、筐体1の内部に気体が導入されているときに蓄熱し、気体の導入が停止しているときに放熱するので、筐体1に気体が導入されていないときの壁部材の温度の低下を抑制でき好ましい。
【0080】
第3の実施態様では、図3に示されるように、上蓄熱部41が上壁部材31の外面に接触して配置される。右上蓄熱部42aが、右上壁部材32aの外面に接触して配置される。左上蓄熱部43aが、左上壁部材33aの外面に接触して配置される。奥上蓄熱部(不図示)が、奥上壁部材34aの外面に接触して配置される。前上蓄熱部(不図示)が、前上壁部材の外面に接触して配置される。これらの蓄熱部により、清浄室3の内部と筐体1の外部とを区画する壁部材の温度の低下が抑制される。上蓄熱部41、右上蓄熱部42a、左上蓄熱部43a、奥上蓄熱部、及び前上蓄熱部は、蓄熱部及び第2蓄熱部の一例である。
【0081】
第3の実施態様では、図3に示されるように、右下蓄熱部42bが、右下壁部材32bの外面に接触して配置される。左下蓄熱部43bが、左下壁部材33bの外面に接触して配置される。奥下蓄熱部(不図示)が、奥下壁部材34bの外面に接触して配置される。前下蓄熱部(不図示)が、前下壁部材の外面に接触して配置される。下右蓄熱部45が、下右壁部材35の外面に接触して配置される。下左蓄熱部46が、下左壁部材36の外面に接触して配置される。これらの蓄熱部により、集塵室2の内部と筐体1の外部とを区画する壁部材の温度の低下が抑制される。右下蓄熱部42b、左下蓄熱部43b、奥下蓄熱部、前下蓄熱部、下右蓄熱部45、及び下左蓄熱部46は、蓄熱部の一例である。
【0082】
特に、下右蓄熱部45及び下左蓄熱部46が下右壁部材35及び下左壁部材36の外面に接触して配置されることには利点がある。フィルタ5の下方に位置する下右壁部材35及び下左壁部材36には、フィルタ5から払い落とされた塵芥が接触する。下右壁部材35及び下左壁部材36の温度が低下すると、中和生成物の潮解により、フィルタ5から払い落とされた塵芥が蓄積されてしまうおそれがある。下右蓄熱部45及び下左蓄熱部46により、塵芥の蓄積を抑制することができる。また、下右蓄熱部45及び下左蓄熱部46によって下右壁部材35及び下左壁部材36の温度低下が抑制され、比較的高い温度に保たれると、下右壁部材35及び下左壁部材36の上方に位置するフィルタ5の温度も、対流により、比較的高い温度に保たれるので好ましい。下右蓄熱部45及び下左蓄熱部46は、第1蓄熱部の一例である。
【0083】
加えて、第3の実施態様では、図3に示されるように、ヒータ25が、下右壁部材35及び下左壁部材36の外面に接触して配置される。ヒータ25によって下右壁部材35、下左壁部材36、右下蓄熱部45及び左下蓄熱部46が加熱されることにより、上述した下右蓄熱部45及び下左蓄熱部46による効果と同様の効果を奏すると共に、下右蓄熱部45及び下左蓄熱部46に熱を蓄えることができ好ましい。
【0084】
[変形例]
第3の実施態様では、蓄熱部が潜熱蓄熱材を備えて構成される例が説明された。潜熱蓄熱材に替えて、又は、潜熱蓄熱材と共に、顕熱蓄熱材を用いる構成も可能である。例えば、蓄熱部は、中空の容器の内部に顕熱蓄熱材を充填して構成される。例えば、顕熱蓄熱材を壁部材31~36の外面に接触する状態で配置してもよい。顕熱蓄熱材は、蓄熱材の熱容量を利用して蓄熱する蓄熱材である。本変形例の蓄熱材としては、例えば、煉瓦、砂利等を用いることができる。
【0085】
集塵機100が、ゴミ焼却炉の燃焼排ガスの処理に用いられる例を考える。蓄熱部の顕熱蓄熱材として、煉瓦を用いるとする。燃焼排ガスの温度は、160℃~200℃程度である。含塵空気導入路7から燃焼排ガスが筐体1の内部へ導入されているときは、壁部材の温度も160℃~200℃程度となる。そして壁部材と接触している蓄熱部も、壁部材から熱を受けとって壁部材と同程度の温度となる。含塵空気導入路7からの燃焼排ガスの導入が停止すると、壁部材の温度は徐々に低下する。このとき、蓄熱部が放熱して、壁部材に熱を与えるので、壁部材の温度の低下が抑制される。以上のようにして、集塵機100の壁部材の温度の低下が抑制される。
【0086】
また、蓄熱部として化学蓄熱材を用いることも可能である。化学蓄熱材の一例としては、酸化カルシウムや酸化マグネシウムがある。以下、酸化カルシウムを用いる場合を説明する。酸化カルシウムは、吸水することにより発熱反応を起こし、水酸化カルシウムを生成する性質がある。したがって、第3の実施態様による蓄熱部として酸化カルシウムを含む蓄熱材を用い、集塵機を稼働する際等の放熱するときに水や水蒸気を蓄熱部に導入することにより、放熱を行うことができる。更に、水酸化カルシウムは高温化において分解し、酸化カルシウムに戻る性質を有する。したがって、集塵機が稼働し、ある程度高温環境となった場合、吸熱反応によって再度水酸化カルシウムから酸化カルシウムに戻ることになる。そのため、水や水蒸気を導入すれば、再度放熱させることが可能となる。このように、化学蓄熱材を用い、放熱時に水や水蒸気を導入することによっても、集塵機の温度低下に伴う性能の低下を抑制することができる。このように蓄熱部として化学蓄熱材を用いる場合、集塵機1には、蓄熱部に対して水又は水蒸気を導入可能な給水部が設けられており、制御部21により給水部の動作が制御される。
【0087】
第3の実施態様では、蓄熱部41~46が、筐体1の壁部材31~36の外面に接触して配置される例が説明された。蓄熱部41~46と壁部材31~36との間に、他の部材等 が存在する形態も可能である。例えば、蓄熱部41~46と壁部材31~36との間に、防水シート等が配置されてもよい。このように、他の部材が間に介在する形態であっても、蓄熱部と壁部材との間で熱の交換が可能な形態であればよい。例えば、蓄熱部と壁部材とが、ヒートパイプ等で熱的に接続されていてもよい。
【0088】
第3の実施態様では、蓄熱部41~46が、筐体1の全体を覆う例が説明された。蓄熱部が、筐体1の一部のみを覆う形態も可能である。更に、筐体1或いは筐体1の一部を覆わなくとも、筐体の一部の壁部材近傍のみに蓄熱部が設けられており、その箇所のみを加熱するような形態でもよい。
【0089】
例えば、下右壁部材35や下左壁部材36の近傍に蓄熱部が設けられていることが好ましい。フィルタ5の下部に位置する下右壁部材35や下左壁部材36は中和生成物が付着し易い箇所であるため、これらの箇所に蓄熱部が設けられていると、付着した中和生成物の潮解を好適に抑制することができる。
【0090】
また、例えば上壁部材31や右上壁部材32a、左上壁部材33aの近傍に蓄熱部が設けられていることが好ましい。清浄室3は高温の含塵空気Gが導入される含塵空気導入路7から遠いため、集塵室2に比べて温度が低下し易い。そのため、清浄室3に面する上記の部材に蓄熱部を設けることで、清浄室3における温度低下を抑制することができる。
【0091】
また、例えば浄化空気排出路8や排出口9の近傍に蓄熱部が設けられていることが好ましい。これらの領域は、開口部となっているためヒータ25を設置することが構造的に難しい。これらの領域にヒータ25の替わりに蓄熱部を設けることにより、ヒータ25がなくとも温度低下を抑制することができる。なお、含塵空気導入路7の近傍もヒータ25を設置することが難しいため蓄熱部を設けてもよいが、含塵空気導入路7近傍は高温の含塵空気Gが導入されるため、蓄熱部を設けずとも温度が低くなる可能性は低い。そのため、必ずしも蓄熱部を設けなくともよい。
【0092】
また、領域によって異なる蓄熱材を使用してもよい。例えば、集塵機100を稼働したとき、集塵室2は高温(例えばおよそ400℃)となるが、清浄室3は含塵空気導入路7から離れているため、集塵室2に比べると低温(例えばおよそ200℃)となる。したがって、集塵室2の近傍(右上壁部材32b、左上壁部材33b、下右壁部材35、下左壁部材36等)には相転移温度が高い蓄熱材を設け、清浄室3の近傍(上壁部材31、右上壁部材32a、左上壁部材33a等)には相転移温度が低い蓄熱材を設けてもよい。上記構成によると、集塵室2と清浄室3それぞれにおいて適切な蓄熱材を設けることで蓄熱を効率的に行うとともに、蓄熱材の選択肢が増えることによりコストを低くすることも可能となる。
【0093】
また、蓄熱部に加えて保温材が併用されてもよい。
【0094】
また、第3の実施態様では、温度センサ23の検出温度によってヒータ25のON/OFFを切り替える例を説明したが、他の形態による実施も可能である。蓄熱部に十分に熱が蓄えられている場合、集塵機100の温度が一時低温となったとしても、蓄熱部からの放熱により所望の温度まで戻る場合もある。この現象は、例えば集塵機100が停止し、その後すぐに集塵機を再稼働した場合に生じる可能性が高い。この点を鑑み、例えば時間センサ(タイマー)を設けておき、温度センサ23の検出温度が閾値温度よりも低かったとしても、時間センサの検出温度が予め定められた閾値時間よりも短い場合にはヒータ25をOFFとしてもよい。言い換えると、温度センサ23の検出温度が閾値温度よりも低く、且つ、時間センサの検出時間が予め定められた閾値時間よりも長い場合のみ、ヒータをONとしてもよい。例えば、制御部21は、温度センサ23の検出温度が閾値温度よりも低く、且つ、集塵機が所定の時間よりも長く停止した後に稼働を開始した場合に、ヒータ25を作動させる。なお、集塵機の停止とは、含塵空気導入路7からの空気の導入が停止することをいい、集塵機の稼働とは、含塵空気導入路7から空気が導入されることをいう。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の炉設備は、含塵空気を排出する炉を備えたものに利用することができる。含塵空気を排出する炉としては、例えば、ごみ焼却炉や火葬炉などの焼却炉、窯やロータリーキルンなどの焼成炉、製鋼炉や溶鉱炉などの溶錬炉、囲炉裏やストーブやオーブンなどの暖炉、蒸気船や蒸気機関車などの動力源となるボイラなどが挙げられる。
【0096】
本発明の蓄熱装置は、炉から排出される含塵空気の熱を蓄熱するために利用することができる。また、この蓄熱装置は、熱エネルギーを保管したり、農業用ビニールハウスの熱源や、農業用温水殺菌用の熱源や、災害時の入浴用の熱源など炉設備以外での熱源として利用したりすることができる。
【0097】
本発明の蓄熱システムは、炉から排出される含塵空気の熱を蓄熱するために利用することができる。また、この蓄熱システムは、蓄熱装置の腐食などを抑制するために利用することができる。
【符号の説明】
【0098】
200,300…炉設備、201…炉、202…除塵機、203…蓄熱装置、204…水回収タンク、205…送風機、206…集塵機、207…吸引ポンプ、L1…主流路、L2…副流路、L3…循環流路、V1,V2,V3…バルブ、P1,P2…圧力センサ、
1…筐体、2…集塵室、3…清浄室、4…区画壁、5…フィルタ、7…含塵空気導入路、8…浄化空気排出路、21…制御部、23…温度センサ、25…ヒータ、31…上壁部材、32…右壁部材、32a…右上壁部材、32b…右下壁部材、33…左壁部材、33a…左上壁部材、33b…左下壁部材、34…奥壁部材、34a…奥上壁部材、34b…奥下壁部材、35…下右壁部材、36…下左壁部材、41…上蓄熱部、42a…右上蓄熱部、42b…右下蓄熱部、43a…左上蓄熱部、43b…左下蓄熱部、45…下右蓄熱部、46…下左蓄熱部、C…浄化空気、G…含塵空気

図1
図2
図3