(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】医療用処置具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/29 20060101AFI20231127BHJP
【FI】
A61B17/29
(21)【出願番号】P 2021563535
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 JP2019048696
(87)【国際公開番号】W WO2021117188
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 友朗
(72)【発明者】
【氏名】小杉 知輝
(72)【発明者】
【氏名】栗田 大輔
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-126102(JP,A)
【文献】特開2001-178732(JP,A)
【文献】特開平11-285500(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0155783(US,A1)
【文献】特開平10-099442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00-17/94
A61B 18/00-18/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内に挿入される医療用処置具であって、
線状の本体部と、前記本体部の先端に接続され、体内組織に処置を施すための処置用デバイスと、を備え、
前記本体部は、前記本体部の軸方向に沿って配置された複数のワイヤの少なくとも一部が編むこ
とにより組み合わされた組み合わせ部を有し、
前記組み合わせ部は、複数の第1のワイヤからなる第1の組み合わせ部と、前記第1の組み合わせ部の基端側に位置し、複数の第2のワイヤからなる第2の組み合わせ部と、を有し、
前記第2の組み合わせ部
は、複数の前記第2のワイヤ
を編むことによ
り構成されており、
前記第1の組み合わせ部
は、複数の前記第1のワイヤ
を編むことによ
り構成されており、
前記第1の組み合せ部を構成するための複数の前記第1のワイヤの編み方が
前記第2の組み合せ部を構成するための複数の前記第2のワイヤの編み方とは異なることに起因して、前記第1の組み合わせ部の曲げ剛性は、前記第2の組み合わせ部の曲げ剛性よりも小さい、
医療用処置具。
【請求項2】
請求項1に記載の医療用処置具であって、
前記第1のワイヤと前記第2のワイヤとは、一体となって構成されている、
医療用処置具。
【請求項3】
請求項1に記載の医療用処置具において、
前記第1のワイヤと前記第2のワイヤとは、互いに別体であり、
前記第1のワイヤの基端部と、前記第2のワイヤの先端部とが接続されている、
医療用処置具。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の医療用処置具であって、
前記第1の組み合わせ部を構成する前記第1のワイヤと、前記第2の組み合わせ部を構成する前記第2のワイヤとのうちの少なくとも1本のワイヤは、複数のワイヤが撚り合わされた構成とされている、
医療用処置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、体内に挿入される医療用処置具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、総胆管結石症に対する内視鏡的治療などに用いられる医療用処置具として、結石の除去および破砕などの処置を施すためのバスケット型把持鉗子が知られている(例えば、特許文献1参照)。このバスケット型把持鉗子は、線状の本体部と、本体部の先端に接続され、結石の把持および破砕などを行うためのバスケット部と、本体部を覆う管状のシースと、本体部の基端に接続され、本体部を介してバスケット部を操作するためのハンドル部とを備える。本体部は、例えば金属により形成される。バスケット部は、例えば金属により形成された複数のワイヤ(以下、「バスケットワイヤ」という。)により構成され、バスケット部の径方向に拡張している開状態と、バスケット部の径方向に縮小している閉状態とに変位可能な籠状の部材である。このようなバスケット型把持鉗子においては、医師等の手技者がハンドル部を(本体部の軸の周方向に)回転させることにより、本体部を介してバスケット部を回転させ、手技者がハンドル部を(本体部の軸方向に)を押し引きすることにより、本体部を介してバスケット部を押し引きする。バスケット部をシースの内腔から外部に押出すことにより、縮小していたバスケット部が開き、また、バスケット部を外部からシースの内腔に収納することにより、拡張したバスケット部を閉じることができる。このような操作を行うことにより、結石の把持および破砕などを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したバスケット型把持鉗子においては、手技者がハンドル部を回転させた際におけるバスケット部へのトルク伝達性(以下、単に「バスケット部へのトルク伝達性」ともいう。)が要求され、また、本体部が脈管(例えば、総胆管)の形状に沿って柔軟に湾曲する追従性(以下、単に「本体部の追従性」ともいう。)も要求される。上述したバスケット型把持鉗子においては、バスケット部を備える構成であるため、バスケット部を備えない構成に比べて、よりトルク伝達性を確保することが要求される。
【0005】
しかしながら、上述した従来のバスケット型把持鉗子(上記特許文献1)において、バスケット部へのトルク伝達性を確保するために、例えば、本体部を、より剛性の高い部材により構成することが考えられるが、この構成においては、本体部の追従性を十分には確保することができない。一方、本体部の追従性を確保するために、例えば、本体部を、本体部の軸方向に略平行に並んで配置された複数のワイヤ(以下、「操作ワイヤ」という。)により構成することが考えられるが、この構成においては、バスケット部へのトルク伝達性を十分には確保することができない。このように、この種のバスケット型把持鉗子において、本体部の追従性を確保することと、バスケット部へのトルク伝達性を確保することとを両立させることが課題となっている。
【0006】
なお、このような課題は、線状の本体部と、バスケット部とを備えるバスケット型把持鉗子に限らず、線状の本体部と、体内組織に処置を施すための処置用デバイス(例えば、高周波スネア)とを備える医療用処置具に共通の課題である。
【0007】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な医療用処置具を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される医療用処置具は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
(1)本明細書に開示される医療用処置具は、体内に挿入される医療用処置具であって、線状の本体部と、前記本体部の先端に接続され、体内組織に処置を施すための処置用デバイスと、を備え、前記本体部は、前記本体部の軸方向に沿って配置された複数の第1のワイヤの少なくとも一部が編むことまたは撚ることにより組み合わされた組み合わせ部を有し、前記組み合わせ部は、複数の第1のワイヤからなる第1の組み合わせ部と、前記第1の組み合わせ部の基端側に位置し、複数の第2のワイヤからなる第2の組み合わせ部と、を有し、前記第1の組み合わせ部の曲げ剛性は、前記第2の組み合わせ部の曲げ剛性よりも小さい。
【0010】
本医療用処置具では、上述の通り、前記本体部は、前記本体部の軸方向に沿って配置された複数の第1のワイヤの少なくとも一部が編むことまたは撚ることにより組み合わされた組み合わせ部を有する。そのため、複数の第1のワイヤが編むことなく、かつ、撚ることなく配置された構成に比べて、手技者がハンドル部(前記本体部を介して前記バスケット部を操作するためのハンドル部)を回転させた際に生じるトルクが前記処置用デバイスに伝達するまでに減衰することが抑制される。そのため、本医療用処置具によれば、前記ハンドル部を回転させた際における前記処置用デバイスへのトルク伝達性(以下、単に「前記処置用デバイスへのトルク伝達性」ともいう。)を向上させることができる。
【0011】
さらに、本医療用処置具では、上述の通り、前記組み合わせ部は、複数の第1のワイヤからなる第1の組み合わせ部と、前記第1の組み合わせ部の基端側に位置し、複数の第2のワイヤからなる第2の組み合わせ部と、を有する。前記第1の組み合わせ部の曲げ剛性は、前記第2の組み合わせ部の曲げ剛性よりも小さい。そのため、前記第2の組み合わせ部の曲げ剛性が比較的大きいことにより、前記処置用デバイスへのトルク伝達性を確保することができる。また、前記第1の組み合わせ部の曲げ剛性の曲げ剛性が比較的小さいことにより、前記本体部が脈管(例えば、総胆管)の形状に沿って柔軟に湾曲する追従性(以下、単に「上記本体部の追従性」ともいう。)を確保することもできる。このように、本医療用処置具によれば、上記本体部の追従性を確保することと、前記処置用デバイスへのトルク伝達性を確保することとを両立させることができる。
【0012】
(2)上記医療用処置具において、前記第1のワイヤと前記第2のワイヤとは、一体となって構成されている構成としてもよい。本医療用処置具によれば、前記第1の組み合わせ部を構成する各前記第1のワイヤと、前記第2の組み合わせ部を構成する各前記第2のワイヤとが別体である構成に比べて、前記処置用デバイスへのトルク伝達性を向上させることができる。また、本医療用処置具によれば、前記第1の組み合わせ部を構成する各前記第1のワイヤと、前記第2の組み合わせ部を構成する各前記第2のワイヤとが別体である構成に比べて、簡易な構成(例えば、後述する保持部が不要である点)により、上述した構成とされた前記第1の組み合わせ部および前記第2の組み合わせ部を備える構成を実現することができる。
【0013】
(3)上記医療用処置具において、前記第1のワイヤと前記第2のワイヤとは、互いに別体であり、前記第1のワイヤの基端部と、前記第2のワイヤの先端部とが接続されている構成としてもよい。本医療用処置具においては、前記第1の組み合わせ部を構成する前記第1のワイヤと、前記第2の組み合わせ部を構成する前記第2のワイヤとが一体となって構成される構成に比べて、例えば、前記第1の組み合わせ部を構成する前記第1のワイヤと、前記第2の組み合わせ部を構成する前記第2のワイヤとで、ワイヤの材質,本数,組み合わせ形態などが異なる構成を容易に採用することができるなど、前記第1の組み合わせ部を構成する前記第1のワイヤや、前記第2の組み合わせ部を構成する前記第2のワイヤとして採用できる構成の自由度を向上させることができる。
【0014】
(4)上記医療用処置具において、前記第1の組み合わせ部を構成する前記第1のワイヤと、前記第2の組み合わせ部を構成する前記第2のワイヤとのうちの少なくとも1本のワイヤは、複数のワイヤが撚り合わされた撚り線である構成としてもよい。本医療用処置具によれば、前記処置用デバイスへのトルク伝達性をより向上させることができる。
【0015】
(5)上記医療用処置具において、前記第2の組み合わせ部を構成する前記第2のワイヤは、編むことにより組み合わされた構成とされている構成としてもよい。本医療用処置具によれば、前記第2の組み合わせ部を構成する前記第2のワイヤが編むことにより組み合わされていない構成(例えば、複数の前記第2のワイヤが所定方向に並ぶように並列に配置された構成)に比べて、前記処置用デバイスへのトルク伝達性をより向上させることができる。
【0016】
(6)上記医療用処置具において、前記第1の組み合わせ部を構成する前記第1のワイヤは、編むことにより組み合わされた構成とされている構成としてもよい。本医療用処置具によれば、前記第1の組み合わせ部を構成する前記第1のワイヤが編むことにより組み合わされていない構成(例えば、複数の前記第1のワイヤが所定方向に並ぶように並列に配置された構成)に比べて、前記処置用デバイスへのトルク伝達性をより向上させることができる。
【0017】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば医療用処置具やその製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態におけるバスケット型把持鉗子の縦断面構成を示す説明図
【
図2】第1実施形態におけるバスケット型把持鉗子のシースおよび第1の一体編み込み部の一部分(
図1のPx1)の構成を拡大して示す説明図
【
図3】第1実施形態におけるバスケット型把持鉗子のシースおよび第2の一体編み込み部の一部分(
図1のPx2)の構成を拡大して示す説明図
【
図4】第2実施形態におけるバスケット型把持鉗子のシースおよび第1の一体撚り部の一部分の構成を拡大して示す説明図
【
図5】第2実施形態におけるバスケット型把持鉗子のシースおよび第2の一体撚り部の一部分の構成を拡大して示す説明図
【
図6】第3実施形態におけるバスケット型把持鉗子の縦断面構成を示す説明図
【
図7】第3実施形態におけるバスケット型把持鉗子のシースおよび第1の別体編み込み部の一部分(
図6のPx5)の構成を拡大して示す説明図
【
図8】第3実施形態におけるバスケット型把持鉗子のシースおよび第2の別体編み込み部の一部分(
図6のPx6)の構成を拡大して示す説明図
【
図9】第3実施形態におけるバスケット型把持鉗子の第1の別体編み込み部と第2の別体編み込み部との境界の周辺(
図6のPx7)の構成を拡大して示す説明図
【
図10】変形例におけるバスケット型把持鉗子のシースおよび第1の一体編み込み部の一部分の構成を拡大して示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0019】
A.第1実施形態:
A-1.バスケット型把持鉗子100の構成:
図1は、第1実施形態におけるバスケット型把持鉗子100の縦断面(図中の中央部分)構成を示す説明図である。この「縦断面」とは、バスケット型把持鉗子100の中心を通り、バスケット型把持鉗子100の軸方向(本実施形態では、Z軸方向)に略平行な断面である(以下、同様)。
図1には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。
図1において、Z軸正方向側が、体内に挿入される先端側(遠位側)であり、Z軸負方向側が、医師等の手技者によって操作される基端側(近位側)である(
図2以降の図においても同様)。なお、バスケット型把持鉗子100の先端側の一部と基端側の一部については、縦断面ではなく外観が示されている(
図6でも同様)。
図1では、バスケット型把持鉗子100の一部(後述するシース20の一部と、本体ワイヤ部12の一部)の図示を省略している。
図2は、第1実施形態におけるバスケット型把持鉗子100のシース20および第1の一体編み込み部14の一部分(
図1のPx1)の構成を拡大して示す説明図である。
図3は、第1実施形態におけるバスケット型把持鉗子100のシース20および第2の一体編み込み部15の一部分(
図1のPx2)の構成を拡大して示す説明図である。
図1では、バスケット型把持鉗子100が全体としてZ軸方向に略平行な直線状となった状態を示しているが、バスケット型把持鉗子100は湾曲させることができる程度の柔軟性を有している。本実施形態のバスケット型把持鉗子100は、体内に挿入される医療用処置具であり、総胆管結石症に対する内視鏡的治療などにおいて、結石の除去および破砕などの処置を施すために用いられ得る。
【0020】
図1に示すように、バスケット型把持鉗子100は、ワイヤ複合部10と、シース20と、ハンドル部30とを備える。バスケット型把持鉗子100は、特許請求の範囲における医療用処置具の一例である。
【0021】
ワイヤ複合部10は、例えば金属により形成された4本のワイヤ11により構成された部分であり、線状の本体ワイヤ部12と、体内組織に処置を施すためのバスケットワイヤ部13とを備えている。本体ワイヤ部12は、特許請求の範囲における本体部の一例であり、バスケットワイヤ部13は、特許請求の範囲における処置用デバイスの一例である。
【0022】
本体ワイヤ部12は、ワイヤ複合部10を構成する各ワイヤ11の基端側が互いに組みわされた部分である。本体ワイヤ部12の詳細構成については、後述する。
【0023】
バスケットワイヤ部13は、ワイヤ複合部10を構成する各ワイヤ11の先端側により構成された籠状の部分である。ワイヤ複合部10を構成する各ワイヤ11のうち、バスケットワイヤ部13の先端に位置する部分は、例えばロウ付けや接着剤により、互いに接続されるとともに、例えば金属により形成された先端チップ40に対して接続されている。ワイヤ複合部10を構成する各ワイヤ11のうち、バスケットワイヤ部13の基端側に位置する部分は、例えばロウ付けや接着剤により、互いに接続されている。尚、ワイヤ複合部10を構成するワイヤ11の本数は、複数であればよく、4本に限られるものではない。また、バスケットワイヤ部13は、複数のワイヤ11により形成されていなくてもよく、複数のワイヤ11とは別に形成された他の複数のワイヤ(図示しない)により形成されていてもよい。その場合、他の複数のワイヤの基端と、複数のワイヤ11の先端とが接合されることでワイヤ複合部10が構成される。
【0024】
シース20は、例えば樹脂または金属により形成され、ワイヤ複合部10の略全体を覆う管状の部材である。シース20の形状は、ワイヤ複合部10を挿通するための内腔を有する筒状であればよく、コイル体により形成されていてもよい。
【0025】
ハンドル部30の先端は、本体ワイヤ部12を構成する各ワイヤ11の基端に接続されている。手技者がハンドル部30を(本体ワイヤ部12の軸の周方向に)回転させることにより、本体ワイヤ部12を介してバスケットワイヤ部13を回転させ、手技者がハンドル部30を(本体ワイヤ部12の軸方向に)を押し引きすることにより、シース20の内腔に挿通されていたバスケットワイヤ部13がシース20の外部に移動し、または、シース20の外部にあるバスケットワイヤ部13をシース20の内腔に移動する。これにより、バスケットワイヤ部13は、シース20の内壁により押圧されて収縮された、閉じた状態と、シース20の内腔から外部に移動することにより、シース20の内壁による押圧から解放されて拡張された、開いた状態とに移行することができる。このようにバスケットワイヤ部13を開閉させる操作を行うことにより、結石の把持および破砕などを行う。なお、
図1では、本体ワイヤ部12(の略全体)がシース20に覆われており、バスケットワイヤ部13がシース20に覆われていない状態が示されているが、
図1の状態において、後述するハンドル部30によって引く操作が行われた際には、バスケットワイヤ部13がシース20に覆われた状態となる。
【0026】
A-2.本体ワイヤ部12の詳細構成:
次に、第1実施形態の本体ワイヤ部12の詳細構成について説明する。
図2は、第1実施形態におけるバスケット型把持鉗子100のシース20および第1の一体編み込み部14の一部分(
図1のPx1)の構成を拡大して示す説明図である。
【0027】
上述したように、本体ワイヤ部12は、4本のワイヤ11により構成されている。
図1に示すように、本体ワイヤ部12の軸方向(本実施形態では、Z軸方向)に沿って配置された4本のワイヤ11が編むことにより組み合わされた第1の組み合わせ部C1を有する。第1の組み合わせ部C1は、第1の一体編み込み部14と、第1の一体編み込み部14の基端側に位置する第2の一体編み込み部15とを有する。第1の一体編み込み部14は、本体ワイヤ部12の先端側に位置し、第2の一体編み込み部15は、本体ワイヤ部12の基端側に位置している。
図2および
図3に示すように、第1の一体編み込み部14および第2の一体編み込み部15は、本体ワイヤ部12の軸方向(本実施形態では、Z軸方向)に沿って配置された上述の4本のワイヤ11(の基端側)により構成されている。第1の一体編み込み部14は、特許請求の範囲における第1の組み合わせ部の一例であり、第2の一体編み込み部15は、特許請求の範囲における第2の組み合わせ部の一例である。以下において、第1の一体編み込み部14を「第1の組み合わせ部C1」ともいい、第2の一体編み込み部15を「第2の組み合わせ部C2」ともいう。
【0028】
図2に示すように、第1の一体編み込み部14は、上述した4本のワイヤ11(のうち、本体ワイヤ部12の先端側に位置する部分)が編むことにより組み合わされることにより形成されている。ここでいう「編む」とは、複数のワイヤ(本実施形態では、4本のワイヤ11)が互いに交差しながら組み合わされていることを意味する(以下、同様)。より具体的には、第1の一体編み込み部14においては、4本のワイヤ11が第1の組み合わせ形態である四つ編みにより組み合わされている。四つ編みは、編み目の形状が、4本中の2本のワイヤにより形成された輪の中で、4本中の残りの2本のワイヤが交差するような形状を有する。なお、本実施形態のバスケット型把持鉗子100は、本体ワイヤ部12(
図2の状態では、第1の一体編み込み部14)を覆う管状部材50を備えており、これにより、各ワイヤ11の接続が解かれることにより(本体ワイヤ部12の径方向に)分散することが抑制される。なお、第1の一体編み込み部14を構成する各ワイヤ11(のうち、本体ワイヤ部12の先端側に位置する部分)は、特許請求の範囲における第1のワイヤの一例である。
【0029】
図3に示すように、第2の一体編み込み部15は、4本のワイヤ11(のうち、本体ワイヤ部12の基端側に位置する部分)が編むことにより組み合わされることにより形成されている。より具体的には、第2の一体編み込み部15(の全体)は、4本のワイヤ11が第2の組み合わせ形態であるフィッシュボーンにより組み合わされている。フィッシュボーンは、編み目の形状が、4本のワイヤそれぞれが中央の長手方向の軸線(本体ワイヤ部12の中心を通り、本体ワイヤ部12の軸方向に延びる直線)上で交わるような形状を有する。なお、第2の一体編み込み部15を構成する各ワイヤ11(のうち、本体ワイヤ部12の基端側に位置する部分)は、特許請求の範囲における第2のワイヤの一例である。
【0030】
従って、第1実施形態のバスケット型把持鉗子100では、第1の一体編み込み部14を構成するワイヤ(の一部)と、第2の一体編み込み部15を構成するワイヤ(の一部)とは、1体となって構成されている。言い換えれば、別々に形成された2つの4本のワイヤを、溶着、接着などの方法により接合することなく、本体ワイヤ部12(第1の一体編み込み部14と第2の一体編み込み部15)を構成している。
【0031】
上述したように、例えば第1の組み合わせ形態と第2の組み合わせ形態とを互いに異なる構造とすることにより、第1の一体編み込み部14の曲げ剛性を第2の一体編み込み部15の曲げ剛性よりも小さくすることができる。ただし、第1の組み合わせ形態と、第2の組み合わせ形態のような、組み合わせ形態のみによって曲げ剛性が一義的に決定することはなく、それぞれの組み合わせ形態を構成する4本のワイヤ11の線径や材料により、曲げ剛性は変化する。例えば、上述の組み合わせ形態に関わらず、第1の一体編み込み部14を構成する4本のワイヤ11の線径が、第2の一体編み込み部15を構成する4本のワイヤ11より細い場合、言い換えると、本体ワイヤ部12において、4本のワイヤ11の線径が基端側より先端側の方が細い場合、第1の組み合わせ部C1の曲げ剛性を、第2の組み合わせ部C2の曲げ剛性よりも小さくすることができる。また同様に、第2の組み合わせ形態が第1の組み合わせ部C1を構成し、第1の組み合わせ形態が第2の組み合わせ部C2を構成する場合においても、4本のワイヤ11の線径や材料により、第1の組み合わせ部C1の曲げ剛性を、第2の組み合わせ部C2の曲げ剛性よりも小さくすることができる。つまり、第1の一体編み込み部14の曲げ剛性を、第2の一体編み込み部15の曲げ剛性よりも小さくすることができる。また同様に、第2の組み合わせ形態が第1の一体編み込み部14を構成し、第1の組み合わせ形態が第2の一体編み込み部15を構成する場合においても、4本のワイヤ11の線径や材料により、第1の一体編み込み部14の曲げ剛性を、第2の一体編み込み部15の曲げ剛性よりも小さくすることができる。
【0032】
A-3.第1実施形態の効果:
以上説明したように、第1実施形態のバスケット型把持鉗子100は、体内に挿入される医療用処置具であって、線状の本体ワイヤ部12と、本体ワイヤ部12の先端に接続され、体内組織に処置を施すためのバスケットワイヤ部13とを備える。本体ワイヤ部12は、本体ワイヤ部12の軸方向(本実施形態では、Z軸方向)に沿って配置された4本のワイヤ11が編むことにより組み合わされた第1の組み合わせ部C1を有する。第1の組み合わせ部C1は、4本のワイヤ11(のうち、本体ワイヤ部12の先端側に位置する部分)からなる第1の一体編み込み部14と、第1の一体編み込み部14の基端側に位置し、4本のワイヤ11(のうち、本体ワイヤ部12の基端側に位置する部分)からなる第2の一体編み込み部15とを有する。第1の一体編み込み部14の曲げ剛性は、第2の一体編み込み部15の曲げ剛性よりも小さい。
【0033】
第1実施形態のバスケット型把持鉗子100では、上述の通り、本体ワイヤ部12は、4本のワイヤ11が編むことにより組み合わされた第1の組み合わせ部C1を有する。そのため、4本のワイヤ11が編むことなく(かつ、撚ることなく)配置された構成に比べて、手技者がハンドル部30を回転させた際に生じるトルクがバスケットワイヤ部13に伝達するまでに減衰することが抑制される。そのため、第1実施形態のバスケット型把持鉗子100によれば、ハンドル部30を回転させた際におけるバスケットワイヤ部13へのトルク伝達性(以下、単に「バスケットワイヤ部13へのトルク伝達性」ともいう。)を向上させることができる。
【0034】
さらに、第1実施形態のバスケット型把持鉗子100では、上述の通り、第1の組み合わせ部C1は、4本のワイヤ11(のうち、本体ワイヤ部12の先端側に位置する部分)からなる第1の一体編み込み部14と、第1の一体編み込み部14の基端側に位置し、4本のワイヤ11(のうち、本体ワイヤ部12の基端側に位置する部分)からなる第2の一体編み込み部15とを有する。第1の一体編み込み部14の曲げ剛性は、第2の一体編み込み部15の曲げ剛性よりも小さい。そのため、第2の一体編み込み部15の曲げ剛性が比較的大きいことにより、バスケットワイヤ部13へのトルク伝達性を確保することができる。また、第1の一体編み込み部14の曲げ剛性の曲げ剛性が比較的小さいことにより、本体ワイヤ部12が脈管(例えば、総胆管)の形状に沿って柔軟に湾曲する追従性(以下、単に「本体ワイヤ部12の追従性」ともいう。)を確保することもできる。このように、第1実施形態のバスケット型把持鉗子100によれば、本体ワイヤ部12の追従性を確保することと、バスケットワイヤ部13へのトルク伝達性を確保することとを両立させることができる。
【0035】
また、第1実施形態のバスケット型把持鉗子100では、第1の一体編み込み部14を構成するワイヤ(の一部)と、第2の一体編み込み部15を構成するワイヤ(の一部)とは、1体となって構成されている。言い換えれば、別々に形成された2つの4本のワイヤを、溶着、接着などの方法により接合することなく、本体ワイヤ部12を構成している。そのため、第1実施形態のバスケット型把持鉗子100によれば、第1の一体編み込み部14を構成するワイヤ11と、第2の一体編み込み部15を構成するワイヤ11とが別体である構成に比べて、バスケットワイヤ部13へのトルク伝達性をより向上させることができる。また、第1実施形態のバスケット型把持鉗子100によれば、第1の一体編み込み部14を構成するワイヤと、第2の一体編み込み部15を構成するワイヤとが別体である構成に比べて、簡易な構成により、上述した構成とされた第1の一体編み込み部14および第2の一体編み込み部15を備える構成を実現することができる。
【0036】
また、第1実施形態のバスケット型把持鉗子100では、第1の一体編み込み部14および第2の一体編み込み部15を構成するワイヤ11を構成するそれぞれのワイヤは、複数のワイヤが撚り合わされた撚り線であってもよい。その場合、第1実施形態のバスケット型把持鉗子100によれば、バスケットワイヤ部13へのトルク伝達性をより向上させることができる。
【0037】
また、第1実施形態のバスケット型把持鉗子100では、第2の一体編み込み部15を構成するワイヤ11は、編むことにより組み合わされた構成とされている。そのため、第1実施形態のバスケット型把持鉗子100によれば、第2の一体編み込み部15を構成するワイヤ11が編むことにより組み合わされていない構成(例えば、4本のワイヤ11が所定方向に並ぶように並列に配置された構成)に比べて、バスケットワイヤ部13へのトルク伝達性をより向上させることができる。
【0038】
また、第1実施形態のバスケット型把持鉗子100では、第1の一体編み込み部14を構成するワイヤ11は、編むことにより組み合わされた構成とされている。そのため、第1実施形態のバスケット型把持鉗子100によれば、第1の一体編み込み部14を構成するワイヤ11が編むことにより組み合わされていない構成(例えば、4本のワイヤ11が所定方向に並ぶように並列に配置された構成)に比べて、バスケットワイヤ部13へのトルク伝達性をより向上させることができる。
【0039】
B.第2実施形態:
B-1.バスケット型把持鉗子100Aの構成:
図4は、第2実施形態におけるバスケット型把持鉗子100Aのシース20および第1の一体撚り部14Aの一部分の構成を拡大して示す説明図である。
図5は、第2実施形態におけるバスケット型把持鉗子100Aのシース20および第2の一体撚り部15Aの一部分の構成を拡大して示す説明図である。
図4および
図5に示すように、第2実施形態のバスケット型把持鉗子100Aの構成は、上述した第1実施形態のバスケット型把持鉗子100の構成と比較して、本体ワイヤ部12Aの構成が異なっている(より具体的には、本体ワイヤ部12Aを構成するワイヤ11Aの組み合わせ形態が異なっている)。以下では、第2実施形態のバスケット型把持鉗子100Aの構成の内、上述した第1実施形態のバスケット型把持鉗子100の構成と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0040】
第2実施形態のワイヤ複合部10Aは、第1実施形態のワイヤ複合部10Aを構成する4本のワイヤ11と同様の4本のワイヤ11Aにより構成された部分であり、線状の本体ワイヤ部12Aと、体内組織に処置を施すためのバスケットワイヤ部13とを備えている。
図4および
図5に示すように、第2実施形態の本体ワイヤ部12Aは、第1実施形態における第1の組み合わせ部C1に換えて、第2の組み合わせ部C2を備え、第1実施形態における第1の一体編み込み部14に換えて、第1の一体撚り部14Aを備え、第1実施形態における第2の一体編み込み部15に換えて、第2の一体撚り部15Aを備えている。本体ワイヤ部12Aは、特許請求の範囲における本体部の一例である。第1の一体撚り部14Aは、特許請求の範囲における第1の組み合わせ部の一例であり、第2の一体撚り部15Aは、特許請求の範囲における第2の組み合わせ部の一例である。第1の一体撚り部14Aを構成する各ワイヤ11A(のうち、本体ワイヤ部12Aの先端側に位置する部分)は、特許請求の範囲における第1のワイヤの一例であり、第2の一体撚り部15Aを構成する各ワイヤ11A(のうち、本体ワイヤ部12Aの基端側に位置する部分)は、特許請求の範囲における第2のワイヤの一例である。
【0041】
図4に示すように、第1の一体撚り部14Aは、本体ワイヤ部12Aの軸方向(本実施形態では、Z軸方向)に沿って配置された4本のワイヤ11A(のうち、本体ワイヤ部12Aの先端側に位置する部分)が撚ることにより組み合わされることにより形成されている(ここでいう「撚る」とは、複数のワイヤ(本実施形態では、4本のワイヤ11A)が互いに交差せずに一定方向に螺旋状に巻かれ、それにより組み合わされていることを意味する(以下、同様))。
図5に示すように、第2の一体撚り部15Aは、第1の一体撚り部14Aの基端側に位置し、本体ワイヤ部12Aの軸方向に沿って配置された4本のワイヤ11A(のうち、本体ワイヤ部12Aの基端側に位置する部分)が撚ることにより組み合わされることにより形成されている。第1の一体撚り部14Aを構成する4本のワイヤ11Aの撚り方向と、第2の一体撚り部15Aを構成する4本のワイヤ11Aの撚り方向は互いに同一でもよく、異なっていてもよいが、同一である方が好ましい。第1の一体撚り部14Aの曲げ剛性は、第2の一体撚り部15Aの曲げ剛性よりも小さい。
【0042】
B-2.第2実施形態の効果:
以上説明したように、第2実施形態のバスケット型把持鉗子100Aは、体内に挿入される医療用処置具であって、線状の本体ワイヤ部12Aと、本体ワイヤ部12Aの先端に接続され、体内組織に処置を施すためのバスケットワイヤ部13とを備える。本体ワイヤ部12Aは、本体ワイヤ部12Aの軸方向(本実施形態では、Z軸方向)に沿って配置された4本のワイヤ11Aが撚ることにより組み合わされた第2の組み合わせ部C2を有する。第2の組み合わせ部C2は、4本のワイヤ11A(のうち、本体ワイヤ部12Aの先端側に位置する部分)からなる第1の一体撚り部14Aと、第1の一体撚り部14Aの基端側に位置し、4本のワイヤ11A(のうち、本体ワイヤ部12Aの基端側に位置する部分)からなる第2の一体撚り部15Aとを有する。第1の一体撚り部14Aの曲げ剛性は、第2の一体撚り部15Aの曲げ剛性よりも小さい。そのため、第2実施形態のバスケット型把持鉗子100Aによれば、第1実施形態の場合と同様の理由から、ハンドル部30を回転させた際におけるバスケット型把持鉗子100Aの先端部(バスケットワイヤ部13や本体ワイヤ部12A)へのトルク伝達性(以下、単に「バスケットワイヤ部13へのトルク伝達性」ともいう。)を向上させることができる。さらに、第2実施形態のバスケット型把持鉗子100Aによれば、本体ワイヤ部12Aの追従性を確保することと、バスケットワイヤ部13へのトルク伝達性を確保することとを両立させることができる。
【0043】
また、第2実施形態のバスケット型把持鉗子100Aでは、第1の一体撚り部14Aを構成するワイヤと、第2の一体撚り部15Aを構成するワイヤとは、1体となって構成されている。そのため、第2実施形態のバスケット型把持鉗子100Aによれば、第1の一体撚り部14Aを構成するワイヤ11Aと、第2の一体撚り部15Aを構成するワイヤ11Aとが別体である構成に比べて、バスケットワイヤ部13へのトルク伝達性をより向上させることができる。また、第2実施形態のバスケット型把持鉗子100Aによれば、第1の一体撚り部14Aを構成するワイヤと、第2の一体撚り部15Aを構成するワイヤとが別体である構成に比べて、簡易な構成により、上述した構成とされた第1の一体撚り部14Aおよび第2の一体撚り部15Aを備える構成を実現することができる。
【0044】
また、第2実施形態のバスケット型把持鉗子100Aでは、第1の一体撚り部14Aおよび第2の一体撚り部15Aを構成するワイヤ11Aを構成するそれぞれのワイヤは、複数のワイヤが撚り合わされた撚り線であってもよい。その場合、第2実施形態のバスケット型把持鉗子100Aによれば、バスケットワイヤ部13へのトルク伝達性をより向上させることができる。
【0045】
C.第3実施形態:
C-1.バスケット型把持鉗子100Bの構成:
図6は、第3実施形態におけるバスケット型把持鉗子100Bの縦断面構成を示す説明図である。なお、
図6では、バスケット型把持鉗子100Bの一部(シース20の一部と、後述する本体ワイヤ部12Bの一部)の図示を省略している。
図7は、第3実施形態におけるバスケット型把持鉗子100Bのシース20および第1の別体編み込み部14Bの一部分(
図6のPx4)の構成を拡大して示す説明図である。
図8は、第3実施形態におけるバスケット型把持鉗子100Bのシース20および第2の別体編み込み部15Bの一部分(
図6のPx5)の構成を拡大して示す説明図である。
図9は、第3実施形態におけるバスケット型把持鉗子100Bの第1の別体編み込み部14Bと第2の別体編み込み部15Bとの境界の周辺(
図6のPx6)の構成を拡大して示す説明図である。
図6~
図9に示すように、第3実施形態におけるバスケット型把持鉗子100Bの構成は、上述した第1実施形態のバスケット型把持鉗子100の構成と比較して、本体ワイヤ部12Bの構成が異なっている(第1の別体編み込み部14Bを構成するワイヤ110Bと、第2の別体編み込み部15Bを構成するワイヤ111Bとが別体である点などで異なっている)。以下では、第3実施形態におけるバスケット型把持鉗子100Bの構成の内、上述した第1実施形態のバスケット型把持鉗子100の構成と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0046】
第3実施形態のワイヤ複合部10Bは、線状の本体ワイヤ部12Bと、体内組織に処置を施すためのバスケットワイヤ部13Bとを備えている。本体ワイヤ部12の軸方向(本実施形態では、Z軸方向)に沿って配置された複数のワイヤ(後述する4本のワイヤ110Bと5本のワイヤ111B)が編むことにより組み合わされた第3の組み合わせ部C3を有する。第3の組み合わせ部C3は、第3実施形態の本体ワイヤ部12Bは、4本のワイヤ11B(のうち、本体ワイヤ部12Bの先端側に位置する部分)からなる第1の別体編み込み部14Bと、第1の別体編み込み部14Bの基端側に位置し、4本のワイヤ11B(のうち、本体ワイヤ部12Bの基端側に位置する部分)からなる第2の別体編み込み部15Bとを備えている本体ワイヤ部12Bは、特許請求の範囲における本体部の一例である。第1の別体編み込み部14Bは、特許請求の範囲における第1の組み合わせ部の一例であり、第2の別体編み込み部15Bは、特許請求の範囲における第2の組み合わせ部の一例である。
【0047】
本実施形態では、次述するように、第1の別体編み込み部14Bを構成するワイヤ110Bと、第2の別体編み込み部15Bを構成するワイヤ111Bとは、互いに別体である。第1の別体編み込み部14Bを構成する各ワイヤ110Bは、特許請求の範囲における第1のワイヤの一例であり、第2の別体編み込み部15Bを構成する各ワイヤ111Bは、特許請求の範囲における第2のワイヤの一例である。
【0048】
第1の別体編み込み部14Bは、例えば金属により形成された4本のワイヤ110Bが編むことにより組み合わされることにより形成されている。より具体的には、第1の別体編み込み部14Bを構成する4本のワイヤ110Bは、上述の第1の組み合わせ形態(四つ編み)により組み合わされている。第2の別体編み込み部15Bを構成する5本のワイヤ111Bは、例えば金属により形成された5本のワイヤ111Bが編むことにより組み合わされることにより形成されている。より具体的には、第2の別体編み込み部15Bを構成する5本のワイヤ111Bは、第3の組み合わせ形態である五つ編みにより組み合わされている。第3の組み合わせ形態は、組み合わされた編み目が、5本中の2本のワイヤにより形成された輪の中で、5本中の残りの3本のワイヤが交差するような形状である。従って、第2の別体編み込み部15Bを構成するワイヤ111Bの本数は、第1の別体編み込み部14Bを構成するワイヤ110Bの本数よりも多い(従って、第1の別体編み込み部14Bを構成するワイヤ110Bの本数と、第2の別体編み込み部15Bを構成するワイヤ111Bの本数とは、互いに異なっている)。第1の一体編み込み部14および第2の一体編み込み部15の構成が以上のような構成であることにより、第1の一体編み込み部14の曲げ剛性は、第2の一体編み込み部15の曲げ剛性よりも小さい。
【0049】
図6および
図9に示すように、第3実施形態のバスケット型把持鉗子100Bは、第1の別体編み込み部14Bを構成する各ワイヤ110Bの基端と、第2の別体編み込み部15Bを構成する各ワイヤ111Bと先端を保持する保持部60を備えている。保持部60は、例えばステンレスなどの金属により形成された部材であり、
図9に示すように、本実施形態では、本体ワイヤ部12Bの軸方向に略直交する方向を軸方向(本実施形態では、Y軸方向)するパイプ状に形成されている。第1の別体編み込み部14Bを構成する各ワイヤ110Bの基端と、第2の別体編み込み部15Bの先端は、保持部60の内腔に挿入されており、例えばロウ付けや接着剤を保持部60の内腔に流し込むことにより接続されている。本体ワイヤ部12Bが以上のような構成であることにより、第3実施形態のバスケット型把持鉗子100Bにおいても、手技者がハンドル部30を(本体ワイヤ部12の軸の周方向に)回転させることにより、本体ワイヤ部12Bを介してバスケットワイヤ部13Bを回転させることが可能である。
【0050】
C-2.第3実施形態の効果:
【0051】
以上説明したように、第3実施形態のバスケット型把持鉗子100Bは、体内に挿入される医療用処置具であって、線状の本体ワイヤ部12Bと、本体ワイヤ部12Bの先端に接続され、体内組織に処置を施すためのバスケットワイヤ部13Bとを備える。本体ワイヤ部12Bは、本体ワイヤ部12Bの軸方向(本実施形態では、Z軸方向)に沿って配置された4本のワイヤ11Bが編むことにより組み合わされた第3の組み合わせ部C3を有する。第3の組み合わせ部C3は、4本のワイヤ11B(のうち、本体ワイヤ部12Bの先端側に位置する部分)からなる第1の別体編み込み部14Bと、第1の別体編み込み部14Bの基端側に位置し、4本のワイヤ11B(のうち、本体ワイヤ部12Bの基端側に位置する部分)からなる第2の別体編み込み部15Bとを有する。第1の別体編み込み部14Bの曲げ剛性は、第2の別体編み込み部15Bの曲げ剛性よりも小さい。上述の構成より、第3実施形態のバスケット型把持鉗子100Bによれば、第1実施形態の場合と同様の理由から、ハンドル部30を回転させた際におけるバスケットワイヤ部13Bへのトルク伝達性(以下、単に「バスケットワイヤ部13Bへのトルク伝達性」ともいう。)を向上させることができる。さらに、第3実施形態のバスケット型把持鉗子100Bによれば、本体ワイヤ部12Bの追従性を確保することと、バスケットワイヤ部13Bへのトルク伝達性を確保することとを両立させることができる。
【0052】
また、第3実施形態のバスケット型把持鉗子100Bでは、第1の別体編み込み部14Bを構成するワイヤ110Bと、第2の別体編み込み部15Bを構成するワイヤ111Bとは、互いに別体である。第1の別体編み込み部14Bを構成するワイヤ110Bの基端部と、第2の別体編み込み部15Bを構成するワイヤ111Bの先端部とが接続されている。そのため、第3実施形態のバスケット型把持鉗子100Bにおいては、第1の別体編み込み部14Bを構成するワイヤ110Bと、第2の別体編み込み部15Bを構成するワイヤ111Bとが一体となって構成される構成に比べて、例えば、第1の別体編み込み部14Bを構成するワイヤ110Bと、第2の別体編み込み部15Bを構成するワイヤ111Bとで、ワイヤの材質,本数,組み合わせ形態などが異なる構成を容易に採用することができるなど、第1の別体編み込み部14Bを構成するワイヤ110Bや、第2の別体編み込み部15Bを構成するワイヤ111Bとして採用できる構成の自由度を向上させることができる。
【0053】
また、第3実施形態のバスケット型把持鉗子100Bでは、第1の別体編み込み部14Bを構成するワイヤ110Bを構成するそれぞれのワイヤは、複数のワイヤが撚り合わされた構成とされていてもよい。その場合、第3実施形態のバスケット型把持鉗子100Bによれば、バスケットワイヤ部13Bへのトルク伝達性をより向上させることができる。
【0054】
また、第3実施形態のバスケット型把持鉗子100Bでは、第2の別体編み込み部15Bを構成するワイヤ111Bを構成するそれぞれのワイヤは、複数のワイヤが撚り合わされた構成とされている。そのため、第3実施形態のバスケット型把持鉗子100Bによれば、バスケットワイヤ部13Bへのトルク伝達性をより向上させることができる。
【0055】
D.変形例:
【0056】
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0057】
上記実施形態におけるバスケット型把持鉗子100、100A、100Bの構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。
【0058】
例えば、上記第実施形態において、第1の一体編み込み部14の曲げ剛性が、第2の一体編み込み部15の曲げ剛性よりも小さい、という条件を満たす範囲において、第1の一体編み込み部14および第2の一体編み込み部15の構成は、種々変形可能である。例えば、第1の一体編み込み部14および第2の一体編み込み部15の少なくとも一方を構成するワイヤ11の本数や組み合わせ形態は、種々変形可能である(第2実施形態、第3実施形態、上記変型例においても同様に種々変形可能)。また、上記第1実施形態において、第1の一体編み込み部14を構成するワイヤ11の編み込みのピッチを、第2の一体編み込み部15を構成するワイヤ11の編み込みのピッチよりも大きくすることにより、第1の一体編み込み部14の曲げ剛性が、第2の一体編み込み部15の曲げ剛性よりも小さい構成としてもよい。なお、ここでいう「ある組み合わせ部Aを構成するワイヤの編み込みのピッチ」とは、ある組み合わせ部Aを構成する複数のワイヤのうちの任意の2本のワイヤが交差するある部分と、その隣で当該2本のワイヤが交差する部分との間の(組み合わせ部Aの軸方向の)距離である。例えば、第2の一体編み込み部15を構成するワイヤ11の編み込みのピッチを、
図2に示す第1の一体編み込み部14を構成するワイヤ11のピッチと同程度のピッチ(以下、「第1のピッチ」という。)とし、第1の一体編み込み部14を構成するワイヤ11のピッチを、
図10に示すように、第1のピッチよりも大きくしてもよい。なお、
図10では、第1の一体編み込み部14を構成するワイヤ11の編み込みのピッチPが示されている。また、上記第3実施形態において、第1の別体編み込み部14Bを構成する各ワイヤ110Bの径を、第2の別体編み込み部15Bを構成する各ワイヤ111Bの径よりも小さくすることにより、第1の別体編み込み部14Bの曲げ剛性が、第2の別体編み込み部15Bの曲げ剛性よりも小さい構成としてもよい(上記変型例においても同様に種々変形可能)。また、上記実施形態(または変型例、以下同様)において、第1の一体編み込み部14および第2の一体編み込み部15の少なくとも一方を構成する複数のワイヤ11、11A、110B、111Bは、編むことにより組み合わされた部分と、撚ることにより組み合わされた部分とが混在する構成であってもよい。
【0059】
また、上記第1実施形態では、第1の一体編み込み部14および第2の一体編み込み部15を構成するワイヤ11を構成するそれぞれのワイヤは、複数のワイヤが撚り合わされた撚り線であってもよいが、第1の一体編み込み部14および第2の一体編み込み部15を構成する各ワイヤ11のうちのいずれかのワイヤ11のみにおける当該ワイヤ11を構成するそれぞれのワイヤが、複数のワイヤが撚り合わされた撚り線であってもよい(第2実施形態、第3実施形態、上記変型例においても同様に種々変形可能)。この場合、それぞれの撚り線の撚り方向は、互いに同一でもよく、異なっていてもよいが、同一である方が好ましい。また、第1の一体編み込み部14および第2の一体編み込み部15の少なくとも一方を構成するワイヤ11を構成するワイヤの本数も、種々変形可能である。
【0060】
また、上記実施形態(または上記変型例、以下同様)のバスケットワイヤ部13、13Bを構成するワイヤと、本体ワイヤ部12、12A、12Bを構成するワイヤとが、それぞれ別体のワイヤにより構成されていてもよい。この構成においても、バスケットワイヤ部13、13Bを構成するワイヤと、本体ワイヤ部12、12A、12Bを構成するワイヤとが、例えばロウ付けや接着剤により、互いに接続されていれば、バスケットワイヤ部13、13Bにトルクの伝達が可能である。
【0061】
また、上記実施形態のバスケット型把持鉗子100、100A、100Bを構成する各部材の材料は、あくまで一例であり、種々変形可能である。
【0062】
また、上記実施形態では、バスケット型把持鉗子を例に説明したが、本発明は、バスケット型把持鉗子に限らず、線状の本体部と、体内組織に処置を施すための処置用デバイス(例えば、高周波スネア)とを備える他の医療用処置具にも同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0063】
10:ワイヤ複合部 10A:ワイヤ複合部 10B:ワイヤ複合部 11:ワイヤ 11A:ワイヤ 12:本体ワイヤ部 12A:本体ワイヤ部 12B:本体ワイヤ部 13:バスケットワイヤ部 13B:バスケットワイヤ部 14:第1の一体編み込み部 14A:第1の一体撚り部 14B:第1の別体編み込み部 15:第2の一体編み込み部 15A:第2の一体撚り部 15B:第2の別体編み込み部 20:シース 30:ハンドル部 40:先端チップ 50:管状部材 60:保持部 100:バスケット型把持鉗子 100A:バスケット型把持鉗子 100B:バスケット型把持鉗子 110B:ワイヤ 111B:ワイヤ