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特許7391096必要に応じてアシル化されたヒドロキシカルボン酸のポリオールベースのエステルを製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】必要に応じてアシル化されたヒドロキシカルボン酸のポリオールベースのエステルを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/08 20060101AFI20231127BHJP
   C07C 69/67 20060101ALI20231127BHJP
   C07C 69/675 20060101ALI20231127BHJP
   C07C 67/31 20060101ALI20231127BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20231127BHJP
   B01J 27/053 20060101ALI20231127BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20231127BHJP
【FI】
C07C67/08
C07C69/67
C07C69/675
C07C67/31
A23L33/10
B01J27/053 Z
C07B61/00 300
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021541245
(86)(22)【出願日】2019-01-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2019051547
(87)【国際公開番号】W WO2020147983
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2019/051127
(32)【優先日】2019-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】323005511
【氏名又は名称】ケトリピックス セラポーティクス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100069073
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 和保
(72)【発明者】
【氏名】ロッホマン、ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ライアー、セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】シュテーア、ミヒャエル
【審査官】小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-119648(JP,A)
【文献】特表2015-514104(JP,A)
【文献】特開2018-154559(JP,A)
【文献】国際公開第2017/213999(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの3-ヒドロキシ酪酸およびアシル化された3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステルを製造するための方法において、
ラジカルRが、式-C(O)-CHのアセチル基または式-C(O)-Cのプロピオニル基から選択されるアシル基を示す一般式(I)
CH-CH(OR)-CH-C(O)-O-C(O)-CH -CH(OR)-CH (I)
の少なくとも1つの化合物
一般式(IIc)
HO-CH -CH(OH)-CH -O-CH(OH)-CH -OH (IIc)
のジグリセロールと反応させることおよびそれに続く式-C(O)-CH のアセチル基または式-C(O)-C のプロピオニル基から選択される前記アシル基の加水分解によって、
反応生成物(III)として、少なくとも1つの3-ヒドロキシ酪酸およびアシル化された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリオールエステルが取得されることを特徴とする方法。
【請求項2】
一般式(I)の少なくとも1つの化合物と一般式(IIc)のジグリセロールとの反応とそれに続く式-C(O)-CH のアセチル基または式-C(O)-C のプロピオニル基から選択される前記アシル基の加水分解によって、
反応生成物(III)として、3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリオールエステルが得られることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記反応は、溶媒なしで実行されること;および
前記反応は、自己触媒的にまたは触媒の存在下で、実行されること;および
一般式(I)の化合物および一般式(IIc)のジグリセロールは、1:1~10:1の範囲内の一般式(I)の化合物/一般式(IIc)のジグリセロールのモル比において使用されることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記反応が行われた後も反応生成物(III)にまだ存在するヒドロキシル基が、少なくとも部分的にエステル化されること、前記エステル化は、カルボン酸無水物との反応によって実行されることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの3-ヒドロキシ酪酸およびアシル化された3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステルであって、
前記ポリオールエステルが、
一般式(IIIc)
O-CH-CH(OR)-CH-O-CH-CH(OR)-CH-OR (IIIc)を示すこと、
一般式(IIIc)において、お互いに独立したRは、水素、ラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-、または、式-C(O)-CHのアセチル基または-C(O)-Cのプロピオニル基から選択されるアシル基であるRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-を示すものであるが、少なくとも1つのラジカルRが、ラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-または前記Rを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-を示すことを条件とすることを特徴とするポリオールエステル。
【請求項6】
前記一般式(IIIc)において、お互いに独立したRが、水素、ラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-、または、式-C(O)-CHのアセチル基または式-C(O)-Cのプロピオニル基から選択されるアシル基であるRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-を示すものであるが、少なくとも2つのラジカルRが、ラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-または前記Rを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-を示すことを条件とすることを特徴とする請求項記載のポリオールエステル。
【請求項7】
請求項または記載の少なくとも2つの異なるポリオールエステルを含む混合物。
【請求項8】
請求項または記載の少なくとも1つのポリオールエステルを含む医薬組成物。
【請求項9】
薬物または薬剤であることを特徴とする請求項記載の医薬組成物。
【請求項10】
医薬組成物が、人体の疾患の処置のための薬物または薬剤であること、前記疾患が、エネルギー代謝の障害に関連する病気、ケト体代謝の障害に関連する病気、頭蓋脳外傷、脳卒中、低酸素症、心筋梗塞、リフィーディング症候群、食欲不振、てんかん、神経変性疾患、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、脂肪代謝性疾患、グルコーストランスポーター欠損症(GLUT1欠損症)、VL-FAODおよびミトコンドリアチオラーゼ欠損症、ミトコンドリアチオラーゼ欠損症、ハンチントン病、癌、T細胞リンパ腫、星細胞腫、グリオブラストーマ、HIV、リウマチ性疾患、リウマチ性関節炎、尿路性器炎、消化器系の疾患、慢性炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎およびクローン病、ライソゾーム貯蔵病、スフィンゴ脂質異常症、ニーマン・ピック病、糖尿病、化学療法の効果または副作用からなる群から選択されることを特徴とする請求項または請求項記載の薬剤組成物。
【請求項11】
栄養補助食品、機能性食品、新規食品、食品添加物、食品サプリメント、ダイエット食品、パワースナック、食欲抑制剤、又は筋力及び/又は持久力スポーツ用サプリメントであることを特徴とする請求項5または6記載の少なくとも1つのポリオールエステルを含む食品生成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケト体および関連する代謝の分野ならびに関連する疾患の治療に関する。
【0002】
特に、本発明は、必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特に必要に応じてアシル化された3ーヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、ならびにこのようにして得られるまたはこのように調製された反応生成物(すなわち、必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特に必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル)を製造する方法およびそれらの使用、特に薬物または薬剤などの医薬組成物におけるそれらの使用、または、食品および/または食品生成物におけるそれら使用ならびにそれらのさらなる用途または使用に関する。
【0003】
さらに、本発明は、本発明の方法に従って得られるまたは生成される反応生成物(すなわち、必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特に必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル)を含む医薬組成物、特に薬物または薬剤ならびにそれらの用途または使用に関する。
【0004】
最後に、本発明は、本発明の方法によって取得されまたは製造される反応生成物(すなわち、必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル)を含む食品および/または食品生成物、特に食品サプリメント、機能性食品、新規食品、食品添加物、食品サプリメント、ダイエット食品、パワースナック、食欲抑制剤、ならびに強度および/または耐久性スポーツサプリメント、ならびにそれらの用途または使用に関する。
【背景技術】
【0005】
本発明に従って使用される必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸という用語は、特に、その3-ヒドロキシ機能が、必要に応じてアシル化され、特にアセチル化またはプロピオン化され、好ましくはアセチル化される3-ヒドロキシ酪酸を示すものである(すなわち、3-ヒドロキシ酪酸の3-ヒドロキシル官能基の水素原子は、必要に応じて、アシル基によって、すなわちR=アルキルを有する基-C(O)-Rによって、特にアセチル基-C(O)-CHによって、好ましくはアセチル基-C(O)-CHによって、-C(O)によって置き換えられる);結果として、同じことが3-ヒドロキシ酪酸の関連するカルボン酸無水物に適用される。結果として、本発明による反応生成物(すなわち、必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特に必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル)は、必要に応じて、3-ヒドロキシ酪酸残基または部分の3位において関連するアシル化を示す;言い換えれば、例えば、アシル化3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステルは、3-アシルオキシ酪酸などのポリオールエステルと同義である(例えば、アセチル化3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステルは、3-アセトキシ酪酸等のポリオールエステルと同義である)。
【0006】
人間のエネルギー代謝において、ブドウ糖は短期的に利用可能なエネルギー担体であり、水と二酸化炭素を放出することによってミトコンドリア内でエネルギーに代謝される。肝臓のグリコーゲン貯蔵は、夜の睡眠期間中にすでに空になる。しかしながら、特に人間の中枢神経系(CNS)と心臓は、永続的なエネルギー供給を必要とする。
【0007】
主に中枢神経系で利用できるブドウ糖の生理学的代替物は、いわゆるケト体(同義語でケトン体とも呼ばれる)である。
【0008】
ケト体という用語は、特に3つの化合物の総称であり、主に異化代謝状態(空腹、減量食、低炭水化物食など)で形成され、ケトーシス(ケトン症)を生じるものである。ケト体という用語には、特に3つの化合物、アセトアセテート(同義語でアセタセテートとも呼ばれる)およびアセトン並びに3-ヒドロキシ酪酸(以下、ベータ-ヒドロキシ酪酸またはBHBまたは3-BHBとも呼ばれる)またはその塩(すなわち、3-ヒドロキシ酪酸またはベータヒドロキシ酪酸)を含むものであり、後者は前述の3つの化合物の中で最も重要である。3-ヒドロキシ酪酸またはその塩は、生理学的に(R)-エナンチオマーとして、すなわち(R)-3-ヒドロキシ酪酸(同義語として、3位のキラリティーの中心を強調するために(3R)-3-ヒドロキシ酪酸とも呼ばれる)またはその塩を生じる。
【0009】
これらのケト体はまた、断食時または飢餓の間に脂肪分解によって体内に蓄積された脂質から生理学的に大量に提供され、エネルギー源のグルコースとほぼ完全に置き換えられる。
【0010】
ケト体は、ベータ酸化に由来するアセチル補酵素A(=アセチル-CoA)から肝臓において形成される;それらは、人体においてアセチル補酵素Aの輸送可能な形を示している。しかし、ケト体を利用するためには、脳と筋肉は、ケト体をアセチル補酵素Aに戻すために要求される酵素を発現させることに最初に適応する必要がある。特に空腹時には、ケト体は、著しい量のエネルギー生産に貢献する。たとえば、しばらくすると、脳は1日のブドウ糖量の3分の1しか摂取できなくなる。
【0011】
生理学的に、ケト体は、脂肪酸分解の通常の中間生成物であるアセチル補酵素Aの形の活性化酢酸の2つの分子から合成され、前記中間生成物は、アセチル補酵素A単体と酵素HMG-CoAシンターゼを使用して、中間生成物3-ヒドロキシ-3-メチル-グルタリル-CoA(HMG-CoA)に延出し、最後にHMG-CoA-リアーゼがアセト酢酸を切断する。これらの3つのステップは、肝臓のミトコンドリア(リネンサイクル)でのみ行われ、3-ヒドロキシ酪酸は最終的にD-ベータ-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼによってサイトゾルにおいて形成される。HMG-CoAは、アミノ酸ロイシンの分解の最終生成物でもあると同時に、アセトアセテートは、アミノ酸フェニルアラニンとチロシンの分解中に形成される。
【0012】
自発的な脱炭酸は、アセトアセテートをアセトンに変化させる;それは、糖尿病患者や食事制限者の呼吸の中で時々知覚される。それは、身体においてさらに使用されることはできない。しかしながら、ケト体内のアセトンの割合は、非常に少ない。
【0013】
したがって、アセトアセテートは、生理学的に適切な形態の3-ヒドロキシ酪酸または3-ヒドロキシ酪酸に還元的に変換されるが、二酸化炭素の放出を伴う生理学的に使用できないアセトンに分解することもでき、これは、重度のケトーシス、ケトアシドーシスにおいて(例えば、インスリン置換のない1型糖尿病患者において)、尿中、および呼気中で検出可能であり、嗅覚的に知覚可能である。
【0014】
3-ヒドロキシ酪酸は、現在、ナトリウム、マグネシウム、またはカルシウム塩としてウエイトトレーニング部門で使用され、市販されている。
【0015】
しかしながら、植物が3-ヒドロキシ酪酸を生成せず、動物の組織における3-ヒドロキシ酪酸が、ケトーシスにおいて死んで衰弱した動物でのみ発生するため、3-ヒドロキシ酪酸は知られていないか、進化の観点から人間にはごく少量しか存在しないことから、3-ヒドロキシ酪酸は、経口投与すると吐き気を引き起こす。遊離酸とその塩の形の3-ヒドロキシ酪酸も非常に苦味があり、重度の嘔吐や吐き気を引き起こす可能性がある。
【0016】
さらに、患者、特に新生児だけでなく、成人でさえも、これらの化合物が腎臓に損傷を与える可能性があるため、3-ヒドロキシ酪酸の大量の塩に恒久的に耐えることができない。
【0017】
さらに、3-ヒドロキシ酪酸とその塩の血漿半減期は、たとえ数グラムを摂取したとしても、ケトーシスが約3~4時間の間でしか持続しないため、非常に短いこと、つまり患者が、特に夜間において、3-ヒドロキシ酪酸またはその塩による治療の恩恵を継続的に受けることができないものである。代謝性疾患の場合、これは生命を脅かす状況につながる可能性がある。
【0018】
したがって、そのような代謝性疾患の場合、いわゆる中鎖トリグリセリド、いわゆるMCTが、現在ケト原性療法について使用される。すなわちカプロン酸、カプリル酸、およびカプリン酸の(すなわち飽和線形C-,C-,C10-脂肪酸の)代謝変換が意図される。
【0019】
しかし、基本的には、製薬および臨床の観点から、3-ヒドロキシ酪酸はより効果的な医薬品-薬理学的目標分子であり、先行技術によれば、原則として多数の疾患の治療に使用できるが、生理的適合性がないため使用できない(例えば、エネルギー代謝の機能不全に関連する疾患、特にケト体代謝、または認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病などの神経変性疾患、脂肪代謝性疾患など)。
【0020】
次の表は、純粋に例示的なものを示しているが、有効成分3-ヒドロキシ酪酸の潜在的な治療オプションまたは可能な症状を限定するものではない。
【0021】
【表1】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
したがって、特に人体または動物の身体の生理学的代謝において、3-ヒドロキシ酪酸またはその塩への直接的または間接的なアクセスを生理学的に可能にする効果的な前駆体または代謝物を見つけることができることが、製薬および臨床の観点から望ましい。
【0023】
その結果、従来技術は、3-ヒドロキシ酪酸またはその塩の生理学的に適切な前駆体または代謝産物を見つけるという試みを欠いてはいない。しかしながら、これまでのところ、従来技術において効率的な化合物は見出されていない。また、そのような化合物へのアクセスは、先行技術によれば可能ではなく、または容易に可能ではない。
【0024】
したがって、本発明の根底にある課題は、3-ヒドロキシ酪酸(すなわち、ベータ-ヒドロキシ酪酸またはBHBまたは3-BHB)またはそれらの塩の生理学的に適切なまたは生理学的に適合性のある前駆体および/または代謝産物を生成するための効率的な方法の提供である。
【0025】
そのような方法は、特に、効率的な方法でアクセス可能な、特に大量に、そして大量の有毒な副産物なしに、それぞれのBHB前駆体および/またはBHB代謝物を製造しなくてはならない。
【課題を解決するための手段】
【0026】
出願人が、必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸(ベータ-ヒドロキシ酪酸、BHBまたは3-BHB)のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルが、ケト体3-ヒドロキシ酪酸またはその塩に関して効率的かつ生理学的に有効または生理学的に適合性のある前駆体および/または代謝物であり、これに関して、これらの化合物に直接かつ効果的に、特に経済的にかつ産業的に実現可能なアクセスを可能にするこれらの化合物を製造する効果的な方法を見出しまたは発展させたことは驚くべきことである。
【0027】
したがって、上記の問題を解決するために、本発明は、本発明の第1の態様によれば、請求項1によって、必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸(ベータ-ヒドロキシ酪酸、BHBまたは3-BHB)のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルを製造する方法を提案する;さらに、本発明の方法の特に特別なおよび/または有利な実施形態は、関連する従属請求項の主題である。
【0028】
さらに、本発明は、本発明の第2の態様によれば本発明の方法に従って得られる反応生成物、または必要に応じてアシル化されたポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル、または3-ヒドロキシ酪酸(β-ヒドロキシ酪酸、BHBまたは3-BHB)のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル、または、それぞれの請求項(請求項71および72)によるこれに関して取得可能な必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸の少なくとも2つ、特に少なくとも3つのポリオールエステルの混合物に関する
【0029】
同様に、本発明は、本発明の第3の態様によれば医薬組成物、特に薬物または薬剤に関する
【0030】
さらに、本発明は、本発明の第4の態様によれば、予防的および/または治療的処置のための、または人体または動物の体の疾患の予防的および/または治療的処置のための、必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸(ベータヒドロキシ酪酸、BHBまたは3-BHB)の本発明の反応生成物または本発明のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルに関する。
【0031】
さらに、本発明は、本発明の第5の態様によれば予防的および/または治療的処置のための、または、人体または動物の体の疾患の予防的および/または治療的処置のための薬剤の製造のための、必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸(ベータヒドロキシ酪酸、BHBまたは3-BHB)の本発明の反応生成物または本発明のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル、または、必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸(ベータヒドロキシ酪酸、BHBまたは3-BHB)の少なくとも2つ、特に少なくとも3つのポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルによる混合物の使用に関する。
【0032】
さらに、本発明は、本発明の第6の態様によれば予防的および/または治療的処置のための、飢餓、食事または低炭水化物栄養などの異化代謝状態の予防的および/または治療的処置のための、必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸(ベータ-ヒドロキシ酪酸、BHBまたは3-BHB)の本発明の反応生成物または本発明のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル、または、必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸(ベータ-ヒドロキシ酪酸、BHBまたは3-BHB)の少なくとも2つ、特に少なくとも3つによるポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルの本発明の混合物の使用に関する。
【0033】
さらに、本発明は、本発明の第7の態様によれば食品および/または食品生成物に関する
【0034】
最後に、本発明は、本発明の第8の態様によれば食品および/または食品生成物における、任意選択でアシル化された3-ヒドロキシ酪酸(ベータ-ヒドロキシ酪酸、BHBまたは3-BHB)の本発明の反応生成物、または、本発明のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル-BHB)または食品中の任意選択でアシル化された3-ヒドロキシ酪酸(ベータ-ヒドロキシ酪酸、BHBまたは3-BHB)の少なくとも2つ、特に少なくとも3つのポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルによる本発明の混合物の使用に関する
【0035】
繰り返しを回避する目的で、本発明の1つの態様に関してのみ以下に列挙される特徴、実施形態、利点などは、別の言及を要求することなしに、本発明の他の態様にも適用されることは言うまでもない。
【0036】
さらに、本発明の個々の態様および実施形態はまた、本発明の他の態様および実施形態との任意の組み合わせ、特に、すべての後方参照から生じるため、特徴および実施形態の任意の組み合わせで開示されると見なされ、特許請求の範囲は、結果として生じるすべての組み合わせの可能性に関しても広範囲に開示されていると見なされることは言うまでもない。
【0037】
以下に提供されるすべての相対的または百分率の重量ベースのデータ、特に相対的な量または重量データに関して、本発明の範囲内において、これらは、特に以下に定義するように、すべての成分または含有物を含めて、それぞれ合計が最大100%または100重量%となるように、常に当業者によって選択されるべきであることにさらに留意されたい;しかしながら、これは当業者にとって自明である。
【0038】
また、当業者は、本発明の範囲を離れることなく、必要に応じて、下記する範囲指定から逸脱することができる。
【0039】
さらに、以下に指定されるすべての値またはパラメータなどは、原則として、標準化または明示的に指定された測定方法、または当業者によく知られている決定または測定方法を使用して決定または識別できることが適用される。
【0040】
これを述べた上で、本発明を以下により詳細に説明する。
【0041】
したがって、本発明の主題は、本発明の第1の態様によれば、必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸(ベータ-ヒドロキシ酪酸、BHBまたは3-BHB)のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルを製造するための方法において、
ラジカルRが、-C(O)-CH(アセチル基)または-C(O)-C(プロピオニル基)、好ましくは-C(O)-CH(アセチル基)から選択されるアシル基を示す一般式(I)
CH-CH(OR)-CH-C(O)-O-C(O)-CH -CH(OR)-CH (I)
の少なくとも1つの化合物が、
少なくとも2つのヒドロキシル基(OH基)を具備する少なくとも1つのポリオール(II)、特にポリグリセロールと反応し、これに続いてアシル基の加水分解が行われることによって、
反応生成物(III)として、それぞれの場合において、必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸の1つまたは複数のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルが取得されるものである。
【0042】
上記のように、出願人は、非常に驚くべきことに、このように製造された必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸(ベータ-ヒドロキシ酪酸、BHBまたは3-BHB)のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルが、3-ヒドロキシ酪酸またはそれらの塩の生理学的に適合性のある前駆体および/または代謝物が、生理学的に適合性があるので、製薬または臨床用途で大量に使用することもできることから効率的であることを発見した。
【0043】
本発明による製造方法を通じて効率的な方法で初めてアクセス可能である必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸の上記のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルは、遊離の3-ヒドロキシ酪酸またはその塩の生理学的および薬理学的に適切な代替物を示すものである。
【0044】
従来の有機合成によって必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルの製造は、3-ヒドロキシ酪酸が重合し、他の望ましくない副反応(例えば、脱水、分解等)によって複雑であり、コスト高となる。本発明の範囲内で、必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルが、特に単一の段階で、望ましくない副反応なしに製造される効率的に機能する製造方法を初めて提供することが可能となった。
【0045】
したがって、本発明の方法は、既知の市販の、とりわけ生理学的に無害な成分または抽出物(開始化合物)から、必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸の非毒性ポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルを提供することを初めて可能にする。結果として生じる必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルは、特に胃および/または腸で生理学的に分解され、活性成分または活性要素として標的分子「3-ヒドロキシ酪酸」またはその塩を、放出または生成することができる。
【0046】
さらに、必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルは、長期間にわたって大量に経口投与された場合でも適合性を確保するための許容可能な味を含む(例えば、1日量50g以上の投与)。
【0047】
同様に、本発明による製造方法は、毒性不純物を含まない必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルを提供することを可能にする。
【0048】
さらに、適切な開始物質を使用して、この方法は、エナンチオ選択的に実行することもできる。例えば、本発明によれば、製造方法は、経口投与(すなわち、 腎臓を介する排泄)されたときに患者の腎系に負担をかけないように、生物学的に関連する形態、すなわち(R)-エナンチオマーを、特に酵素触媒作用によって濃縮することを可能にする。ただし、原則として、特定の条件下で使用可能な(S)-エナンチオマーを濃縮することも可能である。
【0049】
さらに、任意のさらなる処理または精製工程を含む本発明による製造方法は、経済的に操作することができ、また大規模に実施することもできる。
【0050】
特に、本発明の製造方法は、市販で入手可能な開始化合物を使用し、さらに、大規模な実施の場合でさえ、比較的単純なプロセス管理を可能にする。
【0051】
従来技術の製造方法とは対照的に、本発明による製造方法は、複雑な開始材料を使用せず、単一のステップのみを使用する。それにもかかわらず、副生成物の形成が最小化または回避される本発明によれば、優れた生産性が達成される。
【0052】
さらに、本発明の方法は単純で経済的である。特に、本発明による方法は、通常、溶媒の非存在下および/または溶媒なしで(すなわち、質量反応として、または物質内の反応として、またはいわゆるバルク反応として)実施される;その結果、得られた反応生成物は溶媒で汚染されておらず、方法または反応が実行された後、溶媒を除去して廃棄したり、費用がかかりエネルギーを消費する方法で再利用したりする必要はない。さらに、有毒な副産物が形成されない。
【0053】
本発明による製造方法は、通常、必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸の異なるポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルの混合物、すなわち、必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸の少なくとも2つ、特に少なくとも3つの異なるポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルの混合物を生じるものである。結果として得られた生の反応生成物または生の混合物は、既知の方法によって、特に残っている開始化合物および/または存在する副生成物を除去することによって精製され、さらに、必要に応じて、既知の方法によって、特に蒸留および/またはクロマトグラフィーによって分離されるものである(例えば、個々のポリオールエステル、すなわち、必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸のモノ-、ジ-、トリ-等のポリオールエステルへの分画、または個々のポリオールエステル等の濃縮および枯渇部分を含む画分への分画)。
【0054】
本発明の特定の実施形態によれば、一般式(I)
CH-CH(OR)-CH-C(O)-O-C(O)-CH-CH(OR)-CH (I)
の化合物は、ラセミ形態または(R)-エナンチオマーの形態で使用され得る。(R)-配置は、一般式(I)の化合物の2つのキラル炭素原子を示し、すなわち、一般式(I)の化合物において、「」でマークされた炭素原子を示し、これらのキラル中心のそれぞれが3-ヒドロキシ酪酸の3位のC原子に対応する。
【0055】
本発明によれば、一般式(I)において、ラジカルRが基-C(O)-CH(アセチル基)を示す場合が好ましい。
【0056】
言い換えれば、本発明によれば、一般式(I)の化合物として、Acがアセチル基を示す式CH-CH(OAc)-CH-C(O)-O-C(O)-CH-CH(OAc)-CHの化合物が使用される。
【0057】
これは、副生成物の形成を最小限に抑えたり抑制することで、特に効率的なプロセス制御と高生産性が可能になる。さらに、一般式(I)の開始化合物は、従来の市販の反応物から容易に調製することができ、また、遊離酸(すなわち、3-ヒドロキシ酪酸)よりも経済的に変換するのに効率的である。
【0058】
特に、本発明の方法において、前記反応は、溶媒の非存在下および/または溶媒なしで実行される。すなわち、前記反応は、質量の反応として、または物質の反応として、またはいわゆるバルク反応として実行される。これは、得られた反応生成物が溶媒で汚染されておらず、方法または反応が実行された後、費用がかかり、エネルギーを消費する方法において、溶媒を除去して廃棄または再利用する必要がないという利点がある。それにもかかわらず、驚くべきことに、この方法または反応は、高い変換率および生産性で進行し、少なくとも本質的に、有意な副生成物の形成はない。
【0059】
本発明の特定の実施形態によれば、前記反応は、自己触媒的に、または触媒、特に鉱酸の存在下で、好ましくは自己触媒的に実行されることができる。この特定の実施形態において、反応は、自己触媒的に(すなわち、追加の触媒の非存在下で)実行されることが好ましい。
【0060】
本発明の方法の範囲内で、前記反応中の温度は広い範囲内で変化し得る。特に、前記反応は、20℃~150℃の範囲内、特に50℃~140℃の範囲内、好ましくは60℃~130℃の範囲内、より好ましくは70℃~125℃の範囲内、さらにより好ましくは75℃~110℃の範囲内の温度で実行されることができる。それにもかかわらず、用途または個々の場合に応じて、本発明の範囲を離れることなく、上記の値から逸脱することが必要な場合がある。
【0061】
本発明の方法の範囲内で、前記反応中の圧力もまた広い範囲内で変化し得る。特に、前記反応は、0.0001バール~10バールの範囲内、特に0.001バール~5バールの範囲内、好ましくは0.01バール~2バールの範囲内、より好ましくは0.05バール~1バールの範囲内の圧力で、さらにより好ましくは約1バールの圧力で実行されることができる。それにもかかわらず、用途または個々の場合に応じて、本発明の範囲を離れることなく、上記の値から逸脱することが必要な場合がある。
【0062】
開始物質または開始化合物の量に関する限り、これはまた、広い範囲内で変化させることができる。
【0063】
特に副産物の最小化に関して、プロセスの経済性と方法の過程の最適化を考慮すると、一般式(Ia)の化合物が、ポリオール(II)のヒドロキシル基に基づいて、等モル量~200モル%を超えるモル過剰まで、特に等モル量~150モルを超えるモル過剰まで、好ましくは等モル量から100モル%を超えるモル過剰までの範囲内のモル量において使用される場合が有利である。
【0064】
同様に、プロセスの経済性および方法の過程の最適化を考慮すると、特に副生成物の最小化に関して、一般式(Ia)の化合物およびポリオール(II)、特にポリグリセロールが、1:1~10:1の範囲内、特に2:1~8:1の範囲内、好ましくは3:1~6:1の範囲内の一般式(I)の化合物/ポリオール(II)のモル比で使用される場合に有利である。
【0065】
本発明による方法で使用可能なポリオール(II)に関する限り、ポリオール(II)が少なくとも3つのヒドロキシル基(OH基)を含む場合は特に好ましい。
【0066】
本発明の方法の特別な実施形態によれば、ポリオール(II)が、
・Xが、有機ラジカル、特に4~20個の炭素原子を含み、任意で1~9個の酸素原子を含み、好ましくはアルキルラジカルまたは(ポリ)アルキルエーテルラジカル、特に(ポリ)アルキレングリコールラジカルから優先的に選択され、より好ましくは、C-C20―アルキルラジカルまたはC-C20-(ポリ)アルキルエーテルラジカル、特にC-C20-(ポリ)アルキレングリコールラジカルから選択される飽和有機ラジカルを示し;および
・それぞれお互いに独立した変数mおよびnが、整数1~10を示す
一般式(IIa)
(HO)-(X)-(OH) (IIa)
に対応することが特に提供されることが好ましい。
【0067】
特に、本発明によれば、これに関して、ポリオール(II)のヒドロキシル基がラジカルXの任意の位置にあり、好ましくは少なくとも1つのヒドロキシル基が末端である(すなわち、第一級ヒドロキシル基である)ことが好ましい。これは、特に、ヒドロキシル基が有機ラジカルXの任意の位置に配置または提供され得ることを意味する(しかしながら、好ましくは、少なくとも1つのヒドロキシル基が末端であり、および/または一級ヒドロキシル基であることを条件とする)。
【0068】
特に、本発明の方法の範囲内で使用できるポリオール(II)は、ポリエーテルポリオールおよびアルカンポリオールおよびそれらの組み合わせ、特にC-C20-ポリエーテルポリオールおよびC-C20-アルカンポリオール、好ましくはC-C20-ポリエーテルポリオールおよびC-C20-アルカンジオール、より好ましくはポリエーテルポリオール、さらにより好ましくはC-C20-ポリエーテルポリオールから選択されることが好ましい。
【0069】
本発明による方法の特定の実施形態によれば、ポリオール(II)は、ポリエーテルポリオール、特にC-C20-ポリエーテルポリオール、好ましくは変数pが、1~4、特に1または2、好ましくは1の整数を示す一般式(IIb)
HO-CH-CH(OH)-CH-[O-CH-CH(OH)-CH-OH (IIb)
のポリグリセロールから選択されることが好ましい。
【0070】
本発明による方法の別の特別な実施形態によれば、ポリオール(II)は、式(IIc)
HO-CH-CH(OH)-CH-O-CH-CH(OH)-CH-OH (IIc)
のジグリセロールであることが好ましい。
【0071】
本発明による方法のさらに別の特別な実施形態によれば、ポリオール(II)は、アルカンジオール、特にC-C20-アルカンジオール、好ましくは線形または分枝アルカンジオール、好ましくは線形または分枝C-C20-アルカンジオール、より好ましくは線形C-C20-アルカンジオール、さらにより好ましくは少なくとも1つの末端および/または第一級ヒドロキシル基を有する線形C-C20-アルカンジオール、さらにより好ましくはペンタンジオール、特に1,2-ペンタンジオールから選択されることが好ましい。
【0072】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明のこの態様による本発明は、必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸(ベータ-ヒドロキシ酪酸、BHBおよび/または3-BHB)のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルを製造するための方法、特に上記に定義された方法に関するものであり、
ラジカルRが、-C(O)-CH(アセチル基)または-C(O)-C(プロピオニル基)、好ましくは-C(O)-CH(アセチル基)から選択されるアシル基を示す一般式(I)
CH-CH(OR)-CH-C(O)-O-C(O)-CH-CH(OR)-CH (I)
の少なくとも1つの化合物が、
少なくとも2つのヒドロキシル基(OH-基)を含む少なくとも1つのポリオール、特にポリグリセロールと反応し、前記ポリオール(II)が、ポリエーテルポリオール、特にC-C20-ポリエーテルポリオール、好ましくは
変数pが、整数1~4,特に1または2、好ましくは整数1を示す一般式(IIb)
HO-CH -CH(OH)-CH -[O-CH -CH(OH)-CH -OH (IIb)
のポリグリセロールから選択され、
それに続いて、任意でアシル基の加水分解が実行され、
これによって、反応生成物(III)として、必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルが取得されるものである。
【0073】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明は、必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸(ベータ-ヒドロキシ酪酸、BHBおよび/または3-BHB)のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルを製造するための方法、特に上記に定義された方法に関するものであり、
ラジカルRが、基-C(O)-CH(アセチル基)を示す一般式(I)
CH-CH(OR)-CH-C(O)-O-C(O)-CH-CH(OR)-CH (I)
の少なくとも1つの化合物が、
少なくとも2つのヒドロキシル基(OH-基)を含む少なくとも1つのポリオール、特にポリグリセロールと反応し、前記ポリオール(II)が、
変数pが、整数1または2、好ましくは整数1を示す一般式(IIb)
HO-CH-CH(OH)-CH-[O-CH-CH(OH)-CH-OH (IIb)
のポリグリセロールから選択され、
それに続いて、任意でアシル基の加水分解が実行され、
これによって、反応生成物(III)として、必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルが取得されるものである。
【0074】
本発明による方法において、前記反応中、一般式(IV)
-OH (IV)
による化合物が、
が同時に形成され、一般式(IV)において、ラジカルRは、上記で定義された意味を有する。
【0075】
特に、これに関して、一般式(IV)による化合物が、反応が行われた後、特に蒸留による除去によって反応から回収される場合に好ましい。
【0076】
本発明による製造方法において、前記反応生成物(III)、特に反応生成物(III)の組成、特に必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸の様々なポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルの存在および混合物の場合のそれらの比率は、反応条件によって、特に反応温度(変換温度)を選択することによって、および/または、反応圧力(変換圧力)を選択することによって、および/または、タイプおよび/または量に関して触媒を提供すること、および/または、開始化合物(抽出物)の量を選択することによって調節されおよび/または制御されることができる。
【0077】
反応後、得られた反応生成物には、さらなる精製または後処理段階が実行されるものである。
【0078】
これに関連して、得られた反応生成物は、反応が実行された後に分画され、特に蒸留によって分画されることが好ましい。
【0079】
また、未反応の出発化合物(I)および/または(II)は、反応生成物から分離されることができ、その後、再利用されることが好ましい。
【0080】
本発明の方法に関連して既に上で説明したように、本発明の方法の範囲内で、特定の実施形態によれば、一般式(I)の少なくとも1つの化合物と少なくとも1つのポリオール(II)、特にポリグリセロールとの反応には、特にアシル基の加水分解が続くことができる。本発明の方法のこの具体例は、反応生成物(III)がアシル基を含まない場合が好ましい。この目的のために、本発明によれば、アシル基の選択的または部分的な加水分解が実行される(反応後に取得される反応生成物の3-ヒドロキシ酪酸部の第3位に位置する)と実行される。特に反応後に得られる反応生成物(反応後に得られる反応生成物の3-ヒドロキシ酪酸部分の3位に位置する)に存在するアシル基の選択的または部分的加水分解が行われる。したがって、以下に定義されるような反応生成物(III)(すなわち、後続の一般式(IIIa)、(IIIb)および(IIIc))を得ることができ、ここで、Rは、水素原子(すなわち、アシル基の水素原子による置換)を示す。 加水分解の過程)。このように、以下に定義されるような反応生成物(III)(後続の一般式(IIIa)、(IIIb)および(IIIc))が得られ、Rは、水素原子を示す(いわゆる加水分解の過程における水素原子によるアシル基の置換)。
【0081】
特に、本発明の方法のこの実施形態によれば、アシル基、特にアセチル基の加水分解が、触媒、好ましくは酵素の存在下で行われる場合が好ましい。これは、特に穏やかで経済的な条件下で、アシル基の選択的または部分的な加水分解が確保され、副生成物の形成を優先的に回避するものである。
【0082】
特に、アシル基、特にアセチル基の加水分解に使用される酵素は、シンテターゼ(リガーゼ)、カタラーゼ、エステラーゼ、リパーゼ、およびそれらの組み合わせから選択されることが好ましい。本発明によれば、シンテターゼ(同義的にリガーゼ)は、特にリガーゼのクラスからの酵素である。リガーゼは、共有結合による2つ以上の分子の結合を引き起こす酵素である。本発明の意味でのカタラーゼは、特に、過酸化水素を酸素および水に変換することができる酵素である。エステラーゼという用語は、特に、エステルをアルコールと酸に加水分解的に分解することができる酵素を示す(鹸化);したがって、これらは特に加水分解酵素であり、脂肪分解エステラーゼはリパーゼとも呼ばれる。本発明の意味でのリパーゼは、特に、グリセリドなどの脂質から遊離脂肪酸を分解することができる酵素である(脂肪分解)。
【0083】
特に、アシル基、特にアセチル基の加水分解のために使用される酵素は、カンジダアンタルクチカ、ムコールミエヘイ(リゾムコールミエヘイ)、サーモミセスラヌギノサス、カンジダルゴサ、アスペルギルスオリザエ、シュードモナスセパシア、シュードモナスフルオレセンス、リゾープスデレマおよびシュードモナス属細菌およびそれらの組み合わせ、好ましくはカンジダアンタルクチカ、ムコールミエヘイ(リゾムコールミエヘイ)およびサーモミセスラヌギノサスに由来するものである。
【0084】
特に、アシル基、特にアセチル基の加水分解に使用される酵素は、固定化された形態で使用されることが好ましく、特に担体上、好ましくはポリマー担体上、より好ましくはポリマー有機担体、特により好ましくは加水分解特性を有し、さらにより好ましくはポリ(メタ)アクリル樹脂ベースの担体上に固定化されることが好ましい。
【0085】
特に、アシル基、特にアセチル基の加水分解に使用される酵素は、加水分解される化合物の総量に基づいて、0.001重量%~20重量%の範囲内、特に0.01重量%~15重量%の範囲内、好ましくは0.1重量%~15重量%の範囲内、好ましくは0.5重量%から10重量%の範囲内の量で使用されることが好ましい。
【0086】
この特定の実施形態によれば、アシル基、特にアセチル基の加水分解に使用される酵素が、加水分解後に再利用されることが好ましい。
【0087】
必要に応じて実行されるアシル基、特にアセチル基の加水分解は、10℃~80℃の範囲内、特に20℃~80℃の範囲内、好ましくは25℃~75℃の範囲内、より好ましくは45℃~75℃の範囲内、さらにより好ましくは50℃~70℃の範囲内の温度で実行されることが好ましい。
【0088】
必要に応じて実行されるアシル基、特にアセチル基の加水分解は、0.0001バール~10バールの範囲内、特に0.001バール~5バールの範囲内、好ましくは0.01バール~2バールの範囲内、より好ましくは0.05バール~1バールの範囲内の圧力で、さらにより好ましくは約1バールの圧力で実行されることが好ましい。
【0089】
典型的には、アシル基、特にアセチル基の加水分解は、水の存在下で行われる。
【0090】
本発明の方法のこの特定の実施形態によれば、一般式(I)の少なくとも1つの化合物と少なくとも1つのポリオール(II)、特にポリグリセロールとの上記に記載した反応によれば、アシル基の加水分解が続いて実行され、上記定義されたような商業的に取得可能な酵素は、上記に記載された酵素(例えば、シグマ-アルドリッヒまたはメルク社製のNovozym(登録商標)435またはストレムケミカルズ社製のLipozym(登録商標)435のようなカンジダアンタルクチカに由来するポリマー支持体上のCALBリパーゼ)を使用することができる。
【0091】
本発明による製造方法の特定の実施形態によれば、特に、前記反応が行われた後も反応生成物中にまだ存在するヒドロキシル基が、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、官能化され、特にエステル化されるように進めることが可能である。特に、反応の後に、まだ利用可能なヒドロキシル基の部分的、特に完全な官能化、特にエステル化が実行されることが好ましい。
【0092】
本発明の方法のこの特定の実施形態において、ヒドロキシル基の特に官能化、特にエステル化は、カルボン酸無水物、特にC-C30-カルボン酸無水物、好ましくはC-C10-カルボン酸無水物、好ましくはC-カルボン酸無水物との反応によって実行することができる。C-C30-カルボン酸無水物、好ましくはC-C10-カルボン酸無水物、好ましくはC-カルボン酸無水物は、線形(直鎖)または分枝、飽和またはモノ-またはポリ不飽和のC-C30-カルボン酸無水物、好ましくはC-C10-カルボン酸無水物、好ましくはC-カルボン酸無水物であることが好ましい。
【0093】
本発明の方法のさらなる特定の実施形態において、ヒドロキシル基の官能化、特にエステル化は、カルボン酸無水物、特に上記で定義される一般式(I)の化合物との反応によって実行されることができる。
【0094】
アシル基の加水分解を含む、反応後にまだ存在するヒドロキシル基の官能化、特にエステル化を含む、本発明による特に好ましいアプローチは、開始ポリオールとしてジグリセロールを用いた以下の反応または合成スキームによって示される((ここで、反応中の反応手順に応じて、個々のエステルまたはその2つ以上の混合物のいずれかが得られ、以下の反応または合成スキームにおいて、官能基化が、C-C30-カルボン酸無水物または式CH-CH(OR)-CH-C(O)-のラジカルで行われる場合、ラジカルYは、式CH-(CHx=0-28-C(O)-のラジカルのいずれかを示し、ここで ラジカルRは、上記定義された一般式(I)の化合物に対応するカルボン酸無水物で行われる場合、上記で定義された意味を有する)。
【0095】
【化1】
【0096】
本発明の方法で使用される、上記で定義される一般式(I)の化合物に関する限り、それは、
ラジカルRが、上記に定義された意味を有し、特に無水酢酸または無水プロピオン酸、好ましくは無水酢酸を有する式(V)
-O-R (V)
のカルボン酸無水物と3-ヒドロキシ酪酸とを反応させることによって取得可能でありおよび/または取得される。
【0097】
特に、一般式(V)のカルボン酸無水物と3-ヒドロキシ酪酸との反応は、ラジカルRが上記に定義された意味を有する下記する反応式によって実行される。
【0098】
【化2】
【0099】
特定の実施形態によれば、無水酢酸と3-ヒドロキシ酪酸との反応は、ラジカルAcがアセチル基を示す下記する反応式に従って起こることが好ましい。
【0100】
【化3】
【0101】
上記で定義された一般式(V)のカルボン酸無水物と3-ヒドロキシ酪酸との反応の温度は、広い範囲内で変動し得る。特に、上記で定義した一般式(V)のカルボン酸無水物と3-ヒドロキシ酪酸との反応は、60~150℃の範囲内、特に70~120℃の範囲内、好ましくは80~100℃の範囲内の温度で実行されることが好ましい。
【0102】
上記で定義された一般式(V)のカルボン酸無水物と3-ヒドロキシ酪酸との反応の圧力は、広い範囲内で等しく変化することができる。特に、上記で定義した一般式(V)のカルボン酸無水物と3-ヒドロキシ酪酸との反応は、0.0001バール~10バールの範囲内、特に0.001バール~5バールの範囲内、好ましくは0.01バール~2バールの範囲内、より好ましくは0.05バール~1バールの範囲内の圧力で、さらにより好ましくは約1バールの圧力で実行されることができる。
【0103】
本発明の方法の特定の実施形態によれば、本発明は、必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸(ベータ-ヒドロキシ酪酸、BHBまたは3-BHB)のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルを製造する方法、特に上記に定義したような方法に関するもので、
(a)第1の方法段階(a)において、Rが、上記で定義された意味を有し、特に無水酢酸または無水プロピオン酸、好ましくは無水酢酸を有する上記で定義された一般式(V)
-O-R (V)
のカルボン酸無水物が、3-ヒドロキシ酪酸と反応して、上記で定義された一般式(I)の化合物を得ること;それに続いて、
(b)第2の方法段階(b)において、これによって得られた一般式(I)の化合物が、上記で定義されたような少なくとも2つのヒドロキシル基(OH-基)を含む少なくとも1つのポリオール(II)、特にポリグリセロールと反応すること;それに続いて、
(c)任意の第3の方法段階(c)において、アシル基の加水分解が実行されること;によって、
反応生成物(III)として、必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリオールエステル、特にポリグリセロールが得られる。
【0104】
本発明の方法の範囲内で、反応生成物(III)として、一般式(IIIa)
(RO)-(X)-(OR (IIIa)
の必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルを得ることが可能である。
一般式(IIIa)において、
・Xは、有機ラジカル、特に4~20個の炭素原子を有し、任意に1~9個の酸素原子を有し、好ましくはアルキルラジカルまたは(ポリ)アルキルエーテルラジカル、特に(ポリ)アルキレングリコールラジカルから選択され、より好ましくはC-C20-アルキルラジカル、C-C20-(ポリ)アルキルエーテルラジカル、特にC-C20-(ポリ)アルキレングリコールラジカルから選択される好ましくは飽和有機ラジカルを示すこと、
・それぞれお互いに独立した前記変数mおよびnが、整数1~10を示すこと、
・お互いに独立したRが:水素、ラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-、または、-C(O)-CH(アセチル基)または-C(O)-C(プロピオニル基)、好ましくは-C(O)-CH(アセチル基)から選択されたアシル基であるRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-を示すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、ラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-または上記に定義されたRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-を示すことを条件とするものである。
【0105】
特に、基RO-は、ラジカルXの任意の位置にあり得る(好ましくは、少なくとも1つの基RO-が末端である)。
【0106】
特に、特定の実施形態によれば、一般式(IIIa)において、互いに独立したRは、水素またはラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-を示すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、水素を表さないということを条件とするものであり、および/または、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、ラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-を示すことを条件とするものである。
【0107】
さらに、別の特定の実施形態によれば、一般式(IIIa)において、互いに独立したRは、水素または上記で定義されるようなラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-を示すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、水素を表さないということを条件とするものであり、および/または、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、上記で定義されたRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-を示すことを条件とするものである。
【0108】
さらに、さらに別の特定の実施形態によれば、一般式(IIIa)において、互いに独立したRは、ラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-または上記で定義されたRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-示すことが好ましい。
【0109】
特に、本発明による製造方法において、反応生成物(III)として、一般式(IIIb)
O-CH-CH(OR)-CH-[O-CH-CH(OR)-CH-OR (IIIb)
の必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルが取得されることが好ましい。
前記一般式(IIIb)において、
・変数pは、1~4の整数、特に1または2の整数、好ましくは1の整数を示すす;
・お互いに独立したRは、水素、ラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-または上記で定義されたRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-示すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、少なくとも2つのラジカルRが、水素を示さないことを条件とし、および/または、少なくとも1つのラジカルR、少なくとも2つのラジカルRが、ラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-または上記で定義されたRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-示すことを条件とするものである。
【0110】
特に、特定の実施形態によれば、一般式(IIIb)において、互いに独立したRは、水素またはラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-を示すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、少なくとも2つのラジカルRが、水素を示さないことを条件とし、および/または、少なくとも1つのラジカルR、少なくとも2つのラジカルRが、ラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-示すことを条件とするものである。
【0111】
さらに、別の特定の実施形態によれば、一般式(IIIb)において、互いに独立したRは、水素または上記で定義されるようなRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-を示すものであるが、少なくとも1つのラジカルR、少なくとも2つのラジカルRが、水素を示さないことを条件とし、および/または、少なくとも1つのラジカルR、少なくとも2つのラジカルRが、上記で定義されたRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-示すことを条件とするものである。
【0112】
さらに別の特定の実施形態によれば、一般式(IIIb)において、互いに独立したRは、ラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-または上記で定義されるようなRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-を示すことが好ましい。
【0113】
本発明による方法の特定の実施形態によれば、反応生成物(III)として、一般式(IIIc)
O-CH-CH(OR)-CH-O-CH-CH(OR)-CH-OR (IIIc)
の必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルが、取得されることが好ましい。
一般式(IIIc)において、お互いに独立したRは、水素、ラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-、または、-C(O)-CH(アセチル基)または-C(O)-C(プロピオニル基)、好ましくは-C(O)-CH(アセチル基)から選択されたアシル基であるRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-を示すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも1つラジカルR、少なくとも2つのラジカルRが水素を示さないことを条件とし、および/または、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも1つラジカルRが、ラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-または上記に定義されたRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-を示すことを条件とするものである。
【0114】
特に、特定の実施形態によれば、一般式(IIIc)において、お互いに独立したRは、水素またはラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-を示すものであるが、ただし、 少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRは水素を示さないことを条件とし、および/または、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、ラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-を示すことを条件とするものである。
【0115】
さらに、別の特定の実施形態によれば、一般式(IIIc)において、互いに独立してRは、水素または上記に定義されるようなRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-を示すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが水素を示さないことを条件とし、および/または、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、上記に定義されたRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-を示すことを条件とするものである。
【0116】
さらに、さらに別の特定の実施形態によれば、一般式(IIIc)において、互いに独立したRは、ラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-または上記に定義されるようなRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-を示すことが好ましい。
【0117】
本発明による方法のさらなる特定の実施形態によれば、反応生成物(III)として、特に上記で定義されるような必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸の少なくとも2つの異なるポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルの混合物が、得られることが好ましい。
【0118】
本発明による方法のさらなる特定の実施形態によれば、反応生成物(III)として、特に上記で定義されるように、必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸の少なくとも3つの異なるポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルの混合物が、得られることが好ましい。
【0119】
前述のように、本発明による方法は、通常、溶媒の非存在下および/または溶媒なしで(すなわち、質量反応として、または物質内の反応として、またはいわゆるバルク反応として)実行される。これは、得られた反応生成物が溶媒で汚染されておらず、方法または反応が実行された後、費用とエネルギーを消費する方法で、溶媒を除去して廃棄したり、再利用したりする必要がないという利点を有する。驚くべきことに、それにもかかわらず、この方法または反応は、高い変換率および生産性で進行し、少なくとも本質的に、有意な副生成物の形成はない。
【0120】
本発明による特に好ましいアプローチは、以下の反応または合成スキームによって示される(ここで、反応手順に応じて、個々のエステルまたはそれらの2つ以上の混合物のいずれかが得られる)。
【0121】
【化4】
【0122】
上記で説明したように、上記の反応または合成スキームの後に、任意で、上記で説明したように、任意の残りのまたはまだ遊離のOH-基の官能化を続けることができる。
【0123】
さらなる主題は、本発明の第2の態様によれば、本発明の方法に従って得られる反応生成物、またはそれぞれ上記で定義された本発明の反応生成物(すなわち、必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸の1つまたは複数のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルまたはそれらの混合物)である。
【0124】
特に、本発明の方法に従って得られる反応生成物(III)または本発明の反応生成物(III)(すなわち、(化学)生成物または生成混合物)は、一般式(IIIa)
(RO)-(X)-(OR (IIIa)
の必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルを含むことが好ましい。
一般式(IIIa)において、
・Xは、有機ラジカル、特に4~20個の炭素原子および任意に1~9個の酸素原子を有し、アルキルラジカルまたは(ポリ)アルキルエーテルラジカル、特に(ポリ)アルキレングリコールラジカルから選択され、C-C20-アルキルラジカルまたはC-C20-(ポリ)アルキルエーテルラジカル、特にC-C20-(ポリ)アルキレングリコールラジカルから選択された飽和有機ラジカルを示すものであり、
・それぞれお互いに独立した変数mおよびnは、1~10の整数を示すものであり、
・それぞれお互いに独立したRは、水素、ラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-、または、-C(O)-CH(アセチル基)または-C(O)-C(プロピオニル基)、好ましくは-C(O)-CH(アセチル基)から選択されたアシル基であるRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-示すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが水素を示さないことを条件とし、および/または、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、上記に定義されたRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-を示すことを条件とするものである。
【0125】
特に、基RO-は、ラジカルXの任意の位置にある(好ましくは、少なくとも1つの基RO-が末端である)ことが好ましい。
【0126】
特に、これに関連して、特定の実施形態によれば、一般式(IIIa)において、互いに独立したRは、水素またはラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-を示すことができるものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、水素を示さないということを条件とし、および/または、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、ラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-を示すことを条件とするものである。
【0127】
さらに、別の特定の実施形態によれば、一般式(IIIa)において、お互いに独立したRは、水素または上記に定義されるようなRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-を示すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、水素を示さないということを条件とし、および/または、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、上記定義されるようなRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-を示すことを条件とするものである。
【0128】
さらに、さらに別の特定の実施形態によれば、一般式(IIIa)において、互いに独立したRは、ラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-または上記に定義されるようなRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-を示すことが好ましい。
【0129】
特に、反応生成物(III)は、一般式(IIIb)
O-CH-CH(OR)-CH-[O-CH-CH(OR)-CH-OR (IIIb)
の必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルを含むことが好ましい。
前記一般式(IIIb)において、
・変数pは、1~4の整数、特に1または2の整数、好ましくは1の整数を示すす;
・お互いに独立したRは、水素、ラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-または上記で定義されたRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-示すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、水素を示さないことを条件とし、および/または、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、ラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-または上記で定義されたRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-示すことを条件とするものである。
【0130】
特に、これに関して特定の実施形態によれば、一般式(IIIb)において、互いに独立したRは、水素またはラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-を示すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、水素を示さないことを条件とし、および/または、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、ラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-を示すことを条件とするものである。
【0131】
さらに、別の特定の実施形態によれば、一般式(IIIb)において、お互いに独立したRは、水素または上記で定義されたRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-示すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、水素を示さないことを条件とし、および/または、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、上記で定義されたRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-示すことを条件とするものである。
【0132】
さらに、さらに別の特定の実施形態によれば、前記一般式(IIIb)において、お互いに独立したRは、ラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-または上記で定義されたRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-示すことが好ましい。
【0133】
本発明による方法の特定の実施形態によれば、反応生成物(III)は、一般式(IIIc)
O-CH-CH(OR)-CH-O-CH-CH(OR)-CH-OR (IIIc)
の必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルを有することが好ましい。
前記一般式(IIIc)において、お互いに独立したRは、水素、ラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-、または、-C(O)-CH(アセチル基)または-C(O)-C(プロピオニル基)、好ましくは-C(O)-CH(アセチル基)から選択されたアシル基であるRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-を示すものであるが、ただし、特に少なくとも1つラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、水素を示さないことを条件とし、および/または、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つラジカルRが、ラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-または上記に定義されたRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-を示すことを条件とするものである。
【0134】
特に、これに関する特定の実施形態によれば、一般式(IIIc)において、お互いに独立したRは、水素またはラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-を示すものであるが、ただし、少なくとも1つラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、水素を示さないことを条件とし、および/または、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つラジカルRが、ラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-を示すことを条件とするものである。
【0135】
さらに、別の特定の実施形態によれば、一般式(IIIc)において、お互いに独立したRは、水素または上記に定義されたようなRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-を示すものであるが、ただし、少なくとも1つラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、水素を示さないことを条件とし、および/または、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つラジカルRが、上記に定義されたRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-を示すことを条件とするものである。
【0136】
さらに別の特定の実施形態によれば、一般式(IIIc)において、互いに独立したRは、ラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-、または、上記にて異議したようなRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-を示すことが好ましい。
【0137】
さらに特別の実施形態によれば、前記反応生成物(III)は、必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸の少なくとも2つの異なるポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルからなる混合物を含むことが好ましい(いわゆる、反応生成物(III)として、上記で定義したような必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸の少なくとも2つのポリオールエステル、特にポリグリセロールからなる混合物が得られるものである)。
【0138】
さらなる特定の実施形態によれば、反応生成物(III)は、特に上記で定義されるような必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸の少なくとも3つの異なるポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルの混合物を特に含むことが好ましい(いわゆる、反応生成物(III)として、特に上記に定義されるような必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸の少なくとも3つの異なるポリオールエステル、特にポリリセロールエステルの混合物が、得られるものである)。
【0139】
本発明の主題は、必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルであり、特に上記に定義にしたようなポリオールエステルであり、
前記ポリオールエステルが、一般式(IIIa)
(RO)-(X)-(OR (IIIa)
に対応するものであり、
一般式(IIIa)において、
・Xは、有機ラジカル、特に4~20個の炭素原子を有し、任意に1~9個の酸素原子を有し、好ましくはアルキルラジカルまたは(ポリ)アルキルエーテルラジカル、特に(ポリ)アルキレングリコールラジカルから選択され、より好ましくはC-C20-アルキルラジカル、C-C20-(ポリ)アルキルエーテルラジカル、特にC-C20-(ポリ)アルキレングリコールラジカルから選択される好ましくは飽和有機ラジカルを示すこと、
・それぞれお互いに独立した前記変数mおよびnが、整数1~10を示すこと、
・お互いに独立したRが:水素、ラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-、または、-C(O)-CH(アセチル基)または-C(O)-C(プロピオニル基)、好ましくは-C(O)-CH(アセチル基)から選択されたアシル基であるRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-を示すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、ラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-または上記に定義されるようなRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-を示すことを条件とするものである。
【0140】
特に、基RO-は、ラジカルXの任意の位置にあり得る(好ましくは、少なくとも1つの基RO-が末端である)。
【0141】
特に、特定の実施形態によれば、一般式(IIIa)において、互いに独立したRは、水素またはラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-を示すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、ラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-または上記に定義されるようなRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-を示すことを条件とするものである。
【0142】
さらに、別の特定の実施形態によれば、一般式(IIIa)において、互いに独立したRは、水素または上記で定義されるようなR1を有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-を示すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、ラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-または上記に定義されるようなRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-を示すことを条件とするものである。
【0143】
さらに、さらに別の特定の実施形態によれば、一般式(IIIa)において、互いに独立したRが、ラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-、または、上記に定義されるようなRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-を示すことが好ましい。
【0144】
本発明のさらなる目的はまた、必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル、特に上記で定義されたポリオールエステルであり、
前記ポリオールエステルが、一般式(IIIb)
O-CH-CH(OR)-CH-[O-CH-CH(OR)-CH-OR (IIIb)
に対応するものであり、
前記一般式(IIIb)において、
・変数pは、1~4の整数、特に1または2の整数、好ましくは1の整数を示すし;
・お互いに独立したRは、水素、ラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-または-C(O)-CH(アセチル基)または-C(O)-C(プロピオニル基)、好ましくは-C(O)-CH(アセチル基)から選択されるアシル基であるRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-を示すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、少なくとも2つのラジカルRが、水素を示さないことを条件とし、および/または、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、ラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-または上記で定義されたRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-を示すことを条件とするものである。
【0145】
特に、特別な実施形態によれば、一般式(IIIb)において、お互いに独立したRは、水素またはラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-を示すことが好ましいが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、少なくとも2つのラジカルRが、水素を示さないことを条件とし、および/または、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、ラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-を示すことを条件とするものである。
【0146】
さらに、別の特別な実施形態によれば、一般式(IIIb)において、お互いに独立したRは、上記で定義されたRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-を示すことが好ましいが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、水素を示さないことを条件とし、および/または、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが、上記で定義されたRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-を示すことを条件とするものである。
【0147】
さらに、さらに別の特定の実施形態によれば、一般式(IIIb)において、互いに独立したRは、CH-CH(OH)-CH-C(O)-または上記で定義されたRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-を示すことが好ましい。
【0148】
この場合も、本発明の別の目的はまた、必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル、特に上記で定義されたポリオールエステルであり、
前記ポリオールエステルが、
一般式(IIIc)
O-CH-CH(OR)-CH-O-CH-CH(OR)-CH-OR (IIIc)に対応するものであり、
一般式(IIIc)において、お互いに独立したRは、水素、ラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-、または、-C(O)-CH(アセチル基)または-C(O)-C(プロピオニル基)、好ましくは-C(O)-CH(アセチル基)から選択されたアシル基であるRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-を示すものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが水素を示さないことを条件とし、および/または、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも1つラジカルRが、ラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-または上記に定義されたRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-を示すことを条件とするものである。
【0149】
特に、特定の実施形態によれば、一般式(IIIc)において、互いに独立したRは、水素またはラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-を示すことが好ましいものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが水素を示さないことを条件とし、および/または、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも1つラジカルRが、ラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-を示すことを条件とするものである。
【0150】
特に、特定の実施形態によれば、一般式(IIIc)において、互いに独立したRは、水素または上記に定義されたRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-を示すことが好ましいものであるが、ただし、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも2つのラジカルRが水素を示さないことを条件とし、および/または、少なくとも1つのラジカルR、特に少なくとも1つラジカルRが、上記に定義されたRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-を示すこと条件とするものである。
【0151】
特に、特定の実施形態によれば、一般式(IIIc)において、互いに独立したRは、ラジカルCH-CH(OH)-CH-C(O)-または上記に定義されたRを有するラジカルCH-CH(OR)-CH-C(O)-を示すことが好ましい。
【0152】
本発明のこの態様による本発明のさらなる目的は、特定の実施形態によれば、上記で定義されるような必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸の少なくとも2つの異なるポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルを含む混合物である。
【0153】
この場合も、本発明のこの態様による本発明の別の目的は、別の特定の実施形態によれば、上記で定義したような必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸の少なくとも3つの異なるポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルを含む混合物である。
【0154】
それぞれが本発明の方法によって取得される反応生成物または上記に定義されたような本発明の反応生成物、および/または、それぞれが本発明の方法によって取得される必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル、または、それぞれが上記で定義されたような本発明のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル、および/または、本発明の方法によって取得される混合物、または、上記に定義されたような本発明の混合物が、従来技術と比較して多くの利点および特別な特徴を備えるものである。
【0155】
出願人が驚くべきことに発見したように、本発明の方法によって得られる反応生成物または上記で定義されたような本発明の反応生成物、および/または、本発明の製造方法によって得られる必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル、または、それぞれ上記で定義されたような必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸の本発明のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル、および/または、それぞれ本発明の製造方法によって取得される混合物、または、上記で定義されたような本発明の混合物は、一方で、特に胃腸管で、生理学的に3-ヒドロキシ酪酸またはその塩に変換され、他方で、特に非毒性および許容可能な官能特性に関して、優れた生理学的適合性または耐容性を同時に含むことから、3-ヒドロキシ酪酸またはその塩の前駆体または代謝物として適している。
【0156】
さらに、それぞれが本発明の方法によって得られる反応生成物または上記で定義される本発明の反応生成物、および/または、それぞれが本発明の製造方法によって得られる必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルまたは上記で定義される必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸の本発明のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル、および/または、それぞれ本発明の製造方法によって得られる混合物または上記で定義されるような本発明の混合物は、商業規模であっても、必要な医薬品または薬理学的品質で、簡単にアクセス可能であり、合成ベースで大規模に利用可能である。
【0157】
さらに、それぞれが本発明の方法によって得られる反応生成物または上記で定義される本発明の反応生成物、および/または、それぞれが本発明の製造方法によって得られる必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルまたは上記で定義される必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸の本発明のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル、および/または、それぞれ本発明の製造方法によって得られる混合物または上記で定義されるような本発明の混合物は、必要に応じて、鏡像異性的に純粋または鏡像異性的に濃縮された形態で提供されるものである。
【0158】
さらに、それぞれが本発明の方法によって得られる反応生成物または上記で定義される本発明の反応生成物、および/または、それぞれが本発明の製造方法によって得られる必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルまたは上記で定義される必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸の本発明のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル、および/または、それぞれ本発明の製造方法によって得られる混合物または上記で定義されるような本発明の混合物は、これによって、人体または動物体のケト体療法に関して、効率的な薬理学的薬物標的を示すものである。
【0159】
以下では、本発明の残りの態様をより詳細に説明する。
【0160】
本発明のさらなる主題は、本発明の第3の態様によれば、それぞれが本発明の方法によって得られる反応生成物または上記で定義される本発明の反応生成物、および/または、それぞれが本発明の製造方法によって得られる必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルまたは上記で定義される必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸の本発明のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル、および/または、それぞれ本発明の製造方法によって得られる混合物または上記で定義されるような本発明の混合物を含む医薬組成物、特に薬物または薬物である。
【0161】
特に、本発明のこの態様によれば、本発明は、人体または動物体の疾患の予防的および/または治療的処置のための、または予防的および/または治療的処置における使用のための医薬組成物に関する。これは、特にエネルギー代謝、特に特に頭蓋脳外傷、脳卒中、低酸素症などのケト体代謝の障害に関連する病気、心筋梗塞、リフィーディング症候群、食欲不振、てんかんなどの心血管疾患、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患、グルコーストランスポーター欠損症(GLUT1欠損症)、VL-FAODなどの脂肪代謝性疾患、およびミトコンドリアチオラーゼ欠損症、ハンチントン病などのミトコンドリア病、T細胞リンパ腫、星状細胞腫、膠芽腫などの癌、HIV、リウマチ性関節炎や尿路関節炎などのリウマチ性疾患、慢性炎症性腸疾患、特に潰瘍性大腸炎やクローン病などの消化管の疾患、スフィンゴリピドー症などのライソゾーム病、特にニーマンピック病、糖尿病、そして化学療法の効果または副作用の疾患によって助長される疾患に関するものである。
【0162】
この場合も、本発明の第4の態様によると、本発明のさらなる主題は、特にエネルギー代謝、特に特に頭蓋脳外傷、脳卒中、低酸素症などのケト体代謝の障害に関連する病気、心筋梗塞、リフィーディング症候群、食欲不振、てんかんなどの心血管疾患、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患、グルコーストランスポーター欠損症(GLUT1欠損症)、VL-FAODなどの脂肪代謝性疾患、およびミトコンドリアチオラーゼ欠損症、ハンチントン病などのミトコンドリア病、T細胞リンパ腫、星状細胞腫、膠芽腫などの癌、HIV、リウマチ性関節炎や尿路関節炎などのリウマチ性疾患、慢性炎症性腸疾患、特に潰瘍性大腸炎やクローン病などの消化管の疾患、スフィンゴリピドー症などのライソゾーム病、特にニーマンピック病、糖尿病、そして化学療法の効果または副作用の疾患によって助長される疾患に関する人体または動物体の疾患の予防的および/または治療的処置のための、または予防的および/または治療的処置における使用のための、それぞれが本発明の方法によって得られる反応生成物または上記で定義される本発明の反応生成物、および/または、それぞれが本発明の製造方法によって得られる必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルまたは上記で定義される必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸の本発明のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル、および/または、それぞれ本発明の製造方法によって得られる混合物または上記で定義されるような本発明の混合物である。
【0163】
同様に、本発明の第5の態様によると、本発明のさらなる主題は、特にエネルギー代謝、特に特に頭蓋脳外傷、脳卒中、低酸素症などのケト体代謝の障害に関連する病気、心筋梗塞、リフィーディング症候群、食欲不振、てんかんなどの心血管疾患、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患、グルコーストランスポーター欠損症(GLUT1欠損症)、VL-FAODなどの脂肪代謝性疾患、およびミトコンドリアチオラーゼ欠損症、ハンチントン病などのミトコンドリア病、T細胞リンパ腫、星状細胞腫、膠芽腫などの癌、HIV、リウマチ性関節炎や尿路関節炎などのリウマチ性疾患、慢性炎症性腸疾患、特に潰瘍性大腸炎やクローン病などの消化管の疾患、スフィンゴリピドー症などのライソゾーム病、特にニーマンピック病、糖尿病、そして化学療法の効果または副作用の疾患によって助長される疾患に関する人体または動物体の疾患の予防的および/または治療的処置のための、または予防的および/または治療的処置における使用のための、それぞれが本発明の方法によって得られる反応生成物または上記で定義される本発明の反応生成物、および/または、それぞれが本発明の製造方法によって得られる必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルまたは上記で定義される必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸の本発明のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル、および/または、それぞれ本発明の製造方法によって得られる混合物または上記で定義されるような本発明の混合物の使用である。
【0164】
同様に、本発明の第6の態様によると、本発明のさらなる主題は、予防的および/または治療的治療のため、または飢餓、食事療法または低炭水化物栄養などの異化代謝状態の予防的および/または治療的治療のためのまたは適用のための薬剤を製造するための、それぞれが本発明の方法によって得られる反応生成物または上記で定義される本発明の反応生成物、および/または、それぞれが本発明の製造方法によって得られる必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルまたは上記で定義される必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸の本発明のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル、および/または、それぞれ本発明の製造方法によって得られる混合物または上記で定義されるような本発明の混合物の使用である。
【0165】
同様に、本発明のさらなる主題は、本発明の第7の態様によれば、それぞれが本発明の方法によって得られる反応生成物または上記で定義される本発明の反応生成物、および/または、それぞれが本発明の製造方法によって得られる必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルまたは上記で定義される必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸の本発明のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル、および/または、それぞれ本発明の製造方法によって得られる混合物または上記で定義されるような本発明の混合物を含む食品および/または食品生成物である。
【0166】
特定の実施形態によれば、食品および/または食品生成物は、本質的に、栄養補助食品、機能性食品、新規食品、食品添加物、食品サプリメント、栄養補助食品、パワースナック、食欲抑制剤または強度および/または耐久性のスポーツサプリメントであることが好ましい。
【0167】
最後に、本発明のさらに別の主題は、本発明の第8の態様によれば、食品および/または食品生成物における、それぞれが本発明の方法によって得られる反応生成物または上記で定義される本発明の反応生成物、および/または、それぞれが本発明の製造方法によって得られる必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルまたは上記で定義される必要に応じてアシル化された3-ヒドロキシ酪酸の本発明のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル、および/または、それぞれ本発明の製造方法によって得られる混合物または上記で定義されるような本発明の混合物の使用である。
【0168】
本発明のこの態様によれば、食品および/または食品生成物は、特に、栄養補助食品、機能性食品、新規食品、食品添加物、食品サプリメント、栄養補助食品、パワースナック、食欲抑制剤であり得る。 または強度および/または耐久性のスポーツサプリメントであることが好ましい。
【0169】
さらなる実施形態、本発明の修正および変形は、本発明の範囲を離れることなく、明細書を読むことによって当業者にとっては容易に認識または実現可能である。
【発明を実施するための形態】
【0170】
本発明は、本発明を決して限定することを意図するものではなく、本発明の例示的かつ非限定的な実施および構成を説明することのみを意図する以下の実施例によって例示される。
【0171】
使用される略語
BHB=3-BHB=3-ヒドロキシ酪酸
PG(2)=ジグリセロール:HO-CH-CH(OH)-CH-CH(OH)-CH-OH
PG(3)=ポリグリセロール:HO-CH-CH(OH)-CH-[O-CH-CH(OH)-CH-OH
【0172】
生産例
本発明の製造方法は、以下の実施例によって説明される。関連する一般的な反応スキームは、一般的な明細書の部分に示され、説明される。
【実施例1】
【0173】
ジグリセロールとアセチル化された3-ヒドロキシ酪酸無水物(=3-アセトキシ酪酸無水物)からの3-アセトキシ-BHB-ジグリセロール混合物の生成とそれに続くアセチル基の加水分解
デフレグメーター(部分コンデンサ)と蒸留ブリッジを備えた1,000mlのマルチネックフラスコに、25gの(R)/(S)-3-ヒドロキシ酪酸を95gの酢酸に加える。90gの無水酢酸が、80℃で、N雰囲気下で、1時間以内に反応混合物に加えられる。反応混合物は、80℃で、さらに4~5時間撹拌される。3-アセトキシ酪酸無水物(=アセチル化3-ヒドロキシ酪酸無水物)が形成される。
【0174】
次に、3.5gのジグリセロールが、80℃で反応混合物に添加され、8~10時間撹拌される。反応生成物は、3-アセトキシ酪酸のジグリセロールエステルの混合物(すなわち、アセチル化3-ヒドロキシ酪酸のジグリセロールエステルの混合物)である。
【0175】
形成された副生成物(第1段階からの酢酸と第2段階からの3-アセトキシ酪酸)は、100~120℃で、真空(<50ミリバール)下で蒸留される。特性評価は、GC、GPC、GS-MSによって実行される。
【0176】
次に、反応生成物の一部(すなわち、3-アセトキシ酪酸のジグリセロールエステルの混合物)は、アセチル基の加水分解(酵素の存在下での部分的または選択的加水分解)に供される。この目的のために、反応生成物は、固定化酵素(第1の調製物:シグマ-アルドリッヒまたはメルク社製のNovozym(登録商標)435および第2の調製物:ストレムケミカルズ社製のLipozym(登録商標)435のカンジダアンタルクチカ由来のポリマー担体上のCALBリパーゼ)の存在下で、8時間、50℃で、水性媒体中において反応される。酵素を分離し、続いて蒸留により精製した後、3-ヒドロキシ酪酸のジグリセロールエステルの混合物が加水分解生成物として得られる。特性評価は、GC、GPC、GC-MSによって実行される。
【0177】
3-ヒドロキシ酪酸のジグリセロールエステルの取得された混合物の一部が、クロマトグラフィー的に個々のジグリセロールエステル(すなわち、モノジグリセロールエステル、ジ-ジグリセロールエステル、トリ-ジグリセロールエステルなど)に分離し、個々のジグリセロールエステルがそれぞれ純粋な物質として得られる。
【実施例2】
【0178】
ジグリセロールとアセチル化3-ヒドロキシ酪酸無水物(=3-アセトキシ酪酸無水物)からの3-アセチル-BHB-ジグリセロール混合物のさらなる生成とそれに続くアセチル基の加水分解
実施例1が繰り返されるが、(R)/(S)-3-ヒドロキシ酪酸無水物の反応後、形成された副生成物(酢酸)が、真空(<50ミリバール)下、100~120℃での蒸留により除去され、3-アセトキシ酪酸無水物が得られるものである。特性評価は、GC、GPC、GC-MSによって実行される。
【0179】
続いて、純粋な3-アセトキシ酪酸無水物をジグリセロールと反応させ、精製および分析して(実施例1に記載のように)、3-アセトキシ酪酸のジグリセロールエステルの純粋な混合物を生成する。
【0180】
次に、反応生成物の一部(すなわち、3-アセトキシ酪酸のジグリセロールエステルの混合物)は、それから実施例1に記載のように加水分解され、3-ヒドロキシ酪酸のジグリセロールエステルの混合物を生成する。特性評価は、GC、GPC、GC-MSによって実行される。
【0181】
3-ヒドロキシ酪酸のジグリセロールエステルの得られた混合物の一部は、クロマトグラフィー的に個々のジグリセロールエステル(すなわち、モノ-ジグリセロールエステル、ジ-ジグリセロールエステル、トリ-ジグリセロールエステルなど)に分離され、個々のジグリセロールエステルをそれぞれ純粋な物質として得られるものである。
【実施例3】
【0182】
ジグリセロールとアセチル化3-ヒドロキシ酪酸無水物(=3-アセトキシ酪酸無水物)からの3-アセチル-BHB-ジグリセロール混合物のさらなる生成とそれに続くアセチル基の加水分解
デフレグメーター(部分コンデンサー)と蒸留ブリッジを備えた5,000mlのマルチネックフラスコに、250gの(R)/(S)-3-ヒドロキシ酪酸が、950gの酢酸に加えられる。無水酢酸900gが、N雰囲気下、80℃で、1時間以内に反応混合物に加えられる。反応混合物が、80℃で、さらに4~5時間撹拌される。3-アセトキシ酪酸無水物(=アセチル化3-ヒドロキシ酪酸無水物)が形成される。形成された副生成物(酢酸)は、100~120℃で、真空(<50ミリバール)下、蒸留により除去され、純粋な3-アセトキシ酪酸無水物が得られる。特性評価は、GC、GPC、GC-MSによって実行される。
【0183】
次に、35gのジグリセロールが、80℃で精製された3-アセトキシ酪酸無水物に添加され、8~10時間撹拌される。反応生成物は、3-アセトキシ酪酸のジグリセロールエステルの混合物(すなわち、アセチル化3-ヒドロキシ酪酸のジグリセロールエステルの混合物)である。
【0184】
形成された副生成物(3-アセトキシ酪酸)は、100~120℃で、真空(<50ミリバール)下、蒸留によって除去される。特性評価は、GC、GPC、およびGC-MSによって実行される。
【0185】
次に、反応生成物の一部(すなわち、3-アセトキシ酪酸のジグリセロールエステルの混合物)は、アセチル基の加水分解(酵素の存在下での部分的または選択的加水分解)に供される。この目的のために、反応生成物は、固定化酵素(第1の調製物:シグマ-アルドリッヒまたはメルク社製のNovozym(登録商標)435および第2の調製物:ストレムケミカルズ社製のLipozym(登録商標)435のカンジダアンタルクチカ由来のポリマー担体上のCALBリパーゼ)の存在下で、8時間、50℃で、水性媒体中において反応される。酵素を分離し、続いて蒸留により精製した後、3-ヒドロキシ酪酸のジグリセロールエステルの混合物が加水分解生成物として得られる。特性評価は、GC、GPC、GC-MSによって実行される。
【0186】
3-ヒドロキシ酪酸のジグリセロールエステルの得られた混合物の一部は、クロマトグラフィー的に、個々のジグリセロールエステル(すなわち、モノ-ジグリセロールエステル、ジ-ジグリセロールエステル、トリ-ジグリセロールエステルなど)に分離され、個々のジグリセロールエステルをそれぞれ純粋な物質として得られるものである。
【0187】
3-BHB-ジグリセロールエステル混合物のさらなる製造
ただし、前述した3つの実験は、それぞれ異なるポリオール(つまり、それぞれポリグリセロールPG(3)と1,2-ペンタンジオール)を使用して繰り返される。
【0188】
前述のポリアルコール1,2-ペンタンジオールおよびポリグリセロールPG(3)は、自己触媒的に効率的に目的の生成物に変換される。以前の実験と同等の結果が得られる。精製、分離または分画および加水分解は同じ方法で実行される。
【0189】
1,2-ペンタンジオール、ジグリセロール、およびポリグリセロールPG(3)を使用した実験は、硫酸(HSO)を触媒として使用し、75~110℃の温度で繰り返される。同等の結果が得られる。精製、分離または分画および加水分解は同じ方法で実行される。
【0190】
1,2-ペンタンジオール、ジグリセロール、およびポリグリセロールPG(3)を使用した実験は、塩酸(HCl)を触媒として使用し、75~110℃の温度で繰り返される。同等の結果が得られる。精製、分離または分画および加水分解は同じ方法で実行される。
【0191】
1,2-ペンタンジオール、ジグリセロール、およびポリグリセロールPG(3)を使用した実験は、リン酸(HPO)を触媒として使用し、75~110℃の温度で繰り返される。同等の結果が得られる。精製、分離または分画および加水分解は同じ方法で実行される。
【0192】
特に3-BHBジグリセロールエステルはわずかに苦味があるため、これらのエステルは特に治療用途に効率的な製品群である。したがって、前述の実験は、自己触媒的に、ポリアルコールとしてジグリセロールを使用して、より大規模(2~4kg)に実行される。
【0193】
最初に、前の実験の化学量論的反応条件が、2kgのスケールで適用される(40モル%過剰の3-アセトキシ酪酸無水物)。15時間後、さらなる分析のために反応混合物の一部(約200g)が除去される。これはモノ/ジ-ジグリセロールエステル混合物である。その後、さらに約2kgの3-アセトキシ酪酸無水物が加えられる。この量は、(R)-エナンチオマーにおいてすでに計算されている100モル%の超過分に相当する。目標は、完全なエステルを生成することである。約20~30時間後、一定含有量のジ-PG(2)エステルが得られることがわかる;モノ-ジグリセロールエステル含有量が減少し、トリ-ジグリセロールエステル含有量が増加する。さらなる分析(GPC)は、テトラ-ジグリセロールエステルも形成されたことを示している。
【0194】
過剰の3-アセトキシ酪酸を蒸留した後、アセチル基の加水分解(酵素の存在下での部分的または選択的加水分解)は、固定化酵素(第1の調製物:シグマ-アルドリッヒまたはメルク社製のNovozym(登録商標)435および第2の調製物:ストレムケミカルズ社製のLipozym(登録商標)435のカンジダアンタルクチカ由来のポリマー担体上のCALBリパーゼ)の存在下で、8時間、50℃で、水性媒体中において反応される。酵素を分離し、続いて蒸留により精製した後、3-ヒドロキシ酪酸のジグリセロールエステルの混合物が加水分解生成物として得られる。3-ヒドロキシ酪酸のジグリセロールエステルの混合物は、わずかに苦味があり、官能的に許容され、適合性がある。
【0195】
機能化実験
前の実験で得られたモノ-/ジ-/トリ-/テトラ-ジグリセロールエステル混合物またはそれらのアシル化誘導体、および純粋な形態の個々のジグリセロールエステルまたはそれらからクロマトグラフィー的に分離されたそれらのアシル化類似体は、それぞれ、それに続くC-無水物との反応によって官能化され、残りのすべての、すなわちまだ遊離のOH-基で、完全にエステル化された生成物を得るものである。このための一般的な反応スキームは、一般的な明細書の部分に示され、説明されている。
【0196】
実験は、適切な分析によって確認されるように、C-無水物との反応による意図された官能化が、所望の生成物(すなわち、遊離OH-基のエステル化)をもたらすことを示している。
【0197】
対応する分析によって確認されたように、同等の官能化実験は、より高級なカルボン酸無水物(それぞれC10-、C20-およびC28-カルボン酸無水物)でも実行され、類似の結果(すなわち、遊離OH-基のエステル化)につながる。
【0198】
さらなる機能化の試み
前の実験で得られたモノ-/ジ-/トリ-/テトラ-ジグリセロールエステル混合物またはそれらのアシル化誘導体、および純粋な形態の個々のジグリセロールエステルまたはそれらからクロマトグラフィーで分離されたそれらのアシル化類似体は、それぞれ、続いて3-アセトキシ酪酸無水物との反応によって官能化される。残りのすべての、すなわちまだ遊離のOH-基で完全にエステル化された生成物を得る。
【0199】
実験は、適切な分析によって確認されるように、3-アセトキシ酪酸無水物との反応による意図された官能化が所望の生成物(すなわち、遊離OH-基のエステル化)をもたらすことを示している。
【0200】
生理学的応用試験:インビトロ消化試験
本発明の3-BHB-ジグリセロールエステル混合物の消化実験(分割または開裂実験)
切断実験により、本発明に従って生成された3-BHB-PG(2)エステルまたはそれらの混合物(二量体などの反応副生成物を含む)が、ヒトの胃腸管で切断されることが示される。
【0201】
使用される開始混合物は次のとおりである。
・本発明の方法によって得られた3-BHBモノ-ジグリセロールエステル、3-BHBジ-ジグリセロールエステル、3-BHBトリ-ジグリセロールエステルおよび3-BHBテトラ-ジグリセロールエステルの精製混合物(サンプル1)。
・本発明の方法によって得られたアシル化3-ヒドロキシ酪酸(=3-アセトキシ酪酸)のモノ-ジグリセロールエステル、ジ-ジグリセロールエステル、トリ-ジグリセロールエステルおよびテトラ-ジグリセロールエステルの精製混合物(サンプル2)
・3-BHBモノ-ジグリセロールエステル(サンプル3)
・3-BHBジ-ジグリセロールエステル(サンプル4)
・3-BHBトリ-ジグリセロールエステル(サンプル5)
・アシル化3-ヒドロキシ酪酸(=3-アセトキシ酪酸)のモノ-ジグリセロールエステル(サンプル6)。
・アシル化3-ヒドロキシ酪酸(=3-アセトキシ酪酸)のジ-ジグリセロールエステル(サンプル7)。
・アシル化3-ヒドロキシ酪酸(=3-アセトキシ酪酸)のトリ-ジグリセロールエステル(サンプル8)。
・3-BHBモノ-ジグリセロールエステル、3-BHBジ-ジグリセロールエステル、3-BHBトリ-ジグリセロールエステルおよび3-BHBテトラ-ジグリセロールエステルのC-無水物官能化混合物(サンプル9)。
・3-BHBモノ-ジグリセロールエステル、3-BHBジ-ジグリセロールエステル、3-BHBトリ-ジグリセロールエステルおよび3-BHBテトラ-ジグリセロールエステルの3-アセトキシ酪酸無水物官能化混合物(サンプル10)。
【0202】
人体に近い条件下での切断実験では、3つの培地が調査される。
・胃をシミュレートするFaSSGF培地
・腸管をシミュレートするFaSSIF培地
【0203】
どちらの培地も、英国のバイオレリバント(登録商標)社製のものである。さらに、いくつかの実験では、ブタの膵臓(Panzytrat(登録商標)40,000、Fa.アラガン社製)が追加される。
【0204】
Panzytrat(登録商標)を含む場合またはPanzytrat(登録商標)を含まない場合のFaSSGF培地またはFaSSIF培地における切断実験(両方とも35℃9、24時間)の結果は、サンプルが、Panzytrat(登録商標)を含む場合またはPanzytrat(登録商標)を含まない場合のFaSSGF条件下で加水分解することを示している;これは、主に、培地の低いpH値(pH=1.6)によるものである。FaSSIF条件下では、Panzytrat(登録商標)を使用した低い変換が実行される。
【0205】
すべての実験で、カスケード(テトラエステルがトリエステルになり、トリエステルがジエステルになるなど)が、目的の遊離酸3-BHBまたは3-BHB-FSが得られるまで継続されることがわかる。
【0206】
本発明の3-BHB-PG(2a)エステル混合物のさらなる消化実験(開裂実験)
パンクレアチンによる切断実験
上記のサンプル1~10の2gが、50gの水に溶解され、0.5g(1重量%)のパンクレアチンが加えられる。パンクレアチンは、アラガン社から市販されている製品Panzytrat(登録商標)40,000の形で使用されている。混合物全体は、50℃のホットプレート上で攪拌される。反応の過程は、酸価を経時的に連続して記録することによって測定されおよび監視される。
酸価は観察期間にわたって増加する(3-BHB-ジグリセロールエステル混合物の遊離酸への開裂)。パンクレアチンによる本発明に沿ったエステルの混合物の水性開裂の変換/時間経過は、経時的な酸価の増加を含み、抽出混合物の遊離酸への所望の分解を示す。これは適切な分析によって確認される。実験は、本発明による開始混合物が、対応するケト体療法のための3-ヒドロキシ酪酸の適切な生理学的前駆体であることを証明している。
【0207】
前述の開裂実験は、3-ヒドロキシ酪酸のポリオールエステル、特にポリグリセロールエステルが、特に生理学的に適合可能なまたは生理学的に適合可能な形において存在するそれらの意図された効果に関して、遊離ヒドロキシ酪酸またはその塩の効率的な前駆体または代謝物であることを証明している。