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特許7391067血液をオゾンと接触させるための装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】血液をオゾンと接触させるための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/20 20060101AFI20231127BHJP
   A61M 1/36 20060101ALI20231127BHJP
   A61L 101/10 20060101ALN20231127BHJP
【FI】
A61L2/20 100
A61M1/36 185
A61L101:10
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021122880
(22)【出願日】2021-07-28
(62)【分割の表示】P 2017534513の分割
【原出願日】2015-09-15
(65)【公開番号】P2021176566
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2021-07-28
(31)【優先権主張番号】1451072-1
(32)【優先日】2014-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】517089617
【氏名又は名称】サンゲア アクチエボラグ
【氏名又は名称原語表記】Sangair AB
【住所又は居所原語表記】Gottes Vag 10, 224 78 Lund, Sweden
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ヒョホルム, ヨハン
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-514857(JP,A)
【文献】特表2017-529237(JP,A)
【文献】特開2004-057703(JP,A)
【文献】特開2001-340847(JP,A)
【文献】特開平11-217856(JP,A)
【文献】特開2007-278003(JP,A)
【文献】特開平06-225095(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0118473(US,A1)
【文献】国際公開第96/017635(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/20-2/28
A61M 1/16、1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物を殺菌するために血液をオゾンと接触させるように構成されたオゾン処理装置であって、
前記装置は、内壁を備える血液オゾン処理チャンバを備え、
前記血液オゾン処理チャンバは、多孔質マイクロバブル放出面を備えたオゾン注入器を備え、
前記オゾン注入器は、前記多孔質マイクロバブル放出面と前記内壁との間に形成された隙間を通じて垂直上方の血流にオゾン含有ガスのマイクロバブルを注入するように構成され、
オゾン処理領域は、前記オゾン注入器の真上且つ前記隙間に設けられ、
前記オゾン処理領域において、前記マイクロバブルが血液中に溶解され、
前記装置と前記オゾン注入器は、前記血液オゾン処理チャンバを通る前記血流が、前記オゾン含有ガスのマイクロバブルを前記血流に同伴させるように構成されている、
オゾン処理装置。
【請求項2】
前記血流の全ては、前記オゾン処理領域を2mm未満の最大距離で通過する、請求項1に記載のオゾン処理装置。
【請求項3】
前記オゾン処理領域における流れの直径が2mm未満である、請求項1に記載のオゾン処理装置。
【請求項4】
前記オゾン処理領域は、前記オゾン注入器の上方で狭くなる、請求項1に記載のオゾン処理装置。
【請求項5】
オゾン発生器を更に備え、
前記オゾン発生器は、5%から20%のオゾンを含むオゾンと酸素との混合物を生成するように構成されている、請求項1に記載のオゾン処理装置。
【請求項6】
前記オゾン注入器は、オゾン濃度が10グラム/m3未満であるオゾン含有ガスを注入するように構成されている、請求項1に記載のオゾン処理装置。
【請求項7】
前記オゾン注入器は、0.1バールから1.0バールの間の圧力でオゾン含有ガスを注入するように構成されている、請求項1に記載のオゾン処理装置。
【請求項8】
血液の体積流量とオゾン含有ガスの体積流量との比率は、10:1から50:1に調整される、
又は
血液の体積流量は、0.1リットル/時間から12リットル/時間の範囲である、
請求項1に記載のオゾン処理装置。
【請求項9】
システムであって、
請求項1から8のいずれか1項に記載のオゾン処理装置と、
前記システムの動作パラメータを収集するように構成された少なくとも1つのセンサと、
前記動作パラメータを制御するための制御システムと、
を備えるシステム。
【請求項10】
前記動作パラメータは、前記オゾン含有ガスの圧力または血液の流量のいずれかである、請求項9に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、オゾンで体液を処理するための方法及び装置に関する。より詳細には、本発明は、オゾンで血液を処理するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
オゾンは強力な酸化剤で、殺菌剤として使用されている。腐食性で反応性の高いオゾンの性質にもかかわらず、血液中の特定の感染性因子を殺菌又は不活性化するためのオゾンの使用が検討されている。例えば、米国特許出願公開第2005/0189302A1号は、気液の物質移動を最大にする気液接触装置において、血液をオゾンに曝露することによって血液中のウイルスを不活性化する方法を開示している。接触装置は、血液の薄膜を形成するための球体又はロッドを含み、処理は好ましくは周囲温度で行われる。国際公開第2011/162805号は、米国特許出願公開第2005/0189302 A1号に開示されているものと同様の気液接触装置を用いて血液をオゾン・酸素混合物に晒すことによって、血液中の感染性プリオンタンパク質を不活性化する方法を開示する。
【0003】
国際公開第93/15779号は、血液試料をオゾンガス及び紫外線と接触させることによって血液中の酸化窒素濃度を増加させる方法を開示している。処理された血液試料は、細菌、真菌、ウイルス及び原生動物感染を含む様々な疾患を治療するために患者に投与される。この血液試料は、最も好ましくは1から50mLの容量であり、最も好ましくは、42.5℃の温度で約3分間処理される。
【0004】
米国特許第6,027,688号は、気液接触装置を用いて約16秒間、オゾン・ 酸素混合物の対向流と血流を接触させることにより、血液中のウイルス、細菌、真菌及び原生動物を不活性化する方法を開示する。
【0005】
ミルク及び他の液体食品をオゾンで処理して細菌を殺菌することは知られている。国際公開第2008/066470号は、周囲温度において微細化されたオゾン含有ガス流にミルクを曝露させることによって、ミルク中の細菌増殖を抑制する方法を開示する。国際公開第2008/066470号に開示されているオゾン処理の方法は、効率に関して改良することができる。また、オゾン処理された液体の温度は周囲温度である。この周囲温度は、保管及び輸送における周囲温度であってもよいが、オゾン処理位置における温度は、国際公開第2008/066470号に開示された方法においては温度制御を必要とするものとして開示されていない。
【0006】
多くの乳製品において微生物を殺菌するためにオゾンが使用されているが、そのような方法は血液細胞を破壊し、血液中の酵素及び他のタンパク質を不活性化する。
【0007】
抗生物質、抗真菌剤及び抗ウイルス薬のような従来の手段による治療法では対応できない細菌、真菌及びウイルスによる重篤な感染症を治療及び予防するための方法及び装置が必要とされている。オゾンは血液中の微生物を殺菌することが知られているが、上述の方法は、血液を損傷することなく充分な微生物殺菌作用をもたらさない。従って、患者の血液細胞を損傷することも血液の正常な機能を妨げることもなく、患者の血液中の微生物を殺菌するような、血液をオゾン処理するための装置及び方法が必要とされている。保管及び/又は患者への投与の前に、血液中の微生物を殺菌する目的で、保管の前及び/又は後に血液をオゾン処理するために、関連する装置及び方法を使用することもできる。例えば、血液中の微生物感染に罹患したヒトの患者及びヒト以外の動物の患畜は、特に従来の薬物療法が効果的でない場合において、そのような装置及び方法から恩恵を享受し得る。従って、オゾンと血液を接触させるための改良されたシステム、装置、及び方法が有益である。
【発明の概要】
【0008】
添付の特許請求の範囲によると、本発明の実施形態は、好ましくは、血液をオゾンと接触させるための装置、上記装置を含むオゾン処理システム、および血液をオゾンと接触させる方法を単独で、又は任意に組み合わせて提供することによって、上記で特定されたような1つ又は複数の欠点、不利益、問題を軽減、緩和、又は排除する。本発明は、血液のオゾン処理及び血液とオゾンとの接触に関して記載されているが、本発明は、血漿、血液細胞懸濁液、及びその他の細胞懸濁液等、他の体液のオゾン処理にも適用可能である。
【0009】
本発明は、添付の独立した特許請求の範囲に開示されている。本発明のいくつかの特定の実施形態は、添付の従属請求項に定義される。
【0010】
本開示の一態様によれば、血液をオゾンと接触させるためのオゾン処理装置が提供される。この装置は、オゾン接触チャンバ又はオゾン処理チャンバのオゾン処理ゾーン内の血流にオゾン含有ガスのマイクロバブルを注入するように構成されるオゾン注入器を備える。この装置は、オゾン処理チャンバに入る血液を冷却するための手段及び/又はオゾン処理チャンバから出る血液を加温するための手段を任意で含むことができる。
【0011】
本開示の更なる態様によれば、血液をオゾンガスと接触させるための装置が提供される。この装置は、オゾン処理チャンバと、血流入口と、血流出口とを有する。オゾン処理チャンバは、オゾン含有ガスの供給源に接続し且つオゾン処理チャンバを通る血流にオゾン含有ガスの気泡を注入するように構成されたオゾン注入器3を含む。血流は、オゾン注入中に血液オゾン処理チャンバを通って垂直上方に向けられる。血液にオゾンが注入される所で血流が重力に対して垂直上方になるように、血流を向けるための適切な導管が設けられている。オゾン処理チャンバ及びオゾン注入器は、血液オゾン処理チャンバを垂直上方に通る血流が、前記オゾン処理のためにオゾン含有ガスの気泡を前記血流に同伴させるように構成される。当該ガスの気泡は同伴されると血液中に溶解する。
【0012】
本開示の別の態様によれば、血液オゾン処理システムが提供される。このシステムは、オゾン処理装置、オゾン注入器に接続されたオゾン発生源、装置内に血液を受け入れ、そして血液を供給するための導管、及びシステムを通って血液を圧送するための圧送手段を含む。このシステムは、任意で、オゾン処理装置に入る前に血液を冷却するための冷却手段及び/又はオゾン処理装置を出るオゾン化された血液を加温するための加温手段を含む。
【0013】
本開示の更に別の態様によれば、血液をオゾンと接触させる方法が提供される。この方法は、オゾン含有ガスのマイクロサイズの気泡と血液を接触させるステップを含む。このマイクロバブルに接触する時に血液は12℃未満の温度にあり、マイクロバブルの平均直径は5μm未満である。
【0014】
本開示の更に別の態様によれば、血液をオゾンと接触させる方法が提供される。この方法は、血液を受け入れるステップ、血液を12℃未満の温度に冷却するステップ、冷却した血液をオゾン含有ガスのマイクロバブルと接触させるステップ、場合により血液を温かい温度に加温するステップ、及び保管コンテナ又は保管容器に血液を送るステップを含む。
【0015】
本開示の更に別の態様によれば、微生物感染に罹患している患者を治療するための方法が提供される。この方法は、患者から血液を採取するステップ、血液を12℃未満の温度に冷却するステップ、冷却した血液をオゾン含有ガスのマイクロバブルと接触させるステップ、血液を加温するステップ、及び患者に血液を戻すステップを含む。この方法は、本開示のシステム又は装置を使用して実行されるのが好ましい。
【0016】
本開示の第2及びそれに続く態様の特徴は、第1の態様の場合と同様である。
【0017】
他に定義されない限り、本明細書で使用される技術的及び科学的用語を含むすべての用語は、本開示が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書において明確に定義されない限り、一般的に使用される辞書に定義されているような用語は、関連技術の背景における意味と一致する意味を有すると解釈され、理想化された意味としても過度に正式な意味としても解釈されないことが更に理解される。
【0018】
本明細書で使用される「微生物」という用語は、「微生物」と同義であり、細菌、ウイルス、真菌又は酵母を含む任意の微生物を意味し、そのような微生物の胞子又は休眠状態を含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明の実施形態が有するこれら及び他の態様、特徴及び利点は、本発明の実施形態の以下の説明から明らかになる。添付の図面を参照する。
【0020】
図1図1は、血液をオゾンと接触させるための装置を含むオゾン処理システムの第1実施形態の概略図である。
【0021】
図2図2は、血液をオゾンと接触させるための装置を含むオゾン処理システムの第2実施形態の概略図である。
【0022】
図3図3は、血液をオゾンと接触させるための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
実施形態の説明
以下、添付の図面を参照して、本発明の特定の実施形態を説明する。もっとも、本発明は、多くの異なる形態で実施することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されるものと解釈すべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が詳細かつ完全であり、本発明の範囲を当業者に完全に伝えるように提供される。添付の図面に示される実施形態の詳細な説明に使用される用語は、本発明を限定することを意図するものではない。図面において、同様の番号は同様の要素を示す。
【0024】
本発明によるオゾン処理システムの第1実施形態を図1に示す。この装置は、入口2a及び出口2bを備えるオゾン処理チャンバ2を含むオゾン処理装置1と、オゾン注入器3とを備える。オゾン注入器3は、オゾンガスの供給源4に接続されるように構成される。
【0025】
オゾンガスの供給源は、オゾンを酸素から生成し、オゾンと酸素とをある割合で含む混合ガスを生成するオゾン発生器であってもよい。当業者に既知のように、代替のガス状オゾン供給源が提供されることもある。
【0026】
混合ガス中のオゾン対酸素の比率は、例えば、オゾン5%から20%対酸素95%から80%の範囲であり得る。 オゾン対酸素比の好ましい値は、5/95、10/90、15/85、20/80である。
【0027】
オゾン注入器は、多孔質材料で作られてもよく、例えば、焼結ステンレス鋼がある。それに代えて、又はそれに加えて、材料は焼結セラミックでも良い。 それに代えて、又は加えて、他のガス注入器を設けてオゾンガスを供給し、オゾン処理する血流を改善することもできる。他のガス注入器はノズルベース型であってもよい。多孔質材料は、4μm、3μm、2μm、1μm、0.5μm、又は0.2μmのような直径5μm未満の均一な平均細孔径を例として有する。 細孔径は、好ましくは約0.2μmから約2.0μmである。
【0028】
オゾンガス注入器3は更に、注入されるガスの圧力及び/若しくは流量の監視並びに/又は制御を容易にするために、流量計、圧力弁、圧力センサ、及び/若しくは制御要素を備えてもよい。
【0029】
図1に示す実施形態は、オゾン処理チャンバ2の内部に多孔質オゾン注入器3を備えるオゾン処理装置1を示す。この例にあるオゾン注入器は円筒形である。オゾン処理チャンバは、オゾン注入器3の多孔質マイクロバブル放出面の周囲に血流を導くように構成される。この例では、オゾン注入器は円筒形である。 好ましくは、円筒形のオゾン注入器3は、有利なオゾン処理効率のために、円筒形のオゾン処理チャンバ内で同軸上に配置される。オゾン処理チャンバ2の内壁とオゾン注入器3の多孔質マイクロバブル放出面との間には隙間が存在する。気泡は、好ましくは本明細書で説明されるマイクロバブルである。
【0030】
マイクロバブル放出面上の血流は、好ましくは、血流の乱れを最小化するための層流である。
【0031】
血流は、好ましくは垂直上方に向けられ、その結果、気泡が血流に同伴される。ガスの流れを垂直方向に向けることによって、気泡が上方に同伴される。 気泡はまた、重力とは無関係に血流全体に供給される。気泡は、例えば、円筒形オゾン注入器の周りに均一に供給される。このようにして、オゾン含有ガスで富化されていない血液の部分が回避される。 従って、この垂直方向は、オゾン含有ガスが血液に溶解するまで、血流と共にガスにとって好ましい(短い)時間を提供する。これは、例えば残留気泡が患者に戻されることを避けられなければならない場合に重要である。加えて、血流の泡立ちは、血流の垂直方向の配置によって減少又は回避されることが好ましい。
【0032】
例えば国際公開第2008/066470号に記載されている水平配置と比較すると、気泡が注入器に沿って上向きに上昇するため、注入器の下の液体の流れの一部が十分に、又は全くオゾン処理されていない。即ち、注入器の下に流れるよりも上に流れる方が良好にオゾン処理される。
【0033】
オゾン注入器3の形状は円筒形である必要はなく、オゾン注入器の全表面が血液と接触する必要はない。1つの代替的な構成が図2に示されている。
【0034】
オゾン注入器3は、マイクロバブルが放出されるオゾン注入器3の多孔質表面からの最大距離(d)内でオゾン処理チャンバ2内での血流の通過が制限されるよう、オゾン処理チャンバ2内に配置される。最大距離(d)は、好ましくは約2mm未満であり、例えば、約1.5mm、1.0mm、0.75mm、0.5mm、0.25mm、若しくは0.1mm又はこの範囲内の任意の距離である。
【0035】
オゾン処理チャンバ2及びオゾン注入器3は、オゾン処理ゾーン5を提供するよう設計されており、オゾン処理ゾーン5は、マイクロメーターサイズのオゾン含有ガスの気泡が血流と混合して溶解する。
【0036】
血液及びオゾン含有ガスがオゾン処理チャンバ1を流れるとき、図1の水平破線の間の領域として示されるオゾン処理領域5は、マイクロバブルが血流に同伴される領域として存在する。気泡は、血流中の同伴経路に沿って血液中に溶解される。
【0037】
オゾン接触時間又は滞留時間は、いくつかの要因によって決定される。これらの要因には、ガス中のオゾン濃度及びガスの流量が含まれる。別の要因は、血液の温度である。オゾン処理時の温度は、本開示の実施例においては制御されることが好ましい。更に、血液の流量もそのような要因の一つである。これらの要因のいずれか又は全てを、オゾン処理を最適化するために測定、監視、又は制御することができる。これらの要因は、コンピュータ制御によって、オゾン供給源4からのガス圧力及び流量を制御されてもよい。これに代えて、又は加えて、血液圧送手段10の動作が制御されてもよい。必要に応じて、血液冷却手段11は、好ましい血液オゾン処理のために制御される。
【0038】
本開示の一例によるシステムは、2つ以上のオゾン処理装置を備えてもよい。例えば、血流に対して複数のオゾン処理装置を並列に配置してもよい。
【0039】
これに代えて、又は加えて、単一のオゾン処理装置は、複数のオゾン注入器を備えることができる。 複数のオゾン注入器の各々又はいくつかは、オゾン処理チャンバを通って移動するすべての血液が少なくとも1つのオゾン注入器からの最大距離(d)内を通過するように配置されてもよい。
【0040】
図1に示すオゾン処理システムは、更に、図示のように、血液圧送手段10を備えることもできる。血液圧送手段10は、血液を装置又はシステムを介して血液入口部分8から血液出口部分9に圧送するよう構成されている。血液を圧送するための適切な血液圧送手段10は、当該技術分野において公知であり、例えば、蠕動ポンプ、ローラーポンプ、又は遠心ポンプを含み得る。圧送手段10は、適切な流量でシステムを通して血液を圧送することができる。適切な流量は、例えば、約0.1リットル/時間から約12リットル/時間の範囲である。
【0041】
このシステムはまた、医療グレードのオゾン発生器のようなオゾン発生源4を備えることができる。オゾン発生器は、ガス導管6によってオゾン注入器3に流体接続されている。ガス導管6は、オゾン発生器6への血液の逆流を防止する逆止弁7を備えることができる。このような逆流は、例えば、ガス導管6内の突然の圧力降下の場合に生じ得る。
【0042】
オゾン発生源4は、好ましくは、一定圧力でオゾンを供給することができる。オゾン供給源4は、好ましくは、このような一定圧力で少なくとも10%のオゾンを供給することができる。ガスの一定圧力は、オゾン注入器3において少なくとも0.1バール、好ましくは0.5バール、0.75バール又は1.0バールである。
【0043】
このシステムは、オゾン注入器に達する前にオゾン含有ガスと混合され得る1つ以上の不活性ガスの供給源を更に備えることができる。不活性ガスの例には、窒素及びヘリウムが含まれる。
【0044】
システムの血液接触部分は、好ましくは、任意の適切な生体適合性材料から作られ得る。そのような材料には、輸血用のチューブ、心肺装置の血液回路、アフェレーシス装置に使用されるような、血液の移送又は保管に典型的に使用される材料が含まれる。
【0045】
血液入口部分2は、静脈に挿入するための中空針のような患者から血液を受け取るための手段を含むか、又はそれに接続可能である。
【0046】
これに代えて、又は加えて、血液入口部分2は、血液の容器から血液を受け取るための手段を含むことができる。そのような容器は、バッグ若しくはボトル、又はアフェレーシス装置、透析装置、若しくは心肺装置のような体外循環装置を含むことができる。
【0047】
オゾン処理システムは、血液冷却手段11をオゾン処理装置の入口2aの上流に配置させ、血液がオゾン処理装置1に入る前に12℃未満の冷却温度に下げるよう構成することができる。
【0048】
血液冷却手段11は、血液を冷却するために医療技術で用いられる任意の適切な血液熱交換器を含むことができ、オゾン処理チャンバ2に入る血液の温度をコンピュータ制御するように構成することができる。
【0049】
血液冷却手段11は、好ましくは、上記血液を約4℃から約12℃の間の温度に冷却して、オゾン処理チャンバ2内でオゾン含有ガスと接触する冷却血液を生成するように制御可能である。
【0050】
冷却は相対的な用語であることが理解される。例えば、オゾン処理システムに入る血液が、所望の温度よりも低い温度を有する場合、即ち約4℃から約12℃の間よりも低いような場合、血液をこの好ましい温度範囲に加熱してもよい。これは例えば、凍結血漿のような凍結した血液保存物の場合がある。冷却は周囲室温に対する相対的な用語であると理解することができる。患者から体温で血液がオゾン処理システムに投入される場合、冷却は生理的体温に対して相対的でもある。
【0051】
オゾン処理チャンバ内でのオゾン処理では、血液は上述の通り好ましくは12℃未満の温度を有し、好ましくは、約4℃から約12℃の温度を有する。次いで、冷却された血液は、この温度で、オゾン処理チャンバ2内のオゾン含有ガスと接触される。
【0052】
これに加えて、又は代えて、オゾン処理システムは、血液加温手段12を含んでもよい。血液加温手段は、好ましくは、オゾン処理チャンバの下流に配置される。血液加温手段は、例えば、オゾン処理装置1からの出口2b下流に配置される。血液加温手段は、オゾン処理チャンバ2内の血液温度よりも高い温度にオゾン処理血液を温めるように構成されている。
【0053】
血液加温手段12は、ヒト又はヒト以外の動物の体温に血液を温めるように構成することができる。例えば、 約24℃から約39℃の間である。
【0054】
血液加温手段12は、これに加えて、又は代えて、血液の温度を保管温度に調節するように構成することができる。加温とは相対的な用語であると理解される。例えば、オゾン処理システムから出る血液が、装置又はシステムを出るのに望ましい温度よりも高い温度を有する場合、実際に、潜在的には更に、この所望の温度に血液を冷却することができる。これは、オゾン処理されていない血液製剤と比較して有利な保管特性を、オゾン処理した凍結血液保存物(例えば、凍結血漿)に与えることが望まれる場合であり得る。
【0055】
血液の加温は、ほとんどの例において、オゾン処理された血液に熱エネルギーを供給してその温度を上昇させることを含む。
【0056】
血液加温手段12は、血液冷却手段11と同様にコンピュータ制御することができる。
【0057】
このシステムは、好ましくはオゾン注入器の下流で、気泡を除去するための手段を含む血液処理ユニット13を備えることができる。これに代えて、又は加えて、システムは、好ましくはオゾン注入器の下流で、泡を除去するための手段を含む血液処理ユニット13を備えることができる。これに代えて、又は加えて、システムは、好ましくはオゾン注入器の下流で、血栓を除去するための手段を含む血液処理ユニット13を備えることができる。このようにして、望ましくない気泡、泡、血栓、及び/又は他の物質を適切に除去することができる。この処理は、少なくとも部分的に、オゾン処理チャンバの上流で行われてもよい。この処理は、好ましくは、例えば血液が患者又は血液保管容器に供給される前に、オゾン処理チャンバの下流(相対的な血流)で行われる。
【0058】
血液処理ユニット13は、例えば、粒子を除去するためのフィルタを含むことができる。これに代えて、又は加えて、血液処理ユニット13は、血液透過性だが気泡に対しては不浸透性の膜によって出口領域から分離された入口領域を含む血液リザーバを備えてもよい。
【0059】
オゾン処理チャンバの下流の血液処理ユニット13は、患者に供給される血液をオゾン処理するために使用される本発明の実施形態において特に有用であり得る。
【0060】
装置及び/又はシステムの全部又は一部は、コンピュータ制御システム19と組み合わされ、及び/又は制御されてもよい。コンピュータ制御システム19は、オゾン処理システム内のセンサ、アクチュエータ、弁及び/又はスイッチに電気的に結合されてもよい。
【0061】
制御システム19は、装置の動作パラメータを制御するように構成されたコードセグメントを有するソフトウェアを含むことができる。操作パラメータには、装置の様々な部分に設けられた圧力、流れ、温度、及び/又は化学センサから受信したセンサデータに基づく、次のようなパラメータが含まれる。例えば、血液及びガスの流量並びに圧力、オゾン含有ガス中のオゾン及び他のガスの濃度、装置の種々の部分における血液温度、装置及び/又はシステム導管の様々な部分の血液流量。
【0062】
図2は、代替的に構成されたオゾン処理装置1を含むオゾン処理システムの一例を示す。オゾン注入器3の上面のみが血液と接触し、オゾン含有ガスのマイクロバブルを血流に注入すると、血流はその注入されたマイクロバブルを同伴する。オゾン注入器3の真上には、マイクロバブルが血液中に完全に溶解するオゾン処理領域5が設けられている。
【0063】
理論に縛られる意図はないが、オゾンはまた、オゾン処理領域5内の血液との化学反応によって完全に消費されると考えられている。
【0064】
オゾン処理チャンバ2は、全ての血流がオゾン注入器3の上面から最大距離(d)内を通過するように構成されている。最大距離(d)は、好ましくは約2mm未満であり、例えば1.5mm、1.0 mm、0.75mm、0.5mm、0.25mm、又は0.1mm又はこの範囲内の任意の距離である。
【0065】
あるいは、血流が注入器の上方のオゾン処理ゾーン5内のマイクロバブルの流れを同伴するように、オゾン注入器3の上方で血流の直径を狭めることができる。
【0066】
このような実施形態では、オゾン注入器3の表面からの最大距離は、他の実施形態よりも大きくてもよい。オゾン処理ゾーン5における流れの直径は、好ましくは約2mm未満であり、例えば1.5mm、1.0mm、0.75mm、0.5mm、0.25mm、若しくは0.1mm又はこの範囲内の任意の距離である。
【0067】
一態様において、本開示は、血液をオゾンと接触させる方法に関する(図3)。第1の例では、この方法は、血流をオゾン処理システムに受けるステップ301を含む。この方法は、オゾン含有ガスのマイクロバブルを血流に注入するステップ303を含むことができる。更に、この方法は、システムからオゾン処理された血液を供給するステップ305を含むことができる。好ましくは、血液の温度は、オゾンの注入中において12℃未満である。オゾン含有ガスは、好ましくは、5μm未満の平均直径を有するマイクロバブルとして提供される。オゾン注入中の血液の温度は、好ましくは約4℃から約10℃間であり、例えば5℃、6℃、7℃、8℃又は9℃である。
【0068】
オゾン含有ガスは、通常、上記で説明した通りの範囲と比率である、5から20%のオゾンからなるオゾンと酸素との混合物を生じさせるオゾン発生器によって生成される。
【0069】
血流に注入されるオゾン含有ガス中のオゾン濃度は、好ましくは10グラム/ m3未満、より好ましくは5グラム/ m3未満である。好ましくは、オゾン含有ガス中のオゾン濃度は、少なくとも1グラム/ m3である。
【0070】
注入されるガスの圧力は、例えば、少なくとも0.1バール、好ましくは0.5バール、0.75バール又は1.0バールである。
【0071】
血液の体積流量とオゾン含有ガスの体積流量との比率は、約10:1から約50:1の範囲内に調整することができる。
【0072】
血液の体積流量は、0.1リットル/時間から12リットル/時間の範囲であり得、例えば3リットル/時間から6リットル/時間の範囲であり得る。
【0073】
血流中のオゾンの供給量は、10ppm未満であり、例えば、1ppm、2ppm、3ppm、4ppm、5ppm、6ppm、7ppm、8ppm、又は9ppmであり得る。
【0074】
乱流を最小にするために、血流は層流であることが好ましい。
【0075】
流量及び圧力は、マイクロバブルが直径5μm未満の実質的に均一な平均直径を有するように制御又は設定される。
【0076】
流量及び圧力は、マイクロバブルが10秒未満、好ましくは5秒未満、より好ましくは2秒未満で血流に完全に溶解するように制御又は設定される。
【0077】
このようにしてオゾン含有ガスの流量及び圧力を制御することにより、マイクロバブルがより大きな気泡に合体するのを防止することができ、従って、血流に同伴されるマイクロバブルの全てが原則的に所望の直径を有する。
【0078】
この方法がオゾン処理温度より高い温度の患者又は他の血液源からの血液に対して実施される場合、この方法は更に、オゾンを血流に注入するステップ303の前に血液を冷却するステップ302を含むことができる。
【0079】
オゾン処理温度より高い温度で血液が患者に戻されるか、又は保管される場合、血液をシステムから供給するステップ305の前にステップ304で加温されてもよい。
【0080】
オゾン処理された血液が保管される場合、血液の加温が必要ではないか、あるいは上記のように冷却される。
【0081】
オゾン処理システムで受けた血流は、任意で、例えばオゾン処理位置の上流の血液処理ユニットによってステップ301aで前処理されてもよい。これに代えて、又は加えて、例えば、抗凝血剤又は他の薬物を血流に添加してもよい。これに代えて、又は加えて、そのような物質の添加を、オゾン処理した血液に、すなわちオゾン処理位置の下流において行うことができる。
【0082】
血液の体外処理は、気泡形成、血液発泡、及び凝塊又は沈殿物の形成のような望ましくない血液の異常をもたらす。従って、本方法は、上述のような、泡、気泡、凝塊、及び/又は沈殿物を除去するための1つ又は複数の後処理ステップ304aを含むことができる。
【0083】
血液とオゾンの接触時間及び温度は、特定の微生物を殺菌するために最適化することができる。
【0084】
接触は、微生物を殺菌するためのオゾンとの相加若しくは相乗効果及び/又はオゾン含有ガスと血液の接触に伴う望ましくない若しくは有害な影響を軽減するための保護効果を有する薬剤の投与を含むことができる。
【0085】
本発明は、特定の実施形態を参照して上述されている。しかしながら、上述したもの以外の他の実施形態も、添付の特許請求の範囲に規定される本発明の範囲内で等しく可能である。
図1
図2
図3