(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】電子部品封止用の金型、その金型用インサート、インサートの製造方法および電子部品の封止方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/56 20060101AFI20231127BHJP
B29C 33/14 20060101ALI20231127BHJP
B29C 33/40 20060101ALI20231127BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
H01L21/56 R
B29C33/14
B29C33/40
B29C45/14
(21)【出願番号】P 2020569196
(86)(22)【出願日】2019-06-18
(86)【国際出願番号】 NL2019050374
(87)【国際公開番号】W WO2019245364
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-05-17
(32)【優先日】2018-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】513099670
【氏名又は名称】ベシ ネーデルランズ ビー.ヴイ.
【氏名又は名称原語表記】BESI NETHERLANDS B.V.
【住所又は居所原語表記】Ratio 6 NL-6921 RW Duiven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【氏名又は名称】大西 正悟
(72)【発明者】
【氏名】ケルシェス,セバスティアヌス フーベルトゥス マリア
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/107758(WO,A1)
【文献】特開2006-027082(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0054144(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0132190(US,A1)
【文献】特開2004-128303(JP,A)
【文献】特開2007-288081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/56
B29C 33/14
B29C 33/40
B29C 45/14
H01L 23/28-23/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対して変位可能な少なくとも2つの金型部品を備え、前記金型部品のうちの少なくとも1つは接触面に凹設された金型キャビティを有し、前記少なくとも2つの金型部品は封止される電子部品を囲む前記金型キャビティと係合するように構成されている、キャリアに実装された前記電子部品封止用の金型であって、
前記金型キャビティの少なくとも一部が前記電子部品に面するフレキシブル3次元成形面を有するインサートから形成されて
おり、
前記フレキシブル3次元成形面は、前記成形面のうち電子部品の露出したままにすべき部分が、成形の際に、封止される電子部品の形状に密着するように接触して構成され、
前記インサートの前記3次元成形面は、複数の電子部品を覆うように構成された連続面として形成されており、それぞれが電子部品の上面の少なくとも一部である前記成形面のうち電子部品の前記露出したままにすべき部分に接触するように構成された複数の接触領域を有しており、前記接触領域から前記3次元成形面の反対側の前記インサートの面までの距離は、少なくとも2つの前記接触領域の間で異なることを特徴とする金型。
【請求項2】
前記インサートの前記3次元成形面は、
加硫合成ゴム、
フッ化エラストマー
を含むポリマー材料から作られていることを特徴とする
請求項1に記載の金型。
【請求項3】
前記インサートは、前記金型部品に着脱可能に接続可能であることを特徴とする請求項
1または2に記載の金型。
【請求項4】
前記インサートの前記3次元成形面は70~100Sh-Aの間の硬さ
であることを特徴とする請求項
1~3のいずれかに記載の金型。
【請求項5】
前記インサートは、前記フレキシブル3次元成形面を支持する剛性結合部を有することを特徴とする請求項
1~4のいずれかに記載の金型。
【請求項6】
前記剛性結合部は前記インサートを金型部品へ結合する結合手段を備えることを特徴とする請求項
5に記載の金型。
【請求項7】
前記インサートの前記3次元成形面は、成形材料に対して不浸透性であることを特徴とする請求項
1~6のいずれかに記載の金型。
【請求項8】
前記電子部品に面する3次元成形面を有する複数のフレキシブルインサートを備えることを特徴とする請求項
1~7のいずれかに記載の金型。
【請求項9】
少なくとも2つの互いに対向する金型部品を備え、そのそれぞれがその中に凹設された金型キャビティを有する接触面を有し、前記金型キャビティは、フレキシブル3次元成形面を有するインサートによって少なくとも部分的に形成されていることを特徴とする請求項
8に記載の金型。
【請求項10】
前記インサートを受容する前記金型部品の開口部が減圧手段に接続されていることを特徴とする請求項
1~9のいずれかに記載の金型。
【請求項11】
請求項
1~10のいずれかに記載の金型用のフレキシブル3次元成形面を有するインサート。
【請求項12】
請求項
1~11のいずれかに記載のインサートの製造方法であって、ポリマー材料を剛性結合部とカウンターモールドとの間で加硫剤と一緒に成形することにより、前記ポリマー材料を前記剛性結合部上で加硫することを有する方法。
【請求項13】
請求項
1~10のいずれかに記載の金型を用いる、キャリアに実装された電子部品の封止方法であって
a)前記電子部品が金型キャビティに面するように2つの金型部品間に1つ以上の電子部品を支持するキャリアを配置するステップと、
b)前記金型部品が前記金型部品間で前記キャリアをクランプし、前記金型キャビティの少なくとも1つが封止される前記電子部品を囲み、前記インサートが前記電子部品の少なくとも1つおよび/または前記キャリアと接触するように、前記金型部品を互いの方向に移動させるステップと、
c)前記金型キャビティ内に成形材料を搬入するステップと、
d)前記金型部品を互いに離間させ、前記金型部品から成形された電子部品を有する前記キャリアを取り外し、これによりまた前記電子部品から前記インサートを解放するステップと、を有する方法。
【請求項14】
前記インサートの前記フレキシブル3次元成形面を少なくとも部分的に覆うように前記金型キャビティ内に箔層が持ち込まれることを特徴とする請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
処理ステップb)の際に、前記金型部品が互いの方向に移動するとともに、前記箔層が前記インサートと前記電子部品および/または前記キャリアとの間でクランプされることを特徴とする請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
前記金型部品の開口部を介して前記箔層と前記インサートの前記フレキシブル3次元成形面との間が減圧されることを特徴とする請求項
14または15に記載の方法。
【請求項17】
方法のステップc)による前記金型キャビティ内への前記成形材料の搬入は、前記金型部品が方法のステップb)によって互いの方向に移動した後で、前記成形材料に圧力をかけて前記電子部品を囲む前記金型キャビティへ液状成形材料を移動させることによってなされることを特徴とする請求項
13~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記成形材料が前記金型キャビティ内に搬入される際に100~200℃の間の処理温度が適用されることを特徴とする請求項
13~17のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリアに実装された電子部品を封止するための金型に関する。金型は、互いに対して変位可能な少なくとも2つの金型部品を備え、金型部品のうちの少なくとも1つは接触面に凹設された金型キャビティを有し、これらの少なくとも2つの金型部品は、封止される電子部品を囲む金型キャビティと係合するように構成されている。
本発明は、また、そのような金型を用いてキャリアに実装された電子部品を封止するための方法を提供する。方法は以下の処理ステップ、すなわち、a)電子部品が金型キャビティに面するように2つの金型部品間に1つ以上の電子部品を支持するキャリアを配置するステップと、b)金型部品が金型部品間でキャリアをクランプし、金型キャビティの少なくとも1つが封止される電子部品を囲み、インサートが電子部品の少なくとも1つおよび/またはキャリアと接触するように、金型部品を互いの方向に移動させるステップと、c)金型キャビティ内に成形材料を搬入するステップと、d)金型部品を互いに離間させ、金型部品から成形された電子部品を有するキャリアを取り外し、これによりまた電子部品からインサートを解放するステップと、を有する。さらに本発明による金型および方法に使用されるインサート、ならびにそのようなインサートを製造する方法が提供される。
【背景技術】
【0002】
通常、「基板」(substrate)とも呼ばれるキャリアに実装された電子部品の成形材料による封止は公知の技術である。工業的な規模においてそのような電子部品には封止、通常、充填材が添加された硬化型エポキシ樹脂の封止が提供される。市場においては、種々の寸法を有し、寸法の正確さ要求が増している電子部品をより大量に同時封止するというトレンドがある。これは、単一パッケージ内に不均一な電子部品の組み合わせを有する製品をもたらす可能性がある。
ここで電子部品とは、通常さらに小型化されていく半導体(チップ、LEDでさえもこの点においては、また半導体と見なされる)のようなものを想定することができる。封止材料が配置されると、集合的に封止される電子部品は、キャリアの片面、あるいは両面に配置されて封止(パッケージ)される。成形材料または封止材料は、しばしば電子部品が完全にまたは部分的にそこに埋め込まれたキャリアに接続された平坦な層の形状をとる。キャリアは、リードフレーム、エポキシから部分的に製造された(ボード、または基板などとも呼ばれる)多層キャリア、または別のキャリア構造から構成されてもよい。
【0003】
少なくとも2つの半金型を備える先行技術の封止プレス機の通常の使用は、キャリアに実装された電子部品の封止の際に、少なくとも1つの凹設された金型キャビティ内または複数の凹設された金型キャビティ内でなされる。半金型の間に封止される電子部品付きキャリアを配置した後で、半金型はそれらがキャリアをクランプするように互いの方向に移動する。その後、通常は加熱された液状成形材料が、トランスファーモールドにより金型キャビティ内に供給される。代替として、金型部品を閉じる前に金型キャビティ内に成形材料を搬入することもまた可能である。トランスファーモールドの代替のこの処理は、圧縮成形と呼ばれる。
1つまたは複数の金型キャビティ内での成形材料の少なくとも部分的な(化学的な)硬化の後で、封止電子部品を有するキャリアが、封止プレス機から取り外され、封止製品は、さらなる処理の際に相互に分離されてもよい。封止工程の際に箔が使用されても良い、とりわけ、電子部品の一部を遮蔽し、電子部品の箔で覆われた部分が成形材料によって覆われるのを防ぐために箔が使用されてもよい。
(全面成形(over moulded)されてはいない電子部品は「ベアダイ」または「露出されたダイ」(exposed die)と呼ばれるが)部分的に成形材料で覆われた電子部品は、例えば種々のタイプのセンサ部品、超薄型パッケージまたは熱消散部品などのような、種々の用途に用いられている。この封止方法は、工業的に大規模に実践されており、部分的に未被覆である電子部品の適切に制御された封止を可能にしている。
部分的に被覆されない電子部品を形成する先行技術の電子部品の封止工程の問題点は、未被覆とすべき電子部品の平坦な領域の高さが同一である、より大量の電子部品の封止にのみ工程が適合していることである。電子部品の未被覆とする領域のフレキシビリティおよび種々の高さを有する電子部品を部分的に未被覆で同時に封止する可能性が制限されていることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、種々の寸法を有する電子部品の、および/または種々の形状の未被覆部分を有する電子部品の、部分的な未被覆封止を可能にする代替金型および電子部品の封止方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、この目的のために導入部に従った、キャリアに実装された電子部品封止用の金型を提供する。ここで金型は、金型キャビティの少なくとも一部が電子部品に面するフレキシブル3次元成形面を有するインサートから形成されている。インサート成形面のフレキシビリティは、ここでは、金型部品の剛性構造に対する柔軟さとして解釈される。
このようなインサートは、また「敷きがね」(liner)と呼ばれてもよく、任意の所望形状を有する接触面を実現可能にする。インサートの成形面は、通常、封止される電子部品の形状に密着するように形成されている。任意の所望形状の接触面が実現しうるので、本発明による金型は、成形される電子部品の形状により多くの自由度を可能にし、インサートを種々の大きさの電子部品の組み合わせに適合可能にするとともに異なる「被覆率」(cover rate)要求を有する同一の大きさの電子部品の組み合わせにも適合可能にする。
例えば、異なる高さを有して単一のパッケージ内にある種々の電子部品は、例えば露出された高い電子部品の表面と同様に小さな電子部品の上面を残して「ベアダイ」成形されうる。インサートのフレキシブル3次元成形面は、電子部品の露出したままにすべき部分と成形の際に接触するように構成されている。また、インサートはキャリア(の一部)に接触するように構成することに加えて、又は代替的に、キャリアの一部が露出されたままであるように1つ以上の電子部品と接触することも可能である。キャリアのそのような露出部分は、コネクタとしておよび/または1以上の部品の将来の実装のための実装表面として機能してもよい。
また、硬化した成形材料の局部的な高さの差異が、インサートの成形面のトポロジーにより実現されてもよい。さらに、インサート成形面のフレキシビリティによって、インサートは変形することにより電子部品の高さ公差を補償してもよい。このような仕方でフレキシブル3次元成形面が電子部品の形状に完全に適合していない場合でも、成形の際に電子部品に過剰な圧迫力が生じない。
【0006】
インサートの3次元成形面は、通例では、複数の電子部品を覆うように構成された連続面として形成されてもよい。前記複数の電子部品は、典型的には同一のキャリアに実装されている。複数の電子部品を覆う成形面にとっては、前記複数の電子部品のレイアウトに適合していることと同様に、面それ自体が十分大きくなくてはならない。同一の3次元成形面を用いて複数の電子部品を覆うことが可能である利点は、より大量の電子部品を同時に封止できることである。キャリアに実装された電子部品の表面のトポロジーに適合する3次元成形面のために、電子部品は種々の寸法(および特に種々の高さ)を有することができる。
【0007】
インサートの3次元成形面は、さらに電子部品の上面の少なくとも一部に接触する複数の接触領域を有してもよく、前記接触領域から3次元成形面の反対側のインサートの面までの距離は、少なくとも2つの前記接触領域の間で異なる。接触領域から3次元成形面の反対側のインサートの面までの距離は、その接触領域の位置でのインサートの高さまたは厚さに対応する。この距離または高さがインサート成形面が金型キャビティ内に突出する距離を決定する。
接触領域から3次元成形面の反対側のインサートの面までの距離は、成形の際に、キャリアが金型部品間でクランプされて成形材料が金型キャビティ内に運ばれるように、前記接触領域がそれぞれ電子部品の上面の少なくとも一部に接触するように選択される。これは、接触領域から3次元成形面の反対側のインサートの面までの距離を、前記接触領域で覆われる電子部品の高さに基づいて選択することにより達成される。
接触領域によって覆われる電子部品の上面部分は、この結果、成形材料から解放されている。接触領域から3次元成形面の反対側のインサートの面までの距離が相互に異なるという事実によって、異なる高さを有する複数の電子部品、そして好ましくは1またはそれ以上のキャリアに実装された全ての電子部品を同時に成形することが可能になる。通常の場合には、複数の接触領域は、それぞれ対応する接触領域で覆われる電子部品の上面に対して実質的に平行に方向付けられた平坦面によって形成される。一般に、このことは、複数の接触領域が3次元成形面の反対側のインサートの面に平行に方向付けられていることを意味する。
【0008】
前記接触領域に加えて、成形面は電子部品に接触しないように構成された更なる領域を有してもよい。前記更なる領域から3次元成形面の反対側のインサートの面までの距離を変えることで、前記更なる領域の真下の位置での成形材料の層の厚さを制御し、これに応じて変化させることが出来る。
【0009】
本発明による金型の1実施形態においては、インサートの3次元成形面は、例えば、加硫合成ゴム、またはより具体的にはフッ化エラストマーなどのポリマー材料から形成されてもよい。通常の変形例においては、インサートはFKMタイプのゴムを含む。インサートの3次元成形面に加硫合成ゴム、特にフッ化エラストマーを使用する利点は、このタイプの材料は成形材料が処理される温度での耐熱性がある一方でまた柔軟であり、化学薬品にも強いからである。成形材料が金型キャビティ内に搬入される際に通常、100~200℃の間の処理温度が適用されるので耐熱性が要求される。フッ化エラストマーは通常、より大きな耐熱性、耐化学薬品性がある。
【0010】
インサートは、インサートを交換可能にするために金型部品に着脱可能に接続可能であってもよい。このことにより、製造工程の間に金型部品を交換せずに異なる配置の電子部品の封止を行うことや摩耗したインサートの交換が可能になる。
【0011】
金型の多能性を高める更なる解決策は、金型が電子部品に面する3次元成形面を有する複数のフレキシブルインサートを備えてもよいことである。それぞれのインサートの3次元成形面は、ここでは、異なるレイアウトを有する電子部品が同一の金型内で同時に成形されることが可能なように異なるレイアウトを有してもよい。しかしながら、パッケージ化される電子部品のグループが、同一型形状のパッケージに成形される場合には、インサートの成形面は同じ形状であってもよい。複数のインサートを使用することのさらなる利点は、インサートが例えば摩耗や故障の場合に、互いに個別に取り換えられることである。
【0012】
金型の多能性を高めるさらに別の方法は、金型が少なくとも2つの互いに対向する金型部品を備え、そのそれぞれがその中に凹設された金型キャビティを有する接触面を有し、前記金型キャビティは、フレキシブル3次元成形面を有するインサートによって少なくとも部分的に形成されてもよいことである。金型キャビティを有する2つの互いに対向する金型部品の接触面を提供することにより、成形の際に成形材料で満たされるキャリアの反対側上のキャリアおよび/または電子部品の間に空間が残されてもよい。
このようにしてキャリアの両側に配置された、キャリアおよび/または電子部品(の一部)を、同時に封止することが可能になる。加えて、双方の金型キャビティがフレキシブル3次元成形面を有するインサートによって少なくとも部分的に形成されている場合には、成形される電子部品の形状の自由度および電子部品の高さ公差の補償性能がキャリアの両側に実装される電子部品に適用される。
【0013】
代替的に、一対の互いに対向するインサートの互い対向するフレキシブル3次元成形面のうちの一つは、キャリアの片側にパッケージ化するものであってもなくてもよい電子部品用の順応性のある支持面として機能してもよい。一方、別の互いに対向するフレキシブル3次元成形面は、キャリアの反対側の電子部品を囲む金型キャビティの少なくとも一部を形成してもよい。これにより支持面のように働くフレキシブル3次元成形面は、好ましくは、支持される電子部品およびキャリアのトポロジーに従うトポロジーを有する。支持面としてインサートのフレキシブル3次元成形面を使用する利点は、前記支持面によって支持される面の形状の自由度である。
その上、支持面のように働くフレキシブル3次元成形面は、支持される面の寸法公差を補償することができ、支持される面がすでに封止された電子部品を備える場合に特に役立つ。本発明による金型のこの実施形態を用いて、キャリアの片側上のみの電子部品が封止されてもよく、それと共に前記キャリアはその両側に実装された電子部品を有してもよい。これにより、キャリアの一方側上の電子部品は、パッケージ化されないままであることも可能である。しかしながら、キャリアの両側上の電子部品はこれによりその後にパッケージ化されることも可能であり、ここで、キャリアは最初の成形工程の後で上下を逆にされる。
【0014】
本発明の好ましい実施形態においては、インサートの3次元成形面は、ASTMのD2240のタイプAデュロメータで硬さが70~100の間であり(a ASTM D2240 type A hardness between 70 - 100 Sh-A)、好ましくは硬さが80~90の間(80 - 90 Sh-A)である。
この硬さ範囲内の成形面はフレキシビリティと寸法安定性との間の適切なバランスを提供することが分かっている。インサート成形面は、電子部品の寸法公差に適合するために十分なフレキシビリティが提供されるべきである。そのフレキシビリティのために、成形面は、電子部品上に高い圧力を加えることなく、パッケージ化後に裸のままであることを意図した電子部品の種々の部分に接触することができる。
他方、インサート成形面は、成形工程の際に、そして特に金型キャビティ内に成形材料を挿入する際に寸法的安定性を維持するに十分な剛性を有していなければならない。
成形面はこれにより、成形材料がなく(裸で)露出したままであるべき電子部品の部分上にぴったりと密着することになる。これにより、電子部品の必要な部分だけを成形材料が封止することを確保する。
【0015】
インサートは、フレキシブル3次元成形面を支持する剛性結合部を有してもよい。剛性結合部は金属のような実質的に堅い材料から作られてもよい。通常、剛性結合部は、成形される電子部品に面する側の反対側に設けられる。インサートの剛性結合部は、フレキシブル成形面に対して制御された支持を提供する。この利点はインサートの寸法安定性である。さらに剛性結合部は、インサートの金型への結合を容易にしうる。金型部品への容易な結合のために剛性結合部は結合手段を備えてもよい。
【0016】
金型キャビティ内に挿入された成形材料が金型キャビティの内側に保持され、インサートを介して漏れ出さないことを確実にするために、インサートの3次元成形面は成形材料に対して不浸透性であることが好ましい。成形材料がインサートの成形面に浸透しないようにすることにより、金型キャビティの良好なシールを達成するために例えばカバーシートまたは箔の形態などでインサートを追加的に覆うことは必要ではない。
【0017】
本発明による金型の更なる実施形態においては、金型キャビティを有し金型インサートを受容するように構成された金型部品は開口部を備える。前記開口部は、金型キャビティとともにインサートを金型の外側に接続する。
この開口部は、金型キャビティ内に部分的な真空を生成するために、特定の例では、インサートのフレキシブル3次元成形面に部分的な真空を生成するために減圧手段に接続されてもよい。開口部を前記インサート成形面に接続するために、空間がインサートと金型部品のうちの一つに凹設された金型キャビティの側面との間に設けられてもよい。代替的にまたは追加的に、インサートは、成形面から成形面の反対側のインサートの裏面に走る吸引孔を備えてもよい。
箔層がインサートの3次元成形面と封止される電子部品との間に挿入された場合には、成形面と薄層との間で行われる減圧が成形面に亘って箔層を吸引する。これにより、箔層が成形面の三次元トポグラフィに従うことを確実にする。前記箔層は、とりわけ、成形された電子部品の金型キャビティからの解放を容易にするために適用されてもよい。
【0018】
本発明はさらに本発明による金型に用いられるインサートに関し、インサートはフレキシブル3次元成形面を備える。この利点は、本発明による金型との関係で既に述べている。
【0019】
本発明はまた、本発明によるインサートを製造する方法に関する。この方法は、ポリマー材料を剛性結合部とカウンターモールド(counter mould)との間で加硫剤と一緒に成形することにより、ポリマー材料を剛性結合部上で加硫することを有する。剛性結合部上にポリマー材料を加硫することにより、フレキシブル3次元成形面と剛性結合部との間の強力な結合が実現されてもよい。加硫の際に、ポリマー鎖間の架橋結合が形成されてポリマー材料、および従ってインサートの3次元成形面の強度と耐久性が顕著に増加する。しかしながら最適な硬化を達成するためにオートクレーブのような後硬化工程が必要とされる可能性がある。
【0020】
最後に、本発明は、また本発明による金型を用いるキャリアに実装された電子部品の封止方法に関する。
方法は以下の処理ステップ、すなわち、a)電子部品が金型キャビティに面するように2つの金型部品間に1つ以上の電子部品を支持するキャリアを配置するステップと、b)金型部品が金型部品間でキャリアをクランプし、金型キャビティの少なくとも1つが封止される電子部品を囲み、インサートが電子部品の少なくとも1つおよび/またはキャリアと接触するように、金型部品を互いの方向に移動させるステップと、c)金型キャビティ内に成形材料を搬入するステップと、d)金型部品を互いに離間させ、金型部品から成形された電子部品を有するキャリアを取り外し、これによりまた電子部品からインサートを解放するステップと、を有する。
この方法を遂行することにより、成形の際にインサートが電子部品および/またはキャリアに接触している少なくとも1つの場所を除いて、電子部品とキャリアが成形材料で少なくとも部分的に覆われたパッケージ化された製品が得られる。すでに述べているように、フレキシブルインサート成形面の使用により、インサートは、限定的な変形で電子部品の高さ公差を補償可能である。このことは、成形の際に電子部品上に過剰な圧迫力が発生することを防ぐ。本発明によるインサートの使用により、最大50μmの高さ公差を補償することさえ可能である。
【0021】
1つ以上の電子部品を支持するキャリアが金型部品間でクランプされる前に、インサートのフレキシブル3次元成形面を少なくとも部分的に覆う箔層を金型キャビティ内にもたらすことが可能である。前記箔層は、金型キャビティから部分的に成形された電子部品の解放を助ける解放箔のように働いてもよい。特に、前記箔層は、金型が互いの方向に移動する間に処理ステップb)として、インサートと電子部品および/またはキャリアとの間でクランプされる。
好ましい実施例においては、金型部品の開口部を介して箔層とインサートのフレキシブル3次元成形面との間が減圧される。この減圧は、箔層が成形面の三次元トポグラフィに密接に追随して成形工程全体を通して成形面に保持されることを確保する。
【0022】
本発明によるキャリアに実装した電子部品の封止方法の1実施形態においては、方法のステップc)による金型キャビティ内への成形材料の搬入は、金型部品が方法のステップb)によって互いの方向に移動した後で、成形材料に圧力をかけて電子部品を囲む金型キャビティへ液状成形材料を移動させることによってなされる。この方法はまた、「トランスファーモールド」として知られている。成形材料は金型部品が互いに離間する前に少なくとも部分的に硬化するので、成形された形状の製品は、金型から取り外される際にその形状を失なうことはない。
代替的な成形工程として、金型部品が方法のステップb)により互いの方向に移動する前に方法のステップc)により金型キャビティ内に成形材料が運ばれてもよい。
このような成形工程はまた、「圧縮成形」として知られている。本発明は、成形工程の特別なタイプとは無関係に実施可能である。通常、成形材料は成形工程の際におよび/またはその前に加熱されるが、それはまた本発明を限定することにはならない。
【0023】
本発明は、以下の図面に示す例示的な実施形態に基づいて更に明瞭にされる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明による金型が電子部品を有するキャリアをクランプしている断面図である。
【
図2a】本発明による金型を用いてキャリアの片面に実装された電子部品の封止方法のステップを概略的に説明する説明図である。
【
図2b】本発明による金型を用いてキャリアの片面に実装された電子部品の封止方法のステップを概略的に説明する説明図である。
【
図2c】本発明による金型を用いてキャリアの片面に実装された電子部品の封止方法のステップを概略的に説明する説明図である。
【
図2d】本発明による金型を用いてキャリアの片面に実装された電子部品の封止方法のステップを概略的に説明する説明図である。
【
図3a】本発明による金型を用いてキャリアの両面に実装された電子部品の封止方法のステップを概略的に説明する説明図である。
【
図3b】本発明による金型を用いてキャリアの両面に実装された電子部品の封止方法のステップを概略的に説明する説明図である。
【
図3c】本発明による金型を用いてキャリアの両面に実装された電子部品の封止方法のステップを概略的に説明する説明図である。
【
図3d】本発明による金型を用いてキャリアの両面に実装された電子部品の封止方法のステップを概略的に説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明による金型1が、単一パッケージ内に組み込み用の複数の電子部品3を支持しているキャリアまたは基板2をクランプしている断面図を示す。
金型1は、2つの金型部品4、5を備えており、上型部品5の接触面7に金型キャビティ6が凹設されている。金型キャビティ6は、フレキシブル3次元成形面9を有するインサート8によって画定される片側にあり、この表面9は、電子部品3に面している。
3次元成形面9の反対側は上型部品5に面しており、インサート8は、成形面9を支持するように働く剛性結合部10を備える。インサート8は上型部品5に対して剛性結合部10への結合手段として働くボルト11によって取り外し可能に接続している。
上型部品5はさらに吸引開口部12を備え、吸引開口部はその一端が金型1の外側に接続された減圧手段13に接続されている。開口部12は、インサート8と金型キャビティ6の面の間に設けられた空間を経て金型キャビティ6の内側につながっており、フレキシブル3次元成形面9と箔層(foil layer)14の間に減圧が働くようにする。前記箔層14は、一方でインサート8、他方で電子部品3およびキャリア2との間にクランプされており、それにより少なくとも部分的にフレキシブル3次元成形面9を覆っている。箔層14に接触している電子部品3の表面15およびキャリア2の表面16は成形後に露出される。箔層14は、成形された電子部品3を有するキャリア2が金型部品4、5から解放される場合に離間箔のように働く。
【0026】
図2aから2dは、本発明による金型を用いてキャリアの片面に実装された電子部品の封止方法のステップの概略図を示す。これらの図を通して、同様な要素は同様な参照番号で表している。
図1と同様に、
図2aから2dは、(これらの図にはこれ以上示されていない)金型の金型キャビティ21の一部を囲む金型インサート20を示す。インサート20は、フレキシブル3次元成形面22およびフレキシブル3次元成形面22に取り付けられた剛性結合部23を備える。剛性結合部23は、金型部品に接続するように構成されている。フレキシブル3次元成形面22は、その一面に複数の電子部品25、26、27を備えたキャリアまたは基板24に面している。
図2aは2つの電子部品26、27が、例えば製造公差および/または電子部品のタイプの違いなどによる高さの差hを有することを示している。
図2bは、金型部品が互いの方向に移動した後の状況を図示する。ここで、インサート20のフレキシブル3次元成形面22が電子部品25、26、27に接触している。この図から、高さの差hがフレキシブル3次元成形面22によって補償されているのが分かる。
図2cに示すように、キャリア24およびその上に実装された電子部品25、26、27が金型部品の間で囲まれた後で、成形材料28が金型キャビティ21内に導かれる。その充填方向は矢印29で示す。金型キャビティ21内での完全な充填の後で、金型部品は互いに離間され、フレキシブル3次元成形面22を電子部品25、26、27から持ち上げる。
図2dは、本発明による方法から得られたパッケージ製品30を示す。ここで、電子部品25、26、27は、成形材料28により部分的に封止されている。電子部品25、26、27の成形中にフレキシブル3次元成形面22によって覆われていた部分は裸のままである。
【0027】
図3aから3dは、本発明による金型の別の実施形態を用いてキャリアまたは基板44の両側に実装された電子部品45、46、47、48、49、50の封止方法のステップの概略図を示す。これらの図においても同様な要素は同様な参照番号により表している。
図3aから3dに示す方法のステップは、
図2aから2dに示された方法のステップとよく似ている。しかしながら重要な違いは、(これらの図にはこれ以上示されていない)金型が、ここでは、それぞれが2つの対向する金型キャビティ42、43のうちの異なる一つの一部を形成する2つの金型インサート40、41を備えることである。金型キャビティ42、43は、ここではキャリアまたは基板44の両側のうちの一方側をそれぞれ囲むように構成されており、両側の各々に封止される電子部品45、46、47、48、49、50とキャリア44の一部とを備える。インサート40、41は、共にフレキシブル3次元成形面51、52およびフレキシブル3次元成形面51、52に取り付けられた剛性結合部53、54を備える。
図3bは、金型部品が互いの方向に移動した後の状況を図示する。ここで、一つのインサート40のフレキシブル3次元成形面51はキャリア44の片側の電子部品45、46、47に接触しており、別のインサート41のフレキシブル3次元成形面52はキャリア44の別の側の電子部品48、49、50に接触している。加えて、後述したインサート41の3次元成形面52が接触しているキャリア44の一部55は、成形後に露出される。
図3cは、金型キャビティ42、43内に成形材料56を導く連続的なステップを示し、その挿入方向は矢印57で示している。金型キャビティ42、43内での完全な充填の後で、金型部品は互いに離間され、フレキシブル3次元成形面51、52を電子部品45、46、47、48、49、50から引き離す。
図3dは、本発明による方法から得られたパッケージ製品58を示す。ここで、電子部品45、46、47、48、49、50は、成形材料56によって部分的に封止されている。成形中にフレキシブル3次元成形面51、52によって覆われていた電子部品45、46、47、48、49、50の部分と同様にキャリア44の部分55は露出している。