(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/427 20060101AFI20231127BHJP
B60N 2/68 20060101ALI20231127BHJP
B60N 2/36 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
B60N2/427
B60N2/68
B60N2/36
(21)【出願番号】P 2021511140
(86)(22)【出願日】2020-01-24
(86)【国際出願番号】 JP2020002546
(87)【国際公開番号】W WO2020202733
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2019066252
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】貴嶋 義和
(72)【発明者】
【氏名】小木曽 聡
(72)【発明者】
【氏名】安田 豊
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-094974(JP,A)
【文献】特開2009-012545(JP,A)
【文献】特開2017-007666(JP,A)
【文献】特開2013-010451(JP,A)
【文献】国際公開第2009/147892(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/427
B60N 2/68
B60N 2/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クッションフレーム及びバックフレームと、それらクッションフレーム及びバックフレームを左右方向に沿う軸周りに回転可能に軸支する回転軸と、を備え、
前記クッションフレーム側に前記バックフレームが折り畳まれた状態で、前記回転軸よりも前方側の使用位置と、前記回転軸よりも後方側の収納位置との間で前記回転軸周りに回転可能に構成され、
前記クッションフレーム及び前記バックフレームは、その左右方向両端側の部位を構成し
、前記収納位置に前記クッションフレーム及び前記バックフレームが収納された収納状態において前後に延設される一対のサイドフレームを備え、
前記サイドフレームは、前記収納状態において前後方向一端側の部位を構成する基部と、その基部よりも前記収納状態において左右方向内方または外方に偏心し、左右方向への曲げに対する剛性が前記基部よりも低く設定される偏心部と、を備え、
前
記収納状態において、前記クッションフレーム及び前記バックフレームの前方側に搭載物を有する車両に用いられる車両用シートにおいて、
前記クッションフレーム又は前記バックフレームのいずれか一方の前記サイドフレームにおいて偏心部が基部よりも左右方向内方に偏心し、他方の前記サイドフレームにおいて偏心部が基部よりも左右方向外方に偏心することを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
クッションフレーム及びバックフレームと、それらクッションフレーム及びバックフレームを左右方向に沿う軸周りに回転可能に軸支する回転軸と、を備え、
前記クッションフレーム側に前記バックフレームが折り畳まれた状態で、前記回転軸よりも前方側の使用位置と、前記回転軸よりも後方側の収納位置との間で前記回転軸周りに回転可能に構成され、
前記クッションフレーム及び前記バックフレームは、その左右方向両端側の部位を構成し
、前記収納位置に前記クッションフレーム及び前記バックフレームが収納された収納状態において前後に延設される一対のサイドフレームを備え、
前記サイドフレームは、前記収納状態において前後方向一端側の部位を構成する基部と、その基部よりも前記収納状態において左右方向内方または外方に偏心し、左右方向への曲げに対する剛性が前記基部よりも低く設定される偏心部と、を備え、
前
記収納状態において、前記クッションフレーム及び前記バックフレームの前方側に搭載物を有する車両に用いられる車両用シートにおいて、
前記クッションフレーム及び前記バックフレームは、前記収納状態において左右に延設され前後に所定間隔を隔てて設けられる第1フレーム及び第2フレームと、それら第1フレーム及び第2フレームの間に架け渡され前記一対のサイドフレームの間でクッション部材を支持する支持部材と、を備え、
前記支持部材は、前記収納状態において前記第1フレーム及び前記第2フレームよりも上方又は下方に偏心した位置で前記第1フレーム及び前記第2フレームの間に架け渡されることを特徴とする車両用シート。
【請求項3】
前記サイドフレームは、その基部および偏心部を連結する連結部を備え、
前記収納状態において前記サイドフレームの基部と偏心部とが前後で重ならない位置に配置され、
前記連結部の左右方向への曲げに対する剛性は、前記サイドフレームの基部よりも低く設定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記サイドフレームの偏心部は、前記収納状態において前後方向両端よりも中央側に位置する低剛性部を備え、
前記サイドフレームの偏心部の左右方向への曲げに対する剛性は、前記低剛性部が非形成とされる領域よりも前記低剛性部において低く設定されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車両用シート。
【請求項5】
前記低剛性部は、前記サイドフレームの偏心部の重心よりも左右方向に偏心した位置に形成され、
前記サイドフレームにおける基部に対する偏心部の偏心方向と、偏心部に対する前記低剛性部の偏心方向とが同一に設定されることを特徴とする請求項4記載の車両用シート。
【請求項6】
前記クッションフレーム及び前記バックフレームのそれぞれの前記サイドフレームは、上下方向寸法および前後方向寸法よりも左右方向寸法が小さく設定されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の車両用シート。
【請求項7】
前記バックフレームに軸支され、前記収納状態において先端を前方側に向ける姿勢で前記バックフレームに折り畳み可能に構成されるヘッドレストフレームを備え、
前記ヘッドレストフレームは、第1部分と、その第1部分よりも剛性が低く設定され前記ヘッドレストフレームの先端部分を構成する第2部分とを備えることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の車両用シート。
【請求項8】
前記クッションフレーム及び前記バックフレームは、前記サイドフレームの対向間でクッション部材を支持する支持部材を備え、
前記一方のサイドフレームと前記支持部材との左右の対向間隔よりも、前記他方のサイドフレームと前記支持部材との左右の対向間隔が小さく設定されることを特徴とする請求項1記載の車両用シート。
【請求項9】
前記クッションフレームの前記支持部材は、前記収納状態において前記クッションフレームの前記第1フレーム及び前記第2フレームよりも上方に偏心し、
前記バックフレームの前記支持部材は、前記収納状態において前記バックフレームの前記第1フレーム及び前記第2フレームよりも下方に偏心することを特徴とする請求項2記載の車両用シート。
【請求項10】
前記支持部材は、前記第1フレーム及び前記第2フレームに接続され前記収納状態において前後方向両端側の部位を構成する一対の基部と、それら一対の基部よりも前記収納状態において上下方向に偏心する偏心部と、を備え、
前記支持部材の基部の上下方向への曲げに対する剛性が前記支持部材の偏心部よりも低く設定されることを特徴とする請求項2記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関し、特に、車両の搭載物の破損を抑制できる車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
シートバック及びシートクッションを折り畳んだ状態のシートを一体的に回転可能に軸支し、その回転軸よりも前方側の使用位置と、後方側の収納位置との間で折り畳み状態のシートを回転させることができる車両用シートが知られている。収納位置の前方側の床下に搭載物(例えば、電気自動車用の二次電池等)が収納される車両の場合、収納位置にシートが収納された状態で後突が生じると、その後突による荷重がシートを介して搭載物に作用するおそれがある。
【0003】
この問題点に対し、例えば、特許文献1には、シートクッションやシートバックのサイドフレームに偏心部(湾曲部)を形成する技術が記載されている。この技術によれば、偏心部がサイドフレームの左右方向外方側に偏心しているため、後突時の荷重によってサイドフレームを左右方向外方側に向けて変形させることができる。よって、後突による荷重がシートを介して搭載物側に作用することを抑制できるので、搭載物の破損を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-094974号公報(例えば、段落0028,0034、
図5,6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の技術では、シートクッション及びシートバックのそれぞれのサイドフレームを左右方向外方側に向けて変形させる構成であるため、各サイドフレームの変形が互いに干渉するおそれがある。シートクッションやシートバックを構成する各部材(例えば、サイドフレームや支持部材)の変形が互いに干渉すると、シートクッションやシートバックの変形が止まるおそれがある。シートクッションやシートバックの変形が止まると、後突時の荷重がシートを介して搭載物側に作用するため、搭載物の破損を十分に抑制することができないという問題点があった。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、車両の搭載物の破損を抑制できる車両用シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために本発明の車両用シートは、クッションフレーム及びバックフレームと、それらクッションフレーム及びバックフレームを左右方向に沿う軸周りに回転可能に軸支する回転軸と、を備え、前記クッションフレーム側に前記バックフレームが折り畳まれた状態で、前記回転軸よりも前方側の使用位置と、前記回転軸よりも後方側の収納位置との間で前記回転軸周りに回転可能に構成され、前記クッションフレーム及び前記バックフレームは、その左右方向両端側の部位を構成し、前記収納位置に前記クッションフレーム及び前記バックフレームが収納された収納状態において前後に延設される一対のサイドフレームを備え、前記サイドフレームは、前記収納状態において前後方向一端側の部位を構成する基部と、その基部よりも前記収納状態において左右方向内方または外方に偏心し、左右方向への曲げに対する剛性が前記基部よりも低く設定される偏心部と、を備え、前記収納状態において、前記クッションフレーム及び前記バックフレームの前方側に搭載物を有する車両に用いられるものであり、前記クッションフレーム又は前記バックフレームのいずれか一方の前記サイドフレームにおいて偏心部が基部よりも左右方向内方に偏心し、他方の前記サイドフレームにおいて偏心部が基部よりも左右方向外方に偏心する。
【0008】
本発明の車両用シートは、クッションフレーム及びバックフレームと、それらクッションフレーム及びバックフレームを左右方向に沿う軸周りに回転可能に軸支する回転軸と、を備え、前記クッションフレーム側に前記バックフレームが折り畳まれた状態で、前記回転軸よりも前方側の使用位置と、前記回転軸よりも後方側の収納位置との間で前記回転軸周りに回転可能に構成され、前記クッションフレーム及び前記バックフレームは、その左右方向両端側の部位を構成し、前記収納位置に前記クッションフレーム及び前記バックフレームが収納された収納状態において前後に延設される一対のサイドフレームを備え、前記サイドフレームは、前記収納状態において前後方向一端側の部位を構成する基部と、その基部よりも前記収納状態において左右方向内方または外方に偏心し、左右方向への曲げに対する剛性が前記基部よりも低く設定される偏心部と、を備え、前記収納状態において、前記クッションフレーム及び前記バックフレームの前方側に搭載物を有する車両に用いられるものであり、前記クッションフレーム及び前記バックフレームは、前記収納状態において左右に延設され前後に所定間隔を隔てて設けられる第1フレーム及び第2フレームと、それら第1フレーム及び第2フレームの間に架け渡され前記一対のサイドフレームの間でクッション部材を支持する支持部材と、を備え、前記支持部材は、前記収納状態において前記第1フレーム及び前記第2フレームよりも上方又は下方に偏心した位置で前記第1フレーム及び前記第2フレームの間に架け渡される。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の車両用シートによれば、次の効果を奏する。クッションフレーム又はバックフレームのいずれか一方のサイドフレームにおいて、偏心部が基部よりも左右方向内方に偏心し、他方のサイドフレームにおいて、偏心部が基部よりも左右方向外方に偏心するので、後突時の荷重が作用すると、クッションフレーム又はバックフレームのいずれか一方のサイドフレームが左右方向内方側に向けて変形し易くなり、他方のサイドフレームが左右方向外方側に向けて変形し易くなる。
【0010】
これにより、クッションフレームのサイドフレームの変形方向と、バックフレームのサイドフレームの変形方向とを左右方向において逆向きにし易くでき、サイドフレームの変形が互いに干渉することを抑制できるので、後突時のエネルギーを効率よく吸収することができる。よって、後突時の荷重が搭載物に作用することを抑制できるので、搭載物の破損を抑制できるという効果がある。
【0011】
請求項2記載の車両用シートによれば、次の効果を奏する。クッションフレーム及びバックフレームは、収納状態において左右に延設され前後に所定間隔を隔てて設けられる第1フレーム及び第2フレームを備え、支持部材は、収納状態において第1フレーム及び第2フレームよりも上方又は下方に偏心した位置で第1フレーム及び第2フレームの間に架け渡されるので、後突時の荷重が支持部材に作用すると、第1フレーム及び第2フレームに対して偏心した方向(上方または下方)に向けて支持部材が変形し易くなる。
【0012】
これにより、後突時の荷重が作用した場合に、サイドフレームの変形方向(左右方向に向けた変形)と、支持部材の変形方向(上下方向に向けた変形)とを異なる方向にし易くできる。よって、サイドフレームと支持部材との変形が互いに干渉することを抑制できるので、後突時のエネルギーを効率よく吸収することができる。従って、後突時の荷重が搭載物に作用することを抑制できるので、搭載物の破損を抑制できるという効果がある。
【0013】
請求項3記載の車両用シートによれば、請求項1又は2に記載の車両用シートの奏する効果に加え、次の効果を奏する。サイドフレームは、その基部および偏心部を連結する連結部を備え、収納状態においてサイドフレームの基部と偏心部とが前後で重ならない位置に配置され、連結部の左右方向への曲げに対する剛性は、サイドフレームの基部よりも低く設定される。これにより、後突時の荷重がサイドフレームに作用した場合に、基部と連結部との接続部分や、連結部と偏心部との接続部分に左右に向けた曲げが生じやすくなる。よって、サイドフレームが左右方向内方または外方に向けて変形し易くなり、後突時の荷重が搭載物に作用することをより効果的に抑制できるので、搭載物の破損を抑制できるという効果がある。
【0014】
請求項4記載の車両用シートによれば、請求項1から3のいずれかに記載の車両用シートの奏する効果に加え、次の効果を奏する。サイドフレームの偏心部は、収納状態において前後方向両端よりも中央側に形成される低剛性部を備え、サイドフレームの偏心部の左右方向への曲げに対する剛性は、低剛性部が非形成とされる領域よりも低剛性部において低く設定される。これにより、後突時の荷重がサイドフレームに作用した場合に、偏心部の前後方向両端部分よりも中央側の低剛性部において、左右に向けた曲げの起点になり易くなる。これにより、サイドフレームが左右方向内方または外方に向けて変形し易くなり、後突時の荷重が搭載物に作用することをより効果的に抑制できるので、搭載物の破損を抑制できるという効果がある。
【0015】
請求項5記載の車両用シートによれば、請求項4記載の車両用シートの奏する効果に加え、次の効果を奏する。低剛性部は、サイドフレームの偏心部の重心よりも左右方向に偏心した位置に形成され、サイドフレームにおける基部に対する偏心部の偏心方向と、偏心部に対する低剛性部の偏心方向とが同一に設定される。これにより、後突時の荷重がサイドフレームに作用した場合に、低剛性部を起点にした偏心部の変形方向と、偏心部を起点にしたサイドフレームの変形方向とを一致させやすくできる。よって、サイドフレームが左右方向内方または外方に向けて変形し易くなり、後突時の荷重が搭載物に作用することを更に効果的に抑制できるので、搭載物の破損を抑制できるという効果がある。
【0016】
請求項6記載の車両用シートによれば、請求項1から5のいずれかに記載の車両用シートの奏する効果に加え、次の効果を奏する。クッションフレーム及びバックフレームのそれぞれのサイドフレームは、上下方向寸法および前後方向寸法よりも左右方向寸法が小さく設定されるので、使用位置に配置された使用状態において、着座者の荷重に起因する上下方向または前後方向の曲げに対するサイドフレームの剛性を確保できる一方、収納状態においては、後突時の荷重に起因する左右方向の曲げ対するサイドフレームの剛性を低くすることができる。これにより、使用状態におけるサイドフレームの強度を確保しつつ、収納状態で後突が生じた場合にサイドフレームを変形させ易くすることができるという効果がある。
【0017】
請求項7記載の車両用シートによれば、請求項1から6のいずれかに記載の車両用シートの奏する効果に加え、次の効果を奏する。バックフレームに軸支され、収納状態において先端を前方側に向ける姿勢でバックフレームに折り畳み可能に構成されるヘッドレストフレームを備えるので、後突時の荷重によってバックフレームが前後で圧縮されるように変形すると、その変形に伴ってヘッドレストフレームが前方側に向けて変位する。
【0018】
ヘッドレストフレームは、第1部分と、その第1部分よりも剛性が低く設定されヘッドレストフレームの先端部分を構成する第2部分とを備えるので、仮に、前方側への変位によってヘッドレストフレームの先端が収納部の前方側の壁面(搭載物)に衝突しても、ヘッドレストフレームの先端部分の比較的剛性が低い第2部分を変形させ易くすることができる。この変形により、収納部の前方側の壁面(搭載物)とヘッドレストフレームとの衝突時のエネルギーを吸収することができるので、搭載物の破損を抑制できるという効果がある。
【0019】
請求項8記載の車両用シートによれば、請求項1記載の車両用シートの奏する効果に加え、次の効果を奏する。クッションフレーム及びバックフレームは、サイドフレームの対向間でクッション部材を支持する支持部材を備え、一方のサイドフレームと支持部材との左右の対向間隔よりも、他方のサイドフレームと支持部材との左右の対向間隔が小さく設定される。これにより、支持部材との左右の対向間隔が比較的大きい一方のサイドフレームは左右方向内方(支持部材に近付く方向)に向けて変形させ、支持部材との対向間隔が比較的小さい他方のサイドフレームは左右方向外方(支持部材から離れる方向)に向けて変形させることができる。
【0020】
よって、クッションフレームのサイドフレームとバックフレームのサイドフレームとの変形が干渉することを抑制しつつ、それら各サイドフレームの変形が支持部材に干渉することを抑制できるので、後突時のエネルギーを効率よく吸収することができる。従って、後突時の荷重が搭載物に作用することをより効果的に抑制できるので、搭載物の破損を抑制できるという効果がある。
【0021】
請求項9記載の車両用シートによれば、請求項2記載の車両用シートの奏する効果に加え、次の効果を奏する。クッションフレームの支持部材は、収納状態においてクッションフレームの第1フレーム及び第2フレームよりも上方に偏心し、バックフレームの支持部材は、収納状態においてバックフレームの第1フレーム及び前記第2フレームよりも下方に偏心する。これにより、クッションフレーム及びバックフレームの支持部材の変形に他の部材が干渉することを抑制できる。
【0022】
即ち、収納状態においては、折り畳み状態のシートの上面側にクッションフレームが配置され、下面側にバックフレームが配置される。よって、クッションフレームの支持部材を上方に向けて変形させ、バックフレームの支持部材を下方に向けて変形させることにより、クッションフレームの支持部材の変形にバックフレーム(サイドフレームや支持部材)が干渉することや、バックフレームの支持部材の変形にクッションフレーム(サイドフレームや支持部材)が干渉することを抑制できる。これにより、後突時のエネルギーを効率よく吸収することができ、後突時の荷重が搭載物に作用することをより効果的に抑制できるので、搭載物の破損を抑制できるという効果がある。
【0023】
請求項10記載の車両用シートによれば、請求項2記載の車両用シートの奏する効果に加え、次の効果を奏する。支持部材は、第1フレーム及び第2フレームに接続され収納状態において前後方向両端側の部位を構成する一対の基部と、それら一対の基部よりも収納状態において上下方向に偏心する偏心部と、を備え、支持部材の基部の上下方向への曲げに対する剛性が支持部材の偏心部よりも低く設定されるので、後突時の荷重がクッションフレームに作用した場合に、偏心部が変形する前に基部を上方または下方に向けて変形させ易くすることができる。
【0024】
基部の変形に伴って偏心部が上方または下方に変位するため、偏心部をより確実に第1フレーム及び第2フレームよりも上方または下方に位置させた状態で支持部材を変形させることができる。これにより、支持部材が上方または下方に向けて変形し易くなり、サイドフレームと支持部材との変形が互いに干渉することを抑制できるので、後突時のエネルギーを効率よく吸収することができる。よって、後突時の荷重が搭載物に作用することをより効果的に抑制できるので、搭載物の破損を抑制できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態における車両用シートの正面斜視図である。
【
図2】(a)は、クッションフレームの部分拡大上面図であり、(b)は、クッションフレームのサイドフレームを分解した上面図であり、(c)は、
図2(a)のIIc-IIc線におけるクッションフレームの部分拡大断面図である。
【
図3】(a)は、使用位置に配置された状態でヘッドレストフレーム及びバックフレームをクッションフレーム側に折り畳んだ状態を示す車両用シートの側面図であり、(b)は、(a)の状態から収納位置に回転させた状態を示す車両用シートの側面図である。
【
図4】(a)は、
図3(b)のIVa方向視におけるクッションフレームの部分拡大上面図であり、(b)は、
図4(a)の状態から後突による荷重が加わった状態を示すクッションフレームの部分拡大上面図であり、(c)は、
図4(b)の状態から後突による荷重が更に加わった状態を示すクッションフレームの部分拡大上面図である。
【
図5】(a)は、
図4(a)のVa-Va線におけるクッションフレームの部分拡大断面図であり、(b)は、
図4(b)のVb-Vb線におけるクッションフレームの部分拡大断面図であり、(c)は、
図4(c)のVc-Vc線におけるクッションフレームの部分拡大断面図である。
【
図6】(a)は、
図3(b)のVIa方向視におけるバックフレームの部分拡大上面図であり、(b)は、
図6(a)の状態から後突による荷重が加わった状態を示すバックフレームの部分拡大上面図であり、(c)は、
図6(b)の状態から後突による荷重が更に加わった状態を示すバックフレームの部分拡大上面図である。
【
図7】(a)は、
図6(a)のVIIa-VIIa線におけるバックフレームの部分拡大断面図であり、(b)は、
図6(b)のVIIb-VIIb線におけるバックフレームの部分拡大断面図であり、(c)は、
図6(c)のVIIc-VIIc線におけるバックフレームの部分拡大断面図である。
【
図8】(a)は、サイドフレームの第1の変形例を示す上面図であり、(b)は、サイドフレームの第2の変形例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、
図1を参照して、車両用シート1の全体構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態における車両用シート1の正面斜視図である。なお、
図1では、図面を簡素化するために、車両用シート1の一部を省略し、フレーム部分を模式的に図示している。また、
図1では、使用位置に配置された(乗員が着座可能な)状態の車両用シート1が図示される。
【0027】
図1の矢印U方向、矢印D方向、矢印F方向、矢印B方向、矢印L方向、矢印R方向は、それぞれ車両用シート1の上方向、下方向、前方向、後方向、左方向、右方向を示しており、
図2以降においても同様とする。
【0028】
図1に示すように、車両用シート1は、車両(例えば、電気自動車)に搭載されるシートである。車両用シート1は、車両に固定される第1ブラケット2と、その第1ブラケット2の回転軸20周りに回転可能に軸支されるクッションフレーム3と、そのクッションフレーム3の後端(矢印B側の端部)に固定される第2ブラケット4と、その第2ブラケット4の回転軸40周りに回転可能に軸支されるバックフレーム5と、そのバックフレーム5の上端(矢印U側の端部)に回転可能に軸支されるヘッドレストフレーム6と、を備える。
【0029】
クッションフレーム3は、シートクッション(座面を構成するもの)の骨格となる金属製のフレームである。クッションフレーム3は、前後方向(矢印F-B方向)に所定間隔を隔てて配設される後部フレーム30及び前部フレーム31と、それら後部フレーム30及び前部フレーム31を前後に接続する一対のサイドフレーム32と、それら一対のサイドフレーム32の間に設けられる一対のパネル33と、を備える。
【0030】
後部フレーム30は、クッションフレーム3の後端側の部位を構成し、前部フレーム31は、クッションフレーム3の前端側の部位を構成している。後部フレーム30及び前部フレーム31は、左右方向(矢印L-R方向)に沿って延設され、後部フレーム30及び前部フレーム31の左右方向両端部分がサイドフレーム32によって接続される。よって、クッションフレーム3は、上面視(矢印D方向視)において略矩形状に形成されている。
【0031】
パネル33は、弾力性を有する発泡樹脂製(例えば、軟質ポリウレタンフォーム)のクッション部材(図示せず)を支持するための部材である。パネル33は、後部フレーム30と前部フレーム31との間に前後に架け渡され、その上面にクッション部材が支持される。そのクッション部材をファブリックや合成皮革または皮革等から構成される表皮(図示せず)で被覆することにより、シートクッションが形成される。
【0032】
第2ブラケット4は、クッションフレーム3に対してバックフレーム5を回転可能に支持するための部材であり、金属材料を用いて板状に形成される。第2ブラケット4は、クッションフレーム3の一対のサイドフレーム32のそれぞれに固定され、それら一対の第2ブラケット4の回転軸40にバックフレーム5が軸支される。
【0033】
バックフレーム5は、シートバック(背もたれを構成するもの)の骨格となる金属製のフレームである。バックフレーム5は、その左右両端側の部位を構成する一対のサイドフレーム50と、それら一対のサイドフレーム50を左右に接続する上部フレーム51及び下部フレーム52と、それら上部フレーム51及び下部フレーム52の間で上下に架け渡されるワイヤ53と、を備える。
【0034】
一対のサイドフレーム50の上端側の部位が上部フレーム51によって接続され、下端側(回転軸40よりも上方側)の部位が下部フレーム52によって接続される。よって、バックフレーム5は、正面視(矢印B方向視)において略矩形状に形成されている。
【0035】
サイドフレーム50は、第2ブラケット4に軸支されると共にその第2ブラケット4から上方側に延設される基部50aと、その基部50aの上端から左右方向内方に向けて傾斜しつつ上方側に延設される連結部50bと、その連結部50bの上端から上方側に延設されて上部フレーム51に接続される偏心部50cと、を備える。基部50aに連結部50bを介して偏心部50cが接続されることにより、偏心部50cの重心は基部50aの重心よりも左右方向内方側に偏心している。
【0036】
サイドフレーム50の左右方向寸法は、下端から上端にかけて略一定であり、前後方向寸法は、下端から上端にかけて徐々に小さく設定されている。よって、サイドフレーム50の左右方向に向けた曲げに対する剛性は基部50aで最も高く、連結部50bから偏心部50cにかけて徐々に低くなっている。
【0037】
ワイヤ53は、クッション部材(図示せず)を支持するための部材であり、ワイヤ53の上端が上部フレーム51の下面に接続され、下端が下部フレーム52の前面に巻き付けられるようにして接続される。ワイヤ53の正面にクッション部材が支持され、そのクッション部材を表皮(図示せず)で被覆することにより、シートクッションが形成される。
【0038】
ヘッドレストフレーム6は、ヘッドレスト(座席用の枕を構成するもの)の骨格となる金属製のフレームである。ヘッドレストフレーム6にクッション部材(図示せず)が支持され、そのクッション部材を表皮(図示せず)で被覆することにより、ヘッドレストが形成される。
【0039】
ヘッドレストフレーム6は、バックフレーム5の上部フレーム51に回転可能に設けられる本体部60と、その本体部60から上方側に突出しつつヘッドレストの輪郭を形成するワイヤ部61と、を備える。本体部60は、上下に長い略矩形の板状体であり、ワイヤ部61は、本体部60よりも左右方向寸法の小さい線状のワイヤである。よって、本体部60よりもワイヤ部61の剛性が低く設定されている。
【0040】
次いで、
図2を参照して、クッションフレーム3の詳細構成について説明する。
図2(a)は、クッションフレーム3の部分拡大上面図であり、
図2(b)は、クッションフレーム3のサイドフレーム32を分解した上面図であり、
図2(c)は、
図2(a)のIIc-IIc線におけるクッションフレーム3の部分拡大断面図である。
【0041】
図2に示すように、クッションフレーム3のサイドフレーム32は、後部フレーム30から前方側(矢印F側)に延設される基部32aと、その基部32aの前端から左右方向(矢印L-R方向)外方に向けて傾斜しつつ前方側に延設される連結部32bと、その連結部32bの前端から前方側に延設されて前部フレーム31に接続される偏心部32cと、を備える。基部32aに連結部32bを介して偏心部32cが接続されることにより、偏心部32cの重心は基部32aの重心よりも左右方向外方側に偏心している。
【0042】
サイドフレーム32は、3枚の第1板Pa~第3板Pc(
図2(b)参照)から構成され、第1板Pa~第3板Pcは、断面コ字状(略C字状)のフランジ部分を互いに突き合わせる態様で貼り合わされている(
図2(c)のサイドフレーム32参照)。
【0043】
第1板Paは、サイドフレーム32の基部32aの後端から偏心部32cの前端までのそれぞれの外面を一体的に構成しており、その第1板Paの内面側に第2板Pb及び第3板Pcが貼り合わされている。
【0044】
第2板Pbは、サイドフレーム32の基部32aの後端側の一部を除く領域と、連結部32bと、偏心部32cの後端側の一部の領域との内面を一体的に構成し、第3板Pcは、偏心部32cの前端側の内面を構成している。即ち、偏心部32cを構成する領域において、第2板Pb及び第3板Pcが前後に離間した状態で第1板Paに貼り合わされており、その領域は偏心部32cの中でも左右方向での曲げに対する剛性が比較的低い低剛性部32c1(
図2(a)参照)として構成されている。
【0045】
サイドフレーム32の左右方向寸法は、第2板Pb及び第3板Pcが貼り合わせられる領域においては、基部32aから偏心部32cにかけて略一定である一方、サイドフレーム32の上下方向寸法は(
図3(a)参照)、連結部32bから偏心部32cの低剛性部32c1にわたる領域(サイドフレーム32の前後方向(矢印F-B方向)中央側の領域)において最も小さく設定されている。
【0046】
クッションフレーム3のパネル33は(
図2参照)、後部フレーム30及び前部フレーム31にそれぞれ接続される第1基部33a及び第2基部33bと、それら第1基部33a及び第2基部33bを前後に接続する偏心部33cと、を備える。
【0047】
第1基部33aは、後部フレーム30の上面(
図2(b)の矢印U側の面)から前部フレーム31側に向けて下降傾斜し、第2基部33bは、前部フレーム31の上面から後部フレーム30側に向けて下降傾斜している。偏心部33cは、第1基部33a及び第2基部33bの下端どうしを接続することでパネル33の底面部分を構成しており、偏心部33cの重心は第1基部33a及び第2基部33bの重心よりも下方に偏心している。
【0048】
パネル33は、板厚が一定の板状体であるが、第1基部33a及び第2基部33bの下端側の一部の領域と偏心部33cとにおいては、その断面形状が左右に凹凸を繰り返す波形に形成されている。よって、その波形の凸部分を凸部33d、凹部分を凹部33eと定義すると、それら凸部33d及び凹部33eは、第1基部33aの下端部分から第2基部33bの下端部分にかけて前後に直線状に延設されている。
【0049】
凸部33d及び凹部33eには、その延設方向(前後方向)に沿って複数の貫通孔33fが並べて設けられているが、それら複数の貫通孔33fは、パネル33の底面部分(偏心部33c)のみに形成されている。また、凸部33dに形成される貫通孔33fに比べ、凹部33eに形成される貫通孔33fの開口が大きく形成されている。
【0050】
次いで、
図3を参照して、車両用シート1と、その車両用シート1が用いられる車両100との関係について説明する。
図3(a)は、使用位置に配置された状態でバックフレーム5及びヘッドレストフレーム6をクッションフレーム3側に折り畳んだ状態を示す車両用シート1の側面図であり、
図3(b)は、
図3(a)の状態から収納位置に回転させた状態を示す車両用シート1の側面図である。なお、
図3では、図面を簡素化するために、車両用シート1の一部(例えば、回転軸20を支持する第1ブラケット2(
図1参照))を省略して図示すると共に、車両100の断面のハッチングを省略して模式的に図示している。
【0051】
図3に示すように、車両用シート1は、クッションフレーム3が回転軸20周りに回転可能な状態で車両100の床面101に固定される。クッションフレーム3には第2ブラケット4の回転軸40を介してバックフレーム5が回転可能に軸支(固定)されているので、使用位置におけるクッションフレーム3の上面(
図3(a)矢印U側の面)にバックフレーム5を折り畳むことができる。
【0052】
また、バックフレーム5の先端部分にはヘッドレストフレーム6が回転可能に軸支(固定)されているため、ヘッドレストフレーム6を前面側に折り畳んだ状態のバックフレーム5をクッションフレーム3側に折り畳むことにより、クッションフレーム3とバックフレーム5との間にヘッドレストフレーム6が配置される折り畳み状態とすることができる。その折り畳み状態の車両用シート1を回転軸20周りに回転させることにより、回転軸20よりも前方側の使用位置(
図3(a)の状態)と、後方側の収納位置(
図3(b)の状態)とのそれぞれに配置することができる。
【0053】
車両用シート1が固定される車両100には、回転軸20よりも後方側(矢印B側)の床面101に下方に凹む収納部102が形成されているので、収納部102側(収納位置)に向けて車両用シート1を回転させることにより、折り畳み状態の車両用シート1を収納部102に収納することができる(
図3(b)参照)。
【0054】
使用位置における車両用シート1の下方の床下、即ち、収納部102の前方側(矢印F側)の床下には搭載物103が搭載されているため、収納部102に車両用シート1が収納された収納状態で車両100に後突が生じると、搭載物103が破損するおそれがある。よって、例えば、搭載物103が電気自動車用の二次電池や、燃料電池車用の燃料電池等であると、搭載物103の破損によって危険が生じるおそれがある。
【0055】
これに対して本実施形態の車両用シート1は、収納部102に車両用シート1が収納された収納状態で後突が生じても、搭載物103の破損を抑制できる構成となっている。この構成について、
図4~
図6を参照して説明する。なお、以下の説明において、車両用シート1が収納部102に収納された状態を単に「収納状態」と記載して説明する。
【0056】
まず、
図4及び
図5を参照して、収納状態で後突が生じた場合におけるクッションフレーム3の変形態様について説明する。
図4(a)は、
図3(b)のIVa方向視におけるクッションフレーム3の部分拡大上面図であり、
図4(b)は、
図4(a)の状態から後突による荷重が加わった状態を示すクッションフレーム3の部分拡大上面図であり、
図4(c)は、
図4(b)の状態から後突による荷重が更に加わった状態を示すクッションフレーム3の部分拡大上面図である。
【0057】
図5(a)は、
図4(a)のVa-Va線におけるクッションフレーム3の部分拡大断面図であり、
図5(b)は、
図4(b)のVb-Vb線におけるクッションフレーム3の部分拡大断面図であり、
図5(c)は、
図4(c)のVc-Vc線におけるクッションフレーム3の部分拡大断面図である。
【0058】
なお、
図4及び
図5では、車両用シート1の一部(例えば、バックフレーム5やヘッドレストフレーム6等)の図示を省略し、
図5では、パネル33の断面のハッチングを省略している。また、
図4では、変形途中のパネル33を2点鎖線で図示し、
図5では、変形途中のサイドフレーム32を2点鎖線で図示している。
【0059】
図4(a)に示すように、収納状態(後突の荷重が加わる変形前の状態)においては、クッションフレーム3の後部フレーム30が前方側(矢印F側)に位置し、前部フレーム31が後方側(矢印B側)に位置している。後部フレーム30は、回転軸20を介して車体側に固定されることで比較的剛性が高められているため、後突時の前方に向けた荷重が前部フレーム31に加わると、後部フレーム30が支えとなり、後部フレーム30及び前部フレーム31を前後で接続するサイドフレーム32やパネル33に圧縮荷重が生じる。
【0060】
その圧縮荷重が加わる変形前の状態においては、サイドフレーム32の基部32aよりも偏心部32cが左右方向(矢印L-R方向)外方に偏心しているため、サイドフレーム32に後突時の荷重が作用すると、
図4(b)及び
図4(c)に示すように、偏心部32cが左右方向外方に変位するようにしてサイドフレーム32が塑性変形し易くなる。
【0061】
このサイドフレーム32の変形により、後突時のエネルギーを吸収することができる。更に、サイドフレーム32の変形方向が左右方向外方に向けた方向であるため、サイドフレーム32の変形が収納部102の前方側の壁面102a(搭載物103)側に及ぶことを抑制できる。これにより、後突時の荷重が搭載物103に作用することを抑制できるので、例えば、搭載物103が二次電池や燃料電池等であっても、搭載物103の破損によって危険が生じることを抑制できるので、安全性を向上させることができる。
【0062】
この場合、単にサイドフレーム32の変形が搭載物103側に及ぶことを抑制することを目的とするのであれば、例えば、サイドフレーム32の偏心部32cを左右方向内方側に偏心させる構成を採用することも可能である。しかしながら、そのような構成では、サイドフレーム32よりも左右方向内方側に位置するパネル33や、バックフレーム5(
図3参照)、若しくは、ヘッドレストフレーム6等の他の部材がサイドフレーム32の変形に干渉する可能性がある。サイドフレーム32の変形が干渉される(クッションフレーム3の変形が止まる)と、後突時のエネルギーを吸収することができなくなり、後突による荷重がクッションフレーム3を介して搭載物103側に作用するおそれがある。
【0063】
これに対して本実施形態では、基部32aよりも左右方向外方に偏心部32cを偏心させ、サイドフレーム32の偏心部32cを左右方向外方に向けて変形させる構成であるので、その変形に他の部材が干渉することを抑制できる。よって、後突時のエネルギーを効率よく吸収することができるので、後突による荷重がクッションフレーム3を介して搭載物103側に作用することを抑制できる。
【0064】
ここで、サイドフレーム32の左右の曲げに対する剛性は、後部フレーム30との接続部分である基部32aの後端側や、前部フレーム31との接続部分である偏心部32cの前端側で比較的高くなるのに対し、サイドフレーム32の前後方向中央側に位置する連結部32bや、偏心部32c(低剛性部32c1)の後端側の領域で低くなり易い。
【0065】
一方、サイドフレーム32の基部32aには、第2ブラケット4(
図3参照)が固定されるため、左右の曲げに対する剛性は偏心部32cの前端側よりも基部32aにおいて高くなる。また、上述した通り、サイドフレーム32の上下方向(矢印U-D方向)寸法は(
図3参照)、連結部32bから偏心部32cの低剛性部32c1にわたる領域において最も小さく設定されているため、その領域においては、サイドフレーム32の左右の曲げに対する剛性(断面係数)が最も低くなっている。
【0066】
即ち、サイドフレーム32の左右の曲げに対する剛性は、基部32aにおいて最も高く、偏心部32cの前端側、連結部32b、偏心部32cの低剛性部32c1の順に低くなる。
【0067】
よって、偏心部32cの左右の曲げに対する剛性が基部32aよりも低くなっているため、後突時の荷重がサイドフレーム32に作用した場合(
図4(b)及び
図4(c)参照)、基部32aにおいては左右の曲げが生じ難くなる一方、偏心部32cにおいては左右の曲げが生じやすくなる。よって、サイドフレーム32が左右方向外方に向けてより変形し易くなる。
【0068】
また、偏心部32cの前後方向両端よりも中央側には低剛性部32c1が形成されており、偏心部32cの左右方向への曲げに対する剛性は、低剛性部32c1が非形成とされる領域よりも低剛性部32c1において最も低くなっている。そのため、偏心部32cの低剛性部32c1が左右に向けた曲げの起点になり易くなるため、サイドフレーム32が左右方向外方に向けてより変形し易くなる。
【0069】
また、変形前の状態において(
図4(a)参照)、低剛性部32c1は偏心部32cの重心よりも左右方向外方に偏心した位置に形成されており、基部32aに対する偏心部32cの偏心方向(左右方向外方に向けた偏心)と、偏心部32cに対する低剛性部32c1の偏心方向(左右方向外方に向けた偏心)とが同一となっている。これにより、低剛性部32c1を起点にした偏心部32cの左右方向外方に向けた変形方向と、偏心部32cを起点にしたサイドフレーム32の左右方向外方に向けた変形方向とを一致させることができる。よって、サイドフレーム32が左右方向外方に向けてより変形し易くなる。
【0070】
このように、サイドフレーム32を左右方向外方に向けて変形させ易くする(変形の方向を制御する)ためには、左右の曲げに対する剛性が比較的低い偏心部32cを基部32aよりも左右方向外方に偏心させれば良い。しかしながら、偏心部32cが基部32aよりも左右方向外方に偏心している構成であっても、基部32aと偏心部32cとが前後方向で一部が重なる位置に配置されていると、サイドフレーム32の偏心部32cが左右方向内方に向けて変形するおそれがある。
【0071】
これに対して本実施形態では、変形前の状態において(
図4(a)参照)、連結部32bが基部32aの前端から左右方向外方に向けて傾斜しつつ後方側に延設され、その連結部32bを介して偏心部32cが基部32aに接続されており、基部32aと偏心部32cとが前後で重ならない位置に配置される。これにより、変形前の状態において、基部32aと連結部32bとの接続部分P1や、連結部32bと偏心部32cとの接続部分P2が湾曲した形状となる。
【0072】
よって後突時の荷重がサイドフレーム32に作用すると(
図4(b)及び
図4(c)参照)、基部32aと連結部32bとの接続部分P1や、連結部32bと偏心部32cとの接続部分P2に応力が集中し、その接続部分P1,P2で曲げが生じやすくなる。また、左右に向けた曲げに対する剛性が基部32aよりも連結部32bや偏心部32cの方が低いため、それら基部32aと連結部32bとの接続部分P1や、連結部32bと偏心部32cとの接続部分P2で曲げがより生じやすくなる。
【0073】
また、上述した通り、サイドフレーム32の左右の曲げに対する剛性が偏心部32cの低剛性部32c1において最も低く設定され、低剛性部32c1が偏心部32cの重心よりも左右方向外方に偏心した位置に形成されている。よって、後突時の荷重がサイドフレーム32に作用した初期段階においては、低剛性部32c1が最も先に左右方向外方に向けて変形しやすくなっている。左右方向外方に向けた曲げが低剛性部32c1に生じると、基部32aとの接続部分P1を起点にして連結部32bが外方側に向けて折れ曲がるように変形し易くなるため、基部32aと連結部32bとの接続部分P1に曲げがより生じやすくなる。
【0074】
このように、基部32aに左右の曲げが生じることを抑制しつつ、基部32aと連結部32bとの接続部分P1や、連結部32bと偏心部32cとの接続部分P2に左右の曲げを生じ易くすることにより、サイドフレーム32を左右方向外方に向けて確実に変形させることができる。
【0075】
図5(a)に示すように、収納状態(変形前の状態)におけるクッションフレーム3のパネル33は、第1基部33a及び第2基部33bが後部フレーム30及び前部フレーム31の下面から後部フレーム30及び前部フレーム31の対向間に向けて上昇傾斜している。その第1基部33a及び第2基部33bの上端部分を前後に接続する偏心部33cは、後部フレーム30及び前部フレーム31よりも上方に位置している。
【0076】
即ち、変形前の状態において、偏心部33cの重心が後部フレーム30及び前部フレーム31の上端どうしを結ぶ直線よりも上方に偏心するので、後突時の荷重がパネル33に作用すると(
図5(b)及び
図5(c)参照)、偏心部33cを常に後部フレーム30及び前部フレーム31よりも上方に位置させた状態でパネル33を変形させることができる。これにより、偏心部33cを上方に向けて変形させ易くすることができる。
【0077】
このパネル33の偏心部33cの変形により、後突時のエネルギーを吸収することができる。更に、偏心部33cの変形方向が上方に向けた方向であるため、パネル33の偏心部33cの変形が収納部102の前方側の壁面102a(搭載物103)側に及ぶことを抑制できる。これにより、後突時の荷重が搭載物103に作用することを抑制できるので、搭載物103の破損を抑制できる。
【0078】
また、変形前の状態において(
図5(a)参照)、第1基部33a及び第2基部33bが後部フレーム30及び前部フレーム31からパネル33の中央側に向けて上昇傾斜しているため、後突時の荷重がパネル33に作用した場合に、上方に向けた曲げの変形(後部フレーム30や前部フレーム31周りに回転するような変形)が第1基部33a及び第2基部33bに生じやすくなる。この第1基部33a及び第2基部33bの変形に伴って偏心部33cが上方に変位するため、偏心部33cをより確実に後部フレーム30及び前部フレーム31よりも上方に位置させた状態でパネル33を変形させることができる。よって、偏心部33cを上方に向けて変形させ易くすることができる。
【0079】
ここで、偏心部33cに貫通孔33f(
図4(a)参照)が形成されることで上下方向の曲げに対する剛性(断面係数)が若干低くなっているが、偏心部33cには前後の両端にかけて波形の凸部33d及び凹部33eが形成されているため、偏心部33cの上下方向での曲げに対する剛性は、第1基部33a及び第2基部33b(凸部33d及び凹部33eが非形成とされる領域)よりも高くなっている。
【0080】
よって、後突時の荷重がパネル33に作用した初期段階においては、第1基部33a及び第2基部33bが偏心部33cよりも先に上方に向けて変形し易くなっている。これにより、偏心部33cをより確実に後部フレーム30及び前部フレーム31よりも上方に位置させた状態でパネル33を変形させることができる。よって、パネル33を上方に向けて変形させ易くすることができる。
【0081】
このように、パネル33を上方に向けて変形させることにより、パネル33の下方に位置する他の部材(例えば、バックフレーム5(
図3参照)やヘッドレストフレーム6)がパネル33の変形に干渉する(クッションフレーム3の変形が止まる)ことを抑制できる。よって、後突時のエネルギーを効率よく吸収することができるので、後突による荷重がクッションフレーム3を介して搭載物103側に作用することを抑制できる。
【0082】
また、上述した通り、サイドフレーム32の偏心部32cが基部32aよりも左右方向外方側に偏心することで偏心部32cが左右方向外方側に向けて変形するのに対し(
図4参照)、パネル33の偏心部33cが第1基部33a及び第2基部33bよりも上方に偏心することで偏心部33cが上方に向けて変形するので、サイドフレーム32の変形方向と、パネル33の変形方向とが異なる方向となる。これにより、サイドフレーム32の変形と、パネル33の変形とが互いに干渉することを抑制できるので、後突時のエネルギーを効率よく吸収することができる。
【0083】
次いで、
図6及び
図7を参照して、収納状態で後突が生じた場合におけるバックフレーム5の変形態様について説明する。
図6(a)は、
図3(b)のVIa方向視におけるバックフレーム5の部分拡大上面図であり、
図6(b)は、
図6(a)の状態から後突による荷重が加わった状態を示すバックフレーム5の部分拡大上面図であり、
図6(c)は、
図6(b)の状態から後突による荷重が更に加わった状態を示すバックフレーム5の部分拡大上面図である。
【0084】
図7(a)は、
図6(a)のVIIa-VIIa線におけるバックフレーム5の部分拡大断面図であり、
図7(b)は、
図6(b)のVIIb-VIIb線におけるバックフレーム5の部分拡大断面図であり、
図7(c)は、
図6(c)のVIIc-VIIc線におけるバックフレーム5の部分拡大断面図である。
【0085】
なお、
図6及び
図7では、車両用シート1の一部(例えば、クッションフレーム3のサイドフレーム32やパネル33等)の図示を省略している。また、
図7では、変形途中のサイドフレーム50を2点鎖線で図示している。
【0086】
図6(a)に示すように、収納状態においては、バックフレーム5の下部フレーム52が前方側(矢印F側)に位置し、上部フレーム51が後方側(矢印B側)に位置し、それら上部フレーム51及び下部フレーム52をサイドフレーム50が前後に接続している。
【0087】
サイドフレーム50は、第2ブラケット4(
図3(b)参照)及びサイドフレーム32を介して後部フレーム30(
図6(a)参照)に連結されている。よって、後突時の前方に向けた荷重が上部フレーム51(ヘッドレストフレーム6)に加わると、後部フレーム30が支えとなり、サイドフレーム50やワイヤ53には圧縮荷重が生じる。
【0088】
変形前の状態において、サイドフレーム50の偏心部50cが基部50aよりも左右方向(矢印L-R方向)内方に偏心しているため、サイドフレーム50に後突時の荷重が作用すると(
図6(b)及び
図6(c)参照)、偏心部50cが左右方向内方に向けて塑性変形し易くなる。このサイドフレーム50の偏心部50cの変形により、後突時のエネルギーを吸収することができる。更に、偏心部50cの変形方向が左右方向内方に向けた方向であるため、サイドフレーム50の変形が収納部102の前方側の壁面102a(搭載物103)側に及ぶことを抑制できる。これにより、後突時の荷重が搭載物103に作用することを抑制できる。
【0089】
また、サイドフレーム50の左右の曲げに対する剛性は、基部50aにおいて最も高く、連結部50b、偏心部50cの順に低くなっている。よって、後突時の荷重がサイドフレーム50に作用した場合(
図6(b)及び
図6(c)参照)、基部50aにおいては左右の曲げが生じ難くなる一方、偏心部50cにおいては左右の曲げが生じやすくなる。よって、サイドフレーム50の偏心部50cが左右方向内方に向けてより変形し易くなる。
【0090】
また、変形前の状態において(
図6(a)参照)、連結部50bが基部50aの後端から左右方向内方に向けて傾斜しつつ後方側に延設され、その連結部50bを介して偏心部50cが基部50aに接続されており、基部50aと偏心部50cとが前後で重ならない位置に配置される。よって、後突時の荷重がサイドフレーム50に作用すると(
図6(b)及び
図6(c)参照)、基部50aと連結部50bとの接続部分P3や、連結部50bと偏心部50cとの接続部分P4に応力が集中し、その接続部分P3,P4で曲げが生じやすくなる。
【0091】
また、左右の曲げに対する剛性が基部50aよりも連結部50bや偏心部50cの方が低いため、基部50aと連結部50bとの接続部分P3や、連結部50bと偏心部50cとの接続部分P4で曲げがより生じやすくなる。
【0092】
このように、基部50aの左右に向けた曲げの変形を抑制しつつ、基部50aと連結部50bとの接続部分P3や、連結部50bと偏心部50cとの接続部分P4に曲げを生じ易くすることにより、サイドフレーム50を左右方向内方側に向けて確実に変形させることができる。更に、サイドフレーム50を左右方向内方に向けて変形させることにより、サイドフレーム50の変形が収納部102の左右側面(車体側)に及ぶことを抑制できる。
【0093】
このように、バックフレーム5においては、サイドフレーム50の偏心部50cが基部50aよりも左右方向内方側に偏心しているため、後突時にサイドフレーム50が左右方向内方側に向けて変形し易くなっている。これに対し、上述した通り、クッションフレーム3においては、サイドフレーム32の偏心部32c(
図4参照)が基部32aよりも左右方向外方側に偏心しているため、後突時にサイドフレーム32が左右方向外方側に向けて変形し易くなっている。
【0094】
即ち、各サイドフレーム32,50において偏心部32c,50cの偏心方向を左右で逆方向に設定することにより、クッションフレーム3のサイドフレーム32と、バックフレーム5のサイドフレーム50とを左右方向において互いに逆向きに変形させることができる。これにより、各サイドフレーム32,50の変形が互いに干渉することを抑制できるので、後突時のエネルギーを効率よく吸収することができる。よって、搭載物103の破損を抑制することができる。
【0095】
また、クッションフレーム3においてはサイドフレーム32の左右方向内方側に板状のパネル33が設けられ(
図4参照)、バックフレーム5においてはサイドフレーム50の左右方向内方側にワイヤ53が設けられている(
図6参照)。ワイヤ53は、板状のパネル33よりも左右方向寸法が小さい線状に形成されるので、ワイヤ53とサイドフレーム50との左右の対向間隔は比較的確保しやすく、パネル33とサイドフレーム32との対向間隔は比較的確保し難い構成となっている。
【0096】
言い換えると、クッションフレーム3におけるサイドフレーム32とパネル33との左右の対向間隔よりも、バックフレーム5におけるサイドフレーム50とワイヤ53との左右の対向間隔が狭くなっている。この場合に、クッションフレーム3においては、サイドフレーム32の偏心部32cを基部32aよりも左右方向外方に偏心させる(サイドフレーム32を外方側に変形させる)ことにより、パネル33が板状のものから構成される場合であっても、そのパネル33がサイドフレーム32の変形に干渉することを抑制できる。
【0097】
一方、バックフレーム5においては、サイドフレーム50の偏心部50cを基部50aよりも左右方向内方に偏心させる(サイドフレーム50を内方側に変形させる)ことにより、ワイヤ53との間の比較的広い空間を利用して、ワイヤ53が干渉することなくサイドフレーム50を変形させることができる。
【0098】
これにより、クッションフレーム3のサイドフレーム32と、バックフレーム5のサイドフレーム50との変形が干渉することを抑制しつつ、それらサイドフレーム32,50の変形がパネル33やワイヤ53に干渉することを抑制できるので、後突時のエネルギーを効率よく吸収することができる。
【0099】
このように、後突時のエネルギーを効率よく吸収するためには、クッションフレーム3のサイドフレーム32や、バックフレーム5のサイドフレーム50を変形させ易くすることが好ましい一方で、使用状態においては着座者の荷重に対する強度を確保する必要がある。
【0100】
これに対して本実施形態では、クッションフレーム3及びバックフレーム5のそれぞれのサイドフレーム32,50は、上下方向寸法および前後方向寸法よりも左右方向寸法が小さい板状体から構成されている。即ち、板状体から構成されるサイドフレーム32,50が、その板厚方向を左右方向に向ける姿勢でクッションフレーム3やバックフレーム5に設けられているため、使用位置に配置された使用状態においては(
図1参照)、着座者の荷重に起因する上下方向または前後方向の曲げに対するサイドフレーム32,50の剛性を確保する(断面係数を大きくする)ことができる。
【0101】
一方、収納状態(
図3参照)においては、後突時の荷重に起因する左右方向の曲げ対するサイドフレーム32,50の剛性を低くする(断面係数を小さくする)ことができる。これにより、使用状態におけるサイドフレーム32,50の強度を確保しつつ、収納状態で後突が生じた場合にサイドフレーム32,50を左右方向に向けて変形させ易くすることができる。
【0102】
一方、バックフレーム5のサイドフレーム50の左右に向けた変形により、バックフレーム5が前後に圧縮するようにして変形するため、この変形に伴い、上部フレーム51に軸支(固定)されるヘッドレストフレーム6が前方側に向けて変位する(
図6(b)及び
図6(c)参照)。収納状態(変形前の状態)におけるヘッドレストフレーム6は、その先端部分を前方側に向けた姿勢でバックフレーム5に折り畳まれているため、バックフレーム5の変形に伴ってヘッドレストフレーム6の先端部分が収納部102の前方側の壁面102a(搭載物103)に向けて衝突するおそれがある。
【0103】
これに対して本実施形態では、ヘッドレストフレーム6の先端側の部位を構成するワイヤ部61の剛性は、基端側の部位を構成する本体部60よりも低く設定されており、本体部60においても、その基端側の部位よりもワイヤ部61側の先端側の部位の剛性が低く設定されている。即ち、ヘッドレストフレーム6は、その基端から先端にかけて徐々に剛性が低く設定されている。
【0104】
これにより、仮に、ヘッドレストフレーム6のワイヤ部61が収納部102の前方側の壁面102a(搭載物103)に衝突しても、ヘッドレストフレーム6のワイヤ部61を塑性変形させ、かかる衝突によるエネルギーを吸収することができる。更に、ワイヤ部61の変形後は、本体部60の先端側の部位を変形させることにより、その衝突によるエネルギーをより効果的に吸収することができる。よって、搭載物103の破損を抑制することができる。
【0105】
図7(a)に示すように、バックフレーム5のワイヤ53は、収納状態(変形前の状態)において下部フレーム52の上面から後方側(矢印B側)に向けて下降傾斜する傾斜部53aと、その傾斜部53aの下端部分を上部フレーム51の前面に接続する接続部53bと、から構成されている。変形前の状態においては、傾斜部53aと接続部53bとの接続部分P5は、上部フレーム51及び下部フレーム52の重心よりも下方に位置し、ワイヤ53は下方に向けて凹むように屈曲している。
【0106】
即ち、変形前の状態において、上部フレーム51及び下部フレーム52よりも下方に偏心した位置でワイヤ53が上部フレーム51及び下部フレーム52の間に架け渡されているため、後突時の荷重がワイヤ53に作用した場合(
図7(b)及び
図7(c)参照)、ワイヤ53を上部フレーム51及び下部フレーム52よりも下方に位置させた状態で変形させることができる。これにより、ワイヤ53を下方に向けて変形させ易くすることができる。
【0107】
このワイヤ53の変形により、後突時のエネルギーを吸収することができる。更に、ワイヤ53の変形方向が下方に向けた方向であるため、ワイヤ53の変形が収納部102の前方側の壁面102a(搭載物103)側に及ぶことを抑制できる。これにより、後突時の荷重が搭載物103に作用することを抑制できるので、搭載物103の破損を抑制できる。
【0108】
また、後突時の荷重により、ワイヤ53の傾斜部53aと接続部53bとの接続部分P5(屈曲部分)に応力が生じやすくなるため、その接続部分P5を起点にしてワイヤ53をより確実に下方側に向けて変形させることができる。
【0109】
また、上述した通り、クッションフレーム3のサイドフレーム32やバックフレーム5のサイドフレーム50が左右方向外方側や内方側に向けて変形するのに対し(
図4,6参照)、ワイヤ53が下方に向けて変形するので、サイドフレーム32,50の変形方向と、ワイヤ53の変形方向とが異なる方向となり易い。これにより、サイドフレーム32,50の変形と、ワイヤ53の変形とが互いに干渉することを抑制できる。
【0110】
更に、上述した通り、クッションフレーム3のパネル33を上方に向けて変形させ(
図5参照)、バックフレーム5のワイヤ53を下方に向けて変形させることにより、クッションフレーム3のパネル33とバックフレーム5のワイヤ53との変形が互いに干渉することを抑制できる。
【0111】
このように、ワイヤ53を下方に向けて変形させることにより、ワイヤ53の上方に位置する他の部材(例えば、クッションフレーム3(
図3(b)参照)やヘッドレストフレーム6)がワイヤ53の変形に干渉する(バックフレーム5の変形が止まる)ことを抑制できる。よって、後突時のエネルギーを効率よく吸収することができるので、後突による荷重がバックフレーム5を介して搭載物103側に作用することを抑制できる。
【0112】
次いで、
図8を参照して、クッションフレーム3のサイドフレーム32の変形例について説明する。
図8(a)は、第1の変形例を示すサイドフレーム232の上面図であり、
図8(b)は、第2の変形例を示すサイドフレーム332の上面図である。
【0113】
図8(a)に示すように、第1の変形例のサイドフレーム232は、その前後方向(
図8(a)の上下方向)両端側に形成される一対の基部232aと、それら一対の基部232aを前後に接続する偏心部232cと、を備え、断面コ字状(C字状)の板状体を貼り合わせることで形成されている。一対の基部232a及び偏心部232cは、それぞれ前後に延びる直線状に形成されており、一対の基部232aと偏心部232cとが前後方向で重なる位置に配置される。
【0114】
基部232aの左右方向寸法よりも偏心部232cの左右方向寸法が小さく設定されることにより、左右の曲げに対する剛性が基部232aよりも偏心部232cにおいて低く設定される。また、偏心部232cは、その重心が基部232aの重心よりも左右方向一側(
図8(a)の右側)に偏心している。これにより、サイドフレーム232に前後の圧縮荷重が作用されると、基部232aと偏心部232cとの接続部分に曲げが生じやすくなる。
【0115】
よって、基部232aに対して偏心部232cが偏心する側(
図8(a)の右側)に向けてサイドフレーム232が変形し易くなる。このように、基部232aと偏心部232cとが前後方向で重なる位置に配置される場合でも、少なくとも基部232aよりも剛性が低い偏心部232cを、基部232aに対して左右のいずれかに偏心させることにより、サイドフレーム232の変形方向を制御することができる。
【0116】
図8(b)に示すように、第2の変形例のサイドフレーム332は、第1の変形例のサイドフレーム232に連結部332bを追加したものである。サイドフレーム332は、その前後方向(
図8(b)の上下方向)両端側に形成される一対の基部332aと、それら一対の基部332aから左右方向一側(
図8(b)の右側)に傾斜しつつサイドフレーム332の前後方向中央側に延びる一対の連結部332bと、それら一対の連結部332bどうしを前後で接続する偏心部332cと、を備え、断面コ字状(C字状)の板状体を貼り合わせることで形成されている。
【0117】
一対の基部332aは、それぞれ前後に延びる直線状に形成されており、それら一対の基部332aと偏心部332cとが前後方向で重ならない位置に配置される。
【0118】
基部332aの左右方向寸法よりも連結部332b及び偏心部332cの左右方向寸法が小さく設定されることにより、左右の曲げに対する剛性が基部332aよりも連結部332b及び偏心部332cにおいて低く設定される。また、偏心部332cは、その重心が基部332aの重心よりも左右方向一側(
図8(b)の右側)に偏心している。これにより、サイドフレーム332に前後の圧縮荷重が作用されると、基部332aと連結部332bとの接続部分や連結部332bと偏心部332cとの接続部分に曲げが生じやすくなる。
【0119】
また、一対の基部332aと偏心部332cとが前後方向で重ならない位置に配置されるため、基部332a、連結部332b、及び、偏心部332cの各部の接続部分に曲げがより生じやすくなる。よって、基部332aに対して偏心部332cが偏心する側(
図8(b)の右側)に向けてサイドフレーム332が変形し易くなる。
【0120】
以上、上記実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、上記実施形態におけるクッションフレーム3のサイドフレーム32,232,332の構成をバックフレーム5のサイドフレームに適用することや、バックフレーム5のサイドフレーム50の構成をクッションフレーム3のサイドフレームに適用することは可能である。
【0121】
上記実施形態では、車両100に搭載される搭載物103の一例として、二次電池や燃料電池を例示したが、必ずしもこれに限られるものではない。車両100に搭載される搭載物103は、二次電池や燃料電池以外のものであっても良く、搭載物103の破損の抑制を目的とする車両100であれば、上記実施形態の車両用シート1を好適に用いることができる。
【0122】
上記実施形態では、車両用シート1の各部材どうしの連結方法や、サイドフレーム32,232,332を構成する板状体どうしの連結方法についての具体的な説明を省略したが、それらの連結は溶接やボルト止め等、適宜の手段を用いれば良い。
【0123】
上記実施形態では、クッションフレーム3のサイドフレーム32,232,332、パネル33(支持部材)、及び、バックフレーム5のサイドフレーム50のそれぞれに基部や偏心部が形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。クッションフレーム3又はバックフレーム5の少なくとも一方のサイドフレーム又は支持部材に基部および偏心部を設ければ、後突時のエネルギーを吸収することができる。
【0124】
上記実施形態では、クッションフレーム3のサイドフレーム32、パネル33(支持部材)、バックフレーム5のサイドフレーム50の各部材において、左右方向や上下方向に向けた曲げに対する剛性差が設けられる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。サイドフレームや支持部材において、左右方向や上下方向への曲げに対する剛性差が一定であっても良く、少なくとも上記実施形態で説明した基部や偏心部の構成をサイドフレームや支持部材が備えていれば、左右方向や上下方向に向けて変形させ易くすることができる。
【0125】
上記実施形態では、板状体を貼り合わせて(一部に貼り合わせがない領域を形成して)サイドフレーム32,232,332を構成することや、板状のパネル33に凸部33dや凹部33eを形成すること、サイドフレーム50の前後方向寸法を変化させること等により、各部材において曲げに対する剛性差を設ける場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。
【0126】
例えば、各部材にリブを立てることや貫通孔(凹み)を形成すること等、左右方向や上下方向への曲げに対する剛性(断面係数)を変化させるための手段は限定されない。また、各部材の一部の領域を他の領域とは異なる材質で形成して剛性差を設けても良い。
【0127】
上記実施形態では、クッションフレーム3のサイドフレーム32の偏心部32cが基部32aよりも左右方向外方に偏心し、バックフレーム5のサイドフレーム50の偏心部50cが基部50aよりも左右方向内方に偏心する場合を説明した。即ち、クッションフレーム3のサイドフレーム32と、バックフレーム5のサイドフレーム50とにおいて、基部32a,50aに対する偏心部32c,50cの偏心方向が異なる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。
【0128】
例えば、クッションフレーム3のサイドフレーム32の偏心部32cを基部32aよりも左右方向内方に偏心させ、バックフレーム5のサイドフレーム50の偏心部50cを基部50aよりも左右方向外方に偏心させる構成でも良い。
【0129】
また、クッションフレーム3のサイドフレーム32と、バックフレーム5のサイドフレーム50とにおいて、基部32a,50aに対する偏心部32c,50cの偏心方向を同一の方向にしても良い。
【0130】
この場合、クッションフレーム3のサイドフレーム32と、バックフレーム5のサイドフレーム50とにおいて、基部32a,50aに対する偏心部32c,50cの偏心方向をそれぞれ左右方向外方側に設定すれば、サイドフレーム32,50の変形がパネル33やワイヤ53(支持部材)に干渉することを抑制できる。
【0131】
一方、基部32a,50aに対する偏心部32c,50cの偏心方向をそれぞれ左右方向内方側に設定すれば、サイドフレーム32,50の変形が収納部102の左右側面(車体側)に及ぶことを抑制できる。
【0132】
上記実施形態では、クッションフレーム3のサイドフレーム32や、バックフレーム5のサイドフレーム50において、左右方向への曲げに対する剛性よりも上下方向(前後方向)の曲げに対する剛性が高く(断面係数が大きく)設定される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、サイドフレーム32,50の左右方向への曲げに対する剛性と上下方向への曲げに対する剛性(断面係数)とが同一であっても良い。この場合でも、サイドフレーム32,50の少なくとも一部の領域に、左右方向内方または外方に偏心する偏心部を形成すれば、左右方向内方または外方に向けて変形させ易くすることができる。
【0133】
上記実施形態では、クッションフレーム3に設けられる支持部材としてパネル33を例示し、バックフレーム5に設けられる支持部材としてワイヤ53を例示したが、必ずしもこれに限られるものではない。クッションフレーム3にワイヤ53を用いることや、バックフレーム5にパネル33を用いることは可能であり、パネル33やワイヤ53に替えて、蛇行するスプリング等を用いても良い。
【0134】
バックフレーム5にパネル33を用いる場合には、収納状態において第1基部33a及び第2基部33bよりも上方側に偏心部33cを偏心させることが好ましい。これにより、後突時の荷重によってパネル33を上方側に向けて変形させることができるので、パネル33の変形に収納部102の底面が干渉することを抑制できる。
【0135】
上記実施形態では、パネル33の偏心部33cが第1基部33a及び第2基部33bよりも上方に偏心する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、パネル33の偏心部33cを第1基部33a及び第2基部33bよりも下方に偏心させる構成でも良い。
【0136】
上記実施形態では、パネル33の偏心部33cに凸部33dや凹部33eを形成することにより、上下方向での曲げに対する偏心部33cの剛性を第1基部33a及び第2基部33bよりも高くする場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、パネル33の凸部33dや凹部33eを省略し、上下方向での曲げに対する剛性を第1基部33a、第2基部33b、及び、偏心部33cのそれぞれにおいて同一に設定しても良い。
【0137】
上記実施形態では、収納状態において、ワイヤ53を上部フレーム51及び下部フレーム52よりも下方に偏心させる場合を説明したが、必ずしもこれに限れられるものではない。例えば、ワイヤ53を上部フレーム51及び下部フレーム52よりも上方に偏心させる構成でも良い。
【0138】
上記実施形態では、ヘッドレストフレーム6の本体部60の先端側にワイヤ部61を形成することでヘッドレストフレーム6の先端側の剛性を低くする場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、ヘッドレストフレーム6のワイヤ部61に相当する構成(剛性が比較的低い部位)を省略しても良く、ヘッドレストフレーム6の剛性が基端側から先端側にかけて一定であっても良い。
【符号の説明】
【0139】
1 車両用シート
20 回転軸
3 クッションフレーム
30 後部フレーム(第1フレーム)
31 前部フレーム(第2フレーム)
32,232,332 サイドフレーム
32a,232a,332a サイドフレームの基部
32b,332b 連結部
32c,232c,332c サイドフレームの偏心部
32c1 低剛性部
33 パネル(支持部材)
33a 第1基部(支持部材の基部)
33b 第2基部(支持部材の基部)
33c 支持部材の偏心部
5 バックフレーム
50 サイドフレーム
50a サイドフレームの基部
50b 連結部
50c サイドフレームの偏心部
51 上部フレーム(第1フレーム)
52 下部フレーム(第2フレーム)
53 ワイヤ(支持部材)
6 ヘッドレストフレーム
60 本体部(第1部分)
61 ワイヤ部(第2部分)
100 車両
103 搭載物