(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】径方向に延在する前切れ刃が負のすくい角及び正のすくい角の両方を備える先端部分を有する切削ヘッド、並びに回転切削工具
(51)【国際特許分類】
B23B 51/00 20060101AFI20231127BHJP
【FI】
B23B51/00 T
(21)【出願番号】P 2021507046
(86)(22)【出願日】2019-09-10
(86)【国際出願番号】 IL2019051010
(87)【国際公開番号】W WO2020070737
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-06-30
(32)【優先日】2018-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514105826
【氏名又は名称】イスカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヤノブスキー,アナトリー
(72)【発明者】
【氏名】ベン ハロウィッシュ,デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ブロドスキー,アリー
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-529375(JP,A)
【文献】特開2016-112662(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0085868(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B1/00-51/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転方向(DR)で第1軸(A1)回りに回転可能な切削ヘッド(20)であって、前記切削ヘッド(20)は、
N≧2である整数N個の円周方向に離間する外周面(26)を有する中間部分(22)であって、各前記外周面(26)は、リーディングエッジ(28)を有し、前記複数のリーディングエッジ(28)は、切削直径(DC)を規定する、中間部分(22)と、
前記第1軸(A1)内に含まれる軸方向最前先端点(NT)、及びN個の前面(30)を有する先端部分(24)と、を備え、
各前記前面(30)は、径方向に延在する前切れ刃(31)を有し、前記前切れ刃(31)は、前記リーディングエッジ(28)の1つから径方向内側に延在する外切れ刃(32)と、前記外切れ刃(32)から径方向内側に延在する内切れ刃(34)とを備え、各前記内切れ刃(34)は、切れ刃移行点(NR)で、関連する前記外切れ刃(32)に隣接し、
前記第1軸(A1)に平行で、前記外切れ刃(32)のいずれか1つに交差する第1垂直平面(PV1)で取った断面において、前記外切れ刃(32)に隣接する外すくい面(40)は、正の外すくい角(α1)で傾斜し、
前記第1軸(A1)に平行で、前記内切れ刃(34)のいずれか1つに交差する第2垂直平面(PV2)で取った断面視において、前記内切れ刃(34)に隣接する内すくい面(42)は、負の内すくい角(α2)で傾斜し、
各前記外すくい面(40)は、ヘッド溝(44)上に配設され、前記ヘッド溝(44)は、前記先端部分(24)から軸方向後方に延在し、前記リーディングエッジ(28)の1つに交差し、
各前記内すくい面(42)は、刃溝(46)上に配設され、前記刃溝(46)は、前記先端部分(24)から軸方向後方に延在し、前記ヘッド溝(44)の1つに交差し、
各前記刃溝(46)は、一連の断面から複数の刃溝頂点によって規定される刃溝経路(GP)を有し、前記一連の断面は、前記第1軸(A1)に直交し、前記刃溝(46)の軸方向の範囲に沿って前記刃溝(46)に交差する平面で取られ、
各前記刃溝(GP)は、前記先端点(PT)の軸方向後方に第1距離(d1)で位置する刃溝経路終了点(NP)まで延在し、
前記第1距離(d1)は、前記切削直径(DC)の30パーセントを超える、切削ヘッド(20)。
【請求項2】
前記第1軸(A1)に直交し、前記複数の内切れ刃(34)に交差する第1水平平面(PH1)で取った断面において、各前記刃溝(46)は、凹形状の第1外形(P1)を有し、
前記第1外形(P1)は、前記第1外形(P1)の第1区分(S1)に沿って測定される第1最小半径(R1)を有し、前記第1区分(S1)は、第1刃溝頂点(NA1)を含み、
前記第1最小半径(R1)は、前記切削直径(DC)の6パーセントを超える、請求項1に記載の切削ヘッド(20)。
【請求項3】
各前記第1外形(P1)は、前記第1外形(P1)の前記第1区分(S1)内に含まれる第1径方向最内点(NI1)を有する、請求項2に記載の切削ヘッド(20)。
【請求項4】
各前記第1外形(P1)は、連続的に湾曲する、請求項2又は3に記載の切削ヘッド(20)。
【請求項5】
前記第1軸(A1)に直交し、前記複数のリーディングエッジ(28)に交差する第2水平平面(PH2)で取った断面において、各前記刃溝(46)は、凹形状の第2外形(P2)を有し、
前記第2外形(P2)は、前記第2外形(P2)の第2区分(S2)に沿って測定される第2最小半径(R2)を有し、前記第2区分(S2)は、第2刃溝頂点(NA2)を含み、
前記第2最小半径(R2)は、前記切削直径(DC)の6パーセントを超える、請求項1~4のいずれか1項に記載の切削ヘッド(20)。
【請求項6】
各前記第2外形(P2)は、前記第2外形(P2)の前記第2区分(S2)内に含まれる第2径方向最内点(NI2)を有する、請求項5に記載の切削ヘッド(20)。
【請求項7】
各前記第2外形(P2)は、連続的に湾曲する、請求項5又は6に記載の切削ヘッド(20)。
【請求項8】
前記第1軸(A1)に平行で、前記外切れ刃(32)のいずれか1つに交差する任意の垂直平面で取った断面視において、前記外切れ刃(32)に隣接する前記外すくい面(40)は、正の外すくい角(α1)で傾斜する、請求項1~7のいずれか1項に記載の切削ヘッド(20)。
【請求項9】
前記第1軸(A1)に平行で、前記内切れ刃(34)のいずれか1つに交差する任意の垂直平面で取った断面視において、前記内切れ刃(34)に隣接する前記内すくい面(42)は、負の内すくい角(α2)で傾斜する、請求項1~8のいずれか1項に記載の切削ヘッド(20)。
【請求項10】
前記第2垂直平面(PV2)で取った断面において、前記負の内すくい面(α2)は、5度を超える大きさを有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の切削ヘッド(20)。
【請求項11】
各前記刃溝経路(GP)は、各前記刃溝経路(GP)が前記先端部分(24)から軸方向後方に延在
しており、かつ、前記回転方向(DR)とは反対の方向で延在する、請求項1~10のいずれか1項に記載の切削ヘッド(20)。
【請求項12】
各前記刃溝経路終了点(NP)は、前記切れ刃移行点(NR)のいずれか1つよりも遠く前記第1軸(A1)から径方向で位置する、請求項1~11のいずれか1項に記載の切削ヘッド(20)。
【請求項13】
各前記前面(30)は、各前記前面(30)に関連する前記外切れ刃(32)及び前記内切れ刃(34)に隣接する逃げ面(36)を含み、
前記第1軸(A1)を含み、前記逃げ面(36)に交差する第3垂直平面(PV3)で取った断面において、前記逃げ面(36)は、凹形状逃げ外形(PC)を有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の切削ヘッド(20)。
【請求項14】
各前記凹形状逃げ外形(PC)は、連続的に湾曲し、前記第1軸(A1)まで無段で延在する、請求項13に記載の切削ヘッド(20)。
【請求項15】
前記先端部分(24)は、N個のチゼル・エッジ(38)を含み、
各前記チゼル・エッジ(38)は、2つの隣接する逃げ面(36)によって形成され、前記先端点(NT)から離れて、前記内切れ刃(34)の1つまで径方向に延在する、請求項13又は14に記載の切削ヘッド(20)。
【請求項16】
前記第1垂直平面(PV1)で取った断面において、逃げ面(36)は、正の外逃げ角(β1)で傾斜し、
前記第2垂直平面(PV2)で取った断面において、逃げ面(36)は、正の内逃げ角(β2)で傾斜し、
前記内逃げ角(β2)は、前記外逃げ角(β1)よりも大きい、請求項13~15のいずれか1項に記載の切削ヘッド(20)。
【請求項17】
前記内逃げ角(β2)は、前記第1軸(A1)に向けて互いに平行に取った一連の垂直断面で測定すると、前記第1軸(A1)に近づくに連れて連続的に増大する、請求項16に記載の切削ヘッド(20)。
【請求項18】
前記複数の切れ刃移行点(NR)は、第1直径(D1)を有する第1仮想円(C1)を規定し、
前記第1直径(D1)は、前記切削直径(DC)の30パーセントを超える、請求項1~17のいずれか1項に記載の切削ヘッド(20)。
【請求項19】
前記切削ヘッド(20)は、前記第1軸(A1)回りにN回の回転対称を呈する、請求項1~18のいずれか1項に記載の切削ヘッド(20)。
【請求項20】
N=3である、請求項1~19のいずれか1項に記載の切削ヘッド(20)。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか1項に記載の切削ヘッド(20)と、
長手方向軸(L)、及びN個のランド(54)と円周方向に交互であるN個のシャンク溝(52)を有するシャンク(50)と、を備える回転切削工具(48)。
【請求項22】
前記切削ヘッド(20)は、軸方向後方に面する底面(56)を有し、
前記シャンク(50)は、前記長手方向軸(L)に横断する支持面(58)を有し、
前記切削ヘッド(20)は、前記底面(56)が前記支持面(58)と接触する状態で前記シャンク(50)に取り外し可能に組み付けられる、請求項21に記載の回転切削工具(48)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属切削加工全般、特に穴あけ作業に使用する、径方向に延在する切れ刃を有する先端部分を有する切削ヘッド、及びそのような切削ヘッドを有する回転切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
穴あけ作業で使用される切削工具の分野において、切れ刃を有する切削ヘッドの多数の例があり、こうした切れ刃は、比較的高い切削速度による、径方向外側部分における摩耗の増大、及び/又は比較的高い切削力による、径方向内側部分における安定性の低減を考慮するように構成される。
【0003】
米国特許第8,801,344号は、少なくとも1つの主切れ刃と少なくとも1つの中心切れ刃とを有するドリル・ビットを開示しており、このドリル・ビットは、長手方向軸を含み、少なくとも1つの主切れ刃及び少なくとも1つの中心切れ刃に、それぞれすくい面が設けられる。このドリル・ビットは、少なくとも1つの中心切れ刃に設けられたすくい面が、少なくとも2つの部分面を有し、少なくとも2つの部分面は、ドリル・ビットの長手方向軸に直交して見ると、少なくとも1つの中心切れ刃が少なくとも2つの部分切れ刃を備えるように、互いに対して鈍角を形成することを特徴とする。
【0004】
国際公開第2018/075921A1号は、切れ刃まで延在する複数のランドを含むドリルを開示しており、隣接するランドは、溝によって隔てられ、溝は、ドリル本体の中心線軸に沿って全体がらせん構成で構成される基本外形を備える。ドリルは、複数のドリル点も含み、複数のドリル点はそれぞれ、ドリル本体の外径に向かって延在する線形部分と、線形部分からドリル本体のチゼルに向かって延在する弓形部分とを有する。ドリルは、複数の溝内に配置される複数の刃溝外形を更に含む。刃溝外形は、ドリル本体のチゼルから延在し、刃溝外形は、溝の基本外形に対して傾斜している。
【0005】
国際公開第2018/079489A1号は、切削工具を開示しており、切削工具は、棒状本体と、本体の第1端部に位置する切れ刃と、切れ刃から本体の第2端部側に向かってらせん形状で延在する溝とを有する。切れ刃は、正面視で見ると回転軸に交差する第1刃と、第1刃から本体の外周面に向かって延在する第2刃とを備える。溝は、第1刃に接続するように位置する第1シンニング区分と、第2刃に接続するように位置する第2シンニング区分とを備える。第1シンニング区分のシンニング角度は、第2シンニング区分のシンニング角度よりも小さい。
【発明の概要】
【0006】
本発明の一目的は、改善された切削ヘッドを提供することであり、この切削ヘッドは、摩耗耐性がより大きな径方向外切れ刃と、安定性及び頑強さが増大した径方向内切れ刃とを有する。
【0007】
本発明の一目的は、刃溝を有する、改善された切削ヘッドを提供することでもあり、この刃溝は、径方向内切れ刃に隣接し、効率的なチップの排出をもたらす。
【0008】
高い送り速度で動作することができる、改善された切削ヘッドを提供することは、本発明の更なる目的である。
【0009】
切削ヘッドがシャンクに取り外し可能に組み付けられる、改善された回転切削工具を提供することは、本発明のまた更なる目的である。
【0010】
本発明によれば、回転方向で第1軸回りに回転可能な切削ヘッドを提供し、切削ヘッドは、
N≧2である整数N個の円周方向に離間する外周面を有する中間部分であって、各外周面は、リーディングエッジを有し、複数のリーディングエッジは、切削直径を規定する、中間部分と、
第1軸内に含まれる軸方向最前先端点、及びN個の前面を有する先端部分と、を備え、
各前面は、径方向に延在する前切れ刃を有し、前切れ刃は、リーディングエッジの1つから径方向内側に延在する外切れ刃と、前記外切れ刃から径方向内側に延在する内切れ刃とを備え、各内切れ刃は、切れ刃移行点において、関連する外切れ刃に隣接し、
第1軸に平行で、外切れ刃のいずれか1つに交差する第1垂直平面で取った断面において、前記外切れ刃に隣接する外すくい面は、正の外すくい角で傾斜し、
第1軸に平行で、内切れ刃のいずれか1つに交差する第2垂直平面で取った断面において、前記内切れ刃に隣接する内すくい面は、負の内すくい角で傾斜し、
各外すくい面は、ヘッド溝上に配設され、ヘッド溝は、先端部分から軸方向後方に延在し、リーディングエッジの1つに交差し、
各内すくい面は、刃溝上に配設され、刃溝は、先端部分から軸方向後方に延在し、ヘッド溝の1つに交差し、
各刃溝は、一連の断面から複数の刃溝頂点によって規定される刃溝経路を有し、一連の断面は、第1軸に直交し、刃溝の軸方向の範囲に沿って刃溝に交差する平面で取られ、
各刃溝経路は、先端点の軸方向後方に第1距離を位置する刃溝経路終了点まで延在し、
第1距離は、切削直径の30パーセントを超える。
【0011】
また、本発明によれば、回転切削工具を提供し、回転切削工具は、上記切削ヘッドと、長手方向軸を有するシャンクと、N個のランドと円周方向に交互であるN個のシャンク溝と、を備える。
【0012】
次に、より良好な理解のため、単に例として、添付の図面を参照しながら本発明を説明する。点鎖線は、部材の部分図のために切断する境界を表す。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図4】
図3に示す切削ヘッドの線IV-IVに沿って取った断面図である。
【
図5】
図3に示す切削ヘッドの線V-Vに沿って取った断面図である。
【
図6】
図2に示す切削ヘッドの線VI-VIに沿って取った断面図である。
【
図7】
図2に示す切削ヘッドの線VII-VIIに沿って取った断面図である。
【
図8】
図3に示す切削ヘッドの線VIII-VIIIに沿って取った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、切削ヘッド20を示す
図1~
図3に注意を向けられたい。切削ヘッド20は、炭化タングステン等の超硬合金の成形プレス及び焼結によって製造することができ、被覆しても、被覆しなくてもよい。
【0015】
本発明によれば、切削ヘッド20は、回転方向DRで第1軸A1回りに回転可能であり、中間部分22と、先端部分24とを備える。
【0016】
図1~
図3に示すように、中間部分22は、複数のN個の円周方向に離間する外周面26を有する。各外周面26は、リーディングエッジ28を有し、複数のリーディングエッジ28は、切削直径DCを規定する。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態では、各リーディングエッジ28は、各リーディングエッジ28が先端部分24から軸方向後方に延在するため、回転方向DRとは反対に延在することができる。
【0018】
また、本発明のいくつかの実施形態では、各リーディングエッジ28は、第1軸A1に沿ってらせん状に延在することができる。
【0019】
図1~
図3に示すように、先端部分24は、第1軸A1内に含まれる軸方向最前先端点NTと、複数のN個の前面30とを有し、各前面30は、径方向に延在する前切れ刃31を有し、前切れ刃31は、リーディングエッジ28の1つから径方向内側に延在する外切れ刃32と、前記外切れ刃32から径方向内側に延在する内切れ刃34とを備える。
【0020】
各前面30は、各前面30に関連する外切れ刃32及び内切れ刃34に隣接する逃げ面36も含み、各内切れ刃34は、切れ刃移行点NRで、各内切れ刃34に関連する外切れ刃32に隣接する。以下で説明するように、外切れ刃32は、正のすくい角と関連する一方で、内切れ刃34は、負のすくい角と関連する。したがって、切れ刃移行点NRは、径方向内向き方向で、最前先端点NTに向かって前切れ刃31に沿って進行する間、前切れ刃31上の点に対応し、この前切れ刃31上の点では、すくい角は、正のすくい角から負のすくい角に変化する。
【0021】
図3に示すように、複数の切れ刃移行点NRは、第1直径D1を有する第1仮想円C1を規定する。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態では、第1直径D1は、切削直径DCの30パーセントを超える、即ち、D1>0.30×DCとすることができる。
【0023】
図1~
図3に示すように、先端部分24は、複数のN個のチゼル・エッジ38も含むことができ、各チゼル・エッジ38は、2つの隣接する逃げ面36によって形成され、先端点NTから離れて、内切れ刃34の1つまで径方向に延在する。
【0024】
本明細書及び特許請求の範囲全体にわたり、Nは、少なくとも2である整数、即ち、N≧2であることを了解されたい。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態では、切削ヘッド20は、第1軸A1回りにN回の回転対称を呈することができる。
【0026】
また、本発明のいくつかの実施形態では、Nは、3に等しく、中間点22は、3つのリーディングエッジ28を有し、先端部分24は、3つの外切れ刃32と、3つの内切れ刃34とを有することができる。
【0027】
3つの外切れ刃32と3つの内切れ刃34とを有することにより、切削ヘッド20が高い送り速度で動作可能になる。
【0028】
図4に示すように、第1軸A1に平行で、外切れ刃32のいずれか1つに交差する第1垂直平面PV1で取った断面視において、前記外切れ刃32に隣接する外すくい面40は、正の外すくい角α1で傾斜する。
【0029】
本出願で使用する表現「垂直平面」は、第1軸A1に平行なあらゆる平面を指すが、第1軸A1を必ずしも含まないことを了解されたい。
【0030】
本明細書及び特許請求の範囲全体にわたり、用語「すくい角」は、すくい面と、第1軸A1に平行な仮想基準線との間に形成される鋭角を指すことを了解されたい。
【0031】
外切れ刃32は、比較的高い切削速度のために、内切れ刃34よりも大きな摩耗を受けやすく、外すくい角α1を正のすくい角であるように構成すると、外切れ刃32上での摩耗を低減し、したがって、外切れ刃32の動作寿命を延長することにも了解されたい。
【0032】
図3に示すように、複数の外すくい面40は、回転方向DRに面する。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態では、第1軸A1に平行で、外切れ刃32のいずれか1つに交差する任意の平面で取った断面視において、前記外切れ刃32に隣接する外すくい面40は、正の外すくい角α1で傾斜することができる。
【0034】
また、本発明のいくつかの実施形態では、第1垂直平面PV1で取った断面において、正の外すくい角α1は、5度を超える大きさを有する一方で、いくつかの実施形態では、正の外すくい角α1は、10度を超える大きさを有することができる。
【0035】
図4に示すように、第1垂直平面PV1で取った断面において、逃げ面36は、正の外逃げ角β1で傾斜する。
【0036】
本明細書及び特許請求の範囲全体にわたり、用語「逃げ角」は、逃げ面と、第1軸A1に直交する仮想基準線との間に形成される鋭角を指すことを了解されたい。
【0037】
図5に示すように、第1軸A1に平行で、内切れ刃34のいずれか1つに交差する第2垂直平面PV2で取った断面において、前記内切れ刃34に隣接する内すくい面42は、負の内すくい角α2で傾斜する。
【0038】
内切れ刃34は、特に高い送り速度における比較的低い切削速度のために、外切れ刃32よりも大きな衝撃力を受けやすく、内すくい角α2を負のすくい角であるように構成すると、内切れ刃34の安定性及び頑強さを増大し、したがって、内切れ刃34の動作寿命を延長することを了解されたい。
【0039】
図3に示すように、複数の内すくい面42は、回転方向DRに面する。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態では、第1軸A1に平行で、内切れ刃34のいずれか1つに交差する任意の平面で取った断面において、前記内切れ刃34に隣接する内すくい面42は、負の内すくい角α2で傾斜することができる。
【0041】
また、本発明のいくつかの実施形態では、第2垂直平面PV2で取った断面において、負の内すくい角α2は、5度を超える大きさを有することができる。
【0042】
図5に示すように、第2垂直平面PV2で取った断面において、逃げ面36は、正の内逃げ角β2で傾斜する。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態では、内逃げ角β2は、外逃げ角β1よりも大きい、即ち、β2>β1とすることができる。
【0044】
また、本発明のいくつかの実施形態では、内逃げ角β2は、第1軸A1に次第に近くに位置する平行な垂直平面で取った一連の平行な断面で測定すると、連続的に増大することができる。
【0045】
内逃げ角β2が径方向内側に連続的に増大するように構成すると、典型的にはかなり遅い切削速度に付随して切削ヘッドの中心に向かって生じる高い切削力及び衝撃力を低減する。
【0046】
図1~
図3に示すように、各外すくい面40は、ヘッド溝44上に配設され、ヘッド溝44は、先端部分24から軸方向後方に延在し、リーディングエッジ28の1つに交差し、各内すくい面42は、刃溝46上に配設され、刃溝46は、先端部分24から軸方向後方に延在し、ヘッド溝44の1つに交差する。
【0047】
また、
図1~
図3に示すように、各刃溝46は、平行平面で取った一連の平行断面から複数の刃溝頂点によって規定される刃溝経路GPを有し、一連の平行断面は、それぞれが第1軸A1に直交し、刃溝46の軸方向の範囲に沿って刃溝46に交差する。
【0048】
本明細書及び特許請求の範囲全体にわたり、第1軸A1に直交し、刃溝46に交差する平面で取った各断面に関し、関連する刃溝頂点は、最小半径を有する関連外形の区間の中間点に位置し、最小半径は、+0.20/-0.00mmの公差を有することを了解されたい。
【0049】
本発明によれば、
図2に示すように、各刃溝経路GPは、先端点PTの軸方向後方に第1距離d1で位置する刃溝経路終了点NPまで延在し、第1距離d1は、切削直径DCの30パーセントを超える、即ち、d1>0.30×DCである。
【0050】
第1距離d1が切削直径DCの30パーセントを超えることにより、各刃溝経路GPが広範な軸方向長さを有するように構成すると、刃溝の体積の増大及び効率的なチップの排出に有利に寄与する。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態では、第1距離d1は、切削直径DCの40パーセントを超える、即ち、d1>0.40×DCとすることができる。
【0052】
また、本発明のいくつかの実施形態では、各刃溝経路GPは、先端部分24から軸方向後方に延在するため、回転方向DRとは反対に延在することができる。
【0053】
更に、本発明のいくつかの実施形態では、各刃溝経路終了点NPは、切れ刃移行点NRのいずれか1つよりも第1軸A1から遠くに径方向で位置することができる。
【0054】
各刃溝経路終了点NPが切れ刃移行点NRの径方向外側に位置するように構成すると、刃溝46に沿ったチップの展開の改善を促進する。
【0055】
図6に示すように、第1軸A1に直交し、複数の内切れ刃34に交差する第1水平平面PH1で取った断面において、各刃溝46は、凹形状の第1外形P1を有することができる。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態では、各第1外形P1は、連続的に湾曲することができる。
【0057】
各第1外形P1が連続的に湾曲するように構成すると、関連する刃溝領域におけるチップの展開の改善を促進する。
【0058】
図6に示すように、第1外形P1は、第1外形P1の第1区分S1に沿って測定される第1最小半径R1を有し、第1区分S1は、第1刃溝頂点NA1を含む。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態では、第1最小半径R1は、切削直径DCの6パーセントを超える、即ち、R1>0.06×DCとすることができる。
【0060】
各第1外形P1が、切削直径DCの6パーセントを超える第1最小半径R1を有するように構成すると、刃溝46に沿った円滑なチップの流れを促進し、チップが詰まる危険性を低減する。
【0061】
また、各第1外形P1が、切削直径DCの6パーセントを超える第1最小半径R1を有するように構成すると、先端部分24のコア強度を増大させる。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態では、第1最小半径R1は、好ましくは、切削直径DCの8パーセントを超える、即ち、R1>0.08×DCとすることができる。
【0063】
また、本発明のいくつかの実施形態では、第1最小半径R1は、切削直径DCの15パーセント未満、即ち、R1<0.15×DCとすることができる。
【0064】
図6に示すように、各第1外形P1は、第1区分S1内に含まれる第1径方向最内点NI1を有することができる。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態では、第1区分S1は、第1最小半径R1の第1中心点E1回りに15度を超える角度の範囲を定めることができる。
【0066】
各第1外形P1が、第1区分S1内に第1径方向最内点NI1を有するように構成すると、複数の刃溝46に対するより効率的な外周間隔を可能にし、したがって、Nが2を超える、即ち、N>2である切削ヘッドの構成を可能にする。
【0067】
図7に示すように、第1軸A1に直交し、複数のリーディングエッジ28に交差する第2水平平面PH2で取った断面において、各刃溝46は、凹形状の第2外形P2を有することができる。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態では、各第2外形P2は、連続的に湾曲することができる。
【0069】
各第2外形P2が連続的に湾曲するように構成すると、関連する刃溝領域におけるチップの展開の改善を促進する。
【0070】
図7に示すように、第2外形P2は、第2外形P2の第2区分S2に沿って測定される第2最小半径R2を有し、第2区分S2は、第2刃溝頂点NA2を含む。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態では、第2最小半径R2は、切削直径DCの6パーセントを超える、即ち、R2>0.06×DCとすることができる。
【0072】
各第2外形P2が、切削直径DCの6パーセントを超える第2最小半径R2を有するように構成すると、刃溝46に沿った円滑なチップの流れを促進し、チップが詰まる危険性を低減する。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態では、第2最小半径R2は、好ましくは、切削直径DCの8パーセントを超える、即ち、R2>0.08×DCとすることができる。
【0074】
また、本発明のいくつかの実施形態では、第2最小半径R2は、切削直径DCの15パーセント未満、即ち、R2<0.15×DCとすることができる。
【0075】
第2最小半径R2は、第1最小半径R1の85パーセント~115パーセントの間の範囲を有し得る、即ち、0.85×R1<R2<1.15×R1であることを了解されたい。
【0076】
図7に示すように、各第2外形P2は、第2外形P2の第2区分S2内に含まれる第2径方向最内点NI2を有することができる。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態では、第2区分S2は、第2最小半径R2の第2中心点E2回りに15度を超える角度の範囲を定めることができる。
【0078】
各第2外形P2が、第2区分S2内に第2径方向最内点NI2を有するように構成すると、複数の刃溝46に対するより効率的な外周間隔を可能にし、したがって、Nが2を超える、即ち、N>2である切削ヘッドの構成を可能にする。
【0079】
図6及び
図7に示す、Nが3に等しい本発明の実施形態の場合、第1外形P1は、第1開始点NS1を有する追跡曲線を形成することができ、第1開始点NS1は、第1終了点NE1に先立って回転する様式で位置する。第2外形P2は、第2開始点NS2を有する追跡曲線を形成することができ、第2開始点NS2は、第2終了点NE2に続いて回転する様式で位置する。
【0080】
用語「追跡曲線(pursuit curve)」の使用は、本明細書及び特許請求の範囲全体にわたり、https://en.wikipedia.org/wiki/Pursuit curve(2019年7月2日検索)で説明される曲線形状を指し、この曲線は、被追跡物を追跡する追跡物によって辿られ、被追跡物は、1つの直線内を移動し、常に追跡物の接線上にあることを了解されたい。
【0081】
図1に示されるように、ヘッド溝44及びヘッド溝44に関連する刃溝46は、刃溝-溝境界線GFBに沿って合流する。
図7に示すように、第1軸A1に直交し、複数のリーディングエッジ28に交差する第3水平平面PH3で取った断面において、各刃溝46は、刃溝-溝交点IGで、各刃溝46に関連するヘッド溝44に交差し、刃溝-溝境界線GFBは、様々な水平平面でそのような刃溝-溝交点IGの集合を構成する。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態では、そのような各刃溝-溝交点IGは、関連する切れ刃移行点NR自体を除き、関連する切れ刃移行点NRに先立って回転する様式で配置することができる。
【0083】
また、本発明のいくつかの実施形態では、第2水平平面PH2及び第3水平平面PH3は、同一平面上にあってよい。
【0084】
図8に示すように、第1軸A1を含み、逃げ面36に交差する第3垂直平面PV3で取った断面において、逃げ面36は、凹形状の逃げ外形PCを有することができる。
【0085】
本発明のいくつかの実施形態では、各凹形状逃げ外形PCは、逃げ半径RCを有することができ、逃げ半径RCは、切削直径DCの50パーセント~150パーセントの間の範囲を有する、即ち、0.50×DC<RC<1.50×DCである。
【0086】
また、本発明のいくつかの実施形態では、各凹形状逃げ外形PCは、連続的に湾曲し、第1軸A1に対して無段で延在することができる。
【0087】
次に、本発明による回転切削工具48を示す
図9及び
図10に注意を向けられたい。回転切削工具48は、切削ヘッド20と、長手方向軸Lを有するシャンク50とを備える。
【0088】
シャンク50は、N個のランド54と円周方向に交互であるN個のシャンク溝52を有し、各シャンク溝52は、長手方向軸Lに沿ってらせん状に延在することができる。
【0089】
図9及び
図10に示すように、切削ヘッド20は、軸方向後方を向く底面56を有することができ、シャンク50は、長手方向軸Lを横断する支持面58を有することができ、切削ヘッド20は、底面56が支持面58と接触する状態で、シャンク50に取り外し可能に組み付けることができる。
【0090】
切削ヘッド20をシャンク50に取り外し可能に組み付けるように構成すると、切削ヘッド20を炭化タングステン等の適切な硬質材料から製造し、シャンク50を高速度鋼等のあまり硬質ではなく、あまり高額ではない材料から製造することが可能である。シャンク50は、摩耗又は損傷した切削ヘッド20を処分した後、再利用してもよい。
【0091】
本発明のいくつかの実施形態では、各ヘッド溝44は、底面56に交差し、シャンク溝52の1つと協働することができる。
【0092】
また、本発明のいくつかの実施形態では、底面56は、第1軸A1に直交し、支持面58は、長手方向軸Lに直交し、第1軸A1は、長手方向軸Lと同軸とすることができる。
【0093】
図2に示すように、底面56は、第2距離d2で先端点PTの軸方向後方に位置し、第1距離d1は、第2距離d2の70パーセントを超える、即ち、d1>0.70×d2とすることができる。
【0094】
本発明のいくつかの実施形態では、切削ヘッド20は、底面56から軸方向後方に延在する組み付け突起60を含むことができる。
【0095】
本発明の他の実施形態では(図示せず)、切削ヘッド20及びシャンク50は、単一の一体化構造である一体部品であり、各ヘッド溝44は、シャンク溝52の1つと一体化することができる。
【0096】
図9及び
図10に示すように、切削ヘッド20の中間部分22は、回転方向DRの反対側を向く複数のN個のトルク伝達面62を含み、シャンク50は、複数のN個の駆動突起64を含み、各駆動突起64は、回転方向DRを向く駆動面66を有し、各トルク伝達面62は駆動面66の1つと接触することができる。
【0097】
本発明のいくつかの実施形態では、第1距離d1は、第2距離d2の90パーセント未満、即ち、d1>0.90×d2とすることができる。
【0098】
Nが3に等しい本発明の実施形態の場合、第1距離d1が第2距離d2の90パーセント未満であるように構成すると、複数の駆動突起64が切削ヘッド20を係合するのに十分な空間をもたらし、刃溝46とシャンク溝52との間でチップが円滑に流れるのを妨げない。
【0099】
本発明のいくつかの実施形態では、各トルク伝達面62は、外周面26の1つに交差することができる。
【0100】
図1~
図3に示す、Nが3に等しい本発明の実施形態の場合、各刃溝46は、径方向最外刃溝点NOでトルク伝達面62の1つに交差することができる。
【0101】
本発明のいくつかの実施形態では、
図3に示すように、3つの径方向最外刃溝点NOは、第2直径D2を有する第2仮想円C2を規定することができ、第2直径D2は、切削直径DCの70パーセントを超える、即ち、D2>0.70×DCである。
【0102】
第2仮想円C2が、切削直径DCの70パーセントを超える第2直径D2を有するように構成すると、刃溝の体積の増大及び効率的なチップの排出に有利に寄与する。
【0103】
本発明は、ある程度の詳細まで説明しているが、以下で請求する本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく様々な代替形態及び修正形態を行い得ることを理解されたい。