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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】角形蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20231127BHJP
   H01M 50/477 20210101ALI20231127BHJP
   H01M 50/486 20210101ALI20231127BHJP
   H01M 50/491 20210101ALI20231127BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20231127BHJP
   H01G 11/82 20130101ALI20231127BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M50/477
H01M50/486
H01M50/491
H01M50/489
H01G11/82
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020553733
(86)(22)【出願日】2019-10-10
(86)【国際出願番号】 JP2019040058
(87)【国際公開番号】W WO2020090409
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2018203115
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】脇元 亮一
(72)【発明者】
【氏名】三田 和隆
【審査官】多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/150912(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/029948(WO,A1)
【文献】特開2012-099252(JP,A)
【文献】特開2009-087812(JP,A)
【文献】特開2018-181703(JP,A)
【文献】特開2005-294150(JP,A)
【文献】特開2015-225839(JP,A)
【文献】特開2015-204194(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0048324(KR,A)
【文献】特開2020-30899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/04
H01M50/40-50/497
H01G11/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板と、負極板と、前記正極板と前記負極板との間に配置されたセパレータとを有する電極体と、
絶縁シートが箱状に形成され、前記電極体が収容された絶縁ホルダと、
開口部を有し、前記電極体及び前記絶縁ホルダが収容された角形の外装ケースと、
前記外装ケースの前記開口部を封口する封口体と、を備え、
前記絶縁シートは、多孔質体を有する多層構造であり、
前記絶縁シートの少なくとも一方の表層は、非孔質体である、角形蓄電装置。
【請求項2】
前記多孔質体は、樹脂を主成分とする合成紙である、請求項1に記載の角形蓄電装置。
【請求項3】
前記多孔質体は、発泡性樹脂を含むシートである、請求項1に記載の角形蓄電装置。
【請求項4】
前記多層構造である絶縁シートの空隙率は、内部より表層の方が低い、請求項に記載の角形蓄電装置。
【請求項5】
前記多孔質体の空隙率は、5%~50%の範囲である、請求項1~のいずれか1項に記載の角形蓄電装置。
【請求項6】
前記絶縁シートの厚みは、100μm~300μmの範囲である、請求項1~のいずれか1項に記載の角形蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、角形蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)などの車両の駆動用電源として、最近、二次電池やキャパシタなどの蓄電装置を用いることが注目されている。このような蓄電装置では、機械的強度の観点などから外装ケースとしてアルミニウムなどの金属ケースを用いることがある。この金属ケースと、金属ケースの中に収容された電極体とが接触すると、電極体内の正極及び負極が短絡する可能性がある。
【0003】
このような短絡を防ぐために、例えば、特許文献1には、絶縁シートを箱状に折った絶縁ホルダの中に電極体を収容し、その電極体を絶縁ホルダとともに外装ケースへ収容させることにより、電極体と外装ケースとの間に絶縁ホルダを介在させ、電極体と外装ケースとの接触(絶縁性)を確保することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-170137号公報
【文献】特表2016-522546号公報
【文献】特開2017-76476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、蓄電装置の軽量化、及び充電時に電極体が膨化する空間を確保するために、絶縁ホルダを構成する絶縁シートの厚みを薄くすることが望まれている。しかし、絶縁シートの厚みを薄くすると、剛性が低下し、箱状の絶縁ホルダの成形性が低下して、箱状の絶縁ホルダが歪な形となる。その結果、例えば、絶縁ホルダを電極体と共に外装ケースに収容する際等に、絶縁ホルダに皺ができて、電極体に想定外の圧力が掛かって、電池性能が低下したり、絶縁シートがめくれて、電極体と外装ケースとの絶縁性が確保できなかったりする場合がある。
【0006】
そこで、本開示は、絶縁シートの剛性を確保しながら、蓄電装置の軽量化、及び充電時に電極体が膨化する空間を確保した角形蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様である角形蓄電装置は、正極板と、負極板と、前記正極板と前記負極板との間に配置されたセパレータとを有する電極体と、絶縁シートが箱状に成形され、前記電極体が収容された絶縁ホルダと、開口部を有し、前記電極体及び前記絶縁ホルダが収容された角形の外装ケースと、前記外装ケースの前記開口部を封口する封口体と、を備え、前記絶縁シートは、多孔質体を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、絶縁シートの剛性を確保しながら、蓄電装置の軽量化、及び充電時に電極体が膨化する空間を確保した角形蓄電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の1例の角形蓄電装置の断面図である。
図2図1に示す角形蓄電装置から外装ケースを取り除いた状態を示す斜視図である。
図3図2において、絶縁ホルダの組み立て途中の状態を示す斜視図である。
図4】実施形態の1例の絶縁ホルダの組立状態を示す斜視図である。
図5図4に示す絶縁ホルダの組立前における絶縁シートを示す展開図である。
図6】多孔質体を含む多層構造の絶縁シートの一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態の1例の角形蓄電装置について詳細に説明する。実施形態の説明で参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された構成要素の寸法比率などは、現物と異なる場合がある。具体的な寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。本明細書において「略~」との記載は、略同一を例に挙げて説明すると、完全に同一はもとより、実質的に同一と認められるものを含む意図である。また、「端部」の用語は対象物の端及びその近傍を意味するものとする。また、以下で説明する形状、材料、個数などは説明のための例示であって、蓄電装置の仕様により変更が可能である。以下では同様の構成には同一の符号を付して説明する。
【0011】
以下で説明する角形蓄電装置は、例えば電気自動車またはハイブリッド車の駆動電源、または系統電力のピークシフト用の定置用蓄電システム等に利用される。
【0012】
図1は、実施形態の1例の角形蓄電装置10の断面図である。図2は、図1に示す角形蓄電装置10から外装ケース60を取り除いた状態を示す斜視図である。図3は、図2において、絶縁ホルダ30の組み立て途中の状態を示す斜視図である。以下では、説明の便宜上、外装ケース60の封口板80側を上、封口板80と反対側を下として説明する。
【0013】
図1に示す角形蓄電装置10は、例えば、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池である。図1に示すように角形蓄電装置10は、蓄電要素としての電極体11と、電極体11を収容する絶縁ホルダ30と、外装ケース60と、封口板80とを備える。絶縁ホルダ30は、底部を有し上端が開口した箱状であり、電極体11を収容する。外装ケース60は、底部を有し上端が開口した角形状の外装ケースであり、電極体11と絶縁ホルダ30とを、非水電解質に相当する電解液(図示なし)とともに収容する。なお、絶縁ホルダ30の開口部と外装ケース60の開口部61は同一方向に開口している。封口板80は、外装ケース60に形成される開口部61を塞ぐ。封口板80には、正極端子81と負極端子82とが封口板80の長手方向(図1の左右方向)に離間して設けられている。
【0014】
図1に示す電極体11は、交互に配置される複数の正極板と複数の負極板と、セパレータとを含み、正極板及び負極板が、セパレータを介して交互に積層された積層構造を有している。
【0015】
各正極板、各負極板及びセパレータは、略矩形のシートであり、これらの略矩形のシートを積層することにより構成された電極体11は、積層方向両端の端面と、これら端面の間にあり、端面を囲う4方向の側面とを有する。
【0016】
積層された正極板、負極板、セパレータは、固定テープを用いて拘束したり、セパレータと正極板または負極板との間の面に接着剤を塗布したりして、セパレータと正極板または負極板とを接着して固定してもよい。
【0017】
また、正極板、負極板、セパレータのうち少なくとも一つを枚葉化した矩形のシートから、帯状のシートに代えて、上記帯状のシートをジグザグ状に折り返しながら重ねていく九十九折りを行いながら電極体11を構成してもよい。
【0018】
正極板は、例えば、アルミニウム箔等からなる芯体と、芯体の表裏面に形成された電極層と、芯体において電極層が形成されていない芯体露出部と、芯体露出部の一部であり芯体露出部の上端から延出して形成された正極リード12とを有する。
【0019】
正極の電極層は、例えば正極活物質と、導電剤と、結着剤とを含む。正極活物質としては、例えば、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物等のリチウム複合酸化物等が挙げられる。結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素樹脂等が挙げられる。導電剤としては、カーボンブラック等の炭素材料等が挙げられる。
【0020】
正極板は、例えば、以下のようにして作製される。正極活物質、導電剤、結着剤を含む混合物に、N-メチルピロリドン(NMP)等の分散媒を適量加えて、スラリーを作製する。このスラリーを、正極の芯体の両面に塗布して、これを乾燥させることにより、スラリー中の分散媒を取り除き、芯体上に電極層を形成する。その後、電極層を所定厚みになるように圧縮する。このようにして得られた正極板を所定の形状に切断する。
【0021】
負極板は、例えば、銅箔等からなる芯体と、芯体の表裏面に形成された電極層と、芯体において電極層が形成されていない芯体露出部と、芯体露出部の一部であり芯体露出部の上端から延出して形成された負極リード13とを有する。
【0022】
負極の電極層は、例えば負極活物質と、導電剤と、結着剤と、増粘剤とを含む。負極活物質としては、例えば、黒鉛等の炭素材料等が挙げられる。結着剤としては、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)等が挙げられる。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられる。
【0023】
負極板は、例えば、以下のようにして作製される。負極活物質、導電剤、結着剤、増粘剤を含む混合物に、水等の分散媒を適量加えて、スラリーを作製する。このスラリーを、負極の芯体の両面に塗布して、これを乾燥させることにより、スラリー中の分散媒を取り除き、芯体上に電極層を形成する。その後、電極層を所定厚みになるように圧縮する。このようにして得られた負極板を所定の形状に切断する。
【0024】
セパレータとしては、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シートが用いられ、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンからなる樹脂製シート等が挙げられる。
【0025】
電極体11内において、セパレータを介して対向する正極板及び負極板は、積層方向から平面視した際に、正極リード12、負極リード13の部分を除いて負極板が正極板より大きく、正極板の周縁が負極板の周縁より内側に位置していることが望ましい。この構成により、負極板においてリチウム金属の析出を抑制することが可能となる。
【0026】
正極リード12及び負極リード13は、例えば、電極体11を構成する正極板と負極板の枚数分設けられる。複数の正極リード12は、電極体11における絶縁ホルダ30の開口側にある端面から延出し、延出方向の先端側で束ねられた状態で、集電部材83に接合される。集電部材83は、封口板80に設けられた正極端子81に電気的に接続されており、これにより、正極リード12は、集電部材83を介して、正極端子81に電気的に接続される。また、複数の負極リード13は、電極体11における絶縁ホルダ30の開口側にある端面から延出し、延出方向の先端側で束ねられた状態で、集電部材84に接合される。集電部材84は、封口板80に設けられた負極端子82に電気的に接続されており、これにより、負極リード13は、集電部材84を介して、負極端子82に電気的に接続される。正極リード12と集電部材83の接合や負極リード13と集電部材84の接合は、例えば、超音波溶接、抵抗溶接、レーザ溶接、冷間圧接等により行われる。
【0027】
正極の集電部材83は、例えば、アルミニウム製の板材から構成されている。集電部材83は、前述したように、一端で正極リード12と接続され、他端で正極端子81と接続される。なお、正極端子81と集電部材83とは、電流遮断装置を介して電気的に接続されていてもよい。この電流遮断装置は、角形蓄電装置10の異常時に外装ケース60内部でガスが発生し、外装ケース60内が所定の圧力を超えた際に、集電部材83と正極端子81との電気的な接続を断つことができる安全装置である。電流遮断装置は、例えば、集電部材83の他端と接続するとともに、外装ケース60内の圧力を受けたときに、集電部材83から離れる方向に変形する反転板と、反転板と正極端子81とを電気的に接続する導電キャップとを有する。導電キャップは下側(電極体11側)に開口部が位置し、上側(封口板80側)に上面が位置した皿状の導電部材である。上面には接続孔が形成されており、正極端子81が挿入される。
【0028】
負極の集電部材84は、例えば、銅製の板材から構成される。集電部材84は、前述したように、一端で負極リード13と接続され、他端で負極端子82と接続される。集電部材84は、例えば、負極端子82により、封口板80に固定されていてもよい。
【0029】
なお、集電部材83,84は、それぞれ一体の部材であってもよく、複数の部材を接続させて構成されていてもよい。
【0030】
正極端子81は、封口板80の端子孔を貫通して設けられ、一端が外装ケース60の外部へ露出し、他端が外装ケース60内に収容されている。正極端子81は、例えば、他端が前述の導電キャップの上面に設けられた接続孔に挿入され、正極端子81の他端が径方向に広がるようにカシメられることにより導電キャップに固定される。正極端子81は、例えば、アルミニウム製の筒体から構成されている。
【0031】
負極端子82は、封口板80の端子孔を貫通して設けられ、一端が外装ケース60の外部へ露出し、他端が外装ケース60内に収容されている。負極端子82は、例えば、外装ケース60内で集電部材84と接続する他端が銅材からなり、外装ケース60の外部へ露出する一端がアルミニウムで構成されたクラッド材から構成されていてもよい。負極端子82は、例えば、他端において、径方向に広がるようにカシメられることにより集電部材84とともに封口板80に固定される。
【0032】
封口板80は、例えば、アルミニウム製の板を加工して形成されている。封口板80は、外装ケース60の開口部61上に位置し、封口板80は、外装ケース60の開口端に例えばレーザなどを用いて溶接して外装ケース60の開口部61を封口する。封口板80は、電解液を外装ケース60内へ注液するための注液孔を有していてもよい。封口板80には、その注液孔を塞ぐ、注液栓を設けてもよい。また、封口板80は、線状の複数の溝で囲うことにより構成され、外装ケース60内が所定の圧力を超えた際に上記溝が裂けて外装ケース60内のガスを外部へ排気する圧力調整弁85を設けてもよい。また、封口板80の周縁には、環状の溝を形成することが好ましい。この構成により、封口板80と外装ケース60とを溶接接合する際に、封口板80の周縁を効率的に溶融させることができる。
【0033】
なお、集電部材83,84と封口板80との間に、絶縁部材が介在してもよい。また端子孔と正極端子81及び負極端子82との間、封口板80上に露出した正極端子81及び負極端子82の頭部と封口板80の上面との間にも絶縁部材を介在させてもよい。
【0034】
外装ケース60は、例えば、底部を有し、上端に開口が形成された扁平な略箱状の角形ケースである。外装ケース60は例えばアルミニウムなどの金属から構成されている。外装ケース60は例えばアルミニウム材を絞り加工して形成することができる。外装ケース60は、底板部62と、底板部62の周縁から立設された複数の側壁とを有し、開口部61は、底板部62とは反対側端に形成されている。外装ケース60の複数の側壁は、横方向長さが小さい2つの短側壁64,65と、横方向長さが大きい2つの長側壁(図示せず)とから構成される。各長側壁は、電極体11の積層方向の端面に後述の絶縁ホルダ30を介して対向する。一方、各短側壁64,65は、電極体11の積層方向の端面に対し直交する側端面15,16に絶縁ホルダ30を介して対向する。また、外装ケース60の底板部62の内面と、2つの短側壁64,65の内面とをそれぞれ繋ぐ隅部P1,P2には、曲面66,67が形成されている。なお、外装ケース60において、直交して隣接する2つの側壁の横方向長さの大きさの関係は、本例の場合と逆になってもよい。なお、曲面66,67は例えば断面形状が円弧形であり、その曲面66,67のR寸法の範囲は、例えば0.5mm以上、3mm以下とすることができ、1mm以上、2mm以下が好ましい。このR寸法は、各側壁および底板部と平行な方向に延びる隅部において、同方向におけるあらゆる箇所のR寸法が等しくなくてもよい。
【0035】
図2図3に示すように、絶縁ホルダ30は、絶縁シート31が箱状に形成され、電極体11を収容する収容体である。
【0036】
図4は、絶縁ホルダ30の組立状態を示す斜視図である。図4に示すように、絶縁シート31が箱状に組み立てられた絶縁ホルダ30は、底面部36、及び底面部36から立設された4つの側面部37~40を有する。また、絶縁ホルダ30において、底面部36とは反対側端には、側面部37~40の端部により囲まれたホルダ開口部33が形成される。絶縁ホルダ30は、外装ケース60の内部空間に合わせて、角形ケースの形状を有していてもよい。
【0037】
図5は、絶縁ホルダ30の組立前における絶縁シート31を示す展開図である。絶縁シート31は、全体が略矩形であり、複数の折り目(破線a1~a8)と複数の切れ目(実線b1~b4)とによって区分された複数のシート要素から構成される。具体的には、絶縁シート31は、第1~第9のシート要素S1~S9から構成される。なお、第4~第7のシート要素S4~S7は、第8のシート要素S8または第9のシート要素S9に隣接する箇所の一部が矩形に切り抜かれた切欠35を有する。
【0038】
絶縁ホルダ30を形成する際には、第1~第9のシート要素S1~S9が、互いの境界に設けられた折れ目a1~a8で折り曲げられる。これにより、絶縁ホルダ30の底面部36が、第1のシート要素S1により形成され、絶縁ホルダ30の4つの側面部37~40が、第2~第9のシート要素S2~S9により形成される。そして折れ目a1~a8は絶縁ホルダ30の隣接する面をつなぐ辺を形成する。
【0039】
なお、図5に示す絶縁シート31の形態は一例であって、これに限定されるものではなく、少なくとも折り目で区分されるシート要素の構成から箱状の絶縁ホルダ30を形成できる形態であればいかなる形態であってもよい。
【0040】
絶縁シート31は、多孔質体からなる単層構造、多孔質体を含む多層構造等である。多孔質体を含む多層構造は、例えば、複数の多孔質体が積層した多層構造や多孔質体と非孔質体が積層した多層構造等である。多孔質体とは、内部に多数の細孔(気泡)を有する構造体である。一方、非孔質体とは、実質的に細孔(気泡)を含まない構造体である。但し、非孔質体においては、例えば、製造過程で偶発的に含まれてしまった細孔(気泡)を僅かに含むものについては、非孔質体の範囲に含まれる。
【0041】
多孔質体を含む絶縁シートは、非孔質体から構成された絶縁シートと比べて、同じ厚みであれば、細孔を有する分、軽量となるため、角形蓄電装置の軽量化を図ることが可能となる。また、非孔質体から構成された絶縁シートの場合、角形蓄電装置の充電時に電極体が膨化する空間を確保するために、絶縁シートと電極体や絶縁シートと外装ケースとの間に十分な空間を設ける必要がある。一方、多孔質体を含む絶縁シートによれば、電極体が膨化した際に多孔質体の細孔が潰れて、絶縁シートが圧縮されるため(厚みが薄くなるため)、非孔質体から構成された絶縁シートの場合と比較して、絶縁シートと電極体や絶縁シートと外装ケースとの間に設ける空間を狭くしても(或いは空間を無くしても)、電極体が膨化する空間は確保される。したがって、多孔質体を含む絶縁シートによれば、角形蓄電装置の軽量化及び充電時の電極体が膨化する空間を確保するために、非孔質体から構成された絶縁シートより、シートの厚みを厚くすることが可能となるため、シートの剛性も確保できる。これにより、箱状の絶縁ホルダへの成形性が向上するため、例えば、絶縁ホルダを電極体と共に外装ケースに収容する際等に、絶縁ホルダに皺ができて、電極体に想定外の圧力が掛かって、電池性能が低下したり、絶縁シートがめくれて、電極体と外装ケースとの絶縁性が確保できなかったりすることが抑制される。
【0042】
多孔質体の空隙率は、絶縁シート31の剛性を確保する点で、5%~50%の範囲であることが好ましく、10%~30%の範囲であることがより好ましい。なお、非孔質体の空隙率は1%以下である。ここで、空隙率の測定方法としては、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)により多孔質体の断面観察を行い、得られた画像を解析処理することにより求める方法が挙げられる。具体的には、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて多孔質体の断面を倍率5,000倍で拡大し、デジタル画像として記録する。次に、画像を画像処理ソフトウエアImage Jに取り込み、ImageメニューのTypeから8ビットを選択する。次に、同じくImageメニューのAdjustからThresholdを選択し、多孔質体の断面のうち空隙の領域が抽出されるよう閾値を調整して空隙とそれ以外の部分を2値化して区別する。最後に、AnalyzeメニューのAnalyze Particlesを選択して空隙の面積を算出し、下記の式により空隙率を求める。なお、ここでいう空隙率とは、任意の断面画像を10枚取得し、それらから得られた空隙率の平均を意味する。
空隙率(%)=(空隙部分の面積)/(樹脂層全体の面積)×100
【0043】
絶縁シート31を構成する多孔質体は、例えば、樹脂を主成分とする合成紙、発泡性樹脂シート等が挙げられる。合成紙とは、樹脂を主成分として製造された紙のことで、外観や風合いは不透明で木材パルプ紙によく似ているが、物性は紙や合成樹脂フィルムの特性を兼ね合わせたものである。
【0044】
合成紙の主成分である合成樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等が挙げられる。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体、ポリ(4-メチルペンテン-1)、ポリスチレン等が挙げられる。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。ポリアミドとしては、例えば、ナイロン6、ナイロン66等が挙げられる。ここで、主成分とは、合成紙の全成分に対して50質量%以上の成分をいう。
【0045】
合成紙の細孔は、例えば延伸工程において生成される。例えば、フィラーを含む合成樹脂を延伸することにより、フィラーの周りに微細な細孔が形成される。フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム、焼成クレイ、珪藻土、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、シリカ等の無機系フィラー等が挙げられる。細孔を有する合成紙の具体例として、ユポ(登録商標)(株式会社ユポ・コーポレーション)、クリスパー(登録商標)(東洋紡株式会社)、エヌコート(登録商標)(中本パックス株式会社)等を例示できる。
【0046】
発泡性樹脂シートは、例えば、合成樹脂や合成ゴム等に炭酸水素ナトリウム等の発泡剤を添加した混合物を熱処理して、押出機等でシート状に成形したものである。熱処理を行うことで、発泡剤がガス化するため、ガス化した発泡剤が樹脂内に細孔(気泡)となって残留する。
【0047】
発泡性樹脂シートの原料となる合成樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアセタル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンナフタレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。また、発泡性樹脂シートの原料となる合成ゴムとしては、例えば、スチレンブタジエンゴム、ポリクロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム等が挙げられる。
【0048】
図6は、多孔質体を含む多層構造の絶縁シート31の一例を示す模式断面図である。図6に示す絶縁シート31は、中間層31aと、中間層31aの一方の面に設けられる第1表面層31bと、中間層31aの他方の面に設けられる第2表面層31cと、を有する3層構造となっている。図6に示す絶縁シート31では3層構造としているが、本実施形態における多層構造の絶縁シートは2層構造でも4層以上の構造でもよい。
【0049】
図6に示す絶縁シート31において、中間層31a、第1表面層31b及び第2表面層31cのうちの少なくとも1つの層が、多孔質体であればよいが、電極体と外装ケースとの絶縁等の点から、第1表面層31b及び第2表面層31cのうちの少なくとも一方を非孔質体とすることが好ましい。
【0050】
また、本実施形態の絶縁シートは、内部の空隙率より表層の空隙率を低くすることが好ましく、図6に示す絶縁シート31によれば、中間層31aを多孔質体とし、第1表面層31b及び第2表面層31cを非孔質体とすることが好ましい。この構成を取ることで、より効果的に組立性を確保しつつ空隙率を上げることができる。
【0051】
絶縁シート31の厚みは、剛性を確保する点で、例えば100μm~300μmの範囲とすることが好ましく、100μm~150μmの範囲とすることがより好ましい。
【0052】
なお、上記実施形態の角形蓄電装置では、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池に適用する例について説明したが、実施形態の角形蓄電装置は、非水電解質二次電池に限定されるものではなく、例えば、ニッケル水素二次電池等の水系二次電池や、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ等でもよい。また、上記実施形態では、蓄電装置の電極体が積層型である場合を説明したが、蓄電装置の電極体はこれに限定するものではない。例えば、電極体は、長尺状の正極板と長尺状の負極板とを長尺状のセパレータを介して積層した状態で筒状に巻回し、得られた巻回電極体を側面から押し潰して扁平形状に成形して構成されるものでもよい。電極体がこのような巻回型である場合でも、本開示の構成を適用できる。
【符号の説明】
【0053】
10 角形蓄電装置、11 電極体、12 正極リード、13 負極リード、15,16 側端面、30 絶縁ホルダ、31 絶縁シート、31a 中間層、31b 第1表面層、31c 第2表面層、33 ホルダ開口部、35 切欠、36 底面部、37~40側面部、60 外装ケース、61 開口部、62 底板部、64,65 短側壁、66,67 曲面、80 封口板、81 正極端子、82 負極端子、83,84 集電部材、85 圧力調整弁。
図1
図2
図3
図4
図5
図6