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特許7391086マイクロフォンの投射を使用するノイズ除去のためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】マイクロフォンの投射を使用するノイズ除去のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/178 20060101AFI20231127BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
G10K11/178 120
H04R3/00 310
H04R3/00 320
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021510669
(86)(22)【出願日】2019-08-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 US2019048859
(87)【国際公開番号】W WO2020047286
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-04-23
(31)【優先権主張番号】16/120,171
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591009509
【氏名又は名称】ボーズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】BOSE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ウェイド・トレス
(72)【発明者】
【氏名】エリック・バーンスタイン
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-190388(JP,A)
【文献】特開2001-142469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/16-11/178
H04R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノイズ除去システムであって、
ノイズセンサから受信されたノイズ信号に基づいてノイズ除去信号を生成するように構成されたノイズ除去フィルタと、
所定の体積内の第1の位置に配設され、前記ノイズ除去信号を受信し、前記所定の体積内のノイズ除去オーディオ信号を変換するように構成されたアクチュエータと、
前記所定の体積内の第2の位置に配設され、基準センサ信号を出力するための基準センサであって、前記基準センサ信号が、前記第2の位置における望ましくないノイズを表す、基準センサと、
前記ノイズ除去信号及び前記基準センサ信号をフィルタ処理してフィルタ出力信号を出力するように構成されたフィルタであって、前記フィルタ出力信号が、前記第1の位置及び前記第2の位置から離れた第3の位置における前記望ましくないノイズの推定を表す、フィルタと、
前記ノイズ除去オーディオ信号が前記第3の位置における前記望ましくないノイズと破壊的に干渉するように、前記ノイズ除去フィルタを前記フィルタ出力信号に基づいて調整するように構成された調整モジュールと、
を備え、
前記フィルタが、前記第2の位置と前記第3の位置との間の関係を推定するように構成された第1のフィルタW ref を備え、前記第1のフィルタが、前記基準センサ信号を受信してフィルタ処理し、第1のフィルタ出力信号を出力するように構成され、前記第1のフィルタ出力信号が、前記第3の位置における前記望ましくないノイズの推定であり、
前記フィルタが、前記第1の位置と前記第3の位置との間の関係を推定するように構成された第2のフィルタW cmd を更に備え、前記第2のフィルタが、前記ノイズ除去信号を受信してフィルタ処理し、第2のフィルタ出力信号を出力するように構成され、前記第2のフィルタ出力信号が、前記第3の位置における前記ノイズ除去オーディオ信号の推定であり、前記第2のフィルタ出力信号は、前記第1のフィルタ出力信号及び前記第2のフィルタ出力信号が加算されたときに、前記基準センサにおいて受信された前記ノイズ除去オーディオ信号に基づいて、前記第1のフィルタ出力信号の一部分を除去するように構成され
前記第1および第2のフィルタは、以下のコスト関数を最小化するウィーナフィルタであり、
【数1】
式中、m[n]は、時刻nにおける基準センサ信号のベクトルであり、変数の上の「^」は推定であることを示し、
【数2】
は、ノルムを表し、kはフィルタの予測部分を表す非負の整数である、ノイズ除去システム。
【請求項2】
前記フィルタ出力信号が、前記第1の位置と前記第3の位置との間の関係の推定に基づき、前記第2の位置と前記第3の位置との間の関係の推定に基づく、請求項1に記載のノイズ除去システム。
【請求項3】
非一時的記憶媒体に記憶されたプログラムコードであって、プロセッサによって実行されたときに、
ノイズ除去フィルタを用いて、ノイズセンサから受信されたノイズ信号に基づいてノイズ除去信号を生成する工程と、
定の体積内のノイズ除去オーディオ信号を変換するための、第1の位置に配設されたアクチュエータに前記ノイズ除去信号を提供する工程と、
前記所定の体積内の第2の位置に配設された基準センサから基準センサ信号を受信する工程であって、前記基準センサ信号が、前記第2の位置における望ましくないノイズを表す、受信する工程と、
フィルタを用いて、前記ノイズ除去信号及び前記基準センサ信号をフィルタ処理してフィルタ出力信号を出力する工程であって、前記フィルタ出力信号が、前記第1の位置及び前記第2の位置から離れた第3の位置における前記望ましくないノイズの推定を表す、出力する工程と、
前記ノイズ除去オーディオ信号が前記第3の位置における前記望ましくないノイズと破壊的に干渉するように、前記ノイズ除去フィルタを前記フィルタ出力信号に基づいて調整する工程と、
を含み、
前記フィルタが、前記第2の位置と前記第3の位置との間の関係を推定するように構成された第1のフィルタを備え、前記第1のフィルタが、前記基準センサ信号を受信してフィルタ処理し、第1のフィルタ出力信号を出力するように構成され、前記第1のフィルタ出力信号が、前記第3の位置における前記望ましくないノイズの推定であり、
前記フィルタが、前記第1の位置と前記第3の位置との間の関係を推定するように構成された第2のフィルタを更に備え、前記第2のフィルタが、前記ノイズ除去信号を受信してフィルタ処理し、第2のフィルタ出力信号を出力するように構成され、前記第2のフィルタ出力信号が、前記第3の位置における前記ノイズ除去オーディオ信号の推定であり、前記第2のフィルタ出力信号は、前記第1のフィルタ出力信号及び前記第2のフィルタ出力信号が加算されたときに、前記基準センサにおいて受信された前記ノイズ除去オーディオ信号に基づいて、前記第1のフィルタ出力信号の一部分を除去するように構成され
前記第1および第2のフィルタは、以下のコスト関数を最小化するウィーナフィルタであり、
【数3】
式中、m[n]は、時刻nにおける基準センサ信号のベクトルであり、変数の上の「^」は推定であることを示し、
【数4】
は、ノルムを表し、kはフィルタの予測部分を表す非負の整数である、プログラムコード。
【請求項4】
前記フィルタ出力信号が、前記第1の位置と前記第3の位置との間の関係の推定に基づき、前記第2の位置と前記第3の位置との間の関係の推定に基づく、請求項に記載のプログラムコード。
【請求項5】
ノイズ除去方法であって、
ノイズ除去フィルタを用いて、ノイズセンサから受信されたノイズ信号に基づいてノイズ除去信号を生成する工程と、
所定の体積内のノイズ除去オーディオ信号を変換するための、第1の位置に配設されたアクチュエータに前記ノイズ除去信号を提供する工程と、
前記所定の体積内の第2の位置に配設された基準センサから基準センサ信号を受信することであって、前記基準センサ信号が、前記第2の位置における望ましくないノイズを表す、受信する工程と、
フィルタを用いて、前記ノイズ除去信号及び前記基準センサ信号をフィルタ処理してフィルタ出力信号を出力する工程であって、前記フィルタ出力信号が、前記第1の位置及び前記第2の位置から離れた第3の位置における前記望ましくないノイズの推定を表す、出力する工程と、
前記ノイズ除去オーディオ信号が前記第3の位置における前記望ましくないノイズと破壊的に干渉するように、前記ノイズ除去フィルタを前記フィルタ出力信号に基づいて調整する工程と、
を含み、
前記フィルタが、前記第2の位置と前記第3の位置との間の関係を推定するように構成された第1のフィルタを備え、前記第1のフィルタが、前記基準センサ信号を受信してフィルタ処理し、第1のフィルタ出力信号を出力するように構成され、前記第1のフィルタ出力信号が、前記第3の位置における前記望ましくないノイズの推定であり、
前記フィルタが、前記第1の位置と前記第3の位置との間の関係を推定するように構成された第2のフィルタを更に備え、前記第2のフィルタが、前記ノイズ除去信号を受信してフィルタ処理し、第2のフィルタ出力信号を出力するように構成され、前記第2のフィルタ出力信号が、前記第3の位置における前記ノイズ除去オーディオ信号の推定であり、前記第2のフィルタ出力信号は、前記第1のフィルタ出力信号及び前記第2のフィルタ出力信号が加算されたときに、前記基準センサにおいて受信された前記ノイズ除去オーディオ信号に基づいて、前記第1のフィルタ出力信号の一部分を除去するように構成され
前記第1および第2のフィルタは、以下のコスト関数を最小化するウィーナフィルタであり、
【数5】
式中、m[n]は、時刻nにおける基準センサ信号のベクトルであり、変数の上の「^」は推定であることを示し、
【数6】
は、ノルムを表し、kはフィルタの予測部分を表す非負の整数である、ノイズ除去方法。
【請求項6】
前記フィルタ出力信号が、前記第1の位置と前記第3の位置との間の関係の推定に基づき、前記第2の位置と前記第3の位置との間の関係の推定に基づく、請求項に記載の方法。
【請求項7】
構成中に、前記第3の位置に配置された誤差センサからの誤差信号を使用して前記フィルタを調節する工程を更に含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記誤差信号が、前記アクチュエータにおいて生成されたオーディオ信号に応答して生成される、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、基準センサから離れた位置における望ましくないノイズを表す誤差信号を最小化するシステム及び方法に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
下記で言及される全ての例及び特徴は、技術的に可能な任意の方式で組み合わせることができる。
【0003】
一態様では、ノイズ除去システムは、ノイズセンサから受信されたノイズ信号に基づいてノイズ除去信号を生成するように構成されたノイズ除去フィルタと、所定の体積内の第1の位置に配設され、ノイズ除去信号を受信し、所定の体積内のノイズ除去オーディオ信号を変換するように構成されたアクチュエータと、所定の体積内の第2の位置に配設され、基準センサ信号を出力するための基準センサであって、基準センサ信号が、第2の位置における望ましくないノイズを表す、基準センサと、ノイズ除去信号及び基準センサ信号をフィルタ処理してフィルタ出力信号を出力するように構成されたフィルタであって、フィルタ出力信号が、第1の位置及び第2の位置から離れた第3の位置における望ましくないノイズの推定を表す、フィルタと、ノイズ除去オーディオ信号が第3の位置における望ましくないノイズと破壊的に干渉するように、ノイズ除去フィルタをフィルタ出力信号に基づいて調整するように構成された調整モジュールと、を含む。
【0004】
一実施形態では、フィルタ出力信号は、第1の位置と第3の位置との間の関係の推定に基づき、第2の位置と第3の位置との間の関係の推定に基づく。
【0005】
一実施形態では、フィルタは、第2の位置と第3の位置との間の関係を推定するように構成された第1のフィルタを備え、第1のフィルタは、基準センサ信号を受信してフィルタ処理し、第1のフィルタ出力信号を出力するように構成され、第1のフィルタ出力信号は、第3の位置における望ましくないノイズの推定である。
【0006】
一実施形態では、フィルタは、第1の位置と第3の位置との間の関係を推定するように構成された第2のフィルタを更に備え、第2のフィルタは、ノイズ除去信号を受信してフィルタ処理し、第2のフィルタ出力信号を出力するように構成され、第2のフィルタ出力信号は、第3の位置におけるノイズ除去オーディオ信号の推定であり、第2のフィルタ出力信号は、第1のフィルタ出力信号及び第2のフィルタ出力信号が加算されたときに、基準センサにおいて受信されたノイズ除去オーディオ信号に基づいて、第1のフィルタ出力信号の一部分を除去するように構成される。
【0007】
一実施形態では、フィルタは、第3の位置における推定望ましくないノイズが、未来の時点における第3の位置における望ましくないノイズの推定になるような、少なくとも1つの予測フィルタを備える。
【0008】
一実施形態では、少なくとも1つの予測フィルタはウィーナフィルタである。
【0009】
別の態様では、非一時的記憶媒体に記憶されたプログラムコードであって、プロセッサによって実行されたときに、ノイズ除去フィルタを用いて、ノイズセンサから受信されたノイズ信号に基づいてノイズ除去信号を生成する工程と、所定の体積内のノイズ除去オーディオ信号を変換するための、第1の位置に配設されたアクチュエータにノイズ除去信号を提供する工程と、所定の体積内の第2の位置に配設された基準センサから基準センサ信号を受信する工程であって、基準センサ信号が、第2の位置における望ましくないノイズを表す、受信する工程と、フィルタを用いて、ノイズ除去信号及び基準センサ信号をフィルタ処理してフィルタ出力信号を出力する工程であって、フィルタ出力信号が、第1の位置及び第2の位置から離れた第3の位置における望ましくないノイズの推定を表す、出力する工程と、ノイズ除去オーディオ信号が第3の位置における望ましくないノイズと破壊的に干渉するように、ノイズ除去フィルタをフィルタ出力に基づいて調整する工程と、を含む、プログラムコード。
【0010】
一実施形態では、フィルタ出力信号は、第1の位置と第3の位置との間の関係の推定に基づき、第2の位置と第3の位置との間の関係の推定に基づく。
【0011】
一実施形態では、フィルタは、第2の位置と第3の位置との間の関係を推定するように構成された第1のフィルタを含み、第1のフィルタは、基準センサ信号を受信してフィルタ処理し、第1のフィルタ出力信号を出力するように構成され、第1のフィルタ出力信号は、第3の位置における望ましくないノイズの推定である。
【0012】
一実施形態では、フィルタは、第1の位置と第3の位置との間の関係を推定するように構成された第2のフィルタを更に含み、第2のフィルタは、ノイズ除去信号を受信してフィルタ処理し、第2のフィルタ出力信号を出力するように構成され、第2のフィルタ出力信号は、第3の位置におけるノイズ除去オーディオ信号の推定であり、第2のフィルタ出力信号は、第1のフィルタ出力信号及び第2のフィルタ出力信号が加算されたときに、基準センサにおいて受信されたノイズ除去オーディオ信号に基づいて、第1のフィルタ出力信号の一部分を除去するように構成される。
【0013】
一実施形態では、フィルタは、第3の位置における推定望ましくないノイズが、未来の時点における第3の位置における望ましくないノイズの推定になるような、少なくとも1つの予測フィルタを含む。
【0014】
一実施形態では、少なくとも1つの予測フィルタはウィーナフィルタである。
【0015】
ノイズ除去方法であって、ノイズ除去フィルタを用いて、ノイズセンサから受信されたノイズ信号に基づいてノイズ除去信号を生成する工程と、所定の体積内のノイズ除去オーディオ信号を変換するための、第1の位置に配設されたアクチュエータにノイズ除去信号を提供する工程と、所定の体積内の第2の位置に配設された基準センサから基準センサ信号を受信する工程であって、基準センサ信号が、第2の位置における望ましくないノイズを表す、受信する工程と、フィルタを用いて、ノイズ除去信号及び基準センサ信号をフィルタ処理してフィルタ出力信号を出力する工程であって、フィルタ出力信号が、第1の位置及び第2の位置から離れた第3の位置における望ましくないノイズの推定を表す、出力する工程と、ノイズ除去オーディオ信号が第3の位置における望ましくないノイズと破壊的に干渉するように、ノイズ除去フィルタをフィルタ出力に基づいて調整する工程と、を含む、ノイズ除去方法。
【0016】
一実施形態では、フィルタ出力信号は、第1の位置と第3の位置との間の関係の推定に基づき、第2の位置と第3の位置との間の関係の推定に基づく。
【0017】
一実施形態では、フィルタは、第2の位置と第3の位置との間の関係を推定するように構成された第1のフィルタを備え、第1のフィルタは、基準センサ信号を受信してフィルタ処理し、第1のフィルタ出力信号を出力するように構成され、第1のフィルタ出力信号は、第3の位置における望ましくないノイズの推定である。
【0018】
一実施形態では、フィルタは、第1の位置と第3の位置との間の関係を推定するように構成された第2のフィルタを更に備え、第2のフィルタは、ノイズ除去信号を受信してフィルタ処理し、第2のフィルタ出力信号を出力するように構成され、第2のフィルタ出力信号は、第3の位置におけるノイズ除去オーディオ信号の推定であり、第2のフィルタ出力信号は、第1のフィルタ出力信号及び第2のフィルタ出力信号が加算されたときに、基準センサにおいて受信されたノイズ除去オーディオ信号に基づいて、第1のフィルタ出力信号の一部分を除去するように構成される。
【0019】
一実施形態では、フィルタは、第3の位置における推定望ましくないノイズは、未来の時点における第3の位置における望ましくないノイズの推定になるような、少なくとも1つの予測フィルタを含む。
【0020】
一実施形態では、少なくとも1つの予測フィルタはウィーナフィルタであり得る。
【0021】
様々な例では、この方法は、構成中に、第3の位置に配置された誤差センサからの誤差信号を使用してフィルタを調節する工程を更に含んでもよい。
【0022】
一実施形態では、誤差信号は、アクチュエータにおいて生成されたオーディオ信号に応答して生成される。
【0023】
1つ以上の実装形態の詳細が、添付図面及び以下の説明において述べられる。他の特徴、目的、及び利点は、本説明及び図面から、並びに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】一実施形態に係るノイズ除去システムの概略図である。
図2】一実施形態に係るノイズ除去システムの概略図である。
図3】一実施形態に係るノイズ除去方法のフローチャートである。
図4】一実施形態に係る調節システムの概略図である。
図5】一実施形態に係る調節方法のフローチャートである。
図6】一実施形態に係る調節方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
車室などの所定の体積内のノイズを除去するノイズ除去システムは、多くの場合、基準センサを用いて、残留した除去されなかったノイズを表す誤差信号を生成する。この誤差信号は、残留した除去されなかったノイズが最小化されるように、ノイズ除去信号を調整する適応フィルタにフィードバックされる。
【0026】
しかしながら、いくつかの状況では、基準センサから離れた位置においてノイズを除去することが望ましい。例えば、車両の状況では、基準センサは、ルーフ、ピラー、又はヘッドレスト内に置かれてもよいが、ノイズは、乗員の耳において除去されるべきである。結果として、誤差信号は、基準センサにおける誤差を示すが、乗員の耳におけるものではない。しかしながら、道路ノイズ除去システムの目的は、乗員の耳においてノイズを除去することであるため、これは望ましくない。更に、耳マイク信号は、典型的には適応アルゴリズムが最適に機能するために必要とされるが、乗員の耳の上にマイクロフォンを置くことは非実用的である。
【0027】
更に、車両及び他の状況におけるノイズ除去オーディオ信号は、音が車室の周辺部に沿って配設されたスピーカから乗員の耳に伝わらなければならないので、典型的には約5ミリ秒遅延する(例えば、ノイズ除去オーディオ信号は、乗員の耳から5フィート離れたところから伝わらなければならず、音の速度は約1フット/ミリ秒である)。乗員によって知覚されるノイズ除去オーディオ信号はもはや現在ではなく、むしろ、既に発生したノイズに向けられたものであるため、この遅延によって最適に除去されなくなる。したがって、ユーザの耳にマイクロフォンを置くことなく、乗員の耳における残留ノイズの未来の値を予測することが当該技術分野において必要とされている。
【0028】
本明細書に開示される様々な実施形態は、基準センサから離れた位置における残留した除去されなかったノイズを表す誤差信号を推定又は予測するノイズ除去システムを対象とする。推定又は予測は、一実施形態では、即ち、遠隔基準マイクロフォンからの入手可能な情報、並びにそれらの遠隔マイクロフォンと乗員の耳におけるノイズフィールドとの関係の知識、及びノイズ除去システム自体の出力の知識からの入手可能な情報に基づく。未来のサンプルは現在のサンプルと相関しており、したがって現在の状態の知識は未来の状態に関する情報を有するため、ノイズの未来の値を予測することが可能である。
【0029】
推定又は予測された誤差信号に基づいて、適応フィルタに対する結果として生じる調整は、推定又は予測された誤差信号を最小化し、したがって、基準センサではなく遠隔位置において望ましくないノイズを除去し、遠隔位置において基準センサを効果的に投射する。これは、代替的に、除去ゾーンを、基準センサから、基準センサから離れた位置にシフトすることとして理解され得る。
【0030】
図1は、基準センサから離れた位置における誤差信号を推定又は予測し、最小化するノイズ除去システム100の概略図である。具体的には、ノイズ除去システム100は、車室などの所定の体積104内の少なくとも1つの除去ゾーン102内の望ましくない音と破壊的に干渉するように構成される。高レベルで、ノイズ除去システム100の一実施形態は、ノイズセンサ106、基準センサ108、アクチュエータ110、及びコントローラ112を含み得る。
【0031】
一実施形態では、ノイズセンサ106は、所定の体積104内の、望ましくない音、又は望ましくない音のソースを表すノイズ信号(単数又は複数)114を生成するように構成される。例えば、図1に示すように、ノイズセンサ106は、車両構造116を介して伝達される振動を検出するように装着及び構成された加速度計であってもよい。車両構造116を介して伝達される振動は、この構造によって(道路ノイズとして知覚される)車室内の望ましくない音に変換されるので、構造に装着された加速度計は、望ましくない音を表す信号を提供する。
【0032】
アクチュエータ110は、例えば、所定の容積104の周辺部の周りの別個の位置に分散されたスピーカであってもよい。一例では、4つ以上のスピーカが車室内に配設されてもよく、4つのスピーカの各々は、車両のそれぞれのドア内に配置され、音を車室内に投射するように構成される。代替的な実施形態では、スピーカは、ヘッドレスト内、又は車室内の他の場所に配置されてもよい。
【0033】
ノイズ除去信号118は、コントローラ112によって生成され、所定の体積内の1つ以上のスピーカに提供されてもよく、これはノイズ除去信号118を音響エネルギー(即ち、音波)に変換する。ノイズ除去信号118の結果として生成される音響エネルギーは、除去ゾーン102内の望ましくない音から位相が約180°ずれており、したがって、望ましくない音と破壊的に干渉する。ノイズ除去信号118から生成された音波と所定の体積内の望ましくないノイズとの組み合わせは、除去ゾーン内のリスナによって知覚されるように、望ましくないノイズの除去をもたらす。
【0034】
ノイズ除去が所定の体積全体にわたって等しいことが可能ではないため、ノイズ除去システム100は、所定の体積を有する1つ以上の所定除去ゾーン102内で最大のノイズ除去を生成するように構成される。除去ゾーン内のノイズ除去は、望ましくない音の低減を約3dB以上だけ実現することができる(ただし様々な実施形態では、異なる量のノイズ除去が発生し得る)。更に、ノイズ除去は、約350Hz未満の周波数など、周波数の範囲内の音を除去することができる(ただし他の範囲が可能である)。
【0035】
所定の体積内に配設された基準センサ108は、ノイズ除去信号118から生成された音波と所定の体積内の望ましくない音との組み合わせから生じる残留ノイズの検出に基づいて、基準センサ信号120を生成する。基準センサ信号120は、フィードバックとしてコントローラ112に提供される。基準センサ信号120は、ノイズ除去信号によって除去されていない残留ノイズを表すため、基準センサ信号120は誤差信号として理解され得る。基準センサ108は、例えば、車室内に(例えば、ルーフ、ヘッドレスト、ピラー、又は室内の他の場所に)取り付けられた少なくとも1つのマイクロフォンであってもよい。
【0036】
一実施形態では、コントローラ112は、非一時的記憶媒体122及びプロセッサ124を備えてもよい。一実施形態では、非一時的記憶媒体122は、プロセッサ124によって実行されたときに、図2図6に関連して説明される様々なフィルタ及びアルゴリズムを実装するプログラムコードを記憶し得る。コントローラ112は、ハードウェア及び/又はソフトウェア内に実装されてもよい。例えば、コントローラは、FPGA、ASIC、又は他の好適なハードウェアによって実装されてもよい。
【0037】
図2を参照すると、コントローラ112によって実装される複数のフィルタを含むノイズ除去システム100の一実施形態のブロック図が示される。図示のように、コントローラは、Wadaptフィルタ126、Wcmdフィルタ128、Wrefフィルタ130、及び適応処理モジュール132を含む制御システムを定義し得る。
【0038】
Wadaptフィルタ126は、ノイズセンサ106のノイズ信号114を受信し、ノイズ除去信号118を生成するように構成される。上述のノイズ除去信号118は、アクチュエータ110に入力され、アクチュエータ110において、それは、所定の除去ゾーン102内の望ましくない音と破壊的に干渉するノイズ除去オーディオ信号に変換される。Wadaptフィルタ126は、多入力多出力(multi-input multi-output、MIMO)有限インパルス応答(finite impulse response、FIR)フィルタなどの任意の好適な線形フィルタとして実装されてもよい。
【0039】
適応処理モジュール132は、(以下に説明するように、Wrefフィルタ130によってフィルタ処理され、Wcmdフィルタ128の出力と加算された)基準センサ信号134及びノイズ信号114を入力として受信し、これらの入力を使用して、フィルタ更新信号136を生成する。フィルタ更新信号136は、Wadaptフィルタ126内に実装されるフィルタ係数に対する更新である。更新されたWadaptフィルタ126によって生成されるノイズ除去信号118は、誤差信号146を最小化する。
【0040】
しかしながら、上述の基準センサ108は、除去ゾーンから離れて配置されてもよい。したがって、基準センサによって出力された誤差信号は、除去ゾーン102内の残留ノイズを直接示さないことがあるが、代わりに基準センサ108における残留ノイズを示し得る。
【0041】
したがって、除去ゾーン内の残留ノイズを推定又は予測するために(即ち、除去ゾーン102内に置かれたセンサの出力を推定又は予測するために)、耳における2つの信号、望ましくないノイズ(例えば、道路ノイズ)に起因する1つの信号、及びラウドスピーカから再生される除去信号に起因する他方の信号は、正確に推定又は予測されなければならない。このような推定又は予測は、一実施形態では、基準センサ信号120及びノイズ除去信号118を入力として受信し、次いで、センサが除去ゾーン102に置かれているのであればこのセンサが何を出力し得るかの最適な推定又は予測を出力する、(ウィーナフィルタなどの)少なくとも1つのフィルタを必要とする(本明細書で使用されるとき、推定は予測であってもよく、即ち、未来の時点における値の推定であってもよいことを理解されよう)。
【0042】
一実施形態では、フィルタは、図2に示すWcmdフィルタ128及びWrefフィルタ130として実装されてもよい。図示のように、Wcmdフィルタ128及びWrefフィルタ130は、基準センサ信号120及びノイズ除去信号112をフィルタ処理して、除去ゾーン内に存在する残留ノイズを表す信号の推定又は予測を生成するように構成された予測フィルタであってもよい。Wcmdフィルタ128及びWrefフィルタ130は、一実施形態では、各々、ウィーナフィルタとして実装され得る。一例では、ウィーナフィルタは、有限インパルス応答(FIR)フィルタ(即ち、有限インパルス応答ウィーナフィルタ)として実装される。しかしながら、ウィーナフィルタの一方又は両方は、代替的に、無限インパルス応答(infinite impulse response、IIR)フィルタとして実装されてもよい。更に、ウィーナフィルタが記載されているが、L1最適フィルタ、H_無限遠最適フィルタなど、他の好適なフィルタ又は予測フィルタが利用されてもよい。
【0043】
Wrefフィルタ130は、基準センサ108の位置と除去ゾーン102との間の関係(例えば、伝達関数)を推定又は予測するように構成される。基準センサ108と除去ゾーン102との間の関係は、各々の位置間の物理的経路138によって決定される。更に、この関係は、所定の体積(例えば、車室)の音響モードによって支配される可能性が高く、時間と共に大きく変化しない。
【0044】
したがって、Wrefフィルタ130は、基準センサ信号120を入力として使用して、乗員の耳における残留ノイズの統計的推定を計算し、その信号をフィルタ処理して、出力(即ち、Wref出力信号134)として推定又は予測を生成するように構成される。Wrefフィルタ130は、したがって、以下の式によって特徴付けられ得る。
ref[n] = Tre[n] (1)
式中、Tre[n]は、時間nにおける基準センサ108と除去ゾーン102との間の伝達関数である。したがって、Wref出力信号134は、入力基準センサ信号120、及び基準センサ108の位置と除去ゾーン102との間の推定/予測された関係に基づいて、乗員の耳におけるノイズの推定又は予測を表す。
【0045】
理想的には、Wrefフィルタ130の出力は、上述のように、乗員の耳における残留ノイズのみの統計的推定又は予測である。しかしながら、実際には、基準センサ108はまた、同じ所定の体積104内に配置されたときに、アクチュエータ110によって出力されるノイズ除去オーディオ信号も受信する可能性が高い。
【0046】
Wcmdフィルタ128は、アクチュエータ110の位置(即ち、ノイズ除去オーディオ信号の原点)と除去ゾーン102との間の関係(例えば、伝達関数)を推定又は予測するように構成され、除去ゾーン102は、各々の位置間の物理的経路140によって決定される。基準センサ108と除去ゾーン102との間の関係と同様に、アクチュエータ110と除去ゾーン102との間の関係は、所定の体積(例えば、車室)の音響モードによって支配される可能性が高く、時間と共に大きく変化しない。
【0047】
上述したように、望ましくない音に加えて、基準センサ108は、アクチュエータ110から出力されたノイズ除去オーディオ信号を拾い上げる可能性が高い。Wcmdフィルタ128は、これを補正することにより、除去信号と共に望ましくないノイズの両方の存在下で、正しい推定又は予測が得られるように構成され得る。
【0048】
したがって、Wcmdフィルタ128は、除去ゾーンにおけるノイズ除去オーディオ信号118の統計的推定を計算するように構成され、基準センサ108によって拾い上げられたノイズ除去信号オーディオ信号を削除するように構成される。一実施形態では、Wcmdフィルタ128は、したがって、以下の式によって特徴付けられ得る。
cmd[n]=Tde[n]-Wref[n]*Tdr[n] (2)
式中、Tde[n]は、時間nにおけるスピーカから除去ゾーン102への伝達関数であり、Tdr[n]は、時間nにおけるアクチュエータ110から基準センサ108への伝達関数である。したがって、Wmcd出力信号142は、除去ゾーンにおけるノイズ除去オーディオ信号118の推定又は予測を表し、基準センサ108によって拾い上げられたノイズ除去信号オーディオ信号を除去するように構成される。
【0049】
以下に説明するように、Wrefフィルタ130及びWcmdフィルタ128の出力が一緒に加算されたときに、結果は、道路誘起ノイズ及び除去信号の両方に起因する、乗員の耳におけるノイズの(場合によっては、未来の時間における、例えば予測の)推定である。
【0050】
要約すると、Wref及びWcmdは、基準マイクロフォン及びノイズ除去信号を入力として使用して、乗員の耳における音を推定又は予測するように設計される。他の基準(加重平均二乗誤差、L1ノルム、H無限ノルムなど)を最適化する他のフィルタ設計技術を使用することができるのと同様に、平均二乗誤差を最適化するウィーナフィルタを使用することができる。
【0051】
Wrefフィルタ130及びWcmdフィルタ128は、以下に記載される式に従って定義され得る。
【0052】
任意の最適な推定問題の基本的な配合は、実際の信号と推定との間の差の何らかの尺度を最小化することであり、即ち、
【0053】
【数1】
【0054】
式中、m[n]は、時間nにおける基準センサ信号120のベクトルであり(一実施形態では、これは、複数の基準センサ108からの複数の基準センサ信号120、又は単一の基準センサ108からの単一の信号を含み得)、変数の上の「^」は、それが推定であることを表し、
【0055】
【数2】
【0056】
はノルムを表し、kは、フィルタの予測部分を表す非負の整数である(即ち、我々の現在の推定は、未来における耳マイクのk個のサンプルの推定である)。Hノルム、L1ノルムなど、多くのノルムを使用することができる。一実施形態では、ウィーナフィルタのタイプと見なすことができる、L2ノルムが使用され得る。具体的には、以下を使用することができる。
【0057】
【数3】
【0058】
ここで、コスト関数が定義されたので、特定の問題は、一実施形態では、図2において使用されるフィルタが計算され得るように、ウィーナフィルタ設計の形態でキャスティングされてもよい。第1の工程は、利用可能な変数、即ち、(例えば、車両のルーフ上に位置する)基準センサ信号120及びアクチュエータ110によって生成されたノイズ除去オーディオ信号に関して、ノイズ除去ゾーン102における残留した望ましくないノイズの推定を表現することである。言うまでもなく、他のノイズの所定された体積104又は除去ゾーン102があってもよいが、他の無相関ノイズはノイズ除去システム100に影響を与えないため、望ましくないノイズ(例えば、道路ノイズ)及びノイズ除去信号112に関連する信号のみが考慮される必要がある。そのため、定義されるように、推定は、基準センサ信号120、m[n]、及びノイズ除去信号112、u[n]を線形フィルタ処理することによって得られるようになる。
【0059】
【数4】
【0060】
又は、より多くの「行列」タイプの表記を使用するために、
【0061】
【数5】
【0062】
ここで、問題は次のように述べられ得る:以下によって与えられるコスト関数を最小化するような、フィルタWref[n]及びWcmd[n]を見つけること
【0063】
【数6】
【0064】
これは、ここでウィーナフィルタ設計として配合され、標準的な解決技術が使用され得る。実際には、以下の図5図6に関連して説明されるように、フィルタWref[n]及びWcmd[n]を生成するためにデータを収集することができる。
【0065】
図2に戻ると、図示のように、Wref出力信号134及びWcmd142出力信号は、加算ブロック144において加算されてもよい。2つのフィルタ処理された信号の出力146は、基準センサ108から離れている除去ゾーン102における残留した除去されなかった音の推定又は予測を表す。加算ブロック144の出力146は適応処理モジュール132に入力される。フィルタ更新信号136は、次いでWadaptフィルタ126に供給されてもよく、Wadaptフィルタ126は、基準センサ108の位置ではなく、除去ゾーン102内の望ましくない音の推定又は予測に基づいてノイズ除去信号118を生成して、基準信号ではなく推定又は予測された誤差信号を最小化する。この車両状況では、これにより、乗員の耳における残留ノイズの更なる最小化がもたらされる。
【0066】
ノイズ除去システム100は、単入力/単出力制御システム又は多入力/多出力制御システムであってもよい。ノイズ除去システム100は、任意の数のノイズセンサ106、基準センサ108、スピーカ110、及び除去ゾーン102を含んでもよい。例えば、ノイズ除去システムは、各基準センサ108と各除去ゾーン102との間の関係を推定又は予測する予測フィルタを含むように拡張されてもよい。同様に、ノイズ除去システム100は、各基準センサ108と各除去ゾーン102との間の関係を推定又は予測する予測フィルタを含むように拡張されてもよい。
【0067】
更に、図2に示すノイズ除去システム100は、単に制御システムの一実施形態として提供されることを理解されたい。実際には、制御システムは、Wcmdフィルタ128及びWrefフィルタ130によって生成される除去ゾーンにおける推定又は予測された望ましくないノイズを最小化することができる任意の好適な適応制御システム(フィードフォワード又はフィードバック)であってもよい。
【0068】
図3は、基準センサから離れた位置にある除去ゾーン内の望ましくないノイズを推定及び除去するためのノイズ除去方法200のフローチャートを示す。方法200は、図1図2に関連して説明されたノイズ除去システム100などの制御システムによって実装されてもよい。
【0069】
工程202において、ノイズ除去信号が生成される。ノイズ除去信号は、Wadaptフィルタ126などの適応フィルタを使用して生成され得るが、Wcmdフィルタ128及びWrefフィルタ130によって推定又は予測されるように、除去ゾーンにおける望ましくないノイズを最小化することができる任意の好適な適応フィルタ(フィードフォワード又はフィードバック)を使用してもよいことを理解されたい。
【0070】
工程204において、所定の体積内のノイズ除去オーディオ信号を変換するための、第1の位置に配設されたスピーカなどのアクチュエータ108にノイズ除去信号が提供される。上述したように、ノイズ除去オーディオ信号は、例えば、乗員の予測される位置に対応する第3の位置に配設された除去ゾーン内の望ましくない音から位相が約180°ずれており、したがって、望ましくない音と破壊的に干渉し得る。ノイズ除去信号から生成された音波と所定の体積内の望ましくないノイズとの組み合わせは、除去ゾーン内のリスナによって知覚されるように、望ましくないノイズの除去をもたらす。除去ゾーン内のノイズ除去は、望ましくない音の低減を約3dB以上だけ実現することができる(ただし様々な実施形態では、異なる量のノイズ除去が発生し得る)。更に、ノイズ除去は、約350Hz未満の周波数など、周波数の範囲内の音を除去することができる(ただし他の範囲が可能である)。
【0071】
工程206において、所定の体積内の第2の位置に配設された基準センサから基準センサ信号が受信され、第1の基準センサ信号は、第2の位置における望ましくない音を表す。基準センサ信号は、ノイズ除去信号によって除去されない残留ノイズを表すので、基準信号は、適応フィルタにフィードバックとして提供される誤差信号として理解され得る。更に、基準センサは、除去ゾーンから離れた第2の位置に配置されてもよい。例えば、基準センサは、上述したように、車室のヘッドレスト、ピラー、又はルーフ内に配置されてもよいが、除去ゾーンは、車両内の乗員の耳に配置されてもよい。したがって、基準センサによって出力される誤差信号は、除去ゾーンにおけるノイズ除去の品質を直接示さず、むしろ、基準センサの位置におけるノイズ除去の品質を示し得る。
【0072】
工程208において、フィルタを用いて、ノイズ除去信号及び基準センサ信号がフィルタ処理されてフィルタ出力信号が出力され、フィルタ出力信号は、第1の位置及び第2の位置から離れた第3の位置における望ましくないノイズの推定又は予測を表す。フィルタ出力信号は、第1の位置と第3の位置との間の関係の推定又は予測に基づき、第2の位置と第3の位置との間の関係の推定又は予測に基づく。
【0073】
例えば、フィルタは、第2の位置と第3の位置との間の関係を推定又は予測するように構成された第1のフィルタを備えてもよく、第1のフィルタは、基準センサ信号を受信してフィルタ処理し、第1のフィルタ出力信号を出力するように構成され、第1のフィルタ出力信号は、第3の位置における望ましくないノイズの推定又は予測である。例えば、第1のフィルタは、基準センサの位置と除去ゾーンとの間の関係(例えば、伝達関数)を推定又は予測するように構成されてもよい。基準センサと除去ゾーンとの間の関係は、各々の位置間の物理的経路によって決定される。したがって、第1のフィルタは、基準センサ信号を受信し、かつ除去ゾーンにおける残留ノイズの推定又は予測を表すフィルタ処理された出力信号を出力するように構成される。
【0074】
フィルタはまた、第1の位置と第3の位置との間の関係を推定又は予測するように構成された第2のフィルタを備えてもよく、第2のフィルタは、ノイズ除去信号を受信してフィルタ処理し、第2のフィルタ出力信号を出力するように構成され、第2のフィルタ出力信号は、第3の位置におけるノイズ除去オーディオ信号の推定又は予測である。例えば、第2のフィルタは、アクチュエータの位置(即ち、ノイズ除去オーディオ信号の原点)と除去ゾーンとの間の関係(例えば、伝達関数)を予測するように構成される。アクチュエータと除去ゾーンとの間の関係は、各々の位置間の物理的経路によって決定される。したがって、第2のフィルタは、ノイズ除去信号を受信し、かつ除去ゾーンにおけるノイズ除去オーディオ信号の推定又は予測を表すフィルタ処理された出力信号を出力するように構成される。第2のフィルタは、基準センサによって受信されたノイズ除去オーディオ信号を補正するように更に構成されてもよい。換言すれば、第2のフィルタ出力信号は、第1のフィルタ出力信号及び第2のフィルタ出力信号が組み合わされたときに、基準センサにおいて受信されたノイズ除去オーディオ信号に基づいて第1のフィルタ出力信号の一部分を除去するように構成される。
【0075】
工程210において、フィルタ出力信号に基づいてノイズ除去フィルタが調整されることにより、ノイズ除去オーディオ信号は、第3の位置における望ましくない音と破壊的に干渉し、推定又は予測された誤差信号が最小化される。例えば、第1のフィルタ出力信号及び第2のフィルタ出力信号は適応アルゴリズムに供給されてもよく、この適応アルゴリズムは、適応フィルタを更新することにより、基準センサの位置ではなく、除去ゾーン内の推定又は予測された残留音に基づいてノイズ除去信号を生成する。
【0076】
図4は、一実施形態に係る、Wcmdフィルタ128及びWrefフィルタ130を調節するための調節システム300を示す。図示のように、ノイズ除去システム100のような調節システム300は、基準センサ108及びアクチュエータ110を含む。加えて、調節システム300は誤差センサ302を含む。誤差センサ302は、例えばマイクロフォンであってもよいが、位置におけるオーディオ信号を検出するのに好適な他のセンサが使用されてもよい。誤差センサは、除去ゾーンの所望の位置に(例えば、乗員の耳に)配置される。調節システム300は、調節コントローラ304を更に含む。調節コントローラ304は、例えば、プロセッサ308によって実行されたときに、図5図6に示される工程を実施するプログラムを記憶するのに好適な非一時的記憶媒体306を含んでもよい。コントローラ304は、コントローラ112であってもよく、又は別個のコントローラとして実装されてもよい。様々な実施形態では、コントローラ304は、一般的なプロセスコンピュータ、FPGA、ASIC、又は図5図6に関連して説明される工程を実行するのに好適な任意の他のコントローラによって実装されてもよい。
【0077】
更に、調節コントローラ304は、アクチュエータ110においてオーディオ信号に変換されるコマンド信号312を生成してもよく、調節コントローラは、基準センサ108から基準センサ信号120を受信し、誤差センサ302から誤差センサ信号310を受信してもよい。
【0078】
図5及び図6は、概して、データを収集し、Wcmdフィルタ128及びWrefフィルタ130というフィルタを生成し、上記の式(9)のコスト関数を最小化するための代替的なアプローチを示す。
【0079】
まず図5を参照すると、データを収集し、Wcmdフィルタ128及びWrefフィルタ130というフィルタを生成するための第1の方法400が示される。
【0080】
工程402において、所定の体積104内の代表的な望ましくないノイズが生成され得る。これは、車両の実施形態では、道路を下って車両を駆動することによって達成され得る。
【0081】
工程402と同時に発生する工程404において、コマンド信号312がアクチュエータ110内に注入され得る。一実施形態では、コマンド信号312は、道路ノイズ信号から統計的に独立したコンピュータ生成されたランダム信号である。このランダム信号は、そのエネルギーが周波数単位の基準で道路ノイズと同等のレベルになるように、スペクトル的に成形されてもよい。以下で説明するように、(道路及び速度依存性の)ノイズ成形フィルタは、プロセッサ308によって実装され、コマンド信号312に適用されてもよい。ノイズ成形フィルタは、代表的な望ましくないノイズをオーバードライブしないレベルにおいてアクチュエータ110を駆動するように構成されてもよい。
【0082】
工程402及び404と同時に発生する工程406において、代表的な望ましくないノイズ及びアクチュエータ110からの出力オーディオ信号から生じたオーディオ信号が、基準センサ108及び誤差センサ302によって検出される。各々からの得られた出力信号、基準センサ信号120及び誤差センサ信号310は、例えば、非一時的記憶媒体306に記録されてもよい。
【0083】
工程408において、注入されたコマンド信号312、並びに記録された基準センサ信号120及び誤差センサ信号310を使用して、Wcmdフィルタ128及びWrefフィルタ130というフィルタを生成して、上述の式(9)のコスト関数を最小化することができる。Wcmdフィルタ128及びWrefフィルタ130を生成することは、当該技術分野において既知の標準的な解決技術によって達成され得る。
【0084】
しかしながら、方法400は、説明されるように、プロセッサ308によって実装されるノイズ成形フィルタが道路及び速度依存性であるため、反復手法を必要とする。したがって、図6は、代替的な実施形態において、工程402、404、及び406に記載されるように同時に行われるのとは対照的に、非同時にアクチュエータ110にコマンド信号312を注入することによって達成され得る方法500を示す。道路ノイズデータ収集及びコマンド信号データ収集を分離することにより、方法400の反復処理が回避される。
【0085】
工程502において、所定の体積104内の代表的な望ましくないノイズが生成され得る。これは、車両の実施形態では、道路を下って車両を運転することによって達成され得る。
【0086】
工程502と同時に発生する工程504において、代表的な望ましくないノイズが、基準センサ108及び誤差センサ302によって検出され、各々からの得られた出力信号、基準センサ信号120及び誤差センサ信号310は、例えば、非一時的記憶媒体306に記録されてもよい。
【0087】
工程502及び504と同時に発生する工程506において、コマンド信号312が生成され、アクチュエータ110に注入されてもよい。(コマンド信号312は、以下に記載されるように、Tde[n]及びTdr[n]を生成するのに好適な任意のコマンド信号であってもよい。)更に、工程506は、好ましくは、任意の他の望ましくないノイズを最小化して行われる。例えば、車両の実施形態では、工程506は、車両エンジンが動くことのない、(静かなガレージなどの)静かな空間内で実施されてもよい。
【0088】
工程506と同時に発生する工程508において、入力コマンド信号に応答してアクチュエータ110によって生成されたオーディオ信号が、基準センサ108及び誤差センサ302によって検出される。各々からの得られた出力信号、基準センサ信号120及び誤差センサ信号310は、例えば、非一時的記憶媒体306に記録されてもよい。
【0089】
工程510において、Wrefフィルタ130は、工程504の記録されたデータを使用して生成されてもよく、Wcmdフィルタ128は、分析的に決定されてもよい。より具体的には、記録された基準センサ信号120及び誤差センサ信号310を使用して、Wrefフィルタ130、したがって式(2)のWref[n]を導き出すことができる。式(2)の残りの項、Tde[n]及びTdr[n]は、任意の標準的なシステム識別技術によって、工程506の記録されたデータを使用して得ることができる。式(2)のこれら3つの項が知られると、Wcmdフィルタ128は分析的に決定され得る。したがって、方法500は、フィルタ処理されたコマンド信号312が道路ノイズデータ収集工程502の間に同時に再生されることを必要とせずに実施され得、したがって、速度及び路面の両方に依存する室内の道路ノイズレベルと信号312とを反復的にバランスさせる必要が回避される。
【0090】
方法400及び500は、任意の数のスピーカ、誤差センサ、若しくは基準センサに対して反復されるか、又は他の方法で実施されてもよいことを理解されたい。
【0091】
本明細書に記載される機能又はその部分、及びその様々な修正(以下「機能」)は、少なくとも部分的にコンピュータプログラム製品(例えば、1つ以上のデータ処理装置、例えば、プログラム可能プロセッサ、コンピュータ、複数のコンピュータ、及び/若しくはプログラム可能論理構成要素、による実行のための、又はその動作を制御するための、1つ以上の非一時的機械可読媒体又は記憶デバイスなどの情報担体において有形に具現化されたコンピュータプログラム)を介して実装され得る。
【0092】
コンピュータプログラムは、コンパイラ型言語又はインタープリタ型言語を含む任意の形態のプログラム言語で書くことができ、それは、スタンドアローンプログラムとして、又はコンピューティング環境での使用に好適なモジュール、構成要素、サブルーチン、若しくは他のユニットとして含む任意の形態で配備され得る。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ上で、若しくは1つのサイトにおける複数のコンピュータ上で実行されるように配備されるか、又は複数のサイトにわたって配信されて、ネットワークによって相互接続され得る。
【0093】
機能の全部又は一部を実装することと関連した動作は、較正プロセスの機能を実施するために1つ以上のコンピュータプログラムを実行する1つ以上のプログラム可能なプロセッサによって実施され得る。機能の全部又は一部は、特殊目的論理回路、例えば、FPGA及び/又はASIC(application-specific integrated circuit、特定用途向け集積回路)として実装され得る。
【0094】
コンピュータプログラムの実行に好適なプロセッサとしてはまた、例として、一般的及び特殊目的マイクロプロセッサの両方、並びに任意の種類のデジタルコンピュータの任意の1つ以上のプロセッサが挙げられる。一般的に、プロセッサは、読み出し専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、又はそれらの両方から命令及びデータを受信することになる。コンピュータの構成要素は、命令を実行するためのプロセッサ、並びに命令及びデータを記憶するための1つ以上のメモリデバイスを含む。
【0095】
本明細書において、いくつかの発明実施形態について記述し説明してきたが、当業者であれば、様々な他の手段、及び/又は、機能を実施し及び/若しくは結果を得るための構造、及び/又は、本明細書に記載の1つ以上の利点を容易に思いつくことができ、並びに、こうした変更形態及び/又は変形形態の各々は、本明細書に記載の発明実施形態の範囲内にあると見なすことができる。より一般的には、当業者であれば、本明細書に記載のパラメータ、寸法、材料、及び構成の全てが例示的であること、実際のパラメータ、寸法、材料、及び/又は構成は、特定のアプリケーション又は本発明の教示が使用されるアプリケーションに依存するであろうことを容易に理解するであろう。当業者であれば、わずかなありふれた実験を行うだけで、本発明に記載されている特定の発明実施形態に相当する多くの等価物を認識又は確認することができるであろう。したがって、前述の実施形態は、単なる例として提示されたものであり、添付の特許請求の範囲及びその等価物の範囲内で、明確に記載され特許請求された以外の別のやり方で発明実施形態を実践することができるということを理解されたい。本開示の発明実施形態は、本明細書に記載の各個々の特徴、システム、物品、材料、及び/又は方法を対象とする。更に、2つ以上のこうした特徴、システム、物品、材料、及び/又は方法のいかなる組む合わせも、こうした特徴、システム、物品、材料、及び/又は方法が相互に矛盾することのない場合、本開示の発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0096】
100 ノイズ除去システム
102 ノイズ除去ゾーン
104 所定の容積
106 ノイズセンサ
108 基準センサ
110 アクチュエータ
112 コントローラ
114 ノイズ信号
116 車両構造
118 ノイズ除去信号
120 基準センサ信号
122 非一時的記憶媒体
124 プロセッサ
126 フィルタ
128 フィルタ
130 フィルタ
132 適応処理モジュール
134 出力信号
136 フィルタ更新信号
142 出力信号
144 加算ブロック
146 出力
300 調節システム
302 誤差センサ
304 コントローラ
306 非一時的記憶媒体
308 プロセッサ
312 コマンド信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6