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  • 特許-排熱利用システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】排熱利用システム
(51)【国際特許分類】
   F22B 3/04 20060101AFI20231127BHJP
   F28D 20/00 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
F22B3/04
F28D20/00 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021186150
(22)【出願日】2021-11-16
(65)【公開番号】P2023073600
(43)【公開日】2023-05-26
【審査請求日】2023-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390036663
【氏名又は名称】木村化工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】立野 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】池田 博史
(72)【発明者】
【氏名】竹森 勇
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-134305(JP,A)
【文献】特開2015-206490(JP,A)
【文献】特開2014-062700(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0032783(US,A1)
【文献】特表2015-503048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 1/00-37/78
F28D 20/00-20/02
F01K 1/00- 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源となる水の温度レベルを上昇させるためのヒートポンプと、
前記ヒートポンプにより温度レベルを上昇させた高温水を加熱源とし、減圧下で操作され、水を蒸発させることで真空蒸気を発生させる蒸発器と、
前記真空蒸気を断熱圧縮して、温度レベルが上昇した低圧蒸気とする低圧蒸気圧縮機と、
前記低圧蒸気を蓄える低圧アキュムレータと、
前記低圧アキュムレータから供給される前記低圧蒸気を断熱圧縮して、前記低圧蒸気よりも温度レベルの高い中圧蒸気とする中圧蒸気圧縮機と、
前記中圧蒸気圧縮機を介して、前記低圧アキュムレータとシリーズに配列され、前記中圧蒸気を蓄える中圧アキュムレータと、
前記低圧アキュムレータの圧力が所定の圧力以下に低下したときに、前記中圧アキュムレータに蓄えられた前記中圧蒸気を前記低圧アキュムレータに供給するための中圧蒸気供給ラインと
を備えていることを特徴とする排熱利用システム。
【請求項2】
前記低圧蒸気および前記中圧蒸気の少なくとも一方が所定のユーザで用いられるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の排熱利用システム。
【請求項3】
前記低圧蒸気および前記中圧蒸気の少なくとも一方が前記所定のユーザで用いられることにより凝縮した凝縮水を貯留する蒸発器供給タンクを備え、前記蒸発器供給タンクに貯留された前記凝縮水が、連続した一定流量で前記蒸発器に供給されるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の排熱利用システム。
【請求項4】
前記ヒートポンプが複数台シリーズに配列されており、前記熱源となる水の温度レベルが、各ヒートポンプを経て段階的に上昇するように構成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の排熱利用システム。
【請求項5】
シリーズに配列された前記複数台のヒートポンプのうちの最終段のヒートポンプから得られる高温水が前記蒸発器の熱源として用いられ、かつ、前記複数台のヒートポンプのうちの少なくとも一つのヒートポンプから得られる所定温度の水が、前記蒸発器以外の所定のユーザで利用されるように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の排熱利用システム。
【請求項6】
前記中圧蒸気供給ラインに圧力制御バルブが配設されていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の排熱利用システム。
【請求項7】
電気ボイラをさらに備え、排熱利用システムを継続して稼働させるために必要な熱エネルギーが不足している場合に、前記電気ボイラにより発生させた蒸気が供給されるように構成されていることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の排熱利用システム。
【請求項8】
冷却器をさらに備え、排熱利用システムが包含する熱エネルギーが、前記排熱利用システムを継続して稼働させるために許容される熱エネルギーを超える場合には、前記冷却器により余剰の熱エネルギーが系外に排出されるように構成されていることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の排熱利用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排熱利用システムに関し、詳しくは、工場などで排出される熱エネルギーを効率よく回収して、二酸化炭素ガスの排出量を削減することが可能な排熱利用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年地球温暖化対策として、二酸化炭素ガスの排出量を削減するために、重油や石炭などをボイラで燃焼させた熱エネルギーにより発生させた蒸気(ボイラ蒸気)の使用量を減らすための種々の試みがなされている。
【0003】
ところで、一般的に工場での熱エネルギー源としては、主に蒸気が使用されており、冷却にはクーリングタワーで冷却された水が広く用いられている。さらに低い温度に冷却することが必要な場合には、冷却器で冷却されたチラー水が使用されている。
【0004】
そして、工場で使用された蒸気に由来する排熱や、工場で使用され昇温した冷却水が有する熱を回収するシステムとして、ヒートポンプを利用した種々のシステムが提案されている。
【0005】
また、例えば特許文献1には、蒸留塔の塔頂ベーパの冷却に用いた冷却水から熱を回収し、リボイラで使用するようにした蒸留装置が開示されている。
【0006】
そして、特許文献1の発明によれば、省エネルギー性に優れた、エネルギー効率の高い蒸留装置を実現することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2019-122953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、工場で使用された蒸気に由来する排熱や、工場で使用され昇温した冷却水が有する熱を回収するシステムとして、ヒートポンプを利用した種々のシステムが提案されており、また、特許文献1には、蒸留塔の塔頂ベーパの冷却に用いた冷却水から熱を回収し、リボイラで使用することで、エネルギー効率の高い蒸留装置を実現できることが記載されているが、工場で使用された冷却水などから、その熱回収を効率よく行うことは容易ではない。
【0009】
例えば上述の特許文献1の蒸留装置の場合、装置内で熱の移動が完結しているとともに、定常的、連続的に運転される装置であることから、装置に必要な温度帯が適用できるヒートポンプがあれば、比較的簡単に熱を回収することが可能である。
【0010】
しかし、現実的には工場内における加熱と冷却は、非定常、かつ、間欠に実施されるため、工場全体における加熱熱量と冷却熱量がほぼ同じであっても、加熱と冷却を同時に行うヒートポンプを用いて効率よく熱回収を行うことは困難であるのが実情である。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するものであり、工場で使用されたエネルギーの多くを効率よく回収することが可能で、地球温暖化の原因となる二酸化炭素ガスの発生量をゼロに近づけることが可能な排熱利用システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の排熱利用システムは、
熱源となる水の温度レベルを上昇させるためのヒートポンプと、
前記ヒートポンプにより温度レベルを上昇させた高温水を加熱源とし、減圧下で操作され、水を蒸発させることで真空蒸気を発生させる蒸発器と、
前記真空蒸気を断熱圧縮して、温度レベルが上昇した低圧蒸気とする低圧蒸気圧縮機と、
前記低圧蒸気を蓄える低圧アキュムレータと、
前記低圧アキュムレータから供給される前記低圧蒸気を断熱圧縮して、前記低圧蒸気よりも温度レベルの高い中圧蒸気とする中圧蒸気圧縮機と、
前記中圧蒸気圧縮機を介して、前記低圧アキュムレータとシリーズに配列され、前記中圧蒸気を蓄える中圧アキュムレータと、
前記低圧アキュムレータの圧力が所定の圧力以下に低下したときに、前記中圧アキュムレータに蓄えられた前記中圧蒸気を前記低圧アキュムレータに供給するための中圧蒸気供給ラインと
を備えていることを特徴としている。
【0013】
本発明においては、前記低圧蒸気および前記中圧蒸気の少なくとも一方が所定のユーザで用いられるように構成されていることが好ましい。
【0014】
また、前記低圧蒸気および前記中圧蒸気の少なくとも一方が前記所定のユーザで用いられることにより凝縮した凝縮水を貯留する蒸発器供給タンクを備え、前記蒸発器供給タンクに貯留された前記凝縮水が、連続した一定流量で前記蒸発器に供給されるように構成されていることが好ましい。
【0015】
また、前記ヒートポンプが複数台シリーズに配列されており、前記熱源となる水の温度レベルが、各ヒートポンプを経て段階的に上昇するように構成されていることが好ましい。
【0016】
また、シリーズに配列された前記複数台のヒートポンプのうちの最終段のヒートポンプから得られる高温水が前記蒸発器の熱源として用いられ、かつ、前記複数台のヒートポンプのうちの少なくとも一つのヒートポンプから得られる所定温度の水が、前記蒸発器以外の所定のユーザで利用されるように構成されていることが好ましい。
【0017】
また、前記中圧蒸気供給ラインに圧力制御バルブが配設されていることが好ましい。
【0018】
また、電気ボイラをさらに備え、排熱利用システムを継続して稼働させるために必要な熱エネルギーが不足している場合に、前記電気ボイラにより発生させた蒸気が供給されるように構成されていることが好ましい。
【0019】
また、冷却器をさらに備え、排熱利用システムが包含する熱エネルギーが、前記排熱利用システムを継続して稼働させるために許容される熱エネルギーを超える場合には、前記冷却器により余剰の熱エネルギーが系外に排出されるように構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の排熱利用システムは、上述のように構成されており、ヒートポンプにより温度レベルを上昇させた高温水を加熱源とし、減圧操作される蒸発器で水を蒸発させて真空蒸気を発生させ、この真空蒸気を低圧蒸気圧縮機で断熱圧縮して温度レベルが上昇した低圧蒸気とし、この低圧蒸気を低圧アキュムレータに蓄えるとともに、低圧アキュムレータに蓄えられた低圧蒸気を中圧蒸気圧縮機で断熱圧縮して温度レベルがさらに上昇した中圧蒸気とし、この中圧蒸気を中圧アキュムレータに蓄え、低圧アキュムレータの圧力が所定の圧力以下に低下したときには、中圧アキュムレータに蓄えられた中圧蒸気が中圧蒸気供給ラインを経て低圧アキュムレータに供給されるように構成しているので、工場で使用された熱エネルギーを効率よく回収して再利用することが可能になり、地球温暖化の原因となる二酸化炭素ガスの発生量をゼロに近づけることが可能になる。
【0021】
すなわち、本発明の排熱利用システムでは、工場で使用された熱エネルギーをヒートポンプにより効率よく回収して必要な用途に利用することを可能にするとともに、ヒートポンプで温度を上昇させた高温水が有する熱エネルギーにより真空蒸気を発生させ、得られた真空蒸気を圧縮することにより温度レベルの上昇した低圧蒸気および中圧蒸気を得るようにしているので、工場で使用された熱エネルギーを効率よく回収して再利用することが可能になり、基本的に、石炭や重油などを燃焼させて発生させるボイラ蒸気を必要とせずに、工場で必要な熱エネルギーを賄うことが可能になる。
【0022】
また、低圧アキュムレータの圧力が所定の圧力以下に低下したときには、中圧アキュムレータに蓄えられた中圧蒸気が中圧蒸気供給ラインを経て低圧アキュムレータに供給されるように構成されているので、低圧アキュムレータと中圧アキュムレータとを安定して稼働させ、必要に応じて低圧蒸気を必要とするユーザ(低圧蒸気を使用する機器や設備など)と、中圧蒸気を必要とするユーザ(中圧蒸気を使用する機器や設備など)に、加熱源としての低圧蒸気や中圧蒸気を安定し、かつ確実に供給することが可能になる。
【0023】
なお、本発明において熱源として利用される水(すなわち、ヒートポンプで温度レベルを上昇させる対象となる水)としては、例えば工場に設置された冷却装置で冷却に用いられた水(使用後の冷却水)などが例示されるが、熱源として利用される水はこれに限られるものではない。
【0024】
また、低圧蒸気および中圧蒸気の少なくとも一方が所定のユーザで用いられるように構成することで、利用できる蒸気温度の選択肢が増大するため、本発明をより実効あらしめることができる。
【0025】
また、低圧蒸気および中圧蒸気の少なくとも一方が所定のユーザで用いられることにより凝縮した凝縮水を貯留する蒸発器供給タンクを備え、蒸発器供給タンクに貯留された凝縮水が、連続した一定流量で蒸発器に供給されるように構成した場合、真空蒸気の発生量を安定化、連続化することが可能になり、本発明の排熱利用システムの安定性、信頼性を向上させることができる。
【0026】
また、ヒートポンプが複数台シリーズ(直列)に配列され、熱源となる水の温度レベルが、各ヒートポンプを経て段階的に上昇するように構成されている場合、各ヒートポンプの負荷が過大になることを抑制して、COPを向上させることが可能になり、好ましい。
【0027】
また、シリーズに配列された複数台のヒートポンプのうちの最終段のヒートポンプから得られる高温水が蒸発器の熱源として用いられ、かつ、複数台のヒートポンプのうちの少なくとも一つのヒートポンプから得られる所定温度の水が、蒸発器以外の所定のユーザ(所定温度の水が用いられる機器や設備など)で利用されるように構成されている場合、各ユーザに適した種々の温度の水を利用することが可能になり、本発明をより実効あらしめることができる。
【0028】
また、中圧蒸気供給ラインに圧力制御バルブを配設するようにした場合、低圧アキュムレータの圧力を意図する圧力に確実に制御することが可能になり、本発明の排熱利用システムをより安定して稼働させることが可能になる。
【0029】
また、電気ボイラをさらに備え、排熱利用システムを継続して稼働させるために必要な熱エネルギーが不足している場合に、電気ボイラにより発生させた蒸気が供給されるように構成した場合、不足する熱エネルギーを補給して、排熱利用システムを継続して稼働させることが可能になる。一方、電気ボイラにより発生させた蒸気を供給することで、石炭や重油を用いたボイラで発生させた蒸気を用いる場合のような二酸化炭素の発生を回避することができる。
【0030】
また、冷却器をさらに備え、排熱利用システムが包含する熱エネルギーが、排熱利用システムを継続して稼働させるために許容される熱エネルギーを超える場合には、冷却器により余剰の熱エネルギーが系外に排出されるように構成した場合、余剰の熱エネルギーを系外に取り出すことで熱エネルギーのバランスを取ることが可能になり、排熱利用システムを安定して、継続的に稼働させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施形態にかかる排熱利用システムの構成を示すフローシートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[排熱利用システムの概要]
本発明の排熱利用システムの実施形態について説明を行う前に、本発明の排熱利用システムの概要について説明する。
【0033】
本発明にかかる排熱利用システムでは、例えば、工場で冷却に用いられ、冷却水に移行した熱エネルギーが、ヒートポンプで温水としてできるだけ多く回収される。回収された熱エネルギーは、任意の用途に有効利用することが可能であり、使い切れない温水が有する熱エネルギーは、蒸発器の加熱源として利用され、真空蒸気を発生させる。
【0034】
蒸発器で発生させた真空蒸気は蒸気圧縮機(低圧蒸気圧縮機)で断熱圧縮されて低圧蒸気となり、低圧アキュムレータに蓄えられる。この低圧蒸気は熱エネルギーとして任意の用途に有効利用することが可能であり、また、使い切れない低圧蒸気は、さらに蒸気圧縮機(中圧蒸気圧縮機)で断熱圧縮されて中圧蒸気となり、中圧蒸気アキュムレータに蓄えられる。そして、この中圧蒸気は低圧蒸気よりも温度の高い熱エネルギーとして任意の用途に有効利用することができる。
【0035】
このように、本発明の排熱利用システムによれば、ヒートポンプにより熱回収が行われるとともに、ヒートポンプで温度レベルを上昇させた温水の有する熱エネルギー、低圧蒸気圧縮機で断熱圧縮して温度レベルを上昇させた低圧蒸気の有する熱エネルギー、および中圧蒸気圧縮機で低圧蒸気を断熱圧縮してさらに温度レベルを上昇させた中圧蒸気の有する熱エネルギーが効率よく利用される。
【0036】
本発明の排熱利用システムでは、工場内で使用される(必要とされる)加熱および冷却のためのエネルギーのほとんどを、回収エネルギーで賄うことができるように、ヒートポンプによりできるだけ多くのエネルギーが回収されるとともに、十分な低圧蒸気と中圧蒸気とが、低圧アキュムレータと中圧アキュムレータとに蓄えられるように構成されていることが望ましい。
【0037】
低圧アキュムレータと、中圧アキュムレータは、それぞれに蓄えられるべき熱量(すなわち低圧蒸気および中圧蒸気の量)、使用される低圧蒸気および中圧蒸気の量(すなわち熱量)、蓄えた熱(すなわち低圧蒸気および中圧蒸気)の使用の頻度などを考慮して、その大きさを適切に設計することが可能である。
【0038】
低圧アキュムレータおよび中圧アキュムレータでは、使用される蒸気圧力より高温高圧で蒸気が蓄えられ、飽和温度差を利用することが必要であることから、低圧アキュムレータの役割としては、蓄熱目的より、真空蒸気を、低圧蒸気を経て中圧蒸気へ断熱圧縮する際の中継器としての役割が大きくなる。そして、低圧アキュムレータがこの役割を果たすことにより、真空蒸気から低圧蒸気を効率よく連続的に利用することが可能になる。
【0039】
さらに、低圧アキュムレータの圧力が所定の圧力以下に低下したときに、中圧アキュムレータに蓄えられた中圧蒸気を低圧アキュムレータに供給するための中圧蒸気供給ラインを備えていることから、低圧蒸気が工場で多く使用される際には、中圧アキュムレータに蓄えられている中圧蒸気を低圧アキュムレータに供給して、低圧アキュムレータの圧力変動を少なくすることができる。さらに、中圧蒸気供給ラインに、圧力制御バルブを設けることにより、低圧アキュムレータの圧力を意図する圧力により確実に制御することができる。
【0040】
また、本発明の排熱利用システムにおいては、例えば、中圧蒸気が不足する場合に、電気ボイラで発生させた蒸気を中圧アキュムレータに供給することで、重油や石炭を用いたボイラで発生させた蒸気を必要とすることなく、不足する熱エネルギーを補給することができる。
【0041】
また、本発明の排熱利用システムは、システムが包含する熱エネルギーが、排熱利用システムを継続して稼働させるために許容される熱エネルギーを超える場合に、余剰の熱エネルギーを系外に排出するための冷却器を備えた構成とし、安定した運転を継続して行うことができるようにすることができる。
【0042】
また、本発明にかかる排熱利用システムを設計するにあたっては、まず、
(a)熱源となる水から熱回収を行うヒートポンプの条件(温度など)と、
(b)蒸発器で蒸発させた蒸気(真空蒸気)を断熱圧縮して昇温させた蒸気を蓄えるアキュムレータの条件(蓄える蒸気の量や温度など)を決定することが必要である。
【0043】
ヒートポンプに関しては、複数台のヒートポンプをシリーズに配列し、細かく温度を区切って、段階的に温度レベルを上げるようにすることで、熱回収の効率を向上させることができる。また、段階的に温度レベルを上げることにより、各段で得られる多様な温度の熱源を、種々のユーザに提供することが可能になり、有意義である。
【0044】
[排熱利用システムの実施形態]
次に、図1を参照しつつ、本発明の実施形態にかかる排熱利用システムついて詳しく説明する。
【0045】
本実施形態にかかる排熱利用システムは、ヒートポンプとして、図1に示すように、第1ヒートポンプ1(1a)、第2ヒートポンプ1(1b)、第3ヒートポンプ1(1c)の3台(複数台)のヒートポンプ1を備えており、各ヒートポンプ1は、シリーズに3段階に配列されている。
【0046】
また、本実施形態にかかる排熱利用システムは、第1~第3ヒートポンプ1(1a、1b、1c)を経て昇温された水(本実施形態では97℃の高温水)を熱源として水を蒸発させて真空蒸気を発生させる蒸発器20を備えている。蒸発器20は減圧下で操作されるように構成されている。
【0047】
なお、本実施形態にかかる排熱利用システムにおいては、蒸発器20として、液膜降下型熱交換器が用いられている。ただし、蒸発器20には、プレート式熱交換器、強制循環式熱交換器などを使用することも可能であり、その型式に特別の制約はない。
【0048】
また、本実施形態にかかる排熱利用システムは、減圧下で操作される蒸発器20で発生した89℃の真空蒸気が、3段階にシリーズに配列された低圧蒸気圧縮機30(第1低圧蒸気圧縮機30(30a)、第2低圧蒸気圧縮機30(30b)、第3低圧蒸気圧縮機30(30c))で段階的に断熱圧縮されることにより、温度レベルの上昇した低圧蒸気(本実施形態では115~120℃の低圧蒸気)が得られるように構成されている。
【0049】
なお、本実施形態にかかる排熱利用システムにおいては、3段階にシリーズに配列された第1低圧蒸気圧縮機30(30a)、第2低圧蒸気圧縮機30(30b)、および第3低圧蒸気圧縮機30(30c)として、それぞれ遠心式ファン型圧縮機が用いられている。ただし、低圧蒸気圧縮機30の型式は遠心式ファン型圧縮機に限られるものではなく、公知の種々の蒸気圧縮機を用いることが可能である。
【0050】
また、本実施形態では第1低圧蒸気圧縮機30(30a)、第2低圧蒸気圧縮機30(30b)、および第3低圧蒸気圧縮機30(30c)の3台の低圧蒸気圧縮機を3段階にシリーズに配列して、段階的に断熱圧縮することにより、温度レベルの上昇した低圧蒸気(本実施形態では115~120℃の低圧蒸気)を得るようにしているが、蒸気圧縮機の型式を適切に選択することにより、1台の低圧蒸気圧縮機で、115~120℃の低圧蒸気が得られるように構成することも可能である。
【0051】
また、本実施形態にかかる排熱利用システムは、3段階にシリーズに配列された低圧蒸気圧縮機30で断熱圧縮され、115~120℃に昇温した低圧蒸気が、低圧アキュムレータ10(10a)に蓄えられるように構成されている。
【0052】
なお、本実施形態の排熱利用システムでは、低圧アキュムレータ10(10a)の温度が、120℃を超えないように、低圧蒸気圧縮機での圧縮度(インバーターで回転数)を制御している。
【0053】
また、本実施形態の排熱利用システムは中圧蒸気圧縮機31を備えており、低圧アキュムレータ10(10a)に蓄えられた115~120℃の低圧蒸気を、中圧蒸気圧縮機31でさらに断熱圧縮して昇温させることで、低圧蒸気よりも温度の高い中圧蒸気(本実施形態では145~176℃の中圧蒸気)が得られるように構成されている。
【0054】
なお、本実施形態にかかる排熱利用システムにおいては、中圧蒸気圧縮機31として、スクリュー式圧縮機が用いられている。ただし、中圧蒸気圧縮機31はスクリュー式圧縮機に限られるものではなく、公知の種々の蒸気圧縮機を用いることが可能である。
【0055】
そして、低圧蒸気を、中圧蒸気圧縮機31で断熱圧縮して昇温させた145~176℃の中圧蒸気は、中圧アキュムレータ10(10b)に蓄えられるように構成されている。
【0056】
また、本実施形態の排熱利用システムは、中圧アキュムレータ10(10b)と低圧アキュムレータ10(10a)とを接続する中圧蒸気供給ライン32を備えている。
【0057】
この中圧蒸気供給ライン32は、低圧アキュムレータ10(10a)の圧力が所定の圧力以下に低下したとき(本実施形態では、低圧アキュムレータ10(10a)に蓄えられている低圧蒸気の温度が115℃未満に低下したとき)に、中圧アキュムレータ10(10b)に蓄えられた中圧蒸気を低圧アキュムレータに供給することで、低圧アキュムレータ10(10a)の圧力(すなわち低圧アキュムレータ10(10a)に蓄えられている低圧蒸気の温度)を維持する機能を果たすように構成されている。
【0058】
なお、中圧蒸気供給ライン32には、圧力制御バルブ33が配設されており、低圧アキュムレータ10(10a)の圧力を確実に制御することができるように構成されている。
【0059】
また、上述のように、低圧蒸気圧縮機で圧縮された115~120℃の低圧蒸気を、中圧蒸気圧縮機31で断熱圧縮して温度が145~176℃の中圧蒸気を得るようにすることで、中圧蒸気圧縮機31に過度の負荷をかけることなく、効率よく中圧蒸気を得ることが可能になる。
【0060】
次に、本実施形態の排熱利用システムについて、回収した熱を利用する方法を含めて、さらに説明する。
【0061】
本実施形態にかかる排熱利用システムにおいて、シリーズに配列された第1ヒートポンプ1(1a)、第2ヒートポンプ1(1b)、第3ヒートポンプ1(1c)の3台のヒートポンプ1のうち、第1ヒートポンプ1(1a)は、20℃のチラー水を15℃に冷却する一方で、32℃の水を37℃に加熱するように構成されたヒートポンプであって、いわばヒートポンプチラーとして機能するものである。
【0062】
この、第1ヒートポンプ1(1a)で15℃に冷却された水は、例えば製品冷却器などのチラー水ユーザ41や、空調用冷房機などの冷房設備ユーザ42で用いられ、20℃に昇温して、第1ヒートポンプ1(1a)に戻るように構成されている。
【0063】
一方、第1ヒートポンプ1(1a)で37℃に加熱された水は、第2ヒートポンプ(1b)に供給されるように構成されている。
【0064】
また、第2ヒートポンプ1(1b)は、37℃の水を32℃に冷却するとともに、65℃の水を70℃に加熱するヒートポンプである。
【0065】
この第2ヒートポンプ1(1b)で32℃に冷却された水は、一部が例えば2次排ガス冷却器などの冷却水ユーザ43で用いられるように構成されている。
【0066】
また、第2ヒートポンプ1(1b)で70℃に加熱された水は、一部が第3ヒートポンプ1(1c)に供給され、他の一部は、例えば1次反応予熱器などの温水加熱ユーザ44で、熱源として用いられるように構成されている。
【0067】
第3ヒートポンプ1(1c)は、70℃の水を65℃に冷却するとともに、92℃の水を97℃に加熱するヒートポンプ(高温ヒートポンプ)である。
【0068】
この第3ヒートポンプ1(1c)で65℃に冷却された水の一部は、温度が65℃より高い冷却対象を冷却する、例えば2次排ガス冷却の前段に設置された1次排ガス冷却器などの温水冷却ユーザ45で用いられるように構成されている。
【0069】
また、最終段のヒートポンプである第3ヒートポンプ1(1c)で97℃に加熱された温水(高温水)は、一部が減圧下で操作される蒸発器20に供給され、熱源として用いられるとともに、他の一部が、例えば1次反応予熱器の後段に設置された2次反応予熱器などの温水加熱ユーザ46で用いられるように構成されている。
【0070】
蒸発器20で熱源として用いられ、92℃に低下した温水は、温水加熱ユーザ46で用いられた92℃の温水とともに、第3ヒートポンプ1(1c)に送られて97℃に昇温され、再び蒸発器20や温水加熱ユーザ46の熱源として用いられる。
【0071】
上述のように、第1ヒートポンプ1(1a)、第2ヒートポンプ1(1b)、および第3ヒートポンプ1(1c)の3台のヒートポンプを用いて、段階的に水の温度を上昇させるように構成することで、それぞれのヒートポンプから、多様な温度の水(熱源)を得ることが可能になる。
【0072】
したがって、ヒートポンプをシリーズに複数段に配列した構成とすることにより、各ユーザがそれぞれに適した温度の水(熱源)を利用することが可能な実用性の高い排熱利用システムを実現することができる。
【0073】
また、97℃に加熱された温水を熱源とし、減圧下で操作される蒸発器20では、89℃の真空蒸気が発生する。
【0074】
そして、上述したように、蒸発器20で発生した89℃の真空蒸気は、3段階にシリーズに配列された第1~第3低圧蒸気圧縮機30(30a、30b、30c)で段階的に断熱圧縮されることで、温度レベルが115~120℃に上昇した低圧蒸気となり、低圧アキュムレータ10(10a)に蓄えられる。
【0075】
そして、本実施形態にかかる排熱利用システムにおいては、低圧アキュムレータ10(10a)に蓄えられた115~120℃の低圧蒸気が、低圧蒸気ユーザ47において用いられるように構成されている。
【0076】
本実施形態における低圧蒸気ユーザ47は、例えば、混合・反応タンクであって、大気に解放されたタンク本体47a内には攪拌装置47bが配設され、その外側には低圧蒸気を通すためのジャケット47cが配設された構造を有している。そして、低圧アキュムレータ10(10a)に蓄えられた115~120℃の低圧蒸気を、ジャケット47c内に110℃で通過させるとともに、大気に解放された混合・反応タンク本体47aの内部にも110℃の低圧蒸気を供給することで、混合・反応タンクの殺菌、滅菌を行うように構成されている。
【0077】
なお、本実施形態において、低圧アキュムレータ10(10a)に蓄えられた低圧蒸気の温度を115~120℃としているのは、ジャケット47c内に110℃の低圧蒸気を確実に供給できるようにするためである。
【0078】
また、本実施形態にかかる排熱利用システムは、低圧蒸気を中圧蒸気圧縮機31により断熱圧縮し、温度レベルを上昇させて中圧アキュムレータ10(10b)に蓄えた145~176℃の中圧蒸気が、中圧蒸気ユーザ48において用いられるように構成されている。
【0079】
本実施形態における中圧蒸気ユーザ48は、上述の低圧蒸気ユーザ47と同様の混合・反応タンクであって、大気に解放されたタンク本体48a内には攪拌装置48bが配設され、その外側には中圧蒸気を通すためのジャケット48cが配設された構造を有している。
【0080】
そして、中圧アキュムレータ10(10b)に蓄えられた145~176℃の中圧蒸気を、ジャケット48c内に140℃で通過させるとともに、大気に解放されている混合・反応タンク本体48aの内部にも140℃の中圧蒸気を供給することで、混合・反応タンクの殺菌、滅菌が行われるように構成されている。
【0081】
なお、本実施形態において、中圧アキュムレータ10(10b)に蓄えられた中圧蒸気の温度を145~176℃としているのは、ジャケット48c内に140℃の中圧蒸気を確実に供給できるようにするためである。
【0082】
また、低圧蒸気が、低圧蒸気ユーザ(混合・反応タンク)47で用いられ、ジャケット47cを通過することで潜熱を奪われて凝縮した110℃の凝縮水は、スチームトラップ81を介して、蒸発器20に供給される水を貯留する蒸発器供給タンク71に回収され、また、低圧蒸気ユーザ47の大気に解放された混合・反応タンク本体47aの内部に供給され、温度が95℃に低下した、不純物を含む凝縮水は、高温排水タンク72に送られる。
【0083】
また、中圧蒸気が中圧蒸気ユーザ(混合・反応タンク)48で用いられ、ジャケット48cを通過することで潜熱を奪われて凝縮した140℃の凝縮水は、スチームトラップ82を介して低圧アキュムレータ10(10a)に回収され、また、中圧蒸気ユーザ48の大気に解放された混合・反応タンク本体48aの内部に供給され、温度が95℃に低下した、不純物を含む凝縮水は、高温排水タンク72に送られる。
【0084】
また、高温排水タンク72に貯留された95℃の凝縮水は、熱交換器(RO膜分離装置用熱交換器)73に送られ、50℃に冷却されて、逆浸透膜を用いた分離装置(RO膜分離装置)74に供給され、不純物を分離した後、熱交換器(RO膜分離装置用熱交換器)73を経て、90℃の温水として蒸発器供給タンク71に送られる。
【0085】
なお、本発明の排熱利用システムでは、蒸発器20において、真空蒸気を連続して安定的に発生させることができるように、蒸発器供給タンク71に貯留された水の蒸発器20への供給は、連続した一定流量で行われるように構成されている。
【0086】
また、逆浸透膜を用いた分離装置(RO膜分離装置)74で分離された不純物を含む水は、ブロー水冷却器75において、第2ヒートポンプ1(1b)からの32℃の水と熱交換され、37℃に冷却された後、系外にブローされるように構成されている。
【0087】
また、本実施形態にかかる排熱利用システムは、電気ボイラ50を備えており、中圧アキュムレータ10(10b)に蓄えられている中圧蒸気の温度が145℃を下回った場合(すなわち、排熱利用システムを継続して稼働させるために必要な熱エネルギーが不足している場合)に、電気ボイラ50から中圧アキュムレータ10(10b)に、例えば1.6MPa(204℃)の蒸気を供給して、中圧アキュムレータ10(10b)内の中圧蒸気を145℃以上に昇温することができるように構成されている。
【0088】
さらに、本実施形態にかかる排熱利用システムは、冷却器60を備えており、排熱利用システムが包含する熱エネルギーが、排熱利用システムを継続して稼働させるために許容される熱エネルギーを超える場合に、冷却器60により余剰の熱エネルギーを系外に排出することができるように構成されている。本実施形態では、冷却器60として密閉式冷却塔が用いられている。
【0089】
具体的には、冷却器60により、37℃の水を32℃にまで冷却することで、余剰の熱エネルギーを本実施形態にかかる排熱利用システムの系外に排出することができるように構成されている。
【0090】
次に、本実施形態にかかる排熱利用システムの省エネルギー効率について説明する。
【0091】
本実施形態にかかる排熱利用システムにおいては、各ヒートポンプ(第1~第3ヒートポンプ)、および各蒸気圧縮機(低圧蒸気圧縮機、中圧蒸気圧縮機)として、コベルコ・コンプレッサ株式会社製の汎用ヒートポンプ、および汎用蒸気圧縮機を用いている。
【0092】
そして、各ヒートポンプ、各蒸気圧縮機のエネルギー消費効率であるCOPの値は、次の通りとなる。
(1)20℃の水(チラー水)を15℃に冷却するとともに、32℃の冷却水を37℃に加熱する第1ヒートポンプ1(1a)のCOP:6.9
(2)37℃の水(冷却水)を32℃に冷却するととともに、65℃の水(温水)を70℃に加熱する第2ヒートポンプ1(1b)のCOP:5.1
(3)70℃の水(温水)を65℃に冷却するとともに、92℃の水(高温水)を97℃に加熱して、蒸発器(89℃の真空蒸気を発生させる)の熱源となる高温水とする第3ヒートポンプ1(1c)のCOP:6.3
(4)89℃の真空蒸気を120℃にまで断熱圧縮する、3段階にシリーズに接続された3台の低圧蒸気圧縮機の合計COP:6.0
(5)120℃の低圧蒸気を176℃にまで断熱圧縮する中圧蒸気圧縮機のCOP:4.8
【0093】
本実施形態にかかる排熱利用システムでは、第1ヒートポンプ1(1a)、第2ヒートポンプ1(1b)、第3ヒートポンプ1(1c)の3台のヒートポンプをシリーズに接続して用いるようにしているので、各段での昇温幅を小さくして、第1~第3の各ヒートポンプのCOPを向上させることが可能になる。
【0094】
すなわち、上述のように、第1ヒートポンプ1(1a)のCOPが6.9、第2ヒートポンプ1(1b)のCOPが5.1、第3ヒートポンプ1(1c)のCOPが6.3となり、各ヒートポンプを効率よく作動させて、省エネルギー効率を向上させることができる。
【0095】
また、第3ヒートポンプ1(1c)で97℃に加熱された高温水を熱源として、蒸発器20で発生させた真空蒸気を、3段階にシリーズに接続された3台の低圧蒸気圧縮機30(30a、30b、30c)で圧縮して115~120℃に昇温させるようにしているので、各低圧蒸気圧縮機のCOPを向上させることが可能になる。具体的には、3台の低圧蒸気圧縮機の合計COPを6.0にすることができる。
【0096】
また、低圧蒸気を低圧アキュムレータ10(10a)に蓄えるとともに、低圧蒸気をさらに中圧蒸気圧縮機31で圧縮して145~176℃に昇温させた中圧蒸気を中圧アキュムレータ10(10b)に蓄えるようにしているので、中圧蒸気圧縮機のCOPを向上させることができる。
【0097】
すなわち、真空蒸気を低圧蒸気圧縮機30で断熱圧縮した115~120℃の低圧蒸気を中圧蒸気圧縮機31で断熱圧縮して145~176℃の中圧蒸気とするようにしているので、真空蒸気を中圧蒸気圧縮機31で断熱圧縮して、一気に中圧蒸気にする場合に比べて、中圧蒸気圧縮機31の負荷を減らして、COPを向上させることができる。
【0098】
また、上述のように本実施形態の排熱利用システムは、電気ボイラ50をさらに備えており、排熱利用システムを継続して稼働させるために必要な熱エネルギーが不足している場合、本実施形態では、中圧アキュムレータ10(10b)に蓄えられている中圧蒸気の温度が145℃を下回った場合に、電気ボイラ50から中圧アキュムレータ10(10b)に、蒸気を供給して、中圧アキュムレータ10(10b)内の中圧蒸気を145℃以上に昇温することができるように構成されている。したがって、石炭や重油を用いたボイラで発生させた蒸気を用いる場合のような二酸化炭素の発生を回避しつつ、不足する熱エネルギーを補給して、排熱利用システムを安定して、継続的に稼働させることができる。
【0099】
また、本実施形態の排熱利用システムは、上述のように冷却器60を備えているので、排熱利用システムが包含する熱エネルギーが、排熱利用システムを継続して稼働させるために許容される熱エネルギーを超える場合に、冷却器60により余剰の熱エネルギーを系外に排出することが可能になり、排熱利用システムを安定して、継続的に稼働させることができる。
【0100】
したがって、本発明によれば、工場で使用されたエネルギーの多くを効率よく回収することが可能で、かつ、二酸化炭素ガスの発生量を十分に抑制することが可能な排熱利用システムを提供することができるようになる。
【0101】
なお、本実施形態では、上述のように3台のヒートポンプを3段にシリーズに接続し、2台のアキュムレータを2段にシリーズに接続するとともに、3台の低圧蒸気圧縮機をシリーズに配列するようにしているが、ヒートポンプ、アキュムレータ、低圧蒸気圧縮機の数を増やしてシリーズに接続し、細かく熱回収するように構成することも可能であり、また、中圧アキュムレータに蓄積された中圧蒸気をさらに圧縮し、得られる高圧蒸気を高圧アキュムレータにさらに蓄えるように構成することも可能である。
【0102】
また、本実施形態では、低圧蒸気ユーザと中圧蒸気ユーザとして大気に解放された混合・反応タンクを使用しているが、低圧蒸気ユーザと中圧蒸気ユーザとして密閉タンク(加圧タンク)を使用することも可能である。
【0103】
一方、設備コストとランニングコストのバランスを考慮し、ヒートポンプや低圧蒸気圧縮機の段数(配設数)が少なくなるように(あまり多くならないように)設計することも可能である。
【0104】
すなわち、本発明の排熱利用システムにおいては、ヒートポンプ、蒸気圧縮機、アキュムレータなどの段数を自由に増減させて適切な段数とすることで、より効率の良い排熱利用システムを実現することが可能である。
【0105】
本発明は、さらにその他の点においても上記実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲内において、応用、変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0106】
1 ヒートポンプ
1(1a) 第1ヒートポンプ
1(1b) 第2ヒートポンプ
1(1c) 第3ヒートポンプ
10(10a) 低圧アキュムレータ
10(10b) 中圧アキュムレータ
20 蒸発器
30 低圧蒸気圧縮機
30(30a) 第1低圧蒸気圧縮機
30(30b) 第2低圧蒸気圧縮機
30(30b) 第3低圧蒸気圧縮機
31 中圧蒸気圧縮機
32 中圧蒸気供給ライン
33 圧力制御バルブ
41 チラー水ユーザ
42 冷房設備ユーザ
43 冷却水ユーザ
44 温水加熱水ユーザ
45 温水冷却ユーザ
46 温水加熱ユーザ
47 低圧蒸気ユーザ
47a 低圧蒸気ユーザを構成するタンク本体
47b 低圧蒸気ユーザを構成する攪拌装置
47c 低圧蒸気ユーザを構成するジャケット
48 中圧蒸気ユーザ
48a 中圧蒸気ユーザを構成するタンク本体
48b 中圧蒸気ユーザを構成する攪拌装置
48c 中圧蒸気ユーザを構成するジャケット
50 電気ボイラ
60 冷却器(密閉型冷却塔)
71 蒸発器供給タンク
72 高温排水タンク
73 RO膜分離装置用熱交換器
74 RO膜分離装置
75 ブロー水冷却器
81,82 スチームトラップ
図1