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特許7391057測定点決定装置、測定点決定方法、および、測定点決定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】測定点決定装置、測定点決定方法、および、測定点決定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 29/10 20060101AFI20231127BHJP
   G01R 29/08 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
G01R29/10 Z
G01R29/10 A
G01R29/08 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021007340
(22)【出願日】2021-01-20
(65)【公開番号】P2022111721
(43)【公開日】2022-08-01
【審査請求日】2023-03-06
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、総務省「多様なユースケースに対応するためのKa帯衛星の制御に関する研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002491
【氏名又は名称】弁理士法人クロスボーダー特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 泰
(72)【発明者】
【氏名】草野 正明
(72)【発明者】
【氏名】内田 繁
(72)【発明者】
【氏名】金指 有昌
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-251821(JP,A)
【文献】特開平07-183842(JP,A)
【文献】特開平10-160775(JP,A)
【文献】特開2010-122044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 29/10
G01R 29/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工衛星に搭載された衛星通信システムと地上との通信評価実験を行う地上局を設置する測定点を決定する測定点決定装置において、
前記測定点の組み合わせの候補である測定点候補を抽出する候補抽出部と、
前記衛星通信システムが備えるアンテナの指向性特性を表す指向性特性計算値であって、前記測定点候補の座標を含む範囲においてサンプリングされた座標における利得から成る指向性特性計算値に基づいて、前記測定点候補の座標の利得を取得する利得取得部と、
前記測定点候補の座標の利得に基づいて前記アンテナの指向性特性を指向性特性近似値として推定する近似値計算部と、
前記指向性特性計算値と前記指向性特性近似値との対応を定量的に評価するために用いる評価指標を計算し、前記評価指標を用いて前記対応の真偽を判定し、前記対応が真である場合、前記測定点候補を前記測定点として決定する評価部と
を備える測定点決定装置。
【請求項2】
前記評価部は、
前記指向性特性計算値と前記指向性特性近似値との差異を前記評価指標として計算し、前記評価指標としきい値とを用いて前記対応の真偽を判定する請求項1に記載の測定点決定装置。
【請求項3】
前記候補抽出部は、
前記対応が偽である場合、新たな測定点の組み合わせを前記測定点候補として抽出する請求項1または請求項2に記載の測定点決定装置。
【請求項4】
前記評価部は、
前記対応が偽である場合、前記範囲を縮小し、前記測定点候補のうち縮小された範囲に含まれる測定点候補を用いて縮小後の指向性特性近似値を推定し、前記縮小後の指向性特性近似値と前記縮小された範囲における縮小後の指向性特性計算値とに基づいて縮小後の評価指標を計算し、前記縮小後の指向性特性計算値と前記縮小後の指向性特性近似値との対応が真の場合に、前記縮小された範囲を配列に設定して出力する請求項1または請求項2に記載の測定点決定装置。
【請求項5】
前記評価部は、
前記縮小後の指向性特性計算値と前記縮小後の指向性特性近似値との対応が偽の場合、前記縮小された範囲をさらに縮小し、前記縮小後の指向性特性計算値と前記縮小後の指向性特性近似値との対応が真になるまで、あるいは、前記縮小された範囲が予め設定された最小値となるまで、前記縮小後の指向性特性計算値と前記縮小後の指向性特性近似値との対応の真偽の判定を繰り返す請求項4に記載の測定点決定装置。
【請求項6】
前記評価部は、
前記測定点の組み合わせの全てについて前記対応が偽の場合、前記配列から最大の範囲を持つ測定点候補を前記測定点として決定する請求項5に記載の測定点決定装置。
【請求項7】
前記近似値計算部は、
前記測定点候補の座標の利得と前記測定点候補の座標における雑音情報とに基づいて前記アンテナの指向性特性を前記指向性特性近似値として推定する請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の測定点決定装置。
【請求項8】
前記候補抽出部は、
前記アンテナの走査軌道を計算し、前記走査軌道に基づいて前記測定点候補を抽出する請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の測定点決定装置。
【請求項9】
前記利得取得部は、
前記指向性特性計算値から前記測定点候補の座標の利得を読み取ることにより、あるいは、前記指向性特性計算値に基づいて前記測定点候補の座標の利得を補間することにより、前記測定点候補の座標の利得を取得する請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の測定点決定装置。
【請求項10】
人工衛星に搭載された衛星通信システムと地上との通信評価実験を行う地上局を設置する測定点を決定する測定点決定装置に用いられる測定点決定方法において、
候補抽出部が、前記測定点の組み合わせの候補である測定点候補を抽出し、
利得取得部が、前記衛星通信システムが備えるアンテナの指向性特性を表す指向性特性計算値であって、前記測定点候補の座標を含む範囲においてサンプリングされた座標における利得から成る指向性特性計算値に基づいて、前記測定点候補の座標の利得を取得し、
近似値計算部が、前記測定点候補の座標の利得に基づいて前記アンテナの指向性特性を指向性特性近似値として推定し、
評価部が、前記指向性特性計算値と前記指向性特性近似値との対応を定量的に評価するために用いる評価指標を計算し、前記評価指標を用いて前記対応の真偽を判定し、前記対応が真である場合、前記測定点候補を前記測定点として決定する測定点決定方法。
【請求項11】
人工衛星に搭載された衛星通信システムと地上との通信評価実験を行う地上局を設置する測定点を決定する測定点決定装置の測定点決定プログラムにおいて、
前記測定点の組み合わせの候補である測定点候補を抽出する候補抽出処理と、
前記衛星通信システムが備えるアンテナの指向性特性を表す指向性特性計算値であって、前記測定点候補の座標を含む範囲においてサンプリングされた座標における利得から成る指向性特性計算値に基づいて、前記測定点候補の座標の利得を取得する利得取得処理と、
前記測定点候補の座標の利得に基づいて前記アンテナの指向性特性を指向性特性近似値として推定する近似値計算処理と、
前記指向性特性計算値と前記指向性特性近似値との対応を定量的に評価するために用いる評価指標を計算し、前記評価指標を用いて前記対応の真偽を判定し、前記対応が真である場合、前記測定点候補を前記測定点として決定する評価処理と
をコンピュータである前記測定点決定装置に実行させる測定点決定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測定点決定装置、測定点決定方法、および、測定点決定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
人工衛星に搭載された通信システムである衛星通信システムは、地上でのシステム評価試験に加え、打ち上げ後に、軌道上での健全性を評価する試験が行われる。このような、軌道上での健全性を評価する試験は、IOT(In-orbit Testing)と呼ばれる。
IOTでは、スイッチのオンオフ、あるいは機械駆動部の確認といった試験に加え、アンテナにより電波を受信および送信する通信評価実験が行われる。
【0003】
通信評価実験では、まず地上に設置された送信局から人工衛星に向けて電波信号が送信される。次に、電波信号を人工衛星の受信部にて受信する。さらに人工衛星では、電波信号に対してアナログ・デジタル信号処理を行い、アナログ・デジタル信号処理後の信号を送信部から送信し、地上に設置された受信局で受信する。
このとき、送信局および受信局といった地上局を設置する測定点の妥当性を評価し、適切な測定点を決定する方法が求められている。
【0004】
特許文献1には、地上でアンテナの指向性を測定する電磁波測定点算出装置が開示されている。特許文献1では、アンテナから指向性の強い方向あるいは指向性カーブの変曲点を優先的に測定することで、2次元格子状に設定していた測定点数を大幅に削減する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-164102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術は、暗室などで任意にアンテナを動かせる場合には時間短縮に大きく貢献する方法である。
しかしながら、衛星通信システムの場合、地上局の設置には地理的な制約条件が発生するため、必ずしも電界強度を測定できるとは限らない。地上局はなるべく指向性感度の高い点の近傍に配置されることが好ましいが、そうでない点に設置せざるを得ない状況も発生する。また、人工衛星の姿勢変化を考慮するならば、地上局は人工衛星の方向に対して決められる方位角、仰角からなる二次元平面上で直線に地上局が配置されることが望ましいが、この直線を配置する位置および角度には自由度がある。
よって、特許文献1に示される測定点の削減方法を適用することは難しい。
【0007】
本開示では、地理的条件あるいは人工衛星の駆動を考慮して決められた地上局の設置位置である測定点が、指向性特性の確認という目的に対して事足りるものであるかという妥当性評価を行うことを目的とする。また、本開示では、妥当性評価の評価結果を用いて、適切かつできる限り少ない数の測定点を決定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る測定点決定装置は、人工衛星に搭載された衛星通信システムと地上との通信評価実験を行う地上局を設置する測定点を決定する測定点決定装置において、
前記測定点の組み合わせの候補である測定点候補を抽出する候補抽出部と、
前記衛星通信システムが備えるアンテナの指向性特性を表す指向性特性計算値であって、前記測定点候補の座標を含む範囲においてサンプリングされた座標における利得から成る指向性特性計算値に基づいて、前記測定点候補の座標の利得を取得する利得取得部と、
前記測定点候補の座標の利得に基づいて前記アンテナの指向性特性を指向性特性近似値として推定する近似値計算部と、
前記指向性特性計算値と前記指向性特性近似値との対応を定量的に評価するために用いる評価指標を計算し、前記評価指標を用いて前記対応の真偽を判定し、前記対応が真である場合、前記測定点候補を前記測定点として決定する評価部と
を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る測定点決定装置では、地理的条件あるいは人工衛星の駆動を考慮して決められた地上局の設置位置である測定点が、指向性特性の確認という目的に対して事足りるものであるかという妥当性評価を行うことができる。また、本開示に係る測定点決定装置では、妥当性評価の評価結果より、適切かつできる限り少ない数の測定点を決定することはできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1の前提となる通信評価実験の例。
図2】実施の形態1に係る測定点決定装置の構成例。
図3】実施の形態1に係る測定点決定装置の測定点決定処理の動作例を示すフロー図。
図4】実施の形態1の変形例に係る測定点決定装置の構成例。
図5】実施の形態2に係る測定点決定装置の測定点決定処理の動作例を示すフロー図。
図6】実施の形態2に係る評価部による縮小計算処理の動作例を示すフロー図。
図7】実施の形態3に係る測定点決定装置の測定点決定処理の動作例を示すフロー図。
図8】実施の形態4に係る測定点決定装置の測定点決定処理の動作例を示すフロー図。
図9】実施の形態4におけるアンテナ走査軌道の概念図。
図10】実施の形態4におけるアンテナ走査軌道2種の比較。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施の形態について、図を用いて説明する。各図中、同一または相当する部分には、同一符号を付している。実施の形態の説明において、同一または相当する部分については、説明を適宜省略または簡略化する。また、以下の図では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。また、実施の形態の説明において、上、下、左、右、前、後、表、裏といった向きあるいは位置が示されている場合がある。これらの表記は、説明の便宜上の記載であり、装置、器具、あるいは部品などの配置、方向および向きを限定するものではない。
【0012】
実施の形態1.
***構成の説明***
図1は、本実施の形態の前提となる通信評価実験の例を示す図である。
人工衛星には、衛星通信システム12が搭載されているものとする。
通信評価実験では、まず地上に設置された信号送信器である送信局11から人工衛星に向けて変調波といった電波信号が送信される。次に、電波信号を衛星通信システム12の受信部13が受信する。さらに衛星通信システム12では、アナログ・デジタル信号処理により信号を生成する。アナログ・デジタル信号処理により生成された信号を衛星通信システム12の送信部14から送信し、地上側の受信装置である受信局15で受信することでシステムの評価が行われる。受信部13は受信アンテナともいう。送信部14は送信アンテナともいう。
【0013】
衛星通信システム12の送受信部に用いられるアンテナは、方向に応じた感度の差異、すなわち指向性16,17を有する。
送信局11および受信局15のアンテナも同様に指向性18,19を有する。したがって、送信局11および受信局15の位置に応じて、システムの感度が変わることになる。指向性を確認するためには送信局あるいは受信局を移動させるか、もしくは測定方向の数だけ局を用意すれば良い。しかし、コストといった観点から送信局あるいは受信局の移動は非現実的である。このため、通常は送信局あるいは受信局の数を1箇所から複数箇所とし、人工衛星の姿勢を軸方向101に対して2次元的に回転させることで指向性を測る。なお、以降では送信局と受信局を区別なく呼称する場合は地上局10という。
【0014】
通信評価実験における送信局と受信局の位置は任意である。しかし、衛星通信システムの送受アンテナ部の指向性方向が同じ、かつ、特定方向に対して強い指向性を持つ場合、送受地上局は指向性16,17のピークが指す地上の位置周辺に隣接して配置されることが多い。
一方、衛星通信システムの送受アンテナ部の指向性16,17が異なる方向を向く場合、あるいは、片側のアンテナが1つの方向に対して強い感度を持たず、空間になだらかに広がった指向性特性を持つ場合がある。このような場合は、前述のような位置に送受地上局を配置しても効率的に指向性特性を評価することができないため、地上の離れた位置に設置されることになる。
【0015】
人工衛星の通信評価実験において、なだらかな指向性特性を有するアンテナの特性を測定するために離れた位置に送信局および受信局を設置した場合、以下の問題が発生する。
人工衛星の受信アンテナの指向性特性を測るために人工衛星の姿勢を変化させると、人工衛星の送信アンテナの指向性方向が受信局の位置から離れるために、地上での信号受信感度が落ちる。受信局のアンテナも通常は指向性を有しているため、多少の感度低下には対応できるが、大きく離れれば、受信電力が最低受信感度以下となり、評価が不可能となる。これは信号の送信および受信の関係を人工衛星と地上局で入れ替えた場合も同様である。このため、特に人工衛星の指向性がなだらかな広がりを持つ場合は、送受地上局をそれぞれ1つとした構成では指向性を適切に評価することが難しい。
上記の理由から、送受地上局では、それぞれあるいはどちらか一方が複数箇所に設置される。ただし、前述の通り、測定方向の数に応じて地上局を用意することは現実的ではないため、限られた数の地上局を適切な位置に配置することで測定を効率化する必要がある。
地上局10は、測定する指向性の情報が多く得られる位置を測定点20として配置されることが望ましい。
【0016】
図2を用いて、本実施の形態に係る測定点決定装置100の構成例について説明する。
測定点決定装置100は、コンピュータである。測定点決定装置100は、プロセッサ910を備えるとともに、メモリ921、補助記憶装置922、入力インタフェース930、出力インタフェース940、および通信装置950といった他のハードウェアを備える。プロセッサ910は、信号線を介して他のハードウェアと接続され、これら他のハードウェアを制御する。
【0017】
測定点決定装置100は、機能要素として、候補抽出部110と利得取得部120と近似値計算部130と評価部140と記憶部200とを備える。記憶部200には、点群位置情報201と指向性情報202と送信局出力203と受信局感度204が記憶される。
【0018】
候補抽出部110と利得取得部120と近似値計算部130と評価部140の機能は、ソフトウェアにより実現される。記憶部200は、メモリ921に備えられる。なお、記憶部200は、補助記憶装置922に備えられていてもよいし、メモリ921と補助記憶装置922に分散して備えられていてもよい。
【0019】
プロセッサ910は、測定点決定プログラムを実行する装置である。測定点決定プログラムは、候補抽出部110と利得取得部120と近似値計算部130と評価部140の機能を実現するプログラムである。
プロセッサ910は、演算処理を行うIC(Integrated Circuit)である。プロセッサ910の具体例は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)である。
【0020】
メモリ921は、データを一時的に記憶する記憶装置である。メモリ921の具体例は、SRAM(Static Random Access Memory)、あるいはDRAM(Dynamic Random Access Memory)である。
補助記憶装置922は、データを保管する記憶装置である。補助記憶装置922の具体例は、HDDである。また、補助記憶装置922は、SD(登録商標)メモリカード、CF、NANDフラッシュ、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ブルーレイ(登録商標)ディスク、DVDといった可搬の記憶媒体であってもよい。なお、HDDは、Hard Disk Driveの略語である。SD(登録商標)は、Secure Digitalの略語である。CFは、CompactFlash(登録商標)の略語である。DVDは、Digital Versatile Diskの略語である。
【0021】
入力インタフェース930は、マウス、キーボード、あるいはタッチパネルといった入力装置と接続されるポートである。入力インタフェース930は、具体的には、USB(Universal Serial Bus)端子である。なお、入力インタフェース930は、LAN(Local Area Network)と接続されるポートであってもよい。
【0022】
出力インタフェース940は、ディスプレイといった出力機器のケーブルが接続されるポートである。出力インタフェース940は、具体的には、USB端子またはHDMI(登録商標)(High Definition Multimedia Interface)端子である。ディスプレイは、具体的には、LCD(Liquid Crystal Display)である。出力インタフェース940は、表示器インタフェースともいう。
【0023】
通信装置950は、レシーバとトランスミッタを有する。通信装置950は、LAN、インターネット、あるいは電話回線といった通信網に接続している。通信装置950は、具体的には、通信チップまたはNIC(Network Interface Card)である。
【0024】
測定点決定プログラムは、測定点決定装置100において実行される。測定点決定プログラムは、プロセッサ910に読み込まれ、プロセッサ910によって実行される。メモリ921には、測定点決定プログラムだけでなく、OS(Operating System)も記憶されている。プロセッサ910は、OSを実行しながら、測定点決定プログラムを実行する。測定点決定プログラムおよびOSは、補助記憶装置922に記憶されていてもよい。補助記憶装置922に記憶されている測定点決定プログラムおよびOSは、メモリ921にロードされ、プロセッサ910によって実行される。なお、測定点決定プログラムの一部または全部がOSに組み込まれていてもよい。
【0025】
測定点決定装置100は、プロセッサ910を代替する複数のプロセッサを備えていてもよい。これら複数のプロセッサは、測定点決定プログラムの実行を分担する。それぞれのプロセッサは、プロセッサ910と同じように、測定点決定プログラムを実行する装置である。
【0026】
測定点決定プログラムにより利用、処理または出力されるデータ、情報、信号値および変数値は、メモリ921、補助記憶装置922、または、プロセッサ910内のレジスタあるいはキャッシュメモリに記憶される。
【0027】
候補抽出部110と利得取得部120と近似値計算部130と評価部140の各部の「部」を「回路」、「工程」、「手順」、「処理」、あるいは「サーキットリー」に読み替えてもよい。測定点決定プログラムは、候補抽出処理と利得取得処理と近似値計算処理と評価処理を、コンピュータに実行させる。候補抽出処理と利得取得処理と近似値計算処理と評価処理の「処理」を「プログラム」、「プログラムプロダクト」、「プログラムを記憶したコンピュータ読取可能な記憶媒体」、または「プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体」に読み替えてもよい。また、測定点決定方法は、測定点決定装置100が測定点決定プログラムを実行することにより行われる方法である。
測定点決定プログラムは、コンピュータ読取可能な記録媒体に格納されて提供されてもよい。また、測定点決定プログラムは、プログラムプロダクトとして提供されてもよい。
【0028】
点群位置情報201には、測定点の候補となる点の集合、すなわち点群の位置情報が含まれる。
指向性情報202には、予め計算された衛星通信システムの送受アンテナの指向性特性計算値が含まれる。
送信局出力203は、送信局の最大出力である。
受信局感度204は、受信局の最小検出感度である。
【0029】
指向性特性計算値は、角度範囲から任意の間隔で離散的にサンプリングされた座標における利得を電磁界解析シミュレータで計算し、記録されたデータである。また、このデータに対して地上側の送信局出力203あるいは受信局感度204が乗算された、より実測定環境に近いデータを用いても良い。角度範囲とは、人工衛星の仰角および方位角あるいは経度および緯度といった角度によって表される範囲である。角度範囲には、測定点が全て含まれることが望ましい。このデータに記録されたデータの座標が示す範囲をΓbとする。範囲は、角度以外により表される範囲でもよい。
【0030】
***動作の説明***
次に、本実施の形態に係る測定点決定装置100の動作について説明する。測定点決定装置100の動作手順は、測定点決定方法に相当する。また、測定点決定装置100の動作を実現するプログラムは、測定点決定プログラムに相当する。また、測定点決定装置100が測定点決定プログラムにより実行する処理は測定点決定処理に相当する。
【0031】
本実施の形態に係る測定点決定装置100は、人工衛星に搭載された衛星通信システムと地上との通信評価実験を行う地上局10を設置する測定点20を決定する。
【0032】
図3は、本実施の形態に係る測定点決定装置100の測定点決定処理の動作例を示すフロー図である。
なお、以降では、説明を簡単にするために衛星通信システムの受信アンテナがなだらかに広がった指向性特性を有するものとする。なお、送信アンテナが同様のなだらかに広がった指向性特性を持つ場合、あるいは両方がなだらかに広がった指向性特性を持つ場合も本実施の形態を適用することができる。
【0033】
測定点決定処理は、開始のステップS31から終了のステップS32で囲まれるループ処理を有する。また、ループ処理において参照あるいは計算される情報は、記憶部200に格納される。ループ処理におけるステップS32からステップS36で情報の入出力が行われる。
図3において、入出力される情報には、点群41、測定点候補42、指向性特性計算値43、利得44、指向性特性近似値45、および、しきい値46がある。
【0034】
ステップS32において、候補抽出部110は、測定点の組み合わせの候補である測定点候補42を抽出する。具体的には、候補抽出部110は、点群位置情報201に含まれる点群41の中から測定点としたい最小の数の点を測定点候補42として抽出する。点群41は、例えば、地理的な特性を考慮して地上局を設置できる場所である。人工衛星のアンテナの指向性特性の特徴、すなわち変曲点、ヌル点、あるいはピーク点に該当する座標でなくても良い。
【0035】
ステップS33において、利得取得部120は、衛星通信システム12が備えるアンテナの指向性特性を表す指向性特性計算値43に基づいて、測定点候補42の座標の利得を取得する。指向性特性計算値43は、測定点候補42の座標を含む範囲においてサンプリングされた座標における利得から成る。具体的には、利得取得部120は、指向性特性計算値43から測定点候補42の座標の利得を読み取ることにより、あるいは、指向性特性計算値43に基づいて測定点候補42の座標の利得を補間することにより、測定点候補42の座標の利得44を取得する。
例えば、利得取得部120は、指向性情報202に含まれる受信アンテナの指向性特性計算値43から、測定点候補42の利得44を読み取る。前述の通り、指向性特性計算値43は、任意の間隔でサンプリングされたデータであるため、測定点候補42の座標に該当する点が含まれるとは限らない。その場合、利得取得部120は、指向性特性計算値43に基づいて、補間処理あるいは補外処理を行うことで、測定点候補42の座標の利得44を算出する。
【0036】
ステップS34において、近似値計算部130は、測定点候補42の座標の利得44に基づいてアンテナの指向性特性を指向性特性近似値45として推定する。具体的には、近似値計算部130は、測定点候補42の座標および同座標における利得44から、受信アンテナの指向性特性を推定する。推定値が記録されたファイルを指向性特性近似値45とする。指向性を推定する座標は、指向性特性計算値において指向性が計算されている座標と同じ位置とする。
推定方法には、ニュートン補間あるいはラグランジュ補間といった多項式補間を採用してもよい。あるいは、スプライン補間あるいは動径基底関数と重み計算の積和を用いた函数近似などでもよい。測定点候補42から任意座標の利得を推定する方法であれば、推定方法は何でも良い。例えば、推定精度が高いと考えられる動径基底関数を用いた函数近似が望ましい。
動径基底関数を用いた函数近似については、例えば、「J. C. Carr et. al., “Reconstruction and representation of 3D objects with radial basis functions.,” Proc. on 28th annual conference on Computer graphics and interactive techniques, pp. 67-76, 2001, Aug.」に記載されている。
【0037】
測定点候補42の利得44が、なだらかに変動する指向性の特徴を再現するために十分な情報を持っていれば、指向性特性近似値45は指向性特性計算値43に良く対応した値となる。
ステップS35において、評価部140は、指向性特性計算値43と指向性特性近似値45との対応を定量的に評価するために用いる評価指標を計算する。評価部140は、評価指標を用いて、指向性特性計算値43と指向性特性近似値45との対応の真偽を判定する。評価部140は、対応が真である場合、測定点候補42を測定点20として決定する。
具体的には、評価部140は、指向性特性計算値43と指向性特性近似値45との差異を評価指標として計算する。評価指標は、各座標における差異の平均値あるいは最小二乗誤差、あるいは、それらを規格化した値といった、2つの値の差異が1つの数値で表現できるものであれば何でも良い。例えば、指向性特性計算値43の最大値で規格化した最小二乗誤差が定量性を把握する上で望ましい。
【0038】
ステップS36において、評価部140は、評価指標としきい値46とを用いて、指向性特性計算値43と指向性特性近似値45との対応の真偽を判定する。
具体的には、評価部140は、算出した評価指標が任意に設定したしきい値46を満足しているか否か判定する。しきい値46以下あるいはしきい値46以上のどちらの条件のときに満足したものとするかは、評価指標の取り方にあわせて選択される。
以下では例として、判定条件は「しきい値以下の真偽」とする。この判定条件は、例えば、指向性特性計算値43と指向性特性近似値45との差異を対応として、差異がしきい値46以下であれば測定点候補42は真であり、差異がしきい値46より大きければ測定点候補42は偽であると判定することを意味する。
【0039】
評価指標がしきい値以下となる場合、すなわち判定が真であれば、評価部140は、測定点候補42を測定点20として決定する。
【0040】
一方、評価指標がしきい値以下でない場合、すなわち判定が偽であれば、処理はステップS31に戻る。そして、ステップS32において、候補抽出部110が、新たな測定点の組み合わせを測定点候補42として抽出し以降の処理を繰り返す。具体的には、候補抽出部110は、測定点候補42として点群41の中から新たに点を追加、あるいは、新しい測定点候補42を設定する。さらに、利得取得部120が測定点候補42の座標を補間し(ステップS33)、近似値計算部130が指向性特性近似値45を計算し(ステップS34)、評価部140が評価指標を算出し、しきい値46による判定を行う(ステップS35およびステップS36)。先と同様に判定が真となる場合は測定点候補42を測定点として決定した上で計算を終了する(ステップS37)。
【0041】
考えられうる点列の組み合わせ、すなわち測定点候補42がP種類あり、その中に所望の情報を持ちうる組み合わせが存在するならば、ステップS31からステップS37に示したループ処理において指向性近似計算、評価指標計算、しきい値による判定を最大P回繰り返すことで、測定点20として妥当であると評価された測定点候補42を得ることができる。
【0042】
***他の構成***
本実施の形態では、候補抽出部110と利得取得部120と近似値計算部130と評価部140の機能がソフトウェアで実現される。変形例として、候補抽出部110と利得取得部120と近似値計算部130と評価部140の機能がハードウェアで実現されてもよい。
具体的には、測定点決定装置100は、プロセッサ910に替えて電子回路909を備える。
【0043】
図4は、本実施の形態の変形例に係る測定点決定装置100の構成例を示す図である。
電子回路909は、候補抽出部110と利得取得部120と近似値計算部130と評価部140の機能を実現する専用の電子回路である。電子回路909は、具体的には、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ロジックIC、GA、ASIC、または、FPGAである。GAは、Gate Arrayの略語である。ASICは、Application Specific Integrated Circuitの略語である。FPGAは、Field-Programmable Gate Arrayの略語である。
【0044】
候補抽出部110と利得取得部120と近似値計算部130と評価部140の機能は、1つの電子回路で実現されてもよいし、複数の電子回路に分散して実現されてもよい。
【0045】
別の変形例として、候補抽出部110と利得取得部120と近似値計算部130と評価部140の一部の機能が電子回路で実現され、残りの機能がソフトウェアで実現されてもよい。また、候補抽出部110と利得取得部120と近似値計算部130と評価部140の一部またはすべての機能がファームウェアで実現されてもよい。
【0046】
プロセッサと電子回路の各々は、プロセッシングサーキットリとも呼ばれる。つまり、候補抽出部110と利得取得部120と近似値計算部130と評価部140の機能は、プロセッシングサーキットリにより実現される。
【0047】
***本実施の形態の効果の説明***
本実施の形態に係る測定点決定装置100では、現実的な規模で設置した地上局により得られた情報が、指向性特性を把握した上で衛星通信システムを評価するという目的を満たすかを定量的に判定できる。さらに、実際に測定したデータに対して、指向性特性近似値を計算することで、測定の妥当性を評価することができる。
また、本実施の形態に係る測定点決定装置100では、測定点の利得情報から復元した指向性特性の近似値とあらかじめ計算した計算値の差異を定量的に表すことで、アンテナ性能を確認できる測定点の組み合わせを見つけることができる。
【0048】
よって、本実施の形態に係る測定点決定装置100によれば、地理的条件あるいは人工衛星の駆動を考慮して決められた地上局の設置位置である測定点が、指向性特性の確認という目的に対して事足りるものであるかという妥当性評価を行うことができる。また、本実施の形態に係る測定点決定装置100によれば、妥当性評価の評価結果より、適切かつできる限り少ない数の測定点を決定することはできる。
【0049】
実施の形態2.
本実施の形態では、主に、実施の形態1と異なる点および実施の形態1に追加する点について説明する。
本実施の形態において、実施の形態1と同様の機能を有する構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0050】
実施の形態1に示した方式の場合、ループ処理を繰り返しても所望の範囲Γbの情報を十分得られる測定点の組み合わせを発見できない可能性がある。ただし、範囲を縮小すれば、しきい値を満たす測定点候補の組み合わせを発見できる可能性がある。
【0051】
本実施の形態に係る評価部140は、指向性特性計算値と指向性特性近似値との対応が偽である場合、範囲を縮小し、測定点候補のうち縮小された範囲に含まれる測定点候補を用いて縮小後の指向性特性近似値を推定する。評価部140は、縮小後の指向性特性近似値と縮小された範囲における縮小後の指向性特性計算値とに基づいて、縮小後の評価指標を計算する。そして、評価部140は、縮小後の指向性特性計算値と縮小後の指向性特性近似値との対応が真の場合に、縮小された範囲を配列に設定して出力する。
評価部は、縮小後の指向性特性計算値と縮小後の指向性特性近似値との対応が偽の場合、縮小された範囲をさらに縮小する。そして、評価部140は、縮小後の指向性特性計算値と縮小後の指向性特性近似値との対応が真になるまで、あるいは、縮小された範囲が予め設定された最小値(最小設定範囲Γmin)となるまで、縮小後の指向性特性計算値と記縮小後の指向性特性近似値との対応の真偽の判定を繰り返す。
そして、評価部140は、測定点の組み合わせの全てについて、前記対応が偽の場合、配列のうち最大の範囲を持つ測定点候補を測定点として決定する。
具体的には、以下の通りである。
【0052】
図5は、本実施の形態に係る測定点決定装置100の測定点決定処理の動作例を示すフロー図である。
本実施の形態では、範囲の縮小計算処理であるステップS41を、ステップS36の判定処理に加えた測定点決定処理について説明する。
【0053】
図5における最初のループ処理(第1ループ)において評価指標の判定が偽となった場合、評価部140は、ステップS41において、指向性特性の差異を計算する範囲を狭め、評価指標を計算する。
【0054】
図6は、本実施の形態に係る評価部140による縮小計算処理の動作例を示すフロー図である。
図6では、ステップS41における縮小計算処理の例を表している。縮小計算処理は、ステップS51からステップS55に示したループ処理である。
ステップS51は処理の開始を表し、ステップS56は処理の終了を表す。
【0055】
ステップS52において、評価部140は、最小設定範囲Γminを設定する。
評価部140は、ループごとに縮小される設定範囲ΓjがΓminに至るまで、ステップS53における計算範囲Γの縮小とステップS54における評価指標の計算とを繰り返す。
【0056】
範囲の初期値をΓ1とする。
Γminは、測定点候補42の中の1点、あるいは複数点といった、近似値が正しく再現可能、すなわち同座標における指向性特性計算値の値と一致することが確認できる範囲としておくことが望ましい。
【0057】
評価部140は、Γ1が最小設定範囲Γminに到達するまで評価指標を計算し、しきい値50に対する判定を行う。ステップS55における出力が真となった場合、Γ1を、記憶部200に確保した要素数Pの配列51の第1要素として保存する。第1ループで用いた測定点候補は、Γ1を再現するために十分な情報を持つと言える。Γminに到達するまでしきい値50を満たせない場合はΓ1=Γminとして配列51に保存する。
【0058】
図5における第2ループにおいても、Γbに対する評価指標のしきい値判定が偽となった場合は、最小設定範囲Γminを設定し、設定範囲Γminに至るまで計算範囲を狭めながら評価指標を計算する。この計算で求められた範囲をΓ2とし、前記配列51に保存する。
【0059】
図6におけるステップS52からステップS55は、図5におけるステップS36でΓbに対する評価指標のしきい値判定が真となるか、測定点候補の考えられうる組み合わせP個に対して検証を終えるまで繰り返される。
【0060】
評価部140は、ループ処理の終了までしきい値を満足する値が見つからなかった場合、配列51に記憶されたΓ1~ΓPの中から最大の範囲を持つ測定点候補の組み合わせを測定点として設定する。
【0061】
***本実施の形態の効果の説明***
本実施の形態に係る測定点決定装置100では、指向性特性計算値を全範囲から設定するのではなく、範囲を設定できる機能を加える。全範囲ではしきい値を満たす条件がない場合に、評価範囲を狭めることで、しきい値を満たす範囲をみつけることができる。
本実施の形態に係る測定点決定装置100では、ループ処理の終了までしきい値を満足する値が見つからなかった場合、配列51に記憶されたΓ1~ΓPの中から最大の範囲を持つ測定点候補の組み合わせを測定点として設定する。この方法を用いることで、指向性特性を求めたい範囲Γbの中でもできる限り広い範囲を評価できる測定点の組み合わせを得ることができる。
【0062】
実施の形態3.
本実施の形態では、主に、実施の形態1,2と異なる点および実施の形態1,2に追加する点について説明する。
本実施の形態において、実施の形態1、2と同様の機能を有する構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0063】
本実施の形態では、実施の形態1,2に示した測定点決定装置100が、さらに測定点の雑音情報61を有する。雑音情報61は測定において発生しうる雑音レベルの計算値、あるいは事前に他の測定装置により得られた測定値といった、実環境の影響を考慮したものであれば何でも良い。
本実施の形態では、近似値計算部130は、測定点候補の座標の利得と測定点候補の座標における雑音情報61とに基づいて、アンテナの指向性特性を指向性特性近似値45として推定する。
具体的には、以下の通りである。
【0064】
図7は、本実施の形態に係る測定点決定装置100の測定点決定処理の動作例を示すフロー図である。
ステップS34において、近似値計算部130は、測定点候補42の座標および同座標における利得44と雑音情報61を用いて、受信アンテナの指向性特性を指向性特性近似値45として算出する。
例えば、雑音情報61は、ガウス雑音として、平均電力あるいは標準偏差として与えられる。このとき、近似値計算部130は、シミュレーションなどにより、前記の電力、標準偏差を持った雑音を測定点候補分、発生させる。発生させた雑音を測定点候補の利得情報に加える。この利得情報に対して指向性特性近似値の計算、評価指標の計算、しきい値による判定、設定範囲縮小のループ処理を行う。
【0065】
***本実施の形態の効果の説明***
本実施の形態に係る測定点決定装置100では、実施の形態1あるいは2の測定点決定装置100の機能に加え、実際に発生する雑音レベルの計算機能を加える。雑音の寄与を考慮することで、実際の測定に近い条件で測定点を決定できる。
衛星通信システムは、地上局あるいは衛星通信システム内部、あるいは信号が伝搬する空間において発生した雑音の影響を受ける。この影響を考慮して測定点を導くことで、実際の測定に近い条件で測定点を決定することができる。
【0066】
実施の形態4.
本実施の形態では、主に、実施の形態1から3と異なる点および実施の形態1から3に追加する点について説明する。
本実施の形態において、実施の形態1から3と同様の機能を有する構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0067】
図8は、本実施の形態に係る測定点決定装置100の測定点決定処理の動作例を示すフロー図である。
図9は、本実施の形態におけるアンテナ走査軌道の概念図を示している。
図10は、本実施の形態におけるアンテナ走査軌道2種の比較を示している。
図8から図10を参照して、本実施の形態に係る測定点決定装置100の測定点決定処理について説明する。
【0068】
本実施の形態は、実施の形態1から3で説明した測定点候補42の選定に関わるものである。先述の通り、人工衛星搭載アンテナの指向性特性を測定するためには人工衛星の姿勢を多少変化させることで、相対的に地上局をずらして配置したとみなすことができる。しかし、送受アンテナが別々の方向を向く場合は地上局での受信感度の問題が発生するため、動かせる範囲は限定的になる。これらの問題を解決するため、複数の地上局、すなわち測定点候補42を設置することになる。本実施の形態は、この姿勢変化を考慮した測定点候補の選定方法に関わるものである。
【0069】
図8に示すように、本実施の形態では、実施の形態1のループ処理に加えて、アンテナ走査軌道計算処理であるステップS71を有する。
ステップS71において、候補抽出部110は、アンテナの走査軌道を計算し、走査軌道に基づいて測定点候補42を抽出する。図8のステップS71において、候補抽出部110により記憶部200に出力される軌道72には、走査軌道に基づいて抽出された測定点候補42が含まれるものとする。
具体的には、以下の通りである。
【0070】
図9を用いてアンテナ走査軌道の計算について説明する。まず、地上における測定点の座標A(=B0、図9における81)に加え、限定された範囲で人工衛星の姿勢を変化させることで得られる新たなn箇所の測定点82の各座標をB1、B2、・・・、Bnと定義する。図9ではn=5、すなわちB1~B5としている。また、B1~Bnの順でAに近いものとする。これらの点を全て通るように人工衛星の姿勢を制御できることが望ましいが、実際には人工衛星の姿勢を任意に変化させることは時間的な観点からも困難である。そこでB1~Bnの近傍を通り、人工衛星の姿勢制御が比較的容易となる直線的な軌道83を設定する。この直線は最小二乗近似などで求められるが、例えばB1~Bnに重要度に応じた重みづけなどを考慮した直線近似方法を用いても良い。求めた直線軌道上でB1~Bnの各点からの距離が最小になる点84(図9におけるC1~C5)を、B1~Bnに代わる新たな測定点候補として定義する。また、軌道の初期位置はA(=B0=C0)とすることが望ましい。
【0071】
B1~Bnが二次元的に広がる場合は1つの直線軌道を想定するより複数の直線を想定した方がより多くの情報を取得できる可能性がある。例えば図10の左図のように、B1~Bnは必ずしも1つの直線軌道91を想定する必要はなく、図10の右図のようにB1~Bi、B(i+1)~Bnのように複数の直線軌道92などに分割し、最小二乗近似などでC1~Ci、C(i+1)~Cnを求めても良い。このとき、CiとC(i+1)は直線で結ぶ。
【0072】
***本実施の形態の効果の説明***
本実施の形態に係る測定点決定装置100では、実施の形態1から3の各々の測定点決定装置100の機能に加え、人工衛星の取り得る軌道を考慮したアンテナ走査軌道の計算機能をさらに有する。
本実施の形態に係る測定点決定装置100によれば、1つ直線軌道を定義した場合と、複数の直線で定義した場合はそれぞれ異なる測定点候補とし、どちらの点群から得られた指向性特性近似値がより指向性特性計算値に近いかを比較することで、測定点を定量的に決定することが可能になる。
【0073】
以上の実施の形態1から4では、測定点決定装置の各部を独立した機能ブロックとして説明した。しかし、測定点決定装置の構成は、上述した実施の形態のような構成でなくてもよい。測定点決定装置の機能ブロックは、上述した実施の形態で説明した機能を実現することができれば、どのような構成でもよい。また、測定点決定装置は、1つの装置でなく、複数の装置から構成されたシステムでもよい。
また、実施の形態1および2のうち、複数の部分を組み合わせて実施しても構わない。あるいは、これらの実施の形態のうち、1つの部分を実施しても構わない。その他、これら実施の形態を、全体としてあるいは部分的に、どのように組み合わせて実施しても構わない。
すなわち、実施の形態1および2では、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【0074】
なお、上述した実施の形態は、本質的に好ましい例示であって、本開示の範囲、本開示の適用物の範囲、および本開示の用途の範囲を制限することを意図するものではない。上述した実施の形態は、必要に応じて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0075】
10 地上局、11 送信局、12 衛星通信システム、13 受信部、14 送信部、15 受信局、16,17,18,19 指向性、20 測定点、41 点群、42 測定点候補、43 指向性特性計算値、44 利得、45 指向性特性近似値、46,50 しきい値、51 配列、61 雑音情報、72 軌道、81,82 測定点、83,91,92 軌道、100 測定点決定装置、101 軸方向、110 候補抽出部、120 利得取得部、130 近似値計算部、140 評価部、200 記憶部、201 点群位置情報、202 指向性情報、203 送信局出力、204 受信局感度、909 電子回路、910 プロセッサ、921 メモリ、922 補助記憶装置、930 入力インタフェース、940 出力インタフェース、950 通信装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10