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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】ガソリンエンジン排ガス後処理用触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20231127BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20231127BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20231127BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20231127BHJP
   F01N 3/023 20060101ALI20231127BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20231127BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20231127BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
B01J23/63 A ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 241
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01J37/02 101
B01J37/08
F01N3/023 Z
F01N3/10 A
F01N3/24 E
F01N3/28 301N
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020568015
(86)(22)【出願日】2019-02-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 CN2019075786
(87)【国際公開番号】W WO2019161775
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2022-02-21
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2018/077268
(32)【優先日】2018-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】チー,ユンフェイ
(72)【発明者】
【氏名】チヤン,チュンツォン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,シャオ リン
(72)【発明者】
【氏名】タン,ウェイヨン
(72)【発明者】
【氏名】チュイ,ユイリン
(72)【発明者】
【氏名】リュイ,リヤンファン
(72)【発明者】
【氏名】レイ,イエンチュー
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107715875(CN,A)
【文献】特開2017-217646(JP,A)
【文献】特開2010-221154(JP,A)
【文献】特開2014-148924(JP,A)
【文献】特表2019-509166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 ー 38/74
B01D 53/94
F01N 3/00 ー 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)排ガス中のNO、CO及び炭化水素をN、CO及びHOに変換し、及びガソリン粒子フィルターに捕捉された粒子状物質を酸化させるのに触媒的に有効な量であって、触媒のか焼した質量に基づいて、0.01~3質量%のPt;
b)触媒のか焼した質量に基づいて、0.02~3質量%のRh;
c)触媒のか焼した質量に基づいて、70~99質量%の、アルミナ、ジルコニウム酸化物、セリア酸化物、バリウム酸化物、ランタン酸化物、ネオジミウム酸化物、イットリウム酸化物及びこれらの混合物から成る群から選ばれる、少なくとも1種の熱水的に安定な支持体材料;及び
d)触媒のか焼した質量に基づいて、0.01~4質量%のPd;及び
e)任意に、Mn、Fe、Co、Ni、Cu及びこれらの混合物から成る群から選ばれる、少なくとも1種の遷移族金属、
を含み、
前記Pt及び前記少なくとも1種の熱水的に安定な支持体材料が、ガソリン粒子フィルター上に配置されている、
ことを特徴とする、ガソリンエンジン排ガス後処理用の触媒。
【請求項2】
a)排ガス中のNO、CO及び炭化水素をN、CO及びHOに変換し、及び前記ガソリン粒子フィルターに捕捉された粒子状物質を酸化させるのに触媒的に有効な量であって、触媒のか焼した質量に基づいて、0.02~1質量%のPt;
b)触媒のか焼した質量に基づいて、0.04~1質量%のRh;
c)上記触媒のか焼した質量に基づいて、80~99質量%の、アルミナ、ジルコニウム酸化物、セリア酸化物、バリウム酸化物、ランタン酸化物、ネオジミウム酸化物、イットリウム酸化物及びこれらの混合物から選ばれる、少なくとも1種の熱水的に安定な支持体材料;及び
d)触媒のか焼した質量に基づいて、0.01~4質量%のPd;及び
e)任意に、Mn、Fe、Co、Ni、Cu及びこれらの混合物から成る群から選ばれる、少なくとも1種の遷移族金属、
を含み、
前記Pt及び前記少なくとも1種の熱水的に安定な支持体材料が、ガソリン粒子フィルター上に配置されている、
ことを特徴とする、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記触媒がRhを含み、該Rhは、Pt:Rhの質量比が0.1~10、0.5~3、又は1.5~3の範囲の量で存在することを特徴とする、請求項1又は2に記載の触媒。
【請求項4】
Pt:Pdの質量比が0.1以上、好ましくは0.5以上、及び最も好ましくは1以上であることを特徴とする、請求項1~3の何れか1項に記載の触媒。
【請求項5】
前記触媒が、ガソリン粒子フィルター上に、その軸長又は半径方向に沿って、交互する通路上に、壁上に、又は多孔性壁内に、又はこれらの組み合わせに、全体に、又は部分的に被覆されていることを特徴とする、請求項1~4の何れか1項に記載の触媒。
【請求項6】
ガソリン粒子フィルターが、ハニカム構造を含む壁流フィルターを含むことを特徴とする、請求項1~5の何れか1項に記載の触媒。
【請求項7】
ガソリン粒子フィルターの平均孔寸法が、10~24μm、好ましくは14~20μmであることを特徴とする、請求項1~6の何れか1項に記載の触媒。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載の触媒を製造するための方法であって、以下の工程、
a)初期湿潤を達成するのに十分であり、及び任意に、卑金属酸化物、遷移族金属、結合材料、及びこれらの組み合わせ、及び/又はこれらの前駆体から成る群から独立して選ばれる1種以上の材料を使用して希釈、及び/又は混合するのに十分な水を使用して、Pt、及び任意に、Rh、Pd、Ru、及びIrから成る群から選ばれる少なくとも1種の白金族金属を、任意にその1種以上の前駆体を使用して、熱水的に安定な支持体材料に含浸させ、水性スラリーを形成する工程、
b)前記スラリーを粉砕し、及びガソリン粒子フィルターを被覆する工程、
c)触媒で被覆されたガソリン粒子フィルターを、か焼する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1~7の何れか1項に記載の触媒を製造するための方法であって、以下の工程、
a)初期湿潤を達成するのに十分であり、及び任意に、卑金属酸化物、遷移族金属、及び結合材料、及びこれらの組み合わせ、及び/又はこれらの前駆体から成る群から独立して選ばれる1種以上の材料を使用して希釈、及び/又は混合するのに十分な水を使用して、Pt、及び任意に、Pd、Ru、及びIrから成る群から選ばれる少なくとも1種の白金族金属を、任意にその1種以上の前駆体を使用して、支持体材料に含浸させ、第1の水性スラリーを形成する工程、
b)初期湿潤を達成するのに十分であり、及び任意に、卑金属酸化物、遷移族金属、結合材料、及びこれらの組み合わせ、及び/又はこれらの前駆体から成る群から独立して選ばれる1種以上の材料を使用して希釈、及び/又は混合するのに十分な水を使用して、Rh及び任意に、Pd、Ru、及びIrから成る群から選ばれる少なくとも1種の白金族金属を、任意にその1種以上の前駆体を使用して、支持体材料に含浸させ、第2の水性スラリーを形成する工程、
c)前記第2のスラリーを粉砕し、及びガソリン粒子フィルターを被覆する工程、
d)触媒で被覆されたガソリン粒子フィルターを、か焼する工程、
e)前記第1のスラリーを粉砕し、及びガソリン粒子フィルターを被覆する工程、
f)触媒で被覆されたガソリン粒子フィルターを、か焼する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
工程a)におけるPt:Pdの質量比が、0.1以上、0.5以上、又は1以上であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~7の何れか1項に記載の触媒を使用してガソリンエンジン排ガスを後処理するための方法であって、ガソリンエンジンが1.01を超え、好ましくは1.03を超え、より好ましくは1.03~1.1の範囲のラムダ範囲で運転される場合には、前記触媒が、粒子状物質を酸化するために、NOをNOに変換することを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1~7の何れか1項に記載の触媒を使用してガソリンエンジン排ガスを後処理するための方法であって、排ガスを、請求項1~7の何れか1項に記載の触媒と接触させる工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
ガソリンエンジン排ガス浄化システムであって、請求項1~7の何れか1項に記載の触媒、及び少なくとも1つのTWCを含み、前記TWCは、好ましくはクローズ-カップル位置に配置されることを特徴とするガソリンエンジン排ガス浄化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリンエンジン排ガス後処理用の触媒組成物に関する。この触媒組成物は、ガソリン粒子フィルターに被覆され、フィルター内に捕捉された粒子状物質を低温で酸化し、及び窒素酸化物を、一酸化炭素、及び炭化水素を低減するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、ヘイズ(煙霧)及びスモッグが益々問題になっている。ガソリン出力の乗物の内燃エンジンからの排出物、例えば窒素酸化物(NO)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、及び粒子状物質(PM)等を更に制限することによって環境状態を改良するために、より厳格な排出基準が既に要求され、又は今後要求される。
排ガスが大気に放出される前に、排ガスはPMを除去するために、触媒ウォッシュコートで被覆されたガソリン粒子フィルター(GPF)を通されても良い。化学量の空気/燃料条件で作動するガソリン出力の乗物について、蓄積した煤を燃焼処理するための持続的な過剰の酸素供給は、通常存在しない。
【0003】
特許文献1(US特許8173087)は、煤フィルター等の粒子状トラップに被覆された三元変換(TWC)触媒、又は酸化触媒を提供している。より特定的には、この文献は、2つの被覆、入口被覆及び出口被覆を使用して製造された、触媒を有する煤フィルターに関するものである。この三元変換(TWC)触媒複合体は、パラジウム及びロジウム、又はプラチナ及びパラジウムを、26~68g/ftの範囲の合計貴金属積載量で含んでいた。
【0004】
特許文献2(US特許7977275)は、触媒的に被覆された粒子フィルター、及び一酸化炭素、炭化水素、及び煤粒子を排ガスから除去するための、その使用方法に関する。この文献では、エイジング(老化)及び硫黄汚染に対する最適の特性を提供する白金及びパラジウムの組合せが提供されている。炭化水素及び一酸化炭素のテストサイクル中での変換要件に適合させるために、増加した貴金属濃度、及び100g/ftの合計貴金属積載量が提供されている。
【0005】
しかしながら、蓄積したPMは、フィルターを閉鎖し、エンジン効率の低下をもたらす。従って、エンジン性能を一貫して維持するためには、600℃以上でGPF上のPMを燃焼させることによって、定期的に再生することが必要であるが、これはフィルターのダメージという副作用も伴う。貴金属の使用を低減させることも必要である。
【0006】
排ガスの温度が≧600℃にも達し得る密接結合(CC)位置に四元触媒(FWC)を配置することは、リーンA/F条件の間における酸素での煤の燃焼を実施可能にし、及び迅速にする。しかしながら、この方法は、エンジン部位内で利用できるスペースが限定されていることと、高温条件下における高い体積流量に起因する高い背圧によって制限される。従って、FWCをアンダーフロア(UF)位置に配置することが好ましい。このようなレイアウトでは、≦550℃の温度でのガソリンPMの効率的な酸化が、解決するべき主たる問題になる。
【0007】
CC触媒とアンダーフロア触媒(UFC)の間に絶縁二重管を加える等の手段は、リーンA/F条件の間におけるUFCの温度を上昇させて収集したPMの酸化を容易化するために採用されて良いものであるが、しかしこのような手段は、触媒温度を約50℃上昇させることによる限定的な改良をもたらすのみであり、しかもコストが相当に高くなる。
特許文献3(US特許6479023)は、化学量論的に運転されたエンジンからの排ガス中のPMを変換するためのシステムを提供している。このシステムは、排ガス中の水蒸気をオキシダントに変換するためのプラズマ発生装置と、プラズマ発生装置の下流のフィルターを含んでいる。しかしながら、この方法は、エネルギーが集中するもので、及びプラズマは他の汚染物質、例えばNOを生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】US特許8173087
【文献】US特許7977275
【文献】US特許6479023
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、煤(スート)を酸化して、UF位置でGPF上に集められたPMを低い温度(例えば250~550℃の範囲)で除去する触媒を提供することが好ましい。好ましくは、触媒は、NO、CO及びHCを、N、CO及びHOに変換する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
白金とロジウム、及び任意にパラジウムの組合せを含む触媒は、UF位置で低い温度で、GPF上に集められたPMを除去するのに特に有利な特性を有していることが見出された。粒子フィルターは、その寿命全体に亘って良好な触媒活性を維持し、及び大量のNO、CO及びHCを、N、CO及びHOに完全に変換することができる。
【0011】
しかしながら、触媒被覆の触媒活性を発揮する貴金属ばかりではなく、むしろ使用される支持体がこのことについて重要な役割を担う。第1及び第2の触媒の支持体材料は、同一であっても、異なっていても良い。これらは好ましくは、アルミナ、ジルコニア、セリア、シリカ、チタニア、セリア以外の希土類金属酸化物、及びこれらの混合物から成る支持体材料の群から選ばれる。
【0012】
発明の要約
本発明の目的は、UF位置で、GPF上に集められたPMを低温(例えば250~550℃の範囲)で酸化し及び除去する、GPF上に被覆された触媒を提供することにある。好ましくは、この触媒は、NO、CO及びHCも、N、CO及びHOに変換する。
【0013】
本発明の第1の局面は、GPF上に被覆された触媒を提供するが、該触媒は、UF位置で、GPF上に集められたPMを低温(例えば250~550℃)で酸化し、及び除去するものである。好ましくは、触媒は、NO、CO及びHCを、N、CO及びHOに変換する。
【0014】
本発明の第2の局面は、本発明の触媒を製造するための方法を提供する。
本発明の第3の局面は、UF位置で、GPF上に集められたPMを低温(例えば250~550℃の範囲)で除去するため、及びガソリンエンジン排ガス中のNO、CO及びHCを、N、CO及びHOに変換するための方法を提供する。この方法は、排ガスを、本発明の触媒と接触させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施例P1~P5における、450℃での煤(スート)の酸化による、30分後の背圧(BP)の低減を百分率で示したものである。
図2図2は、WLTCサイクル下におけるガス相汚染物質放出を示したものである。
図3図3は、軽微なリーン(希薄:lean)条件(λ=1.05)下におけるNO生成を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本願で使用され、及び請求項で採用されている以下の用語は、以下の定義を有している。
【0017】
使用される場合、「a」、「an」、「the」に相当する表現は、所定の用語を定義するために使用される場合、該用語の複数形及び単数形の両方を含む。
【0018】
全ての百分率及び比率は、他に記載が無ければ質量基準で記載されている。
【0019】
「TWC」は、ガソリンエンジン排ガスから、HC、CO及びNOを実質的に除去することが可能な三元触媒を意味している。典型的には、TWCは、主として、1種以上の白金族(PGM)、支持体材料としてのアルミナ、及び酸素貯蔵成分及び支持体材料の両方のものとしての、セラミック又は金属基材上に被覆されたセリウム-ジルコニウム酸化物(Ce-ZrO)から構成される。
【0020】
「FWC」は、ガソリンエンジン排ガスから4種の汚染物質の全て(HC、CO、NO及びPM)を除去するようにTWCの機能をGPFと組み合わせた四元触媒を意味している。典型的には、FWCは、GPF及び基材として作用するGPF上の被覆成分を含む。FWCは主として、PGM、支持体材料としてのアルミナ、及び(両者とも)酸素貯蔵成分としてのセリウム-ジルコニウム酸化物(Ce-ZrO)及びセラミック粒子フィルター基材上に被覆された支持体材料から構成される。従来技術におけるFWCは、PMを酸化できず、特に低温(例えば250~550℃の範囲)では酸化することができなかった。
【0021】
「GPF」は、ガソリン粒子フィルターを意味する。
【0022】
「PGM」は、白金族金属を意味し、「Pt」は白金、「Pd」は、パラジウム、及び「Rh」はロジウムを意味する。これらの用語は、PGMの金属状態のみならず、放出物低減に対して触媒的に活性な金属酸化物の状態をも含むと理解される。金属状態及び触媒的に活性な金属酸化物の状態の組合せも、本発明に含まれる。
【0023】
「UFC」は、アンダーフロア触媒を意味する。
【0024】
UF位置に配置されたGPFは典型的には、クローズカップル(近接接続)位置に配置されたGPFと比較して、より高いフィルター効率を与え、システム圧降下がより低く、及び取付けがより容易である。しかしながら、このようなUFCは通常、特に都会を走行する間、550℃未満であり、これは酸素等の酸化剤による煤の酸化を困難にする。
【0025】
本発明の一局面は、550℃未満でのPMの除去は、Oよりも強力な酸化剤、例えばNO酸化剤を使用することによって達成されても良いという認識である。ここに使用される「NO酸化剤」は、NO、N、N、及びNを含む。「NO酸化剤」という用語はまた、等価の酸化剤(equivalent oxidant)、例えばHNO及びHNOをも含み、これらは、適当な触媒条件の下に、粒子状物質、例えば煤(スート)を酸化可能な酸素含有種に変換されて良い。本発明の所定の実施形態では、二酸化窒素(NO)は、NO酸化剤中の主たる成分である。GPF上の煤を酸化するために使用されるNO酸化剤は、NO酸化を介して触媒的に生成されても良い。
【0026】
上述したNO酸化がクローズ-カップル位置で行われるべきものであれば、ガソリン駆動の乗物中のより高い排出ガス温度(550℃を超える)のために、その結果NO酸化剤は、速やかに分解して、NO及びOを形成する。この理由は、このような分解反応は、熱力学的に好ましいからである。一方、より高い排気温度、及び交互するリーン-リッチパルスが触媒に使用される材料に、より困難な安定性を課する。
【0027】
ガソリンエンジン駆動の乗物からの排ガスは通常、NO、O、CO、CO、HO、未燃焼HC及びPMを含んでいる。本発明の一局面は、本発明の触媒を使用することによって、NOは、GPFに捕捉された煤を酸化するのに十分なNO酸化剤へと触媒的に変換されて良いという認識である。一時的スタート条件の間に存在するNO酸化剤の量は典型的に少なく、本発明の触媒によって、排ガス中のNOがNO酸化剤に変換されるに従い、NO酸化剤の量は増加する。従って、一時的スタート条件の後は、ガス中のNO酸化剤の有用な量は、GPFに捕捉された煤と接触した場合、5~3500ppmの範囲、好ましくは20~1500ppm、より好ましくは20~500ppmになる。しかしながら、特定のエンジン運転条件に起因して、NO酸化剤の含有量が、この範囲の内側及び外側に大きく変動することも可能である。本質的な点は、GPFに捕捉された煤を酸化するのに十分なNO酸化剤が、ガス中に存在するということである。
本発明の所定の実施形態では、NO酸化剤は、典型的なガソリンエンジンの作動条件下に、GPF中の触媒上で容易に生成され、及び低い温度(例えば、250~550℃の範囲)で煤を効果的に酸化する。このような実施形態では、通常ではGPF上でのPM堆積に起因する背圧は、低減される。
【0028】
化学量論的燃料エンジン、例えばガソリンエンジンからの排ガスは、おおよそ化学量論的であり、このことは、これらは、おおよそ同等量(等量)の酸化剤と還元剤(例えば、CO、NH、及び未燃焼炭化水素等)を含むことを意味する。従って、NO酸化のために使用可能な酸素の相対的量は、常時のリーンバーン(希薄燃焼)エンジン、例えばディーゼルエンジンに使用可能な酸素の相対的量よりも少ない。この課題は、しかしながら、エンジンの適切な較正作業(calibration work)によって、減速の間の燃料カット、又はOが排気システムをフラッシュする、周期的な軽微なリーンバーン条件で、処理されても良いものである。
【0029】
所定の実施形態では、本発明の触媒は、ガス汚染物質変換を促進する、GPF上に被覆されたTWCと、NOを酸化してNO酸化剤を形成する1つ以上のPGMの混合物であっても良い。
【0030】
一実施の形態では、本発明における触媒は、
a)Pt;
b)アルミナ、ジルコニア、セリア、シリカ、チタニア、セリア以外の希土類金属酸化物、及びこれらの混合物から選ばれる、少なくとも1種の熱水的に安定な支持体材料;
c)任意に、Rh、Pd、Ru、Ir及びこれらの混合物から選ばれる、少なくとも1種の他の白金族金属;及び
d)任意に、Mn、Fe、Co、Ni、Cu及びこれらの混合物から選ばれる、少なくとも1種の遷移族金属、
を含む。
【0031】
好ましい一実施の形態では、本発明における触媒は更に、少なくとも1種の機能性添加物、例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化ゲルマニウム、酸化アンチモン、及びこれらの混合物を含む。
【0032】
好ましい一実施の形態では、本発明における触媒中のPtの粒子径は、2~20nm、好ましくは2~10nm、より好ましくは5~7nmである。
【0033】
1つ以上の好ましい実施形態では、触媒は、触媒のか焼した質量に基づいて、約50質量%~約99.9質量%の熱水的に安定な支持体材料を含んでも良く、この百分率は、約60質量%~約99.8質量%、約70質量%~約99.6質量%を含んでも良い。
【0034】
1つ以上の好ましい実施形態では、触媒は例えば、触媒のか焼した質量に基づいて、約10質量%~約90質量%のアルミナ、好ましくは約15~約70質量%のアルミナ、より好ましくは約20~約50質量%のアルミナを含んでも良い。
【0035】
1つ以上の好ましい実施形態では、触媒は例えば、触媒のか焼した質量に基づいて、約1質量%~約50質量%のジルコニア、好ましくは約5~約40質量%のジルコニア、より好ましくは約8~約30質量%のジルコニアを含んでも良い。
【0036】
1つ以上の好ましい実施形態では、触媒は例えば、触媒のか焼した質量に基づいて、約10質量%~約60質量%のセリア、好ましくは約15~約50質量%のセリア、より好ましくは約28~約40質量%のセリアを含んでも良い。
【0037】
好ましい一実施の形態では、本発明における触媒中の熱水的に安定な支持体材料の粒子径分布は、500nm~50μmの範囲である。上述した熱水的に安定な支持体材料の比表面積は、フレッシュ状態で30~200m/gであり、及びUFCにとって典型的な条件におけるエイジングの後では15~150m/gである。
【0038】
GPFは、通常の形態及び構造であっても良い。典型的には、GPFは、交互する閉塞通路を含んでおり、この閉塞通路は、排ガス流が多孔性壁、セラミック壁流フィルター、ワイヤーメッシュフィルター、セラミック又はSiCフォームフィルター等を流通するように強制する。
【0039】
本発明の所定の実施形態では、GPF上の触媒の被覆は、基材(substrate)を、その長さ、半径方向の全体に亘って、又はその一部を、又は交互する通路上の全体に亘って、又はその一部をカバーしても良く、又はこれらの組合せであっても良い。追加的に、本発明の1種以上の触媒が一つの単一フィルター上に被覆されても良い。
【0040】
本発明の触媒は、以下の工程、
a)初期湿潤を達成するのに十分な水を使用して、Pt、及び任意に、Rh、Pd、Ru、及びIr等の他のPGM元素を、(任意にその1種以上の前駆体を使用して)熱水的に安定な支持体材料に含浸させ、及び任意に、本明細書に記載された1種以上の他の成分を使用して希釈、及び/又は混合して、水性スラリーを形成する工程、
b)前記スラリーを粉砕し、及びガソリン粒子フィルターを被覆する工程、及び
c)触媒で被覆されたガソリン粒子フィルターを、か焼する工程、
を含む方法によって調製されても良い。
【0041】
工程a)では、Ptの前駆体が、塩化物、硝酸塩、アンモニア錯体又はアミン錯体水酸化物溶液の形態であっても良く、又は高度に分散したコロイド金属分散物の状態であっても良い。Pd及びRhの前駆体は、塩化物、硝酸塩、酢酸塩、アンモニア又はアミン錯体水酸化物溶液の形態であっても良く、又は高度に分散したコロイド金属分散物の状態であっても良い。好ましい実施形態では、工程a)においてPt及び他のPGM元素、例えばRhは、別々に他の成分と混合されて、別個の水性スラリーを形成し、及びフィルター上に連続的に被覆されても良い。
【0042】
工程a)における他の成分は、独立して、機能促進卑金属酸化物、遷移族金属、及び結合剤から成る群から選ばれても良い。このような材料の非限定的な例は、アルカリ土塁金属酸化物(例えば、マグネシウム酸化物、カルシウム酸化物、ストロンチウム酸化物、及びバリウム酸化物);希土類金属酸化物(例えば、セリア酸化物、ジスプロシウム酸化物、エルビウム酸化物、ユロピウム酸化物、ガドリニウム酸化物、ホルミウム酸化物、ランタン酸化物、ルテチウム酸化物、ネオジム酸化物、プラセオジム酸化物、プロメチウム酸化物、サマリウム酸化物、スカンジウム酸化物、テルビウム酸化物、ツリウム酸化物、イッテルビウム酸化物、及びイットリウム酸化物);遷移金属酸化物(例えば、チタニウム酸化物、ジルコニウム酸化物、バナジウム酸化物、マンガン酸化物、鉄酸化物、ニッケル酸化物、銅酸化物、亜鉛酸化物、ニオビウム酸化物、モリブデン酸化物、銀酸化物、ハフニウム酸化物、及びタングステン酸化物);及びアルミナ-、チタニア-、シリカ-、セリア-又はジルコニア-ベースの結合剤を含む。このような材料の組合せも、本発明によって明確に考慮される。
【0043】
工程c)におけるか焼温度は、250℃~1000℃、好ましくは300℃~700℃、より好ましくは450℃~650℃であることができる。か焼期間は、10分から10時間、好ましくは0.5時間~8時間、より好ましくは1時間~4時間であっても良い。
【0044】
所定の実施形態では、ガソリンエンジン排ガスは、PGMの触媒有効量、及び酸化性卑金属触媒を含む、本発明の触媒で被覆されたGPFを通して、例えば80000hr-1以下の空間速度で通され、リーンA/F条件下に排ガス中にNO酸化剤を生成する。ここでPGMの「触媒有効量」は、排ガス後処理システムを通過するガソリンエンジン排ガス中の未燃焼HC、CO及びNO、の実質的な低減、又は変換を行い、及びフィルターに捕捉された粒子状物質を酸化するのに十分な量のNO酸化剤を生成するPGM量を意味する。所定の典型的な実施形態では、例えば、PGMの量は、排ガス後処理システムを通過するガソリンエンジン排ガス中のHC、CO及びNOを、少なくとも約40%、約50%、約60%、約70%、又は約80%低減、又は変換するのに十分なものである。所定の好ましい実施形態では、例えば、PGMの量は、排ガス後処理システムを通過するガソリンエンジン排ガス中のHC、CO及びNOを、少なくとも90%、好ましくは95%、及びより好ましくは98%と、著しく低減、又は変換するのに十分なものである。PGMの選ばれた「触媒的に効果的な量」は、エンジンが使用される特定の領域の排出物基準に依存して変化しても良いと理解されるべきである。本発明の触媒に使用するのに適切な、例となるPGM積載量は、触媒のか焼した質量に基づいて、少なくとも約0.01質量%、少なくとも約0.02質量%、少なくとも約0.04質量%、少なくとも約0.5質量%、約1質量%以下、約1.5質量%以下、約2質量%以下、約2.5質量%以下、約3質量%以下、又は約4質量%以下である。前述の各下限値、及び上限値は、組み合わされてPGM積載範囲を形成しても良く、このことは、本発明によって明確に考慮される。ガスが、本発明の触媒が被覆されたGPFを通る空間速度は、他の運転条件、例えば触媒組成物の性質に依存して大きく変化することが可能である。
【0045】
1つ以上の実施形態では、本発明の触媒は、PGMを、フィルターの体積上のPGMの質量に基づいて、5~25g/ft、好ましくは10~20g/ftの合計貴金属積載量で含む。
【0046】
典型的には、本発明の触媒は、GPF上に、少なくとも約5g/L、少なくとも約10g/L、少なくとも約15g/L、少なくとも約20g/L、少なくとも約25g/L、または少なくとも約30g/L、約150g/L以下、約175g/L以下、約200g/L以下、約225g/L以下、約250g/L以下、約275g/L以下、約300g/L以下、または約325g/L以下の積載量(loading)で積載される。前述の開示内容の各下限値、及び上限値は、組み合わされて触媒積載範囲を形成しても良く、このことは、本発明によって明確に考慮される。所定の典型的な実施形態では、触媒積載量は、10g/L~300g/Lの範囲、又は30g/L~200g/Lの範囲である。
【0047】
典型的には、ガソリンエンジンからの排ガスは、低温条件下に、本発明の触媒を含むGPFを通る。このことについて、「低温」は、約550℃未満を意味するが、本発明の触媒を使用した排ガスのからのNO酸化剤の触媒的形成を引き起こすのに、なお十分に高い温度である。所定の典型的な実施形態では、ガソリンエンジンからの排ガスは、本発明の触媒を含むGPFを、約250℃から約550℃の範囲の低温、より好ましくは約350℃~約550℃の範囲、及び最も好ましくは、約350℃から約500℃の範囲の低温で通過する。
【0048】
一局面では、本発明は以下の典型的な実施形態を提供する。
【0049】
[項目1]
Pt及び少なくとも1種の熱水的に安定な支持体材料を含み、
前記Pt及び前記少なくとも1種の熱水的に安定な支持体材料が、ガソリン粒子フィルター上に配置され、
前記Ptは、排ガス中のNO、CO及び炭化水素をN、CO及びHOに変換し、及びガソリン粒子フィルターに捕捉された粒子状物質を酸化させるのに触媒的に有効な量で存在する、触媒。
【0050】
[項目2]
ガソリンエンジン排ガス後処理用の触媒であって、前記触媒はガソリン粒子フィルター上に被覆され、及び前記触媒は、
a)Pt;
b)アルミナ、ジルコニア、セリア、シリカ、チタニア、セリア以外の希土類金属酸化物、及びこれらの混合物から選ばれる、少なくとも1種の熱水的に安定な支持体材料;
c)任意に、Rh、Pd、Ru、Ir及びこれらの混合物から選ばれる、少なくとも1種の白金族金属;
d)任意に、Mn、Fe、Co、Ni、Cu及びこれらの混合物から選ばれる、少なくとも1種の遷移族金属、
を含むことを特徴とする、ガソリンエンジン排ガス後処理用の触媒。
【0051】
[項目3]
a)Pt;
b)Rh;
c)アルミナ、ジルコニア、セリア、シリカ、チタニア、セリア以外の希土類金属酸化物、及びこれらの混合物から選ばれる、少なくとも1種の熱水的に安定な支持体材料;
d)任意に、Pd、Ru、Ir及びこれらの混合物から選ばれる、少なくとも1種の他の白金族金属;
e)任意に、Mn、Fe、Co、Ni、Cu及びこれらの混合物から選ばれる、少なくとも1種の遷移族金属、
を含む、項目2に記載の触媒。
【0052】
[項目4]
a)触媒のか焼した質量に基づいて、0.01~3質量%のPt;
b)触媒のか焼した質量に基づいて、0.02~3質量%のRh;
c)触媒のか焼した質量に基づいて、70~99質量%の、アルミナ、ジルコニア、セリア、シリカ、チタニア、セリア以外の希土類金属酸化物、及びこれらの混合物から選ばれる、少なくとも1種の熱水的に安定な支持体材料;
d)任意に、Pd、Ru、Ir及びこれらの混合物から選ばれる、少なくとも1種の他の白金族金属;及び
e)任意に、Mn、Fe、Co、Ni、Cu及びこれらの混合物から選ばれる、少なくとも1種の遷移族金属、
を含む、項目3に記載の触媒。
【0053】
[項目5]
a)触媒のか焼した質量に基づいて、0.02~1質量%のPt;
b)触媒のか焼した質量に基づいて、0.04~1質量%のRh;
c)触媒のか焼した質量に基づいて、80~99質量%の、アルミナ、ジルコニア、セリア、シリカ、チタニア、セリア以外の希土類金属酸化物、及びこれらの混合物から選ばれる、少なくとも1種の熱水的に安定な支持体材料;
d)任意に、Pd、Ru、Ir及びこれらの混合物から選ばれる、少なくとも1種の他の白金族金属;及び
e)任意に、Mn、Fe、Co、Ni、Cu及びこれらの混合物から選ばれる、少なくとも1種の遷移族金属、
を含む、項目4に記載の触媒。
【0054】
[項目6]
前記触媒が、触媒のか焼した質量に基づいて、0.01~4質量%、好ましくは0.02~2.5質量%、及びより好ましくは0.05~2質量%のPdを含む、項目2~5の何れか1項目に記載の触媒。
【0055】
[項目7]
Pt:Rhの質量比が0.1~10、好ましくは0.5~3、及びより好ましくは1.5~3の範囲である、項目2~6の何れか1項目に記載の触媒。
【0056】
[項目8]
Pt:Pdの質量比が0.1以上、好ましくは0.5以上、及びより好ましくは1以上である、項目2~7の何れか1項目に記載の触媒。
【0057】
[項目9]
前記触媒が、ガソリン粒子フィルター上に、その軸長又は半径方向に沿って、交互する通路上に、壁上に、又は多孔性壁内に、又はこれらの組み合わせに、全体に、又は部分的に被覆されている、項目2~8の何れか1項目に記載の触媒。
【0058】
[項目10]
ガソリン粒子フィルターが、ハニカム構造を有する壁流フィルターである、項目2~9の何れか1項目に記載の触媒。
【0059】
[項目11]
ガソリン粒子フィルターの平均孔寸法が、10~24μm、好ましくは14~20μmである、項目2~10の何れか1項目に記載の触媒。
【0060】
[項目12]
項目1~11の何れか1項目に記載の触媒を製造するための方法であって、以下の工程、
a)初期湿潤を達成するのに十分であり、及び任意に、卑金属酸化物、遷移族金属、結合材料、及びこれらの組み合わせ、及び/又はこれらの前駆体から成る群から独立して選ばれる1種以上の材料を使用して希釈、及び/又は混合するのに十分な水を使用して、Pt、及び任意に、Rh、Pd、Ru、及びIr等の少なくとも1種の他のPGM元素を、(任意にその1種以上の前駆体を使用して、)熱水的に安定な支持体材料に含浸させ、水性スラリーを形成する工程、
b)前記スラリーを粉砕し、及びガソリン粒子フィルターを被覆する工程、
c)触媒で被覆されたガソリン粒子フィルターを、か焼する工程、
を含む方法。
【0061】
[項目13]
項目1~11の何れか1項目に記載の触媒を製造するための方法であって、以下の工程、
a)初期湿潤を達成するのに十分であり、及び任意に、卑金属酸化物、遷移族金属、及び結合材料、及びこれらの組み合わせ、及び/又はこれらの前駆体から成る群から独立して選ばれる1種以上の材料を使用して希釈、及び/又は混合するのに十分な水を使用して、Pt、及び任意に、Pd、Ru、またはIr等の少なくとも1種の他のPGM元素を、(任意にその1種以上の前駆体を使用して、)支持体材料に含浸させ、第1の水性スラリーを形成する工程、
b)初期湿潤を達成するのに十分であり、及び任意に、卑金属酸化物、遷移族金属、結合材料、及びこれらの組み合わせ、及び/又はこれらの前駆体から成る群から独立して選ばれる1種以上の材料を使用して希釈、及び/又は混合するのに十分な水を使用して、Rh及び任意に、Pd、Ru、またはIr等の少なくとも1種の他のPGM元素を、(任意にその1種以上の前駆体を使用して、)支持体材料に含浸させ、第2の水性スラリーを形成する工程、
c)前記第2のスラリーを粉砕し、及びガソリン粒子フィルターを被覆する工程、
d)触媒で被覆されたガソリン粒子フィルターを、か焼する工程、
e)前記第1のスラリーを粉砕し、及びガソリン粒子フィルターを被覆する工程、
f)触媒で被覆されたガソリン粒子フィルターを、か焼する工程、
を含む方法。
【0062】
[項目14]
工程a)におけるPt:Pdの質量比が、0.1以上、好ましくは0.5以上、及びより好ましくは1以上である、項目13に記載の方法。
【0063】
[項目15]
項目12~14の何れか1項目に記載の方法によって得られる触媒。
【0064】
[項目16]
項目1~11及び15の何れか1項目に記載の触媒を使用してガソリンエンジン排ガスを後処理するための方法であって、ガソリンエンジンが1.01以上、好ましくは1.03以上、より好ましくは1.03~1.1の範囲のラムダ範囲で運転される場合には、前記触媒が、PMを酸化するために、NOをNOに変換する方法。
【0065】
[項目17]
項目1~11及び15の何れか1項目に記載の触媒を使用してガソリンエンジン排ガスを後処理するための方法であって、排ガスを、項目1~11及び15の何れか1項目に記載の触媒と接触させる工程を含む方法。
【0066】
[項目18]
ガソリンエンジン排ガス浄化システムであって、項目1~11及び15の何れか1項目に記載の触媒、及び少なくとも1つのTWCを含み、前記TWCは、好ましくはクローズ-カップル位置に配置されるガソリンエンジン排ガス浄化システム。
【実施例
【0067】
以下に実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。
【0068】
実施例P1~P5に使用したフィルターは、NGKC810壁流コージライトフィルター(4.66”×4.66”×6”、240メッシュ、壁厚:9.5ミリインチ)である。
【0069】
実施例P1~P5に使用した安定化アルミナは、Sasolからのもので、実施例P1~P5に使用したセリア及びジルコニア-希土類酸化物複合体は、Solvayからのものである。
【0070】
実施例P1:ブランクフィルター
実施例P2:硝酸塩溶液の状態のPd(5g/ft)及びRh(5g/ft)を、Pミキサーを使用して、安定化アルミナ、セリア及びジルコニア-希土類酸化物複合体上に、初期湿潤を達成するために希釈するために十分な水を使用して含浸させた。これらのPd及びRh含有粉を硝酸バリウム及び硝酸ジルコニウム水溶液を使用して混合し、そして水性スラリーを形成した。このスラリーを、粉砕(mill)し、及びフィルター上に被覆した。被覆後、フィルター及び触媒を450℃で2時間か焼した。触媒は、ガンマアルミナ、ジルコニウム酸化物、セリア酸化物、バリウム酸化物、ランタン酸化物、ネオジミウム酸化物、イットリウム酸化物、Pd及びRhを、触媒のか焼した質量に基づいて、24.8%、32.3%、27.4%、4.6%、1.4%、3.4%、5.5%、0.3%及び0.3%の濃度で含んでいた。
【0071】
実施例P3:アミン錯体水酸化物溶液の状態のPt(8g/ft)、硝酸塩溶液の状態のPd(7g/ft)及びRh(5g/ft)を、Pミキサーを使用して、安定化アルミナ、セリア及びジルコニア-希土類酸化物複合体上に、初期湿潤を達成するために希釈するために十分な水を使用して含浸させた。これらのPt、Pd及びRh含有粉を硝酸バリウム及び硝酸ジルコニウム水溶液を使用して混合し、そして水性スラリーを形成した。このスラリーを、粉砕し、及びフィルター上に被覆した。被覆後、フィルター及び触媒を450℃で2時間か焼した。触媒は、ガンマアルミナ、ジルコニウム酸化物、セリア酸化物、バリウム酸化物、ランタン酸化物、ネオジミウム酸化物、イットリウム酸化物、Pt、Pd及びRhを、触媒のか焼した質量に基づいて、それぞれ29.5%、26.1%、31.6%、3.7%、1.1%、2.7%、4.4%、0.4%、0.3%及び0.2%の濃度で含んでいた。
【0072】
実施例P4:アミン錯体水酸化物溶液の状態のPt(8g/ft)、及び硝酸塩溶液の状態のPd(7g/ft)又はRh(5g/ft)を、Pミキサーを使用して、安定化アルミナ、セリア及びジルコニア-希土類酸化物複合体上に、初期湿潤を達成するために希釈するために十分な水を使用して含浸させた。2種のタイプの粉末が形成された:Pd-Rh混合粉末(「粉末A」)及びPt-Pd混合粉末(「粉末B」)。粉末A及び粉末Bを、硝酸バリウム及び硝酸ジルコニウム水溶液を使用して混合し、そして水性スラリーA及び水性スラリーBをそれぞれ形成した。フィルター上に被覆する前に、両スラリーを粉砕処理(mill)した。フィルターを最初に、フィルターの出口側から始めてスラリーAで被覆し、450℃の温度で2時間か焼し;そしてフィルターの入口側から始めてスラリーBで再度被覆し、そして450℃の温度で2時間か焼した。スラリーAは、ガンマアルミナ、ジルコニウム酸化物、セリア酸化物、バリウム酸化物、ランタン酸化物、ネオジミウム酸化物、イットリウム酸化物、Pd及びRhを、それぞれ24.8%、32.3%、27.4%、4.6%、1.4%、3.4%、5.5%、0.3%及び0.3%の濃度で含んでいた。スラリーBは、ガンマアルミナ、ジルコニウム酸化物、セリア酸化物、Pt及びPdを、それぞれ48.1%、1.4%、48.1%、1.9%及び0.5%の濃度で含んでいた。入口及び出口から被覆したウォッシュコートの積載は、か焼後、1:4の質量比であった。
【0073】
実施例P5:アミン錯体水酸化物溶液の状態のPt(4g/ft)、及び硝酸塩溶液の状態のPd(6g/ft)又はRh(5g/ft)を、Pミキサーを使用して、安定化アルミナ、セリア及びジルコニア-希土類酸化物複合体上に、初期湿潤を達成するために十分な希釈水を使用して含浸させた。2種のタイプの粉末が形成された:Pd-Rh混合粉末(「粉末A」)及びPt-Pd混合粉末(「粉末B」)。粉末A及び粉末Bを、硝酸バリウム及び硝酸ジルコニウム水溶液を使用して混合し、そして水性スラリーA及び水性スラリーBをそれぞれ形成した。フィルター上に被覆する前に、両スラリーを粉砕処理した。フィルターを最初に、フィルターの出口側から始めてスラリーAで被覆し、450℃の温度で2時間か焼し;そしてフィルターの入口側でスラリーBで再度被覆し、そして450℃の温度で2時間か焼した。スラリーAは、ガンマアルミナ、ジルコニウム酸化物、セリア酸化物、バリウム酸化物、ランタン酸化物、ネオジミウム酸化物、イットリウム酸化物、Pd及びRhを、それぞれ24.8%、32.3%、27.4%、4.6%、1.4%、3.4%、5.5%、0.3%及び0.3%の濃度で含んでいた。スラリーBは、ガンマアルミナ、ジルコニウム酸化物、セリア酸化物、Pt及びPdを、それぞれ48.7%、1.4%、48.7%、1.0%及び0.2%の濃度で含んでいた。入口及び出口で被覆したウォッシュコートの積載は、か焼後、1:4の質量比であった。
【0074】
評価:
エンジン上での評価を行う前に、フルデューティーワーク条件下で2000rpmで運転するGeely2.oLPFLエンジン上で2時間にわたり、実施例P1~P5の被覆したフィルターに約10gの煤をそれぞれ積載した。積載した煤の正確な量は、煤の積載の前と後で、フィルターの熱い状態の質量の差として記録した。評価は、以下の手順を使用して、SGE1.5LTurbo-GDIベンチエンジン上で行った。
【0075】
1.温度を、リッチA/F条件下で、450℃(フィルターの入口温度)に傾斜させ、煤の燃焼を回避した;
2.エンジンを、450℃(フィルターの入口温度)で、ラムダ=1.05で30分間運転した。フィルターを通した質量流量は、66kg/hであった。この期間の間、フィルターの前と後ろに配置した2つの圧力センサー間の圧力降下をモニターした。
【0076】
ΔP%(百分率でのBP低減)を、以下のように定義した。
【0077】
【数1】
【0078】
ΔP%は、実験条件下における煤消費を評価する。ΔP%の数値が高い程、蓄積した煤が酸化される速度が速くなる。
【0079】
ここで、
BP(t)=30分における、フィルター(煤を搭載)を亘っての圧力降下、450℃及び66kg/hの質量流量で、エンジンベンチ上で測定。
【0080】
BP(t)=t=0における、フィルター(煤を搭載)を亘っての圧力降下、450℃及び66kg/hの質量流量で、エンジンベンチ上で測定。
【0081】
BP(tblank)=煤が搭載されていないフィルター(被覆、又はブランク)を亘っての圧力降下、同一の温度及び質量流量で、エンジンベンチ上で測定。
【0082】
評価結果を、図1に示す。結果から、ブランクフィルターは、450℃、リーンA/F条件下で、フィルターに捕捉された煤を酸化する有意な能力を有していないことが見出された。比較では、Pt/Pd/Rhを有する触媒は、煤の酸化速度が著しく増加した。基材の入口においてPtで別に被覆した触媒は、煤の酸化速度を更に増した。Pt/Rh=1.6の触媒は、Pt/Rh=0.8の触媒と比較して、著しく高い煤酸化を示した。
【0083】
実施例P6-P11:
実施例P6からP11で使用したフィルターは、CNG GC HP1.1壁流コージライトフィルター(4.66”×4.66”×4”、300メッシュ、壁厚:8.5ミリインチ)である。コアサンプルに被覆したフィルターの中心部から穴をあけ、プラグ領域を等しく両端部から除去し、寸法が1”×1”×3”、300メッシュ、壁厚:8.5ミリインチを備えた流通コアサンプルを得た。
【0084】
実施例P6~P11で使用した安定化アルミナは、Sasolからのもので、実施例P6~P11で使用したジルコニア-希土類金属酸化物複合体は、Solvayからのものである。
【0085】
実施例P6~P11の被覆されたフィルターの製造のための基本手順
アミン錯体水酸化物溶液の状態のPt、硝酸塩の状態のPd及びRhを、Pミキサーを使用して、安定化アルミナ、セリア及びジルコニア-希土類酸化物複合体上に、初期湿潤を達成するために希釈するために十分な水を使用して含浸させた。これらのPt、Pd及びRh含有粉を硝酸バリウム及び硝酸ジルコニウム水溶液を使用して混合し、そして水性スラリーを形成した。このスラリーを、粉砕処理(mill)し、及びフィルター上に入口端から被覆した。被覆後、フィルターからコアサンプルが穴あけされる前に、フィルター及び触媒を450℃で2時間か焼した。実施例P6~P11からの触媒組成を表1に示すが、質量百分率は、触媒のか焼質量に基づき、積載量は、フィルターの体積に対する貴金属、すなわちPt、Pd、及びRhの質量に基づいている。
【0086】
【表1】
【0087】
実施例P6~P11の評価
性能評価の前に、実施例P6~P11のコアサンプルを850℃で36時間、交互するリーン及びリッチ雰囲気下に熱水的にエイジングさせた。サンプルの三元変換活性(すなわち、HC、CO及びNOの変換)を、WLTCサイクル下にガソリン車シミュレーション反応器上で評価した。
【0088】
サンプルの低温煤燃焼活性を、軽微なリーン条件下におけるNO生成能力によって評価したが、この低温煤燃焼活性を、以下の手順を使用して同じ反応器上で試験した。
【0089】
1)触媒事前備処理:空間速度18000h-1、20ppmHC(C1として)、40ppmCO、150ppmNO、10%HO、14%CO、ラムダ=1.05、バランスN、触媒入口温度500℃30分;
2)ラムダ1.05:空間速度18000h-1、20ppmHC(C1として)、40ppmCO、150ppmNO、10%HO、14%CO、ラムダ=1.05、バランスN、触媒入口温度250℃から500℃へと、20℃分-1の傾斜速度での温度傾斜;
評価の結果を、図2及び3に示す。三元変換活性評価結果では、全ての実施例(P6~P11)が、類似したCO変換活性を示し、実施例P11は、他の実施例と比較して、最も悪いNOx活性を示すことが見出され、及び実施例P9、Pdを有さないサンプルは、他の実施例と比較して、最も悪いHC活性を示すことが見出された。(低温煤再生活性を反映する)NO生成評価試験では、実施例P6、セリア含有量が最も低いサンプルのみが、僅かなリーン雰囲気下で、相当に劣ったNO生成を示すことが判った。総じて、実施例P7、P8及びP10は、良好な三元変換活性と、効果的な低温煤燃焼に必要な良好なNO生成活性の両方を示した。
図1
図2
図3