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特許7391025触媒およびそれを使用して炭素含有流をC2~C5パラフィンに転化させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】触媒およびそれを使用して炭素含有流をC2~C5パラフィンに転化させる方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 1/04 20060101AFI20231127BHJP
   C07C 9/06 20060101ALI20231127BHJP
   C07C 9/08 20060101ALI20231127BHJP
   C07C 9/10 20060101ALI20231127BHJP
   C07C 9/18 20060101ALI20231127BHJP
   B01J 29/85 20060101ALI20231127BHJP
   B01J 37/03 20060101ALI20231127BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20231127BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20231127BHJP
【FI】
C07C1/04
C07C9/06
C07C9/08
C07C9/10
C07C9/18
B01J29/85 Z
B01J37/03 B
B01J37/08
C07B61/00 300
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020542643
(86)(22)【出願日】2019-02-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 US2019016952
(87)【国際公開番号】W WO2019168642
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2022-01-25
(31)【優先権主張番号】62/635,831
(32)【優先日】2018-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ニースケンズ、デイビー エル. エス.
(72)【発明者】
【氏名】ポルフェイト、グレン
(72)【発明者】
【氏名】マレク、アンドレジ
(72)【発明者】
【氏名】カルバーリー、エドワード エム.
(72)【発明者】
【氏名】クローネデイック、ペーター イー.
(72)【発明者】
【氏名】サンディッチ、アイセイグル チフチェ
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0210679(US,A1)
【文献】米国特許第06376562(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 1/04
C07C 9/02
C07C 9/06
C07C 9/08
C07C 9/10
C07C 9/18
B01J 37/08
B01J 37/03
B01J 29/85
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
~Cパラフィンの調製方法であって、
水素ガスと、一酸化炭素、二酸化炭素、およびこれらの混合物からなる群から選択される炭素含有ガスと、を含む供給流を、反応器の反応ゾーンに導入することと、
前記供給流を、ハイブリッド触媒の存在下で、前記反応ゾーン内においてC~Cパラフィンを含む生成物流に転化させることと、を含み、
前記ハイブリッド触媒が、
銅、クロム、および亜鉛を含む金属酸化物触媒成分と、
8-MR細孔開口部を有するモレキュラーシーブである微多孔質触媒成分と、を含み、
前記金属酸化物触媒成分が、
溶媒中に銅塩、クロム塩、および亜鉛塩を含む溶液から固体を沈殿させて、銅、クロム、および亜鉛を含む沈殿物を得ることと、
前記沈殿物を300℃~600℃の温度で焼成することと、によって調製され
前記金属酸化物触媒成分が、
Cu/Znの原子比が、0.25~1.00であることと、
Cr/Znの原子比が、0.20~0.50であることと、
前記金属酸化物触媒成分中の金属の総量に基づいて、(Al+Cr)の原子百分率が、10.0原子%~30.0原子%であることと、を満たす、C~Cパラフィンの調製方法。
【請求項2】
前記金属酸化物触媒成分が、アルミニウムをさらに含む、請求項1に記載のC~Cパラフィンの調製方法。
【請求項3】
前記供給流が、COとCOとの組み合わせを含み、前記供給流中のCOとCOとの比が、0.1:1.0~0.7:1.0である、請求項1または2に記載のC~Cパラフィンの調製方法。
【請求項4】
炭化水素生産性プロトコルに従って測定された、前記ハイブリッド触媒の累積C~C炭化水素生産性が、31.3kg/kg触媒以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載のC~Cパラフィンの調製方法。
【請求項5】
前記炭化水素生産性プロトコルに従って測定された、前記ハイブリッド触媒の累積C~C炭化水素生産性が、31.3kg/kg触媒~60.0kg/kg触媒である、請求項1~4のいずれか1項に記載のC~Cパラフィンの調製方法。
【請求項6】
前記微多孔質触媒成分が、SAPO-34である、請求項1~5のいずれか1項に記載のC~Cパラフィンの調製方法。
【請求項7】
前記供給流を、C~Cパラフィンを含む生成物流に転化させることが、前記反応ゾーンを300℃~500℃の温度に加熱することを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のC~Cパラフィンの調製方法。
【請求項8】
前記供給流を、C~Cパラフィンを含む生成物流に転化させることが、少なくとも20バールの圧力で行われる、請求項1~7のいずれか1項に記載のC~Cパラフィンの調製方法。
【請求項9】
ハイブリッド触媒が、
銅、クロム、および亜鉛を含む金属酸化物触媒成分と、
8-MR細孔開口部を有するモレキュラーシーブである微多孔質触媒成分と、を含み、
前記金属酸化物触媒成分が、
溶媒中に銅塩、クロム塩、および亜鉛塩を含む溶液から固体を沈殿させて、銅、クロム、および亜鉛を含む沈殿物を得ることと、
前記沈殿物を300℃~600℃の温度で焼成することと、によって調製され、
前記金属酸化物触媒成分が、
Cu/Znの原子比が、0.25~1.00であることと、
Cr/Znの原子比が、0.20~0.50であることと、
前記金属酸化物触媒成分中の金属の総量に基づいて、(Al+Cr)の原子百分率が、10.0原子%~30.0原子%であることと、を満たす、ハイブリッド触媒。
【請求項10】
前記銅塩、クロム塩、および亜鉛塩が、硝酸銅、硝酸クロム、および硝酸亜鉛である、請求項9に記載のハイブリッド触媒。
【請求項11】
前記沈殿物を、350℃~600℃の温度で焼成する、請求項9または10に記載のハイブリッド触媒。
【請求項12】
前記沈殿物を、400℃の温度で焼成する、請求項9~11のいずれか1項に記載のハイブリッド触媒。
【請求項13】
前記炭化水素生産性プロトコルに従って測定された、前記ハイブリッド触媒の累積C~C炭化水素生産性が、31.3kg/kg触媒以上である、請求項9~12のいずれか1項に記載のハイブリッド触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年2月27日に出願された米国仮特許出願第62/635,831号の優先権を主張し、その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
背景
本明細書は、全般的には、炭素含有流を、C~Cパラフィンに効率的に転化させるハイブリッド触媒、およびそのような転化のために触媒を使用する方法に関する。特に、本明細書は、ハイブリッド触媒、ならびにハイブリッド触媒を使用して、合成ガス供給流に含まれる炭素の高い転化率および高い経時的安定性を達成し、所与の時間にわたる、所与の一連の操作条件における、所望の生成物の高い累積生産性をもたらす方法に関する。合成ガスは、水素ガスと、一酸化炭素、二酸化炭素、およびこれらの混合物からなる群から選択される炭素含有ガスと、を含み、供給炭素のCOへの転化率を最小限にしながら、所望の生成物に転化される。
【背景技術】
【0003】
多くの産業用途において、望ましい出発原料は、特にC~Cパラフィンを含む低級炭化水素であり、次いで、それは、プラスチック、燃料、および様々な下流の化学物質を生成するための出発原料として使用するために、オレフィンに転化され得る。これらのC~C材料は、飽和であっても不飽和であってもよく、したがってエタン、エチレン、プロパン、プロピレン、ブタン、ブチレン、ペンタン、またはペンテンを含み得る。これらの低級炭化水素の様々な生成プロセスが開発されており、石油クラッキングおよび様々な合成プロセスが含まれる。
【0004】
供給炭素を、炭化水素などの所望の生成物に転化させるための合成プロセスは既知である。これらの合成プロセスのいくつかは、ハイブリッド触媒の使用から始まる。異なる型の触媒、ならびに異なる種類の供給流および供給流成分の比率も検討されてきた。しかしながら、これらの合成プロセスの多くは、低い炭素転化率を有し、供給炭素の多くは転化されず、供給炭素と同じ形態でプロセスから出るか、供給炭素がCOに転化されるか、またはこれらの合成プロセスは、低い経時的安定性を有し、触媒は、炭素の所望の生成物への転化の活性を急速に失う。
【0005】
したがって、例えば、触媒の高い安定性と組み合わせたC~Cパラフィンなどの所望の生成物への供給炭素の高い転化率を有するプロセスおよびシステムに対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0006】
一実施形態によれば、C~Cパラフィンの調製方法は、水素ガスと、一酸化炭素、二酸化炭素、およびこれらの混合物からなる群から選択される炭素含有ガスと、を含む供給流を、反応器の反応ゾーンに導入することと、供給流を、ハイブリッド触媒の存在下で、反応ゾーン内においてC~Cパラフィンを含む生成物流に転化させることと、を含む。ハイブリッド触媒は、銅、クロム、および亜鉛を含む金属酸化物触媒成分と、8員環(8-MR)細孔開口部を有するモレキュラーシーブである微多孔質触媒成分と、を含む。金属酸化物触媒成分は、Cu/Znの原子比が、0.01~3.00であることと、Cr/Znの原子比が、0.01~1.50であることと、金属酸化物触媒成分中の金属の総量に基づいて、(Al+Cr)の原子百分率が、0.0原子%超~50.0原子%であることと、を満たす。
【0007】
別の実施形態では、ハイブリッド触媒は、銅、クロム、および亜鉛を含む金属酸化物触媒成分と、8-MR細孔開口部を有するモレキュラーシーブである微多孔質触媒成分と、を含む。金属酸化物触媒成分は、溶媒中に銅塩、クロム塩、および亜鉛塩を含む溶液から固体を沈殿させて、銅、クロム、および亜鉛を含む沈殿物を得ることと、沈殿物を300℃~600℃の温度で焼成することと、によって調製される。金属酸化物触媒成分は、
Cu/Znの原子比が、0.01~3.00であることと、Cr/Znの原子比が、0.01~1.50であることと、金属酸化物触媒成分中の金属の総量に基づいて、(Al+Cr)の原子百分率が、0.0原子%超~50.0原子%であることと、を満たす。
【0008】
追加の特徴および有益性は、以下の「発明を実施するための形態」に記載され、一部は、その説明から当業者に容易に明らかになるか、または以下の「発明を実施するための形態」、および特許請求の範囲を含む本明細書に記載される実施形態を実践することによって認識されるであろう。
【0009】
上記の一般的な説明および下記の詳細な説明の両方は、様々な実施形態を説明し、特許請求される主題の性質および特徴を理解するための概要または枠組みの提供を意図していることを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで、ハイブリッド触媒、およびC~Cパラフィンを調製するためのハイブリッド触媒の使用方法の実施形態を詳細に参照する。一実施形態では、C~Cパラフィンの調製方法は、水素ガスと、一酸化炭素、二酸化炭素、およびこれらの混合物からなる群から選択される炭素含有ガスと、を含む供給流を、反応器の反応ゾーンに導入することと、供給流を、ハイブリッド触媒の存在下で、反応ゾーン内においてC~Cパラフィンを含む生成物流に転化させることと、を含む。ハイブリッド触媒は、銅、クロム、および亜鉛を含む金属酸化物触媒成分と、8-MR細孔開口部を有するモレキュラーシーブである微多孔質触媒成分と、を含む。金属酸化物触媒成分は、Cu/Znの原子比が、0.01~3.00であることと、Cr/Znの原子比が、0.01~1.50であることと、金属酸化物触媒成分中の金属の総量に基づいて、(Al+Cr)の原子百分率が、0.0原子%超~50.0原子%であることと、を満たす。別の実施形態では、ハイブリッド触媒は、銅、クロム、および亜鉛を含む金属酸化物触媒成分と、8-MR細孔開口部を有するモレキュラーシーブである微多孔質触媒成分と、を含む。金属酸化物触媒成分は、溶媒中に銅塩、クロム塩、および亜鉛塩を含む溶液から固体を沈殿させて、銅、クロム、および亜鉛を含む沈殿物を得ることと、沈殿物を300℃~600℃の温度で焼成することと、によって調製される。金属酸化物触媒成分は、Cu/Znの原子比が、0.01~3.00であることと、Cr/Znの原子比が、0.01~1.50であることと、金属酸化物触媒成分中の金属の総量に基づいて、(Al+Cr)の原子百分率が、0.0原子%超~50.0原子%であることと、を満たす。
【0011】
炭素を含む供給流を、例えばC~Cパラフィンなどの所望の生成物に転化させるためのハイブリッド触媒の使用は既知である。しかしながら、多くの既知のハイブリッド触媒は、それらが使用されると、低い供給炭素転化率を示し、かつ/または急速に失活するため、非効率的であり、所与の時間にわたる、所与の一連の操作条件における、低い累積C~C炭化水素生産性(生成物のkg/触媒のkg)をもたらす。対照的に、本明細書に開示および記載されるハイブリッド触媒は、改善された供給炭素転化率および改善された安定性を組み合わせ、同一の所与の時間にわたり、同一の所与の一連の操作条件における、改善された累積C~C炭化水素生産性を全体的に示す。実施形態で使用されるそのようなハイブリッド触媒の組成は、以下で考察される。要約すると、ハイブリッド触媒は、2つの独立した触媒の各々の逐次反応を密接に結びつける。第1の工程では、水素ガス(H)と、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、またはCOとCOとの混合物(例えば、合成ガスなど)のうちの少なくとも1種と、を含む供給流が、酸素化炭化水素に転化される。第2の工程では、これらの酸素化物は、炭化水素(例えば、C~Cパラフィンなどの、主に短鎖炭化水素)に転化される。第2の工程の反応による、第1の工程で形成された酸素化物の継続的な除去は、100%に近い(>99.9%)炭化水素への供給炭素転化率を達成するための、熱力学的制限がなくなるのを確実にする。
【0012】
ハイブリッド触媒系は、供給流を酸素化炭化水素に転化させる金属酸化物触媒成分と、酸素化物を炭化水素に転化させる微多孔質触媒成分(例えば、ゼオライト成分など)を含む。銅-亜鉛-アルミニウム金属酸化物触媒成分に基づく既知のハイブリッド触媒系は、高い初期活性を示すが、低い経時的供給物転化率安定性を示し、一方で、クロム-亜鉛金属酸化物触媒成分に基づく既知のハイブリッド触媒系は、良好な経時的安定性を示すが、低い活性を有する。したがって、ハイブリッド触媒プロセスにおいて微多孔質触媒成分と組み合わされる場合、高い活性ならびに高い供給物転化率安定性をもたらす金属酸化物触媒成分の必要性が存在する。本明細書で使用される場合、「金属酸化物触媒成分」は、様々な酸化状態の金属を含むことを理解されたい。いくつかの実施形態では、金属酸化物触媒成分は、2種以上の金属酸化物を含み得、金属酸化物触媒成分内の個々の金属酸化物は、異なる酸化状態を有し得る。したがって、金属酸化物触媒成分は、均質な酸化状態を有する金属酸化物を含むことに限定されない。
【0013】
本明細書に開示されるハイブリッド触媒およびハイブリッド触媒を使用するためのシステムの実施形態は、例えばSAPO-34モレキュラーシーブなどの微多孔質触媒成分と組み合わせた、銅含有、クロム含有、亜鉛含有、および任意にアルミニウム含有金属酸化物触媒成分を含む。本明細書に開示および記載されるハイブリッド触媒は、供給流を、高い活性ならびに高い経時的供給物転化率安定性の両方で、短鎖パラフィンに転化させる。本明細書に開示および記載されるハイブリッド触媒は、既知の銅-亜鉛-アルミニウム-酸化物系ハイブリッド混合物を用いて通常達成されるよりも高い安定性を可能にし、既知のクロム-亜鉛-酸化物系ハイブリッド混合物を用いて通常達成されるよりも高い活性を可能にする。したがって、本明細書に開示および記載される実施形態によるハイブリッド触媒を使用することによって、高い活性と高い安定性との組み合わせがハイブリッドプロセスで達成され、所与の時間にわたる、所与の一連の操作条件における、高い累積C~C炭化水素生産性(生成物のkg/触媒のkg)をもたらす。
【0014】
実施形態では、例えば、銅-クロム-亜鉛(-アルミニウム)金属酸化物触媒成分などの金属酸化物触媒成分は、共沈によって調製される。代替合成経路は、劣った活性および/または安定性を示す。例えば、非常に安定した(しかし活性が低い)クロム-亜鉛酸化物触媒への銅の堆積は、十分な初期活性を示すが、触媒は急速に失活する。同様に、銅-亜鉛-アルミニウム酸化物触媒とクロム-亜鉛酸化物触媒との物理的混合物から形成された金属酸化物触媒成分は、本明細書に開示および記載される実施形態による銅-クロム-亜鉛(-アルミニウム)触媒と比較して低い安定性を有する。したがって、ハイブリッド触媒の実施形態は、以下により詳細に説明される共沈法に従って作製される。
【0015】
実施形態によるハイブリッド触媒で使用するための金属触媒成分についてここで説明する。上記のように、ハイブリッド触媒の金属酸化物触媒成分の構成要素として通常使用される金属としては、亜鉛(Zn)、クロム(Cr)、および銅(Cu)の組み合わせが挙げられる。また、任意にアルミニウム(Al)が挙げられ得る。しかしながら、これらの金属のすべての組み合わせが、良好な活性および良好な安定性を有するハイブリッド触媒において使用され得る金属酸化物触媒成分をもたらすわけではない。予期せぬことに、良好な活性と良好な安定性をもたらすハイブリッド触媒の金属酸化物触媒成分中に使用され得るこれらの金属の原子比の比較的狭い組成範囲が存在することが見出された。さらに予期せぬことに、金属酸化物触媒成分を形成するために使用される方法が、ハイブリッド触媒の性能に明確な影響を効果を与えることが見出された。例えば、金属酸化物触媒成分が、共沈法によって形成されるハイブリッド触媒は、金属酸化物触媒成分が、物理的混合または含浸などの他の方法によって形成されるハイブリッド触媒よりも良好な活性および/または安定性を有する。
【0016】
本明細書に開示される実施形態では、金属酸化物触媒成分の組成は、金属酸化物触媒成分中に存在する金属の総量に基づく、その様々な金属構成要素(すなわち、Zn、Cu、Cr、および任意にAl)の原子百分率によって指定される(すなわち、金属酸化物触媒成分中のすべての金属の合計は100%に等しい)。1つ以上の実施形態では、金属酸化物触媒成分の組成は、Cu/ZnおよびCr/Znの原子比、ならびにAlおよびCr(Al+Cr)の合計(原子百分率)によって指定される。したがって、50%Cuは、Cuが金属酸化物触媒成分中に存在するすべての金属原子の50%を構成することを意味する。そして、Cu/Znの原子比は、Cu原子とZn原子との比を意味する。非限定的な例として、25%Cuおよび25%Znは、Cuが、金属酸化物触媒成分に存在するすべての金属原子の25%を構成し、Znが、金属酸化物触媒成分に存在するすべての金属原子の25%を構成し、CuとZnの合計が、金属酸化物触媒成分中に存在するすべての金属原子の50%であり、Cu/Znの比が、1.00(25%/25%)であることを意味する。
【0017】
1つ以上の実施形態では、Cu/Znの比は、0.01~2.75、0.01~2.50、0.01~2.25、0.01~2.00、0.01~1.75、0.01~1.50、0.01~1.25、0.01~1.00、0.01~0.75、または0.01~0.50などの、0.01~3.00である。他の実施形態では、Cu/Znの比は、0.25~2.25、0.25~2.00、0.25~1.75、0.25~1.50、0.25~1.25、または0.25~1.00などの、0.25~2.50である。さらに他の実施形態では、Cu/Znの比は、0.01~2.00、0.01~1.50、0.25~1.00、または0.30~0.80である。Cu/Znの比が大きくなりすぎると、ハイブリッド触媒の活性および/または安定性が低下し、より低い累積C~C生産性をもたらす。
【0018】
他の実施形態では、Cr/Znの比は、0.01~1.25、0.01~1.00、0.01~0.75、または0.01~0.50などの、0.01~1.50である。他の実施形態では、Cr/Znの比は、0.20~1.50、0.20~1.25、0.20~1.00、または0.20~0.75である。さらに他の実施形態では、Cr/Znの比は、0.01~1.25、0.01~1.00、または0.20~0.50である。Cr/Znの比が大きくなりすぎると、ハイブリッド触媒の活性および/または安定性が低下し、より低い累積C~C生産性をもたらす。
【0019】
1つ以上の実施形態では、金属酸化物触媒の総金属含有量に基づくAl+Crの原子百分率の合計は、0.0%超~45.0%、0.0%超~40.0%、0.0%超~35.0%、0.0%超~30.0%、0.0%超~25.0%、または0.0%超~20.0%などの、0.0%超~50.0%である。他の実施形態では、金属酸化物触媒の総金属含有量に基づくAl+Crの原子百分率の合計は、10.0%~45.0%、または10.0%~40.0%、10.0%~35.0%、10.0%~30.0%、10.0%~25.0%、または10.0%~20.0%などの、10.0%~50.0%である。Al+Crの原子百分率の合計が大きくなりすぎると、ハイブリッド触媒の活性および/または安定性が低下し、より低い累積C~C生産性をもたらす。
【0020】
上記のように、本明細書に開示および記載される実施形態では、ハイブリッド触媒の金属酸化物触媒成分は、共沈法によって形成される。この共沈法によって、金属酸化物触媒成分が、例えば、物理的混合または含浸などのいくつかの他の方法によって形成された場合よりも、金属酸化物触媒成分の金属酸化物構成要素を、互いにより均質に組み込むことが可能になる。したがって、共沈法によって金属酸化物触媒成分を形成すると、他の方法によって金属酸化物触媒成分を作製することによって達成される構造とは異なる構造を有する金属酸化物触媒成分がもたらされ、共沈法によって作製される金属酸化物触媒成分を含むハイブリッド触媒は、他の方法によって作製される金属酸化物触媒成分を含むハイブリッド触媒と比較して、高い活性および/または安定性を有する。
【0021】
1つ以上の実施形態によれば、金属酸化物触媒成分は、Cu含有、Cr含有、Zn含有、および任意にAl含有成分の水性混合物を形成することによって作製され得る。例えば、いくつかの実施形態では、Cu含有、Cr含有、Zn含有、および任意にAl含有成分は、硝酸銅(Cu(NO)、硝酸クロム(Cr(NO)、硝酸亜鉛(Zn(NO)、および任意に硝酸アルミニウム(Al(NO)などの硝酸塩であり得る。他の実施形態では、触媒を調製するために使用されるCu含有、Cr含有、Zn含有、および任意にAl含有成分は、例えば、酢酸塩、ギ酸塩などの、任意の一般的に既知である対イオンを含み得る。ただし、選択された対イオンは、焼成温度で分解または燃焼して、望ましくない残留物を残すことなく酸化物を形成する。得られた金属酸化物触媒成分が、上記で定義および列挙されたCu/Zn比、Cr/Zn比、およびCr+Alの合計の値を有するように、Cu含有、Cr含有、Zn含有、および任意にAl含有成分の量が選択されることを理解されたい。実施形態では、Cu含有、Cr含有、Zn含有、および任意にAl含有成分は、水に添加されて、Cu含有、Cr含有、Zn含有、および任意にAl含有成分の水性混合物を形成する。
【0022】
実施形態では、上記の水性混合物から、Cu含有、Cr含有、Zn含有、および任意にAl含有成分を沈殿させるために使用される沈殿剤が調製される。1つ以上の実施形態では、沈殿剤は、例えば、炭酸アンモニウム((NHCO)、炭酸ナトリウム(NaCO)、水酸化ナトリウム(NaOH)、またはこれらの混合物などの、炭酸塩および/または水酸化物の水性混合物である。実施形態では、他の従来の沈殿剤が使用され得ることを理解されたい。
【0023】
Cu含有、Cr含有、Zn含有、および任意にAl含有成分の水性混合物と、沈殿剤とが配合された後、混合しながら、これらの成分を、45℃~75℃、50℃~70℃、55℃~65℃、または約60℃などの、40℃~80℃の温度に維持された水に添加することによって、沈殿物が形成される。いくつかの実施形態では、Cu含有、Cr含有、Zn含有、および任意にAl含有成分、ならびに沈殿剤の水性混合物は、ゆっくりと水に添加されて、成分の混合を改善する。Cu含有、Cr含有、Zn含有、および任意にAl含有成分の水性混合物と、沈殿剤との組み合わせは、6.5~7.5、または7.0~7.5などの、6.0~9.0のpHに維持される。pHは、Cu含有、Cr含有、Zn含有、および任意にAl含有成分の水性混合物と、沈殿の組み合わせに添加される沈殿剤との比を調整することによって、制御され得る。この比は、各成分が混合物に添加される速度を制御することによって、調整され得る。いくつかの実施形態では、沈殿物は、母液中で、1.0時間~5.0時間、1.5時間~4.5時間、2.0時間~4.0時間、または2.5時間~3.5時間などの、0.5時間~6.0時間の継続時間熟成される。
【0024】
沈殿物は、従来の濾過、洗浄、および乾燥方法によって、または当業者にとって既知の他の方法によって収集され得る。収集されると、沈殿物は焼成されて、本明細書に開示および記載される実施形態によるハイブリッド触媒で使用される金属酸化物触媒成分を形成する。焼成プロセスは、沈殿物を、摂氏375度(℃)~575℃、400℃~550℃、425℃~525℃、250℃~500℃、または約400℃などの、300℃~600℃の温度に加熱することを含む。実施形態では、焼成プロセスの継続時間は、1.00時間超、1.50時間超、2.00時間超、2.50時間超、3.00時間超、3.50時間超、4.00時間超、4.50時間超、または5.00時間超などの、0.50時間以上であり得る。他の実施形態では、焼成プロセスの継続時間は、1.00時間~7.50時間、1.50時間~7.00時間、2.00時間~6.50時間、2.50時間~6.00時間、3.00時間~5.50時間、3.50時間~5.00時間、または4.00時間~4.50時間などの、0.50時間~8.00時間であり得る。
【0025】
1つ以上の実施形態では、沈殿物が焼成されて、金属酸化物触媒を形成した後、沈殿物は、微多孔質触媒成分と物理的に混合される。実施形態では、微多孔質触媒成分は、8-MR細孔開口部を有し、以下の骨格型CHA、AEI、AFX、ERI、LTA、UFI、RTH、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される骨格型を有する、モレキュラーシーブから選択され、この骨格型は、国際ゼオライト協会(International Zeolite Association)の命名規則に対応する。実施形態では、アルミノシリケートとシリコアルミノホスフェート骨格の両方が使用され得ることを理解されたい。特定の実施形態では、微多孔質触媒成分は、チャバザイト(CHA)骨格型を有するSAPO-34シリコアルミノホスフェートであり得る。これらの例としては、SAPO-34およびSSZ-13から選択されるCHAの実施形態、ならびにSAPO-18などのAEIの実施形態を挙げることができるが、必ずしもこれらに限定されない。上記の骨格型のうちのいずれかを有する微多孔質触媒成分の組み合わせもまた、用いられ得る。微多孔質触媒成分は、所望の生成物に応じて異なる員環細孔開口部を有し得ることを理解されたい。例えば、所望の生成物に応じて、8-MR~12-MR細孔開口部を有する微多孔質触媒成分が使用され得る。しかしながら、C~Cパラフィンを生成するために、実施形態では、8-MR細孔開口部を有する微多孔質触媒成分が使用される。
【0026】
ハイブリッド触媒の金属酸化物触媒成分および微多孔質触媒成分は、例えば、振とう、かきまぜ、またはその他の撹拌などの、物理的混合などの、任意の好適な手段によって、一緒に混合され得る。金属酸化物触媒成分および微多孔質触媒成分は、反応ゾーンに、典型的には触媒床中のハイブリッド触媒として、0.5:1~9:1などの、0.1:1~10:1の範囲の重量/重量(wt/wt)比(金属酸化物触媒成分:微多孔質触媒成分)で存在し得る。
【0027】
金属酸化物触媒成分が、共沈/焼成法により形成され、微多孔質触媒成分と組み合わされて、ハイブリッド触媒を形成した後、ハイブリッド触媒は、炭素含有供給流中の炭素を、C~Cパラフィンに転化させる方法において使用され得る。そのようなプロセスは、以下により詳細に説明される。
【0028】
実施形態において、金属酸化物触媒成分は、金属酸化物触媒成分を従来の還元性ガスに曝露することによる、供給流への曝露の前に、反応器内で還元され得る。他の実施形態では、金属酸化物触媒成分は、水素および一酸化炭素などの供給流中の還元性ガスに暴露されると、反応器内で還元され得る。
【0029】
実施形態によれば、供給流は、反応ゾーンに供給され、供給流は、水素(H)ガスと、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、およびこれらの組み合わせから選択される炭素含有ガスと、を含む。いくつかの実施形態では、Hガスは、Hガスと、CO、CO、およびこれらの組み合わせから選択されるガスと、の合計体積に基づいて、10体積パーセント(vol%)~90体積%の量で供給流中に存在する。いくつかの実施形態では、Hは、30体積%~70体積%、または40体積%~60体積%などの、20体積%~80体積%の量で供給流中に存在する。供給流は、反応ゾーン内でハイブリッド触媒と接触する。ハイブリッド触媒は、金属酸化物触媒成分および微多孔質触媒成分を含む。いくつかの実施形態では、ハイブリッド触媒の金属酸化物触媒成分は、上記の共沈法によって形成された金属酸化物触媒成分である。特定の実施形態では、微多孔質触媒成分は、SAPO-34である。
【0030】
上記のように、実施形態では、供給流は、Hと、CO、CO、およびCOとCOとの組み合わせから選択される炭素含有ガス流と、を含む。供給流が、HおよびCOとCOとの組み合わせを含む実施形態では、供給流中のCOとCOとの比は、0.3:1.0~0.6:1.0、または0.4:1~0.5:1.0などの、0.1:1.0~0.7:1.0である。供給流中のCOとCOとの比が、0.7超:1.0など、高すぎる場合、所与の時間にわたる、所与の一連の操作条件における、生成される所望の生成物の累積量が低減され得る。しかしながら、0.1未満:1.0のCOとCOとの比を得るために、供給流から十分なCOを除去することは困難で費用がかかり得る。
【0031】
ハイブリッド触媒の有効性は、炭素含有ガスとしてCOを含有する供給流に対してより高くなること、ハイブリッド触媒の有効性は、供給流中の炭素含有ガスのより少ない部分がCOである場合低下すること、を理解されたい。しかしながら、本明細書に開示および記載されるハイブリッド触媒は、供給流が、炭素含有ガスの全部または大部分としてCOを含む方法では使用され得ないと言っているわけではない。
【0032】
供給流は、C~Cパラフィンを含む生成物流を形成するのに十分な反応条件下で、反応ゾーン内においてハイブリッド触媒と接触する。1つ以上の実施形態によれば、反応条件は、反応ゾーン内で、300℃~475℃、300℃~450℃、300℃~425℃、300℃~400℃、300℃~375℃、300℃~350℃、または300℃~325℃などの、300℃~500℃の範囲である温度を含む。他の実施形態では、反応ゾーン内の温度は、325℃~500℃、350℃~500℃、375℃~500℃、400℃~500℃、425℃~500℃、450℃~500℃、または475℃~500℃である。さらに別の実施形態では、反応ゾーン内の温度は、325℃~475℃、350℃~450℃、または375℃~425℃などの、300℃~500℃である。
【0033】
実施形態では、反応条件はまた、少なくとも30バール(3,000kPa)、少なくとも40バール(4,000kPa)、または少なくとも50バール(5,000kPa)などの、少なくとも20バール(2,000kPa)の反応ゾーン内部の圧力を含む。他の実施形態では、反応条件は、20バール(2,000kPa)~65バール(6,500kPa)、20バール(2,000kPa)~60バール(6,000kPa)、20バール(2,000kPa)~55バール(5,500kPa)、20バール(2,000kPa)~50バール(5,000kPa)、20バール(2,000kPa)~45バール(4,500kPa)、20バール(2,000kPa)~40バール(4,000kPa)、20バール(2,000kPa)~35バール(3,500kPa)、20バール(2,000kPa)~30バール(3,000kPa)、または20バール(2,000kPa)~25バール(2,500kPa)などの、20バール(2,000キロパスカル(kPa))~70バール(7,000kPa)の反応ゾーン内部の圧力を含む。他の実施形態において、反応ゾーン内部の圧力は、30バール(3,000kPa)~70バール(7,000kPa)、35バール(3,500kPa)~70バール(7,000kPa)、40バール(4,000kPa)~70バール(7,000kPa)、45バール(4,500kPa)~70バール(7,000kPa)、50バール(5,000kPa)~70バール(7,000kPa)、55バール(5,500kPa)~70バール(7,000kPa)、60バール(6,000kPa)~70バール(7,000kPa)、または65バール(6,500kPa)~70バール(7,000kPa)などの、25バール(2,500kPa)~70バール(7,000kPa)である。さらに他の実施形態において、反応ゾーン内部の圧力は、30バール(3,000kPa)~60バール(6,000kPa)、35バール(3,500kPa)~55バール(5,500kPa)、40バール(4,000kPa)~50バール(5,000kPa)、または約50バール(5,000kPa)などの、25バール(2,500kPa)~65バール(6,500kPa)である。
【0034】
上記のプロセスは、Hガスと、およびCO、CO、またはこれらの組み合わせから選択される炭素含有ガスと、を含む、本質的にそれらからなる、またはそれらからなる供給流を、C~Cパラフィンの組み合わせを含む生成物流に転化させるという点で有用性を有する。生成物流自体は、特定のオレフィンを生成するためのクラッカー供給流として、および/またはプラスチック、燃料などを含む様々な化学生成物を生成するための出発物質もしくは中間体として、の有用性を有する。
【0035】
上記のように、本明細書に開示および記載されるハイブリッド触媒の活性および安定性の組み合わせは、従来から既知であるハイブリッド触媒の活性および安定性の組み合わせよりも高い。この活性と安定性の組み合わせにより、従来から既知であるハイブリッド触媒と比較して、所望の生成物のより高い累積生産性がもたらされる。累積生産性は、所与の時間にわたる、所与の一連の操作条件における、触媒の単位質量あたりの生成された所望の生成物の累積質量の測定値である。この測定値は、本質的に、触媒の供給物転化率、安定性、選択性、および生産性を組み合わせたものであり、これによって、単一の性能指標を通して異なる触媒を比較する容易な方法を提供する。本明細書に開示および記載される触媒について、累積C~C炭化水素生産性は、以下の式および特定の試験プロトコルによって定義され、それらの組み合わせは「炭化水素生産性プロトコル」とも称される。
【数1】
【表1】
【0036】
1つ以上の実施形態では、ハイブリッド触媒の上記で定義された累積生産性は、上記の120時間の試験の最後での、生成されたC~C炭化水素のキログラムと触媒のキログラムとの比(kg/kg触媒)によって測定され得る。実施形態では、ハイブリッド触媒の生産性は、32.0kg/kg触媒以上、34.0kg/kg触媒以上、36.0kg/kg触媒以上、38.0kg/kg触媒以上、40.0kg/kg触媒以上、42.0kg/kg触媒以上、44.0kg/kg触媒以上、46.0kg/kg触媒以上、48.0kg/kg触媒以上、50.0kg/kg触媒以上、または52.0kg/kg触媒以上などの、31.3kg/kg触媒以上である。他の実施形態では、ハイブリッド触媒の生産性は、32.0kg/kg触媒~60.0kg/kg触媒、34.0kg/kg触媒~60.0kg/kg触媒、36.0kg/kg触媒~60.0kg/kg触媒、38.0kg/kg触媒~60.0kg/kg触媒、40.0kg/kg触媒~60.0kg/kg触媒、42.0kg/kg触媒~60.0kg/kg触媒、44.0kg/kg触媒~60.0kg/kg触媒、46.0kg/kg触媒~60.0kg/kg触媒、48.0kg/kg触媒~60.0kg/kg触媒、50.0kg/kg触媒~60.0kg/kg触媒、または52.0kg/kg触媒~60.0kg/kg触媒などの、31.3kg/kg触媒~60.0kg/kg触媒である。
【実施例
【0037】
実施形態は、以下の実施例によってさらに明確になるであろう。
【0038】
発明例1~23および比較例1~35
共沈法に従って、様々な銅-クロム-亜鉛(-アルミニウム)触媒を調製した。Cu(NO・3HO、Cr(NO・9HO、Zn(NO・6HO、およびAl(NO・9H2Oの適切な量(表1を参照)を、総金属濃度1mol/Lを目標として、蒸留水(HO)に添加した。また、沈殿剤として(NHCOの2M溶液またはNaCOの1M溶液を調製した。金属硝酸塩溶液および沈殿剤溶液を、同時に、蒸留HOの撹拌ビーカーに滴下し、約7のpHおよび約50℃の温度に維持した。共沈物質を濾過し、蒸留水で洗浄し、85℃の静的空気で一晩乾燥させ、続いて400℃で2時間焼成した。
【0039】
触媒試験では、0.25グラムの銅-クロム-亜鉛(-アルミニウム)触媒を、0.75グラムのシリコアルミノホスフェート触媒(SAPO-34)と、瓶内でそれらを一緒に穏やかに振とうすることによって物理的に混合した。触媒の各々は、40メッシュ(0.422ミリメートル)~80メッシュ(0.178ミリメートル)の範囲内の混合前粒径を有していた。合成ガスと接触させる前に、触媒を、300℃、大気圧で6時間、100ml/分のHを流動させて還元した。触媒性能試験を、以下の表1に示されるように、50バール(5.0MPa)、400℃で、様々な後続の流動条件で実施した。
【表2】
【0040】
例示的な触媒の実験組成およびそれらの性能を以下の表2に示し、比較触媒の実験組成およびそれらの性能を以下の表3に示す。触媒の性能を、完全な触媒試験にわたって、C~C炭化水素の累積生産性によって測定した。
【表3】
【表4】
【0041】
得られた累積C~Cパラフィン生産性から、すべての実施例1~23が、表1において上に指定された試験プロトコルで得られた、31.3kg生成物/kg触媒よりも高い生産性を示すことが観察され得る。この下限は、この特定の触媒試験プロトコル(比較例34)でクロム-亜鉛系触媒で達成可能な最大生産性である。様々な触媒組成および31.3kg/kg触媒のしきい値累積生産性に基づいて、CuCrZnAl触媒の最適化された範囲は、段落[0015]で定義された3つの組成記述子の組み合わせとして要約され得る。
0<Cu/Zn≦3、
0<Cr/Zn≦1.5、および
0.0原子%<Al+Cr≦50.0原子%。
【0042】
実施例8および9から観察され得るように、アルミニウムを含むおよび含まない触媒組成物について同等の性能を得ることができるので、銅-クロム-亜鉛触媒へのアルミニウムの添加は、任意であると見なされ得る。
【0043】
実施例24
共沈法に従って、銅-クロム-亜鉛-アルミニウム触媒を調製した。金属酸化物触媒成分を、6.07グラム(g)のCu(NO・3HO、5.28gのCr(NO・9HO、14.65gのZn(NO・6HO、および3.27gのAl(NO・9HOを、総金属濃度1mol/Lを目標として、蒸留水(HO)に添加することによって調製した。また、沈殿剤として(NHCOの0.5M溶液を調製した。金属硝酸塩溶液および沈殿剤溶液を、同時に、約7のpHおよび約70℃の温度に維持された200mLの蒸留HOを含有する撹拌ビーカーに滴下した。そこで、金属酸化物触媒前駆体成分が、溶液から共沈した。共沈物質を濾過し、蒸留水で洗浄し、85℃の静的空気で一晩乾燥させ、続いて400℃で2時間(h)焼成した。最終的な触媒は、触媒中の総金属含有量に基づいて、それぞれ12.5、16.8、61.9、および8.8原子%のCu、Cr、Zn、およびAl含有量を有していた。
【0044】
触媒試験では、1グラムの銅-クロム-亜鉛-アルミニウム触媒を、0.5グラムのシリコアルミノホスフェート触媒(SAPO-34)と、瓶内でそれらを一緒に穏やかに振とうすることによって物理的に混合して、ハイブリッド触媒を形成した。触媒の各々は、40メッシュ(0.422ミリメートル(mm))~80メッシュ(0.178mm)の範囲内の混合前粒径を有していた。0.5インチの内径を有する加熱された反応管内で、ハイブリッド触媒を合成ガスと接触させる前。ハイブリッド触媒を、270℃、10バールで6時間、100ml/分のHを流動させて還元した。触媒性能試験を、50バール(5.0MPa)、400℃で、22.5ml/分のCO、67.5ml/分のH、および10ml/分のHeを触媒上に流動させることによって実施した。結果を表4に示す。反応器流出物組成を、ガスクロマトグラフィーによって得、転化率および選択性を、以下の等式を使用して計算した。
CO転化率=XCO(%)=[(nCO、イン-nCO、アウト)/nCO、イン]・100、および
生成物jの選択性=S(%)=[α・nj、アウト/(nCO、イン-nCO、アウト)]・100、式中、
αは、生成物jの炭素原子の数であり、nj、アウトは、生成物jのモル流出口である。
【表5】
【0045】
この実施例は、高い経時的安定性と組み合わされた、高いCO転化率および高いC~Cパラフィン選択性を示す。
【0046】
実施例25
共沈法に従って、銅-クロム-亜鉛触媒を調製した。金属酸化物触媒成分を、8.01グラム(g)のCu(NO・3HO、8.39gのCr(NO・9HO、および13.65gのZn(NO・6HOを、総金属濃度1mol/Lを目標として、蒸留水(HO)に添加することによって調製した。また、沈殿剤として(NHCOの2M溶液を調製した。金属酸化物触媒成分混合物および沈殿剤を、同時に、約7のpHおよび約50℃の温度に維持された200mLの蒸留HOを含有する撹拌ビーカーに滴下した。そこで、金属酸化物触媒前駆体成分が、溶液から共沈した。共沈物質を濾過し、蒸留水で洗浄し、85℃の静的空気で一晩乾燥させ、続いて400℃で2時間(h)焼成した。最終的な触媒は、触媒中の総金属含有量に基づいて、それぞれ20.6、26.9、および52.5原子%のCu、Cr、およびZn含有量を有していた。
【0047】
触媒試験では、1グラムの銅-クロム-亜鉛触媒を、0.5グラムのシリコアルミノホスフェート触媒(SAPO-34)と、瓶内でそれらを一緒に穏やかに振とうすることによって物理的に混合して、ハイブリッド触媒を形成した。触媒の各々は、40メッシュ(0.422ミリメートル(mm))~80メッシュ(0.178mm)の範囲内の混合前粒径を有していた。ハイブリッド触媒を、実施例1で使用された同じ反応器内で、合成ガスと接触させる前に、ハイブリッド触媒を、300℃、大気圧で6時間、100ml/分のHを流動させて還元した。触媒性能試験を、50バール(5.0MPa)、400℃で、20ml/分のCO、11ml/分のCO、64ml/分のH、および5ml/分のHeを触媒上に流動させることによって実施した。結果を表5に示す。
【表6】
【0048】
この実施例は、COを含む供給流が、所望の生成物に転化され得、安定したCO転化率および高いC~Cパラフィン選択性を示すことを示す。
【0049】
比較例36
共沈法に従って、クロム-亜鉛混合酸化物触媒を調製した。0.4:1のCrとZnとのモル比を目標として、16.14gのCr(NO・9HO、および29.97gのZn(NO・6HOを、20mLの蒸留水(HO)に添加した。また、沈殿剤として(NHCOの0.5M溶液を調製した。金属硝酸塩溶液および沈殿剤溶液を、同時に、約7.0のpHおよび約65+/-5℃の温度に維持された蒸留HOの撹拌ビーカーに滴下した。共沈物質を濾過し、蒸留水で洗浄し、120℃の静的空気で一晩乾燥させ、続いて600℃で2時間焼成した。
【0050】
触媒試験では、1グラムのクロム-亜鉛触媒を、0.5グラムのシリコアルミノホスフェート触媒(SAPO-34)と、瓶内でそれらを一緒に穏やかに振とうすることによって物理的に混合した。触媒の各々は、40メッシュ(0.422ミリメートル)~80メッシュ(0.178ミリメートル)の範囲内の混合前粒径を有していた。合成ガスと接触させる前に、触媒を、400℃、大気圧で2時間、22.5ml/分のHおよび11.25ml/分のNを流動させて還元した。触媒性能試験を、50バール(5.0MPa)、400℃で、22.5ml/分のCO、67.5ml/分のH、および10ml/分のHeを触媒上に流動させることによって実施した。結果を表6に示す。
【表7】
【0051】
表6では、「=」は、二重結合を有する炭素(すなわち、オレフィン)を示す。比較例36は、クロム-亜鉛触媒を用いて得られた低いCO供給物転化率を示す。
【0052】
比較例37
銅含浸クロム-亜鉛触媒(Cu/CrZn)は、初期湿潤含浸方法に従って、2.25mLの1.95mol/LのCu(NO・3HO溶液を、2.5gのバルククロム-亜鉛混合酸化物触媒上に堆積させることによって調製した。最終的な触媒は、触媒中の総金属含有量に基づいて、それぞれ14.9、24.9、および60.2原子%のCu、Cr、およびZn含有量を有していた。比較例36に記載される共沈法に従って、0.4:1のCrとZnとのモル比を有するクロム-亜鉛混合酸化物触媒を調製した。
【0053】
触媒試験では、1グラムの銅含浸クロム-亜鉛触媒を、0.5グラムのシリコアルミノホスフェート触媒(SAPO-34)と、瓶内でそれらを一緒に穏やかに振とうすることによって物理的に混合した。合成ガスと接触させる前に、触媒を、400℃、大気圧で2時間、22.5ml/分のHおよび11.25ml/分のNを流動させて還元した。触媒性能試験を、50バール(5.0MPa)、400℃で、22.5ml/分のCO、67.5ml/分のH、および10ml/分のHeを触媒上に流動させることによって実施した。結果を表7に示す。
【表8】
【0054】
表7では、「=」は、二重結合を有する炭素(すなわち、オレフィン)を示す。比較例37は、銅含浸クロム-亜鉛触媒を用いて得られた供給物転化率の不十分な安定性を示す。
【0055】
比較例38
市販のバルク銅-亜鉛酸化物-アルミナ混合金属酸化物触媒(HiFUEL(登録商標)R120)と、クロム-亜鉛混合金属酸化物触媒との物理的混合物を、0.0833gのHiFUEL(登録商標)および0.1667gのクロム-亜鉛触媒をガラス瓶内で穏やかに振とうすることによって調製した。クロム-亜鉛触媒を、比較例32に記載された共沈法に従って調製した。触媒の各々は、40メッシュ(0.422ミリメートル)~80メッシュ(0.178ミリメートル)の範囲内の混合前粒径を有していた。
【0056】
触媒試験では、0.25グラムの混合HiFUEL(登録商標)とクロム-亜鉛触媒とを、0.75グラムのシリコアルミノホスフェート触媒(SAPO-34)と、瓶内でそれらを一緒に穏やかに振とうすることによって物理的に混合した。合成ガスと接触させる前に、触媒を、300℃、大気圧で6時間、100ml/分のHを流動させて還元した。触媒性能試験を、表1に示され、炭化水素生産性プロトコルで概説されるように、50バール(5.0MPa)、400℃で、発明例1~23および比較例1~35に使用される様々な後続の流動条件で実施した。
【0057】
30kg/kg触媒の累積C~C炭化水素生産性が得られ、これは、上記で強調されたCuCrZn(Al)発明例の少なくとも31.3kg/kg触媒の生産性より低く、触媒合成中(すなわち、共沈)のすべての要素を組み込むことの明確な利益および必要性を示す。
【0058】
特許請求の範囲に記載の主題の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書で記載される実施形態に様々な修正および変更を加え得ることが当業者には明らかであろう。したがって、そのような修正および変更が添付の特許請求の範囲およびそれらの同等物の範囲内に入る限り、本明細書は、本明細書に記載される様々な実施形態の修正および変更を包含することが意図される。
本願は以下の態様にも関する。
(1) C ~C パラフィンの調製方法であって、
水素ガスと、一酸化炭素、二酸化炭素、およびこれらの混合物からなる群から選択される炭素含有ガスと、を含む供給流を、反応器の反応ゾーンに導入することと、
前記供給流を、ハイブリッド触媒の存在下で、前記反応ゾーン内においてC ~C パラフィンを含む生成物流に転化させることと、を含み、前記ハイブリッド触媒が、
銅、クロム、および亜鉛を含む金属酸化物触媒成分と、
8-MR細孔開口部を有するモレキュラーシーブである微多孔質触媒成分と、を含み、
前記金属酸化物触媒成分が、
Cu/Znの原子比が、0.01~3.00であることと、
Cr/Znの原子比が、0.01~1.50であることと、
前記金属酸化物触媒成分中の金属の総量に基づいて、(Al+Cr)の原子百分率が、0.0原子%超~50.0原子%であることと、を満たす、C ~C パラフィンの調製方法。
(2) 前記金属酸化物触媒成分が、
Cu/Znの原子比が、0.25~1.00であることと、
Cr/Znの原子比が、0.20~0.50であることと、
前記金属酸化物触媒成分中の金属の総量に基づいて、(Al+Cr)の原子百分率が、10.0原子%~30.0原子%であることと、を満たす、上記(1)に記載のC ~C パラフィンの調製方法。
(3) 前記金属酸化物触媒成分が、アルミニウムをさらに含む、上記(1)または(2)に記載のC ~C パラフィンの調製方法。
(4) 前記供給流が、COとCO との組み合わせを含み、前記供給流中のCO とCOとの比が、0.1:1.0~0.7:1.0である、上記(1)~(3)のいずれかに記載のC ~C パラフィンの調製方法。
(5) 炭化水素生産性プロトコルに従って測定された、前記ハイブリッド触媒の累積C ~C 炭化水素生産性が、31.3kg/kg触媒以上である、上記(1)~(4)のいずれかに記載のC ~C パラフィンの調製方法。
(6) 前記炭化水素生産性プロトコルに従って測定された、前記ハイブリッド触媒の累積C ~C 炭化水素生産性が、31.3kg/kg触媒~60.0kg/kg触媒である、上記(1)~(5)のいずれかに記載のC ~C パラフィンの調製方法。
(7) 前記微多孔質触媒成分が、SAPO-34である、上記(1)~(6)のいずれかに記載のC ~C パラフィンの調製方法。
(8) 前記供給流を、C ~C パラフィンを含む生成物流に転化させることが、前記反応ゾーンを300℃~500℃の温度に加熱することを含む、上記(1)~(7)のいずれかに記載のC ~C パラフィンの調製方法。
(9) 前記供給流を、C ~C パラフィンを含む生成物流に転化させることが、少なくとも20バールの圧力で行われる、上記(1)~(8)のいずれかに記載のC ~C パラフィンの調製方法。
(10) ハイブリッド触媒が、
銅、クロム、および亜鉛を含む金属酸化物触媒成分と、
8-MR細孔開口部を有するモレキュラーシーブである微多孔質触媒成分と、を含み、
前記金属酸化物触媒成分が、
溶媒中に銅塩、クロム塩、および亜鉛塩を含む溶液から固体を沈殿させて、銅、クロム、および亜鉛を含む沈殿物を得ることと、
前記沈殿物を300℃~600℃の温度で焼成することと、によって調製され、
前記金属酸化物触媒成分が、
Cu/Znの原子比が、0.01~3.00であることと、
Cr/Znの原子比が、0.01~1.50であることと、
前記金属酸化物触媒成分中の金属の総量に基づいて、(Al+Cr)の原子百分率が、0.0原子%超~50.0原子%であることと、を満たす、ハイブリッド触媒。
(11) 前記金属酸化物触媒成分が、
Cu/Znの原子比が、0.25~1.00であることと、
Cr/Znの原子比が、0.20~0.50であることと、
前記金属酸化物触媒成分中の金属の総量に基づいて、(Al+Cr)の原子百分率が、10.0原子%~30.0原子%であることと、を満たす、上記(10)に記載のハイブリッド触媒。
(12) 前記銅塩、クロム塩、および亜鉛塩が、硝酸銅、硝酸クロム、および硝酸亜鉛である、上記(10)または(11)に記載のハイブリッド触媒。
(13)前記沈殿物を、350℃~600℃の温度で焼成する、上記(10)~(12)のいずれかに記載のハイブリッド触媒。
(14) 前記沈殿物を、約400℃の温度で焼成する、上記(10)~(13)のいずれかに記載のハイブリッド触媒。
(15) 前記炭化水素生産性プロトコルに従って測定された、前記ハイブリッド触媒の累積C ~C 炭化水素生産性が、31.3kg/kg触媒以上である、上記(10)~(14)のいずれかに記載のハイブリッド触媒。