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特許7391038Treg細胞の抑制特性を増強するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】Treg細胞の抑制特性を増強するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/17 20150101AFI20231127BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20231127BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231127BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231127BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20231127BHJP
   C12N 15/867 20060101ALN20231127BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20231127BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20231127BHJP
【FI】
A61K35/17
A61P37/06
A61P25/00
C12N5/10 ZNA
C12N5/0783
C12N15/867 Z
C12N15/62 Z
C12N15/12
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2020556883
(86)(22)【出願日】2019-04-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 GB2019051098
(87)【国際公開番号】W WO2019202323
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-03-23
(31)【優先権主張番号】1806331.3
(32)【優先日】2018-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1806330.5
(32)【優先日】2018-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】505367464
【氏名又は名称】ユーシーエル ビジネス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スタウス,ハンス
(72)【発明者】
【氏名】マクガバン,ジェニー エル.
【審査官】菅原 洋平
(56)【参考文献】
【文献】Molecular Medicine Reports,2018年02月,Vol.17,p.5860-5868
【文献】IMMUNOLOGICAL JOURNAL,2015年,Vol.31, No.11,p.951-953
【文献】Frontiers in Immunology,2017年,Vol. 8,Article 1517, p.1-6
【文献】Proceedings of the National Academy of Sciences,2009年,Vol. 106, No. 45,p.19078-19083
【文献】Journal of Neuroinflammation,2012年,Vol. 9, No. 112,p.1-12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
A61K
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
疫応答を抑制する能力増強された、遺伝子操作された制御性T細胞(Treg)を含む医薬組成物であって、
前記免疫応答を抑制する能力が増強された、遺伝子操作されたTregは、
(i) 細胞集団からCD4 + CD25 + CD127 -/low CD45RA + Tregを単離する工程、及び、
(ii) 単離された前記CD4 + CD25 + CD127 -/low CD45RA + Tregに、FOXP3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを導入して、Tregが免疫応答を抑制する能力を増強する工程、
を含むプロセスにより得られたものである、前記医薬組成物
【請求項2】
以下(i)あるいは(ii)である、すなわち
(i)前記FOXP3ポリペプチドが、配列番号3もしくは4と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むか、あるいは
(ii)前記FOXP3ポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチドが、配列番号1もしくは2と少なくとも90%同一であるポリヌクレオチド配列を含む、
請求項1記載の医薬組成物
【請求項3】
前記のFOXP3をコードするポリヌクレオチドが、発現ベクターの連続した部分である、請求項1または2記載の医薬組成物
【請求項4】
外因性T細胞受容体(TCR)をコードするポリヌクレオチド、またはキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドを、前記Tregに導入することをさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項5】
前記のFOXP3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および前記外因性TCRまたは前記CARをコードする前記ポリヌクレオチドが、単一発現ベクターにより提供される、請求項4記載の医薬組成物
【請求項6】
前記ベクターが、5’ FOXP3-TCR/CAR 3’の向きを有する核酸を含み、該FOXP3-をコードするポリヌクレオチド及びTCR/CAR-をコードするポリヌクレオチドは、同じmRNA転写産物から該FOXP3、及び、該TCR若しくはCARの両方の発現を可能とする核酸配列により互いに分離されている、請求項5記載の医薬組成物
【請求項7】
前記の核酸が5’ FOXP3-X-TCR/CAR 3’の向きを有し、X内部自己切断配列である、請求項6に記載の医薬組成物
【請求項8】
前記のFOXP3をコードするポリヌクレオチドをウイルスによる形質導入によって単離Tregに導入する、請求項1~7のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項9】
記のFOXP3をコードするポリヌクレオチドをレトロウイルスによる形質導入によって単離Tregに導入する、請求項8に記載の医薬組成物
【請求項10】
前記細胞集団が、末梢血単核細胞(PBMC)を含むかまたはPMBCからなる、請求項1~9のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項11】
前記Tregを単離することが、
CD4T細胞を単離すること、および
該CD4T細胞から前記CD4 + CD25 + CD127 -/low CD45RA + Tregを単離すること
を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項12】
前記CD4 + CD25 + CD127 -/low CD45RA + Tregの前記単離が、免疫磁気ビーズまたは蛍光活性化細胞選別(FACS)を利用した選択を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項13】
疾患の予防および/または治療に使用するための、請求項1~12のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項14】
病的免疫応答を抑制することによる、病的免疫応答を伴う疾患の予防及び/又は治療に使用するための、請求項1~13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記疾患が自己免疫疾患である、請求項13又は14に記載の医薬組成物
【請求項16】
記疾患が多発性硬化症である、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記疾患が移植片拒絶反応または移植片対宿主病である請求項13又は14に記載の医薬組成物
【請求項18】
制御性T細胞(Treg)が免疫応答を抑制する能力を増強するための方法であって前記方法は、Tregの免疫抑制活性を増強するために、FOXP3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをTregに導入することを含み、ここで前記Tregは単離されたCD4 + CD25 + CD127 -/low CD45RA + Tregである、前記方法
【請求項19】
以下(i)あるいは(ii)である、すなわち
(i)前記FOXP3ポリペプチドが、配列番号3もしくは4と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むか、あるいは
(ii)前記FOXP3ポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチドが、配列番号1もしくは2と少なくとも90%同一であるポリヌクレオチド配列を含む、
請求項18に記載の方法
【請求項20】
前記のFOXP3をコードするポリヌクレオチドが、発現ベクターの連続した部分である、請求項18または19に記載の方法
【請求項21】
前記方法が、外因性T細胞受容体(TCR)をコードするポリヌクレオチド、またはキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドを、前記Tregに導入することをさらに含む、請求項18~20いずれか1項に記載の方法
【請求項22】
前記のFOXP3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および前記外因性TCRまたは前記CARをコードする前記ポリヌクレオチドが、単一発現ベクターにより提供される、請求項21に記載の方法
【請求項23】
前記ベクターが、5’ FOXP3-TCR/CAR 3’の向きを有する核酸を含み、該FOXP3-をコードするポリヌクレオチド及びTCR/CAR-をコードするポリヌクレオチドは、同じmRNA転写産物から該FOXP3、及び、該TCR若しくはCARの両方の発現を可能とする核酸配列により互いに分離されている、請求項22に記載の方法
【請求項24】
前記の核酸が5’ FOXP3-X-TCR/CAR 3’の向きを有し、X内部自己切断配列である、請求項23に記載の方法
【請求項25】
前記のFOXP3をコードするポリヌクレオチドをウイルスによる形質導入によって単離Tregに導入する、請求項18~24のいずれか1項に記載の方法
【請求項26】
前記のFOXP3をコードするポリヌクレオチドをレトロウイルスによる形質導入によって単離Tregに導入する、請求項25に記載の方法
【請求項27】
前記CD4 + CD25 + CD127 -/low CD45RA + Tregを細胞集団から単離する、請求項18~26のいずれか一項に記載の方法
【請求項28】
前記細胞集団が、末梢血単核細胞(PBMC)を含むかまたはPMBCからなる、請求項27に記載の方法
【請求項29】
前記Tregを単離することが、
CD4T細胞を単離すること、および
該CD4T細胞から前記CD4 + CD25 + CD127 -/low CD45RA + Tregを単離すること
を含む、請求項27または28に記載の方法
【請求項30】
前記CD4 + CD25 + CD127 -/low CD45RA + Tregの前記単離が、免疫磁気ビーズまたは蛍光活性化細胞選別(FACS)を利用した選択を含む、請求項27~29のいずれか1項に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御性T細胞(Treg)が免疫応答を抑制する能力を増強するための方法に関する。特に、本発明は、TregにおけるFOXP3発現を増大させる方法に関する。本発明はさらに、本発明の方法により提供される遺伝子操作Treg、ならびにかかる遺伝子操作Tregの方法および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
制御性T細胞(Treg)は、免疫系の活動をモジュレートするT細胞の一種である。一般に、Tregは免疫抑制性であり、刺激に対する免疫応答をダウンレギュレートする。特に、Tregは通常のT細胞(その一部の種類は免疫応答に直接関与する(例えば、細胞傷害性T細胞))の誘導および増殖を抑制する。Tregの抑制効果は、特定抗原中に見出されるエピトープと適合するペプチドを認識する組換えT細胞受容体(TCR)構築物の発現により、当該特定抗原に向けることができる。同様に、Tregの抑制効果は、標的細胞の表面に発現される抗原を認識するキメラ抗原受容体(CAR)の発現により、特定の標的に向けることができる。通常のT細胞は、該細胞にFOXP3を発現させることにより、ex vivoで調節性の表現型に分化させることができる。
【0003】
自己免疫性および炎症性の中枢神経系(CNS)疾患では、免疫系は自己抗原を攻撃する。例えば、若年成人に最もよくみられる神経障害である多発性硬化症(MS)では、免疫系は中枢神経系のニューロンのミエリン鞘を攻撃する。
【0004】
自己免疫性および炎症性CNS疾患の現在の治療法は、一般に、免疫系を抑制する。例えば、ある治療には、細胞増殖抑制剤および免疫抑制剤の投与と併用した骨髄の移植が含まれる。自家造血幹細胞移植は一部の対象に対して持続する有益な効果を示しうるが、その手法は相当な毒性およびリスクを伴う強力な骨髄破壊的前処置を必要とする。
【0005】
幾つかの疾患修飾治療(DMT)は臨床的再発の頻度を低減することが示されているが、大抵の患者は現行の治療スケジュールの下では臨床的に悪化し続ける。DMTも幹細胞移植も、自己免疫性および炎症性CNS疾患の免疫病理のCNS特異的な抑制を仲介することはできない。
【0006】
現在のところ、自己免疫性および炎症性CNS疾患の有効な治療法は存在しない。治療は、通常は免疫系の全般的な抑制によりその症候を軽減することだけに重点を置いている。CNS疾患の発症および進行に関連する局所免疫応答を特異的に標的とする療法が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、驚いたことに、制御性T細胞(Treg)(内因性FOXP3を既に発現している)における外因性FOXP3発現がその調節機能を増強することを見出した。
【0008】
従って、本発明は、制御性T細胞(Treg)が免疫応答を抑制する能力を増強するための方法を提供する。
【0009】
本発明のTregは、通常のT細胞から発生した誘導性Treg、または、生来的なTregである。例えば、本発明のTregは、in vivoで通常のT細胞から発生した誘導性Treg、または、生来的なTregである。適切なTreg細胞としては、胸腺由来の生来的なTreg(nTreg)細胞、および末梢で生成する誘導性Treg(iTreg)細胞が挙げられる。言い換えると、本発明のTregは内因性FOXP3を発現する。驚いたことに、本発明者らは、内因性FOXP3を既に発現しているTregにおける(例えば、外因性FOXP3の導入による)FOXP3発現の増大は、内因性FOXP3を発現しない通常のT細胞において外因性FOXP3を発現させることによりもたらされる調節機能よりも大きくTregの調節機能を増強することを見出した。
【0010】
本発明者らはさらに、内因性FOXP3を既に発現しているTregにおけるFOXP3発現の増大は、対象への投与後のin vivoでのTreg機能プロファイルの保持の改善を可能にすることを見出した。例えば、外因性FOXP3を発現しない生来的なTregは、対象への投与後にそのTregプロファイルを喪失する場合があり、例えば、外因性FOXPを発現しない生来的なTregは、対象への投与に続く期間の後に、FOXP3発現のレベルが低下し、炎症促進性のエフェクターサイトカインを産生する能力を持つ場合があることが見出された。本発明により提供されるTregは、対象への投与に続く期間の後に、FOXP3発現を保持し、かつ炎症促進性のエフェクターサイトカインを産生する能力の低下を示しうる。
【0011】
好適な実施形態では、本発明のTregは生来的なTregである。
【0012】
ある態様では、本発明は、制御性T細胞(Treg)の第1集団を提供すること、およびこのTregの第1集団におけるFOXP3発現を増大させることによりTregの第2集団を生成することを含む、Tregの集団を生成するための方法を提供する。
【0013】
本発明は、TregにおけるFOXP3発現を増大させることを含む、該Tregが免疫応答を抑制する能力を増強する方法を提供する。
【0014】
本発明の幾つかの実施形態では、FOXP3発現を、FOXP3タンパク質をコードするポリヌクレオチドを前記Tregに導入することにより増大させる。
【0015】
本発明の幾つかの実施形態では、前記の制御性T細胞(Treg)が免疫応答を抑制する能力を増強するための前記方法は、以下(a)および(b)、すなわち
(a)細胞集団からTregを単離すること、および
(b)TregにおけるFOXP3発現を増大させること
を含む。
【0016】
適宜、前記TregはTregの集団(すなわち、複数のTreg)を指す場合がある。
【0017】
また本発明は、本発明の方法により取得可能であるかまたは取得する、遺伝子操作Tregも提供する。
【0018】
また本発明は、非遺伝子操作Tregよりも高いFOXP3発現を示す遺伝子操作Tregも提供する。
【0019】
幾つかの実施形態では、前記遺伝子操作Tregは、FOXP3タンパク質をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。
【0020】
また本発明は、本発明の遺伝子操作Tregを含む医薬組成物も提供する。
【0021】
また本発明は、疾患の予防および/または治療に使用するための、本発明の遺伝子操作Tregまたは本発明の医薬組成物も提供する。
【0022】
また本発明は、薬剤の製造における本発明の遺伝子操作Tregの使用も提供する。
【0023】
また本発明は、対象に本発明の遺伝子操作Tregまたは組成物を投与することを含む、疾患の予防および/または治療のための方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、ペプチド使用または不使用の、TCR構築物を形質導入したTconv細胞の増殖(「*」で示す)、ならびに異なるTreg:Tconv比の偽(mock)形質導入Treg(白色バー)、TCR構築物を形質導入したTreg(黒色バー)またはTCR構築物およびFOXP3を形質導入したTreg(灰色バー)の存在下での同一細胞の増殖を示す図である。
図2図2は、ペプチド使用または不使用の、TCR構築物を形質導入したTconv細胞のIL-2産生(「*」で示す)、ならびに異なるTreg:Tconv比の偽形質導入Treg(白色バー)、TCR構築物を形質導入したTreg(黒色バー)またはTCR構築物およびFOXP3を形質導入したTreg(灰色バー)の存在下での同一細胞のIL-2産生を示す図である。
図3図3は、ペプチド使用または不使用の、TCR構築物を形質導入したTconv細胞(図1とは異なるドナーから得たもの)の増殖(「*」で示す)、ならびに異なるTreg:Tconv比の偽形質導入Treg(白色バー)、TCR構築物を形質導入したTreg(黒色バー)またはTCR構築物およびFOXP3を形質導入したTreg(灰色バー)の存在下での同一細胞の増殖を示す図である。
図4図4は、ペプチド使用または不使用のTCR構築物を形質導入したTconv細胞(図2とは異なるドナーから得たもの)のIL-2産生(「*」で示す)、ならびに異なるTreg:Tconv比の偽形質導入Treg(白色バー)、TCR構築物を形質導入したTreg(黒色バー)またはTCR構築物およびFOXP3を形質導入したTreg(灰色バー)の存在下での同一細胞の増殖を示す図である。
図5図5は、形質導入後7~10日目にフローサイトメトリーにより解析した、偽形質導入TregまたはTCRもしくはTCR+FOXP3を形質導入したTregにおけるTregマーカー(FOXP3、CD25およびCTLA-4)の平均蛍光強度(MFI)を示す図である。点は個別の実験を表している。1-way ANOVAを統計解析のために使用した(p<0.05、p<0.005**)。
図6図6は、形質導入したTregにおけるFOXP3、CD25およびCTLA-4のMFIを示す図である。各線は、TCRまたはTCR+FOXP3を形質導入した同一Treg上のマーカーのMFIを示す単一実験を表している。
図7図7は、ペプチド使用または不使用の、TCR構築物を導入したTconv細胞(図1および3とは異なるドナーから得たもの)の増殖、ならびに異なるTreg:Tconv比の偽形質導入Treg(白色バー)、TCR構築物を導入したTreg(黒色バー)、TCR構築物およびFOXP3を導入したTreg(灰色バー)またはTCR構築物およびFOXP3を導入したTconv細胞、すなわち誘導性Treg(赤色バー、各データセットの右側のバー)の存在下での同一細胞の増殖を示す図である。
図8図8は、ペプチド使用または不使用の、TCR構築物を形質導入したTconv細胞(図7と同一のドナーから得たもの)によるIL-2産生、ならびに異なるTreg:Tconv比の偽形質導入Treg(白色バー)、TCR構築物を形質導入したTreg(黒色バー)、TCR構築物およびFOXP3を形質導入したTreg(灰色バー)またはTCR構築物およびFOXP3を形質導入したTconv、すなわち誘導性Treg(赤色バー、各データセットの右側のバー)の存在下の同一細胞によるIL-2産生のレベルを示す図である。
図9-1】図9は、TCRを形質導入した制御性T細胞は放射線照射した宿主内に生着できるが、TCRFOXP3細胞の蓄積を防止するためには外因性FOXP3発現を必要とすることを示す図である。Thy1.1CD4CD25Tregは、ビーズ選別によりHLA-DRB0401トランスジェニックマウスのリンパ節および脾細胞から単離した。TregにTCR、TCR+マウスFOXP3を形質導入するか、またはTregをウイルス不含上清(偽)と共に培養した。形質導入の1日後に、TCRまたはTCR+FOXP3形質導入細胞を、4Gy照射による条件付けを行ったHLA-DRB0401トランスジェニック宿主に注入した。7週後に、フローサイトメトリーを利用することにより、形質導入されたTregの生着を測定した。A.形質導入効率を、形質導入の1日後にヒト可変2.1およびマウスFoxp3の発現を通して測定した。
図9-2】図9は、TCRを形質導入した制御性T細胞は放射線照射した宿主内に生着できるが、TCRFOXP3細胞の蓄積を防止するためには外因性FOXP3発現を必要とすることを示す図である。Thy1.1CD4CD25Tregは、ビーズ選別によりHLA-DRB0401トランスジェニックマウスのリンパ節および脾細胞から単離した。TregにTCR、TCR+マウスFOXP3を形質導入するか、またはTregをウイルス不含上清(偽)と共に培養した。形質導入の1日後に、TCRまたはTCR+FOXP3形質導入細胞を、4Gy照射による条件付けを行ったHLA-DRB0401トランスジェニック宿主に注入した。7週後に、フローサイトメトリーを利用することにより、形質導入されたTregの生着を測定した。B.TCRまたはTCR+FOXP3を形質導入したTregを投与したマウスから得た脾細胞をThy1.1で染色することにより、移入細胞(上部パネル)ならびにFOXP3およびTCR(下部パネル)を同定した。
図9-3】図9は、TCRを形質導入した制御性T細胞は放射線照射した宿主内に生着できるが、TCRFOXP3細胞の蓄積を防止するためには外因性FOXP3発現を必要とすることを示す図である。Thy1.1CD4CD25Tregは、ビーズ選別によりHLA-DRB0401トランスジェニックマウスのリンパ節および脾細胞から単離した。TregにTCR、TCR+マウスFOXP3を形質導入するか、またはTregをウイルス不含上清(偽)と共に培養した。形質導入の1日後に、TCRまたはTCR+FOXP3形質導入細胞を、4Gy照射による条件付けを行ったHLA-DRB0401トランスジェニック宿主に注入した。7週後に、フローサイトメトリーを利用することにより、形質導入されたTregの生着を測定した。C.TCRまたはTCR+FOXP3を形質導入したTregに関する、注入当日に対する形質導入効率の倍変化(左パネル)および形質導入細胞の絶対数の倍変化(右パネル)を示した累積データ(n=3)。エラーバーは平均値の標準誤差を示している。独立t検定による統計解析。D.移入7週間後の形質導入細胞内のFOXP3の典型的な発現。グラフは、7週目における形質導入集団内のFOXP3細胞の割合の累積値(左)、および注入当日に対するFOXP3細胞の倍変化を示している(n=3)。エラーバーは平均値の標準誤差を示している。p=>0.05、**p=>0.01は独立t検定により測定。
図10A図10は、外因性FOXP3を発現するTregはin vivoで7週間後もTregの機能性を保持するが、外因性FOXP3を発現しないTregはエフェクターサイトカインを産生する能力を獲得することを示す図である。Aでは、脾細胞を、無関係なペプチドまたは10uMのMBPをパルスしたCD86HLA-DR4CHO細胞と共に4時間培養した。IL-2およびIFNgの産生はフローサイトメトリーにより測定した。FACSプロットは、TCRのみを発現するTregを含有するCD45.1細胞(上部パネル)、およびTCR+FOXP3を発現するTregを含有するThy1.1細胞を示している。
図10B図10は、外因性FOXP3を発現するTregはin vivoで7週間後もTregの機能性を保持するが、外因性FOXP3を発現しないTregはエフェクターサイトカインを産生する能力を獲得することを示す図である。Bのグラフは、TCR発現(濃灰色)およびTCR+FOXP3発現(淡灰色)Tregによる累積的IL-2およびIFNg産生を示している。エラーバーは平均値の標準偏差を示している(n=3)。
図11図11は、(A)TCRαおよびβ鎖ならびに(B)FOXP3+TCRαおよびβ鎖をコードする例示的レトロウイルスベクターの模式図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、制御性T細胞(Treg)におけるFOXP3発現を増大させることを含む、該Tregが免疫応答を抑制する能力を増強するための方法を提供する。
【0026】
制御性T細胞
「制御性T細胞」(Treg)という用語は、マーカーCD4、CD25およびFOXP3を発現する(CD4CD25FOXP3)T細胞を意味する。Tregは、細胞表面マーカーCD4およびCD25を使用し、表面タンパク質CD127の低レベル発現の非存在下で、またはこれと組み合わせて同定してもよい(CD4CD25CD127またはCD4CD25CD127low)。Tregは、細胞表面に高レベルのCTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連分子-4)またはGITR(グルココルチコイド誘導性TNF受容体)もまた発現する場合がある。通常のT細胞とは異なり、TregはIL-2を産生せず、またそれ故に、ベースラインではアネルギー性である。
【0027】
「生来的なTreg(natural Treg)」という用語は、胸腺由来のTregを意味する。生来的なTregはCD4+CD25+FOXP3+ヘリオス+ニューロピリン1+である。「生来的なTreg」という用語は、胸腺由来のTregを、胸腺外の通常のT細胞から発生した「誘導性Treg(induced Treg)」と区別するものである。誘導性Tregと比較して、生来的なTregはPD-1(プログラム細胞死-1、pdcd1)、ニューロピリン1(Nrp1)、ヘリオス(Ikzf2)、およびCD73のより高い発現を示す。生来的なTregは、個々にヘリオスタンパク質またはニューロピリン1(Nrp1)の発現に基づいて誘導性Tregと区別してもよい。
【0028】
本明細書中で使用する場合、「誘導性制御性T細胞」(iTreg)という用語は、胸腺外の成熟したCD4の通常のT細胞から発生した、CD4CD25FOXP3ヘリオスニューロピリン1T細胞を意味する。例えば、iTregは、IL-2およびTGF-βの存在下、CD4CD25FOXP3細胞からin vitroで誘導することができる。
【0029】
適宜、前記Tregは、その細胞の内因性FoxP3遺伝子からFOXP3を発現させる。
【0030】
適宜、前記TregはCD4CD25FOXP3Tregであってもよい。
【0031】
適宜、前記TregはCD4CD25CD127Tregであってもよい。
【0032】
適宜、前記TregはCD4CD25CD127lowTregであってもよい。
【0033】
適宜、前記TregはCD4CD25CD127CD45RATregであってもよい。
【0034】
適宜、前記TregはCD4CD25CD127lowCD45RATregであってもよい。
【0035】
適宜、前記TregはCD4CD25FOXP3CD127Tregであってもよい。
【0036】
適宜、前記TregはCD4CD25FOXP3CD127lowTregであってもよい。
【0037】
適宜、前記TregはCD4CD25FOXP3ヘリオスTregである。
【0038】
適宜、前記TregはCD4CD25FOXP3ニューロピリン1Tregである。
【0039】
適宜、前記TregはCD4CD25FOXP3ヘリオスニューロピリン1Tregである。
【0040】
適宜、前記TregはヒトTregである。適宜、前記TregはヒトTregであり、かつ前記FOXP3はヒトFOXP3である。
【0041】
「Tconv細胞」という用語は、通常のT細胞を意味し、TregではないT細胞を指す。
【0042】
ある態様では、本発明のTregは、幹細胞に由来するものであってもよい。特に、本発明のTregは、in vitroで幹細胞から誘導したものであってもよい。
【0043】
別の態様では、前記細胞は前駆細胞である。
【0044】
本明細書中で使用する場合、「幹細胞」という用語は、同一タイプのより多くの幹細胞を無限に生み出すことができる未分化細胞を意味し、また該細胞から、他の特殊な細胞が分化により生じる場合がある。幹細胞は多能性である。幹細胞は、例えば、胚性幹細胞または成体幹細胞であってもよい。
【0045】
本明細書中で使用する場合、「前駆細胞」という用語は、1つ以上のタイプの細胞を形成するために分化できるが、in vitroでは自己複製に限界がある細胞を意味する。
【0046】
適宜、前記細胞は、TregなどのT細胞に分化させることができる。
【0047】
適宜、前記細胞は、FOXP3を発現するTregなどのT細胞に分化する能力を有する。
【0048】
適宜、前記細胞は胚性幹細胞(ESC)であってもよい。適宜、前記細胞は造血幹細胞または造血前駆細胞である。適宜、前記細胞は人工多能性幹細胞(iPSC)である。適宜、前記細胞を臍帯血から取得してもよい。適宜、前記細胞を成体末梢血から取得してもよい。
【0049】
幾つかの態様では、造血幹および前駆細胞(HSPC)を臍帯血から取得してもよい。臍帯血は、当分野で公知の技術に従って採取することができる(例えば、参照により本明細書中に組み込まれる、米国特許第7,147,626号および第7,131,958号)。
【0050】
ある態様では、HSPCを、多能性幹細胞供給源、例えば、人工多能性幹細胞(iPSC)および胚性幹細胞(ESC)から取得してもよい。
【0051】
本明細書中で使用する場合、「造血幹および前駆細胞」または「HSPC」という用語は、抗原マーカーCD34を発現する(CD34)細胞およびかかる細胞の集団を指す。特定の実施形態では、「HSPC」という用語は、抗原マーカーCD34の存在(CD34)および細胞系譜(lin)マーカーの不在により同定される細胞を指す。CD34および/またはLin()細胞を含む細胞の集団としては、造血幹細胞および造血前駆細胞が挙げられる。
【0052】
HSPCは、大腿骨、腰、肋骨、胸骨、および他の骨を含む成体の骨髄から取得または単離することができる。HSPCを含有する骨髄吸引物は、針および注射器を使用して腰から直接取得または単離することができる。HSPCの他の供給源としては、臍帯血、胎盤血、動員末梢血、ワルトン膠様質、胎盤、胎児血、胎児肝、または胎児脾が挙げられる。特定の実施形態では、治療用途に用いるために十分な量のHSPCを採取するには、対象における幹および前駆細胞の動員を必要とする場合がある。
【0053】
本明細書中で使用する場合、「人工多能性幹細胞」または「iPSC」という用語は、多能性状態に再プログラムされた非多能性細胞を指す。対象の非多能性細胞が多能性状態に再プログラムされると、該細胞をその後、所望の細胞型、例えば造血幹細胞または造血前駆細胞(それぞれ、HSCおよびHPC)にプログラムすることができる。
【0054】
本明細書中で使用する場合、「再プログラミング(reprogramming)」という用語は、細胞の能力をより未分化な状態へと向上させる方法を指す。
【0055】
本明細書中で使用する場合、「プログラミング」という用語は、細胞の能力を低下させるかまたは細胞をより分化した状態へと分化させる方法を指す。
【0056】
免疫応答
「免疫応答を抑制する能力を増強する」という表現は、免疫応答に対するTreg(またはかかるTregの集団)の抑制効果を、本発明の方法により改変されていない対応Treg(またはかかるTregの集団)の抑制効果と比較して、増大させることを意味する。
【0057】
「免疫応答」という用語は、病原体または自己抗原などの刺激に応答して免疫系により促進される多数の生理学的効果および細胞性効果を指す。かかる効果の具体例としては、Tconv細胞の増殖の増加およびサイトカインの分泌が挙げられる。任意のかかる効果を免疫応答の強度の指標として利用してもよい。Tconvによる、非改変Tregと比較して改変Tregの存在下で相対的に弱い免疫応答は、免疫応答を抑制するための該改変Tregの相対的増強を示すものである。例えば、サイトカイン分泌の相対的低下は、より弱い免疫応答の指標、ひいてはTregが免疫応答を抑制する能力の増強の指標となるだろう。
【0058】
免疫応答強度の指標を測定し、またそれによってTregの抑制能を測定するためのアッセイは、当分野で公知である。具体的には、抗原特異的Tconv細胞をTregと共培養し、対応する抗原のペプチドを該共培養物に添加することにより、該Tconv細胞からの応答を刺激してもよい。該Tconv細胞の増殖の程度および/または該ペプチドの添加に応答してそれらが分泌するサイトカインIL-2の量を、共培養したTregの抑制能の指標として利用してもよい。
【0059】
増大したFOXP3発現を示す本発明のTregと共培養した抗原特異的Tconv細胞は、増大したFOXP3発現を示さない対応Tregと共培養した同一Tconv細胞より、増殖が5、10、15、20、25、30、35または40%少ない場合がある。
【0060】
増大したFOXP3発現を示す本発明のTregと共培養した抗原特異的Tconv細胞は、増大したFOXP3発現を示さない対応Tregと共培養した対応Tconv細胞より、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、または少なくとも60%大きいエフェクターサイトカインの減少を示す場合がある。
【0061】
増大したFOXP3発現を示す本発明のTregと共培養した抗原特異的Tconv細胞は、増大したFOXP3発現を示さない対応Tregと共培養した対応Tconv細胞より、10%、20%、30%、40%、50%、60%またはより少ないエフェクターサイトカインを産生する場合がある。
【0062】
前記エフェクターサイトカインは、IL-2、IL-17、TNFα、GM-CSF、IFN-γ、IL-4、IL-5、IL-9、IL-10およびIL-13から選択してもよい。
【0063】
適宜、前記エフェクターサイトカインは、IL-2、IL-17、TNFα、GM-CSFおよびIFN-γから選択してもよい。
【0064】
増大したFOXP3発現を示す本発明のTregと共培養した抗原特異的Tconv細胞は、増大したFOXP3発現を示さない対応Tregの1/2、1/4、1/8、1/10または1/20の細胞数でIL-2産生の抑制を達成する場合がある。
【0065】
FOXP3
「FOXP3」はフォークヘッドボックスP3タンパク質の略称である。FOXP3はFOXタンパク質ファミリーの転写因子のメンバーであり、制御性T細胞の発生および機能における調節経路の主要制御因子として機能する。
【0066】
「FOXP3発現を増大させる」は、Treg(またはかかるTregの集団)におけるFOXP3のmRNAおよび/またはタンパク質のレベルを、本発明の方法により改変されていない対応Treg(またはかかるTregの集団)と比較して増大させることを意味する。例えば、本発明の方法により改変されたTreg(またはかかるTregの集団)におけるFOXP3のmRNAおよび/またはタンパク質のレベルは、本発明の方法により改変されていない対応Treg(またはかかるTregの集団)におけるレベルより、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも150倍まで大きく増大させることができる。
【0067】
適宜、本発明の方法により改変されたTreg(またはかかるTregの集団)におけるFOXP3のmRNAおよび/またはタンパク質のレベルは、本発明の方法により改変されていない対応Treg(またはかかるTregの集団)におけるレベルより、少なくとも1.5倍まで大きく増大させることができる。
【0068】
適宜、本発明の方法により改変されたTreg(またはかかるTregの集団)におけるFOXP3のmRNAおよび/またはタンパク質のレベルは、本発明の方法により改変されていない対応Treg(またはかかるTregの集団)におけるレベルより、少なくとも2倍まで大きく増大させることができる。
【0069】
適宜、本発明の方法により改変されたTreg(またはかかるTregの集団)におけるFOXP3のmRNAおよび/またはタンパク質のレベルは、本発明の方法により改変されていない対応Treg(またはかかるTregの集団)におけるレベルより、少なくとも5倍まで大きく増大させることができる。
【0070】
特定のmRNAおよびタンパク質のレベルを測定するための技術は、当分野で周知である。Tregなどの細胞の集団におけるmRNAレベルは、Affymetrix eBioscienceプライムフローRNAアッセイ、ノーザンブロット法、遺伝子発現の連続解析(SAGE)または定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)などの技術により測定してもよい。細胞の集団におけるタンパク質レベルは、フローサイトメトリー、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、液体クロマトグラフィー-質量分析法(LC/MS)、ウエスタンブロット法または酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)などの技術により測定してもよい。
【0071】
本発明の幾つかの実施形態では、FOXP3発現を、単離したTregにFOXP3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを導入することにより増大させる。
【0072】
「導入(する)」という用語は、トランスフェクション法と形質導入法の両方を含む、細胞に外来DNAを挿入するための方法を指す。トランスフェクションは、非ウイルス性の方法により細胞に核酸を導入するプロセスである。形質導入は、ウイルスベクターを介して細胞に外来DNAを導入するプロセスである。
【0073】
「FOXP3ポリペプチド」は、FOXP3活性を有するポリペプチド、すなわち、FOXP3標的DNAに結合しかつTregの発生および機能を調節する転写因子として機能することができるポリペプチドである。転写因子活性を測定するための技術は当分野で周知である。例えば、転写因子DNA結合活性をChIPにより測定してもよい。転写因子の転写調節活性は、該転写因子が調節する遺伝子の発現のレベルを定量化することにより測定してもよい。遺伝子発現は、該遺伝子から産生されるmRNAおよび/またはタンパク質のレベルを、ノーザンブロット法、SAGE、qPCR、HPLC、LC/MS、ウエスタンブロット法またはELISAなどの技術を利用して測定することにより定量化してもよい。FOXP3により調節される遺伝子としては、サイトカイン、例えば、IL-2、IL-4およびIFN-γが挙げられる(参照により本明細書中に組み込まれる、Sieglerら Annu. Rev. Immunol. 2006, 24: 209-26)。
【0074】
ポリヌクレオチドおよびポリペプチド
「ポリヌクレオチド」および「核酸」という用語は、互いに同義であることを意図する。ポリヌクレオチドは、任意の適切なタイプのヌクレオチド配列、例えば合成RNA/DNA配列、cDNA配列または部分的なゲノムDNA配列であってもよい。
【0075】
「ポリペプチド」という用語は「タンパク質」と同義であり、かつ典型的には隣接するアミノ酸のα-アミノおよびカルボキシル基間のペプチド結合により互いに連結された、一連の残基、典型的にはL-アミノ酸を意味する。
【0076】
多数の異なるポリヌクレオチドが、遺伝暗号の縮重の結果として同一ポリペプチドをコードしうる。当業者であれば、該ポリヌクレオチドによりコードされる該ポリペプチド配列に影響を与えないヌクレオチド置換を起こすことにより、該ポリペプチドが発現される任意の特定宿主生物のコドン使用頻度を反映することができる。
【0077】
前記ポリヌクレオチドは、DNAまたはRNAを含んでいてもよく、一本鎖または二本鎖であってもよく、さらには合成または修飾ヌクレオチドを含んでいてもよい。オリゴヌクレオチドへの幾つかの異なるタイプの修飾が当分野で公知である。これらの修飾としては、メチルホスホネートおよびホスホロチオエート骨格、分子の3'および/または5'末端へのアクリジンまたはポリリジン鎖の付加が挙げられる。ポリヌクレオチドは当分野の任意の方法により修飾されていてもよい。かかる修飾は、該ポリヌクレオチドのin vivo活性または寿命を向上させる場合がある。
【0078】
前記ポリヌクレオチドは単離形態または組換え形態であってもよい。前記ポリヌクレオチドをベクターに組み込んでもよく、また該ベクターを宿主細胞に組み込んでもよい。
【0079】
前記ポリヌクレオチドはコドンが最適化されていてもよい。異なる細胞は、その特定のコドンの使用頻度が異なる。このコドンバイアスは、細胞型における特定のtRNAの相対的存在量の偏りに相当する。配列中のコドンを、対応するtRNAの相対的存在量と一致するようそれらを調整するために変更することにより、発現を増大させることが可能である。適宜、前記ポリヌクレオチドは、疾患のマウスモデルにおける発現のためにコドンが最適化されていてもよい。適宜、前記ポリヌクレオチドは、ヒト対象における発現のためにコドンが最適化されていてもよい。
【0080】
HIVおよび他のレンチウイルスを含む多くのウイルスは多数のレアコドンを利用しており、これらをよく用いられる哺乳動物のコドンに対応するよう変化させることで、哺乳動物のプロデューサー細胞におけるパッケージング成分の発現の増大を達成することができる。哺乳動物細胞、ならびに様々な他の生物に関するコドン使用頻度表は、当分野で公知である。コドン最適化は、mRNA不安定モチーフおよび潜在性スプライス部位の除去も伴う場合がある。
【0081】
FOXP3ポリペプチド配列
適宜、前記FOXP3ポリペプチドは、ヒトFOXP3のポリペプチド配列、例えばUniProtKBアクセッション番号Q9BZS1、またはその機能性断片、すなわち
を含んでいてもよい。
【0082】
本発明の幾つかの実施形態では、前記FOXP3ポリペプチドは、配列番号3と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列またはその機能性断片を含む。適宜、前記FOXP3ポリペプチドは、配列番号3と少なくとも85、90、95、98または99%同一であるアミノ酸配列またはその機能性断片を含む。幾つかの実施形態では、前記FOXP3ポリペプチドは、配列番号3またはその機能性断片を含む。
【0083】
適宜、前記FOXP3ポリペプチドは、配列番号3のバリアント、例えば天然バリアントであってもよい。適宜、前記FOXP3ポリペプチドは配列番号3のアイソフォームである。例えば、前記FOXP3ポリペプチドは、配列番号3に関してアミノ酸位置72~106の欠失を含んでいてもよい。あるいは、前記FOXP3ポリペプチドは、配列番号3に関してアミノ酸位置246~272の欠失を含んでいてもよい。
【0084】
適宜、前記FOXP3ポリペプチドは、配列番号4またはその機能性断片、すなわち
を含む。
【0085】
適宜、前記FOXP3ポリペプチドは、配列番号4と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列またはその機能性断片を含む。適宜、前記ポリペプチドは、配列番号4と85、90、95、98または99%同一であるアミノ酸配列またはその機能性断片を含む。
【0086】
適宜、前記FOXP3ポリペプチドは、配列番号4のバリアント、例えば天然のバリアントであってもよい。適宜、前記FOXP3ポリペプチドは、配列番号4のアイソフォームまたはその機能性断片である。例えば、前記FOXP3ポリペプチドは、配列番号4に関してアミノ酸位置72~106の欠失を含んでいてもよい。あるいは、前記FOXP3ポリペプチドは、配列番号4に関してアミノ酸位置246~272の欠失を含んでいてもよい。
【0087】
FOXP3ポリヌクレオチド配列
適宜、前記FOXP3ポリペプチドは、配列番号1、すなわち
で示される前記ポリヌクレオチド配列によりコードされる。
【0088】
本発明の幾つかの実施形態では、前記FOXP3ポリペプチドまたはバリアントをコードする前記ポリヌクレオチドは、配列番号1と少なくとも80%同一であるポリヌクレオチド配列またはその機能性断片を含む。適宜、前記FOXP3ポリペプチドまたはバリアントをコードする前記ポリヌクレオチドは、配列番号1と少なくとも85、90、95、98または99%同一であるポリヌクレオチド配列またはその機能性断片を含む。本発明の幾つかの実施形態では、前記FOXP3ポリペプチドまたはバリアントをコードする前記ポリヌクレオチドは、配列番号1またはその機能性断片を含む。
【0089】
適宜、前記FOXP3ポリペプチドは、配列番号2、すなわち
で示される前記ポリヌクレオチド配列によりコードされる。
【0090】
本発明の幾つかの実施形態では、前記FOXP3ポリペプチドまたはバリアントをコードする前記ポリヌクレオチドは、配列番号2と少なくとも80%同一であるポリヌクレオチド配列またはその機能性断片を含む。適宜、前記FOXP3ポリペプチドまたはバリアントをコードする前記ポリヌクレオチドは、配列番号2と少なくとも85、90、95、98または99%同一であるポリヌクレオチド配列またはその機能性断片を含む。本発明の幾つかの実施形態では、前記FOXP3ポリペプチドまたはバリアントをコードする前記ポリヌクレオチドは、配列番号2またはその機能性断片を含む。
【0091】
適宜、前記FOXP3ポリペプチドまたはそのバリアントをコードする前記ポリヌクレオチドは、コドンが最適化されていてもよい。適宜、前記FOXP3ポリペプチドまたはそのバリアントをコードする前記ポリヌクレオチドは、ヒト細胞における発現のためにコドンが最適化されていてもよい。
【0092】
配列比較
配列比較は、目測で、またはより一般的には、容易に入手可能な配列比較プログラムを用いて実行することができる。これらの公的かつ商業的に入手可能なコンピュータプログラムにより、2つ以上の配列間の配列同一性を算出することができる。
【0093】
配列同一性を連続した複数配列にわたって算出してもよく、すなわち、1つの配列をもう1つの配列と整列させてから、1つの配列中の各アミノ酸を、もう1つの配列中の対応アミノ酸と、一度に1残基ずつ直接比較する。これは「ギャップなし」アラインメントと呼ばれている。典型的には、かかるギャップなしアラインメントは、比較的少数の残基(例えば50個未満の連続したアミノ酸)にわたってのみ実施する。
【0094】
これは非常に簡易かつ一貫した方法であるが、該方法は、例えば、他の点では同一の配列ペアにおいて、1つの挿入または欠失がそれに続くアミノ酸残基をアラインメントから除外することを考慮しておらず、そのためグローバルアラインメントを実施した場合に相同性%の大幅な低下をもたらす可能性がある。従って、大抵の配列比較方法は、全体的な相同性スコアに過度にペナルティを与えることなく考えうる挿入および欠失を考慮に入れた最適なアラインメントを生成するよう、設計される。これは、配列アラインメントに「ギャップ」を挿入して局所的相同性を最大化することを試みることにより、達成される。
【0095】
しかし、これらのより複雑な方法は、同数の同一アミノ酸に関して、できる限り少ないギャップ(2つの比較配列間のより高い関連性を反映する)を有する配列アラインメントが多くのギャップを有するものより高いスコアを獲得するように、該アラインメント中に生じる各ギャップに「ギャップペナルティ」を割り当てる。典型的には、ギャップの存在に比較的高いコストを課し、かつ該ギャップ中の各後続残基にはより小さいペナルティを課す「アフィンギャップコスト」を使用する。これは最もよく用いられるギャップスコアリングシステムである。高いギャップペナルティは当然、より少数のギャップを有する最適化されたアラインメントを生成する。大抵のアラインメントプログラムは、該ギャップペナルティを変更することができる。しかし、配列比較のためにかかるソフトウェアを利用する場合は、デフォルト値を使用することが好ましい。例えばGCG Wisconsin Bestfitパッケージ(下記参照)を利用する場合、アミノ酸配列の該デフォルトギャップペナルティは、1つのギャップに対しては-12、また各伸長に対しては-4である。
【0096】
従って、配列同一性の最大%の算出には、最初に、ギャップペナルティを考慮した最適なアラインメントの生成が必要となる。かかるアラインメントを実行するための適切なコンピュータプログラムは、GCG Wisconsin Bestfitパッケージ(参照により本明細書中に組み込まれる、University of Wisconsin, U.S.A;Devereux ら、1984, Nucleic Acids Research 12:387)である。配列比較を実施できる他のソフトウェアの具体例としては、限定するものではないが、BLASTパッケージ(Ausubelら, 1999 ibid - Chapter 18を参照されたい)、FASTA(参照により本明細書中に組み込まれる、Atschulら, 1990, J. Mol. Biol., 403-410)およびGENEWORKS比較ツール一式が挙げられる。BLASTとFASTAは共に、オフラインおよびオンライン検索に利用可能である(参照により本明細書中に組み込まれる、Ausubelら, 1999 ibid, pages 7-58 to 7-60)。しかし、GCG Bestfitプログラムを利用することが好ましい。
【0097】
適宜、前記配列同一性を配列の全体にわたって決定してもよい。適宜、前記配列同一性を、本明細書中に列挙した配列と比較する候補配列の全体にわたって決定してもよい。
【0098】
最終的な配列同一性は同一性の観点から測定できるが、アラインメントプロセスそれ自体は、一般的には、全か無かの対比較(all-or-nothing pair comparison)に基づくものではない。その代わり、化学的類似性または進化距離に基づいて各ペアワイズ比較にスコアを割り当てる、スケーリングした(scaled)類似性スコア行列を通常は使用する。慣用されるかかる行列の一例は、BLOSUM62行列(BLASTプログラム一式のためのデフォルト行列)である。GCG Wisconsinプログラムは一般に、パブリックデフォルト値、または提供されていればカスタムシンボル比較表のいずれかを使用する(さらなる詳細についてはユーザーマニュアルを参照されたい)。好ましくは、GCGパッケージにはパブリックデフォルト値を、または他のソフトウェアの場合にはデフォルト行列、例えばBLOSUM62を使用する。
【0099】
前記ソフトウェアにより最適なアラインメントが生成されれば、配列同一性%を算出することができる。前記ソフトウェアは、典型的にはこれを配列比較の一環として行い、数値結果を生成する。
【0100】
ベクター
本発明の幾つかの実施形態では、前記のFOXP3をコードするポリヌクレオチドは、発現ベクターの連続した部分である。
【0101】
「発現ベクター」という用語は、前記FOXP3ポリペプチドの発現を可能にする構築物を意味する。適宜、該発現ベクターはクローニングベクターである。
【0102】
適切なベクターとしては、限定するものではないが、ポリペプチドと複合体化した、または固相粒子上に固定された、プラスミド、ウイルスベクター、トランスポゾン、または核酸を挙げることができる。
【0103】
好ましくは、前記発現ベクターは、宿主細胞において高レベル発現を維持する能力を有する。
【0104】
前記発現ベクターはレトロウイルスベクターであってもよい。前記発現ベクターは、MP71ベクター骨格を基にしたものであってもよく、またはMP71ベクター骨格から誘導可能なものであってもよい。前記発現ベクターは、全長型または末端切断型のウッドチャック肝炎応答エレメント(WPRE)を欠いていてもよい。
【0105】
本発明の幾つかの実施形態では、前記ベクターはT細胞受容体(TCR)もコードする。
【0106】
TCRは、免疫応答の指示の一環として抗原提示細胞上で主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子に結合した抗原の断片に結合する細胞表面分子である。適宜、TCRは組換えタンパク質であってもよく、言い換えると、TCRは本発明の本Tregにより自然に発現されることのない外因性タンパク質であってもよい。
【0107】
本発明の幾つかの実施形態では、前記ベクターはキメラ抗原受容体(CAR)もコードする。
【0108】
CARは、免疫応答の指示の一環として他の細胞の表面に発現される抗原に結合する、遺伝子操作T細胞により発現される組換え細胞表面分子である。より具体的には、CARは、モノクローナル抗体(mAb)などの抗原結合体の特異性を、T細胞のエフェクター機能に移植するタンパク質である。その通常の形態は、T細胞生存および活性化シグナルを伝達する複合エンドドメイン(compound endodomain)に全てが連結されている抗原認識アミノ末端、スペーサー、膜貫通ドメインを有するI型膜貫通ドメインタンパク質の形態である。
【0109】
前記ベクターが、FOXP3をコードするポリヌクレオチドに加えてTCRまたはCARをコードするポリヌクレオチドを含む場合、前記ベクターは5’ FOXP3-TCR/CAR 3’の向き(配向)を有していてもよい。従って、前記のFOXP3をコードするポリヌクレオチドは、前記のCARまたはTCRをコードするポリヌクレオチドの5’側であってもよい。
【0110】
適宜、前記のFOXP3をコードするポリヌクレオチドは、FOXP3をコードする核酸配列とTCRまたはCARをコードする核酸配列の両方を同一mRNA転写産物から発現させることを可能にする核酸配列により、前記のTCRまたはCARをコードするポリヌクレオチドと分離されていてもよい。
【0111】
例えば、前記ポリヌクレオチドは、(i)FOXP3および(ii)TCRまたはCARをコードする核酸配列間に内部リボソーム侵入部位(IRES)を含んでいてもよい。IRESは、mRNA配列の中間での翻訳開始を可能にするヌクレオチド配列である。
【0112】
前記ポリヌクレオチドは、内部自己切断配列により連結された、(i)FOXP3および(ii)TCRまたはCARをコードする核酸配列を含んでいてもよい。
【0113】
適宜、前記ベクターは、以下の構造、すなわち5’ 強力プロモーター(例えばLTR)-FoxP3-2A-CAR/TCR-3’LTRを有していてもよい。この時、FOXP3発現は、最適な発現のための強力なLTRプロモーターにより直接駆動される。CAR/TCRの前に2A配列が存在し、そのためCAR/TCRの発現はLTRプロモーター活性と2A切断活性の両方に依存する。重要なことに、FOXP3が5’→3’方向でCAR/TCRに先行する配置は、CAR/TCR発現はFOXP3が発現された場合にのみ生じうること、およびFOXP3無しにCAR/TCRの発現は生じないことを保証する。これは、遺伝子操作Tregの本状況においては、該遺伝子操作Tregがエフェクター表現型を獲得するリスクを低減するため、および/または開始集団中に存在するTエフェクター細胞へのCARまたはTCRの導入に関連するリスクを低減するため、特に有利である。
【0114】
前記内部自己切断配列は、前記の(i)FOXP3および(ii)TCRまたはCARを含むポリペプチドが分離されることを可能にする、任意の配列でありうる。
【0115】
切断部位は、前記ポリペプチドが産生された場合に、前記ポリペプチドが外部の切断活性を一切必要とせずに個々のペプチドに直ちに切断されるような自己切断であってもよい。
【0116】
「切断」という用語は本明細書中で便宜上使用されるが、その切断部位は古典的切断以外のメカニズムによりペプチドを個々の物質に分離させる場合がある。例えば、口蹄疫ウイルス(FMDV)2A自己切断ペプチドの場合、様々なモデルが該「切断」活性、すなわち宿主細胞のプロテイナーゼによるタンパク質分解、自己タンパク質分解または翻訳作用を説明するために提案されている(参照により本明細書中に組み込まれる、Donnellyら(2001)J. Gen. Virol. 82:1027-1041)。かかる「切断」の正確なメカニズムは、その切断部位が、タンパク質をコードする核酸配列間に位置する場合に該タンパク質を別個の物質として発現させる限りは、本発明の目的上重要ではない。
【0117】
前記自己切断ペプチドは、アフトウイルスまたはカルジオウイルスから得た2A自己切断ペプチドであってもよい。
【0118】
バリアントは、類似性(すなわち、類似した化学的特性/機能を有するアミノ酸残基)の観点から考慮することが可能であり、好ましくはバリアントを配列同一性の観点から表現する。
【0119】
配列比較は、目測で、またはより一般的には、容易に入手可能な配列比較プログラムを用いて実行することができる。これらの公的かつ商業的に入手可能なコンピュータプログラムにより、2つ以上の配列間の配列同一性を算出することができる。
【0120】
適宜、本ベクターから発現される前記FOXP3ポリペプチドは、自己切断ペプチド、例えば2A自己切断ペプチドのN末端に位置していてもよい。かかるFOXP3-2Aポリペプチドは、配列番号5もしくは6に示す配列、または該配列と少なくとも80%同一である配列番号5もしくは6のバリアントを含んでいてもよい。適宜、該バリアントは、配列番号5または6と少なくとも85、90、95、98または99%同一であってもよい。
【0121】
配列番号5
配列番号6
【0122】
ウイルスによる形質導入
本発明の幾つかの実施形態では、前記のFOXP3をコードするポリヌクレオチドを、ウイルスによる形質導入によって単離Tregに導入する。
【0123】
ウイルス送達系としては、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、ヘルペスウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、バキュロウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0124】
幾つかの実施形態では、前記のFOXP3をコードするポリヌクレオチドを、レトロウイルスによる形質導入によって単離Tregに導入する。
【0125】
レトロウイルスは、溶菌性ウイルスのものとは異なる生活環を有するRNAウイルスである。この点に関して、レトロウイルスはDNA中間体を経て複製する感染性物質である。レトロウイルスが細胞に感染すると、そのゲノムは逆転写酵素という酵素によりDNA形態に変換される。このDNAコピーは、新たなRNAゲノム、および感染性ウイルス粒子の組み立てに必要なウイルスコードタンパク質を産生するための鋳型として働く。
【0126】
多くのレトロウイルス、例えば、マウス白血病ウイルス(MLV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、マウス乳癌ウイルス(MMTV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、藤浪肉腫ウイルス(FuSV)、モロニーマウス白血病ウイルス(Mo-MLV)、FBRマウス骨肉腫ウイルス(FBR MSV)、モロニーマウス肉腫ウイルス(Mo-MSV)、エーベルソンマウス白血病ウイルス(A-MLV)、トリ骨髄球腫症ウイルス-29(MC29)、およびトリ赤芽球症ウイルス(AEV)、ならびにレンチウイルスを含む全ての他のレトロウイルス科のものが存在する。
【0127】
レトロウイルスの詳細なリストは、Coffinら(参照により本明細書中に組み込まれる、“Retroviruses” 1997 Cold Spring Harbour Laboratory Press Eds:JM Coffin, SM Hughes, HE Varmus pp 758-763)中に見出すことができる。
【0128】
レンチウイルスもまたレトロウイルスファミリーに属するが、それらは分裂細胞と非分裂細胞の両方に感染することができる(参照により本明細書中に組み込まれる、Lewisら 1992 EMBO J. 3053-3058)。
【0129】
ヒト細胞の効率的な感染のために、ウイルス粒子を、両種指向性エンベロープまたはテナガザル白血病ウイルスエンベロープと共にパッケージングしてもよい。
【0130】
Tregの単離
幾つかの実施形態では、本発明による方法は、以下(a)および(b)、すなわち
(a)細胞集団からTregを単離すること、および
(b)該TregにおけるFOXP3発現を増大させること
を含む。
【0131】
「細胞集団からTregを単離する」という表現は、複数の異なるタイプの細胞の異種混合物からTregを分離させることを意味する。適切な細胞集団は、ヒト対象から得た試料からのものである。
【0132】
適宜、前記Tregは、Tregの集団として単離する。
【0133】
適宜、前記のTregの集団は、少なくとも70%のTreg、例えば、75%、85%、90%または95%のTregを含む。
【0134】
本発明の幾つかの実施形態では、前記細胞集団は、末梢血単核細胞(PBMC)を含むかまたはPMBCからなる。
【0135】
PBMCは、骨髄、肝臓、脾臓またはリンパ系に捕捉されるよりむしろ血液の循環プール中に見出される、円形の核を持つ任意の血液細胞である。PBMCは単球およびリンパ球(T細胞、B細胞およびNK細胞)からなる。全血からPBMCを単離するための技術は当分野で公知である。例えば、PBMCは、Ficoll(GE Healthcare)などの密度勾配媒体の添加とそれに続く遠心分離により、血液試料から分離させることができる。血液中の異なるタイプの細胞は、PBMCを含有する層を含む種々の層に分離する。
【0136】
本発明の幾つかの実施形態では、前記Tregの単離は、CD4T細胞を単離することを含む。幾つかの実施形態では、前記Tregの単離は、CD4T細胞を単離すること、およびその後に該CD4T細胞から前記Tregを単離することを含む。
【0137】
CD4(分化抗原群4(cluster of differentiation 4)は、様々なタイプのT細胞により発現されるT細胞受容体のコレセプターである。CD4細胞の単離は、Tregを含むT細胞を、初期細胞集団から分離させる。その後、このT細胞に富む集団から該Tregを単離してもよい。
【0138】
異種細胞集団から特定の細胞型を単離するための技術は当分野で公知である。具体例としては、免疫磁気ビーズおよび蛍光活性化細胞選別の利用が挙げられる。
【0139】
本発明の幾つかの実施形態では、前記のTregの集団の単離は、免疫磁気ビーズを利用することを含む。様々な企業(例えば、Miltenyi Biotec、Stem Cell Technologies、ThermoFisher Scientific)が特定タイプのT細胞の単離のための免疫磁気ビーズを含むキットを提供している(例えば、参照により本明細書中に組み込まれる、Fallarinoら (2003)Modulation of tryptophan catabolism by regulatory T cells. Nat. Immunol. 4: 1206-1212を参照されたい)。これらの単離キットは、CD8、CD25、CD49bおよびその他のものなどのT細胞表面タンパク質に対する、当分野で広範囲に利用可能な抗体を利用する。例えば、CD4細胞を、細胞集団を非CD4細胞のマーカー(例えばCD8)に対するビオチン結合抗体と共にインキュベートし、さらにこれらの細胞を抗ビオチン磁気ビーズを使用して除去することにより、最初に負の選択に供してもよい。その後、Tregを、抗CD25標識ビーズとのインキュベーションにより正の選択に供してもよい。
【0140】
本発明の幾つかの実施形態では、前記のTregの集団の単離は、蛍光活性化細胞選別(FACS)を含む。幾つかの実施形態では、前記TregをそのCD4CD25hiCD127表現型に従って選別する。
【0141】
生来的なTregを、ヘリオスタンパク質またはニューロピリン1の発現に基づいて誘導性Tregから選別してもよい。本発明の幾つかの実施形態では、該生来的なTregを、そのCD4CD25FOXP3ヘリオスニューロピリン1表現型に従って選別してもよい。
【0142】
FACSは、当分野で周知のフローサイトメトリーの一形態である。FACS中、細胞を液体中に懸濁し、様々な特性を解析する検出系を通過させる。細胞は、この方法を利用し、その特性に従って選別することができる。特に、FACSでは、分子を蛍光抗体を使用して標識し、特定分子の発現のレベルを示すその蛍光の程度に従って細胞を選別する(参照により本明細書中に組み込まれる、Adanら Flow cytometry: basic principles and applications Crit. Rev. Biotechnol. 2017 Mar;37(2):163-176を参照されたい)。
【0143】
遺伝子操作Treg
また本発明は、本発明の方法により産生される遺伝子操作Tregなどの、遺伝子操作Tregも提供する。
【0144】
「遺伝子操作Treg」という用語は、人的介入によりその遺伝子発現が変更されるように操作されたTregを意味する。
【0145】
また本発明は、非遺伝子操作Tregより高いFOXP3発現を示す遺伝子操作Tregも提供する。
【0146】
また本発明は、対応する非遺伝子操作Tregより高いFOXP3発現を示すTregも提供する。
【0147】
「高いFOXP3発現」は、遺伝子操作TregにおけるFOXP3のmRNAまたはタンパク質のレベルが、Tregがその遺伝子発現を変更するために人的介入により操作される前のレベルよりも高いことを意味する。
【0148】
「高いFOXP3発現」は、本明細書中に記載した通りに定義および測定しうる。
【0149】
適宜、本発明の方法により改変されたTreg(またはかかるTregの集団)におけるCD25のmRNAおよび/またはタンパク質のレベルは、本発明の方法により改変されていない対応Treg(またはかかるTregの集団)におけるレベルより少なくとも1.5倍まで大きく増大させることができる。
【0150】
適宜、本発明の方法により改変されたTreg(またはかかるTregの集団)におけるCD25のmRNAおよび/またはタンパク質のレベルは、本発明の方法により改変されていない対応Treg(またはかかるTregの集団)におけるレベルより少なくとも2倍まで大きく増大させることができる。
【0151】
適宜、本発明の方法により改変されたTreg(またはかかるTregの集団)におけるCD25のmRNAおよび/またはタンパク質のレベルは、本発明の方法により改変されていない対応Treg(またはかかるTregの集団)におけるレベルより少なくとも5倍まで大きく増大させることができる。
【0152】
適宜、本発明の方法により改変されたTreg(またはかかるTregの集団)におけるCTLA-4のmRNAおよび/またはタンパク質のレベルは、本発明の方法により改変されていない対応Treg(またはかかるTregの集団)におけるレベルより少なくとも1.5倍まで大きく増大させることができる。
【0153】
適宜、本発明の方法により改変されたTreg(またはかかるTregの集団)におけるCTLA-4のmRNAおよび/またはタンパク質のレベルは、本発明の方法により改変されていない対応Treg(またはかかるTregの集団)におけるレベルより少なくとも2倍まで大きく増大させることができる。
【0154】
適宜、本発明の方法により改変されたTreg(またはかかるTregの集団)におけるCTLA-4のmRNAおよび/またはタンパク質のレベルは、本発明の方法により改変されていない対応Treg(またはかかるTregの集団)におけるレベルより少なくとも5倍まで大きく増大させることができる。
【0155】
本発明の幾つかの実施形態では、前記遺伝子操作Tregは、FOXP3ポリペプチドをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。
【0156】
「外因性ポリヌクレオチド」は、前記Tregの外に由来するポリヌクレオチドである。該外因性ポリヌクレオチドは、発現ベクターの一部として前記Tregに導入してもよい。従って、該外因性ポリヌクレオチドは、プロモーターなどの発現ベクター要素と連続していてもよい。
【0157】
本発明の幾つかの実施形態では、前記FOXP3ポリペプチドは、配列番号3もしくは4と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列またはその機能性断片を含む。適宜、前記FOXP3ポリペプチドは、配列番号3もしくは4と少なくとも85、90、95、98または99%同一であるアミノ酸配列またはその機能性断片を含む。幾つかの実施形態では、前記FOXP3ポリペプチドは、配列番号3もしくは4またはその機能性断片を含む。
【0158】
本発明の幾つかの実施形態では、前記のFOXP3をコードする外因性ポリヌクレオチドは、配列番号1または2と少なくとも80%同一であるポリヌクレオチド配列を含む。本発明の幾つかの実施形態では、前記のFOXP3をコードするポリヌクレオチドは、配列番号1または2と同一である。
【0159】
本発明の幾つかの実施形態では、前記のFOXP3をコードする外因性ポリヌクレオチドは、ベクターの連続した部分である。
【0160】
本発明の幾つかの実施形態では、前記ベクターはT細胞受容体(TCR)もコードする。
【0161】
本発明の幾つかの実施形態では、前記ベクターは、配列番号5と少なくとも80%同一であるポリヌクレオチド配列を含む。本発明の幾つかの実施形態では、前記ベクターは、配列番号5と同一であるポリヌクレオチド配列を含む。
【0162】
組成物
また本発明は、本発明の遺伝子操作Tregを含む医薬組成物も提供する。
【0163】
かかる医薬組成物は、製薬上許容しうる担体、希釈剤、賦形剤またはアジュバントを含んでいてもよい。製薬上の担体、賦形剤または希釈剤の選択は、意図する投与経路および標準的な薬務に関して選択することができる。該医薬組成物は、担体、賦形剤もしくは希釈剤として(またはこれらに加えて)、任意の適切な結合剤(複数可)、滑沢剤(複数可)、懸濁化剤(複数可)、コーティング剤(複数可)、可溶化剤(複数可)および他の担体物質を含んでいてもよい。
【0164】
前記医薬組成物は、典型的には、製造および保管の条件下で無菌かつ安定であるべきである。非経口投与用の製剤としては、限定するものではないが、懸濁液剤、液剤、油性または水性媒体中の乳剤、ペースト、および埋込型の持続放出性または生分解性製剤が挙げられる。滅菌注射製剤は、無毒の非経口的に許容される希釈剤または溶媒を使用して調製してもよい。本発明の医薬組成物は、用いる投薬量および濃度では対象に毒性を示さない、製薬上許容しうる分散剤、湿潤剤、懸濁化剤、等張化剤、コーティング、抗菌および抗真菌剤、担体、賦形剤、塩、または安定化剤を含んでいてもよい。好ましくは、かかる組成物は、例えば非経口(例えば皮下、皮内、もしくは静脈内注射)または髄腔内投与のための、所与の投与方法および/または投与部位に適合する、疾患の治療に使用するための製薬上許容しうる担体または賦形剤をさらに含みうる。
【0165】
前記組成物は、現行医薬品適正製造基準(cGMP)を採用して製造してもよい。
【0166】
適宜、前記の遺伝子操作Tregを含む医薬組成物は、有機溶媒、例えば、限定するものではないが、酢酸メチル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメトキシエタン(DME)、およびジメチルアセトアミド(それらの混合物または組み合わせを含む)を含んでいてもよい。
【0167】
適宜、前記医薬組成物はエンドトキシンを含まない。
【0168】
疾患の予防および/または治療
また本発明は、疾患の予防および/または治療に使用するための、本発明の遺伝子操作Treg、または本発明の医薬組成物も提供する。
【0169】
また本発明は、疾患の予防および/または治療のための薬剤の製造における、本発明の遺伝子操作Tregの使用も提供する。
【0170】
また本発明は、対象に本発明の遺伝子操作Tregまたは組成物を投与することを含む、疾患の予防および/または治療の方法も提供する。
【0171】
好ましくは、前記の疾患の予防および/または治療の方法は、対象への本発明の医薬組成物の投与を含む。
【0172】
「治療する/治療/治療すること(処置する/処置/書中すること)」という用語は、既存の疾患または症状を有する対象に、該疾患に伴う少なくとも1つの症候を軽減、低減もしくは改善するため、および/または該疾患の進行を遅らせる、抑制する、もしくは阻止するために、本発明の遺伝子操作Tregまたは医薬組成物を投与することを指す。
【0173】
「予防(prevention)」/「予防すること」(または予防(prophylaxis))は、疾患の症候の発現を遅らせるかまたは予防することを指す。予防は、(疾患が発生しないような)絶対的なものであってもよいし、または一部の個体もしくは限られた期間のみ有効なものであってもよい。
【0174】
本発明の幾つかの実施形態では、本発明の方法の対象は、哺乳動物、好ましくはネコ、イヌ、ウマ、ロバ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシ、マウス、ラット、ウサギまたはモルモットである。好ましくは、該対象はヒトである。
【0175】
本発明の医薬組成物の投与は、活性成分を生体利用可能にする様々な経路のいずれかを利用して達成することができる。例えば、遺伝子操作Tregまたは医薬組成物を、静脈内に、髄腔内に、経口および非経口経路により、鼻腔内に、腹腔内に、皮下に、経皮的に、または筋肉内に投与することができる。
【0176】
適宜、本発明の遺伝子操作Tregまたは医薬組成物を静脈内に投与する。適宜、本発明の遺伝子操作Tregまたは医薬組成物を髄腔内に投与する。
【0177】
典型的には、医師が個々の対象に最も適した投薬量を決定し、また該投薬量は特定の対象の年齢、体重および応答によって変動する。該投薬量は、疾患の症候を低減および/または予防するのに十分であるような量である。
【0178】
当業者は、例えば、送達の経路(例えば経口対静脈内対皮下など)が所要の投薬量に影響を与える場合がある(逆も同様)ことを理解している。例えば、特定の部位内または位置内に特に高濃度の薬剤が望まれる場合、集中送達が好適であろう。所与の治療レジメンのために経路および/または投与スケジュールを最適化する際に考慮すべき他の要因としては、例えば、治療する疾患(例えば、種類または段階など)、対象の臨床状態(例えば年齢、全般的な健康状態など)、併用療法の存在または不在、および医療従事者に公知の他の要因を挙げることができる。
【0179】
前記投薬量は、前記疾患の症候を安定させるかまたは改善するのに十分であるような量である。
【0180】
また本発明は、細胞、例えば本発明によるT細胞を含む医薬組成物を対象に投与するステップを含む、疾患を治療および/または予防するための方法も提供する。
【0181】
適宜、前記の疾患の予防および/または治療の方法は、以下(i)~(iii)、すなわち
(i)対象からのTregの単離、
(ii)FOXP3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を該Tregに導入する(すなわち、該Tregを遺伝子操作する)こと、および
(iii)遺伝子操作したTregを該対象に投与すること
を含んでいてもよい。
【0182】
Tregは、血液試料を採取し、該血液試料から「Tregの単離」という表題で本明細書中に記載したものなどの、当分野で公知の技術を利用してTregを単離することにより、患者から単離してもよい。
【0183】
FOXP3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、「ウイルスによる形質導入」という表題で本明細書中に記載したものなどの、当分野で公知の技術を利用してTregに導入してもよい。
【0184】
適宜、前記遺伝子操作Tregを、前記対象への投与前にin vitroで増殖させてもよい。Tregは、TexMACX(登録商標)培地でそれらを培養することによりin vitroで増殖させてもよい。
【0185】
疾患
本発明の方法および使用により治療および/または予防される疾患は、病的免疫応答を伴う任意の疾患でありうる。
【0186】
前記疾患は、例えば、癌、感染症または自己免疫疾患であってもよい。
【0187】
本発明の幾つかの実施形態では、前記疾患は自己免疫疾患である。
【0188】
前記疾患は、ベーチェット病、サルコイドーシス、全身性エリテマトーデス、若年性特発性関節炎、強皮症、およびシェーグレン症候群などの全身性自己免疫および炎症性疾患の中枢神経系(CNS)の関与を示す場合がある。
【0189】
前記疾患は、MBPが抗原である、例えばMBPが自己抗原である、任意の疾患でありうる。
【0190】
適宜、前記疾患は、自己免疫性および炎症性の中枢神経系疾患(例えば、慢性神経変性症状)であってもよい。
【0191】
適宜、前記疾患は、多発性硬化症(MS)、アルツハイマー病、パーキンソン病、神経向性ウイルス感染、卒中、腫瘍随伴性障害および外傷性脳損傷などの慢性神経変性症状であってもよい。
【0192】
本発明の幾つかの実施形態では、前記疾患は多発性硬化症である。適宜、前記疾患は慢性進行性多発性硬化症である。適宜、前記疾患は再発/寛解型多発性硬化症である。
【0193】
適宜、前記疾患はHLA-DRB10401陽性対象に認められる。適宜、前記疾患は多発性硬化症であり、かつ該対象はHLA-DRB10401陽性である。適宜、前記疾患は慢性進行性多発性硬化症であり、かつ該対象はHLA-DRB10401陽性である。適宜、前記疾患は再発/寛解型多発性硬化症であり、かつ該対象はHLA-DRB10401陽性である。
【0194】
多発性硬化症
多発性硬化症(MS)は、欧州および米国の若年成人に最もよく見られる神経障害である。MSは脱髄疾患として特徴付けられており、これは神経接続を妨げて筋力低下、協調運動および発語の喪失ならびに視力障害を引き起こす、脳および/または脊髄の全体にわたり所々にミエリンの段階的な破壊が起こる中枢神経系の慢性変性疾患である。
【0195】
臨床的に特定されている症候群(clinically isolated syndrome)(CIS)、再発-寛解型MS(RRMS)、一次性進行型MS(PPMS)および二次性進行型MS(SPMS)を含む、MSの進行の幾つかのタイプまたはパターンが同定されている。一部の対象では、能力障害の増加または進行は非常に緩やかであり、他の対象ではそれがより急速に起こる可能性がある。しかし、一般的に、発作からの回復は次第に不完全なものとなり、症候は増加する傾向にあり、また能力障害は進行する。
【0196】
幾つかの疾患修飾治療(DMT)は臨床的再発の頻度を低減することが認められているが、大抵の対象は現行の治療スケジュール下では臨床的に悪化し続ける。自家造血幹細胞移植は対象にとって持続する有益な効果を有しうるが、その手法は相当な毒性を伴う強力な骨髄破壊的前処置を必要とする。DMTも幹細胞移植も、MSの免疫病理の抗原特異的な抑制を媒介することはできない。理論に束縛されることを望むものではないが、将来、本発明の遺伝子操作Tregの1回用量の投与が、全身性副作用なしにMS免疫病理の持続的抑制をもたらすかもしれない。これはMSを患う人々における疾患の進行に重要な影響を与えるだろう。
【0197】
適宜、本発明の遺伝子操作Tregまたは医薬組成物は、視力の低下または喪失、つまずきおよび不規則な歩行、不明瞭言語、尿意頻数および尿失禁、気分の変動および抑うつ、筋肉の痙攣および麻痺を含む、MSの症候の1つ以上を低減または改善しうる。
【0198】
本発明は、移植片に対する免疫寛容を誘導するための方法、細胞性および/または体液性移植片拒絶反応を治療および/または予防するための方法、移植片対宿主病(GvHD)を治療および/または予防するための方法をさらに提供し、該方法は、対象に本発明の遺伝子操作Tregまたは医薬組成物を投与するステップを含む。
【0199】
本明細書中で使用する場合、「移植片に対する免疫寛容(tolerance)を誘導する」とは、レシピエントにおいて移植器官に対する免疫寛容を誘導することを指す。言い換えると、移植片に対する免疫寛容を誘導するとは、ドナーからの移植器官に対するレシピエントの免疫応答のレベルを低減することを意味する。移植器官に対する免疫寛容を誘導することにより、移植片レシピエントが必要とする免疫抑制薬の量を低減してもよいし、または免疫抑制薬の中止を可能にしてもよい。
【0200】
ある実施形態では、前記対象は、免疫抑制療法を受けている移植片レシピエントである。
【0201】
前記移植片は、肝臓、腎臓、心臓、肺、膵臓、腸、胃、骨髄、血管新生化複合組織移植片、および皮膚移植片から選択してもよい。
【0202】
本開示は本明細書中に開示した例示的な方法および材料により制限されるものではなく、また本明細書中に記載したそれらのものと類似または等価の方法および材料はいずれも、本開示の実施形態の実践または検討に使用することができる。数値範囲は、該範囲を定義する数値を含む。他に指示しない限り、全ての核酸配列は左から右へ5'から3'方向に記載し、また全てのアミノ酸配列は左から右へアミノ末端からカルボキシ末端方向に記載する。
【0203】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限の間にある、文脈上他に明確に指示しない限りはその下限の単位の10分の1までの各介在値もまた、具体的に開示される。記載された範囲内の任意の記載値または介在値と、その記載された範囲内の任意の他の記載値または介在値との間のより狭い範囲は、その各々が本開示内に包含される。これらのより狭い範囲の上限および下限は、独立して、該範囲に含まれるかまたは該範囲から除外される場合があり、またこれらのより狭い範囲内に限界値の一方が含まれるか、両方とも含まれないか、または両方とも含まれる各範囲もまた、その記載された範囲内で任意の限界値が具体的に除外されることを前提として、本開示内に包含される。記載された範囲がその限界値の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界値の一方または両方を除外する範囲もまた本開示内に含まれる。
【0204】
単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上他に明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0205】
「含む(comprising)」、「含む(comprises)」および「構成される(comprised of)」という用語は、本明細書中で使用する場合、「含む(including)」、「含む(includes)」または「含有する(containing)」、「含有する(contains)」と同義であり、また包括的または非限定的(open-ended)であって、追加の、記載されていないメンバー、要素または方法ステップを除外しない。「含む(comprising)」、「含む(comprises)」および「構成される(comprised of)」という用語には、「からなる(consisting of)」という用語も含まれる。
【0206】
本発明の実施形態は組み合わせてもよい。
【0207】
本明細書中で考察した刊行物は、本願の出願日に先立つその開示のためだけに提供される。本明細書中のいずれも、かかる刊行物が本明細書に添付した特許請求の範囲に対する先行技術を構成することの承認と解釈すべきではない。
【0208】
本発明をここで、実施例を通してさらに説明するが、それらは本発明を実施する上で当業者を支援するのに役立つことを意味しており、決して本発明の範囲を制限することを意図したものではない。
(実施例)
[実施例1A]
【0209】
実施例1A-生来的なTregの単離
CD4T細胞は、CD4陽性選択キットを使用して単離した。細胞をその後、FACS選別の前に、BD ARIAを使用してフローサイトメトリー抗体CD4、CD25およびCD127で染色した。CD4CD25hiCD127TregおよびCD4CD25CD127Tconvをポリプロピレンチューブに採集した。細胞選別の純度は、FOXP3 PE抗体の添加により測定した。CD4CD25CD127FOXP3細胞の純度は通常、>70%であった。
[実施例1B]
【0210】
実施例1B-FOXP3を用いた生来的なTregの形質導入
0日目に、FACSで選別したTregおよびTconvを、抗-CD3および抗-CD28ビーズと共に1:1で培養することにより、48時間別々に活性化した。2日目に細胞を計数し、完全RPMI(Tconv)またはTexmacs培地(Treg)に1×106/mLで再懸濁した。非組織培養処理24ウェルプレートは、レトロネクチンでコーティングしてからその後PBS中の2%ウシ血清アルブミンでブロックし、さらにPBSで2回洗浄することにより、予め調製した。IL-2の最終濃度は、Tconvについては300μ/mL、およびTregについては1000μ/mLとした。細胞を37℃で一晩インキュベートした後、上清を除去して新鮮な完全培地およびIL-2を補充した。培地は一日置きに取り替えた。
【0211】
Tconv細胞は、10%熱不活性化ウシ胎仔血清、100単位/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン、2 mMのL-グルタミンを追加したRPMI-1640(Gibco)で増殖させた。制御性T細胞は、100単位/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシンを追加したTexmacs培地(Miltenyi)で培養した。
【0212】
フローサイトメトリー解析は、マウスTCR定常領域およびFOXP3の発現を通して形質導入のレベルを評価するために、7~10日目に実施した。
[実施例1C]
【0213】
実施例1C-FOXP3を形質導入した生来的なTregの存在下での刺激Tconv細胞の増殖およびIL-2産生
10日目に、ヒトHLA-DR4およびCD80またはCD86を形質導入したチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に、MBP111-129(LSRFSWGAEGQRPGFGYGG)(10μM/mL)を取り込ませた。懸濁液を標準的な組織培養条件で2時間インキュベートした後、放射線を照射し、洗浄してから、適当な濃度で再懸濁した。
【0214】
形質導入されたレスポンダーT細胞を、温PBS中37℃で3分間、CFSE細胞追跡色素で染色した後、等量の温FBSを添加し、さらに3分間インキュベートした。細胞を5×容量の完全RPMI培地で洗浄した後、計数してから1×106個の形質導入細胞/mLで再懸濁した。制御性T細胞を培養物から取り出し、洗浄してから、完全RPMI中1×106個の形質導入細胞/mLで再懸濁した。細胞を、1 Treg:0.1 CHO細胞:様々な割合のTconvで4日間平板培養した(plated)。
【0215】
4日目に細胞を生死判別色素で染色し、フローサイトメトリーにより解析した。増殖率は、「生」細胞をゲートし、次にペプチドを使用せずに培養した細胞と比較してより低いCFSE蛍光を示す細胞の集団をゲートすることより、測定した。
【0216】
図1は、ペプチド使用および不使用のTCR形質導入Tconv細胞の増殖(青色バー)、ならびに偽Treg(白色バー)、TCR形質導入TregまたはTCR+FOXP3形質導入Tregの存在下での同一細胞の増殖を示している。
【0217】
4日目に上清を採集し、ELISAによりIL-2産生について分析した。
【0218】
図2は、ペプチド使用および不使用のTCR形質導入Tconv細胞のIL-2産生(青色バー)、ならびに偽Treg(白色バー)、TCR形質導入TregまたはTCR+FOXP3形質導入Tregの存在下での同一細胞の増殖を示している。
[実施例2]
【0219】
実施例2-異なるドナーから得たT細胞
実施例1に記載した実験を、異なるドナーから得たT細胞を使用して繰り返した。
図3は、TCR形質導入T細胞の増殖率を示している。
図4は、共培養実験で採集された上清中のIL-2の濃度を示している。
[実施例3]
【0220】
実施例3-形質導入した生来的なTregにおけるTregマーカーの発現
偽形質導入TregまたはTCRもしくはTCR+FOXP3を形質導入したTregを、7~10日目に、Tregマーカー(FOXP3、CD25およびCTLA-4)の発現についてフローサイトメトリーにより解析した。
【0221】
図5は、各マーカーの平均蛍光強度(MFI)を示している。点は個別の実験を表している。1-way ANOVAを統計解析のために使用した(p<0.05、p<0.005**)。
【0222】
図6は、前記と同じデータを異なる形で表したものである。各線は、TCRまたはTCR+FOXP3を形質導入した同一Treg上のマーカーのMFIを示す単一実験を表している。
[実施例4]
【0223】
実施例4-誘導性Tregと比較した形質導入された生来的Treg
実施例1Cに記載した通りに、CD80CD86DR4CHO細胞にペプチドを取り込ませてから放射線を照射した後、0.1×106個の細胞/mLで再懸濁した。形質導入されたレスポンダーT細胞を、温PBS中37℃で3分間、CFSE細胞追跡色素で染色した後、等量の温FBSを添加してさらに3分間インキュベートした。
【0224】
細胞を5×容量の完全培地で洗浄した後、計数してから1×106個の形質導入細胞/mLで再懸濁した。TconvおよびTregの形質導入効率は、フローサイトメトリーにより測定した。Tregを培養物から取り出し、洗浄してから、完全RPMI中1×106個の形質導入細胞/mLで再懸濁した。細胞を、1 Treg:0.1 CHO細胞:様々な割合のTconvで平板培養した。増殖は、カルボキシフルオレセインスクシニミジルエステル(CFSE)で染色したTconvの希釈度(dilution)を解析することにより測定した。
【0225】
図7のデータは、TCR+FOXP3を形質導入した生来的なTregが、TCR+FOXP3を形質導入したTconv細胞(すなわち誘導性Treg)より効率的に増殖を抑制することを示している。
【0226】
上清を培養培地から採集し、ELISAによりIL-2について分析した。図8に提示したデータは、TCR+FOXP3を形質導入した生来的なTregが、TCR+FOXP3を形質導入したTconv細胞(すなわち誘導性Treg)より効率的にIL-2産生を抑制することを示している。
[実施例6A]
【0227】
実施例6A-外因性FOXP3を発現するTregは生着し、存続し、かつFoxP3、CD25およびTCR発現を保持する
Thy1.1CD4CD25またはCD45.1CD4CD25Tregを、ビーズ選別によりHLA-DRB0401トランスジェニックマウスのリンパ節および脾細胞から単離した。CD45.1TregにTCRを形質導入し、またThy1.1TregにTCR+マウスFOXP3を形質導入した。形質導入の1日後に、TCRまたはTCR+FOXP3形質導入細胞を、4Gy照射による条件付けを行ったHLA-DRB0401トランスジェニック宿主に1:1の比で注入した。FACSプロットは、注入細胞のCD45.1:Thy1.1の比およびそれらの各FOXP3発現を示している。
【0228】
7週後に、フローサイトメトリーを利用し、TCRについて染色することにより生着細胞を同定した。TCR集団内のCD45.1:Thy1.1の比を測定し、生着したCD45.1(TCRを形質導入したTreg)またはThy1.1(TCR+FOXP3を形質導入したTreg)細胞の表現型を、FOXP3およびCD25について染色することにより調べた。
【0229】
Thy1.1CD4CD25Tregは、ビーズ選別によりHLA-DRB0401トランスジェニックマウスのリンパ節および脾細胞から単離した。TregにTCR、TCR+マウスFOXP3を形質導入するか、またはTregをウイルス不含上清(偽)と共に培養した。形質導入の1日後に、TCRまたはTCR+FOXP3形質導入細胞を、4Gy照射による条件付けを行ったHLA-DRB0401トランスジェニック宿主に注入した。7週後に、フローサイトメトリーを利用することにより、形質導入されたTregの生着を測定した。図9Aは、形質導入の1日後にヒト可変2.1およびマウスFoxp3の発現を通して測定した形質導入効率を示している。図9Bは、移入細胞(上部パネル)ならびにFOXP3およびTCR(下部パネル)を同定するためにThy1.1で染色した、TCRまたはTCR+FOXP3を形質導入したTregを投与したマウスから得た脾細胞を示している。図9Cは、TCRまたはTCR+FOXP3を形質導入したTregに関する、注入当日に対する形質導入効率の倍変化(左パネル)および形質導入細胞の絶対数の倍変化(右パネル)を示した累積データを示している。図9Dは、移入7週間後の形質導入細胞内のFOXP3の典型的な発現を示している。グラフは、7週目における形質導入集団内のFOXP3細胞の割合の累積値(左)、および注入当日に対するFOXP3細胞の倍変化を示している。
[実施例6B]
【0230】
実施例6B-外因性FOXP3を発現するTregはin vivoで7週間後もTregの機能性を保持するが、外因性FOXP3を発現しないTregはエフェクターサイトカインを産生する能力を獲得する
脾細胞を、無関係なペプチドまたは10uMのMBPをパルスしたCD86HLA-DR4CHO細胞と共に4時間培養した。外因性FOXP3を発現するTregは、エフェクターサイトカイン産生の欠如により明示されるように、in vivoで7週間後もTregの機能性を保持していたが、外因性FOXP3を発現しないTregはエフェクターサイトカインを産生する能力を獲得した(図10)。
【0231】
上記明細書中で言及した全ての刊行物は、参照により本明細書中に組み込まれるものとする。本発明の記載した方法およびシステムの様々な改変および変更は、本発明の範囲および精神を逸脱することなく、当業者には明らかであろう。本発明を特定の好適な実施形態と関連付けて記載してきたが、特許請求の範囲に記載した本発明は、かかる特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことを理解すべきである。実際には、分子生物学、細胞免疫学または関連分野の当業者には明白な、本発明を実施するための記載した様式の様々な改変は、添付の特許請求の範囲の範囲内にあるものとする。
本開示は以下の実施形態を包含する。
[1] 制御性T細胞(Treg)にFOXP3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを導入することを含む、該Tregが免疫応答を抑制する能力を増強するための方法。
[2] 以下(i)あるいは(ii)である、すなわち
(i)前記FOXP3ポリペプチドが、配列番号3もしくは4と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列またはその機能性断片を含むか、あるいは
(ii)前記FOXP3ポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチドが、配列番号1もしくは2と少なくとも80%同一であるポリヌクレオチド配列またはその機能性断片を含む、
実施形態1記載の方法。
[3] 前記のFOXP3をコードするポリヌクレオチドが、発現ベクターの連続した部分である、実施形態1または2記載の方法。
[4] 外因性T細胞受容体(TCR)をコードするポリヌクレオチド、またはキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドを、前記Tregに導入することをさらに含む、実施形態1~3のいずれかに記載の方法。
[5] 前記のFOXP3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および前記外因性TCRまたは前記CARをコードする前記ポリヌクレオチドが、単一発現ベクターにより提供される、実施形態4記載の方法。
[6] 前記ベクターが、5’ FOXP3-X-TCR/CARの向きを有する核酸を含み、ここでXは内部自己切断配列である、実施形態5記載の方法。
[7] 前記のFOXP3をコードするポリヌクレオチドをウイルスによる形質導入によって単離Tregに導入し、場合により前記のFOXP3をコードするポリヌクレオチドをレトロウイルスによる形質導入によって単離Tregに導入する、実施形態1~6のいずれかに記載の方法。
[8] 以下(a)および(b)、すなわち
(a)細胞集団からTregを単離すること、および
(b)該TregにおけるFOXP3発現を増大させること
を含む、実施形態1~7のいずれかに記載の方法。
[9] 前記細胞集団が、末梢血単核細胞(PBMC)を含むかまたはPMBCからなる、実施形態8記載の方法。
[10] 前記Tregを単離することが、
CD4+T細胞を単離すること、および
該CD4+T細胞から前記Tregを単離すること
を含む、実施形態8または9記載の方法。
[11] 前記Tregの前記単離が、免疫磁気ビーズまたは蛍光活性化細胞選別(FACS)を利用した選択を含む、実施形態8~10のいずれかに記載の方法。
[12] 前記Tregを、(i)CD4+CD25+CD127-および/またはCD4+CD25+CD127low細胞、(ii)CD4+CD25hiCD127-および/またはCD4+CD25+CD127low細胞について選択することにより単離する、実施形態8~11のいずれかに記載の方法。
[13] 前記TregをFOXP3+細胞について選択することにより単離し、好ましくは前記TregをCD4+CD25+FOXP3+ヘリオス+ニューロピリン1+細胞について選択することにより単離する、実施形態8~12のいずれかに記載の方法。
[14] 実施形態1~13のいずれかに記載の方法により取得可能であるかまたは取得する、遺伝子操作Treg。
[15] FOXP3ポリペプチドをコードする外因性ポリヌクレオチドを含み、かつ対応する非遺伝子操作Tregより高いFOXP3発現を示す、遺伝子操作Treg。
[16] 前記FOXP3ポリペプチドが、(i)配列番号3もしくは4と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列またはその機能性断片を含むか、あるいは(ii)配列番号1もしくは2と少なくとも80%同一であるポリヌクレオチド配列またはその機能性断片によりコードされる、実施形態15記載の遺伝子操作Treg。
[17] 前記のFOXP3をコードする外因性ポリヌクレオチドが、発現ベクターの連続した部分である、実施形態16記載の遺伝子操作Treg。
[18] 外因性T細胞受容体(TCR)をコードするポリヌクレオチド、またはキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドをさらに含む、実施形態14~17のいずれかに記載の遺伝子操作Treg。
[19] 前記のFOXP3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および前記外因性TCRまたは前記CARをコードする前記ポリヌクレオチドが、単一発現により提供される、実施形態18記載の遺伝子操作Treg。
[20] 前記ベクターが、5’ FOXP3-X-TCR/CARの向きを有する核酸を含み、ここでXは内部自己切断配列である、実施形態19記載の遺伝子操作Treg。
[21] 実施形態14~20のいずれかに記載の遺伝子操作Tregを含む、医薬組成物。
[22] 疾患の予防および/または治療に使用するための、実施形態14~20のいずれかに記載の遺伝子操作Treg、または実施形態21記載の医薬組成物。
[23] 疾患の予防および/または治療のための薬剤の製造における、実施形態14~20のいずれかに記載の遺伝子操作Tregの使用。
[24] 対象に、実施形態14~21のいずれかに記載の遺伝子操作Tregまたは医薬組成物を投与することを含む、疾患の予防および/または治療の方法。
[25] 前記疾患が自己免疫疾患であり、好ましくは前記疾患が多発性硬化症である、実施形態22記載の使用のための遺伝子操作Treg、もしくは使用のための医薬組成物、実施形態23記載の遺伝子操作Tregの使用、または実施形態24記載の方法。
[26] 前記疾患が移植片拒絶反応または移植片対宿主病である、疾患の予防および/または治療に使用するための、実施形態13~17のいずれかに記載の遺伝子操作Treg。
[27] 制御性T細胞(Treg)が免疫応答を抑制する能力を増強するための、FOXP3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの使用。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9-1】
図9-2】
図9-3】
図10A
図10B
図11
【配列表】
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